JP3691395B2 - 熱型赤外線検出素子およびその製造方法並びに該熱型赤外線検出素子を備えた撮像装置 - Google Patents

熱型赤外線検出素子およびその製造方法並びに該熱型赤外線検出素子を備えた撮像装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外線カメラ等の撮像装置に好適に用いられる熱型赤外線検出素子およびその製造方法並びに該熱型赤外線検出素子を備えた撮像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、障害物検出、人体検出、あるいは夜間の監視等のために、昼夜、煙や太陽光等の外乱に影響され難い遠赤外線検出素子を用いた撮像素子を備えた撮像カメラが使用されている。
【0003】
撮像装置としては、この遠赤外線検出素子を用いた撮像カメラの他に、CCD(Charge Coupled Device)カメラや光電子倍増管があるが、スペクトル特性の面で、これらの用途に対する要求を満足していない。また、遠赤外線検出素子を用いた撮像カメラ(赤外線カメラ)は、常温付近での黒体放射強度レベルが高い、波長が8〜12μmの遠赤外を利用しているため、近赤外、中赤外を利用したCCDカメラや量子型赤外線カメラよりも優れている。
【0004】
遠赤外線検出素子としては、量子効果を利用したものと熱効果を利用したものとがある。量子効果を利用した遠赤外線検出素子は、検出感度は良好であるものの、77K程度の冷却機構が必要となる。
【0005】
これに対して、熱効果を利用した遠赤外線検出素子は、冷却を必要としない。このため、遠赤外線検出素子を用いた装置の小型化、低価格化が可能となる。この熱効果を利用した遠赤外線検出素子である熱型赤外線検出素子は、
(1)熱を抵抗の変化で検出するボロメータセンサ
(2)熱を熱電対検出するサーモパイルセンサ
(3)熱を電荷で検出する焦電型センサ
に分類される。
【0006】
上記のボロメータセンサについては、近年、シリコン・ウェハ上に、モノリシック形成できる利点を生かして、熱を抵抗変化で検出するサーミスタ型ボロメータセンサ(ボロメータ型の熱型赤外線検出素子)が開発・製造されている。
【0007】
ここで、本発明の図3を参照して、熱を抵抗変化で検出するボロメータ型の熱型赤外線検出素子の概略構成について説明する。
図3に示すように、ボロメータ型の熱型赤外線検出素子は、半導体基板1上に、赤外線検出体(以下、ダイアフラム構造体と称する)30が、2本の脚31・31(支持部材)によって、半導体基板1との間に所定の空間を有するように上記半導体基板1から所定の間隔を置いて支持された構成を有している。ダイアフラム構造体30は、熱によって抵抗値が変化する熱抵抗変化膜や、絶縁膜、赤外線吸収膜等によって構成されている。なお、熱抵抗変化膜は、ダイアフラム構造体30を支持する脚31・31の中に配された配線金属膜を介して、半導体基板1表面に形成された回路と電気的に接続されている。
【0008】
一般的に、熱型赤外線検出素子の感度Resは、定常状態では、次式(1)
Res[V/W]=η×VB×α×(1−exp(−τi/τT))/G ……(1)
によって求めることができる。
【0009】
なお、τT=H/Gである。
【0010】
ただし、
ηはダイアフラム構造体の赤外線吸収率、
VBはダイアフラム構造体に印加されるバイアス電圧、
αは熱抵抗変化膜の抵抗温度係数、
Gは半導体基板とダイアフラム構造体との熱コンダクタンス、
τiは積分時間、
τTは熱時定数、
Hは熱容量である。
【0011】
式(1)から明らかなように、ボロメータ型の熱型赤外線検出素子(以下、単に熱型赤外線検出素子と称する)の感度Resは抵抗温度係数αに比例し、抵抗温度係数αの絶対値が大きい程、感度Resは大きくなる(高感度になる)。それゆえ、抵抗温度係数αの絶対値が大きい熱抵抗変化膜を用いて、ダイアフラム構造体を構成することが望ましい。また、赤外線吸収率ηの向上、熱コンダクタンスGの低減および熱容量Hの低減によっても感度Resを大きくすることができ、これにより、熱型赤外線検出素子の感度を向上させることができる。それゆえ、上記熱型赤外線検出素子としては、抵抗温度係数αの絶対値が大きい材料を熱抵抗変化膜の材料として用いることが望ましい。
【0012】
特開平11−74545号公報には、熱抵抗変化膜に、遷移金属の酸化物膜を用いた熱型赤外線検出素子の構造が記載されている。図8に示すように、上記特開平11−74545号公報に記載の熱型赤外線検出素子は、半導体基板100上に、絶縁性の保護膜である第1窒化シリコン膜101、配線金属膜102、コンタクトホール103aを有する第2窒化シリコン膜103、熱抵抗変化膜104、酸化シリコン膜105および第3窒化シリコン膜106が積層されたダイアフラム構造体110を備えている。第1窒化シリコン膜101上には配線金属膜102が所定の形状に形成されており、配線金属膜102上には第2窒化シリコン膜103が形成されている。また、第2窒化シリコン膜103に形成されたコンタクトホール103aを介して配線金属膜102とその上に配された熱抵抗変化膜104とは電気的に接続されている。
【0013】
上記ダイアフラム構造体110の製造方法としては、まず、第1窒化シリコン膜101および配線金属膜102が形成された半導体基板100上に、反応性スパッタリング法によって、バナジウム酸化物を主成分とする熱抵抗変化膜104を成膜する。次に、この熱抵抗変化膜104上に、プラズマCVD(chemical vapor deposition:化学気相成長) 法によって酸化シリコン膜105を形成する。そして、熱抵抗変化膜104と酸化シリコン膜105とを略同一の形状に加工した後、その上に保護層である第3窒化シリコン膜106を形成する。
【0014】
酸化バナジウムのような遷移金属酸化物は、有機分子を吸着する性質があるため、熱抵抗変化膜104を所定の形状に加工した後、酸化シリコン膜105を形成すると、熱抵抗変化膜104の加工に用いられるレジストあるいは洗浄に使用する有機溶剤の残留層が、上記熱抵抗変化膜104と酸化シリコン膜105との間に形成され、熱抵抗変化膜104と酸化シリコン膜105との密着強度を低減してしまう。また、熱抵抗変化膜104の保護層である第3窒化シリコン膜106は、プラズマ化学気相成長法による成膜時のプラズマの還元作用により、あるいは成膜時/成膜後の加熱処理時に含有水素を放出するため、該第3窒化シリコン膜106に接する熱抵抗変化膜104の電気抵抗が変化する。
【0015】
そこで、熱抵抗変化膜104を所定の形状に加工する前に酸化シリコン膜105を形成することにより、加工工程中に熱抵抗変化膜104が有機分子の吸着等のダメージを受け、熱抵抗変化膜104の電気特性が変化することを防止している。これにより、複数の熱型赤外線検出素子間の素子抵抗のばらつきを少なくすることができる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平11−74545号公報に記載の熱型赤外線検出素子においては、熱抵抗変化膜104上に絶縁膜である酸化シリコン膜105が配置されるため、熱抵抗変化膜104上に配線金属膜102を配置するだけでは熱抵抗変化膜104と配線金属膜102との電気的な接続は確保できない。このため、配線金属膜102上に熱抵抗変化膜104を配し、これらの間に第2窒化シリコン膜103を挟んで配置させ、コンタクトホール103aにより熱抵抗変化膜104と配線金属膜102との電気的な接続を確保している。しかしながら、この構造の熱型赤外線検出素子を作成するには、第2窒化シリコン膜103を形成する工程と、この第2窒化シリコン膜103にコンタクトホール103aを形成する工程とが必要となる。このため、熱型赤外線検出素子の製造工程が増加し、製造コストの増加を招来することになる。また、第2窒化シリコン膜103にコンタクトホール103aを形成することで構成が複雑になる。このため、熱型赤外線検出素子を安価に製造することができない。
【0017】
また、遷移金属の酸化物は、上記した問題点以外にも、大気に暴露されることによりその表面が変質し易いという問題点を有している。しかしながら、上記特開平11−74545号公報に記載の熱型赤外線検出素子においては、上記問題点については全く考慮されておらず、その製造過程において熱抵抗変化膜104が大気に暴露されることによりその表面が変質し、これにより、熱抵抗変化膜104の電気特性が変化するという問題点を有している。
【0018】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる熱型赤外線検出素子およびその製造方法並びに該熱型赤外線検出素子を備えた撮像装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる熱型赤外線検出素子は、上記の課題を解決するために、遷移金属の酸化物を含む酸化物膜からなり、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜と、上記熱抵抗変化膜と電気的に接続される配線金属膜とを備えた熱型赤外線検出素子において、上記熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部が、少なくとも表面が金属からなる導電性膜で被覆されており、上記導電性膜が、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に設けられた、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜であり、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、さらに、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることを特徴としている。
【0020】
また、本発明にかかる熱型赤外線検出素子は、上記の課題を解決するために、遷移金属の酸化物を含む酸化物膜からなり、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜と、上記熱抵抗変化膜と電気的に接続される配線金属膜とを備えた熱型赤外線検出素子において、上記熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部が、少なくとも表面が金属からなる導電性膜で被覆されており、上記導電性膜が、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に設けられた、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜であり、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、さらに、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属の酸化物を含む濃度勾配層を有し、該濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するように形成されていることを特徴としている。
【0021】
上記導電性膜は、上記接続部が大気中に暴露されない条件下で成膜されたものであってもよい。
【0022】
具体的には、例えば、上記熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部が、上記熱抵抗変化膜を、酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で成膜された、少なくとも表面が金属からなる導電性膜で被覆されている。
【0023】
上記の構成によれば、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部を成膜することで、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができる。
【0024】
上記の構成によれば、上記導電性膜が、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に設けられた、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜であることにより、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を、大気に暴露されることによる表面の変質や、その製造工程における加工時のダメージや有機分子の吸着から保護することができる。従って、上記熱抵抗変化膜と上記配線金属膜との接続部の変質等により素子抵抗が増大することを防止することができる。このため素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0025】
上記の構成によれば、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることで、上記保護膜を、熱抵抗変化膜で用いた遷移金属と同じ 遷移金属をターゲットとして用いて製造することができることから、上記保護膜の製造にかかる時間を短縮し、上記保護膜をより容易かつ安価に形成することができる。また、1つのターゲットから熱抵抗変化膜と保護膜とを形成することができるので、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記保護膜を製造することができ、該保護膜を形成しても、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記熱型赤外線検出素子を製造することができる。
【0026】
上記の構成によれば、該濃度勾配層中の酸素濃度、すなわち、酸素含有量を、保護膜表面側に向かって次第に減少するように連続的に変化させることにより、得られる熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができる。
【0027】
上記熱型赤外線検出素子は、上記導電性膜が、上記配線金属膜における熱抵抗変化膜との接続端子部であり、上記熱抵抗変化膜上に上記配線金属膜が直接積層されていてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、上記導電性膜が、上記配線金属膜における熱抵抗変化膜との接続端子部であり、上記熱抵抗変化膜上に上記配線金属膜が直接積層されているので、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを容易に電気的に接続することができる。従って、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、例えば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。
【0029】
また、本発明にかかる熱型赤外線検出素子は、上記の課題を解決するために、遷移金属の酸化物を含む酸化物膜からなり、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜と、上記熱抵抗変化膜と電気的に接続される配線金属膜とを備えた熱型赤外線検出素子において、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を覆う、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜を備え、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることを特徴としている。
【0030】
上記熱抵抗変化膜に用いられる遷移金属の酸化物は、温度変化によって抵抗値を変化させることができることから赤外線による温度上昇の検出手段として好適であり、また、抵抗温度係数の絶対値が大きいことから、得られる熱型赤外線検出素子の感度を向上させることができる。しかしながら、その一方で、遷移金属の酸化物は、大気に暴露されることによりその表面が変質したり、フォトリソグラフィー等による加工に際し、その表面にダメージを受け易く、また、有機分子を吸着し易いという問題点を有している。
【0031】
本発明にかかる上記熱型赤外線検出素子は、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を覆う、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜が配されていることで、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、大気に暴露されることによる表面の変質や、その製造工程における加工時のダメージや有機分子の吸着から保護されている。
【0032】
例えば、上記の構成によれば、上記熱型赤外線検出素子の製造に際し、上記熱抵抗変化膜を保護することができ、上記熱抵抗変化膜上に上記保護膜が積層された状態で上記熱抵抗変化膜を所定の形状に加工することで、該加工による上記熱抵抗変化膜へのダメージを防止することができる。この場合、熱型赤外線検出素子の構造を考慮すれば、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜と接続されることがなく、上記熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。また、このようにして得られた熱型赤外線検出素子は、上記熱抵抗変化膜が、表面が変質やダメージ等から保護されている面にて上記配線金属膜と接続されている構成を有し、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、大気に暴露されることによる表面の変質や、その製造工程における加工時のダメージや有機分子の吸着から保護されている。
【0033】
以上のように、上記の構成によれば、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部の変質等により素子抵抗が増大することを防止することができる。このため素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0034】
また、上記の構成によれば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を覆う、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜により電気的に接続されていることで、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。従って、上記の構成によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる熱型赤外線検出素子を提供することができる。
【0035】
上記の構成によれば、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることで、上記保護膜を、熱抵抗変化膜で用いた遷移金属と同じ遷移金属をターゲットとして用いて製造することができることから、上記保護膜の製造にかかる時間を短縮し、上記保護膜をより容易かつ安価に形成することができる。また、1つのターゲットから熱抵抗変化膜と保護膜とを形成することができるので、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記保護膜を製造することができ、該保護膜を形成しても、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記熱型赤外線検出素子を製造することができる。
【0036】
また、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることで、上記熱抵抗変化膜と保護膜とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置における同一の真空チャンバ内で、同一のターゲットを用いて成膜することができる。このため、熱抵抗変化膜成膜後、大気開放することなく上記保護膜を成膜することができ、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができる。また、真空排気に要する時間と費用とを節約することができることから、上記熱型赤外線検出素子を安価に製造することができる。
【0037】
また、上記の構成によれば、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることで、上記熱抵抗変化膜と保護膜との密着強度に優れている。
【0038】
また、本発明にかかる熱型赤外線検出素子は、上記の課題を解決するために、遷移金属の酸化物を含む酸化物膜からなり、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜と、上記熱抵抗変化膜と電気的に接続される配線金属膜とを備えた熱型赤外線検出素子において、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を覆う、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜を備え、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、さらに、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属の酸化物を含む濃度勾配層を有し、該濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するように形成されていることを特徴としている。
【0039】
上記の構成によれば、該濃度勾配層中の酸素濃度、すなわち、酸素含有量を、保護膜表面側に向かって次第に減少するように連続的に変化させることにより、得られる熱型赤外 線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができる。
【0040】
上記熱型赤外線検出素子は、上記遷移金属がチタンであることが好ましい。
【0041】
チタン酸化物は抵抗温度係数の絶対値が大きく、得られる熱型赤外線検出素子の感度を向上させることができる。このため、該チタン酸化物を含む熱抵抗変化膜を、例えばボロメータ型赤外線センサ等に用いることにより、非常に高い感度のボロメータ型赤外線センサを実現することができる。
【0042】
また、上記熱型赤外線検出素子は、上記遷移金属がバナジウムであることが好ましい。
【0043】
バナジウム酸化物は抵抗温度係数の絶対値が大きく、また、比抵抗値が低い。このため、上記熱抵抗変化膜がバナジウム酸化物を含むことで、得られる熱型赤外線検出素子の感度を向上させることができると共に、熱抵抗変化膜自体から発生するノイズの影響を低減させることができる。従って、このような熱抵抗変化膜を、例えばボロメータ型赤外線センサ等に用いることにより、非常に高い感度のボロメータ型赤外線センサを実現することができる。
【0044】
上記の熱型赤外線検出素子は、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属の酸化物を含む濃度勾配層を有し、該濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するように形成されていることが好ましい。
【0045】
上記の構成によれば、該濃度勾配層中の酸素濃度、すなわち、酸素含有量を、保護膜表面側に向かって次第に減少するように連続的に変化させることにより、得られる熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができる。
【0046】
本発明にかかる熱型赤外線検出素子の製造方法は、上記の課題を解決するために、上記熱型赤外線検出素子を製造するに際して、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することを特徴としている。
【0047】
上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することで、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができる。
【0048】
しかも、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を成膜後、引き続き、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することで、熱抵抗変化膜を所定の形状に加工するためのフォトリソグラフィー工程等の加工工程は、上記熱抵抗変化膜上に上記保護膜を成膜した後に行なわれる。すなわち、熱抵抗変化膜を所定の形状に加工する工程においては、既に上記熱抵抗変化膜表面が上記保護膜により保護された状態にある。このため、例えば、上記熱抵抗変化膜表面へのダメージや有機分子の吸着から上記熱抵抗変化膜表面を保護することができる。
【0049】
この結果、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜と接続されることがなく、得られる熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。このため、素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0050】
また、上記の方法によれば、上記保護膜により上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを電気的に接続することができるので、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。
【0051】
さらに、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜および保護膜の成膜に際し、上記熱抵抗変化膜と保護膜とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置における同一の真空チャンバ内で成膜することで、成膜装置における大気開放・真空排気に要する時間の節約を図ることができる。
【0052】
従って、上記の方法によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる熱型赤外線検出素子の製造方法を提供することができる。
【0053】
さらに、本発明にかかる熱型赤外線検出素子の製造方法は、上記の課題を解決するために、上記熱型赤外線検出素子を製造するに際して、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き、成膜雰囲気中の酸素濃度を次第に減少させながら、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することを特徴としている。
【0054】
上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することで、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができる。
【0055】
しかも、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を成膜後、引き続き、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することで、熱抵抗変化膜を所定の形状に加工するためのフォトリソグラフィー工程は、上記熱抵抗変化膜上に上記保護膜を成膜した後に行なわれる。すなわち、熱抵抗変化膜を所定の形状に加工する工程においては、既に上記熱抵抗変化膜表面が上記保護膜により保護された状態にある。このため、該加工工程における上記熱抵抗変化膜表面の侵食、例えば、上記熱抵抗変化膜表面へのダメージや有機分子の吸着から上記熱抵抗変化膜表面を保護することができる。
【0056】
この結果、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜と接続されることがなく、得られる熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。このため素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0057】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き、成膜雰囲気中の酸素濃度を次第に減少させることで、前記濃度勾配層を含めた上記保護膜中の酸素含有量を、保護膜表面側に向かって次第に減少するように連続的に変化させることができる。この結果、得られる熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができる。
【0058】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜および保護膜の成膜に際し、上記熱抵抗変化膜と保護膜とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置における同一の真空チャンバ内で成膜することで、成膜装置における大気開放・真空排気に要する時間の節約を図ることができる。
【0059】
さらに、上記の方法によれば、上記保護膜は、成膜雰囲気中の酸素濃度を変化させるだけで成膜することができ、実質的な製造工程の増加を伴うことはほとんどなく、簡単に熱型赤外線検出素子を製造することができる。
【0060】
また、上記の方法によれば、上記保護膜により上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを電気的に接続することができるので、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。
【0061】
従って、上記の方法によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる熱型赤外線検出素子の製造方法を提供することができる。
【0062】
上記熱型赤外線検出素子を製造するに際しては、上記熱抵抗変化膜と上記保護膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することが好ましい。
【0063】
上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜と上記保護膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することで、上記保護膜を、熱抵抗変化膜で用いた遷移金属と同じ遷移金属をターゲットとして用いて製造することができることから、上記保護膜の製造にかかる時間を短縮し、上記保護膜をより容易かつ安価に形成することができる。また、1つのターゲットから熱抵抗変化膜と保護膜とを形成することができるので、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記保護膜を製造することができ、該保護膜を形成しても、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記熱型赤外線検出素子を製造することができる。
【0064】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することで、上記熱抵抗変化膜と保護膜との密着強度に優れた熱型赤外線検出素子を得ることができる。
【0065】
上記熱型赤外線検出素子を製造するに際しては、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記配線金属膜を成膜することが好ましい。
【0066】
上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記配線金属膜を成膜することで、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができる。
【0067】
しかも、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を成膜後、引き続き、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記配線金属膜を成膜することで、熱抵抗変化膜を所定の形状に加工するためのフォトリソグラフィー工程は、上記熱抵抗変化膜上に上記配線金属膜を成膜した後に行なわれる。すなわち、熱抵抗変化膜を所定の形状に加工する工程においては、既に上記熱抵抗変化膜表面が上記配線金属膜により保護された状態にある。このため、該加工工程における、例えば、上記熱抵抗変化膜表面へのダメージや有機分子の吸着から上記熱抵抗変化膜表面を保護することができる。
【0068】
この結果、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜と接続されることがなく、得られる熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。このため素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0069】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。
【0070】
さらに、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜および保護膜の成膜に際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置における同一の真空チャンバ内で成膜することで、成膜装置における大気開放・真空排気に要する時間の節約を図ることができる。
【0071】
従って、上記の方法によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる熱型赤外線検出素子の製造方法を提供することができる。
【0072】
上記の熱型赤外線検出素子の製造方法は、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することが好ましい。
【0073】
上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することで、上記配線金属膜を、熱抵抗変化膜で用いた遷移金属と同じ遷移金属をターゲットとして用いて製造することができることから、上記配線金属膜の製造にかかる時間を短縮し、上記配線金属膜をより容易かつ安価に形成することができる。また、1つのターゲットから熱抵抗変化膜と配線金属膜とを形成することができるので、製造工程の増加を伴うことなく簡単に上記熱型赤外線検出素子を製造することができる。
【0074】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することで、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との密着強度に優れた熱型赤外線検出素子を得ることができる。
【0075】
本発明の熱型赤外線検出素子の製造方法は、上記熱抵抗変化膜と、上記保護膜とを、大気中に暴露することなく、同一の成膜室内で成膜することが好ましい。
【0076】
本発明の撮像装置は、上記の課題を解決するために、上記の熱型赤外線検出素子を備えていることを特徴としている。
【0077】
上記の構成によれば、上記熱型赤外線検出素子が、簡素な構成を有すると共に上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部にダメージがなく、素子抵抗の安定性に優れ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきが小さいことから、簡素な構成にて素子抵抗の安定化が図られていると共に、素子抵抗のばらつきが小さく、温度分解能が良好で高品位な画像を有する撮像装置を提供することができる。また、上記の構成によれば、上記熱型赤外線検出素子が安価な構成を有していることで、上記熱型赤外線検出素子を用いた撮像装置を安価に作成することができる。
【0078】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1(a)・(b)ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本発明における「赤外線」には、遠赤外線も含まれることとする。
【0079】
集積回路デバイス上に形成されるボロメータ素子等のボロメータ型熱型赤外線検出素子は、図3に示すように、赤外線を感知するダイアフラム構造体30が半導体基板1上に支持されてなるダイアフラム構造を備えている。半導体基板1の表面には図示しない集積回路が形成されており、その集積回路は、ダイアフラム構造体30と電気的に接続されている。ダイアフラム構造体30は、脚31・31を備えており、半導体基板1から所定の間隔を置いて半導体基板1上に支持されている。
【0080】
以下、本実施の形態にかかるダイアフラム構造体30の構造、つまり、熱抵抗変化膜となる遷移金属酸化物膜の製造プロセスにおける特性変化を防止する構造および該構造を有する熱型赤外線検出素子の簡便な製造方法、並びに、該熱型赤外線検出素子を備えた撮像装置の構成について説明する。
【0081】
先ず、本実施の形態にかかるダイアフラム構造体30の構造について、図1(a)・(b)に基づいて詳しく説明する。図1(a)は、熱型赤外線検出素子の平面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A線断面における端面図である。
【0082】
図1(a)・(b)に示すように、ダイアフラム構造体30は、所定の形状にパターニングされた絶縁膜である第1酸化シリコン膜2上に熱抵抗変化膜3が形成されており、該熱抵抗変化膜3上の一部、つまり、該熱抵抗変化膜3における配線金属膜5との接続部となる領域には、該熱抵抗変化膜3における配線金属膜5との接続部を保護すると共に、該熱抵抗変化膜3と配線金属膜5とを電気的に接続する保護膜4が形成されている。そして、この保護膜4にオーバーラップするように、配線金属膜5が所定の形状に形成されている。さらに、上記第1酸化シリコン膜2上面には、上記熱抵抗変化膜3および配線金属膜5を覆うように、上記第1酸化シリコン膜2のパターンに沿って、絶縁膜である第2酸化シリコン
膜6が形成されており、この第2酸化シリコン膜6上には、高屈折率膜7および赤外線吸収膜8がこの順に形成されている。
【0083】
熱抵抗変化膜3は、赤外線を吸収することにより、熱、すなわち、温度変化によって抵抗値が変化する膜であり、赤外線を吸収することにより抵抗値が変化する、チタン酸化物やバナジウム酸化物等の、遷移金属の酸化物を主成分とする(含む)酸化物膜からなり、赤外線による温度上昇を検出する赤外線検出部として機能する。
【0084】
上記熱抵抗変化膜3は、遷移金属の酸化物を主成分とする酸化物膜からなるものであれば特に限定されるものではないが、赤外線検出性能の面から、遷移金属の酸化物を、主成分として50重量%以上含有していることが好ましく、遷移金属の酸化物からなること、すなわち、遷移金属の酸化物を100重量%含有していることが最も好ましい。
【0085】
遷移金属の酸化物は、抵抗温度係数の絶対値が大きく、遷移金属の酸化物を用いることで、得られる熱型赤外線検出素子の感度を向上させることができる。
【0086】
しかしながら、その一方で、遷移金属の酸化物は、大気への暴露、あるいは、
フォトリソグラフィー等による加工に際し、その表面が変質しやすく、また、有機分子を吸着し易い。そこで、本実施の形態にかかる上記熱型赤外線検出素子は、上記熱抵抗変化膜3における上記配線金属膜5との界面、すなわち、上記熱抵抗変化膜3における上記配線金属膜5との接続部に、上記保護膜4を備えている。
【0087】
上記保護膜4は、少なくとも表面が金属からなる導電性の膜であり、上記熱抵抗変化膜3における上記配線金属膜5との接続部を覆うことで該接続部を保護すると共に、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜5とを電気的に接続するようになっている。
【0088】
上記保護膜4としては、例えば、チタン(Ti)、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)等の金属材料を、単独で、あるいは、適宜組み合わせて用いることができ、これら金属材料のみによって形成されていてもよく、導電性材料からなる層上に金属材料からなる層(以下、界面金属層と記す)が形成された、二層以上の層構造を有していてもよい。つまり、上記保護膜4は、界面金属層を含む一層以上の層から形成することができる。なお、上記保護膜4が二層以上の層構造を有する例については後で詳述する。
【0089】
また、配線金属膜5は、上記熱抵抗変化膜3に電気的に接続されて電極として機能する膜であり、図3に示す脚31を介して半導体基板1の図示しない集積回路に電気的に接続され、熱抵抗変化膜3の抵抗変化を検出することで、赤外線による温度上昇を検出する。
【0090】
上記配線金属膜5としては、例えば、チタンやバナジウム等の遷移金属の他、アルミニウム等の、遷移金属以外の金属材料を用いることができる。これら金属材料は、各々単独で用いてもよく、適宜組み合わせて用いてもよい。
【0091】
また、上記第2酸化シリコン膜6は、上記熱抵抗変化膜3および配線金属膜5を覆うように、上記第1酸化シリコン膜2上面に該第1酸化シリコン膜2のパターンに沿って形成されることで、配線金属膜5およびパターニングによる上記配線金属膜5からの熱抵抗変化膜3の露出部を保護するようになっている。
【0092】
高屈折率膜7および赤外線吸収膜8は、感知すべき赤外線32(図3参照)を効率的に吸収するために積層されている。高屈折率膜7は、例えば、赤外線屈折率の高いシリコンからなる。本実施の形態にかかる熱型赤外線検出素子は、このように、ダイアフラム構造体30内に上記高屈折率膜7を配置することで、該高屈折率膜7と上記配線金属膜5の反射光とが該高屈折率膜7表面で干渉し、打ち消し合う構造を有している。また、赤外線吸収膜8は、例えば窒化チタンからなり、この赤外線吸収膜8表面での赤外線の吸収を増加させるようになっている。
【0093】
なお、第2酸化シリコン膜6の膜厚と高屈折率膜7の膜厚との総和は、赤外線32が上記第2酸化シリコン膜6および高屈折率膜7を透過する際の波長を考慮し、検出対象の赤外線波長帯の中心波長の略1/4とするのが好ましい。これにより、高屈折率膜7表面での反射光と配線金属膜5表面での反射光とが干渉して互いに打ち消し合い、効率良く赤外線32を吸収することができる。
【0094】
以下に、上記熱型赤外線検出素子の製造工程の一例を図2(a)〜(g)に基づいて説明する。
【0095】
まず、表面に図示しない集積回路が形成された半導体基板1上に、例えば商品名「PIQ(日立化成・デュポン社製)」等の塗布型ポリイミドやレジスト等の有機塗布型樹脂からなる犠牲層9を形成する(図2(a))。
【0096】
次に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、第1酸化シリコン膜2を、犠牲層9上に、200nmの厚さで成膜する(図2(b))。
【0097】
次いで、真空発生装置を備えた成膜装置としてIBS(イオン・ビーム・スパッタリング)装置を使用し、真空チャンバ内にて、減圧下、チタンターゲットを、アルゴンガスおよび酸素の混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングすることにより、チタン酸化物を主成分とする熱抵抗変化膜3を、上記第1酸化シリコン膜2上に、100nmの厚さで成膜する。
【0098】
次に、熱抵抗変化膜3を形成した際に用いたIBS装置をそのまま用いて、引き続き、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた同一の真空チャンバ内で、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた遷移金属と同じ遷移金属、この場合は、チタンをターゲットとして用いて、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた不活性ガスと同じ不活性ガスであるアルゴンガス雰囲気下で、減圧下、スパッタリングすることにより、保護膜4として、上記熱抵抗変化膜3上に、チタンからなる界面金属層(保護膜4)を10nmの厚さで成膜する。上記界面金属層(保護膜4)の成膜に際しては、上記真空チャンバ内に、上記熱抵抗変化膜3の成膜時における真空チャンバ内の圧力が維持されるように、アルゴンガスの導入が行われる。
【0099】
次いで、上記界面金属層(保護膜4)上に所定の形状のレジストパターンを形成するフォトリソグラフィー工程の後、熱抵抗変化膜3および上記界面金属層(保護膜4)を、RIE(リアクティブ・イオン・エッチング)法あるいはイオンミリング法等のエッチング方法によって所定の形状に加工(パターニング)する(図2(c))。なお、このときの熱抵抗変化膜3の電気特性は、成膜雰囲気中のアルゴンと酸素との組成比によって制御する。例えば、ここで、熱抵抗変化膜3の比抵抗を3Ω・cmに設定する。
【0100】
次に、上記界面金属層(保護膜4)上に、配線金属膜5をRF(radio frequency:高周波)マグネトロンスパッタリングによって50nmの厚さで形成し、所定の形状のレジストパターンを形成するフォトリソグラフィー工程の後、RIE法あるいはイオンミリング法等のエッチング方法によって、該配線金属膜5並びに界面金属層(保護膜4)を所定の形状に加工(パターニング)する(図2(d))。このとき、エッチング時間を長く設定することによって、配線金属膜5だけでなく、配線金属膜5が配されない領域の界面金属層(保護膜4)も同時に除去することができる。
【0101】
次いで、プラズマCVD装置を用いて、第2酸化シリコン膜6を、上記配線金属膜5およびパターニングによる上記配線金属膜5からの熱抵抗変化膜3の露出部を覆うように、第1酸化シリコン膜2上に、該第1酸化シリコン膜2のパターンに沿って、50nmの厚さで成膜する。
【0102】
次に、DC(direct curren:直流)マグネトロンスパッタリングを用いて、シリコンからなる高屈折率膜7を、ダイアフラム構造体30における第2酸化シリコン膜6上に、550nmの厚さで成膜する。
【0103】
次いで、DCマグネトロンスパッタリングを用いて、窒化チタンからなる赤外線吸収膜8を、上記高屈折率膜7上に、10nmの厚さで成膜する(図2(e))。
【0104】
次に、RIE法あるいはイオンミリング法等のエッチング方法によって、第1酸化シリコン膜2、第2酸化シリコン膜6、高屈折率膜7および赤外線吸収膜8を所定の形状に加工する(図2(f))。このとき、ダイアフラム構造体30の形状が略40μm角となるようにする。
【0105】
最後に、犠牲層9を、酸素プラズマまたは湿式エッチングによって除去する(図2(g))。
【0106】
上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜3を覆うように上記保護膜4を成膜することで、上記熱抵抗変化膜3が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜3表面の変質の防止を図ることができる。
【0107】
また、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3を成膜後、引き続き、上記熱抵抗変化膜3を覆うように上記保護膜4を成膜することで、熱抵抗変化膜3を所定の形状に加工(パターニング)するための加工工程(フォトリソグラフィー工程)は、上記熱抵抗変化膜3上に上記保護膜4を成膜した後(図2(c)参照)に行なわれる。すなわち、熱抵抗変化膜3を所定の形状に加工する工程においては、既に上記熱抵抗変化膜3表面が上記保護膜4により保護された状態にある。このため、該加工工程における、上記熱抵抗変化膜3表面へのダメージや有機分子の吸着から上記熱抵抗変化膜3表面を保護することができる。
【0108】
この結果、熱抵抗変化膜3を所定の形状に加工してから保護膜4を形成する場合とは異なり、フォトリソグラフィー工程によって表面にダメージを受けた熱抵抗変化膜3上に保護膜4を形成することがなく、上記熱抵抗変化膜3における上記配線金属膜5との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜5と接続されることがない。このため、得られる熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。従って、上記の製造方法によれば素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0109】
また、上記の製造方法によれば、上記保護膜4により上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜5とを電気的に接続することができるので、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜5との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜5とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。
【0110】
さらに、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3および保護膜4の成膜に際し、上記熱抵抗変化膜3と保護膜4とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置(例えば上記IBS装置)における同一の真空チャンバ内で成膜することで、該成膜装置における大気開放・真空排気に要する時間の節約を図ることができる。なお、上記熱抵抗変化膜3の成膜に際し、真空発生装置を用いてチャンバ(真空チャンバ)内を減圧状態に維持することで、酸素の使用量を低減することができる。
【0111】
従って、上記の構成によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる。
【0112】
また、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3と上記保護膜4とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜する(つまり、上記熱抵抗変化膜3の形成に用いる遷移金属と同一のターゲットを用いて上記保護膜4をスパッタリングにより成膜する)ことで、上記保護膜4の製造にかかる時間を短縮し、上記保護膜4をより容易かつ安価に形成することができる。
【0113】
このとき、上記したように1つのターゲットから熱抵抗変化膜3と保護膜4とを成膜することで、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記保護膜4を製造することができ、該保護膜4を形成しても、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記熱型赤外線検出素子を製造することができる。
【0114】
また、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜5とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することで、上記熱抵抗変化膜3と保護膜4との密着強度に優れた熱型赤外線検出素子を得ることができる。
【0115】
また、上記熱抵抗変化膜3の材料として、抵抗温度係数の絶対値が大きいチタン酸化物を主成分とする酸化物を用いることにより、熱型赤外線検出素子の感度の向上を図ることができる。従って、チタン酸化物を主成分とする酸化物からなる熱抵抗変化膜3を備えた熱型赤外線検出素子をボロメータ型赤外線センサ等に用いることにより、非常に高い感度のボロメータ型赤外線センサを実現することができる。
【0116】
このようにして得られた上記熱型赤外線検出素子は、上述したように、赤外線32による温度上昇を検出する赤外線検出部を備え、該赤外線検出部が、赤外線32を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜3と、電極としての配線金属膜5と、上記熱抵抗変化膜3における上記配線金属膜5との接続部を覆う保護膜4とを備え、上記保護膜4が、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜5との接続部に配されている構成を有している。
【0117】
つまり、上記熱型赤外線検出素子は、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜5との接続部に、上記熱抵抗変化膜3における上記配線金属膜5との接続部を覆う保護膜4を備え、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜5とが、上記保護膜4により電気的に接続された構成を有している。
【0118】
この結果、上記熱型赤外線検出素子において、上記熱抵抗変化膜3は、変質やダメージの無い面にて上記配線金属膜5と電気的に接続されている。つまり、上記熱型赤外線検出素子は、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜5との接続部に、上記保護膜4が配されていることで、上記熱抵抗変化膜3における上記配線金属膜5との接続部が、大気に暴露されることによる表面の変質や、その製造工程における加工時のダメージや有機分子の吸着から保護されている。
【0119】
なお、配線金属膜5を形成し、所定の形状に加工した後(図2(d)参照)は、配線金属膜5との接続部以外の部分で上記熱抵抗変化膜3が露出することになるが、この状態で熱抵抗変化膜3の表面がダメージを受けたとしても、熱抵抗変化膜3の抵抗変化を検出するためのセンス電流は、ほとんどが抵抗値の低い熱抵抗変化膜3の内部を流れるため、熱型赤外線検出素子の特性にはほとんど影響しない。
【0120】
また、本実施の形態においては、熱抵抗変化膜3と保護膜4とを同一の成膜室(チャンバ)内で成膜しているが、本発明の主旨によれば、熱抵抗変化膜3が保護膜4を成膜する前に大気に暴露しなければ良いので、真空雰囲気下であれば、異なる成膜室(チャンバ)を用いて、熱抵抗変化膜3と保護膜4とを成膜してもかまわない。
【0121】
ここで、参考のために、上記熱抵抗変化膜3に、チタン酸化物を主成分とする酸化物を用いた熱型赤外線検出素子として、図6に示すように上記保護膜4が形成されていない熱型赤外線検出素子を作成し、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを、熱型赤外線検出素子が、図1に示す構造を有する場合と、上記図6に示した構造を有する場合とで比較する。なお、熱抵抗変化膜3の成膜時の条件は、酸素濃度が13mol %、混合ガス流量が10sccm、圧力が1.8×10−4Torrである。また、保護膜4の成膜時の条件は、酸素濃度の減少の割合が0.2%/sec 、ガス流量が10sccm、圧力が1.8×10−4Torrである。また、配線金属膜5の成膜時の条件は、ガス流量が100sccm、圧力が8mmTorrである。
【0122】
図6に示す熱型赤外線検出素子は、半導体基板40上に、絶縁性の保護膜である第1酸化シリコン膜41、熱抵抗変化膜42、配線金属膜43、第2酸化シリコン膜44、高屈折率膜45および赤外線吸収膜46がこの順に積層されたダイアフラム構造体を備えている。配線金属膜43は、熱抵抗変化膜42上面の一部に重なるように積層されており、熱抵抗変化膜42と配線金属膜43とは電気的に接続されている。また、熱抵抗変化膜42および配線金属膜43は、第1酸化シリコン膜41と第2酸化シリコン膜44とにより、完全に覆われている。
【0123】
上記熱抵抗変化膜42の製造方法としては、まず、反応性スパッタリング法によってチタン酸化物を主成分とする、前記図1(a)・(b)に示す熱型赤外線検出素子における熱抵抗変化膜3の製造に用いた酸化物と同じ酸化物を、上記第1酸化シリコン膜41上に成膜する。次に、フォトリソグラフィーにより、所定の形状のレジストパターンを作成する。その後、RIE法やイオンミリング法等によって所定の形状に加工することにより、上記酸化物からなる熱抵抗変化膜42を形成する。図6に示す熱型赤外線検出素子には保護膜4は形成されていないが、その他の構造は、図1(a)・(b)に示す熱型赤外線検出素子の構造と同一である。また、熱型赤外線検出素子を製造する際には、その素子抵抗の設計値を18kΩとして製造する。
【0124】
図1(a)・(b)に示す構造を有する熱型赤外線検出素子の場合、その素子抵抗は18〜19kΩとなり、略設計値通りであった。また、複数の熱型赤外線検出素子間の素子抵抗のばらつきは少なく、非常に安定していた。
【0125】
一方、図6に示す熱型赤外線検出素子の場合、その素子抵抗は20〜130kΩと、その値は設計値よりも大きくなり、複数の熱型赤外線検出素子間の素子抵抗のばらつきも非常に大きくなった。
【0126】
図6に示す熱型赤外線検出素子の場合、フォトリソグラフィー工程によって、熱抵抗変化膜42がダメージを受け、熱抵抗変化膜42の抵抗値が増大することで、熱抵抗変化膜42の電気特性が変化する。このダメージは熱抵抗変化膜42表面のみであり、熱抵抗変化膜42内部にはこのようなダメージはない。しかしながら、熱型赤外線検出素子の構造を考慮した場合、ダメージを受けた熱抵抗変化膜42の表面と配線金属膜43とが接することとなる。このため、熱型赤外線検出素子における素子抵抗が設計値から大きく逸脱するとともに、複数の熱型赤外線検出素子間において素子抵抗のばらつきが大きくなる。従って、安定した特性の熱型赤外線検出素子を得ることが困難になり、ひいては、熱型赤外線検出素子の感度の向上を図ることができない。
【0127】
これに対し、図1(a)・(b)に示すように熱抵抗変化膜3と配線金属膜5との接続部に上記保護膜4を形成することにより、熱抵抗変化膜3の変質による電気特性の変化を抑制し、設計値通りの素子抵抗を有し、熱型赤外線検出素子間でのばらつきの少ない熱型赤外線検出素子を製造することができる。この結果、熱型赤外線検出素子の素子抵抗の安定化を図ることができ、ひいては、熱型赤外線検出素子の感度の向上を図ることができる。
【0128】
なお、上記説明においては、上記保護膜4として、チタンからなる界面金属層を形成したが、上記保護膜4としては、熱型赤外線検出素子の製造工程において熱抵抗変化膜3を保護するために形成されるものであれば、その材料はチタンに限られるものではない。例えば、前記IBS装置(成膜装置)内に別種のターゲットを配置することによって、前記したように、バナジウム、タンタル、アルミニウム、ニッケル等の金属材料により上記保護膜4を形成することができる。
【0129】
また、上記保護膜4としては、少なくとも表面が金属からなる導電性の膜であれば特に限定されるものではなく、導電性材料からなる層上に上記界面金属層が形成された、二層以上の層構造を有していてもよい。図4に、上記保護膜4が二層からなる例を示す。
【0130】
図4に示す保護膜4は、例えば、勾配層(濃度勾配層)4aと、界面金属層としての金属チタン層4bとを有している。なお、図4においては、熱抵抗変化膜3および保護膜4以外の構成については省略している。また、上記保護膜4は、図2(c)において熱抵抗変化膜3上に保護膜4を配し、該熱抵抗変化膜3および保護膜4をRIE法あるいはイオンミリング法等のエッチング方法によって所定の形状に加工した状態を示し、図2(d)に示した工程により、熱抵抗変化膜3と共に、配線金属膜5が配されない領域の保護膜4は除去される。
【0131】
上記勾配層4aは、熱抵抗変化膜3上、つまり、上記熱抵抗変化膜3と界面金属層としての金属チタン層4bとの間に形成され、好適には、上記熱抵抗変化膜3の形成に用いられる遷移金属あるいは上記界面金属層の形成に用いられる遷移金属を酸化物の形態で含み、より好適には、上記熱抵抗変化膜3の主成分となる遷移金属あるいは界面金属層の形成に用いられる遷移金属を酸化物の形態で含んでいる。前記したように、上記熱抵抗変化膜3がチタン酸化物を主成分とする酸化物からなり、上記界面金属層が金属チタン層4bからなる場合は、上記勾配層4aは、チタンを酸化物の形態で含んでいることが好ましい。
【0132】
上記勾配層4aは、該勾配層4a中の酸素濃度、すなわち、その酸素含有量が、勾配層4aの厚さ方向に連続的に変化するように形成された層であり、該勾配層4a中の酸素含有量は、熱抵抗変化膜3近傍が最も高く、熱抵抗変化膜3から離れるに従って次第に漸減する。
【0133】
すなわち、上記保護膜4においては、膜厚方向に沿って熱抵抗変化膜3から遠ざかるにつれ、その酸素含有量が低下し、最終的にゼロとなることで、保護膜4の表層ではチタンからなる金属チタン層4bが形成されている。
【0134】
このような保護膜4は、真空発生装置を備えた成膜装置として、例えばIBS(イオン・ビーム・スパッタリング)装置を使用し、真空チャンバ内にて、減圧下、チタンターゲットを、アルゴンガスおよび酸素の混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングすることにより、チタン酸化物を主成分とする熱抵抗変化膜3を成膜した後、引き続き、上記真空チャンバ内(つまり、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた同一の真空チャンバ内)で、成膜を中断すること無しに成膜雰囲気中の酸素濃度を次第に減少させながら、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた遷移金属と同じ遷移金属、この場合は、チタンをターゲットとして用いて、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた不活性ガスと同じ不活性ガスであるアルゴンガス雰囲気下で、減圧下、スパッタリングすることにより形成される。
【0135】
すなわち、上記の製造方法によれば、成膜装置として例えばIBS装置を用いて、熱抵抗変化膜3と同一の真空チャンバ内にて、同一ターゲットを用いて形成することができ、熱抵抗変化膜3形成後、成膜雰囲気中の酸素濃度を徐々に低減し、少なくとも保護膜4が形成されている時間内に酸素濃度をゼロにするだけで、上記熱抵抗変化膜3上に、膜厚方向に沿って熱抵抗変化膜3から遠ざかるにつれ、その酸素含有量が低下し、最終的にゼロとなり、金属チタン層4bを形成する保護膜4が、上記熱抵抗変化膜3を覆うように形成される。
【0136】
以上のように、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き、成膜雰囲気中の酸素濃度を次第に減少させることで、勾配層4aを含めた上記保護膜4中の酸素含有量を、保護膜4表面側に向かって次第に減少するように連続的に変化させることができる。この結果、得られる熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/N(signal-to-noise radio:信号対雑音比) の向上を図ることができる。
【0137】
また、上記の製造方法によれば、酸素濃度を膜厚方向に制御しながら上記保護膜4を成膜することにより、熱抵抗変化膜3を成膜したときと同一の真空チャンバ内で上記保護膜4を形成することができる。これにより、熱抵抗変化膜3が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜3表面の変質の防止を図ることができ、その製造工程の過程において熱抵抗変化膜3がダメージを受けることのない熱型赤外線検出素子を提供することができると共に、IBS装置(成膜装置)における大気開放・真空排気に要する時間の節約を図ることができる。
【0138】
さらに、上記の製造方法によれば、保護膜4の成膜に、熱抵抗変化膜3の成膜に用いたチタンターゲットをそのまま用いることができ、1つのターゲットから熱抵抗変化膜3と保護膜4とを形成することができる。しかも、上記保護膜4は、成膜雰囲気中の酸素濃度を膜厚方向に制御するだけで勾配層4aおよび金属チタン層4bを連続的に成膜することができ、実質的な製造工程の増加を伴うことなく、熱型赤外線検出素子間でのばらつきの少ない熱型赤外線検出素子を、簡単に製造することができる。
【0139】
ここで、図1(a)・(b)に示す、界面金属層のみからなる保護膜4を備えた熱型赤外線検出素子におけるノイズレベルと、図4に示す、勾配層4aおよび金属チタン層4bからなる保護膜4を備えた熱型赤外線検出素子におけるノイズレベルとを比較する。なお、図1(a)・(b)に示す保護膜4と図4に示す保護膜4とは、共に膜厚を10nmとした。
【0140】
この結果、図1(a)・(b)に示す熱型赤外線検出素子におけるノイズレベルは16μVrmsであった。これに対して、図4に示す保護膜4を備えた熱型赤外線検出素子におけるノイズレベルは14.5μVrmsであった。
【0141】
このように、保護膜4における酸素含有量を厚さ方向に制御することにより、酸素含有量が、膜厚方法に連続的に変化(減少)する保護膜4を形成することにより、熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができる。
【0142】
なお、上記熱型赤外線検出素子では熱抵抗変化膜3をチタン酸化物を主成分とする酸化物により形成したが、本実施の形態にかかる熱型赤外線検出素子は、これに限定されるものではなく、前記したように、例えば、バナジウム酸化物を主成分とする酸化物により形成しても構わない。
【0143】
上記熱抵抗変化膜3の材料として、抵抗温度係数の絶対値が大きいバナジウム酸化物を主成分とする酸化物を用いることにより、熱型赤外線検出素子の感度の向上を図ることができる。さらに、バナジウム酸化物を主成分とする酸化物の比抵抗値は低いことから、熱抵抗変化膜3自体から発生するノイズの影響は小さい。従って、バナジウム酸化物を主成分とする酸化物からなる熱抵抗変化膜3をボロメータ型赤外線センサ等に用いることにより、非常に高い感度のボロメータ型赤外線センサを実現することができる。
【0144】
以下、図1(a)・(b)に示した熱型赤外線検出素子において、熱抵抗変化膜3をバナジウム酸化物により形成する例を説明する。ここで、熱型赤外線検出素子の構造は図1(a)・(b)と同一である。
【0145】
熱抵抗変化膜3、すなわち、バナジウム酸化物は、Vをターゲットに用いてRFマグネトロンスパッタリング法により成膜した。成膜時はサンプルを200℃に加熱し、酸素濃度を1%としたアルゴンと酸素の雰囲気中で、減圧下にて成膜を行った。熱抵抗変化膜3の比抵抗は3Ω・cmに設定した。
【0146】
保護膜4は、金属バナジウムをターゲットに用いて成膜した。該保護膜4は、Vターゲットと同一の真空チャンバ内で、該真空チャンバ内に配置されたバナジウムターゲットを用いてアルゴン雰囲気中で、減圧下にて成膜を行った。すなわち、上記熱型赤外線検出素子においても、熱抵抗変化膜3成膜後、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた真空チャンバと同一の真空チャンバ内で、該真空チャンバを大気開放することなく、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いたアルゴンガスと同じアルゴンガスを不活性ガスとして用いて、不活性ガス雰囲気中で上記保護膜4の成膜を行った。
【0147】
ここで、参考のために、図6に示す熱型赤外線検出素子において、前記チタン酸化物を主成分とする酸化物に代えて、熱抵抗変化膜42に、バナジウム酸化物を用いた熱型赤外線検出素子を作成し、図1(a)・(b)に示す構造を有し、熱抵抗変化膜3がバナジウム酸化物からなり、保護膜4がバナジウムからなる、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきと、図6に示す構造を有し、熱抵抗変化膜42に、バナジウム酸化物を用いた、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきとを比較する。
【0148】
なお、比較のために製造した図6に示す熱型赤外線検出素子は、保護膜が形成されていないことを除けば、その他の構造は、本実施の形態にかかる上記の熱型赤外線検出素子の構造と同一であり、図6に示す上記熱型赤外線検出素子は、上記熱抵抗変化膜3をバナジウム酸化物にて製造した以外は、前記した方法と同様の方法にて製造した。また、これら熱型赤外線検出素子を製造する際には、素子抵抗の設計値を18kΩとして製造した。
【0149】
本実施の形態における上記図1(a)・(b)に示す構造を有する熱型赤外線検出素子の場合、その熱型赤外線検出素子の素子抵抗は18〜19kΩとなり、略設計値通りであった。また、複数の熱型赤外線検出素子間の素子抵抗のばらつきは少なく、非常に安定していた。
【0150】
一方、比較のために製造した図6に示す構造を有する熱型赤外線検出素子の場合、その素子抵抗は18〜100kΩと、その値は設計値よりも大きくなり、複数の熱型赤外線検出素子間の素子抵抗のばらつきも非常に大きくなった。
【0151】
このように、上記熱抵抗変化膜3にチタン酸化物以外の遷移金属の酸化物を用いた場合であっても、上記熱抵抗変化膜3上に、該熱抵抗変化膜3を保護する上記保護膜4を形成することにより、設計値通りの素子抵抗を有し、熱型赤外線検出素子間でのばらつきの少ない熱型赤外線検出素子を製造することができる。すなわち、熱型赤外線検出素子の素子抵抗の安定化を図ることができ、ひいては、熱型赤外線検出素子の感度の向上を図ることができる。
【0152】
なお、上記の製造方法では、熱抵抗変化膜3を成膜する際、Vターゲットを用いたが、バナジウム酸化物からなる膜を形成することができるものであればこれに限定されるものではなく、例えば、保護膜4と同じく、バナジウムターゲットを用いてもかまわない。これにより、上記保護膜4と熱抵抗変化膜3とを、同一の真空チャンバ内で、同一のターゲットを用いて形成することができる。また、上記熱抵抗変化膜3の成膜と保護膜4の成膜とに同一のターゲットを用いる場合、熱抵抗変化膜3形成後、成膜雰囲気中の酸素濃度を徐々に低減し、少なくとも上記保護膜4が形成されている時間内に酸素濃度をゼロにすることにより、上記保護膜4における酸素含有量を膜厚方向に制御することができる。これにより、熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができる。
【0153】
ここで、熱型赤外線検出素子を320×240のマトリクス状に配置した撮像素子を用いた赤外線カメラ(撮像装置)の構成を示すブロック図を図5に示す。赤外線カメラは、撮像素子51、光学系52、素子温度制御部53、光学系制御部54、プロセッサ55、A/D(アナログ/デジタル)変換回路56、素子特性メモリ57および画像処理部58等を備えている。
【0154】
撮像素子51は、上述したように、例えば、図1(a)・(b)に示した熱型赤外線検出素子を、320×240のマトリクス状に配置してなるものである。光学系52は、入射される赤外線の焦点を合わせるためのものである。素子温度制御部53は、撮像素子51、即ち、これを構成する熱型赤外線検出素子の温度を所定の範囲内に制御する。光学系制御部54は、光学系52の動作(焦点合わせ動作等)を制御する。
【0155】
プロセッサ55は、素子温度制御部53、光学系制御部54、素子特性メモリ57および画像処理部58等の制御をするものである。また、A/D変換回路56は、撮像素子51から入力されたアナログの赤外線画像データをデジタルの画像データに変換して画像処理部58に出力する。素子特性メモリ57は、撮像素子51に関わる各種特性(素子特性)データを記憶するものであり、プロセッサ55の制御によって、特性データを画像処理部58に出力する。
【0156】
画像処理部58は、A/D変換回路56から入力されるデジタル画像データをプロセッサ55の制御により、素子特性メモリ57から出力される素子特性に基づいて画像処理して出力用のデジタル画像データに変換した上で図示しない表示手段等に出力する(図中矢印)。
【0157】
ここで、参考のために、図1(a)・(b)に示した構造を有し、かつ、チタン酸化物を主成分とする酸化物からなる熱抵抗変化膜3を備えた熱型赤外線検出素子を320×240のマトリクス状に配置した撮像素子を用いた赤外線カメラと、図6に示した構造を有し、かつ、チタン酸化物を主成分とする酸化物からなる熱抵抗変化膜42を備えた熱型赤外線検出素子を320×240のマトリクス状に配置した撮像素子を用いた赤外線カメラとを作製し、その素子抵抗のばらつきを比較した。
【0158】
図1(a)・(b)に示した熱型赤外線検出素子を用いた上記構造の赤外線センサにおける熱型赤外線検出素子間の素子抵抗のばらつきは、図6に示した熱型赤外線検出素子を用いた赤外線センサにおける熱型赤外線検出素子間の素子抵抗のばらつきよりも1桁以上改善された。
【0159】
これにより、赤外線カメラの画像処理部における各熱型赤外線検出素子の出力補正が容易になり、素子出力の増幅量を大幅に増加することができる。このため、図1に示す熱型赤外線検出素子を用いた赤外線カメラは、図6に示す熱型赤外線検出素子を用いたものと比較して、S/Nを大幅に改善することができる。また、図1(a)・(b)に示す熱型赤外線検出素子を用いた赤外線カメラは、雑音透過温度差(NETD:Noise Equivalalent Temperature Difference)は0.05℃となり、温度分解能の良好な赤外線センサを得ることができる。これにより、非常に高品位な画像を有する赤外線センサを得ることができる。
【0160】
なお、赤外線カメラに、バナジウム酸化物を主成分とする酸化物、例えばバナジウム酸化物からなる熱抵抗変化膜3を備えた熱型赤外線検出素子を用いても、上記と同様の効果が得られる。また、図3に示した保護膜4を備えた熱型赤外線検出素子を用いても上記と同様の効果が得られるとともに、熱型赤外線検出素子におけるノイズの低減が図れるため、さらに高品位な画像を有する赤外線センサを得ることができる。
【0161】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図6および図7(a)〜(g)に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を省略する。本実施の形態では、主に、前記実施の形態1との相違点について説明するものとする。
【0162】
図7(a)〜(g)は、本発明の実施の他の一形態である熱型赤外線検出素子の製造方法を示すための各工程における熱型赤外線検出素子の断面の構造をその端面にて示す図である。本実施の形態に係る熱型赤外線検出素子は、図7(g)に示すように、実施の形態1と同様、半導体基板1上に、半導体基板1から所定の間隔を置いてダイアフラム構造体62が脚63・63により支持されている。
【0163】
ダイアフラム構造体62は、実施の形態1と同様、第1酸化シリコン膜2上に、チタン酸化物を主成分とする酸化物からなる熱抵抗変化膜3、第2酸化シリコン膜6、シリコンからなる高屈折率膜7および窒化チタンからなる赤外線吸収膜8が形成されている。但し、実施の形態1とは異なり、保護膜4はなく、熱抵抗変化膜3上には、チタンからなる配線金属膜61が形成されている。つまり、上記ダイアフラム構造体62を備えた熱型赤外線検出素子は、前記実施の形態1において、図6に示した熱型赤外線検出素子と、見かけ上、同様の構成を有している。
【0164】
なお、本実施の形態においても、第2酸化シリコン膜6の膜厚と高屈折率膜7の膜厚との総和は、赤外線が上記第2酸化シリコン膜6および高屈折率膜7を透過する際の波長を考慮し、検出対象の赤外線波長帯の中心波長の略1/4とするのが好ましい。これにより、高屈折率膜7表面での反射光と配線金属膜61表面での反射光とが干渉して互いに打ち消し合い、効率良く赤外線を吸収することができる。
【0165】
また、脚63は、第1酸化シリコン膜2上に、熱抵抗変化膜3、配線金属膜61および第2酸化シリコン膜6が形成されており、熱抵抗変化膜3および配線金属膜61が絶縁性を有する酸化シリコンからなる膜、すなわち、上記第1酸化シリコン膜2および第2酸化シリコン膜6に覆われている構造となっている。
【0166】
以下に、本実施の形態における熱型赤外線検出素子の製造工程の一例を図7(a)〜(g)に基づいて説明する。
【0167】
まず、表面に図示しない集積回路が形成された半導体基板1上に、例えば商品名「PIQ(日立化成・デュポン社製)」等の塗布型ポリイミドやレジスト等の有機塗布型樹脂からなる犠牲層60を形成する(図7(a))。
【0168】
次に、プラズマCVD装置を用いて、第1酸化シリコン膜2を、犠牲層60上に、200nmの厚さで成膜する(図7(b))。
【0169】
次いで、真空発生装置を備えた成膜装置としてIBS装置を使用し、真空チャンバ内にて、減圧下、チタンターゲットを、アルゴンガスおよび酸素の混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングすることにより、チタン酸化物を主成分とする熱抵抗変化膜3を、上記第1酸化シリコン膜2上に、100nmの厚さで成膜する。また、このとき、成膜雰囲気中のアルゴンと酸素との組成比を制御することにより、熱抵抗変化膜3の比抵抗を3Ω・cmに設定する。
【0170】
次に、熱抵抗変化膜3を形成した際に用いたIBS装置をそのまま用いて、引き続き、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた同一の真空チャンバ内で、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた遷移金属と同じ遷移金属、この場合は、チタンをターゲットとして用いて、上記熱抵抗変化膜3の成膜に用いた不活性ガスと同じ不活性ガスであるアルゴンガス雰囲気下で、減圧下、スパッタリングすることにより、上記熱抵抗変化膜3上に、チタンからなる配線金属膜61を50nmの厚さで
形成する。上記配線金属膜61の成膜に際しては、上記真空チャンバ内に、上記熱抵抗変化膜3の成膜時における真空チャンバ内の圧力が維持されるように、アルゴンガスの導入が行われる。
【0171】
次いで、配線金属膜61上に、所定の形状のレジストパターンを形成し、熱抵抗変化膜3および配線金属膜61をRIE法またはイオンミリング法等のエッチング方法によってエッチングすることで、上記熱抵抗変化膜3および配線金属膜61を、ダイアフラム構造体62および脚63・63のパターンに基づく所定の形状に加工する(図7(c))。
【0172】
次に、上記配線金属膜61上に、所定の形状のレジストパターンを形成し、再度、RIE法またはイオンミリング法等のエッチング方法によって加工(パターニング)することで、配線金属膜61を、所定の形状、具体的には、前記実施の形態1において図1(a)に示す平面図における配線金属膜5と同様の形状に加工する(図7(d))。
【0173】
次いで、プラズマCVD装置を用いて、第2酸化シリコン膜6を、上記配線金属膜61並びにその除去部分を覆うように、第1酸化シリコン膜2上に、50nmの厚さで成膜する。
【0174】
次に、DCマグネトロンスパッタリングを用いて、シリコンからなる高屈折率膜7を、上記第2酸化シリコン膜6上に、550nmの厚さで成膜する。
【0175】
次いで、DCマグネトロンスパッタリングを用いて、窒化チタンからなる赤外線吸収膜8を、上記高屈折率膜7上に、10nmの厚さで成膜する(図7(e))。
【0176】
次に、RIE法またはイオンミリング法等のエッチング方法によって、第1酸化シリコン膜2、第2酸化シリコン膜6、高屈折率膜7および赤外線吸収膜8を所定の形状に加工する(図7(f))。
【0177】
最後に、犠牲層60を、酸素プラズマまたは湿式エッチングによって除去する(図7(g))。
【0178】
上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜3を覆うように上記配線金属膜61を成膜することで、上記熱抵抗変化膜3が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜3表面の変質の防止を図ることができる。
【0179】
また、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3を成膜後、引き続き、上記熱抵抗変化膜3を覆うように上記配線金属膜61を成膜することで、熱抵抗変化膜3を所定の形状に加工するためのフォトリソグラフィー工程は、上記熱抵抗変化膜3上に上記配線金属膜61を成膜した後(図7(c)および図7(d)参照)に行なわれる。すなわち、熱抵抗変化膜3を所定の形状に加工する工程においては、既に上記熱抵抗変化膜3表面が上記配線金属膜61と電気的接続がなされ、該配線金属膜61により保護された状態にある。このため、該加工工程における上記熱抵抗変化膜3表面へのダメージや有機分子の吸着から上記熱抵抗変化膜表面を保護することができる。
【0180】
この結果、前記図6に示す熱型赤外線検出素子の製造方法として説明したように、熱抵抗変化膜3を所定の形状に加工してから配線金属膜61を形成する場合とは異なり、フォトリソグラフィー工程によって表面にダメージを受けた熱抵抗変化膜3上に配線金属膜61を形成することがなく、上記熱抵抗変化膜3における上記配線金属膜61との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜61と接続されることがない。このため、得られる熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。このため素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0181】
また、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜61との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜61とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。
【0182】
さらに、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3および配線金属膜61の成膜に際し、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜61とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置(例えば上記IBS装置)における同一の真空チャンバ内で成膜することで、該成膜装置における大気開放・真空排気に要する時間の節約を図ることができる。
【0183】
従って、上記の構成によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる。
【0184】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜3の保護と配線金属膜61との電気的接続に、前記実施の形態1に示した保護膜4を必要としないため、前記実施の形態1に示した熱型赤外線検出素子の製造方法と比較して、さらに少ない製造工程で、その製造工程の過程において熱抵抗変化膜3がダメージを受けることのない熱型赤外線検出素子を提供することができる。この結果、熱型赤外線検出素子の製造コストの増加を伴うことはほとんどなく、しかも、前記実施の形態1に示した熱型赤外線検出素子よりも安価かつ簡素な構成の熱型赤外線検出素子を提供することができる。
【0185】
また、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3と上記配線金属膜61とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜する(つまり、上記熱抵抗変化膜3の形成に用いる遷移金属と同一のターゲットを用いて上記配線金属膜61をスパッタリングにより成膜する)ことで、上記配線金属膜61の製造にかかる時間を短縮し、上記配線金属膜61をより容易かつ安価に形成することができる。
【0186】
このとき、上記したように1つのターゲットから熱抵抗変化膜3と配線金属膜61とを成膜することで、実質的な製造工程の増加を伴うことなく配線金属膜61を製造することができる。従って、上記熱型赤外線検出素子をより安価に製造することができる。
【0187】
また、上記の製造方法によれば、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜61とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することで、上記熱抵抗変化膜3と配線金属膜61との密着強度に優れた熱型赤外線検出素子を得ることができる。
【0188】
また、上記熱抵抗変化膜3の材料として、抵抗温度係数の絶対値が大きいチタン酸化物を主成分とする酸化物を用いることにより、熱型赤外線検出素子の感度の向上を図ることができる。従って、チタン酸化物を主成分とする酸化物からなる熱抵抗変化膜3を備えた熱型赤外線検出素子をボロメータ型赤外線センサ等に用いることにより、非常に高い感度のボロメータ型赤外線センサを実現することができる。
【0189】
このようにして得られた上記熱型赤外線検出素子は、赤外線による温度上昇を検出する赤外線検出部を備え、該赤外線検出部が、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜3と、電極としての配線金属膜61とを備え、上記熱抵抗変化膜3が、その変質やダメージの無い面にて上記配線金属膜61と直接、接続されることで、上記熱抵抗変化膜3が、その変質やダメージの無い面にて上記配線金属膜61と電気的に接続されている構成を有している。
【0190】
つまり、図6に示した熱型赤外線検出素子と、本実施の形態にかかる上記製造方法により得られた熱型赤外線検出素子とは、一見、同じ構成を有しているが、図6に示した熱型赤外線検出素子における熱抵抗変化膜42が、その表面が変質した状態にあり、この変質面にて上記配線金属膜43と接続されており、その素子抵抗が20〜130kΩと設計値よりも大きく、複数の熱型赤外線検出素子間の素子抵抗のばらつきも非常に大きいのに対し、本実施の形態にかかる上記製造方法により得られた熱型赤外線検出素子は、前記実施の形態1にかかる熱型赤外線検出素子同様、上記熱抵抗変化膜3が、その変質やダメージの無い面にて配線金属膜(本実施の形態では配線金属膜61)と電気的に接続されており、その素子抵抗が18〜19kΩと安定しており、複数の熱型赤外線検出素子間の素子抵抗のばらつきが小さい点で大きく異なっている。
【0191】
なお、本実施の形態においても、配線金属膜61を成膜し、所定の形状に加工した後(図7(d)参照)は、配線金属膜61との接続部以外の部分で上記熱抵抗変化膜3が露出することになるが、この状態で熱抵抗変化膜3の表面がダメージを受けたとしても、熱抵抗変化膜3の抵抗変化を検出するためのセンス電流は、ほとんどが抵抗値の低い熱抵抗変化膜3の内部を流れるため、熱型赤外線検出素子の特性にはほとんど影響しない。
【0192】
なお、上記実施の形態1・2においては、高屈折率膜を配置することにより、高屈折率膜表面での反射光と配線金属膜表面での反射光とが干渉して互いに打ち消し合うような構造としたが、本発明にかかる熱型赤外線検出素子の構成は、これに限定されるものではない。例えば、半導体基板表面に赤外線反射膜を配することにより、赤外線反射膜表面での反射光とダイアフラム構造体における最上層での反射光とが干渉して互いに打ち消し合うような構造としても構わない。このような構造のダイアフラム構造体を備えた熱型赤外線検出素子においても、高屈折率膜を配置した上記ダイアフラム構造体を備えた熱型赤外線検出素子と同様の効果が得られる。
【0193】
また、本発明にかかる熱型赤外線検出素子は、赤外線を温度変化によって検出する熱型赤外線検出素子において、前記熱型赤外線素子が、基板と、赤外線による温度上昇を検出する検出部からなる赤外線検知部とを備え、前記検知部が配線金属膜と熱抵抗変化膜と1層以上の金属膜からなる界面金属層を備え、前記界面金属層が配線金属膜と熱抵抗変化膜の接続部に配置されている構成であってもよい。
【0194】
また、上記熱型赤外線検出素子の製造方法は、上記熱抵抗変化膜と、界面金属層の中の少なくとも1層を、同一の真空中で成膜する方法であってもよい。また、上記熱抵抗変化膜が遷移金属のターゲットを用い、アルゴンと酸素とが混合された雰囲気中で形成され、上記界面金属層の中の少なくとも1層は前記遷移金属のターゲットを用い、アルゴン雰囲気中で形成される方法であってもよい。さらに、熱抵抗変化膜の成膜雰囲気から界面金属層の成膜雰囲気に移行する際、成膜を中断すること無しに酸素濃度を徐々に減少する方法であってもよい。
【0195】
さらに、上記熱抵抗変化膜上に配線金属膜が積層された構成を有する熱型赤外線検出素子の製造方法として、熱型赤外線検出素子の製造方法は、基板と、赤外線による温度上昇を検出する検出部からなる赤外線検知部とを備え、前記検知部が配線金属膜と熱抵抗変化膜とを備えることにより、赤外線を温度変化によって検出する熱型赤外線検出素子において、前記抵抗変化膜と前記配線金属膜を同一真空中で成膜する方法であってもよい。
【0196】
【発明の効果】
本発明の熱型赤外線検出素子は、以上のように、熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部が、少なくとも表面が金属からなる導電性膜で被覆されており、上記導電性膜が、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に設けられた、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜であり、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、さらに、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなる構成である。
【0197】
また、本発明の熱型赤外線検出素子は、以上のように、熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部が、少なくとも表面が金属からなる導電性膜で被覆されており、上記導電性膜が、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に設けられた、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜であり、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、さらに、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属の酸化物を含む濃度勾配層を有し、該濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するようになっている構成である。
【0198】
上記導電性膜は、上記接続部が大気中に暴露されない条件下で成膜されたものであってもよい。
【0199】
具体的には、例えば、上記熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部が、上記熱抵抗変化膜を、酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で成膜された、少なくとも表面が金属からなる導電性膜で被覆されている。
【0200】
これにより、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部を成膜することで、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができるという効果を奏する。
【0201】
また、上記導電性膜が、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に設けられた、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜であることにより、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を、大気に暴露されることによる表面の変質や、その製造工程における加工時のダメージや有機分子の吸着から保護することができる。従って、上記熱抵抗変化膜と上記配線金属膜との接続部の変質等により素子抵抗が増大することを防止することができる。このため素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができるという効果を奏する。
【0202】
また、上記保護膜を、熱抵抗変化膜で用いた遷移金属と同じ遷移金属をターゲットとして用いて製造することができることから、上記保護膜の製造にかかる時間を短縮し、上記保護膜をより容易かつ安価に形成することができる。また、1つのターゲットから熱抵抗変化膜と保護膜とを形成することができるので、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記保護膜を製造することができ、該保護膜を形成しても、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記熱型赤外線検出素子を製造することができる。
【0203】
また、濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するようになっているため得られる熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができるという効果を奏する。
【0204】
本発明の熱型赤外線検出素子は、以上のように、上記導電性膜が、上記配線金属膜における熱抵抗変化膜との接続端子部であり、上記熱抵抗変化膜上に上記配線金属膜が直接積層されている構成であってもよい
【0205】
これにより、上記導電性膜が、上記配線金属膜における熱抵抗変化膜との接続端子部であり、上記熱抵抗変化膜上に上記配線金属膜が直接積層されているので、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを容易に電気的に接続することができる。従って、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、例えば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができるという効果を奏する。
【0206】
本発明の熱型赤外線検出素子は、以上のように、遷移金属の酸化物を含む酸化物膜からなり、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜と、上記熱抵抗変化膜と電気的に接続される、配線金属膜とを備えた熱型赤外線検出素子において、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を覆う、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜を備え、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、さらに、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属の酸化物を含む濃度勾配層を有し、該濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するように形成されている構成である。
【0207】
それゆえ、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を、大気に暴露されることによる表面の変質や、その製造工程における加工時のダメージや有機分子の吸着等のから保護することができる。
【0208】
つまり、上記の構成によれば、例えば、上記熱型赤外線検出素子の製造に際し、上記熱抵抗変化膜を保護することができ、上記熱抵抗変化膜上に上記保護膜が積層された状態で上記熱抵抗変化膜を所定の形状に加工することで、該加工による上記熱抵抗変化膜へのダメージを防止することができる。この場合、熱型赤外線検出素子の構造を考慮すれば、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜と接続されることがなく、上記熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。
【0209】
それゆえ、上記の構成によれば、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部のダメージにより素子抵抗が増大することを防止することができる。このため素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0210】
また、上記の構成によれば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を覆う、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜により電気的に接続されていることで、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。従って、上記の構成によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる熱型赤外線検出素子を提供することができるという効果を奏する。
【0211】
また、上記保護膜を、熱抵抗変化膜で用いた遷移金属と同じ遷移金属をターゲットとして用いて製造することができることから、上記保護膜の製造にかかる時間を短縮し、上記保護膜をより容易かつ安価に形成することができる。また、1つのターゲットから熱抵抗変化膜と保護膜とを形成することができるので、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記保護膜を製造することができ、該保護膜を形成しても、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記熱型赤外線検出素子を製造することができる。
【0212】
また、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることで、上記熱抵抗変化膜と保護膜とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置における同一の真空チャンバ内で、同一のターゲットを用いて成膜することができる。このため、熱抵抗変化膜成膜後、大気開放することなく上記保護膜を成膜することができ、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができる。また、真空排気に要する時間と費用とを節約することができることから、上記熱型赤外線検出素子を安価に製造することができる。
【0213】
また、上記の構成によれば、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることで、上記熱抵抗変化膜と保護膜との密着強度に優れているという効果を奏する。
【0214】
さらに、得られる熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができる。
【0215】
本発明の熱型赤外線検出素子は、以上のように、上記遷移金属がチタンである構成である。
【0216】
チタン酸化物は抵抗温度係数の絶対値が大きく、得られる熱型赤外線検出素子の応答性・感度を向上させることができる。このため、該チタン酸化物を含む熱抵抗変化膜を、例えばボロメータ型赤外線センサ等に用いることにより、非常に高い感度のボロメータ型赤外線センサを実現することができるという効果を奏する。
【0217】
本発明の熱型赤外線検出素子は、以上のように、上記遷移金属がバナジウムである構成である。
【0218】
バナジウム酸化物は抵抗温度係数の絶対値が大きく、また、比抵抗値が低い。このため、上記熱抵抗変化膜がバナジウム酸化物を含むことで、得られる熱型赤外線検出素子の応答性・感度を向上させることができると共に、熱抵抗変化膜自体から発生するノイズの影響を低減させることができる。従って、このような熱抵抗変化膜を、例えばボロメータ型赤外線センサ等に用いることにより、非常に高い感度のボロメータ型赤外線センサを実現することができるという効果を奏する。
【0219】
本発明の熱型赤外線検出素子は、以上のように、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属の酸化物を含む濃度勾配層を有し、該濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するように形成されている構成である。
【0220】
それゆえ、得られる熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができるという効果を奏する。
【0221】
本発明の熱型赤外線検出素子の製造方法は、以上のように、上記熱型赤外線検出素子の製造方法であって、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜する方法である。
【0222】
それゆえ、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができる。しかも、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を成膜後、引き続き、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することで、熱抵抗変化膜を所定の形状に加工するためのフォトリソグラフィー等の加工工程は、上記熱抵抗変化膜上に上記保護膜を成膜した後に行なわれる。このため、該加工工程における上記熱抵抗変化膜表面へのダメージや有機分子の吸着から上記熱抵抗変化膜表面を保護することができる。この結果、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜と接続されることがなく、得られる熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。このため、素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0223】
また、上記の方法によれば、上記保護膜により上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを電気的に接続することができるので、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。
【0224】
さらに、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜および保護膜の成膜に際し、上記熱抵抗変化膜と保護膜とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置における同一の真空チャンバ内で成膜することで、成膜装置における大気開放・真空排気に要する時間の節約を図ることができる。
【0225】
従って、上記の方法によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる熱型赤外線検出素子の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0226】
本発明の熱型赤外線検出素子の製造方法は、以上のように、上記熱型赤外線検出素子の製造方法であって、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き、成膜雰囲気中の酸素濃度を次第に減少させながら、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜する方法である。
【0227】
それゆえ、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができる。しかも、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を成膜後、引き続き、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することで、熱抵抗変化膜を所定の形状に加工するためのフォトリソグラフィー工程は、上記熱抵抗変化膜上に上記保護膜を成膜した後に行なわれる。このため、該加工工程における上記熱抵抗変化膜表面へのダメージや有機分子の吸着から上記熱抵抗変化膜表面を保護することができる。この結果、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜と接続されることがなく、得られる熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。このため素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0228】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き、成膜雰囲気中の酸素濃度を次第に減少させることで、前記濃度勾配層を含めた上記保護膜中の酸素含有量を、保護膜表面側に向かって次第に減少するように連続的に変化させることができる。この結果、得られる熱型赤外線検出素子のノイズを低減することができ、S/Nの向上を図ることができる。
【0229】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜および保護膜の成膜に際し、上記熱抵抗変化膜と保護膜とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置における同一の真空チャンバ内で成膜することで、成膜装置における大気開放・真空排気に要する時間の節約を図ることができる。
【0230】
さらに、上記の方法によれば、上記保護膜は、成膜雰囲気中の酸素濃度を変化させるだけで成膜することができ、実質的な製造工程の増加を伴うことはほとんどなく、簡単に熱型赤外線検出素子を製造することができる。
【0231】
また、上記の方法によれば、上記保護膜により上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを電気的に接続することができるので、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。
【0232】
従って、上記の方法によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる熱型赤外線検出素子の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0233】
本発明の熱型赤外線検出素子の製造方法は、以上のように、上記熱抵抗変化膜と上記保護膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜する方法である。
【0234】
それゆえ、上記保護膜を、熱抵抗変化膜で用いた遷移金属と同じ遷移金属をターゲットとして用いて製造することができることから、上記保護膜の製造にかかる時間を短縮し、上記保護膜をより容易かつ安価に形成することができる。また、1つのターゲットから熱抵抗変化膜と保護膜とを形成することができるので、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記保護膜を製造することができ、該保護膜を形成しても、実質的な製造工程の増加を伴うことなく上記熱型赤外線検出素子を製造することができるという効果を奏する。
【0235】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜と保護膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することで、上記熱抵抗変化膜と保護膜との密着強度に優れた熱型赤外線検出素子を得ることができるという効果を併せて奏する。
【0236】
本発明の熱型赤外線検出素子の製造方法は、以上のように、上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記配線金属膜を成膜する方法とすることもできる
【0237】
それゆえ、上記熱抵抗変化膜が大気に暴露されることによる熱抵抗変化膜表面の変質の防止を図ることができる。しかも、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜を成膜後、引き続き、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記配線金属膜を成膜することで、熱抵抗変化膜を所定の形状に加工するためのフォトリソグラフィー工程は、上記熱抵抗変化膜上に上記配線金属膜を成膜した後に行なわれる。このため、該加工工程における上記熱抵抗変化膜表面の侵食、例えば、上記熱抵抗変化膜表面へのダメージや有機分子の吸着から上記熱抵抗変化膜表面を保護することができる。この結果、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部が、例えばフォトリソグラフィーによってその表面にダメージを受けた状態で上記配線金属膜と接続されることがなく、得られる熱型赤外線検出素子の素子抵抗が設計値から大きく逸脱することがない。このため素子抵抗の安定化を図ることができ、複数の熱型赤外線検出素子間における素子抵抗のばらつきを抑えることができる。
【0238】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との電気的接続を行なうに際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを接続するコンタクトホールを形成する必要がなく、簡素かつ安価な構成とすることができる。
【0239】
さらに、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜および保護膜の成膜に際し、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを、同一の成膜室(チャンバ)内、例えば真空発生装置を備えた成膜装置における同一の真空チャンバ内で成膜することで、成膜装置における大気開放・真空排気に要する時間の節約を図ることができる。
【0240】
従って、上記の方法によれば、安価かつ簡素な構成にて素子抵抗の安定化を図ることができる熱型赤外線検出素子の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0241】
本発明の熱型赤外線検出素子の製造方法は、以上のように、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜する方法とすることもできる
【0242】
それゆえ、上記配線金属膜を、熱抵抗変化膜で用いた遷移金属と同じ遷移金属をターゲットとして用いて製造することができることから、上記配線金属膜の製造にかかる時間を短縮し、上記配線金属膜をより容易かつ安価に形成することができる。また、1つのターゲットから熱抵抗変化膜と配線金属膜とを形成することができるので、製造工程の増加を伴うことなく簡単に上記熱型赤外線検出素子を製造することができるという効果を奏する。
【0243】
また、上記の方法によれば、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することで、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との密着強度に優れた熱型赤外線検出素子を得ることができるという効果を併せて奏する。
【0244】
本発明の撮像装置は、以上のように、上記の熱型赤外線検出素子を備えている構成である。
【0245】
上記の構成によれば、素子抵抗のばらつきおよびノイズの小さい熱抵抗変化膜を備えた撮像装置を得ることができ、それゆえ、温度分解能が良好で、高品位な画像を有する撮像装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明の実施の一形態に係る熱型赤外線検出素子の概略構成を示す平面図であり、(b)は(a)におけるA−A線断における端面図である。
【図2】 (a)ないし(g)は上記熱型赤外線検出素子の製造方法を示すための各工程における上記熱型赤外線検出素子の断面の構造をその端面にて示す図である。
【図3】 上記熱型赤外線検出素子を示す斜視図である。
【図4】 上記熱型赤外線検出素子における熱抵抗変化膜および界面金属層の構造の一例を示す説明図である。
【図5】 上記熱型赤外線検出素子を用いてなる撮像装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図6】 比較のために製造した熱型赤外線検出素子の断面の構造をその端面にて示す図である。
【図7】 (a)ないし(g)は本発明の実施の他の形態における熱型赤外線検出素子の製造方法を示すための各工程における上記熱型赤外線検出素子の断面の構造をその端面にて示す図である。
【図8】 従来の熱型赤外線検出素子の断面の構造をその端面にて示す図である。
【符号の説明】
1 半導体基板
2 第1酸化シリコン膜
3 熱抵抗変化膜
4 保護膜
4a 勾配層(濃度勾配層)
4b 金属チタン層
5 配線金属膜
6 第2酸化シリコン膜
7 高屈折率膜
8 赤外線吸収膜
9 犠牲層
30 ダイアフラム構造体
31 脚
51 撮像素子
61 配線金属膜
62 ダイアフラム構造体
63 脚

Claims (13)

  1. 遷移金属の酸化物を含む酸化物膜からなり、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜と、上記熱抵抗変化膜と電気的に接続される配線金属膜とを備えた熱型赤外線検出素子において、
    上記熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部が、少なくとも表面が金属からなる導電性膜で被覆されており、
    上記導電性膜が、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に設けられた、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜であり、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、
    さらに、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることを特徴とする熱型赤外線検出素子。
  2. 遷移金属の酸化物を含む酸化物膜からなり、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜と、上記熱抵抗変化膜と電気的に接続される配線金属膜とを備えた熱型赤外線検出素子において、
    上記熱抵抗変化膜における配線金属膜との接続部が、少なくとも表面が金属からなる導電性膜で被覆されており、
    上記導電性膜が、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に設けられた、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜であり、上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、
    さらに、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属の酸化物を含む濃度勾配層を有し、該濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するように形成されていることを特徴とする熱型赤外線検出素子。
  3. 上記導電性膜は、上記接続部が大気中に暴露されない条件下で成膜されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱型赤外線検出素子。
  4. 遷移金属の酸化物を含む酸化物膜からなり、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜と、上記熱抵抗変化膜と電気的に接続される配線金属膜とを備えた熱型赤外線検出素子において、
    上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を覆う、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜を備え、
    上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、
    上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属と同じ遷移金属を用いてなることを特徴とする熱型赤外線検出素子。
  5. 遷移金属の酸化物を含む酸化物膜からなり、赤外線を吸収して抵抗値が変化する熱抵抗変化膜と、上記熱抵抗変化膜と電気的に接続される配線金属膜とを備えた熱型赤外線検出素子において、
    上記熱抵抗変化膜と配線金属膜との接続部に、上記熱抵抗変化膜における上記配線金属膜との接続部を覆う、少なくとも表面が金属からなる導電性の保護膜を備え、
    上記熱抵抗変化膜と配線金属膜とが、上記保護膜により電気的に接続されており、
    さらに、上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属の酸化物を含む濃度勾配層を有し、該濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するように形成されていることを特徴とする熱型赤外線検出素子。
  6. 上記遷移金属がチタンであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の熱型赤外線検出素子。
  7. 上記遷移金属がバナジウムであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の熱型赤外線検出素子。
  8. 上記保護膜が、上記熱抵抗変化膜の形成に用いられる遷移金属の酸化物を含む濃度勾配層を有し、該濃度勾配層は、該濃度勾配層中の酸素濃度が、上記保護膜表面側に向かって次第に減少するように形成されていることを特徴とする請求項1、、6または7に記載の熱型赤外線検出素子。
  9. 請求項1、、6または7に記載の熱型赤外線検出素子の製造方法であって、
    上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き不活性ガス雰囲気下で、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することを特徴とする熱型赤外線検出素子の製造方法。
  10. 請求項または8に記載の熱型赤外線検出素子の製造方法であって、
    上記熱抵抗変化膜を酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で成膜した後、引き続き、成膜雰囲気中の酸素濃度を次第に減少させながら、上記熱抵抗変化膜を覆うように上記保護膜を成膜することを特徴とする熱型赤外線検出素子の製造方法。
  11. 上記熱抵抗変化膜と上記保護膜とを、遷移金属からなる同一のターゲットを用いてスパッタリングすることにより成膜することを特徴とする請求項9または10に記載の熱型赤外線検出素子の製造方法。
  12. 上記熱抵抗変化膜と、上記保護膜とを、大気中に暴露することなく、同一の成膜室内で成膜することを特徴とする請求項9または10に記載の熱型赤外線検出素子の製造方法。
  13. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱型赤外線検出素子を備えていることを特徴とする撮像装置。
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