JP3704936B2 - 電子写真用画像支持体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式を使用した画像形成装置に用いられる電子写真用画像支持体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式による画像形成装置には、像担持体上に帯電、露光、現像によってトナー像を形成し、トナー像が得られる度に転写体上に転写する行程を繰り返すことにより、転写材上にトナー像を得る方法である。カラー画像の場合、この工程を複数回繰り返すことによりカラー画像を得ることができる。最終的には、転写体上のトナーを画像支持体としての記録材料に熱、および圧力を印加する事により定着し、固定化される。
この方法で用いられている画像支持体としては、一般には普通紙やオーバーヘッドプロジェクター( OHP) 用透明シートなどが利用されている。画像支持体に要求される性質としては記録材料として従来からの媒体との共通性、すなわち違和感のない媒体であること、電子写真記録工程中で印加される熱、圧力などにより変化しないこと、記録工程において画像支持体の搬送性が良好なこと、記録媒体として長期に利用、保存できるようにトナー画像を画像支持体に定着、固定化すること、原稿を忠実に反映した高品質な画像が得られること、また最終的に廃棄する場合には地球環境への負荷が少ないことなど多くの性能が要求されている。また、記録媒体としてプレゼンテーション用に用いられるOHPシートの場合には、この他に光透過性などが要求される。
【0003】
一方、最近ではカラー画像が容易に利用できる環境が整ってきており、生産性の高さ、高画質などにより電子写真方式によるカラー画像の出力が利用されている。プレゼンテーションに利用されているカラー画像用OHPでは、さらなる高画質の要求のもと、多くの検討がなされている。たとえば、基材表面にトナーとの親和性の高い画像受像層を着膜したり、またトナー像との界面で乱反射による透過率の減少防止のため、トナーとの相溶性の高い樹脂を厚膜化することなどが行われている。特に、カラー画像の場合、カラートナー中には、シアン、マゼンタ、イエローの各種顔料が混入されており、カラートナーの発色性を向上させるためトナーを充分溶融させることが必要とされる。
一般に、電子写真方式ではトナーを溶融させる定着工程においては、加熱ロールにより十分な定着温度と圧力を印加しており、トナー樹脂を完全に溶融させているが、高発色で溶融特性にすぐれたカラー画像用トナー樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が比較的低いため、定着ロールへ融着する現象( ホットオフセット) 、また、定着温度が低い場合に定着ロールへ付着する現象( コールドオフセット) が発生することが知られている。これらを防ぐため電子写真方式では、定着ロールへシリコーンオイルなどの離型剤を含浸、塗布、添加することなどが行われている。さらに、トナー樹脂にはオフセット防止のため、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスなどの有機高分子ワックスやカルナバワックスなどの天然ワックスを混入させる方法などが提案されている。
【0004】
これらの離型剤は、画像支持体、あるいはトナー表面上に析出することにより定着ロールとの界面に離型剤が存在し、定着ロールとトナーとの親和性を低下させることによりトナーが定着ロールへ融着、あるいは付着することを防止している。
しかしながら、これらの離型剤が画像支持体、あるいはトナー上に析出することで、これらの離型剤がカラートナーの発色性を低下させたり、画像支持体上に残った離型剤のため、離型剤による不快な触感の発生、また画像支持体への水性インクの印字不良やポストイットなど粘着テープの付着を阻害するなどの問題が起こっている。特に、OHPシートの場合には、高画質化をねらった受像層の低Tg化、厚膜化などにより、さらに定着ロールへの付着性が増加しただけでなく、前記離型剤が画像支持体、あるいはトナーと画像支持体の近傍に存在することにより、より一層発色性などの画像劣化を起こさせるだけでなく、著しい透過率の低下が発生するなどの問題がある。また、トナー中への離型剤の混入は、トナーの帯電性能を変化させ、またその粉体流動性、熱安定性などを劣化させることが報告されており、できうればトナー中への離型剤の混入量を低減、あるいは混入させないことが要求されている。このような、問題点のため電子写真方式での印字において、定着ロールへのシリコーンオイルなどの添加をできるだけ減少させる( オイルレス) とともに、高画質化のために低Tg化が要求されているトナー樹脂が、定着工程において定着部材に融着することなく、高画質な画像形成が行われることが要求されている。
【0005】
一方、本発明者らの研究により、普通紙記録用紙や加工紙、さらにはOHPに用いられるポリエステルフィルムなどの電子写真用画像支持体の受像層材料として、画像形成材料であるトナー像が充分定着し、高画質を得るためには、トナーとの親和性の高い樹脂を用いることが必要なだけでなく、その定着工程における加熱溶融特性においてトナーの構成樹脂材料と同等か、またはこれより低粘性の樹脂を用いることも必要であることがわかった。
また、その定着工程において利用される定着ロールなどへの定着部材からトナーを充分剥離、あるいは定着ロールへトナーが溶融付着することを防止するために、トナーにあらかじめ離型剤を混入させる、また定着部材へシリコーンオイルなどの離型剤を付与することが必要なことがわかった。
【0006】
しかしながら、トナーへの離型剤の混入は、トナーの帯電性能を変化させ、環境などによる帯電性能の変化量を増大させるだけでなく、トナーの粉体流動性を悪化させ、トナーの凝集を発生させ、保存安定性や現像器内での現像不良をまねくなどの問題を発生することがわかった。
また、定着部材へのシリコーンオイルなどの離型剤の付与はトナーの過剰の熱溶融によるホットオフセットやコールドオフセットには大きな効果が認められるが、シリコーンオイルなどの離型剤は定着部材へ付与されるとともに画像支持体としての普通紙やOHPシートなどへも同時に付着することになる。特に、カラー画像の場合、白黒トナーに比べて定着部材への付着性が強いため、定着部材への付着性を防ぐためにはより多量のシリコーンオイルを使用することが必要となる。その結果、画像支持体としての普通紙やOHPシート上に多量のシリコーンオイルなどが付着することになる。この結果、シリコーンオイルによるカラートナーの発色性や光沢( グロス) の低下、シリコーンオイルによるベタツキ感など不快な接触感、また画像支持体への水性インクの印字不良やポストイットなど粘着テープの付着を阻害するなどの問題が起こっている。そこで、なるべくトナーへの離型剤の混入や定着部材への離型剤の付与量を減らすことが要求されはじめている。
【0007】
そこで、本発明者らは従来から知られている離型剤としてシリコーンオイルや有機高分子ワックス、天然ワックスなどを電子写真方式による画像支持体に混入することを試みたが、加熱定着工程においてシリコーンオイルやワックスなどがトナー樹脂と相溶しづらいこと( 非相溶性) 、また移行しやすい構造や低分子量であることなどにより、これらが画像支持体上に析出してしまい、発色性やグロスなどの画質を著しく低下させるだけでなく、離型剤混入によるトナー樹脂の可塑化( 低Tg化) などにより画像支持体の保存性及び環境安定性の低下、画像支持体の走行性、搬送性を悪化させることがわかった。特に、OHPシートなどでは透過率の著しい低下による画質劣化と画像の定着不良などが発生した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上述のごとき実情に鑑み、上述のごとき問題点を解決することを目的としてなされたものである。
即ち、本発明の目的は、電子写真方式において、特に画像形成材料であるトナーが定着ロールなどの定着部材へ付着するのを防止しながら、高画質な画像形成を達成するための電子写真用の画像支持体を提供することを目的とする。特に、カラー画像の高品質性を確保しながら、定着ロールへの巻き付きなどの定着不良を防ぐことを目的とする。また、OHPシートなどでは、その透明性を損なうことなく、高画質と充分な定着性を確保することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、少なくとも基材の片面上に画像受像層を有する電子写真用画像支持体において、該画像受像層が熱溶融性樹脂及び硬化性シリコーン樹脂並びに熱溶融性樹脂と硬化性シリコーン樹脂との相溶化剤を含有する電子写真用画像支持体を提供することにより解決される。
また、上記画像支持体において、熱溶融性樹脂が、画像形成材料が含有する樹脂と同種の樹脂であることが好ましい。
また、本発明の画像支持体の画像受像層は、0.1μm以上の厚さを有することが好ましい。
また、受像層を構成する硬化性シリコーン樹脂は、たとえば水分、熱、光、電子線により硬化するものであることが好ましく、また受像層が変性シリコーン樹脂または反応性シラン化合物を含有することが好ましい。
また、画像受像層が可塑剤を含有していることが好ましい。
さらに、本発明の画像支持体は基材上に導電層を設けることが好ましく、また、画像支持体がマット剤または白色顔料を含有する表面層を有することが好ましい。
さらに、本発明の画像支持体が25℃、65%RHにおける表面抵抗が1×108 〜1×1013Ωであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は電子写真用画像支持体に関して鋭意研究を重ねた結果、画像形成材料であるトナーとの親和性、相溶性、定着性を確保し、受像層の定着部材への付着性を防止して、電子写真方式における高生産性と高画質の画像印字を可能とするためには、画像支持体上に、熱溶融性樹脂と硬化性樹脂を含有する画像受像層が形成されていることが必要なことを見い出した。
先ず、本発明の受像層における熱溶融性樹脂について説明する。
本発明の熱溶融性樹脂としては、画像形成材料に使用された樹脂と同一の樹脂が最も好ましいが、具体的には、SP値が8.0 〜12.0(cal/cm3 )1/2 の熱溶融性樹脂を好適に使用することができる。
【0011】
本発明における熱溶融性樹脂としては、画像形成材料として用いられているものが特に制限なく用いられるが、例えば、スチレン、ビニルスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−不飽和脂肪族モノカルボン酸のエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;イソプレン、2−クロロブタジエン等のジエン系モノマーの1種以上を重合させて得られる単独重合体あるいは共重合体を例示することができる。これらの中で、スチレン類、α−不飽和脂肪族モノカルボン酸のエステル類等が好ましく用いられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂等を単独もしくは混合した形で用いることができる。
【0012】
本発明における熱溶融性樹脂としては、ポリエステルも好適に用いることができる。このポリエステルは、多価ヒドロキシ化合物と多塩基性カルボン酸またはその反応性酸誘導体との反応によって製造することができる。ポリエステルを構成する多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のジオール類、水素添加ビスフェノールA 、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA 、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA 等のビスフェノールA アルキレンオキサイド付加化合物、その他の2 価アルコール、ビスフェノールA 等の2 価フェノール等が挙げられる。また、多塩基性カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、その他の2 価カルボン酸、あるいはこれらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライド等の反応性酸誘導体などが挙げられる。これらの2価のヒドロキシ化合物およびカルボン酸に加えて、ポリマーをテトラヒドロフラン不溶物が生じない程度に非線形状化するために、3 価以上の多価ヒドロキシ化合物および/または3 価以上の多塩基性カルボン酸を加えることができる。これらのポリエステルの中でも、ビスフェノールA と芳香族多価カルボン酸とを主単量体成分とした重縮合物からなる線状ポリエステル樹脂が特に好ましく使用できる。また、ポリエステルの物性については、軟化点90〜150 ℃、ガラス転移点50〜70℃、数平均分子量2000〜6000、重量平均分子量8000〜15000 、酸価5 〜30、水酸基価5 〜40の範囲の樹脂が特に好ましく使用することができる。
【0014】
硬化性樹脂としての硬化性シリコーン樹脂は、3 官能以上のクロロシラン、あるいはこれらと1 、2 官能のクロロシランとの混合物などを加水分解したシラノールを縮合することによりポロシロキサンを合成し、触媒として有機酸金属塩やアミン類を用いるなどしてさらに縮合反応( 硬化反応) を進めることにより合成することができる。このほか、末端に反応性をもつポリジオルガノシロキサンと反応させたもの、ケイ素原子に結合したビニル基をもち、その反応性を利用して重付加反応によって硬化するものなどがある。また、ケイ素原子に結合した水酸基やアルコキシ基をもつ低分子量ポリシロキサンとアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂などと反応させた変性シリコーン樹脂がある。
硬化性シリコーン樹脂は、塗工形態的には溶剤型、無溶剤型に分けられ、さらに反応のタイプによりそれぞれ付加型、縮合型、UV型などに分類できる。
【0015】
硬化性を制御するためには単官能や2 官能のポリジメチルシロキサンの添加、触媒量の調節、主として硬化時に加熱する付加型又は縮合型の硬化性シリコーン樹脂の場合には硬化温度、硬化時間の調節、UV型硬化性シリコーン樹脂の場合にはUV照射強度等の調節、また反応抑制剤として、アセチレンアルコール類、環状メチルビニルシクロシロキサン、シロキサン変性アセチレンアルコール類などの添加等により硬化を制御する方法がある。
これら硬化条件を制御することにより硬化性シリコーン樹脂の分子量、反応基としてのシラノール残存量などが変化し、シリコーン樹脂の特性としての離型性、接着性、表面硬度、透明性、耐熱性、化学的安定性などが制御できる。
縮合型は、末端にシラノール基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサンを配合し、有機スズ触媒の存在下で加熱により縮合反応する。形態的には溶液型とエマルジョン型に分けられる。
【0016】
付加型はビニル基を含有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリジメチルハイドロジェンシロキサンを配合して、白金触媒の存在下で反応・硬化させる。形態的には溶剤型、エマルジョン型、無溶剤型に分けられる。
UV硬化性には、光カチオン触媒を利用したものやラジカル硬化機構を利用したものが知られている。UV硬化性は無溶剤コーティングを基本としているが、膜厚の制御のためには溶剤に希釈してコーティングし、乾燥後UV照射することができる。
本発明で用いる硬化性シリコーン樹脂は、硬化反応前は汎用の有機溶媒にも容易に溶解でき、また反応基の種類や反応基の数、及び硬化条件( 硬化時間、温度、照射エネルギーなど) によりその物性( 分子量、硬度、硬度、接着性など) や、マトリックスとしての安定性、さらには離型性、付着性などを容易に制御することができる。また、無溶媒タイプの硬化性樹脂の場合、有機溶媒を用いないで硬化反応を行うこともできる。
【0017】
本発明で用いられる硬化性シリコーン樹脂は、水分、熱、光、電子線などのエネルギー線で硬化するシリコーン樹脂が好ましいが、水分や熱などの比較的簡単な装置などを利用できる点では、水分、熱によって硬化できる硬化性シリコーン樹脂組成物が利用しやすいが、逆にこれらの樹脂組成物は通常の環境化での安定性、すなわちこれらを塗布液とした場合のポットライフが短いなどの特徴がある。一方、光や電子線などにより硬化する硬化性シリコーン樹脂組成物は、環境安定性が高く、その点では利用しやすいが、比較的高価な光や電子線照射装置などを必要とする。
本発明において、硬化性樹脂として硬化性シリコーン樹脂を用いると、熱溶融性樹脂との相溶性が高く、硬化性シリコーン樹脂を熱溶融性樹脂に対し80wt% 以下、好ましくは50wt% 以下含有させた場合でも相溶性を維持することができる。
【0018】
また、これらの硬化性シリコーン樹脂と非シリコーン化合物、例えばアクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン- プロピレン樹脂、スチレン- ブタジエン樹脂、スチレン- 塩化ビニル樹脂、スチレン- 酢酸ビニル樹脂、スチレン- アクリル酸エステル樹脂、スチレン- メタクリル酸エステル樹脂などを併用することもでき、また、これら非シリコーン化合物のモノマーをラジカル重合開始剤やイオン重合開始剤などともに上記シリコーン樹脂、あるいはそのモノマーを共存した状態で硬化反応を行うことによりマトリックス樹脂としての種々の性能を制御することもできる。非シリコーン化合物の含有量は、離型性の観点より受像層形成材料中50wt% 以下が好ましい。さらに、前記のような非シリコーン樹脂が共存される場合は、これらが上記熱溶融性樹脂の役割をもはたすことができる。
【0019】
また、硬化性シリコーン樹脂とともに、分子中に反応基を有する変性シリコーンオイルを含有してもよく、変性シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイルなどがある。また、ジメチルポリシロキサンやメチルフェニルポリシロキサンタイプのシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなども例示できるが、これらは単独使用に限らず混合して複数用いてもよい。変性シリコーンオイル含有量は受像層形成材料中30wt% 以下添加することができる。
【0020】
本発明においてはさらに、受像層に種々の樹脂や化合物を含有せしめることができる。例えば、定着部材への付着性を防止するため受像層に、シリコーン樹脂と各種樹脂との変性体である変性シリコーン樹脂、たとえばポリエステル変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、ポリイミド変性シリコーン樹脂、オレフィン変性シリコーン樹脂、エーテル変性シリコーン樹脂、アルコール変性シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン樹脂、メルカプト変性シリコーン樹脂、カルボキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂を添加することが有用であることがわかった。シリコーン変性樹脂は、画像形成材料としてのトナー樹脂との親和性が高く、トナーと適度に混和、相溶し、トナーと溶融混和するため、充分な発色性が得られ、また同時に、シリコーン樹脂による離型性のため定着部材と画像支持体とが熱溶融時に付着するのを防止することができるものと考えられる。これらの変性シリコーン樹脂の含有量は、受像層形成材料に対し30wt% 以下とすることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明では受像層に、反応性シラン化合物と変性シリコーンオイルとを含ませることができる。反応性シラン化合物は基材表面の反応基である水酸基、カルボキシル基などと反応すると同時に、変性シリコーンオイルと反応し、その結果、シリコーンオイルの持つ液体潤滑剤以上の離型剤として働くことが判明した。また、これらは熱溶融性樹脂や硬化性樹脂、変性シリコーン樹脂とも同時に反応するため、従来のシリコーンオイル以上の離型性能を維持したまま、離型剤として受像層中に強固に固定化されるものと考えられる。また、従来の定着部材表面へ付与されたシリコーンオイルや、画像支持体及び画像形成材料としてのトナー中などへ添加されたシリコーンオイルやワックスなどの離型剤が他に移行するのと異なり、前記のごとき離型剤は、画像支持体から他の媒体へ移行することを防止することができるものと考えられる。
【0022】
さらに、本発明においては、上記の熱溶融性樹脂と硬化性樹脂はその材料の組み合わせ、たとえば溶解性パラメータの近い樹脂を用いることや、また配合比の選択により相溶性を確保することが可能であり、これにより十分な透明性を確保することができるが、さらに、相溶化剤や可塑剤との併用は、これらの樹脂をより均質化、相溶化させることができ、OHPへの利用などに対しても十分利用できる画質と透明性、さらには定着部材への低付着性を確保することができる。相溶化剤としては、シリコーン変性ポリエステル、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等が、可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、ポリエチレングリコールエステル等が好適に用いられる。
【0023】
本発明における受像層は、上で説明した熱溶融性樹脂、硬化性樹脂及び変性シリコーン樹脂、変性シリコーンオイル、反応性シラン化合物、相溶化剤、可塑剤などの受像層の材料を有機溶媒中で均一に混合した後、基材に塗布され、水分、熱( 温度) 、光、電子線などにより硬化反応が行われる。また、本発明においては、熱溶融性樹脂及び/又は硬化性樹脂を構成するモノマーを溶媒中、あるいは無溶媒の状態で混合し、その後基材に塗布するなどの方法で皮膜を形成し、これを乾燥させるとともに、熱( 室温での硬化を含む) 、光、電子線などにより硬化反応を行うことができる。この場合には本発明の熱溶融性樹脂と硬化性樹脂が混合された受像層構成材料を一度に作製することができる。
本発明では、硬化性樹脂と熱溶融性樹脂が同時に用いられるため、硬化反応により形成されるマトリックス中に熱溶融性樹脂が混入された構成をとっているものと考えられる。マトリックスとしての硬化性樹脂は、画像支持体を構成している基材としての用紙やプラスチックフィルムなどと強固に接着されると同時に、受像層を強固な皮膜として形成することに役立っている。また、マトリックスを構成している硬化性樹脂は、画像形成材料が溶融加熱される温度においても十分弾性が高く、定着部材への付着性を防止する役割を果たしている。
【0024】
一方、マトリックスに混入されている熱溶融性樹脂は、硬化性樹脂のマトリックス中に、あたかも海島構造を形成するように存在し、この熱溶融性樹脂成分がトナーと共に溶融加熱され十分相溶化、均一化することにより、特にハイライト画像など画像面積が少ない場合、トナーと画像支持体上の界面での光の乱反射による透過率の減少を防止する効果を増大させているものと考えられる。
このように硬化性樹脂のマトリックス中に熱溶融性樹脂が混入している受像層を有する本発明の画像支持体は、熱溶融性材料の存在によりトナーとの親和性、相溶性が高く、特にハイライト画像を構成するトナーが熱溶融性樹脂と十分相溶化、均一化することによりカラートナーの高透過性と十分な発色性を兼ね備えた高画質のカラー画像が実現される。さらに、マトリックス樹脂となる硬化性樹脂の高弾性により、定着部材への画像支持体の付着を防止(剥離性の向上)できるものと考えられる。
【0025】
さらに、本発明において、硬化性樹脂として硬化性シリコーン樹脂を用いる場合は、マトリックス樹脂としてのシリコーン樹脂の持つ離型性のため、さらに画像支持体の剥離性能が向上するものと考えられる。また、これらと変性シリコーン樹脂との併用は、さらに画像支持体の剥離性の向上をもたらすものと考えられる。
【0026】
本発明の画像支持体の受像層中の硬化性樹脂の含有量は、硬化性樹脂が受像層中でマトリックスを形成し、その粘弾性により定着部材としての定着ロールや定着ベルトへの付着性を低下させるに必要な量が添加される。硬化性樹脂の含有量は、用いる硬化性樹脂と熱溶融性材料との組み合わせ、さらにこれに添加される変性シリコーン樹脂や相溶化剤、可塑剤などによって異なるが、一般的に受像層構成材料の80wt% 以下、好ましくは50wt% 以下であれば充分である。また、本発明で用いている硬化性シリコーン樹脂は、従来から用いられているシリコーン樹脂や有機高分子ワックス、天然ワックスなどに比べて、受像層を構成している熱溶融性材料と親和性、及び相溶性が高く、また透明性にも優れているため、これらの樹脂を80wt% 程度混合してもほとんどその親和性、透明性においても変化しない。しかしながら、80wt% を超えると離型性能が高すぎるため、トナーの定着性能が得られなくなる。さらに、基材としての紙やOHPシートなどへの接着性も悪化するため電子写真用画像支持体としての皮膜形成能も低下してしまうことになる。
【0027】
本発明の画像支持体の受像層は0.1 μm以上の厚さを有していることが好ましい。0.1 μmより薄いと画像形成材料(トナー)を受容するに十分な厚さといえなくなる。
【0028】
次に、本発明の画像支持体において使用する基材について説明する。本発明において使用可能な基材としては、一般的に電子写真記録で用いられる普通紙記録用紙、また熱転写記録で利用される熱転写用紙、また高級印刷などで用いられている加工紙、微塗工紙、またOHPなどで用いられているポリエステルフィルムやスチレンアクリル樹脂などの透明樹脂などが利用できる。
本発明で使用する基材としては、紙( 普通紙、コート紙) 、金属、プラスチック、セラミックがあり、さらにこれらはフィルム状のものが好ましい。
本発明において紙を基材とする場合、この基材となる用紙に使用するパルプは、化学パルプとしては例えば、広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、ソーダパルプ等の木材およびその他の繊維原料を化学的に処理し、晒し工程を経て作られたバージンの晒ケミカルパルプが好ましく、さらに白色度の高いものが好ましい。また古紙パルプとしては、例えば製本、印刷工場、裁断所等において発生する裁落、損紙、幅落としした古紙である上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙を解離した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に平板、凸版、凹版、印刷等、電子写真方式、感熱方式、熱転写方式、感圧記録紙、インクジェット記録方式、カーボン紙等により印字された古紙、および水性、油性インクや鉛筆などで筆記した古紙、新聞古紙を解離後、各古紙に最適な方法で脱墨した古紙パルプ、比較的脱墨が容易な平板印刷された古紙パルプが好ましく、その中でもさらに白色度が高く夾雑物の少ない古紙パルプが好ましい。
【0029】
基材としての紙は、多孔性であり、液体が染み込み易いため、受像層を形成するための塗工溶液を均一に薄く塗布するためには、紙にめどめ処理を行ってもよい。めどめ処理としては、ポリエチレン、クレーバインダー、PVA 、でんぷん、カルボキシメチルセルロースなどをそれぞれが溶解、あるいは分散する溶液を、あらかじめ紙に塗布、乾燥し、それぞれの皮膜を形成しておくことにより達成される。
また、受像層樹脂皮膜により、紙が透明化し、紙の風合いや白色性をそこなうことが懸念される場合には、酸化ケイ素、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの白色の金属酸化物微粒子や有機の白色顔料などを含有する層を基材に設けることが好ましい。この層は、画像受像層であることができ、これらの白色顔料を熱溶融性樹脂と硬化性樹脂の溶液に添加して受像層を形成することにより画像記録体としての紙の白色性が維持される。白色顔料は受像層中、10〜30重量%程度添加される。
【0030】
本発明で用いられる画像記録体として代表的なものは、プラスチックフィルムがある。この中でOHPに使用できるような光透過性のあるフィルムにはアセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、セロハンなどがあり、現状では機械的、電気的、物理的、化学的特性、加工性など総合的な観点から見て、ポリエステルフィルム、特に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。
【0031】
画像記録体としてプラスチックフィルムが用いられる場合、温度や湿度などの環境による画像劣化を防止するためその表面層の表面抵抗として1x108 〜1x1013Ωの範囲(25 ℃、65%RH の条件で) であることが好ましく、その方法としては界面活性剤や導電性酸化物微粒子などを含有する層を画像支持体の基材上に形成することによって達成できる。導電性金属酸化物粒子の材料としては、ZnO、TiO、TiO2 、SnO2 、Al2 O3 、In2 O3 、SiO、SiO2 、MgO、BaO及びMoO3 を挙げることがきる。これらは、単独で使用しても良く、これらの複合酸化物を使用しても良い。また、金属酸化物は、異種元素をさらに含有するものが好ましく、例えばZnOに対してAl、In等、TiOに対してNb、Ta等、SnO2 に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等を含有( ドーピング) させたものが好ましい。これらの中で、SbをドーピングしたSnO2 が、経時的にも導電性の変化が少なく安定性が高いので特に好ましい。また、界面活性剤としては、エチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤等のものが用いられる。
【0032】
また、本発明においては、搬送性を向上させるため画像支持体が、マット剤を含有する表面層を有していることが好ましい。この表面層としては受像層であることができる。
上記マット剤を構成する樹脂としては、潤滑性を有する樹脂としてポリエチレン等のポリオレフィン及びポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン( テフロン) 等のフッ素樹脂を挙げることができる。また、上記樹脂のマット剤の平均粒径は、0.1 〜10μm の範囲が好ましく、特に1 〜5 μm の範囲が好ましい。上記平均粒径は、大きい方が好ましいが、大き過ぎるとマット剤が受像層から脱離して粉落ち現象が発生し、表面が摩耗損傷し易くなり、さらに曇り( ヘイズ度) が増大することから、上記範囲が好ましい。更に、上記マット剤の含有量は、マット剤が受像層に含まれる場合、受像層形成材料に対して0.1 〜10重量% が好ましく、より好ましくは0.5 〜5 重量% である。上記マット剤は扁平状であることが好ましい。予め扁平状のマット剤を用いても良いし、軟化温度の比較的低い( 上記好ましい軟化点温度を有することが好ましい) マット剤を用いて受像層の塗布、乾燥時の加熱下に扁平状にしても良いし、あるいは加熱下に押圧しながら扁平状にしても良い。但し、受像層の表面からマット剤が凸状に突き出ていることが好ましい。マット剤として、上記以外に無機微粒子( 例、SiO2 、Al2 O3 タルク又はカオリン) 及びビーズ状プラスチックパウダー( 材料例、架橋型PMMA、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート又はポリスチレン) が用いられ、またこれらのマット剤を2種以上併用してもよい。
【0033】
本発明で用いる上記熱溶融性樹脂及び硬化性樹脂を含有する受像層樹脂を基材上に作製する方法としては、これらを有機溶媒、もしくは無溶剤タイプのものではそのままの状態で、画像保持体上に塗布あるいは含浸させた後、乾燥さらに加熱硬化処理を施すことにより作製することができる。塗布あるいは含浸させる方法としては、ブレードコーティング法、( マイヤー) バーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法等の通常使用される方法が採用される。
【0034】
塗布あるいは含浸後の乾燥は風乾でも良いが、熱乾燥を行えば容易に乾燥できる。乾燥方法としては、オーブンに入れる方法、オーブンに通す方法、あるいは加熱ローラに接触させるなど通常使用される方法が採用される。乾燥後、作製した皮膜を硬化するためには、熱、光、電子線などが利用できる。さらに、硬化反応を制御するために重合制御剤や可塑剤などの添加剤を混合してもよい。また、室温で硬化反応が進行するものはそのまま硬化できる。さらに、熱硬化する場合には乾燥時に同時に行ってもよい。光、電子線などにより硬化する場合には、硬化性シリコーン樹脂が硬化するだけのエネルギーを供給すればよく、例えば、光エネルギーとしては、タングステンランプや高圧、低圧水銀灯などを光源として利用することができる。また照射エネルギーとしては100 〜200W/cm 程度の光を1 分程度照射することにより充分硬化反応を進めることができる。
【0035】
以上のような電子写真用画像支持体を使って、電子写真法によって画像を形成する方法を以下に述べる
電子写真方法による画像支持体としての用紙への画像形成は、電子写真用感光体の表面に均一に静電荷を与え帯電させた後、その表面に得られた画像情報を露光し、露光に対応した静電潜像を形成する。次に感光体表面の静電潜像に現像器からトナーを供給することで静電潜像がトナーによって可視化現像され、さらにこれを用紙などの画像支持体に転写し、最後に熱や圧力などによりトナーが記録体へ定着されて画像記録体ができあがる。
定着時にトナーは、熱や圧力が同時に印加されるため画像支持体である記録用紙に定着される訳であるが、同時にトナーは定着部材と接触するため、トナーが低粘性であったり、定着部材との親和性が高い場合などは、定着部材に一部移行し、オフセットとして定着部材に残留し、定着部材の劣化をまねき、結果として定着器の寿命を短縮してしまうことになる。したがって、画像支持体としてトナー画像の充分な定着性と定着部材との剥離性を得ることが必要となる。本発明では、トナーとの親和性、相溶性などが高い熱溶融性材料と、これらを基材と強固に接着させ、しかも受像層を構成するマトリックス材料として働く高弾性の離型性硬化性樹脂を含有する受像層を基材上に設けたことにより、トナー画像を画像受像層へ充分溶融、定着させるとともに、定着部材へのオフセットを防止することが可能となる。
【0036】
本発明は、普通紙やコート紙などの他に、OHP用のポリマーフィルムに対しても利用することができ、本発明で用いている変性シリコーン樹脂、硬化性シリコーン樹脂を用いることにより画像支持体の透明性、基材との接着性、画像形成材料との親和性、相溶性などにより画像形成材料の定着性と定着部材からの画像支持体の剥離性を両立させることができる。
以上のように熱溶融性樹脂と硬化性樹脂とを受像層中に含有する画像支持体を使って画像形成することにより、過去多くの知識や工夫が集積されている電子写真方式で用いられている条件をなんら変えることなく、カラー画像やデジタル化などによる高画質への対応をはかるとともに、新たな問題として定着部材への画像支持体の巻き付き、発色性、透明性、走行性の低下を防止できることになる。また、画像支持体としては普通紙をはじめとして、トナー画像を定着部材から取り除くことが難しいOHPシートに対しても、その透明性を維持したままトナー画像の充分な定着性とオフセットの防止の両立をはたすことができる。さらに、最終的に画像支持体が廃棄される場合にも化学安定性が高く、安全性も充分確保されている熱溶融性樹脂と硬化性樹脂を用いているため、環境負荷の小さい材料として利用することができ、また画像支持体自体もリサイクルが可能なものとなる。さらに、本発明の画像支持体には、ボールペン、水性ペン、油性ペンなどによる書込みも十分可能であり、特にOHPシートとして有用性が大である。
【0037】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」は重量部を意味する。
参考例 1
<導電性下塗り層溶液>
水分散型アクリル樹脂(商品名「ジュイマーET-410」日本純薬社製) 14.2 部、二酸化スズ(商品名「SN-88 」石原産業社製 22.5 部、エチレンオキサイド系非イオン界面活性剤(商品名「EMALEX/NP8.5」日本エマルジョン社製 1.6部、純水 960部を十分混合攪拌し、導電性下塗り層溶液を作製した。
<画像支持体用基材の作製>
厚さ100 μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにコロナ放電処理を行い、上記組成の導電性下塗り層溶液をワイヤーバーで塗布し、120 ℃で1 分間乾燥を行い、膜厚約0.2 μmの導電層を設けた画像支持体用基材を作製した。
<熱溶融性樹脂(1) の合成>
下記の原料化合物を、撹拌棒、コンデンサー、窒素ガス導入管、及び温度計をセットしたガラス製2 リットルの四つ口フラスコに入れ、これをマントルヒーターにセットした。
ポリオキシエチレン(2.2)-2,2
- ビス(4- ヒドロキシフェニル) プロパン 380部
シクロヘキサンジメタノール 142部
テレフタル酸 380部
反応容器内を窒素ガスで置換した後、ジブチル錫オキシド1.0 部を加え、マントルヒータで加熱しながら窒素気流下で、約150 ℃で3〜4時間常圧反応を行い、次に220 ℃で約3時間減圧にて反応させた。重合度はASTMのE28-51T に準ずる軟化点により追跡を行ない、軟化点が120 ℃に達した時、反応を終了後室温まで冷却し、熱溶融性樹脂(ポリエステル樹脂)を得た。得られた熱溶融性樹脂(ポリエステル)のTgは57℃であった。
【0038】
<画像支持体(OHPシート)の作製>
得られた熱溶融性ポリエステル樹脂(1) 10部、熱硬化性シリコーン樹脂(商品名「PHC-587 」東芝シリコーン社製) 10 部、架橋型PMMAマット剤(商品名「MR-2G-20-5; 平均粒径:3μm 」総研化学社製)0.5 部にトルエン 80 部を加え、十分攪拌混合し、画像受像層用の塗布液を作製した。この塗布液を前記画像支持体用基材に、ワイヤーバーで膜厚が均一になるように塗工した。塗布後、130 ℃で60分間硬化反応させ、電子写真用画像支持体を作製した。受像層の膜厚は5 μmであった。画像支持体の表面抵抗率は25℃、65%RH の条件で1.0 ×1010Ωであった。可視域の透過率は90% 以上であり、十分透明性を確保した画像支持体であった。
この画像支持体を富士ゼロックス(株)製カラー複写機AColor935( 定着器部分はあらかじめ外してある) でベタ画像を含むカラー画像を印字し、画像支持体上に未定着状態の画像が形成されているサンプルを作製した。その後、この未定着状態の画像が形成されている画像支持体を定着器部分のみのオイルレス定着ベンチ( オイル供給システムの付いていない定着器オフラインベンチ) で、支持体の走行性、画像の定着性、カラー画像の発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を確認した。
画像支持体へのトナー定着性の評価は、上記電子写真装置にて定着された画像をX-Rite938 濃度計(X-Rite 社製) で測定した濃度が約1.8 のベタ画像部に、市販の18mm幅セロハン粘着テープ( ニチバン社製: セロハンテープ) を300g/cm の線圧で張り付け、10mm/sec. の速度で剥離した時の、剥離前の画像濃度に対する剥離後の画像濃度の比( 以下OD比と略す) を指標として評価した(OD 比= 剥離後の画像濃度/ 剥離前の画像濃度) 。電子写真用記録媒体としては、OD比で0.8 以上の画像形成材料の定着性が必要である。この結果は、表1 にまとめて示した。
【0039】
実施例1
<相溶化剤( シリコングラフトポリエステル) の合成>
攪拌装置、温度計、コンデンサー、エステルアダプター及び減圧装置を備えた容量1 リットルのガラス製フラスコに、テレフタル酸ジメチル196.6 部、無水フタル酸37.5部、2 、2 ージ(4ーヒドロキシプロポキシフェニル) プロパン285.5 部、エチレングリコール157.1 部、グリセリン23.3部及びテトラブチルチタネート0.33部を投入し、窒素気流下マントルヒータで加熱して、160 〜170 ℃で6 時間脱メタノール反応を行った。その際に、エステルアダプターで留去したメタノールは61.3部であった。
次に、1 時間かけて220 ℃まで昇温した後、220 〜240 ℃で20mmHgの減圧下で3 時間脱エチレングリコール反応を行った。留去したエチレングリコールは120.4 部であった。反応が終了した後、得られたポリマーを室温に冷却し、淡褐色で半透明な固体471.4 部を得た。GPC におけるポリスチレン換算の重量平均分子量は10,260、DSC(示差熱分析装置) によって求めたガラス転移点は67℃、環球法による軟化点は122 ℃であった。また、水酸基価(JISK 0070) は38.6mgKOH/g であった。次いで、攪拌装置、温度計及びコンデンサーを備えた容量1 リットルのガラス製フラスコに、前記合成例で得たポリエステルポリオール150 部及びトルエン300 部を投下して60℃で溶解した。次いで、ジブチル錫ジラウレート0.17部及び下記構造式(1) で表されるイソシアネート基含有オルガノポリシロキサン17.8部を添加し、窒素気流下70℃で5 時間反応させた。得られた反応液のIRスペクトル分析を行ったところ、反応前に観察されたNCO に起因する2260cmー1、1094cmー1、及び1260cmー1の吸収が観察されたところから、反応によって得られた物質は、オルガノポリシロキサンがグラフトしたポリエステルであることが確認された。反応液から溶媒であるトルエンをストリッピングして除去したところ、淡褐色で半透明な固体のシリコーングラフトポリエステル151.2 部を得た。得られたシリコーングラフトポリエステルのGPC におけるポリスチレン換算の重量平均分子量は11,500であり、環球法による軟化点は97℃、DSC によるガラス転移点は51℃であった。
【0040】
構造式(1)
【化1】
【0041】
<画像支持体の作製>
参考例1のポリエステル樹脂 10 部、光硬化性シリコーン樹脂(商品名「UVHC1103」東芝シリコーン社製 15 部、相溶化剤として上記シリコーングラフトポリエステル樹脂 5部、白色顔料として酸化チタン(和光純薬社製) 4.5部にトルエン 100部を加えてサンドミル分散機で十分攪拌し、画像受像層用の塗布液を作製した。この塗布液を電子写真用複写用紙( 富士ゼロックス製A4紙:J紙) にワイヤーバーで膜厚が均一になるように塗工した。塗布後、100 ℃で10分間乾燥し、その後紫外線照射装置で照射距離約20cm、120W/ cm2 のエネルギーを1分間照射し、硬化反応を行わせ、普通紙(J紙) 上に膜厚約6 μmの受像層を有する電子写真用画像支持体を作製した。作製した画像支持体はほとんど普通紙の白色度と変わらないものであった。
画像支持体の表面抵抗率は25℃、65%RH の条件で2.5 ×1010Ωであった。この画像支持体を参考例1と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0042】
実施例2
<熱溶融性樹脂(2) の合成>
下記の原料化合物を、熱溶融性樹脂(1) と同様の方法で、軟化点が115 ℃に達するまで反応させて熱溶融性ポリエステル樹脂(2) を得た。得られた樹脂(2) のTgは59℃であった。
ポリオキシエチレン(2.2)-2,2
- ビス(4- ヒドロキシフェニル) プロパン 410 部
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2
- ビス(4- ヒドロキシフェニル) プロパン 340 部
テレフタル酸 380 部
得られた熱溶融性ポリエステル樹脂(2) 10部、光硬化性シリコーン樹脂( 商品名「UVHC8553」東芝シリコーン社製) 12部、アミノ変性シリコーンオイル( 商品名「KF861 」信越化学社製) 18 部、相溶化剤としてシリコーンポリエステルワニス(商品名「XC93-1201 」東芝シリコーン社製)5 部、マット剤としてコロイダルシリカ( 商品名「R972」、日本アエロジル社製)1部を、トルエン200 部に入れて撹拌混合し、画像受像層用の塗布液を作製した。この塗布液を参考例1と同様に導電性層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルムに、ワイヤーバーで膜厚が均一になるように塗工した。塗布後、100 ℃で10分間乾燥させた後、光照射装置で照射距離約20cm、120W/ cm2 、1分間、光硬化反応を行わせ、膜厚約4.8 μmの受像層を有する電子写真用OHP画像支持体を作製した。画像支持体の表面抵抗率は25℃、65%RH の条件で1.2 ×1010Ωであった。可視域の透過率は、90% 以上であり十分透明性を確保した画像支持体であった。この画像支持体を参考例1と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0043】
比較例1
参考例1 の熱硬化性シリコーン樹脂を用いず、熱溶融性ポリエステル樹脂を20部を使用する他は、参考例1 と同様な方法により電子写真用画像支持体を作製した。また、受像層としての膜厚は4.5 μmであった。その表面抵抗率は25℃、65%RH の条件で2.5 ×1010Ωであった。この画像支持体を参考例1と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0044】
実施例 3
実施例2 における、光硬化性樹脂の代わりにナトコペイント製光硬化性シリコーン樹脂溶液( 固形分比 50wt%) 20 部を用い、マット剤として参考例1と同様のものを用い、溶媒として酢酸エチルを用いた他は実施例2と同様にして画像受像層用の塗布溶液を作製した。この塗布溶液を参考例1 と同様に導電性層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルムに上に、ワイヤーバー塗布し、80℃10分間乾燥した後、紫外線照射装置で照射距離約20cm、160W/cm の照射強度で30秒、紫外線照射することにより、膜厚5.7 μmの受像層を有する電子写真用OHP画像支持体を作製した。画像支持体の表面抵抗率は25℃、65%RH の条件で9.0 ×109 Ωであった。この画像支持体を参考例1と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0045】
比較例2
実施例3 の光硬化性樹脂溶液と相溶化剤を用いない他は、実施例3 と同様な方法により電子写真用画像支持体を作製した。膜厚5.5 μmの受像層を有する電子写真用OHP画像支持体を作製した。その表面抵抗率は25℃、65%RH の条件で1.3 ×1010Ωであった。この画像支持体を参考例1と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0046】
実施例4
実施例2 の画像支持体用溶液に、さらに反応性シリコン化合物(商品名「SIC-434 (10% 酢酸エチル溶液)」松本製薬社製 10 部を添加したほかは、実施例2 と同様の方法により画像支持体用塗布溶液を作製した。この溶液を実施例2 と同様の方法により、膜厚5.1 μmの受像層を有する電子写真用OHP画像支持体を作製した。表面抵抗は25℃、65%RH で3.3 ×1010Ωであった。この画像支持体を参考例1と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0047】
参考例1 の画像受像層用塗布溶液の代わりに、水分散ポリエステル樹脂(商品名「MD1200(Tg=67℃) 」東洋紡績社製 18 部、エチレンオキサイド系非イオン界面活性剤(商品名「EMALEX/NP8.5」日本エマルジョン社製)1.1 部、架橋型PMMAマット剤(総研化学社製) 0.4部、純水 980部からなる画像受像層用塗布溶液を用いる他は、参考例1 と同様な方法により画像支持体を作製した。受像層の膜厚は、4 μm であり、表面抵抗は25℃、65%RH で1.0 ×1010Ωであった。この画像支持体を参考例1と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0048】
実施例5
<画像支持体の作製>
熱溶融製樹脂としてスチレンーアクリル樹脂( 商品名「PSB2733 」三洋化成社製) 50部、熱硬化性シリコーン樹脂( 商品名「PHC587」: 東芝シリコーン社製) 30部、相溶化剤としてシリコーンアクリルワニス 20 部、可塑剤としてフタル酸ジオクチル 5部、マット剤(商品名「トスパール120」東芝シリコーン社製) 0.5部とを、トルエン400 部に入れて撹拌溶解し、画像受像層用塗布液を得た。この塗布溶液を参考例1 と同様の方法により導電性基材上に画像支持体を作製した。受像層の膜厚は、4.0 μm であり、表面抵抗は25℃、65%RH で2.3 ×1010Ωであった。この画像支持体を参考例1と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0049】
比較例4
実施例5 の熱硬化性シリコーン樹脂、相溶化剤及び可塑剤を用いない他は、実施例5 と同様な方法により電子写真用画像支持体を作製した。また、受像層としての膜厚は3.9 μm であった。その表面抵抗率は25℃、65%RH の条件で3.8 ×1010Ωであった。この画像支持体を実施例5 と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0050】
実施例6
<画像支持体の作製>
熱溶融性樹脂として、熱溶融性ポリエステル樹脂(1)50 部、熱硬化性樹脂としてポリイミド樹脂( 商品名「トレニース#3000 」: 東レ社製)30 部、可塑剤としてフタル酸ジオクチル5 部、マット剤( 商品名「トスパール145 」東芝シリコーン社製)0.5部とを、トルエン400 部に入れて攪拌溶解し、画像受像層用塗布液を得た。この塗布溶液を用い参考例1 と同様の方法により、導電性基材上に画像受像層を形成し、画像支持体を作製した。受像層の膜厚は3.2 μmであり、表面抵抗は25℃、65%RH で4.8 ×1010Ωであった。この画像支持体を参考例1 と同様の方法により支持体の走行性、画像の定着性、発色性、定着ロールへの巻き付き( 剥離性) 、定着ロールへのトナーのオフセット程度、透過率を測定し、画像支持体としての性能を評価し、その結果を表1 にまとめた。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
本発明の電子写真用画像支持体は、実施例からも明らかなように次のような優れた効果が認められた。
本発明は、熱溶融性樹脂と硬化性シリコーン樹脂を受像層中に含有する画像支持体を使って画像形成することにより、過去多くの知識や工夫が集積されている電子写真方式で用いられている条件をなんら変えることなく、カラー画像やデジタル化などによる高画質への対応をはかるとともに、あらたな問題として定着部材への画像支持体の巻き付き、発色性、透明性、走行性の低下を防止できる。また、画像支持体としては普通紙をはじめとしてOHPシートのいずれも使用可能である。 OHPシートの場合、トナー画像が溶融すると同時にトナー画像が載っていない部分のOHP画像支持体も溶融状態となるため、それらが定着部材に接着し、定着部材表面から取り除くことが難しいが、本発明のような受像層を有するOHPシートは、その透明性を維持しながらトナー画像の充分な定着性とOHPシートのオフセット防止を両立させることができる。さらに、最終的に画像支持体が廃棄される場合にも化学安定性が高く、安全性も充分確保されている受像層構成材料を用いているため、環境負荷の小さい材料として利用することができ、また画像支持体自体もリサイクルが可能なものとなる。
Claims (14)
- 少なくとも基材の片面上に画像受像層を有する電子写真用画像支持体において、該画像受像層が熱溶融性樹脂及び硬化性シリコーン樹脂並びに熱溶融性樹脂と硬化性シリコーン樹脂との相溶化剤を含有することを特徴とする電子写真用画像支持体。
- 熱溶融性樹脂が、画像形成材料が含有する樹脂と同種の樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 画像受像層が、0.1μm以上の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 硬化性シリコーン樹脂が水分、熱、光、又は電子線により硬化するものであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 硬化性シリコーン樹脂が、画像受像層中に80重量%以下の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 画像受像層が、変性シリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 画像受像層が、反応性シラン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 画像受像層が、可塑剤を含有していることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 基材が、紙又は透明プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 紙が、普通紙、コート紙、又は加工紙から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の電子写真用画像支持体。
- 基材上に導電層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 画像支持体がマット剤を含有する表面層を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 画像支持体が白色顔料を含有する表面層を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
- 画像支持体の25℃、65%RHにおける表面抵抗が1×108 〜1×1013Ωであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用画像支持体。
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