JP3695400B2 - 光ディスク成形用金型装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばDVD(デジタルビデオディスク)等の光ディスクを製造するための光ディスク成形用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
DVD等の光ディスクの基板は、一般に樹脂を射出成形して作製されており、この射出成形に用いる成形用金型装置の一例を図7に示す。この図に示す成形用金型装置200は、可動型201と、この可動型201と対向して配置された固定型202とを備えて構成されており、これら可動型201と固定型202とを型閉して形成される空間がキャビティ空間Cとされている。また、前記可動型201のキャビティ空間C側の面は、円盤状のスタンパー203を支持するためのスタンパー支持面201Aとされている。そして、このキャビティ空間C内に成形材料である溶融した樹脂を充填し、このキャビティ空間内の樹脂すなわち光ディスクが固化した後、固定型202及び可動型201を型開して成形された光ディスクを取り出すようになっている。前記キャビティ空間Cには、その中心部に相当する位置の固定型202に形成されたスプルー204からスプルー204の先端部に形成された凹部(ダイ)207を介して樹脂が注入されるようになっており、さらに、可動型201の、前記ダイ207と対向する位置に進退自在に設けられたカットパンチ205を固定型201側へ移動させて、ダイ207内へ進入させることにより、キャビティ空間C内に形成された光ディスクの中心部の開口孔を形成するとともに、スプルー204内の樹脂と、キャビティ空間C内の樹脂(光ディスク)とを切断するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の金型装置200においては、スプルー204から注入される樹脂の温度は350〜390℃程度であるため、樹脂充填時には可動部201および固定部202は350〜390℃程度に加熱され、次いで、樹脂を冷却固化させるために100℃程度にまで冷却される。スタンパー支持面201Aに対向した固定型202の樹脂接触面202Aはこのような熱履歴をショット毎に受けるばかりでなく、固化した樹脂を型開して取り出す際の機械的摩擦を繰り返し受けることとなり、10万枚〜100万枚ものディスクの製造を行うと、その表面に微細な傷が発生するおそれがある。さらに、350〜390℃程度の高温に保持されている樹脂は腐食性のガス成分を同伴していることが多く、キャビティー空間Cの樹脂接触部分、中でも特にスタンパー支持面201Aに対向した固定型202の樹脂接触面202Aは腐食を受け易く、その表面が荒らされる。樹脂接触面202Aの表面荒れや微細な傷は、そのままディスクに転写されるおそれがあり、転写不良による製品歩留まりの低下や金型の短寿命化という問題が生じるおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、熱履歴と機械的磨耗による型体の損耗を防止すると共に、優れた耐熱性と耐久性とを具備した光ディスク成形用金型装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、射出成形により光ディスクを成形するためのキャビティ空間を画定する第1の型体及び第2の型体とが備えられ、前記第1の型体又は第2の型体に光ディスクに凹凸を形成するためのスタンパーを受けるスタンパー支持面が形成され、前記第1の型体と第2の型体の少なくとも一方の樹脂接触面に、TiC膜とTiN膜とを膜厚比3:1〜1:3の範囲で積層してなる、膜厚が1μm〜6μmの範囲の被覆膜が形成されたことを特徴とする光ディスク成形用金型装置を提供する。
【0006】
上記構成を備えた本発明に係る金型装置は、型体の樹脂接触面に、TiC膜とTiN膜とを積層してなる被覆膜を形成したことで、優れた耐久性を備えた金型装置を提供することができる。すなわち、耐熱、耐食性に優れるTiC膜と、耐磨耗性に優れるTiN膜とを積層することによって、樹脂接触面に耐熱、耐食性と高強度とを付与し、これにより優れた耐久性を有する金型装置を提供することができる。
また、前記被覆膜は表面が平滑で、かつ付着強度の高い硬質の薄膜であるので、ショット毎の加熱冷却に伴う型体の膨張収縮による損耗を防止するとともに、ディスク取り出し時の機械的損耗をも防止することができる。さらに前記被覆膜は耐薬品性にも優れているので、光ディスク成形用の樹脂による有機化合物を含むガス成分に腐食され難いために、樹脂接触面が荒らされることがないという特徴を有する。よって型体表面の荒れや微細な傷の発生を抑制し、ディスクの転写不良を低減でき、型体を長寿命化することができる。
【0007】
本発明に係る光ディスク成形用金型装置においては、前記被覆膜の膜厚が、1μm〜6μmの範囲とされることが好ましい。
前記被覆膜の膜厚が1μm未満では、薄すぎるために膜の耐久性が不足し、磨耗が生じ易い上に、腐食性のガス成分による侵食を受け易くなる。また、膜厚が6μmを越える場合には、被覆膜に内在する応力により膜の剥離が生じ易くなり、かつ表面状態も粗くなるために好ましくない。
【0008】
次に、本発明に係る光ディスク成形用金型装置においては、前記被覆膜を構成するTiC膜とTiN膜との膜厚比は、3:1〜1:3の範囲とされることが好ましく、さらには2:1〜1:2の範囲とされることがより好ましい。
【0009】
TiC膜とTiN膜との膜厚比が、前記範囲を越える場合、すなわち、TiC膜の膜厚が、被覆膜全体の膜厚の1/4未満の場合には、TiC膜を形成した効果が十分に得られず、被覆膜の強度が不足し、樹脂との接触および熱履歴によって被覆膜が摩耗する。逆に、TiN膜の膜厚が、被覆膜全体の1/4未満であると、溶融樹脂に同伴されるガス成分により樹脂接触面が腐食されおそれがある。前記膜厚比が、2:1〜1:2の範囲であるならば、強度と耐食性を兼ね備えた被覆膜を実現することができ、金型装置の寿命をさらに延ばすことができる。
【0010】
また、上記光ディスク成形用金型装置においては、前記TiC膜及び/又はTiN膜が、イオンプレーティング法により形成されたものであることが好ましい。
【0011】
次に、本発明に係る光ディスク成形用金型装置においては、前記スタンパー支持面を有する型体に、スタンパーの裏面側を排気してスタンパーを固定する真空チャック機構が備えられた構成とすることが好ましい。
このような真空チャック機構を備えることで、より安定にスタンパーをスタンパー支持面に保持することができるとともに、成形材料である樹脂とともに同伴されるガス成分や、このガス成分が凝固した樹脂粉末をある程度外部に排出することができるので、メンテナンス周期を延ばすことができる。従って、装置の稼働時間を長くして生産効率を高めることができる。
【0012】
次に、本発明に係る光ディスク成形用金型装置においては、前記スタンパー支持面を有する型体に、スタンパーの内端部を固定するための爪部が形成された構成とすることもできる。このような爪部によりスタンパー内端を固定することで、より安定にスタンパーを固定でき、また、スタンパー内端とスタンパーを保持する型体との境界にバリが生じるのを抑えることができるので、高品質の光ディスクを製造することができる。
さらに、前記爪部により固定することで、成形時のスタンパーの浮き上がりをなくすことができる。つまり、スタンパーが浮き上がった状態で樹脂を充填することによりスタンパーとスタンパー支持面とが強く接触されるのを防止することができる。この作用によっても、平滑度の高い光ディスクを製造することができ、上記TiC膜とTiN膜との積層膜からなる被覆膜による作用と相まって更にスタンパーの寿命を延ばすことができ、ひいては金型装置の寿命を延ばすことができる。
【0013】
次に、本発明に係る光ディスク成形用金型装置においては、前記第1の型体及び第2の型体の対向する面に設けられ、型閉時にテーパー嵌合するテーパー面が形成された位置決め部材と、前記第1の型体及び第2の型体のうち一方に設けられたガイドピンと、他方の型体の前記ガイドピンと対向する位置に設けられ、前記ガイドピンが前記型体の開閉方向へ摺動自在に嵌合されるガイドピン受けとを備える案内部材とを備えた構成とすることもできる。
【0014】
光ディスクの成形時には、一対の型体を型閉し、これら型体間に形成された製品キャビティに成形材料を充填する。この製品キャビティに充填された成形材料すなわち光ディスクが固化した後、両型体を型開し、成形された光ディスクを取り出す。両型体を型閉した状態では、これら型体にそれぞれ固定された位置決め部材のテーパー面が相互にテーパー嵌合することにより、両型体が芯合わせされる。一方、両型体が開いた状態では、両型体の位置決め部材は互いに離れるが、ガイドピンとこのガイドピンが両型体の開閉方向へ摺動自在に嵌合されたガイドピン受けとによって両型体が芯合わせされる。
このような構成により、確実に両型体が芯合わせされて樹脂の充填、成形が行われるので、スタンパーに作用する樹脂からの圧力を均一化することができ、上記TiC膜とTiN膜の積層膜からなる被覆膜による作用と相まって、更なるスタンパーの長寿命化を実現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光ディスクの成形方法およびこの方法に用いる光ディスク成形用金型装置の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず光ディスクの成形用金型装置の構成を説明する。1は第1の型体としての固定型、2は第2の型体としての可動型で、これら固定型1および可動型2は、図1、図2および図4における型開閉方向(図示AB方向)に移動して互いに開閉し、型閉時に光ディスクを形成する製品キャビティ(キャビティ空間)3を相互間に形成するものである。なお、図1、図2および図4では、固定型1および可動型2を図示上下方向(図示AB方向)に並べて描いてあるが、通常は、固定型1および可動型2を水平に並べた状態(すなわち、水平方向に型開閉がなされる状態)で成形が行われる。ただし、図示の通り上下に並んだ状態で成形を行うことも可能である。
【0016】
前記固定型1は、固定側型板6と、この固定側型板6における可動型2と反対側の面に固定された固定側取り付け板7とを備えている。この固定側取り付け板7は、図示していない射出成形機の固定側プラテンに取り付けられるものである。なお、図3に図示の7aは、固定側プラテンヘの取り付け用のボルトを通すために固定側取り付け板7に形成された通孔である。そして、固定側取り付け板7の中央部には、射出成形機のノズルが接続されるスプルーブッシュ8がボルト9により固定されている。このスプルーブッシュ8は、内部が材料通路であるスプルー10になっているが、固定側取り付け板7及びを固定側型板6を貫通し、その先端が固定側型板6の可動型2側へ突出している。さらに、前記スプルーブッシュ8における可動型2と反対側の面には、円環状のローケートリング11が配置され、ボルト12によりスプルーブッシュ8に固定されている。
【0017】
前記固定側型板6は、前記固定側取り付け板7にボルト16により固定されたキャビティ形成部材としてのほぼ円板状のキャビティブロック17と、固定側取り付け板7にボルト18により固定された位置決め部材としてのほぼ円環状の固定側位置決めリング19とからなっている。この固定側位置決めリング19は、前記固定側取り付け板7における可動型2側の面の周縁部に形成された段部20および前記キャビティブロック17の外周側に嵌合しており、金型製作の段階でキャビティブロック17に対して芯合わせされている。そして、固定側位置決めリング19は、可動型2側の部分の内周面に、この可動型2側へ向かって径が大きくなるテーパー面21を有している。このテーパー面21の前記型開閉方向に対する角度は5〜30゜程度とされている。
【0018】
また、図3に示すように、前記固定側取り付け板7におけるほぼ一対角線上に位置する2つの角部には円柱形状のガイドピン22がそれぞれ固定されている。これらガイドピン22は、図2に示すように、その一端側に形成された鍔部23が固定側取り付け板7に突き当てられるとともに、鍔部23よりも一端側が固定側取り付け板7に形成された孔部24内に嵌合され、固定側取り付け板7の他面側に設けられた補助部材25およびこの補助部材25を貫通してガイドピン22の端面に螺合されたボルト26により固定されている。そして、ガイドピン22は、前記型開閉方向を軸方向として可動型2側へ突出している。さらに、ガイドピン22の先端面にはフランジ状のストッパー27が固定されている。
【0019】
さらに、図1に示す前記キャビティブロック17における可動型2側の外周部には段差部31が形成されているが、この段差部31には円環状の外周スタンパー押え32が嵌合されてボルト33により固定されている。一方、前記キャビティブロック17の中央部に形成された孔部としての貫通孔34内にはほぼ円筒状の筒状部材としての内周スタンパー押え35が嵌合されて固定されている。前記キャビティブロック17には、図4に示すように、光ディスクに凹凸を形成するためのスタンパー36が着脱可能に装着されるようになっており、前記外周スタンパー押え32がスタンパー36の外周部を固定し、内周スタンパー押え35がスタンパー36の内周部を固定するようになっている。つまり、図4に示すように、内周スタンパー押え35の可動型2側面の先端外周部には、スタンパー36の内周部を押えるための爪部37が形成されている。また、前記スプルーブッシュ8は、筒状の内周スタンパー押え35内に嵌合している。そして、スプルーブッシュ8における可動型2側の先端面にはスプルー10と連通された凹部38が形成されている。尚、スタンパー36は、Ni等の金属板からなり、DVD用スタンパーの場合には、DVDの情報記録領域を規定するグルーブ部やランド部のようなディスク円周方向に沿って形成される円弧状の凸部やこれら凸部の間に形成される円弧状の溝を形成するための型を片面に有するものとされる。また、CD用スタンパーの場合には、情報記録用のピットをディスク円周方向に沿って形成するための型を有するものとされる。
【0020】
本実施形態の金型装置においては、上記爪部37が設けられていることにより、スタンパー36をより確実にスタンパー支持面17aに固定できるようになっている。これにより、成形時にスタンパー36がスタンパー支持面17aから浮き上がるのを防止することができ、スタンパー36やスタンパー支持面17aの損耗を防止することができる。つまり、スタンパー36がスタンパー支持面17aから浮き上がったまま樹脂の充填を行うと、高圧で充填される樹脂の圧力によりスタンパー36がスタンパー支持面17aに押さえ付けられ、その際の両者の接触によりこれらの部材が損耗するおそれがあるが、スタンパー36がスタンパー支持面17a上に固定されていれば、このような接触を防止することができる。
【0021】
また、図1に示すように、前記キャビティブロック17の製品キャビティ3側の面の周縁部には、ほぼ環状に溝が刻設されており、その溝に排気通路4が接続されている。排気通路4は、図1には1つのみ示したが、上記の溝に沿って8〜12箇所程度に設けられている。そして、排気通路4は、図示しない排気手段に接続されており、この排気手段により排気通路4内を排気することでスタンパー36を固定するようになっている。すなわち、この排気通路4は、スタンパー36の外周側を吸着して固定する真空チャック機構を構成するものである。
【0022】
前記可動型2は、可動側型板41と、この可動側型板41における固定型1と反対側の面に固定された可動側受け板42と、この可動側受け板42における固定型1と反対側の面にボルト43により固定された可動側取り付け板44とを備えている。この可動側取り付け板44は、射出成形機の可動側プラテンに取り付けられるものである。前記可動側型板41は、前記可動側受け板42にボルト45により固定されたキャビティ形成部材としてのほぼ円板状のコアブロック46と、可動側受け板42にボルト47により固定された位置決め部材としてのほぼ円環状の可動側位置決めリング48とからなっている。この可動側位置決めリング48は、前記可動側受け板42における固定型1と対向する面の外周部に形成された段部49および前記コアブロック46の外周側に嵌合しており、金型製作の段階でコアブロック46に対して芯合わせされている。そして、可動側位置決めリング48は、型閉時に前記固定側位置決めリング19のテーパー面21が当接してテーパー嵌合するテーパー面50を有している。さらに、このテーパー面50の外周側に位置して、可動側位置決めリング48における固定側位置決めリング19への対向面には、この固定側位置決めリング19が当接するスペーサ51がボルト52により固定されている。すなわち、固定側位置決めリング19と可動側位置決めリング48とはインロー嵌合する。
【0023】
また、図2に示すように、前記可動側受け板42および可動側取り付け板44におけるほぼ一対角線上に位置する2つの角部の、前記固定側受け板7の間通孔24と対向する位置に、貫通孔56が形成されている。そして、可動側受け板42の貫通孔56には、前記固定型1側のガイドピン22がそれぞれ前記型開閉方向へ摺動自在に嵌合するガイドピン受け58が組み込まれている。
【0024】
これらガイドピン受け58は、前記貫通孔56内に嵌合されて固定された円筒状のガイドブッシュ59と、このガイドブッシュ59の内周側に摺動自在に組み込まれたスライドボールベアリングあるいはスライドローラーベアリングなどよりなるリテーナ60とからなっており、このリテーナ60の内周側に前記ガイドピン22が常時嵌合している。なお、このガイドピン22のストッパー27は、リテーナ60を抜け止めするものである。また、可動側取り付け板44に形成された貫通孔57には、ガイドピン22の先端部が挿入るようになっている。
【0025】
また、前記コアブロック46の中央部における固定型1側の面に形成された凹部76内には、ほぼ円環状の工ア吹き出し入子77が嵌合され、凹部76の背面側から挿入されたボルト78により固定されている。この工ア吹き出し入子77と凹部76の内周面との間の隙間には、コアブロック46や可動側受け板42内に形成された空気通路79が連通している。
【0026】
また、前記工ア吹き出し入子77内にはほぼ円筒状の突き出しスリーブ81が前記型開閉方向へ所定範囲摺動自在に嵌合されている。この突き出しスリーブ81は、前記コアブロック46を貫通し一端側が可動側受け板42内に位置しているが、この可動側受け板42との間にはスライドベアリング82が介在させてある。さらに、突き出しスリーブ81は、スプリング83により固定型1と反対側へ付勢されている。なお、84は、突き出しスリーブ81の摺動範囲を規制するために可動側受け板42内に固定された規制板である。
【0027】
また、前記突き出しスリーブ81内にはほぼ円筒状のゲートカット部材としてのゲートカットスリーブ86が前記型開閉方向へ所定範囲摺動自在に嵌合されている。このゲートカットスリーブ86は、突き出しスリーブ81および前記規制板84を貫通しているが、ゲートカットスリーブ86と突き出しスリーブ81との間にはスライドベアリング87が介在させてある。そして、ゲートカットスリーブ86の一端部に形成されたフランジ部88が前記規制板84よりも可動側取り付け板44側に位置している。さらに、ゲートカットスリープ86は、スプリング89により固定型1と反対側へ付勢されている。
【0028】
さらに、前記可動側取り付け板44には、突き出し板91が前記型開閉方向へ所定範囲摺動自在に支持されている。この突き出し板91は、スプリング92により固定型1と反対側へ付勢されている。そして、突き出し板91に固定された突き出しピン93が前記ゲートカットスリーブ86内に摺動自在に嵌合されている。また、突き出し板91に固定された連動ピン94が前記ゲートカットスリーブ86のフランジ部88および規制板84を貫通して前記突き出しスリーブ81に突き当たるようになっている。さらに、前記ゲートカットスリーブ86のフランジ部88に突設された受け部95が前記突き出し板91を摺動自在に貫通している。
【0029】
そして、図4に示すように、前記固定型1側のスプルーブッシュ8の先端面外周部と可動型2側のゲートカットスリーブ86の先端面外周部との間に、固定型1側のスプルー10を製品キャビティ3に連通させるゲート96が形成されるようになっている。また、ゲートカットスリーブ86がスプルーブッシュ8の凹部38に嵌合することにより、ゲート96においてスプルー10内の成形材料である樹脂と製品キャビティ3内の樹脂すなわち光ディスクとが切断され、この光ディスクの中心部の開口孔が形成されるようになっている。したがって、固定型1においては、キャビティブロック17に加えて内周スタンパー押え35およびスプルーブッシュ8の先端面外周部によっても光ディスクの一部が形成される。また、可動型2においては、コアブロック46に加えて工ア吹き出し入子77および突き出しスリーブ81によっても光ディスクの一部が形成される。
【0030】
さらに、本実施形態の金型装置においては、図4に示すスタンパー36に対向する可動型2の樹脂接触面2a上にTiC膜2Cが形成され、このTiC膜2C上にTiN膜2Nが形成されており、これらTiC膜2CとTiN膜2Nとにより被覆膜2bが構成されている。このような被覆膜2bが形成されていることで、可動型2の樹脂接触面2aの熱履歴による損耗を防止することができる。
【0031】
本実施形態においては、樹脂接触面2a上にTiC膜2CとTiN膜2Nとが順次積層されているが、被覆膜2bを構成する膜の積層順はこれに限定されるものではなく、樹脂接触面2a上にTiN膜2Nが積層され、その上にTiC膜2Cが積層されたものであってもよい。TiC膜とTiN膜との特性を比した場合に、TiC膜の方が金属への密着性がより良好であり、かつTiN膜の方が耐食性に優れている点において、樹脂接触面2a上にTiC膜とTiN膜2Nとを順次積層した構成とすると、より密着性と耐久性とに優れた被覆膜とすることができるので、より好適である。
【0032】
可動型2は、成形材料である350〜390℃程度に加熱された溶融樹脂が製品キャビティ3内に導入されると、その温度が350〜390℃程度にまで上昇する。そして充填後に樹脂が冷却固化されるとその温度は100℃程度まで低下する。このような加熱冷却がショット毎に繰り返されるため、可動型2は膨張収縮を繰り返すことになる。また、この樹脂接触面2aは、高温高圧で充填される溶融樹脂による応力を受ける。これにより樹脂接触面2aの平滑度が低下するばかりでなく、その表面に微細な傷が発生し、これが光ディスクの転写不良の原因となっていた。本発明によれば、スタンパー36に対向する樹脂接触面2aに硬質で優れた耐磨耗性、耐食性とを兼ね備え、かつ滑らかで摩擦係数の低い被覆膜2bが形成されていることで、溶融樹脂の充填がより円滑に行われるようになり、樹脂接触面2aの耐久性、換言すれば型体の耐久性およびメンテナンス周期が大幅に向上する。
【0033】
加えて、樹脂接触面2aに滑らかで摩擦係数の低い被覆膜2bが形成されていることにより、溶融樹脂をスプルー10を中心として製品キャビティー3の周縁部へ向かって均一にかつ速やかに充填、流動せしめることができる。溶融樹脂の高分子鎖は流動方向に配向する特性を有するので、この配向性を起因とする樹脂の複屈折を小さく抑制でき、高品質の光ディスクを得ることができる。これはDVD用の基板材料として好適に用いられる光弾性係数が大きなポリカーボネート樹脂を用いた場合に特に顕著である。
さらに被覆膜2bは硬質で耐磨耗性が高く、摩擦係数の低いものであるために、離型時の応力による基板の反りを抑制することができ、この点においても高品質の基板を製造できる。
【0034】
前記被覆膜2bの膜厚は、1μm〜6μmの範囲とされることが好ましい。膜厚が1μm未満であると、薄過ぎて耐摩耗性、耐食性が十分でなく、また6μmを越えると膜内の応力が強まり剥離し易くなると同時に膜表面が粗くなり、その粗い表面がディスクに転写されてしまうので好ましくない。
【0035】
また被覆膜2bを構成するTiC膜2CとTiN膜2Nとの膜厚比は、3:1〜1:3の範囲とされることが好ましい。すなわち、被覆膜2b全体の膜厚に対して、TiC膜2C及びTiN膜2Nは、少なくとも1/4以上とすることが好ましい。これはTiC膜はTiN膜に比して、強度及び樹脂接触面2aとの密着性には優れるが、後述する樹脂のガス成分に対する耐食性の点でTiN膜に劣り、TiN膜はTiC膜に比して強度は劣るものの、耐食性には優れるためであり、上記範囲とすることで、これらTiC膜及びTiN膜それぞれの有利な特性を兼ね備えた被覆膜2bを実現することができる。また、これらTiC膜2CとTiN膜2Nとの膜厚比は、2:1〜1:2の範囲とすることがより好ましい。
【0036】
また、製品キャビティ3に充填される樹脂は高温(350〜390℃)の溶融状態となっているため、この樹脂が気化した有機化合物系のガス成分が樹脂に同伴されて製品キャビティ3内に導入される。この有機化合物系のガス成分は、繰り返し何十万回もの成形サイクルの後、その一部が樹脂粉となり、製品キャビティー3を画定する固定部1および可動部2の樹脂接触面に微量付着する。また、DVD用のポリカーボネート樹脂を用いて生産効率を上げるためには高温高圧で樹脂を注入する場合、近年では通常の樹脂成形よりも高温の350〜390℃もの温度に加熱された樹脂を充填して成形を行うようになってきているので、特に前記樹脂粉の発生が顕著になってきており、何十万回という成形サイクルを繰り返して行う場合に特に問題となってきている。製品キャビティ3内に付着した樹脂粉は転写不良の原因となるので、成形サイクル後のスタンパー36交換時等に除去する必要がある。本実施形態の金型装置では、樹脂接触面2aに被覆膜2bが形成されているので、本来樹脂粉の金型への付着が起こりにくく、また樹脂粉が付着した場合にもその付着力を弱めることができる。従って、本発明に係る金型装置では、この製品キャビティ3内に生じた樹脂粉を、スタンパー36交換時に容易にウェス等の布で拭き取ることで除去することができるようになっている。
【0037】
さらに、前記ガス成分は樹脂の一部が気化したり、分解したものであるほか、樹脂特性を調整するための各種添加剤から発生するものであって、腐食性である場合が多く、従来の金型装置ではこのガス成分によって樹脂接触面2aが腐食されて変色する現象が問題となっていたが、本実施形態の金型装置では、耐食性の高い被覆膜2bを設けたことにより樹脂接触面2aの腐食を起こりにくくすることができ、長寿命の金型装置を実現できる。さらに、樹脂接触面2aの腐食による表面荒れによって起きる樹脂充填時の流動不均一を原因とした複屈折の発生をも抑制することができるので、高品質の光ディスクが製造可能な長寿命の金型装置を実現できる。
【0038】
なお、本実施形態においては、固定型1と可動型2の樹脂接触面のうち、スタンパー支持面2bに対向した樹脂接触面2a上のみに被覆膜2bを形成したが、本発明の金型装置はこれに限定されるものではない。スタンパー支持面17a以外の樹脂接触面全面および樹脂ガス接触面に被覆膜2bを形成してもよい。たとえば、ディスクの開口孔を形成する固定型1の凹部38、スプルー10、内周スタンパー押え35およびその爪部37等の樹脂接触面上および樹脂ガス逃げ透間に被覆膜2bを形成してもよい。また、被覆膜2bを樹脂接触面2aに加えてスタンパー支持面17aにも設けても良い。
【0039】
次に、上記構成の金型装置を用いた光ディスクの成形方法について説明する。なお、図1、図2および図4では、固定型1および可動型2を図示上下に並べて描いてあるが、通常は固定型1および可動型2が水平に並んだ状態で成形が行われる。ただし、図示の通り上下に並んだ状態で成形を行うことも可能である。固定型1と可動型2とを型開した状態でも型閉した状態でも、図2及び図3に示す固定型1の両ガイドピン22は可動型2のガイドピン受け58に常時嵌合したままである。これにより、固定型1と可動型2とが芯合わせされる。すなわち、固定型1のキャビティブロック17の中心軸と可動型2のコアブロック46の中心軸とが同一直線上に位置する。
【0040】
光ディスクの成形時には、まず固定型1と可動型2とを型閉して、これら固定型1および可動型2間に製品キャビティ3を形成する。なお、このように型閉した状態で、可動型2の突き当てリング67が固定型1のスタンパー36に突き当たり、また、固定型1および可動型2の位置決めリング19、48が相互にインロー嵌合し、それらのテーパー面21、50が相互にテーパー嵌合する。そして、射出成形機のノズルからスプルー10へ成形材料である溶融した熱可塑性樹脂を射出する。この樹脂は、スプルー10からゲート96を通って製品キャビティ3内に流入する(充填工程)。なお、当初は固定型1および可動型2の型締力は比較的弱くなっており、製品キャビティ3内に充填された樹脂の圧力により固定型1および可動型2が若干、例えば0.1〜0.3mm程度開き、位置決めリング19,48のテーパー面21,50も若干離れる。
【0041】
このようにして製品キャビティ3内に樹脂が充填された後、射出成形機側に設けられた図示していない押圧ロッドによってゲートカットスリーブ86の受け部95が固定型1の方へ押されることにより、ゲートカットスリーブ86が固定型1側へ移動し、この固定型1のスプルーブッシュ8の凹部38に嵌合する。これにより、ゲート96においてスプルー10と製品キャビティ3とが遮断されるとともに、この光ディスクの中心部の開口孔が形成される(ゲートカット工程)。また、固定型1および可動型2の型締めが強められることにより、コアブロック46を含めて可動型2のほぼ全体が固定型1側へ移動する。これにより、製品キャビティ3内の樹脂が圧縮される(圧縮工程)。この圧縮工程が終了した時点で、固定型1および可動型2の位置決めリング19,48のテーパー面21,50が再び相互にテーパー嵌合する。これにより、圧縮工程の終了時点以降、固定型1と可動型2とが確実に芯合わせされる。
【0042】
さらに、この製品キャビティ3内の樹脂すなわち光ディスクが冷却して固化した後、固定型1と可動型2とが型開される。この型開に伴い、成形された光ディスクおよびスプルー10内で固化した樹脂はまず固定型1から離れる。ついで、射出成形機側に設けられた図示していない押圧ロッドによって突き出し板91が固定型1の方へ押されることにより、突き出し板91と連動して突き出しピン93が固定型1側へ移動し、スプルー10内で固化した樹脂を突き出して可動型2から離型させる。また、突き出し板91に固定された連動ピン94によって押されることにより突き出しスリーブ81が固定型1側へ移動し、光ディスクの内周部を突き出して可動型2から離型させる。なお、この離型時、空気通路79から供給される空気がエア吹き出し入子77とコアブロック46との間の隙間から吹き出すことにより、光ディスクと可動型2との間の真空破壊が行われる。そして、離型した光ディスクは、図示していない取り出しロボットにより取り出される。その際、取り出しロボットは、固定型1および可動型2間において、ガイドピン22およびガイドピン受け58が設けられていない角部を介して出入りする。
尚、このようにして成形されるのは、最終的な製品としての光ディスクではなくその基板であるが、この基板には、その後、保護層、記録層、反射層およびオーバーコート層などが適宜形成される。
【0043】
本実施の形態の構成によれば、固定型1に設けたガイドピン22を可動型2に設けたガイドピン受け58に型開閉方向へ拙動自在に嵌合して固定型1と可動型2とを芯合わせするようにしたので、固定型1と可動型2とが開いてそれらの位置決めリング19,48のテーパー面21,50が互いに離れている状態でも、固定型1と可動型2とを芯合わせできる。すなわち、固定型1と可動型2とをいったん型閉した後の充填工程、ゲートカット工程および圧縮工程では、固定型1と可動型2とが若干開くが、その際にも固定型1や可動型2に加わる重力に抗して、これら固定型1と可動型2とをある程度正確に芯合わせされた状態に保持できる。したがって、ゲートカット工程において可動型2側のゲートカットスリーブ86を固定型1の凹部38に嵌合するとき、ゲートカットスリーブ86が凹部38に確実かつ正確に嵌合される。したがって、光ディスクの開口孔を正確に所定の位置に形成できるとともに、この開口孔にバリなどの不良が生じるのを防止することができる。
【0044】
また、圧縮工程の終了時点以降、固定型1と可動型2とが最終的に完全に閉じて製品キャビティ3が最終的な製品形状になった状態では、固定型1および可動型2の位置決めリング19,48のテーパー面21,50が互いにテーパー嵌合することにより、固定型1と可動型2とが芯合わせされる。その際、位置決めリング19,48がそれぞれ固定型1および可動型2に可動状態に支持されているのではなく、固定されているものであることにより、位置決めリング19,48による芯合わせは、ガイドピン22およびガイドピン受け58のみによる芯合わせよりも確実で正確なものとなる。
このように、両型体を型閉した際に確実な芯合わせができることで、製品キャビティ3を正確に画定できるようになり、スプルー10から導入される樹脂の圧力を製品キャビティ3内でより均一にすることができる。よって、型体の損耗を防止し、金型装置の寿命を延ばすことができるばかりでなく、樹脂の複屈折の発生を抑制し、高品質の光ディスクが製造可能となる。
【0045】
さらに、本実施の形態では、ガイドピン22およびガイドピン受け58を2組のみ設けているが、固定型1および可動型2の最終的な芯合わせは位置決めリング19,48によってなされ、ガイドピン22およびガイドピン受け58は補助的なものなので、固定型1および可動型2の2つの角部にあれば十分である。そして、固定型1および可動型2を型開して成形された光ディスクを取り出すとき、固定型1および可動型2間において、ガイドピン22およびガイドピン受け58のない角部を介して取り出しロボットを出し入れすることにより、光ディスクの取り出しに対してガイドピン22およびガイドピン受け58が支障とならない。
【0046】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施の形態では、固定型1にガイドピン22を突設し、このガイドビン22が拙動自在に嵌合されるガイドピン受け58を可動型2に設けたがン逆に可動型にガイドピンを設け、固定型にガイドピン受けを設けてもよい。また、前記実施の形態では、ガイドピン22およびガイドピン受け58を2組としたが、1組あるいは3組以上としてもよい。
【0047】
また、本発明に係る光ディスク成形用金型装置によれば、情報記録部よりも内周側に、この情報記録部の表面よりも高さ0.02mm以上(好ましくは0.03mm以上)突出した環状の凸部が形成された光ディスクを製造することもできる。このような構成を備えた光ディスクの一例を図5に示す。図5は、光ディスクの部分断面構造を示す図である。図5に示す光ディスク101は、円板状になっていて、開口孔102を中央部に有しているとともに、内周部および外周部以外の部分が情報記録部103とされている。また、光ディスク101の一方の面には、情報記録部103よりも内周側に位置して、この情報記録部103の表面よりも高さhが0.02mm以上突出した円環状の凸部104が光ディスク101全体と同心的に形成されている。この凸部104の高さhは、より好ましくは0.03mm以上である。このような構成の光ディスク101は、成形時に光ディスク101表面にバリ105が生じたとしても、例えば、光ディスク101を光ディスクドライブ装置のターンテーブル106上に装着したとき、バリ105ではなく前記凸部104がターンテーブル106上に載る構造とされている。従って、バリ105に影響されることなく、ターンテーブル106上に光ディスク101を傾きなく装着することができ、光ディスクの回転時の面振れを防止することができる。あるいは、光ディスクにハブを後付けする際に、光ディスクに対してハブを平行に取り付けることができる。
【0048】
次に、上記凸部を備えた光ディスク101を製造するための金型装置の構成について図6を参照して以下に説明する。図6は、本発明に係る光ディスク成形用金型装置の部分断面構造を示す図であり、光ディスクを成形するための製品キャビティの中央部を示している。この図6に示す金型装置の基本構成は、図1に示す金型装置とほぼ同様であり、図1と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
図6に示す金型装置の特徴的な点は、エア吹き出し入子77の製品キャビティ3側の面に、深さ0.02mm以上(好ましくは0.03mm以上)の環状の凹部99が刻設されている点である。このような構成の金型装置を用いて成形を行うことで、図5に示すように、この凹部99の形状が転写されて形成された凸部104を有する光ディスク101を製造することができる。
【0049】
【実施例】
(実施例1)
アークイオンプレーティング法にて金型装置のスタンパー支持面に対向する樹脂接触面にTiC膜上にTiN膜を積層した被覆膜を蒸着した。具体的には、真空容器内にTiのターゲットを固定して、その対向面に樹脂接触面となる平面を鏡面に研摩したステンレス製円板(180mmφ×20mm厚み)を配置して基板とし、真空に減圧した後、アセチレンガスを導入して、圧力を10-5Torr(133×10-5Pa)に調整した。次いで、前記基板に1000Vのバイアス電圧を印加して、表面をスパッタしてクリーニング処理した後、前記Tiターゲットに20Vの電圧で15Aのアーク放電を発生させ、ターゲット表面からTiを蒸発させた。その際基板に50Vのバイアス電圧を印加することにより、TiC膜を基板表面に蒸着させてTiC膜を形成した。このTiC膜の蒸着速度は1μm/hrで、1時間の蒸着で1μmのTiC膜が得られた。
次に、反応ガスとしてN2ガスをアセチレンに代えて圧力10-4Torr(133×10-4Pa)になるように導入し、TiCの場合と同様な条件で反応を行い、1時間の蒸着によりTiC膜上に1μmのTiN膜を蒸着した。以上の工程により樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。
上記にて得られた蒸着膜の断面を顕微鏡観察したところ、基板上にTiC膜(1μm)/TiN膜(1μm)の積層膜からなる被覆膜が得られていることが確認された。
【0050】
(実施例2)
次に、TiC膜の蒸着時間を30分間とし、TiN膜の蒸着時間を1時間30分とした以外は、上記実施例1と同様にして樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。この被覆膜の断面を上記実施例1と同様に顕微鏡観察したところ、基板上に膜厚0.5μmのTiC膜が形成され、このTiC膜上に膜厚1.5μmのTiN膜が形成されていることが確認された。
【0051】
(実施例3)
次に、TiC膜の蒸着時間を1時間30分とし、TiN膜の蒸着時間を30分間とした以外は、上記実施例1と同様にして樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。この被覆膜の断面を上記実施例1と同様にして顕微鏡観察したところ、基板上に膜厚1.5μmのTiC膜が形成され、このTiC膜上に膜厚0.5μmのTiN膜が形成されていることが確認された。
【0052】
(実施例4)
次に、TiC膜の蒸着時間を18分間とし、TiN膜の蒸着時間を1時間42分とした以外は、上記実施例1と同様にして樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。この被覆膜の断面を上記実施例1と同様にして顕微鏡観察したところ、基板上に膜厚0.3μmのTiC膜が形成され、このTiC膜上に膜厚1.7μmのTiN膜が形成されていることが確認された。
【0053】
(実施例5)
次に、TiC膜の蒸着時間を1時間42分とし、TiN膜の蒸着時間を18分間とした以外は、上記実施例1と同様にして樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。この被覆膜の断面を上記実施例1と同様にして顕微鏡観察したところ、基板上に膜厚1.7μmのTiC膜が形成され、このTiC膜上に膜厚0.3μmのTiN膜が形成されていることが確認された。
【0054】
(実施例6)
実施例1と全く同じ条件でコーティングの順番をかえて樹脂接触面に、TiN上にTiC膜を積層した被覆膜を蒸着した。すなわち、真空容器内にTiのターゲットを固定して、その対向面に樹脂接触面となる平面を鏡面に研摩したステンレス製円板(180mmφ×20mm厚み)を配置して基板とし、真空に減圧した後、N2ガスを導入して、圧力を10-5Torr(133×10-5Pa)に調整した。次いで、前記基板に1000Vのバイアス電圧を印加して、表面をスパッタしてクリーニング処理した後、前記Tiターゲットに20Vの電圧で15Aのアーク放電を発生させ、ターゲット表面からTiを蒸発させた。その際基板に50Vのバイアス電圧を印加することにより、TiN膜を基板表面に蒸着させた。このTiN膜の蒸着速度は1μm/hrで、1時間の蒸着で1μmのTiN膜が得られた。
次に、反応ガスとしてアセチレンガスをN2ガスに代えて圧力10-4Torr(133×10-4Pa)になるように導入し、TiNの場合と同様な条件で反応を行い、1時間の蒸着によりTiN膜上に1μmのTiC膜を蒸着した。以上の工程により樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。
上記にて得られた蒸着膜の断面を顕微鏡観察したところ、基板上にTiN膜(1μm)/TiC膜(1μm)の積層膜からなる被覆膜が得られていることが確認された。
【0055】
(実施例7)
次に、TiN膜の蒸着時間を30分間とし、TiC膜の蒸着時間を1時間30分とした以外は、上記実施例6と同様にして樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。この被覆膜の断面を上記実施例6と同様に顕微鏡観察したところ、基板上に膜厚0.5μmのTiN膜が形成され、このTiN膜上に膜厚1.5μmのTiC膜が形成されていることが確認された。
【0056】
(実施例8)
次に、TiN膜の蒸着時間を1時間30分とし、TiC膜の蒸着時間を30分間とした以外は、上記実施例6と同様にして樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。この被覆膜の断面を上記実施例6と同様にして顕微鏡観察したところ、基板上に膜厚1.5μmのTiN膜が形成され、このTiN膜上に膜厚0.5μmのTiC膜が形成されていることが確認された。
【0057】
(実施例9)
次に、TiN膜の蒸着時間を18分間とし、TiC膜の蒸着時間を1時間42分とした以外は、上記実施例6と同様にして樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。この被覆膜の断面を上記実施例6と同様にして顕微鏡観察したところ、基板上に膜厚0.3μmのTiN膜が形成され、このTiN膜上に膜厚1.7μmのTiC膜が形成されていることが確認された。
【0058】
(実施例10)
次に、TiN膜の蒸着時間を1時間42分とし、TiC膜の蒸着時間を18分間とした以外は、上記実施例6と同様にして樹脂接触面上に被覆膜が形成された金型装置を作製した。この被覆膜の断面を上記実施例6と同様にして顕微鏡観察したところ、基板上に膜厚1.7μmのTiN膜が形成され、このTiN膜上に膜厚0.3μmのTiC膜が形成されていることが確認された。
【0059】
以上により作製された実施例1〜10の基板と、比較例として平面を鏡面に研摩したステンレス製円板(180mmφ×20mm厚み)とを用意し、これらを成膜面がスタンパーに対向するように金型装置に装着して、射出成形を行った。30万ショット後の樹脂接触面の状態を目視観察した結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0003695400
【0061】
実施例1〜5は基板側から順にTiC膜―TiN膜で、実施例6〜10はこの逆で基板側から順にTiN膜―TiC膜の構成です。
実施例4,5は、請求項1,2は満たすが、請求項3を満たさない例です。同様に実施例9,10は請求項1,2は満たすが、請求項3を満たさない例です。
表1に示すように、被覆膜を構成するTiC膜とTiN膜の膜厚比が、3:1〜1:3の範囲とされた実施例1〜3および実施例6〜8の金型は、その強度及び耐食性において、被覆膜が形成されていない比較例の金型よりも優れ、かつその密着強度も十分であることが確認できた。TiC膜とTiN膜の膜厚比が上記3:1〜1:3の範囲を外れる金型(実施例4,5および実施例9、10)においては、実施例1〜3および実施例6〜8の金型に比して強度又は耐食性がやや劣る結果となったが、実用上は問題ない程度であった。
【0062】
(実施例11)
実施例1において、TiC膜とTiN膜との蒸着時間を変化させた以外は全く同様にして、樹脂接触面上に種々の膜厚の被覆膜を形成した。この際にTiC膜とTiN膜の膜厚比は1:1となるようにした。
これらを成膜面がスタンパーに対向するように金型装置に装着して、射出成形を行った。30万ショット後の樹脂接触面の状態を目視観察した結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
Figure 0003695400
【0064】
表2に示したように、樹脂接触面に形成された被覆膜の膜厚が1μm〜6μmの範囲とされた金型は、30万ショット後にも樹脂接触面に傷や被覆膜の剥離、変色、付着物等は見られず、極めて良好な耐久性を備えることが確認された。
【0065】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の光ディスク成形用金型装置は、第1の型体と第2の型体の少なくとも一方の樹脂接触面に、TiC膜とTiN膜とを積層してなる被覆膜を形成したことで、射出成形時の加熱冷却に伴う型体の膨張収縮や機械的磨耗による樹脂接触面の損耗を効果的に防止することができ、金型装置の長寿命化を実現することができる。また、溶融樹脂に同伴されて製品キャビティ内に導入されるガス成分に起因する樹脂接触面の腐食も防止することができるので、金型装置の寿命を延ばすことができるばかりでなく、溶融樹脂の流動不均一を起因とするディスクの複屈折の発生や離型時の反りをも抑制でき、高品質の基板が製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る光ディスク成形用金型装置の断面構成図である。
【図2】 図2は、本発明に係る光ディスク成形用金型装置に備えられたガイドピン及びガイドピン受けの断面図である。
【図3】 図3は、図1に示す金型装置の固定型の平面図である。
【図4】 図4は、図1に示す金型装置のゲート付近の拡大断面図である。
【図5】 図5は、本発明に係る金型装置により作製される光ディスクの一例を示す部分断面図である。
【図6】 図6は、図5に示す光ディスクを製造するための金型装置の構成を示す断面構成図である。
【図7】 図7は、光ディスク成形用金型の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 固定型(第1の型体)
2 可動型(第2の型体)
2a 樹脂接触面
2b 被覆膜
2C TiC膜
2N TiN膜
3 製品キャビティ
10 スプルー
17a スタンパー支持面
19 固定側位置決めリング
21 テーパー面
22 ガイドピン(案内部材)
36 スタンパー
38 凹部
48 可動側位置決めリング(位置決め部材)
50 テーパー面
58 ガイドピン受け(案内部材)
86 ゲートカットスリーブ(ゲートカット部材)

Claims (5)

  1. 射出成形により光ディスクを成形するためのキャビティ空間を画定する第1の型体及び第2の型体とが備えられ、前記第1の型体又は第2の型体に光ディスクに凹凸を形成するためのスタンパーを受けるスタンパー支持面が形成され、
    前記第1の型体と第2の型体の少なくとも一方の樹脂接触面に、TiC膜とTiN膜とを膜厚比3:1〜1:3の範囲で積層してなる、膜厚が1μm〜6μmの範囲の被覆膜が形成されたことを特徴とする光ディスク成形用金型装置。
  2. 前記TiC膜及び/又はTiN膜が、イオンプレーティング法により形成されたものであること特徴とする請求項1に記載の光ディスク成形用金型装置。
  3. 前記スタンパー支持面を有する型体に、スタンパーの裏面側を排気してスタンパーを固定する真空チャック機構が備えられたことを特徴する請求項1または2に記載の光ディスク成形用金型装置。
  4. 前記スタンパー支持面を有する型体に、スタンパーの内端部を固定するための爪部が形成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光ディスク成形用金型装置。
  5. 前記第1の型体及び第2の型体の対向する面に設けられ、型閉時にテーパー嵌合するテーパー面が形成された位置決め部材と、
    前記第1の型体及び第2の型体のうち一方に設けられたガイドピンと、他方の型体の前記ガイドピンと対向する位置に設けられ、前記ガイドピンが前記型体の開閉方向へ摺動自在に嵌合されるガイドピン受けとを備える案内部材と、
    を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光ディスク成形用金型装置。
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