JP3702887B2 - カーボンチューブの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ーボンチューブの製造方法に関し、特に高収率でカーボンチューブを生成することができ、しかも得られたチューブに金属カーバイドが内包されたカーボンチューブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
60個、70個、76個、78個、82個あるいは84個の炭素原子が球状に結合してクラスター(分子集合体)を構成してなる球状炭素はフラーレン類と称され、磁性・超電導特性・非線形光学効果・触媒作用など優れた機能性を有する材料として注目されている。
【0003】
例えば、C60は正20面体の頂点を全て切り落として正5角形を出した「切頭20面体」と呼ばれる多面体構造(いわゆる公式サッカーボール型の分子構造)を有し、この多面体の60個の頂点を全て炭素原子Cで置換してなるクラスターである。そして、このフラーレンC60にCsとRbをドープすると33Kで超電導になることが確認されている。また、MBE(分子線エピタキシー)で成膜したフラーレンC60の薄膜(膜厚が200オングストローム)は、三次非線形光学効果の感受率が2×10−10esuと、従来の有機非線形光学材料より一桁ほど大きいことも確認されている。
【0004】
一方、このようなフラーレン類からなる円筒グラファイトシート構造のフィラメント(以下、カーボンチューブという)も報告されており(Japan Journal of Applied Physics,Vol.32 L170頁 1993年)、そのサイズやグラファイトシートの巻き方の違いなどによって、既存の物質にはない新しい優れた機能性(例えば、半導体から金属に至る幅広い電子物性)が期待されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この種のカーボンチューブは、気相中でベンゼン等の炭化水素を分解し、高真空の雰囲気中、数百〜千数百℃の高温で炭素化したものを鉄やニッケル等の電極フォイル上に析出させることにより得られることは知られている(Japan Journal of Applied Physics,Vol.11,445頁,1972年発行他)。また、フラーレン製造法として広く利用されているアーク放電法により、金属複合電極を用いてナノチューブを得る試みも行われている。しかしながら、このようなカーボンチューブの製造方法では、その収率は極めて低く、炭素付着物の中に埋もれているのが確認される程度に過ぎなかった。つまり、このような炭素付着物中に埋もれているカーボンチューブを取り出すのは極めて困難であり、仮に取り出したとしても、その収率は著しく低いという問題があった。
【0006】
また、金属カーバイドが大きなフラーレンに内包された構造は、例えばS.Ruoffら(Science,Vol.259,346−348頁,1993年発行)や、他の文献(Japan Journal of Applied Physics,Vol.32,280−282頁,1993年発行、Chem.Phys.Lett.Vol.209,99−103頁,1993年発行)によって報告されているが、この金属カーバイドがカーボンナノチューブに内包されたものは未だ発見されていない。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、金属カーバイドが内包されたカーボンチューブを高収率で製造することを目的とする。
【0008】
【発明の概要】
上記目的を達成するために、本発明のカーボンチューブの製造方法は、ランタン、バナジウム、ハフニウムまたはガドリニウムのいずれかの金属若しくはその金属の化合物を単体で、または前記金属若しくは前記金属化合物と易黒鉛化炭素との混合物を電極グラファイトに内填し、前記混合物を充填した前記電極グラファイトを焼成し、得られた電極を正極として減圧チャンバー内でアーク放電を行い、前記正極から負極へ前記ランタン、バナジウム、ハフニウムまたはガドリニウムのいずれかの金属カーバイドを含むカーボンチューブが含まれる堆積物を堆積させ、該堆積物から前記ランタン、バナジウム、ハフニウムまたはガドリニウムのいずれかの金属カーバイドを含むカーボンチューブを分離することを特徴としている。
【0009】
黒鉛化炭素と混合される金属若しくは金属化合物としては、ランタン、バナジウム、フニウム、ガドリニウムのいずれかの金属の単体、若しくはその金属の酸化物などの化合物である。
【0010】
また、易黒鉛化炭素としては、たとえばペリレンテトラカルボン酸などの炭化水素を700〜1500℃の高温で熱分解して得られたピッチ系炭素が用いられる。
金属または金属化合物と易黒鉛化炭素とは任意の混合比で混合されるが、金属または金属化合物は易黒鉛化炭素に対して数重量%〜10重量%の混合比で混合することが好ましいと言える。
【0011】
このようにして混合された金属含有炭素粉、または金属若しくは金属化合物を、高純度グラファイトロッドに穿設された穴に圧縮しながら詰め込み、そして、穿設された穴に詰め込まれた易黒鉛化炭素と金属あるいは金属化合物との混合物をカーバイド状態とするために、グラファイトロッドを高真空雰囲気中で800〜1500℃まで昇温し、この状態を数時間〜数十時間保持する。
【0012】
このグラファイトロッドを直流電源の正極に接続する一方で、負極に高純度グラファイトロッドを用いてアーク放電を行う。なお、負極の高純度グラファイトロッドに加工を施す必要はない。
このような正負2つの電極を水冷チャンバー内に対向して設け、水冷チャンバー内をヘリウムガスなどの不活性ガスで置換し、数10〜500Torr、好ましくは150〜250Torrに減圧した状態でアーク放電を行う。
【0013】
そうすると、フラーレンからなるカーボンチューブは、高純度グラファイトにより構成された負極に堆積することになる。負極には、カーボンチューブ以外の堆積物も堆積するが、これら堆積物からカーボンチューブのみを分離する手段としては、遠心分離法などの手段を例示することができる。
【0014】
金属としてバナジウムVを用い、上述した手順でカーボンチューブを生成し、負極に堆積した物質表面を走査電子顕微鏡で観察した。その結果を図2および図3に示すが、目的とするカーボンチューブは外径が1μm〜5μm、長さが20μm以上のロッド状またはニードル状である。
【0015】
また、金属としてランタンLaを用い、同様に上述した手順でカーボンチューブを生成し、負極に堆積した物質を走査電子顕微鏡で観察した。その結果を図5〜図7に示すが、目的とするカーボンチューブは外径が1nm〜10nmであり、チューブの長さが20μm前後の長いもの得られた。また、酸化ランタンを用い、ピッチカーボンの比率を増して得られたカーボンチューブでは、図10または図11の写真で観察されるように、あたかも神経ネットワーク状になったり、あるいは、まっすぐに伸び、しかも部分的にさらに厚くグラファイト構造で巻かれた構造をしている。
【0016】
このカーボンチューブのX線回折(CuKα)を測定すると、グラファイト構造に特有の(002)面の回折線が強く観察され、このピークは面間隔d=3.33オングストローム、およびd=3.43オングストロームに対応する2つのピークから構成されていることが判明した。したがって、得られたカーボンチューブは少なくとも2つのグラファイト構造を採ることが理解される。
【0017】
すなわち、一方のグラファイト構造(d=3.33オングストローム)は用いられた金属の触媒作用により形成される結晶グラファイトに近似した構造であり、他方のグラファイト構造(d=3.43オングストローム)は成長したカーボンチューブの表面に付着したカーボンプラズマが熱的に再配向することにより形成されるターボスタチックABC…構造のグラファイトであると考えられる。
【0018】
ここで、一方のグラファイト構造(d=3.33オングストローム)が金属の触媒作用により形成される点を確認するために、図7に示すカーボンチューブにつき、EDX(Energy Dispersive X−ray)法で金属分析を行った。その結果、カーボンチューブの途中には金属が観察されずに炭素のX線のみが観察されるが、カーボンチューブの先端では金属が豊富に観察された。したがって、このようなカーボンチューブは金属の触媒作用によって成長したと考えられる。
【0019】
また、図2,3,5〜8,10,11に示す写真からも明らかなように、本発明の製造方法により得られるカーボンチューブは従来のように炭素付着物の中に埋もれてはおらず、炭素付着物の表面に多量に生成されている。したがって、カーボンチューブを多量に製造できるだけでなく、電子物性等の評価を可能にするので工業的応用の活発化が期待できる。
【0020】
これは、単に炭素と金属との混合物を固めて焼成しただけでは導電性が低く、カーボンチューブの生成にとって良好なアーク放電による炭素および金属の蒸発は得られない。しかしながら、本発明の製造方法によれば、正極を構成するグラファイトロッドの外側が金属と同程度の導電性を有するグラファイト構造であるため、アーク放電を行うと、金属と易黒鉛化炭素との混合物はグラファイトほど導電性が高くないものの、外周部のグラファイトのアーク放電によって蒸発が促進される。そのため、グラファイトに充填された炭素金属混合物も良好なアーク放電による蒸発条件となり、これによってカーボンチューブが高収率で生成されるものと考えられる。
【0021】
また、このようにして得られたカーボンチューブを透過電子顕微鏡で観察すると、図8(A)に示すようにカーボンチューブの空洞内に結晶が観察され、この結晶は、図9に示すX線回折パターンからα−LaC結晶であることが判明した。すなわち、本発明の製造方法で得られたカーボンチューブには、α−LaCやVなどの金属カーバイド単結晶が内包されている。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例に係る炭素材料の製造装置を示す構成図である。
まず図1に示すように、本発明に係るカーボンチューブの製造装置においては、SUS製チャンバー1内には正負2つの電極2,3が対向して配設されており、このチャンバー1にはヘリウムなどの不活性ガスを供給する系4と、チャンバー内を減圧するための真空ポンプが接続された系5とが設けられている。また、図示はしないがチャンバー1はウォータジャケットなどによって冷却されるようになっている。
【0023】
SUS製チャンバー1内に配設された2つの電極2,3のうち、負極2に用いられているのは外径が5〜10mmの高純度グラファイトロッドである。本実施例では外径が10mm、純度が99.9999%のグラファイトロッドを負極に用いた。
【0024】
一方、正極3として用いられているのは、高純度グラファイトロッド3aの中心に穴を穿設し、この穴に金属含有炭素粉末3bを詰め込んだ電極である。すなわち、高純度グラファイトロッド3aの中心にドリル等を用いて内径が4〜8mmの穴を形成し、この穴に易黒鉛化炭素と金属あるいは金属化合物との混合物3bを金属棒等を用いて圧縮しながら詰め込む。金属あるいは金属化合物と混合する易黒鉛化炭素はピッチ系炭素であり、これを700〜1500℃の高温で焼成した粉末を用いる。また、易黒鉛化炭素と金属あるいは金属化合物との混合比は特に限定されないが、金属あるいは金属化合物は易黒鉛化炭素に対して好ましくは数重量%〜10重量%である。そして、穿設された穴に詰め込まれた易黒鉛化炭素と金属あるいは金属化合物との混合物3bをカーバイド状態とするために、グラファイトロッド3を高真空雰囲気中で800〜1500℃まで昇温し、この状態を数時間〜数十時間保持する。
【0025】
本実施例では、外径が10mm、純度が99.9999%の高純度グラファイトロッド3aの中心に、内径が4〜8mmの穴を深さ約10cmに穿設し、この穴にペリレンテトラカルボン酸(3,4,9,10−perylenetetracarboxylic dianhydride)を900〜920℃で焼成して得られたピッチカーボンと下記の金属とを下記の混合比(重量比)で混合した混合物3bを圧縮しながら詰め込んだ。
【0026】
〔実施例1〕金属バナジウム :ピッチカーボン=1:5
〔実施例2〕金属ランタン :ピッチカーボン=1:5
〔実施例3〕酸化ランタン :ピッチカーボン=1:9
〔実施例4〕金属ハフニウム :ピッチカーボン=1:9
〔実施例5〕酸化ハフニウム :ピッチカーボン=1:5
〔実施例6〕金属ガドリニウム:ピッチカーボン=1:5
〔実施例7〕酸化ガドリニウム:ピッチカーボン=1:5
そして、このグラファイトロッド3を石英管に入れ、内部を高真空にしたのち、900℃×3時間加熱して炭素と金属との混合物をカーバイド状態とし、これを正極に用いた。
【0027】
このようにして作製した正負の電極2,3をチャンバー1内に配設した後、チャンバー内部を0.01Torr程度の真空状態とし、その後、Heなどの不活性ガスで置換しながら内部を数十〜400Torr、好ましくは100〜250Torr、または数十〜200Torr、好ましくは80〜150Torrに減圧する。本実施例では不活性ガスとしてヘリウムガスを用い、真空ポンプによる数回のポンピングとヘリウムガスのバックフィリングを繰り返すことにより、チャンバー内を80〜200Torrの圧力で密封した。
【0028】
2つの電極2,3間でアーク放電を行うために、最初はコンタクトアーク方法を用い、次に2つの電極を約10mm程度離し、両電極間には直流電源6から、本実施例の場合、約100Aの電流を流した。
そうすると、両電極2,3間にアーク放電が生じ、これにともなって負極のグラファイト電極の表面に銀白色の付着物と、黒色の付着物とが成長した。この負極への銀白色の付着物の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEMとしては、本実施例では日立(株)製S−800を用いた。
【0029】
なお、両電極2,3間のアーク放電に際しては、電極3の高純度グラファイトロッド3a(導電性が高い)から電極2へ向けて、盛んにアーク放電現象が生じ、電極3の中央部分の混合物3bでは、グラファイト程導電性が高くないものの、周りのグラファイトのアーク放電により蒸発が助けられる様子が確認された。
【0030】
実施例1
図2および図3は金属バナジウム(V)を用いた実施例1の炭素付着物の表面に成長したカーボンファイバーのSEM写真であり、外径が1μm〜5μm、長さが数十μmに及ぶロッド状または先端鋭利なニードル状のカーボンチューブが観察された。これらカーボンチューブは、負極の銀白色堆積物表面の凹部表面に観察された。なお凸部表面には、半球状粒が多く観察された。これらの点から、カーボンチューブの生成には、堆積速度も関係してくると考えられる。図2には長さが数μmのものから20μm程度のものまで混在しており、図3には長さが35μmにまで及ぶカーボンチューブが示されている。
【0031】
また、このようなカーボンチューブの表面を原子間力顕微鏡により解析すると、カーボンチューブの成長方向に対する垂直方向に「しわ」が観察され、さらに原子オーダで詳細にイメージングすると表面にグラファイト構造が存在することが直接的に確認された。
【0032】
このようにして得られたカーボンチューブのX線回折パターンを測定すると、図4に示すようにグラファイト構造に特有のピークに相当する結晶面(002),(100),(004),(110),(006)の他に、バナジウムカーバイドVの結晶に特有の(222),(400),(440),(622),(444),(800)の各結晶面が確認された。
【0033】
さらに、EDX分析により、図2、3に示すカーボンチューブを観察すると、バナジウム(V)原子は、主としてチューブの先端に存在することが確認された。V原子がチューブの生成に関与していると考えられる。
実施例2
図5〜7は金属ランタンを用いた実施例2の炭素付着物の表面のSEM写真であり、外径が1μm程度、長さが数十μm(約20mm)に及ぶロッド状または先端鋭利なニードル状のカーボンチューブが観察された。しかもこの場合には、カーボンチューブの外径が一定ではなく、例えば炭素付着物の表面に成長したμオーダのカーボンチューブから0.1μm以下の極めて細いカーボンチューブが伸延し、さらにその先端にμオーダのカーボンチューブが成長しているものも観察された。なお、図6、7は、図5の要部拡大写真であり、図6は図5に示すカーボンチューブの成長の始点を示し、図7はチューブの先端部分を示す。
【0034】
また、このようにして得られたカーボンチューブを透過電子顕微鏡で観察すると、図8(A)に写真で示すように、カーボンチューブの空洞内に結晶構造が確認され、これのX線回折パターンを測定すると、図9に示すようにグラファイト構造に特有のピークに相当する結晶面(002),(100),(004),(110),(006)の他に、ランタンカーバイドα−LaCの結晶に特有の(110),(200),(103),(222)の各結晶面が確認された。また、カーボンチューブに限らず、図8(B)に示すようなジャイアントフラーレンに内包された金属カーバイドも確認された。
【0035】
実施例3
酸化ランタンを用い、正極に詰め込む金属含有炭素粉の金属量を増加させてカーボンチューブを製造した実施例3では、図10、11に示すように、外径がμオーダ以下、すなわちナノメータサイズのカーボンチューブが多量に製造された。図10に示される細い「蜘蛛の糸」状のフィラメントがカーボンチューブ、特にカーボンナノチューブである。また、図11では実施例2と同様に、炭素付着物の表面に成長したμオーダのカーボンチューブから0.1μm以下の極めて細いカーボンチューブが伸延し、さらにその先端にμオーダのカーボンチューブが成長しているものも観察された。そして、EDX分析から、チューブの先端は金属ランタンがリッチとなっているので、このようなカーボンチューブは金属の触媒作用によって成長したと考えられる。
【0036】
実施例4
本実施例では、ピッチカーボンと共に、電極グラファイトに内填する金属として、金属ハフニウム(Hf)を用い、金属ハフニウム:ピッチカーボンの混合比(重量比)を1:5とし、チャンバー内のヘリウムガスの圧力を、150Torrとした以外は、前記実施例1と同様にして、20〜150nm程度の外径のカーボンチューブを製造した。
【0037】
図12〜19は、本実施例の方法により得られたカーボンチューブのX線透過電子顕微鏡写真である。これら図に示すように、カーボンチューブの長手方向空洞内には結晶構造が確認された。これのX線回折パターンを測定すると、図20に示すように、グラファイト構造に特有のピークに相当する結晶面(002),(100),(004)の他に、ハフニウムカーバイド(HfC)の結晶に特有の(111),(200),(220),(311),(222),(400),(331),(420)の各結晶面が確認された。
【0038】
また、このカーボンチューブのX線回折(CuKα)を測定すると、グラファイト構造に特有の(002)面の回折線が強く観察され、このピークは面間隔d=3.35オングストローム、およびd=3.44オングストロームに対応する2つのピークから構成されていることが判明した。したがって、得られたカーボンチューブは少なくとも2つのグラファイト構造を採ることが理解される。
【0039】
すなわち、一方のグラファイト構造(d=3.35オングストローム)は用いられた金属の触媒作用により形成される結晶グラファイトに近似した構造であり、他方のグラファイト構造(d=3.44オングストローム)は成長したカーボンチューブの表面に付着したカーボンプラズマが熱的に再配向することにより形成されるターボスタチックABC…構造のグラファイトであると考えられる。
【0040】
本実施例では、図12〜19に示すように、20〜150nmの様々な太さのカーボンチューブの成長が存在するが、その成長点には、ハフニウムカーバイドの微粒子が存在する。
従来、炭化水素のピロリシスなどで得られていたVGCF(Vapour growth carbon fiber)などでは、図21(B)に示すように、鉄10などの成長は、カーボンチューブ12の先端に位置し、その太さにより、カーボンチューブ12の太さが規定されていた。ところが、本実施例の方法で得られるカーボンチューブでは、図12〜19および図21(A)に示すように、カーボンチューブ14の内径は、ハフニウムカーバイド16の太さとは、無関係である。この点が、他の金属を用いたカーボンチューブの成長と異なる点である。
【0041】
実施例5
本実施例では、ピッチカーボンと共に、電極グラファイトに内填する金属として、酸化ハフニウムを用い、酸化ハフニウム:ピッチカーボンの混合比(重量比)を1:5とし、チャンバー内のヘリウムガスの圧力を、100Torrとした以外は、前記実施例1と同様にして、10〜150nm程度の外径のカーボンチューブを製造した。
【0042】
酸化ハフニウムを用いた場合でも、金属ハフニウムを用いた前記実施例4の場合と同様なカーボンチューブが得られることが確認された。
実施例6
本実施例では、ピッチカーボンと共に、電極グラファイトに内填する金属として、金属ガドリニウム(Gd)を用い、金属ガドリニウム:ピッチカーボンの混合比(重量比)を1:5とし、チャンバー内のヘリウムガスの圧力を、100Torrとした以外は、前記実施例1と同様にして、5〜200nm程度の外径のカーボンチューブを製造した。
【0043】
図22〜24は、本実施例の方法により得られたカーボンチューブのX線透過電子顕微鏡写真である。これらの図に示すように、カーボンチューブの長手方向空洞内には結晶構造が確認された。カーボンチューブのX線回折(CuKα)を測定すると、グラファイト構造に特有の(002)面の回折線が強く観察され、このピークは面間隔d=3.35オングストローム、およびd=3.44オングストロームに対応する2つのピークから構成されていることが判明した。したがって、得られたカーボンチューブは少なくとも2つのグラファイト構造を採ることが理解される。
【0044】
すなわち、一方のグラファイト構造(d=3.35オングストローム)は用いられた金属の触媒作用により形成される結晶グラファイトに近似した構造であり、他方のグラファイト構造(d=3.44オングストローム)は成長したカーボンチューブの表面に付着したカーボンプラズマが熱的に再配向することにより形成されるターボスタチックABC…構造のグラファイトであると考えられる。
【0045】
本実施例では、図22〜24に示すように、5〜200nm程度の様々な太さのカーボンチューブの成長が存在するが、カーボンチューブの空洞内には、ガドリニウムカーバイド(Gdまたはα−GdC(強磁性))が長手方向に沿って詰まっている。これら2種類のカーバイドが存在することはX線回折により確認された。ただし、このガドリニウムカーバイドは、長手方向途中で、一部切れていることもある。また、図24に示すように、カーボンチューブに限らず、ジャイアントフラーレンに内包されたガドリニウムカーバイドも確認された。
【0046】
従来、炭化水素のピロリシスなどで得られていたVGCF(Vapour growth carbon fiber)などでは、図21(B)に示すように、鉄10などの成長は、カーボンチューブ12の先端に位置し、その太さにより、カーボンチューブ12の太さが規定されていた。ところが、本実施例の方法で得られるカーボンチューブでは、図22〜24に示すように、カーボンチューブ内には、ガドリニウムカーバイドが長手方向に沿って詰まっている。ただし、このガドリニウムカーバイドは、長手方向途中で、一部切れていることもある。この点が、他の金属を用いたカーボンチューブの成長と異なる点である。
【0047】
なお、ガドリニウムカーバイドの詰まったジャイアントフラーレンは、論文レベルでは報告されているが、磁性体として注目されているガドリニウムカーバイドが詰まったカーボンチューブは、全く新規であり、その形状から期待できる特異な磁気特性が注目される。
【0048】
実施例7
本実施例では、ピッチカーボンと共に、電極グラファイトに内填する金属として、酸化ガドリニウムを用い、酸化ガドリニウム:ピッチカーボンの混合比(重量比)を1:9とし、チャンバー内のヘリウムガスの圧力を、100Torrとした以外は、前記実施例1と同様にして、5〜150nm程度の外径のカーボンチューブを製造した。
【0049】
酸化ガドリニウムを用いた場合でも、金属ガドリニウムを用いた前記実施例6の場合と同様なカーボンチューブが得られることが確認された。
なお、以上説明した実施例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施例に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、外径がマイクロサイズからナノサイズ、長さが数十μmにまで及ぶ種々のカーボンチューブであって、しかも金属カーバイドが内包されたカーボンチューブを、多量に、しかも取り出し易く製造することができる。本発明の方法により製造されたカーボンチューブは、磁性材料,超電導材料,非線形光学材料,触媒など広い分野への応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るカーボンチューブの製造装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施例1により得られた堆積物の表面構造を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の実施例1により得られた堆積物の表面構造を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の実施例1により得られた堆積物のX線回折パターンである。
【図5】本発明の実施例2により得られた堆積物の表面構造を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例2により得られた堆積物の表面構造を示す走査電子顕微鏡写真(図5の拡大写真)である。
【図7】本発明の実施例2により得られた堆積物の表面構造を示す走査電子顕微鏡写真(図5の拡大写真)である。
【図8】(A)および(B)は本発明の実施例2により得られた堆積物の表面構造を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例2により得られた堆積物のX線回折パターンである。
【図10】本発明の実施例3により得られた堆積物の表面構造を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図11】本発明の実施例3により得られた堆積物の表面構造を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図12】本発明の実施例4により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図13】本発明の実施例4により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図14】本発明の実施例4により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図15】本発明の実施例4により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図16】本発明の実施例4により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図17】本発明の実施例4により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図18】本発明の実施例4により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図19】本発明の実施例4により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図20】本発明の実施例4により得られたカーボンチューブのX線回折パターンである。
【図21】(A)は本発明の実施例4により得られたカーボンチューブの概略断面図、(B)は参考例により得られたカーボンチューブの概略断面図である。
【図22】本発明の実施例6により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図23】本発明の実施例6により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図24】本発明の実施例6により得られたカーボンチューブを示す透過電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1…チャンバー
2…負極電極(グラファイトロッド)
3…正極電極
3a…グラファイトロッド
3b…金属含有炭素粉
6…直流電源
14…カーボンチューブ
16…ハフニウムカーバイド

Claims (6)

  1. ランタン、バナジウム、ハフニウムまたはガドリニウムのいずれかの金属若しくはその金属の化合物と易黒鉛化炭素との混合物を電極グラファイトに内填し、前記混合物を充填した前記電極グラファイトを焼成し、得られた電極を正極として減圧チャンバー内でアーク放電を行い、前記正極から負極へ前記ランタン、バナジウム、ハフニウムまたはガドリニウムのいずれかの金属カーバイドを含むカーボンチューブが含まれる堆積物を堆積させ、該堆積物から前記ランタン、バナジウム、ハフニウムまたはガドリニウムのいずれかの金属カーバイドを含むカーボンチューブを分離する
    カーボンチューブの製造方法。
  2. 前記負極として、高純度グラファイトを用いる
    請求項1に記載のカーボンチューブの製造方法。
  3. 記金属カーバイドがバナジウムまたはランタンを含むとき、前記カーボンチューブの形状がロッド状またはニードル状である
    請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  4. 記金属カーバイドが前記カーボンチューブの先端に存在する
    請求項1に記載のカーボンチューブの製造方法。
  5. 前記易黒鉛化炭素として、ピッチカーボンを用いる
    請求項1に記載のカーボンチューブの製造方法。
  6. 前記減圧チャンバー内の圧力が数10〜500Torrである
    請求項1に記載のカーボンチューブの製造方法。
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