JP3688842B2 - 印刷用凹版とそれを用いたカラーフィルタの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば凹版オフセット印刷等の凹版印刷に使用される印刷用凹版と、それを用いたカラーフィルタの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のブラウン管(CRT)に代わる表示デバイスとして注目されている液晶カラーディスプレイにおいては、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ層を有する、あるいはこの3色のカラーフィルタ層と、各層を区切るブラックマトリクス層とを有するカラーフィルタを用いてカラー表示を実現している。
【0003】
カラーフィルタは、上記の各層が、線幅10〜150μm程度の微細なパターンとして、極めて高い精度で形成されている必要があるため、従来は、いわゆるフォトリソグラフィーの技術により製造されていたが、工程が複雑で量産に適さないという問題があった。
そこで、フォトリソグラフィー法よりも工程が簡単で量産性にすぐれた印刷法によってカラーフィルタを製造することが検討されている。
【0004】
印刷法には種々の方法があるが、カラーフィルタ等の微細なパターンを印刷するには、凹版の凹部にインキを充てんし、ついでこのインキをブランケットの表面印刷層に一旦、転移させたのち、被印刷物である透明基板上に転移させる凹版オフセット印刷法が適している。とくにブランケットの表面印刷層を、インキの離型性にすぐれたシリコーンゴムによって形成すると、当該表面印刷層上のインキが透明基板上に良好に転移されるため、エッジがシャープで直線性にすぐれるなど、良好な印刷パターンを形成できることが知られている。
【0005】
しかし、凹版オフセット印刷方法で用いられている凹版は通常、ガラス製または金属製であってインキの離型性が低いために、凹版からブランケットの表面印刷層へインキを転移させる際にインキが***して、その一部が転移されずに凹版の凹部内に残存する現象が生じるおそれがある。かかるインキの***が生じた際のインキの転移率は、概ね50%程度である。
【0006】
そして、とくにカラーフィルタのように微細なパターンを印刷する場合には、このインキの***が原因となって印刷形状に乱れが生じ、それが液晶ディスプレイの画像品質に悪影響を及ぼすおそれがある。
そこで、ブランケットから被印刷物への転移だけでなく、凹版からブランケットへの転移においても、インキの転移性を向上することが求められており、この要求に対処すべく、凹版における表面エネルギーの値を小さくして、インキの離型性を向上することが検討されている。
【0007】
たとえば特開平8−72384号公報、特開平5−139065号公報ではそれぞれ、凹版の凹部の内面をシリコーンゴムやシリコーンレジン等のシリコーンポリマーからなる離型層で被覆して表面エネルギーを小さくすることが検討されており、また、特開平4−221674号公報、特開平8−99436号公報ではそれぞれ、上記凹部の内面をふっ素樹脂からなる離型層で被覆して表面エネルギーを小さくすることが検討されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように離型層を設けて凹部内面の表面エネルギーを小さくすると今度は、離型層とインキとの親和性が十分でなくなって、凹部へのインキの充てんの際に充てん不良を生じやすくなり、それが印刷形状の乱れを引き起こして、液晶ディスプレイの画像品質に悪影響を及ぼすという新たな問題を生じるおそれのあることが、発明者らの検討により明らかとなった。
【0009】
すなわち、離型層とインキとの親和性が十分でないと、たとえばドクターブレード等による凹部へのインキの充てんの際に、凹部の隅々までインキが行き渡らず、インキが、自身のもつ表面張力によって凹部内で丸まってしまう結果、たとえば印刷パターンの角部等が丸みを帯びてしまったり、あるいは極細の線パターンの場合に、上記表面張力によって凹部内のインキに切れが発生する結果、線パターンが不連続になってしまったりするといった問題を生じるおそれがある。
【0010】
この発明の主たる目的は、その凹部におけるインキの離型性が高い上、当該凹部が、インキに対して充てん不良を生じない程度の親和性をも有する新規な印刷用凹版を提供することである。
またこの発明の他の目的は、印刷形状の乱れのない高精度のカラーフィルタを製造しうる、カラーフィルタの製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述したように、印刷用凹版の凹部におけるインキの離型性を高いレベルに維持しつつ、当該凹部の、インキとの親和性を高めるという、相反する課題を解決するため、発明者らは、凹部内面に設ける離型層の表面形状に着目して種々検討を行った。
【0012】
すなわち、物体のある面の表面エネルギーの大小は、その物体を構成する材料自体と、上記面の表面形状とに大きく依存しており、同じ材料からなる物体の場合は、その面の表面形状が違えば表面エネルギーが異なる、という表面エネルギーの基本的な原理を応用すれば、上記の目的を達成しうるのではないかとの予測に基づき、検討を行ったのである。
【0013】
そしてその結果、インキの離型性にすぐれたシリコーンポリマー製の離型層の表面を、従来の単なる平滑面ではなく、架橋されたシリコーンレジン粒子と、未硬化の液状シリコーンポリマーとを配合した塗布液を凹部の内面に塗布した後、シリコーンポリマーを硬化させて形成された、特定の高さの、多数の突起を有する表面形状とすれば、その離型性をできるだけ高いレベルに維持しつつ、表面エネルギーを増加させて、当該離型層の、インキに対する親和性を、インキの充てんの際に充てん不良が生じるおそれがない程度に向上できることを見出し、この発明を完成するに至った。
【0014】
したがってこの発明の印刷用凹版は、インキが充てんされる、平均深さ2〜10μmの凹部を有するとともに、当該凹部の内面が、平均粒径0.1〜5μmの、架橋されたシリコーンレジン粒子と、未硬化の液状シリコーンポリマーとを、体積比で1/10〜1/1の割合で配合した塗布液を凹部の内面に塗布した後、シリコーンポリマーを硬化させて形成された、平均高さ0.1〜2μmの突起を有する、厚みが0.05μm以上で、かつ凹部の深さの1/2以下の範囲内であるシリコーンポリマー製の離型層によって覆われていることを特徴とするものである。
【0015】
またこの発明のカラーフィルタの製造方法は、上記の印刷用凹版の凹部にインキを充てんし、ついでこのインキを、ブランケットの表面印刷層の表面に転移させた後、透明基板の表面に転移させて、当該透明基板の表面にインキ層を形成する工程を有することを特徴とするものである。
この発明によれば、上記のように印刷用凹版の凹部が、インキに対する高い離型性と適度の親和性とを兼ね備えた離型層によって覆われているため、当該凹部へのインキの充てん不良や、あるいはブランケットの表面印刷層への転写不良等に基づく印刷形状の乱れを防止して、たとえばカラーフィルタ等の精密印刷物を、精度よく製造することが可能となる。
【0016】
なおこの発明において、離型層の突起の平均高さが0.1〜2μmに限定されるのは、以下の理由による。
すなわち、突起の平均高さが0.1μm未満では、当該突起を設けたことによる、前述した離型層の表面エネルギーを高める効果がえられず、離型層の、インキに対する親和性が低下して、充てん不良と、それに伴う前述した印刷形状の乱れを生じる。一方、突起の平均高さが2μmを超えた場合には、最終的に透明基板等の表面に形成されるインキ層の表面に、上記突起の痕跡が凹部となって現れ、それによってインキ層の平坦性が損なわれるという、新たな印刷形状の乱れを生じる。
【0017】
またこの発明において、離型層の厚みが0.05μm以上で、かつ凹部の深さの1/2以下に限定されるのは、以下の理由による。
すなわち、離型層の厚みが0.05μm未満では、当該離型層の強度が不足して、印刷を繰り返した際に、比較的早期に離型層がはく離、あるいは摩耗して失われてしまうという問題を生じる。一方、離型層の厚みが凹部の深さの1/2を超えた場合には、凹部の平均深さにもよるが、最終的に透明基板等の表面に形成されるインキ層の厚みが不足して、当該インキ層に、ピンホール等の、新たな印刷形状の乱れを生じる。また、肉厚の離型層によって複雑な凹部の形状が損なわれて、印刷精度の低下を生じることもある。たとえば印刷パターンの角部等は、離型層のもとになる塗布液が表面張力によって丸まってしまう結果、きれいな角部として表現されなくなるおそれがある。
【0018】
さらにこの発明において、凹部の平均深さが2〜10μmに限定されるのは、以下の理由による。
すなわち、凹部の平均深さが2μm未満では、最終的に透明基板等の表面に形成されるインキ層の厚みが不足して、前述したピンホール等の、印刷形状の乱れを生じる。またとくにカラーフィルタのブラックマトリクス層の場合は、その厚みが薄すぎて、十分な遮光性が得られないという問題も生じる。一方、凹部の平均深さが10μmを超えた場合には、離型層を有するにも拘らずインキの離型性が低下して、ブランケットへの転写時に、インキの***に伴う印刷形状の乱れを生じる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を説明する。
まずこの発明の印刷用凹版について説明する。
この発明の印刷用凹版は、その版面に形成した、印刷パターンに対応する凹部の内面、すなわち断面矩形状の凹部の場合はその底面および側面に、多数の突起を有する、シリコーンポリマー製の離型層を設けたものである。
【0020】
上記凹部の平均深さは2〜10μmに限定され、突起の平均高さは0.1〜2μmに限定され、離型層の厚みは0.05μm以上で、かつ凹部の深さの1/2以下に限定される。これらの理由は前述したとおりである。
なお凹部の平均深さは、透明基板等の表面に形成されるインキ層の厚みと直接に係わっており、たとえばカラーフィルタのブラックマトリクス層の場合は、上記範囲内でも5μm以下であるのが好ましい。5μmを超えた場合は、他のカラーフィルタ層の膜厚とのバランスが悪く、カラーフィルタの表面平坦性が損なわれるおそれがあるからである。
【0021】
また離型層の厚みは、前述したように、凹部の形状をインキ層として忠実に再現するためには、前記範囲内でも薄ければ薄いほど好ましい。
上記離型層は、突起のもとになる架橋されたシリコーンレジン粒子と、離型層のベースとなる未硬化の液状シリコーンポリマーとを配合した塗布液を凹部の内面に塗布した後、シリコーンポリマーを硬化させて形成される。
【0022】
上記の方法によれば、従来の表面が平滑な離型層を有する凹版を製造する場合と同様の生産設備を用いて、同様の工程により、上記のようにすぐれた特性を有する離型層を備えたこの発明の印刷用凹版を製造できる。
上記のうち架橋されたシリコーンレジン粒子としては、3次元架橋したシリコーンレジンからなり、かつその平均粒径が0.1〜5μmのものが使用される。シリコーンレジン粒子の粒径は、離型層における突起の平均高さと直接に係わっており、平均粒径が0.1μm未満では、平均高さ0.1μm以上の突起を形成できない。またシリコーンレジン粒子の平均粒径が5μmを超えた場合には、突起の平均高さが2μmを超えてしまう。
【0023】
かかる架橋されたシリコーンレジン粒子としては現在、3次元架橋したほぼ真球状のもので、種々の平均粒径を有し、かつその粒度分布がきわめてシャープなものが実用化されており、これを使用すれば、所望の平均高さの突起を有する離型層を、容易に形成することができる。その具体例としては、たとえば東芝シリコーン(株)製の商品名「トスパール」シリーズのうち、トスパール105(平均粒径0.5μm)、トスパール120(平均粒径2μm)、トスパール130(平均粒径3μm)、およびトスパール145(平均粒径4.5μm)等があげられる。
【0024】
上記のシリコーンレジン粒子とともに離型層を形成する未硬化の液状シリコーンポリマーとしては、たとえば1液縮合型液状シリコーンゴム、2液縮合型液状シリコーンゴム、1液付加型液状シリコーンゴム、2液付加型液状シリコーンゴム、紫外線硬化型等の光硬化型液状シリコーンゴム、電子線硬化型等の電離放射線硬化型液状シリコーンゴム等の液状シリコーンゴムや、あるいは各種のシリコーンレジンを溶剤に溶かしたシリコーンワニス等が使用可能である。
【0025】
かかる液状シリコーンポリマーBと、前述したシリコーンレジン粒子Pとの、塗布液中での配合割合P/Bは、体積比でP/B=1/10〜1/1である必要がある。
塗布液の塗布厚み等にもよるが、上記の配合割合P/Bが1/10未満である場合には、突起を設けたことによる、前述した離型層の表面エネルギーを高める効果がえられず、離型層の、インキに対する親和性が低下して、充てん不良と、それに伴う前述した印刷形状の乱れを生じる。一方、配合割合P/Bが1/1を超える場合には、最終的に透明基板等の表面に形成されるインキ層の表面に、上記突起の痕跡が凹部となって現れ、それによってインキ層の平坦性が損なわれる。
【0026】
また、配合割合P/Bが1/1を超える場合には、過剰のシリコーンレジン粒子(突起)が、形成後の離型層から脱落しやすく、かかる脱落が発生した場合には、離型層のインキとの親和性が変動したり、あるいは脱落したシリコーンレジン粒子がインキ層中に異物として混入したりするという新たな問題を生じる。
【0027】
凹版の凹部の内面に、上記の塗布液からなる離型層を形成するには、種々の方法が考えられるが、たとえばディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法等の、従来公知の種々の塗布方法によって、凹部を含む凹版の版面に塗布液を塗布したのち、シリコーンポリマーを硬化させるのが、前述したように従来と同様の生産設備を用いて、同様の工程により離型層を形成できるため好ましい。
【0028】
なお上記の方法では、凹版の、凹部以外の版面にも離型層が形成され、当該離型層は、ドクターブレード等による凹部へのインキの充てんの際に、版面にインキが残るのを防止する働きをするが、かかる離型層は、塗布液の硬化前、あるいは硬化後の任意の段階で除去してもよい。また、上記の離型層を除去した版面に新たに、上述したインキの残りを防止する働きにより一層すぐれた、表面が平滑な離型層を形成してもよい。かかる離型層は、たとえばシリコーンポリマーやふっ素樹脂等の、従来公知の素材により形成される。
【0029】
上記の離型層が形成される凹版としては、従来同様に、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス、低膨張ガラス等のガラス製の板や、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂製の板、あるいはステンレス、銅、低膨張合金(アンバーなど)等の金属製の板が使用でき、その中でもとくに、微細なパターンの凹部を高精度で再現することを考慮すると、ソーダライムガラス等の軟質ガラスが好適に使用される。凹版に凹部を形成する方法は、従来と同様である。
【0030】
つぎに、この発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。
この発明のカラーフィルタの製造方法は、上に述べたこの発明の印刷用凹版を使用した凹版オフセット印刷法により、ガラス板等の透明基板上に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ層を形成して、あるいはこの3色のカラーフィルタ層と、各層を区切るブラックマトリクス層とを形成して、カラーフィルタを製造するものである。
【0031】
詳しくは、上記各層のいずれかに対応した凹部を有するこの発明の印刷用凹版の、上記凹部に、ドクターブレード等を用いてその層用のインキを充てんし、それをブランケットの表面印刷層の表面に転移させ、ついで透明基板の表面に転移させて該当するインキ層を形成する印刷工程と、印刷されたインキ層を乾燥させる乾燥工程とを、各層ごとに順次、繰り返すことによってカラーフィルタが製造される。
【0032】
各層の形成順序はとくに限定されず、製造するカラーフィルタの構造に応じて適宜、変更することができる。
上記のうち印刷工程には、従来のオフセット印刷機が使用できる。印圧、印刷速度等の条件は、従来と同様でよい。
ブランケットとしては、従来公知の種々の構造のものがいずれも使用できるが、とくに前述したように、表面印刷層上のインキを透明基板上に良好に転移させるためには、当該表面印刷層が、シリコーンゴムにて形成されているのが好ましい。とくに、線幅が50μm以下のファインパターンではその効果が大きい。
【0033】
シリコーンゴムとしては、混練可能なミラブル型シリコーンゴムや、前述した各種液状シリコーンゴム等の、従来公知の種々のシリコーンゴムが、いずれも使用可能である。
このうちミラブル型シリコーンゴムを用いて表面印刷層を形成するには、当該ミラブル型シリコーンゴムを基材ゴムとして含有する未硬化のゴムコンパウンドをシート状に押出成形し、これを下地上に積層して、加圧、加熱下で硬化させればよい。また、液状シリコーンゴムを用いて表面印刷層を形成するには、当該液状シリコーンゴムを基材ゴムとして含有する未硬化の液状ゴム組成物を下地上に塗布するか、あるいは下地を装填した型内に注入して、室温または加熱下で硬化させればよい。
【0034】
上記シリコーンゴムからなる表面印刷層の硬度は、とくに限定されないが、JIS A硬度で20〜80°程度、とくに40〜60°程度であるのが好ましい。
表面印刷層の硬度が上記の範囲未満では、印刷時の歪みが大きくなりすぎて、印刷精度が低下したり、印圧が低下して、凹版からのインキの転移性が低下したりするおそれがある。また逆に、表面印刷層の硬度が上記の範囲を超えた場合には、インキとの親和性が高すぎて、透明基板ねの転写時に、インキ層の***が発生したり、あるいはエッジ形状がみだれたりして、印刷精度が低下するおそれがある。
【0035】
また表面印刷層の表面粗さは、10点平均粗さRz で表して0.5μm以下、とくに0.3μm以下であるのが好ましい。
表面印刷層の表面粗さが上記の範囲を超えた場合には印刷形状、とくにライン直線性が乱れて、印刷精度が低下するおそれがある。
なお表面印刷層の表面粗さは、印刷精度を考慮すると、上記範囲内でも小さければ小さいほど好ましい。
【0036】
表面印刷層の厚みもとくに限定されないが、0.05〜2.0mm程度、とくに0.2〜1.0mm程度であるのが好ましい。
表面印刷層の厚みが上記の範囲未満では、表面印刷層の柔軟性が不十分となって、とくに凹版に圧接された際に、当該凹版の凹部内に圧入されにくくなる結果、凹版からのインキの転移性が低下するおそれがある。また逆に上記の範囲を超えた場合には、印刷時の歪みが大きくなりすぎて、印刷精度が低下するおそれがある。
【0037】
上記の表面印刷層が形成されるブランケットの下地は、従来と同様の構成とすることができる。
たとえばカラーフィルタ等の精密印刷に用いるブランケットの下地としては、表面が平滑な支持体層単独のものや、あるいはこの支持体層上に、多孔質のゴムにて形成された圧縮性層を形成した2層構造のもの等が好適に使用される。
【0038】
上記のうち支持体層としては、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ナイロン等の合成樹脂製のフィルムや、あるいはアルミニウム、ステンレス等の金属の薄板などがあげられる。
また圧縮性層としては、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものと、各気孔が互いに連通した連続気孔構造のものとがあるが、この発明では、このいずれの構造を採用してもよい。
【0039】
上記のうち前者の独立気孔構造の圧縮性層は、たとえば加熱により分解してガスを発生する発泡剤を未加硫のゴム中に分散して、ゴムの加硫と同時に発泡させたり、あるいはゴム中に中空状微小粒子を分散させたりすることで形成される。一方、後者の連続気孔構造の圧縮性層は、未加硫のゴム中に、食塩等の、ゴムに影響を及ぼさない溶剤(食塩の場合は水)により抽出可能な粒子を分散し、ゴムを加硫したのち上記の粒子を抽出する、いわゆるリーチング法により形成される。
【0040】
上記圧縮性層を構成するゴムとしては、これに限定されないがたとえばアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)等の、インキや洗浄液等に対する耐性を有する耐油性のゴムが好適に使用される。
上記支持体層および圧縮性層の厚みその他は、従来と同様に構成すればよい。
【0041】
つぎに乾燥工程では、上記の印刷工程で透明基板上に形成されたインキ層を、透明基板が熱変形しない温度と時間、通常は180〜250℃で30〜80分間程度、好ましくは200〜230℃で50〜80分間程度、加熱、乾燥して硬化させるのがよい。
上記の乾燥工程は、各インキ層を形成するごとに行ってもよいし、何層かのインキ層を形成するごとに行ってもよい。あるいは全てのインキ層を形成した後に、一度に加熱、乾燥してもよい。
【0042】
【実施例】
(印刷用凹版の製造)
実施例1
厚み1.1mmのソーダライムガラス板の表面に、液晶カラーディスプレイ用の、ブラックマトリクス層に対応した、線幅20μm、深さ4μmの凹部を、以下の手順により形成した。すなわち、まずガラス板の表面全面にクロムの蒸着膜を形成し、ついでこの蒸着膜を、電子線の照射によってパターニングして、上記凹部のパターンに対応したマスク(ガラス板の表面のうち、凹部を形成する部分を露出させ、その他の部分をカバーするマスク)を形成した後、ガラス板をフッ酸によってエッチング処理して上記の凹部を形成した。また、ガラス板の表面に残ったマスクは、凹部形成後に、塩化第2鉄溶液を用いて除去した。
【0043】
つぎに、上記ソーダライムガラス基板の、凹部が形成された版面に、架橋されたシリコーンレジン粒子〔前出の、東芝シリコーン(株)製の商品名トスパール105、平均粒径0.5μm〕と、未硬化の2液付加型液状シリコーンゴム〔信越化学工業(株)製の商品名KS779の主剤と硬化剤とを、重量比で100:1の割合で混合したもの〕とを、前記体積比P/Bが1/3となるように配合した塗布液を塗布したのち、クリーンオーブンによりシリコーンゴムを硬化させて、突起の平均高さが0.3μmで、かつ厚みが0.5μm(凹部の深さの1/8)である離型層を形成して、印刷用凹版を製造した。
【0044】
実施例2
架橋されたシリコーンレジン粒子〔前出の、東芝シリコーン(株)製の商品名トスパール120、平均粒径2μm〕と、未硬化の2液付加型液状シリコーンゴム〔前出の、信越化学工業(株)製の商品名KS779の主剤と硬化剤とを、重量比で100:1の割合で混合したもの〕とを、前記体積比P/Bが1/3となるように配合した塗布液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、突起の平均高さが1μmで、かつ厚みが0.5μm(凹部の深さの1/8)である離型層を有する印刷用凹版を製造した。
【0045】
実施例3
ソーダライムガラス基板の表面に形成する凹部の深さを8μmに変更するとともに、塗布液における、シリコーンレジン粒子と液状シリコーンゴムとの配合割合(体積比P/B)を1/2としたこと以外は実施例1と同様にして、突起の平均高さが0.3μmで、かつ厚みが3μm(凹部の深さの3/8)である離型層を有する印刷用凹版を製造した。
【0046】
実施例4
架橋されたシリコーンレジン粒子〔前出の、東芝シリコーン(株)製の商品名トスパール145、平均粒径4.5μm〕と、未硬化の2液付加型液状シリコーンゴム〔東芝シリコーン(株)製の商品名TSE3033の主剤と硬化剤とを、重量比で1:1の割合で混合したもの〕とを、体積比P/Bが1/2となるように配合した塗布液を使用したこと以外は実施例3と同様にして、突起の平均高さが1.5μmで、かつ厚みが3μm(凹部の深さの3/8)である離型層を有する印刷用凹版を製造した。
【0047】
比較例1
架橋されたシリコーンレジン粒子〔東芝シリコーン(株)製の商品名トスパール3120、平均粒径12μm〕と、未硬化の2液付加型液状シリコーンゴム〔前出の、東芝シリコーン(株)製の商品名TSE3033の主剤と硬化剤とを、重量比で1:1の割合で混合したもの〕とを、体積比P/Bが1/3となるように配合した塗布液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、突起の平均高さが4μmで、かつ厚みが1μm(凹部の深さの1/4)である離型層を有する印刷用凹版を製造した。
【0048】
比較例2
架橋されたシリコーンレジン粒子〔前出の、東芝シリコーン(株)製の商品名トスパール130、平均粒径3μm〕と、未硬化の2液付加型液状シリコーンゴム〔前出の、信越化学工業(株)製の商品名KS779の主剤と硬化剤とを、重量比で100:1の割合で混合したもの〕とを、体積比P/Bが2/1となるように配合した塗布液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、突起の平均高さが2.5μmで、かつ厚みが1μm(凹部の深さの1/4)である離型層を有する印刷用凹版を製造した。
【0049】
比較例3
ソーダライムガラス基板の表面に形成する凹部の深さを1μmに変更するとともに、塗布液における、シリコーンレジン粒子と液状シリコーンゴムとの配合割合(体積比P/B)を1/2としたこと以外は比較例2と同様にして、突起の平均高さが3.5μmで、かつ厚みが0.3μm(凹部の深さの3/10)である離型層を有する印刷用凹版を製造した。
【0050】
比較例4
ソーダライムガラス基板の表面に形成する凹部の深さを15μmに変更したこと以外は比較例3と同様にして、突起の平均高さが0.2μmで、かつ厚みが5μm(凹部の深さの1/3)である離型層を有する印刷用凹版を製造した。
比較例5
シリコーンレジン粒子と液状シリコーンゴムとの配合割合(体積比P/B)を1/2としたこと以外は比較例2と同様にして、突起の平均高さが0.5μmで、かつ厚みが3μm(凹部の深さの3/4)である離型層を有する印刷用凹版を製造した。
(カラーフィルタの製造)
上記各実施例、比較例で製造した印刷用凹版を平台オフセット印刷機に装着するとともに、温度23℃、湿度60%、印刷用凹版からブランケットへのインキの転移速度10mm/秒、ブランケットから透明基板へのインキの転移速度100mm/秒の条件で印刷を行った。
【0051】
なお使用したブランケット、透明基板およびインキは次のとおりである。
ブランケット:JIS A硬度が40°の、シリコーンゴム製の表面印刷層を有するもの。
透明基板:ノンアルカリガラス板〔ダウ・コーニング社製の#7059〕。
インキ:黒色ポリエステルインキ、粘度600P。
【0052】
そして、印刷後の印刷用凹版の凹部、および透明基板上のインキ層を観察して、凹版の凹部におけるインキの離型性、インキ層表面の平坦性、印刷パターンの再現性、およびピンホールの有無を、それぞれ下記の基準で評価した。
・インキの離型性:
◎…凹部内に全くインキが残留しておらず、インキの離型性とくに良好。
【0053】
○…凹部内には、直径5μm以下のインキの粒がわずかに残留しているのみで、インキの離型性良好。
×…凹部内に多量のインキが残留しており、インキの離型性不良。
・インキ層表面の平坦性
◎…インキ層表面の高低差は0.05μm以下で、平坦性とくに良好。
【0054】
○…インキ層表面の高低差は0.5μm以下で、平坦性良好。
×…インキ層表面の高低差は0.5μmを超え、平坦性不良。
・印刷形状の良否
○…印刷形状に乱れなく、印刷形状良好。
×…印刷形状に乱れあり、印刷形状不良。
・ピンホールの有無
○…ピンホールなし。
【0055】
×…ピンホールあり。
以上の結果を表1、2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
上記両表の結果より、突起の平均高さが2μmを超える比較例1〜3はいずれも、インキ層の表面に突起の痕跡の凹部によると考えられる大きな凹凸があり、平坦性が不良であるとともに、印刷形状も不良であった。また凹部の平均深さが2μm未満である比較例3は、上記の不良に加えて、インキ層にピンホールも発生した。
【0059】
また、凹部の平均深さが10μmを超えた比較例4は、凹版におけるインキの離型性が不良であった。
さらに、離型層の厚みが凹部の深さの1/2を超えた比較例5は、インキ層にピンホールが発生した。
これに対し、実施例1〜4は、上記いずれの不良も発生せず、凹版におけるインキの離型性が良好であるとともに、印刷形状の乱れのない高精度のインキ層を形成することができた。
【0060】
【発明の効果】
以上、詳述したようにこの発明の印刷用凹版は、その凹部におけるインキの離型性が高い上、当該凹部が、インキに対して充てん不良を生じない程度の親和性をも有するものであり、かかる印刷用凹版を使用すれば、印刷形状の乱れのない高精度のカラーフィルタを製造できるという特有の作用効果を奏する。
Claims (3)
- インキが充てんされる、平均深さ2〜10μmの凹部を有するとともに、当該凹部の内面が、平均粒径0.1〜5μmの、架橋されたシリコーンレジン粒子と、未硬化の液状シリコーンポリマーとを、体積比で1/10〜1/1の割合で配合した塗布液を凹部の内面に塗布した後、シリコーンポリマーを硬化させて形成された、平均高さ0.1〜2μmの突起を有する、厚みが0.05μm以上で、かつ凹部の深さの1/2以下の範囲内であるシリコーンポリマー製の離型層によって覆われていることを特徴とする印刷用凹版。
- 請求項1記載の印刷用凹版の凹部にインキを充てんし、ついでこのインキを、ブランケットの表面印刷層の表面に転移させた後、透明基板の表面に転移させて、当該透明基板の表面にインキ層を形成する工程を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
- ブランケットの表面印刷層が、シリコーンゴムにて形成されている請求項2記載のカラーフィルタの製造方法。
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JP3225197A JP3688842B2 (ja) | 1997-02-17 | 1997-02-17 | 印刷用凹版とそれを用いたカラーフィルタの製造方法 |
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