JP3692633B2 - ポリアミドフィルム積層体及びその製造法 - Google Patents

ポリアミドフィルム積層体及びその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミドフィルム積層体に関し、より詳細には、ガスバリアー性に優れ、かつ、基体であるポリアミドフィルムとガスバリアー性の改質層である塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするガスバリアー層との層間剥離耐性に優れたポリアミドフィルム積層体及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリアミドフィルムは、強靱性、耐ピンホール性、耐屈曲性、耐熱性などに優れており各種用途に汎用されている。
また、ポリアミドフィルムは汎用フィルムの中ではガスバリアー性に優れており、この特性を活かした分野にも使用されている。しかし、従来のポリアミドフィルムのガスバリアー性のレベル中程度であり、高度なガスバリアー性の要求される分野へは適用することが困難であった。従って、高度なガスバリアー性の要求される分野へ展開するためには、従来のポリアミドフィルムに、高度なガスバリアー性を有するガスバリアー性の樹脂層を積層することにより行われており、この方法の一方法として塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするガスバリアー層を積層する方法が広く利用されてきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した、ポリアミドフィルムに塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするガスバリアー層を積層したポリアミドフィルム積層体の製造方法としては、例えば、基材ポリアミドフィルムに塩化ビニリデン系樹脂の溶液あるいは分散液を塗布し乾燥固化をさせ積層する方法が汎用されてきている。しかしながら、基材としてのポリアミドフィルムと塩化ビニリデン系樹脂との接着性が劣るため、例えば、ポリアミドフィルム表面をコロナ処理をする等の手段では、ポリアミドフィルムと塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするガスバリアー層との層間剥離強度が低く実用上問題があり、やむえなくポリウレタン系等の接着剤をアンカーコートすることでこの課題を解決してきているのが現状である。
上記アンカーコート法により得られた積層フィルムは層間の接着性の問題は解決され、層間剥離強度は実用的レベルに高められ広く利用されている。
【0004】
しかしながら、前記アンカーコート法は、アンカーコートのための費用がかさみ経済的に不利である。また、塩化ビニリデン系樹脂は水性化が出来ており水分散系の高性能な塗布液が市販されているが、アンカーコート剤は一般には有機溶剤系のものが使用されている。これらの溶剤は通常揮発性で引火性が強く、そのために発火および爆発の危険性があり、また、その蒸気が有毒性である場合もある等安全性に問題がある。更に、該溶剤がフィルム中に残留する食品衛生上好ましくないため、安全除去のため乾燥工程が必要となり、はなはだ不経済である。
このような背景より、溶剤使用のアンカーコートなしで二軸延伸ポリアミドフィルムに対して塩化ビニリデン系樹脂層を積層できる方法が強く望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のポリアミドフィルム積層体は、ポリアミドフィルムの少なくとも一面に、ポリエステルとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体又はポリウレタンとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体を主成分とするグラフト共重合体層が存在するとともに、該グラフト共重合体層の少なくとも一面に塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするガスバリアー層が存在することを特徴とする。
【0006】
上記の構成からなるポリアミドフィルム積層体は、層間剥離耐性に優れたガスバリアー性フィルムである。
この場合において、ポリアミドフィルムは二軸延伸ポリアミドフィルムとすることができる。
上記の構成からなるポリアミドフィルム積層体はポリアミドフィルムの腰が強く、加工適性に優れている。
【0007】
また、本発明のポリアミドフィルム積層体の製造法は、 未延伸または一軸延伸されたポリアミドフィルムの少なくとも一面に、ポリエステルとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体又はポリウレタンとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体を主成分とする塗布液を塗布した後延伸し、次いで上記グラフト共重合層の少なくとも一面に塩化ビニリデン系樹脂を主成分とする組成物を積層することを特徴とする。
上記の構成からなるポリアミドフィルム積層体の製造法は、容易に層間剥離耐性に優れたガスバリアー性フィルムが得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリアミドフィルム積層体及びその製造法について、その構成を詳細に説明する。
まず本発明で用いるポリアミドフィルムを構成するポリアミドは、アミド結合を主たる結合単位成分とするものであり、ポリアミドとしては、例えば3員環以上のラクタム類の重縮合によって得られるポリアミド、ω−アミノ酸の重縮合によって得られるポリアミド、二塩基酸とジアミンとの重縮合によって得られるポリアミドなどが挙げられる。
【0009】
具体的には、ポリアミドの原料として、次のような単量体を例示することができる。
3員環以上のラクタム類の具体例としては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタムなど。
ω−アミノ酸の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸など。
二塩基酸の具体例としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、エイコサンジオン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルポン酸、キシリレンジカルボン酸など。
ジアミン類の具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4(又は2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミンなど。
【0010】
また、これらを重縮合して得られる重合体又はそれらの共重合体としては、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・6、ナイロン6・9、ナイロン6・11、ナイロン6・12、ナイロン6・T、ナイロン6・I、ナイロンMXD6、ナイロン6/6・6、ナイロン6/12、ナイロン6/6・T、ナイロン6/6・I、ナイロン6/MXD6などが例示される。
【0011】
本発明で用いるポリアミドフィルムは上記ポリアミドを主成分とするもので、その目的、性能を損なわない限り、公知の添加剤、例えば酸化防止剤、耐候性改善剤、ゲル化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、顔料、帯電防止剤、界面活性剤などを含むものであってもよい。
【0012】
本発明の構成成分であるポリアミドフィルムは、ポリアミドを例えばTダイ法や、インフレーション法など、公知の方法によってフィルム状に成形することで製造することができる。このポリアミドフィルムは、単層フィルムであってもよく、あるいは共押出法などによって多層フィルムであってもよい。
【0013】
本発明において用いられる、ポリエステルとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体及びポリウレタンとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体について説明するが、これらに限定されるものではない。
【0014】
なお、本明細書中の説明において、「グラフト共重合体」とは、幹ポリマー主鎖に、該主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーが結合した共重合体をいい、また、「アクリル系モノマー」とは、アクリル酸誘導体又はメタクリル酸誘導体をいい、「アクリル系ポリマー」とは、少なくともアクリル酸誘導体又はメタクリル酸誘導体をモノマー成分として含む単独もしくは共重合体をいう。
【0015】
〔ポリエステルとアクリル系ポリマーとからなるグラフト重合体について〕
まず、本発明において用いるポリエステルの詳細を述べる。
本発明において用いるポリエステルは、多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とポリオール又はそのエステル形成性誘導体とから製造される実質的に線状のポリマーである。
【0016】
多基酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸など、あるいはこれらの酸無水物が挙げられる。
【0017】
また、グラフト重合のために分子内に不飽和二重結合を有するジカルボン酸を併用することが好ましく、このようなジカルボン酸としては、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸類;2,5−ノルボルナンジカルボン酸(無水物)、テトラヒドロ無水フタル酸などの不飽和結合含有脂環族ジカルボン酸類などが挙げられる。中でも好ましいのは、フマール酸、マレイン酸、及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸、エンド−ビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸が挙げられる。
【0018】
ラジカル重合性の二重結合を有するこれらのジカルボン酸は、ポリエステル用原料の全酸成分中0.5〜10モル%の範囲の使用が好適であり、0.5モル%より少ないと、ポリエステルに対するラジカルグラフト重合が効率よく進まず、水系媒体中でグラフト重合を行う際に分散粒子系が大きくなって安定性が悪化することがある。しかし、10モル%を越えて使用すると、グラフト化反応の後期に粘度が急上昇して、均一反応の進行を妨げるため好ましくない。二重結合含有ジカルボン酸のより好ましい範囲は、全酸成分中2〜7モル%、もっとも好ましくは3〜6モル%である。
【0019】
一方、ポリオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールなどの炭素数2〜10の脂肪族グリコール類;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの炭素数6〜12の脂環族グリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどや、ビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレン(又はプロピレン)オキサイドを1〜数モル付加して得られるグリコール類(例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなど)などのエーテル結合含有グリコールなどが挙げられる。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなども一部併用することが可能である。さらに、アリルエーテル基などの重合性不飽和結合を有するグリコール類を使用すると、ポリエステル中に重合性不飽和基を導入することができる。
【0020】
本発明で用いるポリエステル中には、3官能以上のポリカルボン酸やポリオールを共重合させることも可能であり、使用可能な3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)などが使用される。また、3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが使用される。3官能以上のポリカルボン酸やポリオールは、全酸成分あるいは全グリコール成分に対し、5モル%以下、望ましくは3モル%以下に抑えることが推奨される。本発明において用いるポリエステルは、上記例示した酸成分及びグリコール成分を用いて公知のエステル交換法、直接エステル化法などで製造することができる。本発明においては、かかるポリエステルをそのまま使用することができるが、ここではグラフト共重合体を製造する方法を以下に述べる。
【0021】
本発明において用いるアクリル系モノマーの詳細を述べる。
上記ポリエステルとグラフトさせるアクリル系ポリマーの構成成分となるアクリル系モノマーとしては、例えばエステル部分がメチル基、エチル基、n−(又はi−)プロピル基、n−(又はt−)ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基などである無官能(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有モノマー及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など);(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマーなどが挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0022】
少量であれば、さらに他の共重合可能なモノマーを併用しても良く、このような共重合性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー及びその塩;クロトン酸、(無水)イタコン酸、(無水)マレイン酸、フマール酸及びその塩;不飽和ジカルボン酸(イタコン酸、マレイン酸、フマール酸など)のモノエステル;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、t−プチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルメチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどを例示することができ、これらの中から一種又は複数種を選んで用いることができる。
【0023】
ポリエステルとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体(以下、ポリエステル−アクリル系グラフト共重合体と略称する)の製造方法としては、以下に挙げる方法が例示されるが、本発明はもとよりこれらの製法に制限されるわけではない。
【0024】
(1)ポリエステルに、ラジカル重合、カチオン重合あるいはアニオン重合の反応開始点を発生させ、これに、少なくともアクリル系モノマーを含むモノマーをグラフト重合させる方法。
例えば、▲1▼光、熱あるいは放射線によってポリエステル分子上にラジカルを発生させ、ついで少なくともアクリル系モノマーを含むモノマーをグラフト重合させるラジカル重合法、▲2▼AlCl3、TiCl4などの触媒を用いてポリエステル分子上にカチオンを発生させ、ついでアクリル系モノマーを含むモノマーをグラフト重合させるカチオン重合法、あるいは、▲3▼金属ナトリウムや金属リチウムなどを用いてポリエステル分子上にアニオンを発生させ、ついでアクリル系モノマーを含むモノマーをグラフト重合させるアニオン重合法などが採用される。この方法によれば、ポリエステルが幹ポリマー、アクリル系ポリマーが枝ポリマーからなるグラフト重合体が得られる。
【0025】
(2)ポリエステルの主鎖、主鎖末端あるいは側鎖に重合性の不飽和結合を導入し、これに少なくともアクリル系モノマーを含むモノマーをグラフト重合させる方法。
この方法でも、ポリエステルが幹ポリマー、そしてアクリル系ポリマーが枝ポリマーであるグラフト重合体が得られる。
【0026】
主鎖に重合性の不飽和結合を有するポリエステルを調製する方法としては、フマール酸やマレイン酸などの重合性不飽和結合を有するジカルボン酸、あるいはアリルエーテル基などを有するグリコールをポリエステル製造時に使用し、共重合させて重合性不飽和結合を有するポリエステルを得る方法があり、主鎖末端に重合性の不飽和結合を有するポリエステルを調製する方法としては、ポリエステルのヒドロキシ末端に、ヒドロキシル基と反応しうる基(例えばカルボキシル基、酸無水物基、酸クロリド、エポキシ基、イソシアネート基など)と共に重合性不飽和結合を有する重合性モノマーを反応させる方法があり、側鎖に不飽和結合を導入するには、側鎖部分にカルボキシル基、又はヒドロキシル基を有するポリエステルに、これらの基と反応性を有する官能基(カルボキシル基と反応しうる基としてはアミノ基、イソシアネート基など、ヒドロキシル基と反応しうる基は上記と同じ)と重合性不飽和結合とを有する重合性モノマーを反応させる方法を採用すればよい。
【0027】
(3)側鎖に官能基を有するポリエステルと、該官能基と反応しうる基をポリマー鎖末端に有するアクリル系ポリマーとを反応させる方法、あるいは側鎖に官能基を有するアクリル系ポリマーと、該官能基と反応しうる基をポリマー鎖末端に有するポリエステルとを直接反応させる方法。
前者の方法を採用すると、ポリエステルが幹ポリマー、アクリル系ポリマーが枝ポリマーであるグラフト重合体が得られ、後者の方法を採用すると、アクリル系ポリマーが幹ポリマー、ポリエステルが枝ポリマーであるグラフト重合体が得られる。
【0028】
(4)側鎖に官能基を有するポリエステルと末端に官能基を有するアクリル系ポリマー、あるいは側鎖に官能基を有するアクリル系ポリマーと末端に官能基を有するポリエステルとを、これらの官能基と反応性を有する2官能性のカップリング剤で結合させる方法。
前者の方法を採用すると、ポリエステルが幹ポリマー、アクリル系ポリマーが枝ポリマーであるグラフト重合体が得られ、後者の方法を採用すると、アクリル系ポリマーが幹ポリマー、ポリエステルが枝ポリマーであるグラフト重合体が得られる。ここで用いられるポリエステル及びアクリル系ポリマー、カップリング剤の持つ官能基としては、それぞれ上記(2)で記載した官能基が組み合わされて使用される。
【0029】
以上、種々のパターンのグラフト重合方法を示したが、なかでも好ましいのは、公知の方法で合成したポリエステルを水性有機溶剤中に溶解させておき、これにラジカル開始剤とアクリル系モノマー成分(好ましくは2種以上の混合物)を添加して反応させる方法である。又、アクリル系モノマー成分の一部(10〜90重量%程度)としてカルボキシル基含有モノマー(アクリル酸、メタクリル酸など)を利用すれば、得られたグラフト重合体を塩基性化合物で中和することによって水分散体状態にすることができる。
【0030】
前記の水性有機溶剤としては、ポリエステルとアクリル系モノマーの溶剤であれば特に限定されないが、沸点50〜250℃のケトン類、エーテル類、アルコール類などが用いられる。
【0031】
ラジカル開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレートなど;有機アゾ化合物として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などが例示される。ラジカル開始剤の好ましい使用量は、モノマーに対して0.2重量%以上、望ましくは0.5重量%以上である。また、例えばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノールなどの連鎖移動剤をアクリル系モノマーに対して5重量%程度以下添加し、グラフト鎖長の調節を行うことも有効である。
【0032】
中和のために使用される塩基性化合物としては、塗膜形成時あるいは硬化剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が望ましく、アンモニア、有機アミン類などが好適である。塩基性化合物は、グラフト共重合反応生成物中に含まれるカルボキシル基の含有量に応じて、少なくとも部分中和もしくは完全中和によって水分散体のpH値が5.0〜9.0の範囲となる様にその量を決定することが望ましい。
【0033】
水分散液とするには、グラフト共重合反応生成物中に含まれる溶媒を予め減圧下のエクストルーダーなどによって除去し、メルト状もしくは固体状(ペレットや粉末など)とした後、塩基性化合物を含有する水中へ投じて加熱・撹拌する方法を採用することもできるが、もっとも好ましいのは、グラフト重合反応を終了した時点で直ちに塩基性化合物含有水を投入し、引き続いて加熱撹拌を継続し水分散体を得る方法(ワン・ポット法)である。使用する溶媒の沸点が100℃以下である場合は、グラフト重合反応に用いた溶媒の一部もしくは全部を留去することも可能である。
【0034】
グラフト重合体における幹ポリマーと枝ポリマーとの好ましい比率は、重量比で5:95〜95:5、より好ましくは80:20〜20:80である。幹ポリマーの好ましい分子量は、5,000〜20万であり、枝ポリマーの好ましい分子量は500〜5万である。
次にポリウレタン系グラフト重合体について説明する。
ポリウレタン系グラフト重合体の場合は、前記したポリエステル系グラフト重合体に用いるポリウレタンは、ポリエステルを用いてポリウレタン化することにより得ることができる。また、グラフト重合体の製造方法もポリエステル系グラフト重合体の製造方法を適用することができるので、ポリウレタン化反応についてのみ説明をする。
【0035】
〔ポリウレタンとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体について〕次に、本発明において用いるポリウレタンとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体(以下ポリウレタンーアクリル系グラフト共重合体と略称する)の詳細について説明する。
ポリウレタンーアクリル系グラフト共重合体の場合は、前記したポリエステルーアクリル系グラフト共重合体の製造に用いるポリエステルを用い、これをポリウレタン化することにより得ることができる。また、グラフト共重合体の製造方法もポリエステルーアクリル系グラフト共重合体の製造方法を適用することができるので、ポリウレタン化反応についてのみ説明をする。
【0036】
本発明において用いるポリウレタンは、前述のポリエステルの製造法に従って製造したポリエステルポリオール(a)、有機ジイソシアネート化合物(b)及び必要に応じて活性水素基を有する鎖延長剤(c)から製造することができ、その好ましい分子量は、5,000〜100,000、好ましいウレタン結合含有量は500〜4,000当量/106g、重合性二重結合の好ましい含有量は、ポリマー鎖一本当たり平均1.5〜30個である。
【0037】
ポリエステルポリオール(a)は、前記のポリエステルの製造法に従って、ジカルボン酸成分及びグリコール成分を用いて製造することができ、両末端がヒドロキシル基で分子量が500〜10,000の範囲の物が好ましい。このポリエステルポリオールは、原料のジカルボン酸成分100モル%のうち、60モル%〜79.5モル%は芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。望ましくは、70モル%〜79.5モル%である。一般のポリウレタン樹脂に広く用いられる脂肪族ポリエステルポリオール、例えばエチレングリコールやネオペンチルグリコールのアジペートを用いたポリウレタンは耐水性能が充分でなく、得られるグラフト共重合体層を最表面層とした場合の耐水性が求められる場合には使用をさけた方がよい。
【0038】
耐水性の一例を示すと、エチレングリコールやネオペンチルグリコールのアジペートを用いたポリウレタンの、70℃の温水浸漬20日経過後の還元粘度保持率は20〜30%と低いのに対し、同じグリコールのテレフタレートやイソフタレートを用いたポリウレタンは、同一条件の還元粘度保持率が80〜90%と高い。従って、易滑性層に高い耐水性能を与えるには、芳香族ジカルボン酸を主体とするポリエステルポリオールの使用が有効となる。
【0039】
なお、必要により、上記ポリエステルポリオール(a)と共に、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどを適宜併用することができる。
【0040】
有機ジイソシアネート化合物(b)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートジシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどを例示することができる。
【0041】
上記の、必要に応じて使用する活性水素基を有する鎖延長剤(c)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、スピログリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類;ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミン類などを例示することができる。
【0042】
本発明において用いるポリウレタンは、前記ポリエステルポリオール(a)、有機ジイソシアネート(b)及び必要に応じて使用する活性水素基を有する鎖延長剤(c)を、
{(a)の活性水素基+(c)の活性水素基}/{(b)のイソシアネート基}
の比で、0.8〜1.3(当量比)の配合比で反応させて得られるものが好ましい。この好適配合比率の範囲をはずれたものではポリウレタンの分子量が充分に上がらず、最表層として満足のいく塗膜特性が得られ難くなる。
【0043】
ポリウレタンの製造は、上記原料成分を用いて公知の方法、例えば溶剤中20〜150℃の反応温度で触媒の存在下あるいは無触媒で反応させる方法を採用すればよい。このときに使用される溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが使用できる。反応を促進するための触媒としては、アミン類、有機錫化合物などが使用される。
【0044】
ポリウレタン中には、グラフト反応の効率を高めるため、ラジカル重合性単量体を用いて分子中に重合性二重結合を導入することが必要であり、その導入量はポリウレタン鎖一本当たり平均1.5〜30個、望ましくは2〜20個、さらに望ましくは、3〜10個の範囲に調整するのがよい。
この重合性二重結合の導入には、例えば下記のような方法を単独でもしくは組み合わせて実施すればよい。
▲1▼ポリエステルポリオール中にフマル酸、イタコン酸、ノルボルネンジカルボン酸などの不飽和ジカルボン酸を含有させる。
▲2▼ポリエステルポリオール中に、アリルエーテル基含有グリコールを含有させる。
▲3▼鎖延長剤として、アリルエーテル基含有グリコールを用いる。
▲4▼ポリウレタンの有するヒドロキシル基又はイソシアネート基にこれらの官能基と反応しうる官能基を有するモノマーを反応させる。
【0045】
ポリウレタン−アクリル系グラフト共重合体の製造方法は、前記したポリエステル−アクリル系グラフト共重合体の製造方法と同様の方法を採用することで得ることができる。
上記グラフト共重合体を主成分とする塗布液は、ポリエステル−アクリル系グラフト共重合体又はポリウレタン−アクリル系グラフト共重合体単独のグラフト共重合体を用いてもよいが、両者を併用してもよいことはもちろんである。塗布液には、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、UV吸収剤、潤滑剤、着色剤等の他の添加剤を含有させてもよい。
【0046】
また、架橋剤を併用し、耐水性や耐摩耗性などを向上させる手段を用いることも何ら制限はない。
本発明において用いられる架橋剤としては、以下のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0047】
フェノールホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物又はそのブロック体、多官能アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などである。
【0048】
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、フェノール及び各種アルキルフェノール、o−(m−、p−)クレゾール、各種キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、p−フェニルフェノール、フェニル−o−クレゾールなどのフェノール系化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、が挙げられる。
【0049】
アミノ樹脂としては、例えば、尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加縮合物、又はそれらに炭素数1〜6のアルコールが付加したアルキルエーテル化物などを挙げることができる。具体的には、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロール−N、N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン、メチロール化ベンゾグアナミンなどであり、これらの単独、又は2種以上の併用が可能である。
【0050】
多官能エポキシ化合物としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどのジグリシジルエーテル類;オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステルなどのジグリシジルエステル類;1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピオン尿素;トリグリシジルイソシアヌレート、トリメリット酸トリグリシジルエステル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ベンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどのトリグリシジルエーテル類;などを挙げることができる。
【0051】
イソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートなどが利用でき、低分子、高分子いずれの化合物も使用可能である。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネートの3量体;及びこれらの多官能イソシアネート化合物の過剰量と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンといった低分子活性水素化合物や、各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物などを反応させて得られる末端イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0052】
また、ブロック化イソシアネートの使用も可能であり、ブロック化剤としては、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類;ε−カプロラクタム、δ−ブチロラクタム、τ−バレロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;メタノール、n−(i−,tert−)プロパノール、n−(i−,tert−)ブタノールなどのアルコール類;エチレンクロロヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類;芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性化合物、メルカブタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。ブロック化は、前記イソシアネート化合物と上記ブロック化剤を公知の方法で付加させればよい。
【0053】
架橋剤の配合方法としては、(1)架橋剤が水溶性である場合は、直接グラフト重合体の水分散液中に溶解又は分散させる方法、(2)架橋剤が油溶性である場合は、グラフト重合反応の終了後、反応液に添加する方法、がある。これらの方法は、架橋剤の種類や性状に応じて適宜最適の方法を選択すればよい。該架橋剤の配合に当たっては、さらに硬化剤や硬化促進剤を併用することも有効である。
【0054】
本発明においてグラフト共重合体層を形成するには、前記した塗布液を、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式、バー方式、ディップ方式など公知の塗布方式でポリアミドフィルムの一面又は両面に同時又は順次塗布する方法を採用すればよい。
【0055】
本発明においてグラフト共重合体層は、未延伸あるいは1軸延伸後のポリアミドフィルムに塗布・乾燥し、さらに1軸延伸あるいは2軸延伸し、必要により熱固定を行って形成することが必要である。塗布後の乾燥が塗膜の延伸性を損なわないようにするためポリアミドフィルムの水分率を0.1〜2%の範囲に制御することが好ましい。この場合も、延伸した後200℃以上で熱固定すれば、塗膜は一層強固になると共に、ポリアミドフィルムとも一層強固に結合一体化する。上記した方法を採用することで、目的とした効果が経済的に達成することができる。
【0056】
本発明においてグラフト共重合体層を形成するための塗布液の塗布量は、乾燥後の固形分換算で0.005〜0.5g/m2、好ましくは0.01〜0.2g/m2の範囲であり、塗布量が不足する場合は塩化ビニリデン系樹脂との接着性改善効果が充分に発揮されず、また、塗布量が多くなりすぎるとブロッキングなどの障害が発生しやすくなる。
上記したポリアミドフィルム積層体を製造するに当たり、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、火炎処理などの方法により、表面活性化処理することは何ら制限を受けない。該表面活性化処理は積層フィルムのどちら側に実施しても良いが、両面に実施するのが特に推奨される。
【0057】
本発明において用いられる塩化ビニリデン系樹脂は、良好なガスバリアー性を示すものであれば特に制限はない。ガスバリアー性の点では塩化ビニリデンのホモポリマーが最も好ましいが、このホモポリマーは、耐熱性や加工適性に劣るので共重合体として用いるのが好ましい。
塩化ビニリデン系樹脂が共重合体である場合の例としては、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−メタアクリル酸エステル共重合体等を例示することができる。また、これにさらにアクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等を併用した三元又は四元共重合体であってもよい。ガスバリアー性の点から塩化ビニリデンが85〜91モル%含有するものが好ましい。本発明においては、塩化ビニリデン系樹脂は溶融状態で前述のグラフト共重合体層を積層したポリアミドフィルム上に被覆することも可能であるが、通常は該樹脂を溶解することができる溶剤に溶解したり、水あるいは有機溶剤で分散状態とし被覆積層するのが良い。特に、水分散系が防爆上、あるいは塗膜の残存溶剤による毒性、臭いの点からみて好適である。塗布する方法としてはグラビアロール法、リバースロール法、ロッド法、ディップ法、エアーナイフ法等の通常の方法で、グラフト共重合体層面上に所望の厚さに積層される。ポリアミドフィルムの両面がグラフト共重合体層である場合は、その用途により、一面に塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするガスバリアー層を形成してもよいし、両面に形成してもよい。
本発明における塩化ビニリデン系樹脂層の厚さは所望されるガスバリアー性の程度により異なるが通常は1〜10g/m2、好ましくは2〜7g/m2の範囲である。なお、塩化ビニリデン系樹脂の特性を損なわない程度に耐ブロッキング剤、帯電防止剤、滑剤等を添加することは何らさしつかえない。
【0058】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合しうる範囲で適宜に変更を加えて実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の範囲に含まれる。なお実施例中、単に「部」とあるのは「重量部」を表し、「%」とあるのは特記しない限り「重量%」を示す。
また、本明細書中の特性値の測定は、下記の方法に従った。
【0059】
1.酸素ガス透過度
JIS−K−7126に準拠し、20℃、湿度90%の環境下での酸素ガス透過度を測定した。
【0060】
2.ラミネート強度
ポリアミドフィルム積層体の塩化ビニリデン系樹脂層側に接着剤として大日本インキ(株)社製のポリウレタン系接着剤LX719を用いシーラントフィルム[東洋紡績(株)製L6102、40μm]を常法によりラミネートし(接着剤厚み=3g/m2)、40℃で4日間エージング処理した。該ラミネートフィルムを95℃で30分間ボイル処理をした後、ポリアミドフィルム積層体とシーラントフィルムのラミネート強度を、引っ張り試験機に引っ張り速度100mm/分で90°剥離試験にて測定した。
【0061】
(実施例1)
〔ポリエステル−アクリル系グラフト共重合体(塗布液)の製造〕
撹拌機、温度計及び部分環流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブにジメチルチレフタレート:466部、ジメチルイソフタレート:466部、ネオペンチルグリコール:401部、エチレングリコール:443部及びテトラ−n−ブチルチタネート0.52部を仕込み、160から220℃で4時間かけてエステル交換反応を行った。ついでフマール酸23部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。ついで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後0.2mmHgの減圧下で1時間30分反応させ、ポリエステルを得た。得られたポリエステルは淡黄色透明で、ガラス転移点60℃、重量平均分子量12,000であった。NMRなどにより測定したこのポリエステルの組成は次の通りであった。
【0062】
ジカルボン酸成分
テレフタル酸:48モル%
イソフタル酸:48モル%
フマール酸 : 4モル%
ジオール成分
ネオペンチルグリコール:50モル%
エチレングリコール :50モル%
【0063】
次いで、温度計、還流式冷却器及び定量滴下器を備えた反応器中に、上記ポリエステル:75部をメチルエチルケトン:56部、イソプロピルアルコール:19部と共に仕込んで65℃で加熱溶解した。樹脂が完全に溶解した後、メタクリル酸:17.5部とアクリル酸エチル:7.5部との混合物とアゾビスジメチルバレロニトリル:1.2部を25部のメチルエチルケトンに溶解した溶液とを、0.2cc/分の速度で上記ポリエステル溶液中に滴下し、同温度でさらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリング(5g)を行った後、水:300部とトリエチルアミン:25部とを反応溶液に加え、1時間撹拌して水分散体を得た。その後、水分散体の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール及び過剰量のトリエチルアミンを留去した。生成した水分散体は白色で、B型粘度は50cps(25℃)であり、平均粒子径300nmの微粒子が均一に分散した水分散体であった。また、グラフト重合部分の重量平均分子量は10,000であった。
【0064】
〔積層ポリアミドフィルムの製造〕
ポリカプロアミド樹脂98部、ポリアミドエラストマー樹脂2部、エチレンビスステアリルアミド0.1部および平均粒経2.0μmの不定形シリカ0.35部よりなる組成物をTダイから溶融押し出しし、30℃の冷却ドラム上で冷却して厚さ150μmの未延伸ポリアミドフィルムを得た。
この未延伸フィルムを50℃で3.1倍に縦延伸した。得られた1軸延伸フィルムの片面に前記した方法で製造したポリエステル−アクリル系グラフト共重合体よりなる塗布液を回転マイヤーバーによってコーティングし、85℃で乾燥した。次いで125℃で横方向に3.3倍延伸し、215℃で熱固定を行った。ポリエステル−アクリル系グラフト共重合体層の厚みは0.05μm、ポリアミドフィルムの厚みは15μmであった。ポリエステル−アクリル系グラフト共重合体層側の表面にコロナ放電処理を施し、表面張力を520μN/cmとした。
〔ポリアミドフィルム積層体の製造〕
上記方法で製造した積層ポリアミドフィルムのポリエステル−アクリル系グラフト共重合体の積層面にエアナイフ法を用い常法により塩化ビニリデン系樹脂の水分散体を乾燥後厚みで3g/m2となるように塗布、乾燥しポリアミドフィルム積層体を得た。
〔ポリアミドフィルム積層体の試験〕
得られたポリアミドフィルム積層体の酸素ガス透過度は6cc/m2・24hr・atmであり、酸素ガスパリアー性に優れたものであった。
得られたポリアミドフィルム積層体を前記した方法でシーラントフィルムとラミネートした積層物のラミネート強度は320g/15mmであり層間剥離強度の優れた実用性の高いものであった。
前記した方法でシーラントをラミネートした積層物を内寸180mm×180mmの袋を作り、水600ccを内封し、5℃、湿度50%の環境下で120cmの高さから落下させ落袋試験をした(検体数10)が全く破袋は発生せず実用性の高いものであった。
(比較例1)
実施例1の方法で、ポリエステル−アクリル系グラフト共重合体層を積層しない以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。得られたポリアミドフィルムを実施例1と同じ方法で塩化ビニリデン系樹脂を積層した積層体を得た。得られたポリアミドフィルム積層体の酸素ガス透過度は6cc/m2・24hr・atmであり良好であった。しかし得られたポリアミドフィルム積層体を前記した方法でシーラントフィルムとラミネートをした積層物のラミネート強度は90g/15mmと低く、低品質であった。
また、得られた積層体を前記した方法でシーラントフィルムとラミネートした積層物を用い、実施例1と同様の方法で落袋テストを実施したところ、検体の50%が破袋し実用性の低いものであった。
(比較例2)
実施例1の方法で、塩化ビニリデン系樹脂を積層しないポリアミドフィルムの酸素ガス透過度は60cc/m2・24hr・atmであり酸素ガスバリアー性に劣り低品質であった。
【0065】
(実施例2)
実施例1の方法において、ポリエステル−アクリル系グラフト共重合体に替えて、下記方法で製造したポリウレタン−アクリル系グラフト共重合体を用いる以外は実施例1と同じ方法で積層ポリアミドフィルムを得た。
【0066】
〔ポリウレタン−アクリル系グラフト共重合体(塗布液)の製造〕
撹拌機、温度計及び部分還流式冷却器を具備したステンレススチール性オートクレーブにジメチルテレフタレート:543部、ネオペンチルグリコール:458部、エチレングリコール:410部及びテトラ−n−ブチルチタネート:0.52部を仕込み、160〜220℃で4時間かけてエステル交換反応を行った。次いでフマール酸:23部及びセバシン酸:51部を加え、200℃から220℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後0.5mmHgの減圧下で30分反応させ、ポリエステルポリオール(A−1)を得た。得られたポリエステルポリオール(A−1)は淡黄色透明で、還元粘度は0.3であった。NMRなどにより測定したこのポリエステルポリオールの組成は次の通りであった。
ジカルボン酸成分
テレフタル酸:56モル%
セバシン酸 :40モル%
フマール酸 : 4モル%
ジオール成分
ネオペンチルグリコール:50モル%
エチレングリコール :50モル%
【0067】
上記方法で得たポリエステルポリオール(A−1):100部を、温度計、撹拌機及び還流式冷却器を備えた反応器中に、メチルエチルケトン:120部と共に仕込んで溶解した後、ネオペンチルグリコール:3部、イソホロンジイソシアネート:15部、ジブチル錫ラウレート:0.02部を仕込み、60〜70℃で6時間反応させた。次いで、反応系を70℃に冷却し、反応を停止した。得られたポリウレタン(B−1)の還元粘度は0.56であった。
【0068】
撹拌機、温度計、還流式冷却器及び定量滴下器を備えた反応器に、上記で得たポリウレタン(B−1)のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度:50%):150部、イソプロピルアルコール:15部を入れ、65℃に昇温した後、メタクリル酸:17.5部とアクリル酸エチル:7.5部の混合物と、アゾビスジメチルバレロニトリル:1.2部を25部のメチルエチルケトンと5部のイソプロピルアルコールの混合溶液に溶解した溶液とを、0.2cc/分の速度で上記ポリウレタン溶液中に滴下し、同温度でさらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリング(5g)を行った後、水:300部とトリエチルアミン:25部を反応溶液に加え、1時間撹拌し、水分散体を得た。その後、分散体の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール及び過剰量のトリエチルアミンを蒸留により除去した。生成した水分散体(C−1)は白色で、B型粘度は50cps(25℃)であり、平均粒子径300μmの微粒子が均一に分散した分散液であった。
【0069】
〔積層ポリアミドフィルム及びポリアミドフィルム積層体の製造と試験〕
実施例1と同様にして得られた積層ポリアミドフィルムを用い、塩化ビニリデン系樹脂を積層して、ポリアミドフィルム積層体を得た。この積層体の酸素ガス透過性は6cc/m2・24hr・atm、ラミネート強度は350g/15mm、そして落袋テストでの破袋数は0であり、実施例1のポリアミドフィルム積層体と同様に高品質で実用性の高いものであった。
【0070】
【発明の効果】
請求項1記載の発明のポリアミドフィルム積層体は、基体ポリアミドフィルムとガスバリアー性改質層である塩化ビニリデン系樹脂層との間の層間剥離耐性が優れており、食品を始めとする種々の物品の包装材料として極めて有効に活用することができる。
請求項2記載の発明のポリアミドフィルム積層体は、腰が強く、加工適性に優れている。
請求項3記載の発明のポリアミドフィルム積層体の製造法によれば、容易に層間剥離耐性に優れたガスバリアー性フィルムが得られる。

Claims (3)

  1. ポリアミドフィルムの少なくとも一面に、ポリエステルとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体又はポリウレタンとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体を主成分とするグラフト共重合体層が存在するとともに、該グラフト共重合体層の少なくとも一面に塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするガスバリアー層が存在することを特徴とするポリアミドフィルム積層体。
  2. ポリアミドフィルムが二軸延伸ポリアミドフィルムであることを特徴とする請求項1記載のポリアミドフィルム積層体。
  3. 未延伸または一軸延伸されたポリアミドフィルムの少なくとも一面に、ポリエステルとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体又はポリウレタンとアクリル系ポリマーとからなるグラフト共重合体を主成分とする塗布液を塗布した後延伸し、次いで上記グラフト共重合層の少なくとも一面に塩化ビニリデン系樹脂を主成分とする組成物を積層することを特徴とするポリアミドフィルム積層体の製造法。
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