JP3707720B2 - 樹脂部品成形用型の製作方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂部品を成形する樹脂部品成形用型の製作方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂部品を成形するために用いられる既存の樹脂部品用型(以下、既存型という)の構造、およびこの既存型を利用した樹脂部品成形方法について、図6を参照しながら説明する。なお、図6は、既存型を備え付けた射出成形機の部分拡大縦断面図であり、(a)は型締め状態を示しており、(b)は型開き状態を示している。
【0003】
既存型100は、固定型101と可動型102に分かれ、固定型101は射出成形機の固定ダイプレート103に固定され、可動型102は可動ダイプレート104に固定される。なお、この従来例では、固定型101がコア型であり、可動型102がキャビティー型である。
【0004】
固定型101と可動型102は、ガイドピン105,105により位置決め、連結される。固定型101は、固定ダイプレート103に取り付けられる固定型取付板106に、固定型本体材107が取り付けられてなる。そして、この固定型本体材107の下面には、樹脂部品Wの凹部形状を決める樹脂部品成形部107aが形成されている。また、固定型101の中央には、射出成形機のノズルと固定型101のスプルーブシュ110の心出しをするロケートリング108が装着されている。
【0005】
一方、可動型102は、可動ダイプレート104に取り付けられる可動型取付板111に、可動型本体材112が取り付けられてなる。そして、この可動型本体材112の上面には、樹脂部品Wの凸部形状を決める樹脂部品成形部112aが形成されている。
【0006】
可動型102側には、成形された樹脂部品Wを押し出すための押出機構が備え付けられている。押出機構は、サポートバー113により導かれるエジェクタープレート114、このエジェクタープレート114に取り付けられた押出ピン115,115、リターンピン117、スライド傾斜ピン機構118からなる。このスライド傾斜ピン機構118について補足説明する。スライド傾斜ピン機構118は、スライダ118aを介してエジェクタープレート114に取り付けられている。
【0007】
また、このスライダ118aには、傾斜ピン118bの基端が接続され、傾斜ピン118bの先端には、中子部118cが締結にて取り付けられている。中子部118cは、樹脂部品Wに突出部W1を形成するためのものであり、例えば、可動型本体材112の一部を切り取った形状にて形成され、この中子部118cと可動型本体材112との間に生じる隙間に溶融樹脂が流れ込み突出部W1が形成される。なお、この従来例における突出部W1は、プレート状部材の中心に貫通穴が形成された形状をなす。
【0008】
中子部118cは、傾斜ピン118bに取り付けられているため、傾斜ピン118bが進出する一方向へ押し出される。また、中子部118cには、傾斜ピン118bの傾斜に対応した傾斜面118dが形成されており、この傾斜面118dによって中子部118cはスムーズに押し出される。また、傾斜ピン118bが押し出す方向は、突出部W1から中子部118cを引き離す方向であり、樹脂部品Wと可動型本体材112とが離脱する際に、中子部118cも突出部W1から引き離される。
【0009】
この既存型100を用いた樹脂部品成形方法について説明する。図6(a)で示す状態で、固定型101と可動型102との間には、キャビティー空間Cが形成されている。このキャビティー空間Cに向けて溶融樹脂が射出される(図6(a)の矢印参照)。すると、この溶融樹脂は、スプルー119からランナ120を通り、ゲートと呼ばれる断面積を小さく絞った部分を経てキャビティー空間C内に入る。このキャビティー空間C内に入った溶融樹脂は空気抜け穴(図示せず)から空気を追い出し、充満する。溶融樹脂は、この充満した状態で固化し、樹脂成形品となる。この樹脂成形品が成形された後、可動型102が後退して開く(同図(b)のF1矢印)。
【0010】
可動型102が、後退限の付近までくると、射出成形機に固定された押出ロッド(図示せず)によりエジェクタープレート114だけが後退を阻止され、相対的に前方に押し出される(同図(b)のF2矢印)。すると、樹脂成形品は、エジェクタープレート114に取り付けられた押出ピン115、115に押され、可動型本体材112から離脱する。また、この離脱の際に、傾斜ピン118bは、傾斜穴118dに沿って摺動し、スライダ118aは、エジェクタープレート114上をスライド移動する(同図(b)のF3矢印)。その結果、傾斜ピン118bの先端に取り付けた中子部118cは、樹脂成形品から強制的に外され、この樹脂成形品が可動型本体材112から離脱して樹脂部品Wとなる。
【0011】
この離脱後に樹脂部品Wが取り外される。すると、型締め工程に入り、可動型102は前進する。可動型102と固定型101とが組み合って閉じる手前でリターンピン117の先端が固定型本体材107の表面に当たるとエジェクタープレート114は押し戻される。すると、押出ピン115,115の先端は可動型本体材112の面位置まで後退する。可動型102と固定型101とが閉じて締まると、前記した如く溶融樹脂が射出され、樹脂部品Wが成形される。
【0012】
次ぎに、ここで用いられた既存型100の成形方法について説明する。
この成形方法は、以下の工程により行われていた。なお、この工程を説明するに当たり、適宜図7を参照する。ちなみに、この図7は、既存型100の製作方法を模式的に表わす側面図である。
【0013】
[第1工程]
まず、固定型101,可動型102を製作するための前提として、マスター型200を設計する必要がある。このマスター型200は、前記固定型101,102のうち、どちらか一方の形状に対応しており、本従来例では、固定型101の形状に対応している場合を例に説明する。まず、マスター型200の設計に当たり、PLデータ(樹脂部品Wおよび固定型101と可動型102の分割面、いわゆるパーティング面の製作データ)を求め、NC機械に入力する。
【0014】
[第2工程:図7(a)参照]
前記PLデータに基づき、樹脂にNC加工を施して、マスター型200を製作する。このマスター型200の形状は、固定型101(図6(a)参照)の樹脂部品成形部107aに樹脂部品Wを上乗せした形状に対応した形状となっている。なお、図7(a)の仮想線は、樹脂部品Wに対応する部分である。
【0015】
[第3工程:同図(b)参照]
マスター型200に基づいてキャビティーモデル202を製作する。このキャビテーモデル202の製作は、マスター型200の周囲を壁体203で覆い、この内部に溶融樹脂205を流し込んで行う(同図(b)の矢印参照)。
【0016】
[第4工程:同図(c)参照]
キャビテーモデル202が完成すると、今度は、キャビティーモデル202を用いてコアモデル201の製作を行う。まず、キャビテーモデル202の凹部、つまりコアモデル201を成形する面に、樹脂部品Wの肉厚に相当する厚みのシートワックスSWを塗る。
【0017】
[第5工程:同図(d)参照]
シートワックスSWを塗り、肉厚を整えたキャビティーモデル202の周囲を壁体204で覆い、この壁体204の内部に溶融樹脂205を流し込む(同図(d)の矢印参照)。そして、この溶融樹脂205が、壁体204内で固化し、コアモデル201が完成する。
【0018】
[第6工程]
以上、キャビティーモデル202およびコアモデル201が完成すると、この各モデル201,202に基づいた倣い加工を行い、可動型102、固定型101を製作する。なお、同図(e)は、前記倣い加工によって製作された可動型102、固定型101を示している。
【0019】
[第7工程:同図(e)参照]
製作された固定型101、可動型102に細部加工(中子部118c(図6参照)が嵌まり込む穴や押出ピン115(同図参照)が摺動する穴の加工、リブ加工等、樹脂部品Wの細部形状に合わせた加工)、磨き加工、さらにはシボ加工を施して完成する。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
既存型100を製作する従来の方法によれば、必ず、マスター型200を製作する必要がある。このマスター型200を利用して既存型100を製作した場合、この既存型100を用いて大量の同一樹脂部品Wを成形する場合には、有効である。しかし、既存型100を用いて成形する樹脂部品Wが、少量の場合には、コスト的に無駄が多かった。
【0021】
つまり、成形する樹脂部品Wの形状が変更になった場合には、その都度、マスター型200を製作し直す必要があり、その度に時間と工数がかかってしまう。したがって、一つのマスター型200に基づいて製作される既存型100で、少量の樹脂部品Wしか成形しないのであれば、マスター型200を製作するために費やされた時間、コスト等を回収できず、不具合が大きかった。
【0022】
また、前記マスター型200は、熱膨張による歪を生じる恐れがあり、長期間の保存には適さないため、一度製作したマスター型200を取り置きしておくことはできない。したがって、成形する樹脂部品Wの形状を変形し、以前成形した形状とする場合等であっても、やはり、マスター型200を製作し直さなければならず、時間、コスト等の無駄が多かった。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するため、以下の樹脂部品成形用型の製作方法とした。つまり、相対移動する一方の型と他方の型からなる樹脂部品成形用型の製作方法であって、以下の工程からなる。
(第1工程)樹脂部品を成形する既存の樹脂部品用型を利用し、前記樹脂部品の材質より収縮率の小さい低収縮率樹脂を用いて製品モデルを製作する。
(第2工程)前記製品モデルを基にして一方の型モデルを製作する。
(第3工程)前記一方の型モデルを基にして前記一方の型を製作する。
(第4工程)前記一方の型と前記製品モデルによって他方の型モデルを製作する。
(第5工程)この他方の型モデルを基にして前記他方の型を製作する。
(第6工程)前記一方の型および前記他方の型に仕上げ加工を行う。
また、前記一方の型モデル、前記他方の型モデル、前記一方の型、前記他方の型のうち、少なくとも一つ、もしくはその全てを前記樹脂部品の材質より収縮率の小さい低収縮率樹脂を用いて製作することを特徴とする請求項1に記載の樹脂部品成形用型の製作方法とすることもできる。
さらに、前記樹脂部品成形用型の製作方法によって製作されたことを特徴とする樹脂部品成形用型とすることができる。
以上の手段により、樹脂部品成形用型を製作する上での前提となるマスター型の製作が不要となり、工数、時間等の短縮につながる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明を実施の形態に基づき、各工程に分けて具体的に説明する。
[第1工程]
本実施の形態に係る樹脂部品成形用型(以下、部品用型という)の製作方法では、例えば、既存型100(図6参照)を利用して製品モデルM(図1(c)参照)を製作する。この製品モデルMは、アルミ含有耐熱エポキシ、ポリプリピレン系樹脂、ABS樹脂等の樹脂を用いて製作される。なお、アルミ含有耐熱エポキシ、ポリプリピレン系樹脂、ABS樹脂等の樹脂は、本実施の形態に係る部品用型で最終的に成形される樹脂部品よりも収縮率が小さい樹脂(以下、低収縮率樹脂という)である。
【0026】
[第2工程]
続いて、この製品モデルMを基にし、低収縮率樹脂を用いてコアモデル41(図2(d)参照)を製作する。このコアモデル41の製作を図1、図2に基づいて詳述する。なお、本実施の形態に係るコアモデル41が、「一方の型モデル」に相当する。
【0027】
図1(a),(b),(c)は、基台50上に製品モデルを位置合わせする段階を時系列に沿って示している斜視図である。
コアモデル41の製作にあたり、図1(a)の如く、例えば、箱状の基台50を準備する。この基台50の上面に、製品モデルMを設置する。
【0028】
まず、基台50の上面に、同図(b)の如く、複数の樹脂ブロック(Z軸基準位置合わせ用)51a,51b,51cを設置する。この樹脂ブロック51a,51b,51cは、製品モデルMを所定の高さ位置(Z軸方向)に位置合わせするためのものであり、前記所定の高さ寸法より5mm程低いものである。樹脂ブロック51a,51b,51cは、基台50の適当な位置、つまり製品モデルMに対応した適当な位置に配設され、その位置で固着される。
【0029】
次に、複数の樹脂ブロック(X軸,Y軸基準位置合わせ)52a,52b,52cの設置を行う。この樹脂ブロック52a,52b,52cは、製品モデルMを所定の水平方向位置(X軸,Y軸方向)に位置合わせするためのものである。したがって、樹脂ブロック52a,52b,52cは、基台50の適当な位置、つまり側面が製品モデルMに当接して適当な位置に位置合わせする箇所に配設され、その位置で仮止めされる。なお、この樹脂ブロック52a,52b,52cは、製品モデルMを所定の位置に設置した後に、取り外す必要がある。そのため、あくまで仮止めにて固定しており、また、少なくとも同一軸線上にない三箇所に配設される。
【0030】
以上の処理が完了した後に、製品モデルMの設置を行う。まず、Z軸方向の高さ位置を合わせる樹脂ブロック51a,51b,51cの頂面に、補修用樹脂PRを5mm以上の厚みで乗せる。その後、この補修用樹脂PRの上に製品モデルMを載せ、前記樹脂ブロック52a,52b,52cとの当接によって水平方向(X軸,Y軸方向)の位置合わせを行いながら押さえ付ける。この押さえ付けによって、補修用樹脂PRが変形し、製品モデルMが押し下げられる。ここで、製品モデルMがZ軸方向の基準位置まで達すると、押さえ付けを止め、この位置で補修用樹脂PRを固化させる。補修用樹脂PRが固化して安定した後、製品モデルMを一度取り外し、接着剤等で改めて固着する。この固着が完了した後、樹脂ブロック52a,52b,52cを取り外す。
【0031】
本実施の形態では、製品モデルMのZ軸方向の位置合わせを行った後、X,Y軸方向の位置合わせを行っている。しかし、本発明は、この順番に限定されるものでは無く、逆、もしくは同時に行うものであっても良い。また、製品モデルMがコアモデル41を製作するための所定の位置に位置合わせされ、その場所に固着されるものであれば他の方法によることも可能である。
【0032】
次に、図2に示す作業、つまり、パーティング面の製作、型インロー部の製作を行う。ちなみに、図2(a)は、パーティング面の製作状態を示す概略斜視図であり、(b),(c)は(a)のZで示す部分の拡大断面図であり、時系列に沿っている。また、同図(d)は型インロー部を製作した状態を示す概略斜視図であり、(e)は(d)のZで示す部分の拡大断面図である。
【0033】
図2で示す製品モデルMは、既に、基台50上に位置合わせされ、かつ、固着されている。この製品モデルM周りに、パーティング面を形成するための樹脂ブロック53,53,・・を設置する。このパーティング面とは、コアモデル41と後述する固定型10との分割面のことである。
【0034】
樹脂ブロック53,53,・・は、一側面が製品モデルMの周縁形状に対応して形成されている。そして、樹脂ブロック53,53,・・は、この側面を製品モデルMに沿わせた状態で配置され、基台50上に固着される。この配置、および固着について、同図(b),(c)に基づきながら詳述する。樹脂ブロック53,53,・・の側面は、製品モデルMに対応して形成されており、この側面に、補修用樹脂PRを盛り付ける。
【0035】
そして、樹脂ブロック53,53,・・を基台50上に置き、スライドさせながら(同図(b)の矢印参照)補修用樹脂PRを、製品モデルMに押し付け、補修用樹脂PRの型取りを行う。この型取りを行っている状態で、補修用樹脂PRを硬化させ、この硬化が完了すると、一度樹脂ブロック53を取り外す。そして、製品モデルMの外周稜線の高さ基準に合わせた位置で、樹脂ブロック53および補修用樹脂PRを切削処理する。この切削処理の後、同図(c)の如く、樹脂ブロック53を再び製品モデルM周りにセットし、この位置で固着する。ちなみに、同図(c)の仮想線は、切削処理する前の補修用樹脂PRの形状を示している。
【0036】
つづいて、型インロー部の製作を行う。この型インロー部の製作に際し、まず、製品モデルMを囲む複数の樹脂ブロック53,53,・・周りを、額縁状の樹脂ブロック54で囲う。つまり、この樹脂ブロック54で囲んだ空間内部に、切削処理した樹脂ブロック53,53,・・、および製品モデルMが位置する。
【0037】
同図2(e)の如く、樹脂ブロック54と樹脂ブロック53,53,・・との接触面の上縁54aには、補修用樹脂PRを盛り付ける。さらに、この補修用樹脂PRを湾曲形状に加工(R加工)し、硬化させた後に、サンドペーパー等で仕上げる。以上の作業により、コアモデル41の製作が完了する。
【0038】
[第3工程]
コアモデル41を基にし、低収縮樹脂を用いて固定型10を製作する。固定型10の製作を、図3を参照しつつ説明する。なお、図3は、固定型10の製作状態を表わす概略縦断面図であり、固定型10が本実施の形態では「一方の型」に相当する。
【0039】
固定型10の製作においては、製品モデルMの外形面を利用する。つまり、製品モデルMの外形面を上に向けた状態でコアモデル41を固定し、コアモデル41の周囲を壁体44Aで囲う。この壁体44Aには、天井面に樹脂注入穴44aが形成されている。そして、低収縮率樹脂を溶かした溶融樹脂を樹脂注入穴44aから壁体44の内部に流し込んで固化させる。固化する過程において製品モデルに接触している溶融樹脂には、製品モデルの外形面に倣った面が形成され、樹脂部品成形部13aとなる。その後、壁体44Aを取り外し、コアモデル41から離型することによって固定型10が形成される。
【0040】
[第4工程]
次に、この固定型10を利用して可動型20の製作を行う。可動型20を製作するために、まず、キャビティーモデル42の製作を行う。このキャビティーモデル42は、前記第1工程〜第3工程までの工程により製作した固定型10を利用する。なお、本実施の形態において、キャビティーモデル42が「他方の型モデル」に相当する。
【0041】
固定型10の樹脂部品成形部13aに、製品モデルMを嵌め込んでキャビティーモデル42とする。すると、このキャビティーモデル42では、前記第1工程〜第3工程で利用した製品モデルMの外形面に対して裏となる外形面が露出することになる。つまり、キャビティーモデル42の製作において利用される製品モデルMの外形面は、この裏となる面である。この外形面には、貫通穴M2を有する突出部M1が有り、この突出部M1に置き中子型30を組み付ける。この置き中子型30は、L側中子型30AとR側中子型30Bとに分割可能である。このキャビティーモデル42が、本実施の形態における「他方の型モデル」に相当する。
【0042】
[第5工程]
このキャビティーモデル42を基にして可動型20を製作する。図4は、可動型20の製作状態を表わす概略縦断面図であり、以下、この図4を参照して可動型20の製作について説明する。なお、可動型20が、本実施の形態における「他方の型」に相当する。
キャビティーモデル42の周囲を壁体44Bで囲う。この壁体44Bには、天井面に樹脂注入穴44bが形成されており、この樹脂注入穴44bから低収縮率樹脂を溶かした溶融樹脂を流し込み、内部にて固化させる。固化する過程において製品モデルMに接触している溶融樹脂には、製品モデルの外形面に倣った面が形成され、樹脂部品成形部23aとなる。その後、壁体44Bを取り外し、キャビティーモデル42から離型することによって可動型20が形成される。
【0043】
[第6工程]
前記各工程を経て完成した固定型10および可動型20に、仕上げ加工を施す。この仕上げ加工では、例えば、備え付けられる射出成形機の機構等に対応して穴等が形成されたり、余分な樹脂等が削ぎ落とされたりする。なお、本実施の形態における固定型10、可動型20、製品モデルM等は、低収縮率樹脂を用いるため、これらの縮小を最低限に抑えることができ、これらを基に製作される各部材の寸法不備を是正することができる。しかし、固定型10、可動型20、製品モデルM等の製作において、必ずしも全てに低収縮率樹脂を用いる必要はない。つまり、少なくとも製品モデルMの製作において低収縮率樹脂を用いていれば、マスター型の製作が不要となるという効果を奏するからである。ただし、固定型10、可動型20、コアモデル41、キャビティーモデル42のうち少なくとも一つ、もしくはその全ての製作に低収縮率樹脂を用いれば、それだけ製品等の精度が向上して好適である。
【0044】
以上が、本実施の形態に係る部品用型の製作方法である。次に、部品用型1を用いた樹脂部品Wの成形について簡単に説明する。なお、図5は、この部品用型1を射出成形機に取り付けた状態を示す部分側面図である。また、同図(a)は型締め状態を示しており、同図(b)は型開き状態を示している。
【0045】
射出成形機の固定ダイプレート103には、図5の如く、固定型10が固設される。この固定型10の下面(可動型20側に向く面)には、樹脂部品成形部13aが形成され、樹脂部品Wの上面側の形状を決定する。
可動ダイプレート104には、可動型20が固設される。この可動型20の上面(固定型10側に向く面)には、樹脂部品成形部23aが形成され、樹脂部品Wの下面側の形状を決定する。
【0046】
可動型20側には、図5の如く、成形された樹脂部品Wを押し出すための押出機構が備え付けられている。この押出機構は、サポートバー113により導かれるエジェクタープレート114、このエジェクタープレート114に取り付けられた押出ピン115,115、リターンピン117からなる。
【0047】
まず、L側中子型30AとR側中子型30Bを組み付けて置き中子型30を作り、この置き中子型30を、可動型20の嵌合穴部24にセッティングする。その後、図5(a)の如く、固定型10と可動型20とを、型締め状態とし、固定型10および可動型20との間に、キャビティー空間Cを形成する。続いて、このキャビティー空間Cに向け、溶融樹脂を射出する(図5(a)の矢印参照)。すると、この溶融樹脂は、スプルー119からランナ120を通り、ゲートと呼ばれる断面積を小さく絞った部分を経てキャビティー空間C内に入る。このキャビティー空間C内に入った溶融樹脂は空気抜け穴(図示せず)から空気を追い出し、充満する。溶融樹脂は、この充満した状態で固化し、樹脂成形品となる。樹脂成形品が成形されると、可動型20が後退して型開き状態となる(同図(b)のF1矢印)。
【0048】
可動型20が、後退限の付近までくると、射出成形機に固定された押出ロッド(図示せず)によりエジェクタープレート114だけが後退を阻止され、相対的に前方に押し出される(同図(b)のF2矢印)。すると、樹脂成形品は、エジェクタープレート114に取り付けられた押出ピン115、115に押され、可動型20から離脱する。なお、この時に、置き中子型30は、樹脂成形品の突出部W1に組み付いて外れる。したがって、樹脂成形品が離脱した後に、置き中子型30を突出部W1から取り外し、樹脂部品Wを成形する。
なお、本実施の形態では、樹脂部品Wの離脱を、型開き状態とする過程と同時に行っている。しかし、前記離脱は、必ずしも型開き状態とする過程と同時に行う必要はなく、後であっても良い。また、他の構造からなる押出機構を利用して、前記樹脂部品Wの離脱を行うこともできる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂部品成形用型を製作する上での前提となるマスター型の製作が不要となり、工数、時間等の短縮につながる。
特に、樹脂部品成形用型の破損等により修理、取り替えの必要が生じたり、成形する樹脂部品の変更により、他の樹脂部品成形用型に変更する必要が生じた場合も、既存の樹脂部品成形用型から製品モデルを製作し、この製品モデルを基礎として樹脂部品成形用型を製作できるため、コスト的な無駄を軽減できる。
さらに、本発明は、既存の樹脂部品用型から製品モデルを製作し、この製品モデルを利用して樹脂部品成形用型を製作するものであるため、例えば、樹脂部品にシボ加工等が施されている場合であっても、本発明によって製作された樹脂部品成形用型には、シボ加工を施すための形状面が写されている。その結果、新たに樹脂部品にシボ加工等を施す必要が無く効率的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る樹脂部品成形用型の製作方法の一部を示す斜視図であり、(a),(b),(c)は、基台上に製品モデルを位置合わせする段階を時系列に沿って示している。
【図2】本実施の形態に係る樹脂部品成形用型の製作方法の一部を示しており、(a)は、パーティング面の製作状態を示す概略斜視図であり、(b),(c)は(a)のZで示す部分の拡大断面図であって時系列に沿っている。また、(d)は型インロー部を製作した状態を示す概略斜視図であり、(e)は(d)のZで示す部分の拡大断面図である。
【図3】固定型の製作状態を表わす縦断面図である。
【図4】可動型の製作状態を表わす縦断面図である。
【図5】本実施の形態に係る樹脂部品成形用型を備え付けた射出成形機の部分拡大縦断面図であり、(a)は型締め状態を示しており、(b)は型開き状態を示している。
【図6】既存の樹脂部品用型を備え付けた射出成形機の部分拡大縦断面図であり、(a)は型締め状態を示しており、(b)は型開き状態を示している。
【図7】既存の樹脂部品用型を製作する従来の製作方法を模式的に表わす側面図である。
【符号の説明】
1:樹脂部品成形用型
10:固定型(一方の型)
13a:樹脂部品成形部
20:可動型(他方の型)
23a:樹脂部品成形部
41:コアモデル(一方の型モデル)
42:キャビティーモデル(他方の型モデル)
50:基台
C:キャビティー空間
W:樹脂部品
M:製品モデル
100:既存樹脂部品用型
Claims (2)
- 相対移動する一方の型と他方の型からなる樹脂部品成形用型の製作方法であって、以下の工程からなる。
(第1工程)樹脂部品を成形する既存の樹脂部品用型を利用し、前記樹脂部品の材質より収縮率の小さい低収縮率樹脂を用いて製品モデルを製作する。
(第2工程)前記製品モデルを基にして一方の型モデルを製作する。
(第3工程)前記一方の型モデルを基にして前記一方の型を製作する。
(第4工程)前記一方の型と前記製品モデルによって他方の型モデルを製作する。
(第5工程)この他方の型モデルを基にして前記他方の型を製作する。
(第6工程)前記一方の型および前記他方の型に仕上げ加工を行う。 - 前記一方の型モデル、前記他方の型モデル、前記一方の型、前記他方の型のうち、少なくとも一つ、もしくはその全てを前記樹脂部品の材質より収縮率の小さい低収縮率樹脂を用いて製作することを特徴とする請求項1に記載の樹脂部品成形用型の製作方法。
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