JP3692971B2 - 3次元仮想組立システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、データ入力手段により入力されたデータに基づいて、制御手段がワイヤーハーネスの3次元設計データを表示手段に表示された仮想3次元空間内に表示する3次元仮想組立システム及びそれに関連する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車や電化製品内の電気配線としてワイヤーハーネスが使用される。このワイヤーハーネスを製造するに当たっては、まず自動車や電化製品と言った布線対象について、当該布線対象内の各種部品の取付位置等に基づいて、ワイヤーハーネスの3次元的な配線設計を行った後、その3次元的な配線設計結果に基づいて、2次元としての設計用紙にワイヤーハーネスの製図を設計する。そして、この製図に描かれたワイヤーハーネスの設計に従って、図14に示したような図板1上に複数の支持治具2を取り付け、この支持治具2で複数の電線を束ねながら支持し、樹脂テープで巻締めるなどしてワイヤーハーネス3を制作する。
【0003】
このように作成されるワイヤーハーネス3に対して、従来、その制作図面での設計に対する完成度評価を行う場合、対象製品並びにワイヤーハーネスの2次元図面をCAD等の設計支援システムで作成・出力し、その図面を設計者がチェックして、問題点を摘出する方法がある。
【0004】
その他、ワイヤーハーネス3の試作品を製作し、その試作品を、図15のような自動車や電化製品等の布線対象4に実際に配策してみて、ワイヤーハーネス試作品3の布線対象4に対する適正を検討することで、ワイヤーハーネスの設計が適正であるか否かを検討する方法もあった。
【0005】
尚、図14及び図15中の符号5は各種部品に接続するためのコネクタを示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
設計者が図面を見て問題点の評価を行う方法では、設計者の熟練度によって評価基準が異なり、統一的な評価基準を作成しにくいという問題がある。
【0007】
これに対して、実際に試作品3を制作し、その試作品3を布線対象4に布線する方法は、3次元的な問題点の摘出を満足に行うことができる点で有利である。
【0008】
しかしながら、一般に、ワイヤーハーネスの組み立て(アセンブリ)工程は、ほとんど手作業に依存しており、したがって試作品の制作作業も人的資源集約型の作業を要求されるため、多大な労力が必要になるとともに、費やす時間も膨大なものとなる。
【0009】
そして、試作品が布線対象に取り付けられた際に、寸法不足や取付角度に無理な負荷がかかるなどの何らかの問題が発生した場合には、ワイヤーハーネスの設計及び試作品の製作を何度もやり直さなければならない。したがって、製図に設計されたワイヤーハーネスの布線従来の適否についての検討(布線検討)に際しては、極めて多大な手間及び時間がかかり、その結果、設計完成に至るまでの開発期間が長期化するという問題があった。
【0010】
そこで、この発明の課題は、ワイヤーハーネスを設計する際に、当該設計結果に対して仮想的に布線検討を行うことで、効率の良い布線検討作業を行い得る3次元仮想組立システム及びそれに関連する技術を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、ワイヤーハーネスの設計に用いられるワイヤーハーネス設計システムであって、入力を受け付けるデータ入力手段と、表示手段と、制御手段とを備え、前記制御手段は、所定の布線対象に3次元的に配索された前記ワイヤーハーネスの形状に対応する基準配策データと、製造のために設計された前記ワイヤーハーネスが3次元的に配策された3次元設計データとを前記データ入力手段を介して受け付け、その基準配策データの画像を、前記表示手段によって表示される仮想3次元空間に背景画像として表示するとともに、前記3次元設計データを前記背景画像に重ねて表示し、前記データ入力手段での入力に応じて、前記3次元設計データとしての前記ワイヤーハーネスの形状を変更して表示するようになっており、前記制御手段は、さらに、前記データ入力手段での入力に応じた前記ワイヤーハーネスの形状の前記変更を行う前に、前記ワイヤーハーネスの外周に中心軸に平行な一直線状の表面直線を仮想的に描写し、前記ワイヤーハーネスの形状の前記変更による前記ワイヤーハーネスの捻れ角に伴って前記表面直線を捻らせて前記表示手段に表示する。
また、請求項2に記載の発明は、ワイヤーハーネスの設計に用いられるワイヤーハーネス設計システムであって、入力を受け付けるデータ入力手段と、表示手段と、制御手段とを備え、前記制御手段は、所定の布線対象に3次元的に配索された前記ワイヤーハーネスの形状に対応する基準配策データと、製造のために設計された前記ワイヤーハーネスが3次元的に配策された3次元設計データとを前記データ入力手段を介して受け付け、その基準配策データの画像を、前記表示手段によって表示される仮想3次元空間に背景画像として表示するとともに、前記3次元設計データを前記背景画像に重ねて表示し、前記データ入力手段での入力に応じて、前記3次元設計データとしての前記ワイヤーハーネスの形状を変更して表示するようになっており、前記3次元設計データが複数の線片に分割され、少なくとも各線片毎の座標を示すベクトル情報が設定されており、前記制御手段は、さらに、前記ワイヤーハーネスの一部が外装部品に覆われる場合に、前記線片の3次元設計データに代えて、前記外装部品の3次元設計データを前記線片毎に代用する。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかの発明に係る3次元仮想組立システムであって、前記3次元設計データが、ワイヤーハーネスの製造時に使用される図板の主平面に沿って2次元的に表された2次元データに対して、前記主平面の法線方向の座標を追加して生成される。
また、請求項4に記載の発明は、請求項2の発明に係る3次元仮想組立システムであって、前記制御手段は、前記ワイヤーハーネスの形状を変更する際、隣り合う線片同士の中心線同士が連続しているものとして、前記当該各線片毎のベクトル情報を変更する。
また、請求項5に記載の発明は、請求項2または請求項4のいずれかの発明に係る3次元仮想組立システムであって、隣り合う線片同士の方向の位相差についてのデータが各線片毎に付与される。
【0019】
【発明の実施の形態】
この発明の一の実施の形態に係る3次元仮想組立システムは、設計されたワイヤーハーネスの形状を3次元のデジタルデータ(以下「3次元設計データ」と称す)で作成するとともに、ワイヤーハーネスが搭載される製品(布線対象)のワイヤーハーネス配策経路の3次元デジタルデータ(以下「基準配策データ」と称す)を画像表示し、この画像表示された基準配策データに対して3次元設計データが重ね合わさるように、当該3次元設計データの位置決め及び湾曲等の変形を行って仮想的な照合を行うことで、設計されたワイヤーハーネスの不整合点(不整合内容)を検出可能とするものである。
【0020】
<3次元仮想組立システムの全体構成>
図1はこの発明の一の実施の形態に係る3次元仮想組立システムを示す図である。この3次元仮想組立システムは、ハードウェア資源として、図1の如く、CRTディスプレイ等の表示装置(表示手段)11、キーボード12及びマウス13等の入力装置14、ハードディスクドライブ等の記憶装置15、及びCPU並びに主メモリ等を備えるコンピュータ本体(制御手段)16とを備える。記憶装置15には、入力装置14からの入力操作に基づいて、記憶装置15内の各種データを使用してコンピュータ本体16のCPUが演算処理する際の処理手順を規定したソフトウェアプログラムが格納されている。
【0021】
尚、図示省略しているが、データを入力するデータ入力手段としては、上記入力装置14の他、例えば磁気ディスク等の記録媒体を読み込む媒体読み込み装置や、LAN(ローカルエリアネットワーク)等の通信経路を介在させて通信によりデータ受信を行う通信装置等も含まれる。
【0022】
これらのハードウェア資源11〜16を組み合わせて使用することにより、図2のフローチャートに示す3次元仮想組立方法の各工程が順次が実現される。かかる各工程は、記憶装置15内に予め記憶されたソフトウェアプログラムによって規律される。
【0023】
<3次元仮想組立方法>
事前段階として、基準配策データをコンピュータ本体16に入力しておく。
【0024】
ここでいう基準配策データとは、布線対象をモデリングした3次元空間におけるワイヤーハーネスの3次元的な布線形状の電子データ(3次元電子データ)をいう。例えば、自動車や電化製品と言った布線対象について、当該布線対象内の各種部品の取付位置等に基づいて、予めワイヤーハーネスの3次元的な配線設計を行っておき、そのときの3次元空間におけるワイヤーハーネスの形状の座標情報や、ワイヤーハーネスに取り付けられる各種部品の座標情報等を、3次元図面としてCAD等の設計支援ソフトウェアプログラムを用いて3次元電子データとして作成しておき、この3次元電子データをコンピュータ本体16に入力し記憶装置15内に格納しておく(図1参照)。ここで使用するCADソフトウェアプログラムとしては、コンピュータ本体16内と同一の機器を使用してもよく、この場合のワイヤーハーネス3の形状に関する入力データとして入力装置14を用いて手作業で入力してもよいが、他のCADシステムで作成された3次元電子データを、通信または磁気ディスク等の所定の記録媒体を通じてコンピュータ本体16に移管するようにしてもよい。
【0025】
[ステップS1]3次元設計データ入力工程
ここでいう3次元設計データとは、2次元平面状の図板1上で製造する際の2次元的な電子データ(2次元電子データ)を3次元座標表示した電子データを言う。
【0026】
まず、図2中のステップS1において、上記の3次元図面に基づいて、ワイヤーハーネス3の分岐から分岐までの長さ寸法やコネクタ取付の位置等の各サイズを設計した上で、図14のように図板1上でワイヤーハーネス3を製造することを念頭に置いた当該ワイヤーハーネス3の2次元図面(製図)をCAD等の設計支援ソフトウェアプログラムを用いて2次元電子データとして作成しておき、この2次元電子データをコンピュータ本体16に入力する。
【0027】
次に、コンピュータ本体16内において、入力された2次元電子データの座標平面(xy平面)に対して法線方向の座標軸(z軸)を加えて、当該2次元電子データを3次元設計データとして記憶装置15内に記憶させておく。尚、2次元電子データのコンピュータ本体16に対する入力方法としては、入力装置14を用いて手作業で入力してもよいが、他のCADシステムで作成された3次元電子データを、通信または磁気ディスク等の所定の記録媒体を通じてコンピュータ本体16に移管するようにしてもよい。
【0028】
ここで、2次元データとして入力される情報としては、図3の如く、ワイヤーハーネス3を構成する各電線の図板1上での形状を特定するための各ノードn01〜n20の2次元座標情報、各ノードn01〜n20同士が結線されることを示す電線のリンク情報、ノードn01〜n20間に結線される電線の径r01〜r14等がある。
【0029】
また、後述の3次元設計データ変形工程に際して、ワイヤーハーネス3の各電線の現実的な変形を可能にするため、図4に示すような中心線21aを有する電線21の長さ方向に沿って、図5のように複数の短い長さaの線片22に分割し、この線片22を単位として各電線21を変形することを考慮して、このステップS1の工程において、各線片22の長さ寸法aを入力しておく。この長さaとしては約10mm程度が望ましい。各線片22の長さは等しくてもよく、または別々に異なる値として設定も可能とされる。かかる複数の線片22により長さLの電線21が細かく分割される。
【0030】
さらに、ワイヤーハーネス3を構成する複数の電線のそれぞれの重み付けデータを入力しておく(後述)。この重み付けデータは、後述の3次元設計データ変形工程において、各電線の変形のしにくさを意味するパラメータであり、重み付けデータの値が大きな電線ほど、変形の際に移動が困難となり、また電線の湾曲変形についても、重み付けデータの値が大きな電線ほど、変形点のみが変形するのではなく、電線全体に渡って湾曲するようになる。かかる重み付けデータは、各電線の径等の諸因子に応じて経験的に求められたデータである。
【0031】
[ステップS2]基準配策データ画像表示工程
続くステップS2においては、事前に入力された基準配策データを、仮想的な3次元空間においてプロットして表示装置11に3次元表示する。この仮想3次元空間においては、例えばマウス13等の入力装置14での操作に基づいて、その仮想的な3次元空間内で、仮想的な視点変更を行うことが可能となっている。
【0032】
尚、この基準配策データは、後述のように3次元設計データを表示する際の背景画像となるものであって、3次元設計データに対して識別するため、基準配策データで規定される仮想的なワイヤーハーネス3の3次元形象表示は、例えば無彩色で表示される。
【0033】
[ステップS3]3次元設計データ表示工程
次に、ステップS3において、ステップS1で入力された3次元設計データを、ステップS2で既に画像表示されている基準配策データの3次元空間に重ねて表示する。
【0034】
ここで、一般的な3次元設計データによる形状表現では、例えば個々の電線21または複数の電線の集合体(電線束)の各線片22を表現する場合、図4〜図6のように円柱形状を用いて表現することとなる。
【0035】
具体的に、図6に示すように、長さaの線片22のデータに対し、円柱の中心を通る方向で且つ長さを有するベクトルSを定義する。ベクトルSは、x軸、y軸及びz軸からなる3次元空間内の方向情報及び長さ情報と、連続される他の線片との間の捻れ角(線軸を中心とした回転角)θによる基準点からの回転角情報を特定することで、唯一の絶対位置と捻れ度合いを特定設定できる。
【0036】
そして、個々の独立な線片22データが、互いに連続的に接続(連続接続)されたものとして表示する。ここで、連続接続の方法としては、図7の如く、線片22aと線片22bを接続させる場合に、お互いの中心軸23a,23bの端点座標を一致させるようにする。
【0037】
そして、マウス13等の入力装置14を用いて3次元設計データ全体を仮想3次元空間内で移動させ、3次元設計データと基準配策データの全体的な位置関係を調整する。そして、操作者が望ましいと考える位置に3次元設計データが調整(位置決め)された時点で、ステップS3を終了する。
【0038】
[ステップS4]3次元設計データ変形工程
そして、ステップS4において、マウス13等の入力装置14を用いて、3次元設計データによる電線21の形状を、背景画像として表示されている基準配策データ画像に一致するように、操作者が入力装置14を用いて手作業で変形する。
【0039】
通常の3次元シミュレーションシステムの機能を用いて、この線片22の柔軟性をデータで表現して処理することも不可能ではないが、操作が極めて煩雑であるため、操作の結果が操作者の意思通りになるとは限らない。
【0040】
そこで、この3次元仮想組立システムでは、操作者の意志通りに柔軟性ある特性表現を可能とするため、次のような処理を行う。
【0041】
コンピュータ本体16内での各線片22の認識は、上述した通り、3次元空間内でのベクトルS(x,y,z,θ)というベクトル変数で行う。尚、変数θは、図8の如く、互いに連続した線片22a,22b同士の間で生じる捻れ角を意味している。尚、図8では、簡便のため、z軸を省略してx,y平面上で図示しているが、z軸を加えた3次元座標でも同様であることはいうまでもない。
【0042】
例えば図8において、5個の線片22のベクトルSが次の値を持っているとする。
【0043】
ベクトルS1=(X1、Y1、Z、θ)
ベクトルS2=(X2、Y2、Z、θ)
ベクトルS3=(X3、Y2、Z、θ)
ベクトルS4=(X4、Y1、Z、θ)
ベクトルS5=(X5、0、Z、θ)
このようにベクトル設定を行っておき、各線片22の端点をマウス13等の入力装置14で指定した状態で、マウス13のドラッグと称される特別な操作により、当該線片22の端点を3次元空間内で移動させる。
【0044】
この場合においても、例えば図7のような線片22a,22b同士の接続点24では、両側の一対の線片22a,22bが連続した状態が保持されるため、各線片22の端点の位置移動処理を行うと、その連続接続の結果は、ワイヤーハーネス3の湾曲を表現することになる。即ち、互いに連続した線片22同士は、一方にテンションが掛けられた場合に他方が引きずられるように移動するようになっており、そのときの他方の線片の移動ベクトルは、一方の線片との連続接続点の変動ベクトルに依存するよう、経験則に基づいて所定の演算式により設定される。かかる処理により、ワイヤーハーネス3は全ての電線の連続性の情報を失わずに変形処理することが可能となる。
【0045】
ただし、例えば図8中の点(X5,0)の位置をマウス13等の入力装置14で移動変更する場合、これに伴う他の接続点への影響の度合いは各々異なることになる。即ち、マウス13等の入力装置14で移動させた点に近い他の接続点に対する移動量の方が、遠い他の接続点の移動量よりも大きくなる。ここで、各接続点の位置変更後の値が次のようになるとする。
【0046】
ベクトルS1=(X1、Y1、Z、θ1)
ベクトルS2=(X2、Y2、Z、θ2)
ベクトルS3=(X3、Y2、Z、θ3)
ベクトルS4=(X4、Y1、Z、θ4)
ベクトルS5=(X5、0、Z、θ5)
この場合、θ1<θ2<θ3<θ4<θ5となる。これにより、ワイヤーハーネス3の湾曲形状を、絶対座標と相対的な捻れ度合いの両方について表現可能となるとともに、撓み等の他の柔軟性ある表現も自由に行うことができる。尚、θ1〜θ5までの関係式については、経験則等に基づいて事前に設定されており、3次元仮想組立システムの動作を規律するソフトウェアプログラムとして予め定義されている。
【0047】
また、ワイヤーハーネス3において、異なる電線同士の影響については、各電線の変形のしにくさを意味する重み付けのパラメータを考慮する。即ち、所定の演算式を用いて、重み付けデータの値が大きな電線ほど、変形の際に移動量を少なくし、また電線の湾曲変形についても、重み付けデータの値が大きな電線ほど、変形点のみが変形するのではなく、電線全体に渡って緩やかに湾曲するようにする。
【0048】
ところで、ワイヤーハーネス3は電線の集合体のみでなく、各種の外装部品(例えば、ビニールチューブ、コルゲートチューブ、各種テープ巻き等)26が電線21の周囲に取り付けられることが多い。したがって、これらの外装部品26も電線21の形状データと連動した形状表現にする必要がある。
【0049】
そこで、例えば、個々の外装部品26に対しては電線21と同様のデータ構造、即ち、長さ寸法や径の情報等について、外装部品26についても作成しておき、外装部品26が取り付く範囲の線片22のデータを削除して、そこに外装部品26のデータを挿入する。かかる方法により、外装部品26の直径、デザイン及び寸法形状等を電線21とは独立した処理で任意にデータ作成することができ、現物と同等の3次元ワイヤーハーネス形状の表現を行うことができる。
【0050】
ところで、この実施の形態では、上述のように、各線片の中心軸回りの相対的な捻れ角φ(上記のθに相当)のパラメータを持たせているが、捻れ角φの特性を持っていても、表示装置11に画面表示された3次元形状を見た時に、捻れの状態が認識できないと、操作者にとって扱いづらいものとなる。即ち、実際の3次元シミュレーションを効果的に行うためには「捻れ特性」を表示装置11にビジュアルに表現することが望ましい。そこで、線片22のデータを作成する初期段階において、線片22の外周表面の長さ方向に直線を付加する。この場合、図10の電線21の3次元モデルで説明する。尚、ベクトルSのパラメータである捻れ角φは、任意の固定値に設定しておくものとする。
【0051】
まず、各線片22の形状を円柱状として表示することとし、各線片22の中心軸とは別に、その円柱状の各線片22の外周表面に、長さ方向に沿って直線(以下「表面直線」と称す)を付加する。初期的には、各電線21において、全ての線片22の表面直線は一直線状に設定される。
【0052】
ここで、連続接続された線片22において、全ての線片22データの捻れ角φが同一である場合には、全ての円柱の外周表面の長さ方向の直線は、連続直線の表現となって「捻れ」のないビジュアルな表現を実現できる。
【0053】
一方、いくつかの線片22において捻れ角φを変化させると、その変化量の度合いに応じて、各線片22の外周に描写された表面直線は、図11のように捻れて表示される。即ち、例えば分岐線の移動等により或る線片22が捻れた場合、これに隣接する線片についても、捻れ角φを所定の法則で減じた状態で捻れが発生したように表示する。このように円柱状の線片22の外周に表面直線を描くだけで、「捻れ特性」をビジュアルに表現することができる。
【0054】
[ステップS5]
これらの電線21の3次元設計データの変形結果を、背景画像として表示されている基準配策データの画像に重ねて表示装置11に表示し、その一致度/不一致度を視認する。
【0055】
例えば、図12のように、背景画像である基準配策データの画像28に対して、3次元設計データの画像29の弛みが大幅に大きい場合は、その電線の設計寸法が過度に長尺であることを意味する。
【0056】
また、図13のように、背景画像である基準配策データにおける枝線28aに対して、3次元設計データ中の枝線29aが基幹電線28,29に対して逆方向に引き出されている場合は、その枝線29aの基幹電線29に対する形成方向を変更する設計変更を行う。
【0057】
その他、電線が過度に短尺である場合や、過度に捻れが生じている場合など、表示装置11での表示結果に基づいて容易に視認することができる。
【0058】
以上の3次元仮想組立方法により、ワイヤーハーネスを設計する際に、実際に試作品を制作しなくても、当該設計結果に対して仮想的に布線検討を行うことで、効率の良い布線検討作業を行うことができる。
【0059】
したがって、従来に比べて、設計に係わる手間及び時間を大幅に低減することができ、設計完成に至るまでの開発期間を飛躍的に短縮化できる。
【0060】
また、座標情報だけでなく、各電線21の捻れについての検討も合わせて行うことができ、実際的な設計検討に有用である。
【0061】
【発明の効果】
請求項1ないし請求項3に記載の発明によれば、ワイヤーハーネスを設計する際に、実際に試作品を制作しなくても、当該設計結果に対して仮想的に布線検討を行うことで、効率の良い布線検討作業を行うことができる。
【0062】
したがって、従来に比べて、設計に係わる手間及び時間を大幅に低減することができ、設計完成に至るまでの開発期間を飛躍的に短縮化できる。
【0063】
請求項2に記載の発明によれば、ワイヤーハーネスの湾曲等を線片に分割してポリゴン処理・表示できるため、実際に物理データとして湾曲させた状況を想定して演算処理する場合に比べて、制御手段の演算負荷を低減することができる。
【0064】
請求項4に記載の発明によれば、ワイヤーハーネスを複数の線片に分割した場合に、線片同士の連続状況を変形の前後に渡って保持できる。したがって、現実のワイヤーハーネスの湾曲作業に近いワイヤーハーネスの変形処理を行うことができる。
【0065】
請求項5に記載の発明によれば、隣り合う線片同士の方向の位相差(捻れ角)についてのデータが各線片毎に付与されるので、この位相差の変化を表示手段に表示することで、無理な捻れがあるか否かを容易に視認することができる。
【0066】
請求項1に記載の発明によれば、ワイヤーハーネスの形状を変更する前に、ワイヤーハーネスの外周に中心軸に平行な一直線状の表面直線を仮想的に描写しておき、ワイヤーハーネスの捻れ角に伴って表面直線を捻らせて表示手段に表示するので、ワイヤーハーネスの捻れについての検討も合わせて行うことができ、実際的な設計検討に有用である。
【0067】
請求項2に記載の発明によれば、ワイヤーハーネスの一部が外装部品に覆われる場合に、線片の3次元設計データに代えて、外装部品の3次元設計データを線片毎に代用しているので、現物と同等の3次元ワイヤーハーネス形状の表現を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一の実施の形態に係る3次元仮想組立システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一の実施の形態に係る3次元仮想組立方法を示すフローチャートである。
【図3】2次元データの画像を示す図である。
【図4】3次元空間内での電線のモデルを示す図である。
【図5】電線を複数の線片に分割した状態を示す図である。
【図6】線片のベクトル情報を示す図である。
【図7】線片が連続接続している状態を示す図である。
【図8】電線を湾曲変更した状態を示す図である。
【図9】線片に代えて外装部品を適用した状態を示す図である。
【図10】各線片の外周に表面直線が描写された状態を示す図である。
【図11】各線片の外周に表面直線が描写された状態で電線が捻られた状態を示す図である。
【図12】過度に長尺であることが判明した場合の図である。
【図13】分岐線が逆方向であることが判明した場合の図である。
【図14】図板上でワイヤーハーネスを制作する動作を示す図である。
【図15】ワイヤーハーネスを布線対象に3次元的に配策した状態を仮想的に示す図である。
【符号の説明】
11 表示装置
14 入力装置
15 記憶装置
16 コンピュータ本体
Claims (5)
- ワイヤーハーネスの設計に用いられるワイヤーハーネス設計システムであって、
入力を受け付けるデータ入力手段と、
表示手段と、
制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、所定の布線対象に3次元的に配索された前記ワイヤーハーネスの形状に対応する基準配策データと、製造のために設計された前記ワイヤーハーネスが3次元的に配策された3次元設計データとを前記データ入力手段を介して受け付け、その基準配策データの画像を、前記表示手段によって表示される仮想3次元空間に背景画像として表示するとともに、前記3次元設計データを前記背景画像に重ねて表示し、前記データ入力手段での入力に応じて、前記3次元設計データとしての前記ワイヤーハーネスの形状を変更して表示するようになっており、
前記制御手段は、さらに、前記データ入力手段での入力に応じた前記ワイヤーハーネスの形状の前記変更を行う前に、前記ワイヤーハーネスの外周に中心軸に平行な一直線状の表面直線を仮想的に描写し、前記ワイヤーハーネスの形状の前記変更による前記ワイヤーハーネスの捻れ角に伴って前記表面直線を捻らせて前記表示手段に表示することを特徴とする3次元仮想組立システム。 - ワイヤーハーネスの設計に用いられるワイヤーハーネス設計システムであって、
入力を受け付けるデータ入力手段と、
表示手段と、
制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、所定の布線対象に3次元的に配索された前記ワイヤーハーネスの形状に対応する基準配策データと、製造のために設計された前記ワイヤーハーネスが3次元的に配策された3次元設計データとを前記データ入力手段を介して受け付け、その基準配策データの画像を、前記表示手段によって表示される仮想3次元空間に背景画像として表示するとともに、前記3次元設計データを前記背景画像に重ねて表示し、前記データ入力手段での入力に応じて、前記3次元設計データとしての前記ワイヤーハーネスの形状を変更して表示するようになっており、
前記3次元設計データが複数の線片に分割され、少なくとも各線片毎の座標を示すベクトル情報が設定されており、
前記制御手段は、さらに、前記ワイヤーハーネスの一部が外装部品に覆われる場合に、前記線片の3次元設計データに代えて、前記外装部品の3次元設計データを前記線片毎に代用することを特徴とする3次元仮想組立システム。 - 請求項1または請求項2のいずれかに記載の3次元仮想組立システムであって、
前記3次元設計データが、ワイヤーハーネスの製造時に使用される図板の主平面に沿って2次元的に表された2次元データに対して、前記主平面の法線方向の座標を追加して生成されることを特徴とする3次元仮想組立システム。 - 請求項2に記載の3次元仮想組立システムであって、
前記制御手段は、前記ワイヤーハーネスの形状を変更する際、隣り合う線片同士の中心線同士が連続しているものとして、前記当該各線片毎のベクトル情報を変更することを特徴とする3次元仮想組立システム。 - 請求項2または請求項4のいずれかに記載の3次元仮想組立システムであって、
隣り合う線片同士の方向の位相差についてのデータが各線片毎に付与されることを特徴とする3次元仮想組立システム。
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