JP3695396B2 - 難削材の高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

難削材の高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、耐酸化性被覆層がすぐれた高温特性を有し、特に高い発熱を伴うステンレス鋼や軟鋼などの難削材の高速切削加工に用いた場合に、すぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、切削工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
【0003】
また、近年、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットからなる基体(以下、これらを総称して超硬基体と云う)の表面に、組成式:(Al1-(V+W)TiVSiW)N(ただし、原子比で、Vは0.10〜0.25、Wは0.05〜0.20を示す)を満足するAl基複合窒化物層からなる耐酸化性被覆層を2〜12μmの平均層厚で物理蒸着してなる被覆超硬工具が、特にステンレス鋼や軟鋼などの難削材の切削加工に適した切削工具として注目されている。
【0004】
さらに、上記の被覆超硬工具が、例えば図1に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に上記の超硬基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば雰囲気を1.3×10-3Paの真空として、500℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を有するAl−Ti−Si合金がセットされたカソード電極(蒸発源)との間に、例えば電圧:35V、電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入し、一方上記超硬基体には、例えば−200Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記超硬合金基体の表面に、上記Al基複合窒化物層からなる耐酸化性被覆層を蒸着することにより製造されることも知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆超硬工具においては、これをステンレス鋼や軟鋼などの難削材の通常の条件での切削加工には問題はないが、これを粘性の高い前記の被削材の切削加工をきわめて高い発熱を伴う高速切削条件で行なった場合には、耐酸化性被覆層が十分な高温特性を具備しないことから、切刃の摩耗進行が著しく促進されるようになり、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、ステンレス鋼や軟鋼などの難削材の切削加工を高速切削条件で行なった場合にも、すぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具を開発すべく、特に上記の従来被覆超硬工具を構成する耐酸化性被覆層に着目し、研究を行った結果、
(a)上記の従来被覆超硬工具を構成するAl基複合窒化物層からなる耐酸化性被覆層は「六方晶」の結晶構造をもつが、この結晶構造が「六方晶」の耐酸化性被覆層を超硬基体表面に物理蒸着形成する前に、予め組成式:(Al1-(X+Y)TiXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.35〜0.60、Yは0.01〜0.15を示す)を満足し、この結果「立方晶」の結晶構造をもつようになるAl−Ti系複合窒化物層をきわめて薄い0.05〜1μmの平均層厚で蒸着形成しておくと、これの上に物理蒸着された、本来「六方晶」の結晶構造を有する前記Al基複合窒化物層も前記Al−Ti系複合窒化物層による結晶履歴効果によってこれの結晶構造と同じ「立方晶」の結晶構造をもつようになること。
【0007】
(b)結晶構造が「立方晶」のAl基複合窒化物層は、同「六方晶」のAl基複合窒化物層に比して高温特性(高温耐酸化性、高温強度、および高温硬さ)にすぐれているので、前記結晶構造が「立方晶」のAl基複合窒化物層からなる耐酸化性被覆層を超硬基体表面に物理蒸着してなる被覆超硬工具は、高い発熱を伴うステンレス鋼や軟鋼などの難削材の高速切削加工ですぐれた耐摩耗性を発揮するようになること。
以上(a)および(b)に示される研究結果を得たのである。
【0008】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、超硬基体の表面に、
0.05〜1μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Al1-(X+Y)TiXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.35〜0.60、Yは0.01〜0.15を示す)を満足すると共に、立方晶の結晶構造を有するAl−Ti系複合窒化物層からなる結晶履歴層を介して、
2〜12μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Al1-(V+W)TiVSiW)N(ただし、原子比で、Vは0.10〜0.25、Wは0.05〜0.20を示す)を満足すると共に、同じく立方晶の結晶構造を有するAl基複合窒化物層からなる耐酸化性被覆層を物理蒸着してなる、
難削材の高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具に特徴を有するものである。
【0009】
つぎに、この発明の被覆超硬工具において、これを構成する結晶履歴層および耐酸化性被覆層の組成および平均層厚を上記の通りに限定した理由を説明する。
(a)結晶履歴層(Al−Ti系複合窒化物層)
Al−Ti系複合窒化物層におけるTiは、層の結晶構造を「立方晶」とする目的で含有するものであり、したがってTiの割合がAlとSiの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.35未満では、立方晶の結晶構造を確保することができず、一方その割合が0.60を越えると層自体の高温硬さおよび耐熱性に低下傾向が現れるようになることから、その割合を0.35〜0.60と定めた。
同じくSiは層の硬さを向上させる目的で含有するが、その割合がAlとTiの合量に占める割合で0.01未満では所望の硬さ向上効果が得られず、一方その割合が同じく0.15を越えると、層の結晶構造を「立方晶」に保持することが困難になることから、その割合を0.01〜0.15と定めた。
また、その平均層厚が0.05μm未満では、Al基複合窒化物層の本来有する「六方晶」の結晶構造を「立方晶」に転化する結晶履歴効果を十分に発揮させることができず、一方この結晶履歴効果は1μmまでの平均層厚で十分であることから、その平均層厚を0.05〜1μmと定めた。
【0010】
(b)耐酸化性被覆層(Al基複合窒化物層)
Al基複合窒化物層のiは、耐酸化性にすぐれたAlN層の強度を向上させる目的で含有するが、その割合がAlとSiとの合量に占める割合で0.10未満では所望の強度向上効果が得られず、一方その割合が同じく0.25を越えると、層の耐酸化性が急激に低下し、特に高熱発生を伴う切削時の摩耗が促進されるようになることから、その割合を0.10〜0.25と定めた。
同じくSiは、層の硬さを向上させる目的で含有するが、その割合がAlとTiの合量に占める割合で0.05未満では所望の硬さ向上効果が得られず、一方その割合が同じく0.20を越えると、相対的にAlの割合が少なくなり過ぎて耐酸化性が急激に低下するようになることから、その割合を0.05〜0.20と定めた。
また、その平均層厚が2μm未満では、所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その平均層厚が12μmを越えると、切刃にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を2〜12μmと定めた。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の被覆超硬工具を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.05のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体A1〜A10を形成した。
【0012】
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN系サーメット製の超硬基体B1〜B6を形成した。
【0013】
ついで、これら超硬基体A1〜A10およびB1〜B6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、それぞれ図1に例示される通常のアークイオンプレーティング装置に装入し、一方カソード電極(蒸発源)として種々の成分組成をもったAl−Ti系複合窒化物層形成用Al−Ti−Si合金およびAl基複合窒化物層形成用Al−Ti−Si合金を装着し、装置内を排気して1.3×10-3Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを装置内に導入して10PaのAr雰囲気とし、この状態で超硬基体に−800vのバイアス電圧を印加して超硬基体表面をArガスボンバート洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して6Paの反応雰囲気とすると共に、前記超硬基体に印加するバイアス電圧を−200vに下げて、前記カソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体A1〜A10およびB1〜B6のそれぞれの表面に、表3,4に示される目標組成および目標層厚の結晶履歴層(Al−Ti系複合窒化物層)および耐酸化性被覆層(Al基複合窒化物層)を蒸着することにより、図2(a)に概略斜視図で、同(b)に概略縦断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜20をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表5,6に示される通り上記結晶履歴層(Al−Ti系複合窒化物層)の形成を行なわない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、従来被覆超硬チップと云う)1〜20をそれぞれ製造した。
【0014】
つぎに、上記本発明被覆超硬チップ1〜20および従来被覆超硬チップ1〜20について、これを工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SUS304の丸棒、
切削速度:200m/min.、
切り込み:2mm、
送り:0.21mm/rev.、
切削時間:8分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速連続旋削加工試験、
被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:180m/min.、
切り込み:1mm、
送り:0.17mm/rev.、
切削時間:2分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続旋削加工試験、さらに、
被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:2mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:3分、
の条件での軟鋼の乾式高速断続旋削加工試験を行い、いずれの旋削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表7、8に示した。
【0015】
【表1】
Figure 0003695396
【0016】
【表2】
Figure 0003695396
【0017】
【表3】
Figure 0003695396
【0018】
【表4】
Figure 0003695396
【0019】
【表5】
Figure 0003695396
【0020】
【表6】
Figure 0003695396
【0021】
【表7】
Figure 0003695396
【0022】
【表8】
Figure 0003695396
【0023】
(実施例2)
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr32粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表9に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表9に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法をもった超硬基体(エンドミル)a〜hをそれぞれ製造した。
【0024】
ついで、これらの超硬基体(エンドミル)a〜hを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に例示される通常のアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、前記超硬基体a〜hのそれぞれの表面に表10に示される目標組成および目標層厚をもった結晶履歴層(Al−Ti系複合窒化物層)および耐酸化性被覆層(Al基複合窒化物層)を蒸着することにより、図3(a)に概略正面図で、同(b)に切刃部の概略横断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、本発明被覆超硬エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表11に示される通り上記結晶履歴層(Al−Ti系複合窒化物層)の形成を行なわない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、従来被覆超硬エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
【0025】
つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1〜8および従来被覆超硬エンドミル1〜8のうち、本発明被覆超硬エンドミル1〜3および従来被覆超硬エンドミル1〜3については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS304の板材、
切削速度:35m/min.、
溝深さ(切り込み):2.5mm、
テーブル送り:130mm/分、
の条件でのステンレス鋼の湿式高速溝切削加工試験(水溶性切削油使用)、本発明被覆超硬エンドミル4〜6および従来被覆超硬エンドミル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S15C板材、
切削速度:100m/min.、
溝深さ(切り込み):4mm、
テーブル送り:450mm/分、
の条件での軟鋼の乾式高速溝切削加工試験、本発明被覆超硬エンドミル7,8および従来被覆超硬エンドミル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS304の板材、
切削速度:30m/min.、
溝深さ(切り込み):8mm、
テーブル送り:110mm/分、
の条件でのステンレス鋼の湿式高速溝切削加工試験(水溶性切削油使用)、
をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部先端面の直径が使用寿命の目安とされる0.2mm減少するまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表10、11にそれぞれ示した。
【0026】
【表9】
Figure 0003695396
【0027】
【表10】
Figure 0003695396
【0028】
【表11】
Figure 0003695396
【0029】
(実施例3)
上記の実施例2で製造した直径が8mm(超硬基体a〜c形成用)、13mm(超硬基体d〜f形成用)、および26mm(超硬基体g、h形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mm(超硬基体a´〜c´)、8mm×22mm(超硬基体d´〜f´)、および16mm×45mm(超硬基体g´、h´)の寸法をもった超硬基体(ドリル)a´〜h´をそれぞれ製造した。
【0030】
ついで、これらの超硬基体(ドリル)a´〜h´を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に例示される通常のアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、前記超硬基体a´〜h´のそれぞれの表面に表12に示される目標組成および目標層厚をもった結晶履歴層(Al−Ti系複合窒化物層)および耐酸化性被覆層(Al基複合窒化物層)を蒸着することにより、図4(a)に概略正面図で、同(b)に溝形成部の概略横断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製ドリル(以下、従来被覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表13に示される通り上記結晶履歴層[(Al,Ti−si)N層]の形成を行なわない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製ドリル(以下、従来被覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
【0031】
つぎに、上記本発明被覆超硬ドリル1〜8および従来被覆超硬ドリル1〜8のうち、本発明被覆超硬ドリル1〜3および従来被覆超硬ドリル1〜3については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:8mmのJIS・SUS304板材、
切削速度:30m/min.、
送り:0.08mm/rev、
の条件でのステンレス鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、本発明被覆超硬ドリル4〜6および従来被覆超硬ドリル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:16mmのJIS・SUS304の板材、
切削速度:30m/min.、
送り:0.15mm/rev、
の条件でのステンレス鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、本発明被覆超硬ドリル7,8および従来被覆超硬ドリル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:32mmのJIS・S15Cの板材、
切削速度:80m/min.、
送り:0.30mm/rev、
の条件での軟鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表12、13にそれぞれ示した。
【0032】
【表12】
Figure 0003695396
【0033】
【表13】
Figure 0003695396
【0034】
なお、この結果得られた本発明被覆超硬工具としての本発明被覆超硬チップ1〜20、本発明被覆超硬エンドミル1〜8、および本発明被覆超硬ドリル1〜8の結晶履歴層(Al−Ti系複合窒化物層)および耐酸化性被覆層(Al基複合窒化物層)、並びに従来被覆超硬工具としての従来被覆超硬チップ1〜20、従来被覆超硬エンドミル1〜8、および従来被覆超硬ドリル1〜8の耐酸化性被覆層(Al基複合窒化物層)の組成について、その厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置を用いて測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、これらの本発明被覆超硬工具、並びに従来被覆超硬工具の上記構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
さらに、これらの本発明被覆超硬工具、並びに従来被覆超硬工具の上記構成層の結晶構造を透過型電子顕微鏡を用いて断面測定した結果を表3〜6および表10〜13にそれぞれ示した。
【0035】
【発明の効果】
表3〜13に示される結果から、結晶履歴層の介在によって耐酸化性被覆層が立方晶の結晶構造を有し、これによってすぐれた高温特性(高温耐酸化性、高温強度、および高温硬さ)を具備するようになる本発明被覆超硬工具は、いずれもステンレス鋼や軟鋼の切削加工を高い発熱を伴う高速で行っても、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、耐酸化性被覆層の結晶構造が六方晶の従来被覆超硬工具においては、高温特性不足が原因で摩耗進行が速く、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆超硬工具は、特に粘性が高く、高い発熱を伴うステンレス鋼や軟鋼などの難削材の高速切削加工でもすぐれた耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アークイオンプレーティング装置の概略説明図である。
【図2】 (a)は被覆超硬チップの概略斜視図、(b)は被覆超硬チップの概略縦断面図である。
【図3】 (a)は被覆超硬エンドミル概略正面図、(b)は同切刃部の概略横断面図である。
【図4】 (a)は被覆超硬ドリルの概略正面図、(b)は同溝形成部の概略横断面図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金基体または炭窒化チタン系サーメット基体の表面に、
    0.05〜1μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Al1-(X+Y)TiXSiY)N(ただし、原子比で、Xは0.35〜0.60、Yは0.01〜0.15を示す)を満足すると共に、立方晶の結晶構造を有するAl−Ti系複合窒化物層からなる結晶履歴層を介して、
    2〜12μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Al1-(V+W)TiVSiW)N(ただし、原子比で、Vは0.10〜0.25、Wは0.05〜0.20を示す)を満足すると共に、同じく立方晶の結晶構造を有するAl基複合窒化物層からなる耐酸化性被覆層を物理蒸着してなる、
    難削材の高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具。
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