JP3697414B2 - 2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物およびその製法 - Google Patents
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Description
本発明は、飛散性が著しく抑制された2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物およびその製法に関する。
背景技術
2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸は顔料や染料の中間体として重要であり、これを製造するには一般にまずβ−ナフトールを水酸化ナトリウムと反応させてβ−ナフトールナトリウムとし、次にこれを加圧下に二酸化炭素と反応させて2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸のナトリウム塩とし、鉱酸を加えて酸析分離する方法が知られている。
β−ナフトールナトリウムと二酸化炭素の反応としては、古くからいわゆるコルベ・シュミット反応と呼ばれる固気相反応が用いられてきたが、この反応は50時間以上の長い反応時間を必要とすること、高温での反応の熱的不均一性のためにβ−ナフトールの損失が多いこと、反応中の相変化のため反応を抑制し難く、安定した収率を得ることが困難であるなどの問題があり、これを改良するため、反応媒体を用いる方法など数多くの方法が提案されてきた。
本発明者の一人は既に軽油または灯油、β−ナフトールナトリウムおよびβ−ナフトールから成る液状混合物と二酸化炭素とを反応させる方法を発明し(特公昭56−53296号公報参照)、これは現在工業的に実施されている。この方法は連続化が可能であり、不純物の含有量が極めて少なく、品質のバラツキの極めて少ない2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸を提供することができる。この方法によると、例えば融点220〜221℃、純度99.5%、β−ナフトールナトリウム含有量0.03%のような高品質の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸が得られる。2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸は酸析、濾過、遠心分離などの操作によって母液より分離され、水洗後、乾燥して顔料や染料の中間体として使用される。
2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の結晶は一般に非常に微細なものが含まれていて飛散性が強い。その上2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸には強い粘膜刺激性があるために取り扱い上大きな支障を与える。例えば2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸を顔料や染料の中間体として仕込む時に2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸を反応タンクに投入すると、微粉末状の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸が粉塵となって舞い上がる。空気中に舞い上がった2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の微粉末はなかなか沈降せず、広範囲に浮遊し、環境を汚染し、作業者の皮膚、粘膜を刺激して不快感を与える。このような仕込み時の作業性や安全性の問題を軽減するため、作業者が防塵眼鏡や防塵マスクを着用したり、反応タンクの原料仕込み口とは別の口から吸収脱気し、フィルタで微粉末を捕集したりする方法が行われているが完全ではない。
2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の飛散性が強いのは、これが非常に微細な結晶を含むためと、ほとんど水に溶解せず、吸湿等の現象がほとんど起こらず、個々の結晶粒子が付着水を介して凝集、結合することがないため、外からの衝撃に対して独立した個々の微細の粒子として運動し易いことによると考えられる。
また微細な2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体は溶媒中に添加した際には粒子同士が凝集してダマ(塊)を形成するため、溶解性が悪くなり作業に支障を来たすという問題があった。
このような性状を有する物質の飛散性を抑えるために特開昭59−196841号では、特定の粒度特性を有し、水分含量が13〜30%に調整された2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体を混練し、押出し式の造粒機で造粒した後乾燥する、湿式の押出し造粒法が提案されている。しかしながら、この方法で得られた顆粒剤は個々の粒子の結合力が弱く、輸送時や転送時等に顆粒が崩壊し、元の小粒子径の粒子に戻り飛散するという不具合が生じることがあった。
また、この方法では顆粒化のために2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の乾燥粉体に所定量の水を加えたり、酸析した2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸を遠心分離等によって水分調整を行う必要性があり、製造工程が煩雑となり大量生産には不向きであった。
一方、医薬品などの製造工程においては、主薬粉末に、デキストリン、澱粉、カルボキシメチルセルロース等の結合剤を水やアルコール等の溶剤と共に添加し、混練、造粒することにより良好な顆粒剤を製造することが提案されている。しかしながら、2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の製造工程において、これらの結合剤を添加すると、高純度の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸が得られず、このような2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸を基にアゾ顔料やポリマー等を合成すると、色調の悪化や成形品の劣化等をもたらすという問題があった。
したがって、本発明は上記課題を解決し、飛散性が著しく抑制された2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸造粒物を得ることを目的とする。
発明の開示
本発明は、平均粒子径が150μm以上であり、硬度が70〜3000gであることを特徴とする、2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物を提供する。このような特性を有する2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物は、飛散性が著しく抑制され、取り扱いが容易となり、環境汚染や人体への影響が極めて軽減される。しかも、この2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物はかなり強い衝撃を与えても、元の微粉末状の粒子に戻ることはなく、輸送時等に崩壊することが抑制される。さらに、平均粒子径が150μm以上でありながら、従来の小粒子径(40〜70μm)のものと比べて同等以上の溶解特性を示し、顔料や染料の中間体として好適に利用される。
本発明の造粒物は、2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体を乾式圧縮して成形物を得、これを粉砕、分級することによって、好適に調製することができる。従って、かかる調製方法もまた、本発明の範囲に含まれる。
定義
平均粒子径
平均粒子径は以下のように測定したものをいう:
予め重量を測定した造粒物を、目開き1180μm、500μm、297μm、180μm、106μmおよび74μmのメッシュスクリーンにてこの順に篩い、メッシュ上の残存量を測定する。まず最初に、全量を1180μmのメッシュにて速度230rpmで10分間、篩う。メッシュ上の残存量を測定し、最初の重量に対する重量%を求める。一方、メッシュを通過した造粒物の全量を、500μmのメッシュで同様にして篩う。これを順次繰り返し、最後に74μmのメッシュを通過した造粒物の量を測定する。得られた結果から以下の式により平均粒子径を求める:
平均粒子径(μm)=(1180×1180μmメッシュ上残存部%/100)+(500×500μmメッシュ上残存部%/100)+(297×297μmメッシュ上残存部%/100)+(180×180μmメッシュ上残存部%/100)+(106×106μmメッシュ上残存部%/100)+(74×74μmメッシュ上残存部%/100)+(45×74μmメッシュ通過分%/100)
硬度
簡易粒体硬度計を用いて測定する。試料の中心に先端1mmφの円錐台型押し棒を当接させて加重をかけ、試料が破砕する加重を硬度とする。
摩損度試験器による粉化率
造粒物の粉化しやすさを測定するものである。各試料10gを採取し、60Mのメッシュスクリーン(目開き0.25mm)にて、1分間230rpmの速度で篩別する。メッシュ上に残った造粒物を、内部の直径27cm、厚さ4cmである摩損度試験器にて3分間、25回転/分の衝撃を与えた後、再度60Mのメッシュスクリーンにて1分間篩別する。衝撃を与える前の造粒物のメッシュ上の残存量をW1、衝撃を与えた後のメッシュ上残存量をW2とし、粉化率は下記式で示される:
粉化率(%)=(W1−W2)/W1×100
安息角、ゆるみ見掛け比重、固め見掛け比重は、ホソカワミクロン社、パウダーテスター(PT−N型)を用い、テスターに付属の説明書に記載の方法にて測定されるものである。
安息角
標準篩(10メッシュ)上でサンプルを振動させ、ロートを通じ、注入法により測定する。
ゆるみ見掛け比重
篩上でサンプルを振動させ、シュートを通して落下させ、規定の容器に受けて測定する。
固め見掛け比重
規定の容器にサンプルを入れ、一定の高さから規定回数タッピングさせ、タッピングの衝撃で固めた後に測定したものである。
圧縮度
圧縮度は、ゆるみ見掛け比重と固め見掛け比重から以下の式にて求められる値である:
(固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重×100
本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物は、上記により測定される平均粒子径150μm以上のものであるが、好ましくは297〜2000μm、より好ましくは350〜1600μmであるのがよい。平均粒子径が150μm未満であると十分な飛散抑制効果を得ることができなくなり、また溶解時にダマを形成しやすく溶解速度が遅くなる。平均粒子径が2000μmを超えると飛散抑制効果は優れるものの、溶解速度が遅く作業効率が悪くなる傾向がある。
本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物は、74μmのメッシュを通過する粒子の割合が14重量%以下、好ましくは6重量%以下であることが望ましい。74μmのメッシュを通過する小粒子径粒子の割合が14%を超えると、飛散しやすくなる。
本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物の硬度は、70〜3000gであり、より好ましくは100〜1000gであるのがよい。硬度が70g未満であると、造粒物が容易に崩壊しやすくなるため、輸送時等に粉化し、飛散の原因となる。硬度が3000gを超えると結合力が強くなりすぎて溶解しにくくなり、作業に支障を来すおそれがある。
本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物は、多少の振動や衝撃等を加えても粉化しない強度を有しているものが好ましい。この強度を表わす指標である摩損度試験器による粉化率が3%以下のものが、搬送性、取り扱い性において優れた性能を示すため、特に好ましい。
本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物は、溶解速度の点においても優れた特性を有するものである。2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸は従来から水等にほとんど溶解しないことは知られ、特に結晶径の大きなものは溶解速度が遅いため、顔料や染料を製造する際に取り扱い上不便であることも知られている。しかしながら、以下に述べる本発明の製造方法、すなわち乾式破砕造粒法によって得られた造粒物は、意外にも湿式の押出し造粒法によって得られた2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の顆粒に比べて優れた溶解特性を示し、従来の小粒子径(40〜70μm)の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体と同等以上の溶解特性を有している。
これは2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸を溶解するのに際し、本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸造粒物は溶媒中での粒子間の結合力が弱くなり粒子間の空隙に容易に溶媒が浸入し、結合力が消滅した結果、粒子が個々に分離し、全体的に分散性がよくなるためであると考えられる。一方、水を結合剤として製造した従来技術の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の顆粒は、溶媒中においても表面張力によって強い結合力が作用し、溶媒が粒子間に浸入しにくいものである。また小粒子径の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体は粉体自体は一定の溶解特性を有するものの溶媒中でダマ(塊)を形成しやすく溶解特性が低下することがあった。
より詳細には、本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物10gを常温で5%水酸化ナトリウム104gに溶かした時の溶解時間は20分以下、作業性の点からより好ましくは15分以下である。これは、従来の湿式の押出し造粒によって得られた2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の顆粒や従来の小粒子径の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体と比べて格段に優れている。
また、本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物の安息角は35〜45度、好ましくは37〜43度であるのがよい。この安息角の値は、造粒物の粒子径が大きくなったことにより、流動性が改善され取り扱い性が良くなったことを示す。
本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸造粒物のゆるみ見掛け比重は0.6〜0.85g/cc、好ましくは0.7〜0.8g/ccがよい。また固め見掛け比重は0.73〜0.88g/ccがよく、好ましくは0.78〜0.85g/ccがよい。
さらに本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸造粒物は
(固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重×100
で表わされる圧縮度が10%以下、好ましくは7%以下のものがよい。従来提供されている小粒子径の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の圧縮度は20〜50%と高く、ゆるみ見掛け比重と固め見掛け比重の差が大きいことを示す。これは2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の粒子を一定の容器に詰めた際、粒子間に空隙がかなり存在することを表わす。これに対し、本発明の造粒物は圧縮度が10%以下と低く、容器に振動、衝撃等のタッピングを与えなくても造粒物間の空隙は少なく、充填性が改善されるものである。
本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物は、帯電量が0.02μC/g以下であることが好ましく、これにより容器やビニール袋等への静電気による付着が軽減され作業性が向上する。
本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸造粒物は、2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体を乾式圧縮した後に破砕、分級して得ることができる。原料となる2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体は、従来いずれの方法で得られたものであってもよく、例えば特公昭56−53296号に記載のコルベ・シュミット法などにより生産した2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸アルカリ金属塩を、例えば80〜100℃で酸析分離した後、必要により精製して2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸を製造することができる。酸析工程で使用される酸は特に限定されないが、無機酸もしくは有機酸が用いられる。無機酸としては例えば、塩酸、フッ化水素酸のような二元酸(水素酸)、硝酸、硫酸、リン酸、過塩素酸のようなオキソ酸が挙げられ、有機酸としてはギ酸、酢酸またはフェノール等が挙げられる。これらの酸により酸析工程はpH1〜4に調整されるのがよい。
得られた2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体を乾式圧縮により成形物を得、これを粉砕して分級することにより、本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物を得ることができる。
一般に「造粒」とは、粉体、溶融液、水溶液などからほぼ一定の形と大きさをもつ粉状物を作り出す操作のことをいい、その造粒には、押し出し造粒、噴霧乾燥造粒、破砕造粒、転道造粒、攪拌造粒、流動層造粒等の方法があるが、本発明においては、得られた2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体を圧縮機を用いて圧縮して成形物を得、これを粉砕、分級して造粒物を得る方法、一般に乾式破砕造粒と呼ばれる方法により、本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物を好適に得ることができる。
乾式圧縮に際しては、圧力0.2〜2.0ton/cmの機械圧縮が採用される。圧力が0.2ton/cm未満であると、得られた造粒物の結合力が低く、容易に崩壊してしまうおそれがある。圧力が2.0ton/cmを超えると、造粒物の結合力が強くなりすぎ、溶解性が悪くなる。圧縮時に用いるロールとしては、波型ロールまたは平滑スリットロールが好適に用いられる。
機械圧縮によって得られた成形物は、解砕機によって粉砕された後、分級することによって所定の粒度特性を有する2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物が製造される。解砕機としては、ロール式粉砕機、媒体式粉砕機、気流式粉砕機、剪断・磨砕式粉砕機等、様々な粉砕機を用いることができるが、特にハンマー型高速回転衝撃式粉砕機が好適に用いられる。
次いで粉砕された造粒物を分級する。分級は、通常よく知られた方法にて行えばよく、例えば適当な大きさのメッシュスクリーンを用いればよい。また、カットされた小粒子径の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸は圧縮工程に、またカットされた大粒子径の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸は粉砕工程にそれぞれ再供給されることによって歩留まりの良い2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物を得ることができる。
本発明の、2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体を圧縮機によって圧縮したのち、粉砕、分級して得られる2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物は、高い圧力をかけたことにより、粒子間に固体の構成分子間の結合力(van der Waals力)や静電帯電による結合力が働く距離まで接近し、凝集している状態にある。この状態は湿式の押出し造粒法を用いて得られる、顆粒の粒子間に働く液体の表面張力とは異なるものである。したがって得られた2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物は衝撃を加えても容易に崩壊しにくいにもかかわらず、溶媒には溶けやすいという特性を有しており、上述のごとく作業性に優れるものである。
本発明の方法において原料として用いる2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体は、従来の方法で得られた小粒子径のものを水分調整の工程等を行わずに用いることができる。従来の原材料に水を添加して行う湿式押出し造粒に必要であった水分調整工程が不要となるため製造プロセスが簡略化され、大量生産が可能になるという利点もある。なお、本明細書では「乾式圧縮」とは、原材料に水等のバインダー成分を添加せずに圧縮操作を行うことをいい、原料に全く水を含まないことを意味するわけではない。原料となる2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体の水分含量は12%以下、好ましくは6%以下であることが望ましい。水分含量の少ない2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体を乾式圧縮することによって、上述したように、衝撃に強いにもかからわらず、優れた溶解特性を有する2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物を得ることができる。
本発明の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物は、顔料や染料の中間体として用いられる。
以下実施例を挙げて本発明を説明する。
実施例1
公知のコルベ・シュミット法で工業的に製造した小粒子径(約40〜70μm)の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体(水分含量0.07%)を、簡易圧縮造粒機を用いて、表1に示す3種類の圧縮条件で機械圧縮し、それぞれの成形物(サンプル1〜3)を得た。圧縮時の圧力は、ロール径とロール間距離を一定とし、ロールの回転数とロールに2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸を供給するスクリューの回転数により決定される。この成形物をハンマー型高速回転衝撃式粉砕機を用いて粉砕した後、種々のメッシュスクリーンにて分級し、表2に示す粒度特性を有する2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物を調製した(サンプル1−1〜1−8、サンプル2−1〜2−8およびサンプル3−1〜3−8)。
各サンプルについて、硬度、粉化率、溶解時間および粉塵飛散性を表3に示す。
実施例2
上記で調製した各サンプルを、実際の生産時を考慮して以下に示す割合で混合し、サンプル1−9およびサンプル2−9を得た。
サンプル1−9:No.1−2(8.21%)、No.1−3(13.64%)、No.1−4(13.26%)、No.1−5(42.68%)、No.1−6(22.21%)
サンプル2−9:No.2−2(12.57%)、No.2−3(14.73%)、No.2−4(15.27%)、No.2−5(39.46%)、No.2−6(17.97%)
また、未造粒の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体(粒子径約40〜70μm)をサンプル4とした。
これらのサンプルの粉体特性、溶解時間、および粉塵飛散性を表4に示す。
なお、各種物性の測定は上記の定義に基づき、以下の通り行った。
粒子径は、振とう機(飯田製作所製ES−65型)を用い、上記の各メッシュを通過しないもの、通過するものの重量を測定し上記定義欄にて示した式に基づいて計算した。
粉体特性は、安息角、スパチュラ角、見掛け比重について測定した。これらの測定は、上記の通り粉体特性測定装置(パウダテスタPT−N型 ホソカワミクロン(株))を用いて、同装置の説明書に基づいて行った。また、スパチュラ角は、スパチュラの上に堆積する粒子の角度を測定した。
硬度
簡易粒体硬度計(筒井理化学機械(株))を用いて次のようにして測定した。
まず、秤の針が0位置にあることを確認した後、試料台にピンセットで試料(2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸造粒物)を載置し、押し棒を試料の中心に当接させる。次いでハンドル操作により試料に加重をかけ、試料が破砕した際の数値を置き針にて読み取る。各試料につき10回以上測定し、その平均値を算出した。
なお、造粒物の粒径が0.3mm以下のものは、試料の位置決めが困難であるため測定できなかった。
粉化率
摩損度試験器(萓垣医理科工業(株))を用いて次のように測定した。まず、各試料10gを採取し、粒子径を求める際に用いたものと同じ振とう機(飯田製作所製、ES−65型)を用い、60Mのメッシュスクリーン(目開き0.25mm)で1分間篩別した。メッシュ上に残った2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸造粒物を、内部の直径27cm、厚さ4cmである摩損度試験器にて3分間、25回転/分の衝撃を与えた後、再度60Mのメッシュスクリーンで1分間篩別した。摩損度試験器で衝撃を与える前にメッシュ上に残った2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粒子の重量をW1、衝撃を与えた後にメッシュ上に残った2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粒子の重量をW2とし、下記式にて粉化率を算出した。
粉化率(%)=(W1−W2)/W1×100
なお、造粒物の粒径が0.3mm以下のものは、粒子径が小さく元々粉化された状態にあるため、測定の対象外とした。
溶解時間
各2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の試料10gを採取し、5%水酸化ナトリウム104gに添加してスターラー攪拌し、各試料が完全に溶解した状態を目視により観察し、それに要した時間を測定した。
粉塵飛散性
粉塵飛散評価装置を用い、各サンプル50gを斜度60度の斜面の上部から50cm滑らせ、滑りきった時に舞う粉塵の距離と高さを測定した。なお、飛散した距離が70cm、高さが50cmを超えたものについては、測定不可能として「Over」と示した。
比較例1(湿式押出法)
実施例1で用いた2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体100重量部に水25重量部を添加した後、遠心力を調節して水分含量が22%になるように遠心脱水し、孔径1.0mmのダイスを有する押出式の造粒機を用いて造粒し、平均粒子径344μmの2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の顆粒剤を得た。この顆粒剤の粒度特性を表5に、評価結果を表6に示す。
比較例2
水25重量部を20%メタノール水溶液25重量部に変えた以外は、比較例1と同様にして平均粒子径280μmの2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の顆粒剤を得た。この顆粒剤の粒度特性を表5に、評価結果を表6に示す。
比較例3
水25重量部を20%メタノール水溶液30重量部に変えた以外は、比較例1と同様にして平均粒子径340μmの2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の顆粒剤を得た。この顆粒剤の粒度特性を表5に、評価結果を表6に示す。
実施例1において、乾式圧縮造粒によって得られた造粒物のうち、平均粒子径が150μm以上で、かつ硬度が70g以上であるもの(No.1−1〜1−5、No.2−1〜2−5およびNo.3−1〜3−5)は、粉化率が3%以下であり、衝撃等を与えても容易に崩壊しないものであった。また、溶解時間も15分以内であり、作業性に優れたものであった。さらに、粉塵飛散性においても、飛散距離が45cm以下であり、取り扱い性に優れたものであった。
一方、平均粒子径が150μm未満のもの(No.1−7.1−8、No.2−7.2−8およびNo.3−7.3−8)は、溶解時間が20分を越えるものがあり、作業性に支障を来すものであった。また、粉塵飛散性においても、飛散距離が50cm以上であり、取り扱い性の悪いものであった。
実施例2のサンプル1−9および2−9は、実際の生産時を想定して各粒子径の造粒物を混合したものであるが、未造粒の小粒子径の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸(サンプル4)に比べて、安息角、スパチュラ角共に小さく、流動性の改善されたものであることがわかる。また、圧縮度も7%以下であり、充填性に優れたものであった。さらに溶解時間も短く、飛散距離も少ないため、作業性および取り扱い性に優れるものであった。
比較例1〜3は、湿式押出し造粒によって得られた2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の顆粒であるが、平均粒子径が150μm以上であっても硬度が20g以下と低く、容易に崩壊するものであった。なお、比較例1のものは、ピンセットで試料を採取する際に崩壊したため、硬度測定ができないものであった。これらの顆粒はいずれも粉化率が10%以上であった。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、飛散性が著しく抑制された2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸造粒物を得ることができる。
Claims (11)
- 平均粒子径が350μm以上であり、硬度が70g〜3000gであり、かつ、粉化率が3%以下であることを特徴とする2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物。
- 全粒子に対して目開き74μmのメッシュを通過する粒子の割合が14重量%以下である、請求項1記載の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物。
- 2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸造粒物10gを常温で5%水酸化ナトリウム水溶液104gに溶かした時の溶解時間が20分以下である、請求項1記載の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物。
- 安息角が35〜45度である、請求項1記載の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物。
- 2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物のゆるみ見掛け比重が0.6〜0.85g/ccで、固め見掛け比重が0.73〜0.88g/ccであり、
(固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重×100
で表わされる圧縮度が10%以下である、請求項1記載の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物。 - 2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体を乾式圧縮して成形物を得、これを粉砕して分級して得られるものである、請求項1から5いずれかに記載の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物。
- 乾式圧縮が0.2〜2.0ton/cmの圧力で行われる、請求項6記載の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物。
- 2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体の水分含量が12%以下である、請求項6記載の2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物。
- 2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体を乾式圧縮して成形物を得、これを粉砕して分級することを特徴とする、平均粒子径が350μm以上であり、硬度が70g〜3000gである2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の造粒物の製法。
- 乾式圧縮が、0.2〜2.0ton/cmの圧力で行われる、請求項9記載の製法。
- 2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸粉体の水分含量が12%以下である、請求項9記載の製法。
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