JP3685089B2 - 加湿装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、疎水性多孔膜により形成された多孔モジュールを用いた加湿装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、加湿装置としては、疎水性多孔膜により形成された多孔モジュールを用いて加湿を行うものがある(特開平11−351731号公報)。この加湿装置は、タンクに溜められた水を電気ヒータで加熱して給水温度を上げることによって、多孔モジュールの疎水性多孔膜の単位面積当たりの加湿量を増加している。ところが、上記加湿装置では、電気ヒータを用いて給水温度を上げるため、加湿量が増大すると、電気ヒータの消費電力が増加するので、効率が悪いという欠点がある。また、上記加湿装置は、電気ヒータによる加熱であるため、タンクに溜められた水を冷却できず、冷水を利用した脱臭機能を付加することはできない。
【0003】
そこで、この発明の目的は、消費電力を低減できると共に、優れた脱臭機能を備えた加湿装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の加湿装置は、貯水タンクと、上記貯水タンク内の水を流すための流路が疎水性多孔膜により形成された多孔モジュールと、上記貯水タンク内の水を上記多孔モジュールの流路を介して循環させるポンプと、上記貯水タンク内の水を加熱するヒートポンプ回路とを備えた加湿装置において、上記ヒートポンプ回路は、上記貯水タンク内の水を加熱する機能に加えて上記貯水タンク内の水を冷却する機能を有することを特徴としている。
【0005】
上記請求項1の加湿装置によれば、上記貯水タンク内の水をヒートポンプ回路により加熱し、上記ポンプを動作させて貯水タンク内の温水を上記多孔モジュールの流路を介して循環させる。上記多孔モジュールにおいて、疎水性多孔膜により形成された流路に温水が流れると、多孔モジュール内から疎水性多孔膜を通って水蒸気が空気中に放出されて加湿が行われる。したがって、電気ヒータを用いて加熱された温水を多孔モジュールに供給するの比べて、熱効率のよいヒートポンプ回路を用いるので、消費電力を低減できる。
【0006】
【0007】
また、上記貯水タンク内の水をヒートポンプ回路により冷却し、上記ポンプを動作させて貯水タンク内の冷水を上記多孔モジュールの流路を介して循環させる。上記多孔モジュールにおいて、疎水性多孔膜により形成された流路に冷水が流れると、空気中から疎水性多孔膜を通って臭い成分が冷水に吸収されて脱臭が行われる。このとき、水温が低いほど加湿量が少なくなり臭い成分の吸収量が多くなるので、効率のよい脱臭を行うことができる。したがって、熱効率のよいヒートポンプ回路を用いて冷却された水を利用することによって、省エネルギー効果の高い優れた脱臭機能を備えた加湿装置を実現できる。
【0008】
また、請求項2の加湿装置は、請求項1に記載の加湿装置において、上記貯水タンク内に水を供給する給水手段と、上記貯水タンク内の水を排水する排水手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
上記請求項2の加湿装置によれば、上記排水手段により貯水タンク内の水を排水した後、給水手段によって新しい水を貯水タンクに給水することが可能になるので、例えば、加湿運転では、温水に溶けている硬質成分が濃縮されてスケールが析出するのを防止できる。また、脱臭運転では、貯水タンク内の臭い成分やガス成分の濃度が上昇した水を排水して、新しい水に入れ換えることによって、臭い成分やガス成分の濃度上昇による吸収性能の低下を防止できる。
【0010】
また、請求項3の加湿装置は、請求項1の加湿装置において、上記多孔モジュール内の水温を検出する温度センサと、上記温度センサにより検出された上記多孔モジュール内の水温に基づいて、上記ヒートポンプ回路の能力を制御する制御部とを備えたことを特徴としている。
【0011】
上記請求項3の加湿装置によれば、上記温度センサにより検出された上記多孔モジュール内の水温に基づいて、上記制御部によってヒートポンプ回路の能力を制御するので、上記貯水タンクから最適な温度の水を多孔モジュールに供給できる。
【0012】
また、請求項4の加湿装置は、請求項1の加湿装置において、上記多孔モジュール内の水温を検出する温度センサと、室内の相対湿度を検出する湿度センサと、上記温度センサにより検出された上記多孔モジュール内の水温および上記湿度センサにより検出された室内の相対湿度に基づいて、上記ヒートポンプ回路の加熱能力を制御する制御部とを備えたことを特徴としている。
【0013】
上記請求項4の加湿装置によれば、上記温度センサにより検出された多孔モジュール内の水温および湿度センサにより検出された室内の相対湿度に基づいて、上記制御部によってヒートポンプ回路の加熱能力を制御して加湿運転するので、室内の相対湿度を目標相対湿度にするために必要な最適温度の温水を多孔モジュールに供給できる。
【0014】
また、請求項5の加湿装置は、請求項1の加湿装置において、上記多孔モジュール内の水温を検出する温度センサと、室内の臭濃度を検出する臭いセンサと、上記温度センサにより検出された上記多孔モジュール内の水温および上記臭いセンサにより検出された室内の臭濃度に基づいて、上記ヒートポンプ回路の冷却能力を制御する制御部とを備えたことを特徴としている。
【0015】
上記請求項5の加湿装置によれば、上記温度センサにより検出された多孔モジュール内の水温および臭いセンサにより検出された室内の臭濃度に基づいて、上記制御部によってヒートポンプ回路の冷却能力を制御して脱臭運転するので、室内の臭濃度を目標臭濃度にするために必要な最適温度の冷水を多孔モジュールに供給できる。
【0016】
また、請求項6の加湿装置は、請求項1の加湿装置において、上記多孔モジュール内の水温を検出する温度センサと、室内温度を検出する室内温度センサと、室内の相対湿度を検出する湿度センサと、上記室内温度センサにより検出された室内温度および上記湿度センサにより検出された室内の相対湿度に基づいて露点温度を算出し、上記温度センサにより検出された上記多孔モジュールの水温が上記露点温度よりも所定温度高くなるように、上記ヒートポンプ回路の冷却能力を制御する制御部とを備えたことを特徴としている。
【0017】
上記請求項6の加湿装置によれば、上記制御部は、上記室内温度センサにより検出された室内温度および湿度センサにより検出された室内の相対湿度に基づいて露点温度を算出して、上記温度センサにより検出された多孔モジュールの水温が上記露点温度よりも所定温度高くなるように、上記ヒートポンプ回路の冷却能力を制御して脱臭運転するので、多孔モジュールの疎水性多孔膜への結露を防止でき、結露による効率低下等を防ぐことができる。
【0018】
また、請求項7の加湿装置は、請求項2の加湿装置において、上記貯水タンク内の水を入れ換える間隔を指令する指令手段と、上記指令手段により指令された上記貯水タンク内の水を入れ換える間隔に基づいて、上記貯水タンク内の水を上記排水手段により排水した後に上記貯水タンク内に上記給水手段により水を供給するように、上記排水手段と上記給水手段を制御する制御部を備えたことを特徴としている。
【0019】
上記請求項7の加湿装置によれば、上記指令手段により指令された上記貯水タンク内の水を入れ換える間隔に基づいて、上記制御部によって排水手段と給水手段を制御するので、設置された場所で水の特性や空気臭い,VOC等が変化するため、使用者の要求に応じて、リモコン等の指令手段により水の入れ換える排水間隔を適宜変えることができる。
【0020】
また、請求項8の加湿装置は、請求項1乃至7のいずれか1つの加湿装置において、上記多孔モジュールの周囲に室内の空気を通過させるファンを備えたことを特徴としている。
【0021】
上記請求項8の加湿装置によれば、上記ファンにより上記多孔モジュールの周囲に室内の空気を通過させることによって、加湿運転時の多孔モジュールからの水蒸気の放出の効率がよくなり、加湿能力が向上する。また、脱臭運転では、多孔モジュール内の冷水への臭い成分(またはガス成分)の吸収効率がよくなり、脱臭能力が向上する。
【0022】
また、請求項9の加湿装置は、請求項1乃至8のいずれか1つの加湿装置において、上記ヒートポンプ回路は、圧縮機と、四路切換弁と、上記貯水タンク内に配置された第1熱交換器と、減圧手段と、第2熱交換器で形成された冷媒回路であることを特徴としている。
【0023】
上記請求項9の加湿装置によれば、上記四路切換弁を一方の切り換え位置にして、上記圧縮機,第1熱交換器,減圧手段および第2熱交換器と冷媒を循環させて、第1熱交換器を凝縮器、第2熱交換器を蒸発器とすることによって、第1熱交換器からの放熱により貯水タンク内の水を加熱する。一方、上記四路切換弁を他方の切り換え位置にして、上記圧縮機,第2熱交換器,減圧手段および第1熱交換器と冷媒を循環させて、第2熱交換器を凝縮器、第1熱交換器を蒸発器とすることによって、第1熱交換器の吸熱により貯水タンク内の水を冷却する。このように、上記ヒートポンプ回路によって、貯水タンク内の水を加熱および冷却することができる。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の加湿装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1はこの発明の第1実施形態の加湿装置の概略構成図であり、1は疎水性多孔モジュール、2は上記疎水性多孔モジュール1に供給する水を溜める貯水タンク、3は上記疎水性多孔モジュール1と貯水タンク2とを接続する配管L1に配設されたポンプ、4は上記疎水性多孔モジュール1に室内の空気を通過させるためのファン、5は上記貯水タンク2に外部から水を供給するための給水配管L3に配設された給水用電磁弁、6は上記貯水タンク2内の水を排水するための排水配管L4に配設された排水用電磁弁、7は運転操作用リモートコントローラ(以下、リモコンという)、8は上記リモコン7からの運転操作信号により本装置の運転を制御する制御部である。上記貯水タンク2内の側壁に水位を検出する水位センサ20を配置している。また、上記リモコン7は、室内の相対湿度を検出する湿度センサ22と、室内の臭濃度を検出する臭いセンサ23と、室内温度を検出する室内温度センサ24を有し、室内の相対湿度,臭濃度および室内温度を表す信号を制御部8に送る。
【0030】
また、上記加湿装置は、圧縮機11と、上記圧縮機1の吐出側に接続された四路切換弁12と、上記四路切換弁12に一端が接続され、上記貯水タンク2内に配置された第1熱交換器13と、上記第1熱交換器13の他端に一端が接続された減圧手段としての膨張弁14と、上記膨張弁14の他端に一端が接続された第2熱交換器15と、上記第2熱交換器15の他端に一端が接続され、他端が圧縮機11の吸入側に接続されたアキュムレータ16と、上記第2熱交換器15に室外の空気を送るファン17とを有している。上記圧縮機11,四路切換弁12,第1熱交換器13,膨張弁14,第2熱交換器15およびアキュムレータ16でヒートポンプ回路を構成している。
【0031】
上記疎水性多孔モジュール1は、貯水タンク2内の水を流すための流路が疎水性多孔膜により形成された複数の円筒1aと、上記複数の円筒1aの両端を夫々接続するヘッダ1b,1bとを有している。一端が貯水タンク2の下部に接続された配管L1の他端を疎水性多孔モジュール1の下側のヘッダ1bに接続すると共に、上記疎水性多孔モジュール1の上側のヘッダ1bに配管L2の一端を接続し、その配管L2の他端を貯水タンク2上部に配置している。上記疎水性多孔モジュール1,貯水タンク2,ポンプ3,配管L1,配管L2で循環回路を形成している。また、上記疎水性多孔モジュール1の上側のヘッダ1bに、水温を検出するための温度センサ21を配置している。
【0032】
上記構成の加湿装置において、制御部8は、リモコン7からの運転操作信号と水位センサ20,温度センサ21からの信号に基づいて、ポンプ3,ファン4,給水用電磁弁5,排水用電磁弁6,圧縮機11,四路切換弁12およびファン17を制御して、加湿運転および脱臭運転を行う。
【0033】
加湿運転では、四路切換弁12を実線の位置に切り換えて、圧縮機11を運転すると、圧縮機11から吐出された冷媒は、凝縮器としての第1熱交換器13で凝縮された後、膨張弁14により減圧される。そして、減圧された冷媒は、蒸発器としての第2熱交換器15で蒸発した後、アキュムレータ16を介して圧縮機11の吸込側に戻る。そうして、第1熱交換器13により貯水タンク2内の水を加熱すると共に、ポンプ3を動作させて、貯水タンク2内の温水を配管L1を介して疎水性多孔モジュール1に供給する。上記疎水性多孔モジュール1に供給された温水は、複数の円筒1a内の流路を通って配管L2を介して貯水タンク2に戻り、温水が循環する。このとき、上記疎水性多孔モジュール1の円筒1a内を通過する温水は、円筒1aを形成する疎水性多孔膜を通って、ファン4から供給された室内空気に放出されて加湿が行われる。上記制御部8は、加湿運転中、リモコン7からの運転操作信号や温度センサ21からの水温を表す信号に基づいて、圧縮機11の運転周波数を制御することによりヒートポンプ回路の加熱能力を制御して、加湿に最適な温度の温水を疎水性多孔モジュール1に供給する。
【0034】
そして、加湿運転中、水に溶けている硬質成分が濃縮されてスケールが析出するのを防止するため、排水用電磁弁6を開いて所定時間排水した後、排水用電磁弁6を閉じて、給水用電磁弁5を開いて新しい水を貯水タンク2に給水し、水位センサ20により検出された水位が所定水位になると、給水用電磁弁5を閉じる。
【0035】
一方、脱臭運転では、四路切換弁12を点線の位置に切り換えて、圧縮機11を運転すると、圧縮機11から吐出された冷媒は、凝縮器としての第2熱交換器15で凝縮された後、膨張弁14により減圧される。そして、減圧された冷媒は、蒸発器としての第1熱交換器13で蒸発した後、アキュムレータ16を介して圧縮機11の吸込側に戻る。そうして、第1熱交換器13により貯水タンク2内の水を冷却すると共に、ポンプ3を動作させて、貯水タンク2内の冷水を配管L1を介して疎水性多孔モジュール1に供給する。上記疎水性多孔モジュール1に供給された冷水は、複数の円筒1a内の流路を通って配管L2を介して貯水タンク2に戻り、冷水が循環する。このとき、上記疎水性多孔モジュール1の円筒1a内を通過する冷水は、円筒1aを形成する疎水性多孔膜を通って、ファン4から供給された空気から臭い成分(またはガス成分)を吸収して脱臭が行われる。上記制御部8は、脱臭運転中、リモコン7からの信号や温度センサ21からの水温を表す信号に基づいて、圧縮機11の運転周波数を制御することによりヒートポンプ回路の冷却能力を制御して、脱臭に最適な温度の冷水を疎水性多孔モジュール1に供給する。
【0036】
また、脱臭運転中、臭いガスやVOC(Volatile Organic Compoubd;揮発性有機化合物)等の溶け込み濃度が吸収により徐々に増加して、吸収性能が低下するのを防止するため、排水用電磁弁6を開いて所定時間排水した後、排水用電磁弁6を閉じて、給水用電磁弁5を開いて新しい水を貯水タンク2に給水する。このとき、上記水位センサ20により検出された水位が所定水位になると、給水用電磁弁5を閉じる。こうして、貯水タンク2内の濃度上昇した水を排水して、新しい水に入れ換えることによって、吸収性能(脱臭、脱ガス)を回復する。上記加湿運転時のスケール排水制御と脱臭運転時のガス溶け込み排水制御を共通化することでコストアップを防止できる。
【0037】
図2は上記制御部8の加湿運転および脱臭運転の処理を示すフローチャートであり、図2にしたがって制御部8の動作を説明する。
【0038】
まず、処理がスタートすると、ステップS1でリモコン7の操作の読み込みを行う。すなわち、リモコン7で使用者が設定した運転操作内容(運転モードや要求相対湿度RH0,要求臭濃度N0および排水間隔等)を制御部8が読み込む。
次に、ステップS2に進み、運転モードが加湿かまたは脱臭であるかを判別して、運転モードが加湿であるときはステップS3に進み、リモコン7側の湿度センサ22により検出された室内相対湿度RH1の読み込みを行う。
次に、ステップS4に進み、温度センサ21により検出された疎水性多孔モジュール1の水温T1の読み込みを行う。
次に、ステップS5に進み、要求相対湿度RH0と室内相対湿度RH1との相対湿度差△RH(=RH0−RH1)を求める。
次に、ステップS6に進み、相対湿度差△RHに基づいて目標加熱水温T0hを決定し、疎水性多孔モジュール1の水温T1と目標加熱水温T0hとの温度差△T(=T1−T0h)を求める。
次に、ステップS7に進み、上記温度差△Tが小さくなるように、運転周波数HZを決定する。
そして、ステップS8で加湿運転制御を行う。
次に、ステップS9に進み、相対湿度差△RHがゼロを越える正の値であると判断すると、ステップS3に戻り、ステップS3〜S8を繰り返す。一方、ステップS9で相対湿度差△RHが以下であると判断すると、この処理を終了する。
【0039】
一方、ステップS2で運転モードが脱臭であるときはステップS10に進み、リモコン7側の臭いセンサ23により検出された室内臭濃度N1の読み込みを行う。
次に、ステップS11に進み、温度センサ21により検出された疎水性多孔モジュール1の水温T1の読み込みを行う。
次に、ステップS12に進み、室内臭濃度N1と要求臭濃度N0との臭濃度差△N(=N1−N0)を求める。
次に、ステップS13に進み、臭濃度差△Nに基づいて目標冷却水温T0cを決定し、疎水性多孔モジュール1の水温T1と目標冷却水温T0cとの温度差△T(=T1−T0c)を求める。なお、室内温度センサ24により検出された室内温度および湿度センサ22により検出された室内の相対湿度に基づいて露点温度を算出し、目標冷却水温T0cは、露点温度よりも所定温度高くなるようにしている。
次に、ステップS14に進み、上記温度差△Tが小さくなるように、運転周波数HZを決定する。
そして、ステップS15で脱臭運転制御を行う。
次に、ステップS16に進み、臭濃度差△Nが正の値であると判断すると、ステップS10に戻り、ステップS10〜S15を繰り返す。一方、ステップS16で臭濃度差△Nがゼロ以下であると判断すると、この処理を終了する。
【0040】
このように、上記加湿装置によれば、省エネルギーで加湿および脱臭(またはガス除去)性能を向上できる。特に、この発明の加湿装置を空気調和機に適用して、空気調和機の冷媒回路を加湿装置のヒートポンプ回路に利用することによって、簡単な構成で加湿機能,脱臭機能を備えた空気調和機を実現することができる。さらに、空気調和機の冷房運転時に熱交換器に付着したドレン等にカビや腐敗臭を発生する場合や、室内に悪臭等のガス発生要因がある場合、吹き出し空気が疎水性多孔モジュールを通過させることによって、臭いガス成分が水に吸収され、脱臭(またはガス除去)機能として優れた効果を発揮することができる。
【0041】
また、上記疎水性多孔モジュールは、疎水性多孔膜を不織布等の補強材でラミネートしたもので構成し、筒状に形成されたものを多数本ヘッダに接着などにより組み込む構成でもよい。また、上記疎水性多孔膜は、一般にはPTFE(四ふっ化エチレン樹脂)が多く用いられるが、水蒸気を通過させる一方で水(液体)を通過させない多数の微細孔が形成された材料であればよい。
【0042】
上記疎水性多孔膜と不織布をラミネートした材料で加湿と脱臭の機能を出すには、耐水性と通気性が必要である。多孔PTFEの場合、孔径0.1μm〜1.0μmで耐水圧は50m〜10mである(孔径が大きくなるにつれて耐水圧は低下する)。また、通気度は、JISP8117ガーレー評価法により空気1000mlが通過する時間で示される。通気度は、孔径が大きい方がガーレー秒(空気通過時間)は短くなる。
【0043】
また、加湿運転時に生じるスケールは、水に含まれる硬質成分の量で増減する。地域によって水に含まれる硬質成分は変化するため、スケールの溜まりスピードも変化する。また、臭いガスやVOC成分の水への溶け込み度合いはヘンリー定数で示され、ヘンリー定数が小さいほど水に溶け込みやすくなる。このヘンリー定数は水の温度が低いほど小さくなる。例えば、図3はアンモニア(NH3)の温度変化に対するヘンリー定数の特性を示し(横軸が温度、縦軸がヘンリー定数)、図3から明らかなように、アンモニア(NH3)は、温度が低くなるほど小さくなっており、他の臭いガスやVOC成分も同様の傾向を有している。このように、水の温度が低いほどヘンリー定数が小さくなって、臭いガスやVOC成分が水に溶け込みやすくなるので、冷水を用いることによって脱臭性能を向上できる。また、水の温度が低いほど冷水側の水蒸気分圧と空気の水蒸気分圧との圧力差が小さくなるため、水蒸気が空気中に放出されにくくなり、加湿性能は低下する。
【0044】
また、ヘンリー定数は、表1に示すようにガスの種類でも大きく変化する。
【表1】
【0045】
例えば、アンモニアの溶け込み度合い(H=0.00053)を100%とすると、トリメチルアミンは略1/16に低下し、脱ガス性能は低下するため、貯水タンク内の水を入れ換える排水間隔を16倍に伸ばしてよい。したがって、設置された場所で水の特性や空気臭い,VOC等が変化するため、使用者の要求に応じて、リモコン操作で適切な排水間隔を設定できるようにする。
【0046】
(第2実施形態)
図4はこの発明の第2実施形態の加湿装置の概略構成図であり、41は疎水性多孔モジュール、42は上記疎水性多孔モジュール41に室内の空気を通過させるファン、43は上記疎水性多孔モジュール41に接続された給水配管L21に配設された給水用電磁弁、44は上記給水配管L21の疎水性多孔モジュール41近傍に接続された分岐配管である排水配管L22に配設された排水用電磁弁、45はリモコン、46は上記リモコン45からの運転操作信号により本装置の運転を制御する制御部である。また、上記リモコン45は、室内の相対湿度を検出する湿度センサ52と、室内の臭濃度を検出する臭いセンサ53とを有し、室内の相対湿度,臭濃度を表す信号を制御46に送る。
【0047】
上記疎水性多孔モジュール41は、第1実施形態の疎水性多孔モジュール1と同様、疎水性多孔膜からなる複数の円筒41aと、上記複数の円筒41bの両端を夫々接続するヘッダ41b,41bとを有している。上記疎水性多孔モジュール41の上側のヘッダ41bに、水温を検出するための温度センサ51を配置している。上記疎水性多孔モジュール41の円筒41bに、疎水性多孔モジュール41内の水位を検出する水位センサ50を配置している。
【0048】
上記構成の加湿装置において、制御部46は、リモコン45からの運転操作信号と水位センサ50,温度センサ51からの信号に基づいて、ファン42,給水用電磁弁43および排水用電磁弁44を制御して、加湿運転および脱臭運転を行う。
【0049】
上記加湿装置では、ヒートポンプ回路を用いない自然蒸発式の加湿運転となる一方、性能は低下するが条件によっては脱臭機能を発揮することができる。
【0050】
上記第1,第2実施形態では、複数の円筒1a(41a)とヘッダ1b(41b)を有する疎水性多孔モジュール1(41)を用いた加湿装置について説明したが、疎水性多孔モジュールの構成はこれに限らず、貯水タンク内の水を流すための流路が疎水性多孔膜により形成された多孔モジュールであればよい。
【0051】
また、上記第1実施形態では、ヒートポンプ回路の加熱機能と冷却機能を切り換えて加湿運転と脱臭運転を行ったが、ヒートポンプ回路の加熱能力を利用する加湿運転のみを行う加湿装置にこの発明を適用してもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の発明の加湿装置によれば、貯水タンク内の水をヒートポンプ回路により加熱し、ポンプを動作させて貯水タンク内の温水を多孔モジュールの流路を介して循環させて、疎水性多孔膜により形成された流路に温水が流れ、多孔モジュール内から疎水性多孔膜を通って水蒸気を空気中に放出して加湿を行うので、電気ヒータを用いて加熱された温水を多孔モジュールに供給するの比べて、熱効率のよいヒートポンプ回路を用いることにより消費電力を低減することができる。
【0053】
また、上記ヒートポンプ回路の上記貯水タンク内の水を冷却する機能によって、上記貯水タンク内の水を冷却し、上記ポンプを動作させて貯水タンク内の冷水を多孔モジュールの流路を介して循環させて、疎水性多孔膜により形成された流路に冷水が流れ、空気中から疎水性多孔膜を通って臭い成分を冷水に吸収して脱臭を行う一方、水蒸気が空気中に放出されにくくなって加湿性能は低下するので、熱効率のよいヒートポンプ回路を用いた省エネルギー効果の高い優れた脱臭機能を備えた加湿装置を実現できる。
【0054】
また、請求項2の発明の加湿装置によれば、請求項1に記載の加湿装置において、排水手段により貯水タンク内の水を排水した後、給水手段によって新しい水を貯水タンクに給水することが可能になるので、例えば、加湿運転では、温水に溶けている硬質成分が濃縮されてスケールが析出するのを防止できる一方、脱臭運転では、臭い成分やガス成分の濃度上昇による吸収性能の低下を防止できる。
【0055】
また、請求項3の発明の加湿装置によれば、請求項1の加湿装置において、温度センサにより検出された多孔モジュール内の水温に基づいて、制御部によりヒートポンプ回路の能力を制御することによって、貯水タンクから最適な温度の水を多孔モジュールに供給できる。
【0056】
また、請求項4の発明の加湿装置によれば、請求項1の加湿装置において、温度センサにより検出された多孔モジュール内の水温および湿度センサにより検出された室内の相対湿度に基づいて、制御部によりヒートポンプ回路の加熱能力を制御して加湿運転することによって、室内の相対湿度を目標相対湿度にするために必要な最適温度の温水を多孔モジュールに供給できる。
【0057】
また、請求項5の発明の加湿装置によれば、請求項1の加湿装置において、温度センサにより検出された多孔モジュール内の水温および臭いセンサにより検出された室内の臭濃度に基づいて、制御部によりヒートポンプ回路の冷却能力を制御して脱臭運転することによって、室内の臭濃度を目標臭濃度にするために必要な最適温度の冷水を多孔モジュールに供給できる。
【0058】
また、請求項6の発明の加湿装置によれば、請求項1の加湿装置において、制御部は、室内温度センサにより検出された室内温度および湿度センサにより検出された室内の相対湿度に基づいて露点温度を算出して、温度センサにより検出された多孔モジュールの水温が上記露点温度よりも所定温度高くなるように、上記ヒートポンプ回路の冷却能力を制御して脱臭運転することによって、多孔モジュールの疎水性多孔膜への結露を防止でき、結露による効率低下等を防ぐことができる。
【0059】
また、請求項7の発明の加湿装置によれば、請求項2の加湿装置において、指令手段により指令された上記貯水タンク内の水を入れ換える間隔に基づいて、制御部により排水手段と給水手段を制御することによって、設置された場所で水の特性や空気中の臭い成分,VOC等が変化するため、使用者の要求に応じて、リモコン等の指令手段により水を入れ換える排水間隔を適宜変えることができる。
【0060】
また、請求項8の発明の加湿装置によれば、請求項1乃至7のいずれか1つの加湿装置において、ファンにより上記多孔モジュールの周囲に室内空気を通過させることによって、加湿運転時の多孔モジュールからの水蒸気の放出の効率がよくなり、加湿能力が向上する一方、脱臭運転では、多孔モジュール内の冷水への臭い成分(またはガス成分)の吸収効率がよくなり、脱臭能力が向上する。
【0061】
また、請求項9の発明の加湿装置によれば、請求項1乃至8のいずれか1つの加湿装置において、上記ヒートポンプ回路は、圧縮機と、四路切換弁と、上記貯水タンク内に配置された第1熱交換器と、減圧手段と、第2熱交換器で形成された冷媒回路であって、四路切換弁を一方の切り換え位置にして、上記圧縮機,第1熱交換器,減圧手段および第2熱交換器と冷媒を循環させて、第1熱交換器を凝縮器、第2熱交換器を蒸発器とすることによって、第1熱交換器からの放熱により貯水タンク内の水を加熱する一方、上記四路切換弁を他方の切り換え位置にして、上記圧縮機,第2熱交換器,減圧手段および第1熱交換器と冷媒を循環させて、第2熱交換器を凝縮器、第1熱交換器を蒸発器とすることによって、第1熱交換器からの吸熱により貯水タンク内の水を冷却する。したがって、上記ヒートポンプ回路によって、貯水タンク内の水を加熱および冷却することができる。
【0062】
【0063】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はこの発明の第1実施形態の加湿装置の概略構成図である。
【図2】 図2は上記加湿装置の制御部の動作を説明するフローチャートである。
【図3】 図3は温度変化に対するヘンリー定数の特性を示す図である。
【図4】 図4はこの発明の第2実施形態の加湿装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1…疎水性多孔モジュール、
2…貯水タンク、
3…ポンプ、
4…ファン、
5…給水用電磁弁、
6…排水用電磁弁、
7…リモコン、
8…制御部、
11…圧縮機、
12…四路切換弁、
13…第1熱交換器、
14…膨張弁、
15…第2熱交換器、
16…アキュムレータ、
17…ファン、
20…水位センサ、
21…温度センサ、
22…湿度センサ、
23…臭いセンサ、
24…室内温度センサ。
Claims (9)
- 貯水タンク(2)と、
上記貯水タンク(2)内の水を流すための流路が疎水性多孔膜により形成された多孔モジュール(1)と、
上記貯水タンク(2)内の水を上記多孔モジュール(1)の流路を介して循環させるポンプ(3)と、
上記貯水タンク(2)内の水を加熱するヒートポンプ回路とを備えた加湿装置において、
上記ヒートポンプ回路は、上記貯水タンク(2)内の水を加熱する機能に加えて上記貯水タンク内の水を冷却する機能を有することを特徴とする加湿装置。 - 請求項1に記載の加湿装置において、
上記貯水タンク(2)内に水を供給する給水手段(5,L3)と、
上記貯水タンク(2)内の水を排水する排水手段(6,L4)とを備えたことを特徴とする加湿装置。 - 請求項1に記載の加湿装置において、
上記多孔モジュール(1)内の水温を検出する温度センサ(21)と、
上記温度センサ(21)により検出された上記多孔モジュール(1)内の水温に基づいて、上記ヒートポンプ回路の能力を制御する制御部(8)とを備えたことを特徴とする加湿装置。 - 請求項1に記載の加湿装置において、
上記多孔モジュール(1)内の水温を検出する温度センサ(21)と、
室内の相対湿度を検出する湿度センサ(22)と、
上記温度センサ(21)により検出された上記多孔モジュール(1)内の水温および上記湿度センサ(22)により検出された室内の相対湿度に基づいて、上記ヒートポンプ回路の加熱能力を制御する制御部(8)とを備えたことを特徴とする加湿装置。 - 請求項1に記載の加湿装置において、
上記多孔モジュール(1)内の水温を検出する温度センサ(21)と、
室内の臭濃度を検出する臭いセンサ(23)と、
上記温度センサ(21)により検出された上記多孔モジュール(1)内の水温および上記臭いセンサ(23)により検出された室内の臭濃度に基づいて、上記ヒートポンプ回路の冷却能力を制御する制御部(8)とを備えたことを特徴とする加湿装置。 - 請求項1に記載の加湿装置において、
上記多孔モジュール(1)内の水温を検出する温度センサ(21)と、
室内温度を検出する室内温度センサ(24)と、
室内の相対湿度を検出する湿度センサ(22)と、
上記室内温度センサ(24)により検出された室内温度および上記湿度センサ(22)により検出された室内の相対湿度に基づいて露点温度を算出し、上記温度センサ(21)により検出された上記多孔モジュール(1)の水温が上記露点温度よりも所定温度高くなるように、上記ヒートポンプ回路の冷却能力を制御する制御部(8)とを備えたことを特徴とする加湿装置。 - 請求項2に記載の加湿装置において、
上記貯水タンク(2)内の水を入れ換える間隔を指令する指令手段(7)と、
上記指令手段(7)により指令された上記貯水タンク(2)内の水を入れ換える間隔に基づいて、上記貯水タンク(2)内の水を上記排水手段(6,L4)により排水した後に上記貯水タンク(2)内に上記給水手段(5,L3)により水を供給するように、上記排水手段(6,L4)と上記給水手段(5,L3)を制御する制御部(8)を備えたことを特徴とする加湿装置。 - 請求項1乃至7のいずれか1つに記載の加湿装置において、
上記多孔モジュール(1)の周囲に室内の空気を通過させるファン(4)を備えたことを特徴とする加湿装置。 - 請求項1乃至8のいずれか1つに記載の加湿装置において、
上記ヒートポンプ回路は、圧縮機(11)と、四路切換弁(12)と、上記貯水タンク(2)内に配置された第1熱交換器(13)と、減圧手段(14)と、第2熱交換器(15)で形成された冷媒回路であることを特徴とする加湿装置。
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