JP3682397B2 - ファンモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外転形マグネットモータを用いてファン部を一体的に備えたファンモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のファンモータとしては、冷蔵庫に用いられるファンモータが知られており、斯かるファンモータは、その送風作用により冷気を庫内に循環供給するようにしている。そして、最近のファンモータでは、庫内の設置スペースを考慮して、径方向および軸方向にコンパクト化の改善が見込まれる外転形(アウターロータ形)モータが採用されている。
【0003】
図11は、その一例を示す縦断側面図である。この図11に示すファンモータは、大略的には、ケーシング1、このケーシング1に取付けられる後部軸受組立2、この後部軸受組立2に取付けられるステータ3、このステータ3に取付けられる前部軸受組立4、前記両軸受組立2,4に回転自在に支持されるモータ軸5を中心部に有するロータ6、およびロータ6の外周囲に一体的に設けられたファン部7を備えた構成としている。
【0004】
更に、今少し具体的に述べると、前記ロータ6はステータ3の外周囲に配設され、円筒カップ状をなす亜鉛メッキ鋼板製のロータヨーク8と、このロータヨーク8の内周面に取付けられた例えば12極のロータマグネット9とから構成されている。このロータマグネット9は、ロータヨーク8の内周面に、その後端側から挿入され固定されている。そして、ロータヨーク8の一端中心部に、前記モータ軸5の一端部が圧入により固着されている。このように構成されたロータ6は、モータ軸5が、前記前部軸受組立4および後部軸受組立2に回転可能に支持され、ロータマグネット9が前記ステータ3に対し僅かなギャップを存して対向配置され、以ってアウターロータ形の所謂外転形マグネットモータ10を構成している。
【0005】
一方、前記ファン部7は、合成樹脂材料からなり、まず前記ロータヨーク8を図示しない成形金型内にインサートしておき、溶融材料を注入し成形することにより一体的に形成されている。このファン部7は、主として、ロータヨーク8の外周囲を覆うファン基部7aと、径方向に延出された例えば3枚の羽根部7bとから構成されている。
尚、羽根部7bが回転駆動されたとき、送風方向は矢印Wで示す向き(図示右方)に流れるように構成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記のように外転形マグネットモータ10を用いて、そのロータ6と一体的にファン部7を形成した構成にあっては、回転駆動時に生ずるロータ6側からの振動、或いは逆にファン部7側からの振動が互に直に伝達することとなり、特に共振状態の場合には外転形モータ10に与える影響も大きく、騒音問題延いてはファンモータ全体の耐久性にも影響を及ぼすことになる。
【0007】
そこで、特に振動の発生を極力小さく抑える必要があるが、上記構成ではモータ軸5の組立精度の確保が難しく且つ安定し難い。これは、ロータマグネット9のロータヨーク8内面への位置決めを含む組立作業が容易でないばかりか、これに更にファン部7が付加された構成体に対してモータ軸5を圧入して固着する構成で、所謂組立部品が多くてそれだけ誤差も出易い。従って、回転するファン部7、ロータヨーク8、ロータマグネット9およびモータ軸5の軸心度を高精度に得ることは難しく且つこれら全体の回転バランスの調整を行うことも面倒であると共に、安定化した品質を得ることも難しいなどの理由から振動を小さく抑えることは困難であるとする問題を有していた。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外転形マグネットモータにプラスチックマグネットを用いて、部品点数を減らすと共に、モータ軸の組立精度を高め得るなどして、振動および騒音の低減に寄与できるファンモータを提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のファンモータは、ステータの外周囲に、ロータマグネットを配した外転形マグネットモータにあって、前記ロータマグネットをプラスチックマグネットにて構成し、このプラスチックマグネットの外周囲に熱可塑性樹脂によりファン部を一体的に設けるとともに、このファン部の熱可塑性樹脂の成形収縮率を前記プラスチックマグネットより大きくしたことを特徴とする(請求項1の発明)。
【0010】
斯かる構成によれば、部品点数の低減ができるから、その軸心調整はプラスチックマグネットとファン部の両部品の精度のみにて管理でき、従って高精度の軸心バランスを容易に得られて振動および騒音を低減でき、しかも、成形後のファン部は内側のプラスチックマグネットを圧縮する如く保持するので両者の結合が確実となり、それだけ組立作業も簡便にできて品質の安定化と共に、コスト的にも有利なファンモータを提供できる。
【0012】
また、請求項1記載のものにおいて、プラスチックマグネットの外周面には凹凸部を形成したことを特徴とする(請求項2の発明)。
【0013】
斯かる構成によれば、成形後のファン部は、内側のプラスチックマグネットを圧縮保持するに加えて、そのプラスチックマグネットの外周面に設けた凹凸部により両者は一層強固に結合されるので、これらの接合間での滑り(空回り)の発生はなく、所謂堅固な回り止め機能が得られる。
【0016】
また、請求項1記載のものにおいて、プラスチックマグネットは、そのマグネット内部で磁路を形成するよう異方化し、バックヨークをなくしたことを特徴とする(請求項3の発明)。
【0017】
斯かる構成によれば、ステータとで磁路を構成して、プラスチックマグネットの外周に漏れ磁束がなく、従って、異物(磁性体)の付着がなく且つロータヨーク(バックヨーク)が不要となり、簡易な構成にて外転形マグネットモータ本来のコンパクト化を効果的に達成できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を示す図1ないし図10を参照して説明する。
まず、図1および図2は、ファンモータの全体構成を示す縦断側面図および背面図である。これら図面に基づき、その構成につき大略的に述べると、ケーシング11と、このケーシング11に取付けられる後部軸受組立12と、この後部軸受組立12に取付けられるステータ13と、このステータ13に取付けられる前部軸受組立14と、前記両軸受組立12,14に回転自在に支持されるモータ軸15を中心部に有するロータマグネットたるプラスチックマグネット16と、および、このマグネット16の外周囲に設けられたファン部17とを備えた構成としている。
【0019】
このうち、詳細は後述するが上記プラスチックマグネット16は、上記ステータ13の外周に僅かのギャップを存して対向配置され、以って外転形マグネットモータ18を構成しており、斯かるプラスチックマグネット16は従来構成のロータ全体構造を兼ねた構成としている。
【0020】
そして、まず上記ケーシング11は、例えばPBT(ポリブタジエンテレフタレート)等の合成樹脂からなり、中心部の後面(図1の右側の面)が開放した薄形の円筒状部11aを有すると共に、その外周部には、特に図2に明示するように放射方向に延びる4本のモータ支え11bがほぼ90度間隔で一体に設けられ、更にその外周部に短円筒状のベルマウス11cが一体に設けられている。また、このベルマウス11cの外周部3箇所には、図示しない冷蔵庫の庫内に取付けるためのリング状の取付部11dを一体に形成している。
【0021】
しかるに、このケーシングの円筒状部11aには前記後部軸受組立12が嵌合取着される構成にあって、亜鉛メッキ鋼板からなり前記モータ軸15を挿通する筒状のブラケット19と、その内方後部に装着された焼結メタルからなる軸受20と、潤滑油が充填された含油フェルト21等を具備してなり、その後面開口部は、適宜の蓋部材22により塞がれている。尚、この蓋部材22の内面中心部において、前記モータ軸15の先端を受ける構成としている。
斯くして、後部軸受組立12は、前記ケーシング11内に、後ろ側から密に嵌め込まれて、そのブラケット19が圧入されるようになっている。
【0022】
また、前記ステータ13は、概述すると中心に軸方向に貫通する穴を有するステータコア13aに巻線23を巻装し、これをコネクタ部24と共に合成樹脂(PBT)のモールド体25によりモールド成形された構成としている。そして、このモールド体25の後端部を前記ケーシング11に係合し、且つステータコア13aの中心の穴が前記ブラケット19に圧入嵌合することにより、後部軸受組立12とステータ13とが、ケーシング11を両側から挟み付けるようにして強固に固定される構成となっている。
【0023】
一方、前記前部軸受組立14は、上記した後部軸受組立12とほぼ対称的に同等の構成を有しており、従って、筒状のブラケット26、焼結メタルからなる軸受27、含油フェルト28および蓋部材29等を備えた構成にある。但し、この前部軸受組立14では、モータ軸15は完全に貫通して挿通せられている。そして、上記と同様に この前部軸受組立14のブラケット26をステータコア22の貫通穴に圧入嵌合され、該ステータ13に固定されるようになっている。
尚、上記両軸受組立12,14の各ブラケット19,26の端部間には、例えばナイロン材料からリング状に形成された抜止め部材30が介在され、後述するがモータ軸15の抜止めの機能を果たすようになっている。
【0024】
そして、上記ステータ13および前部軸受組立14を覆うようにして、前記したロータマグネットとしてのプラスチックマグネット16が設けられ、中心部には前記モータ軸15を一体的に取付けている。以下、このプラスチックマグネット16の具体的構成につき述べると、特に図3および図4に、モータ軸15を具備したプラスチックマグネット16の縦断側面図および正面図を夫々示すように、全体形状としては軸方向の一端側がほぼ閉塞された概ねカップ状をなし、これはフェライトなどの磁性粉末に結合材として例えばナイロン系合成樹脂を添加した材料を、後述する射出成形により形成したもので、このとき同時にモータ軸15をインサート成形することで組立固定している。
【0025】
しかるに、プラスチックマグネット16の具体的形状としては、一端の閉塞端部16aと、これに連続する筒部16bとから構成されるカップ状をなし、その閉塞端部16aの中心にはモータ軸15をインサートにより埋設したボス部16cを有している。そして、筒部16bには、後面の開口端側の右半部を厚肉部31とし、残り左半部の外周面には径方向に段差をなす凹凸部32(特に図3,4参照)を形成しており、前者の厚肉部31には所定の極数、例えば8極の磁極が後述する方法にて着磁されている。また、本構成では上記閉塞端部16aの前面にも浅い環状の凹溝33が形成してある。
尚、モータ軸15は、例えばSUS材料からなり、途中部に径小部15aを形成しており、また、上記ボス部16cに埋没する端部には、特に図5の断面図に示すように径方向に切除した切欠部15bを形成している。
【0026】
斯かる構成のプラスチックマグネット16を一体成形するに際し、前記ファン部17がインサート成形される(詳細は後述する)。このファン部17の構成は、図6に示すように例えばポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなり、主としてファン基部17aと例えば3枚の羽根部17bとから構成されている。特に、ファン部17を構成するうち羽根部17bを除く部分が、上記ファン基部17aに相当するもので、前記プラスチックマグネット16の外周囲を覆うように形成されており、従って、やはり概ねカップ状に形成される。そして、成形後にあっては、プラスチックマグネット16に形成された前記凹溝33、および凹凸部32に流入した溶融樹脂が冷却固化されることによって、両者を強固に結合すると共に、ファン部17の回転方向への回り止めの機能を果たす。
【0027】
但し、ファン基部17aの後面である開口端側の図示右半部は、前記プラスチックマグネット16の厚肉部31の外周囲と隙間34を存して位置し、密着しない形態に覆っている。この場合、厚肉部31の軸方向長さL1に対し、隙間34の軸方向長さL2が長くなる構成とし、この隙間34の長さL2にほぼ相当する部位を径方向に延出した羽根部17bの根元部としている。また、ファン基部17aの中心部の突部17cは、モータ軸15の先端部をプラスチックマグネット16のボス部16cと共に隠蔽している。このようにして構成されたファン部17は、これが回転駆動されると図1中に矢印Wで示す向き、つまり、プラスチックマグネット16の軸方向の一端側である前端側から他端側である後端側に向けて、風が発生するように構成されている。
【0028】
このようにして、図6に示す通り一体的に構成されたプラスチックマグネット16、ファン部17、およびモータ軸15からなる構成体は、そのモータ軸15を、図1に示す如く前記前部および後部軸受組立14および12内に挿入されることで組立てられる。即ち、前部軸受組立14の軸受27を貫通して、更に奥方まで挿入していくことにより前記した抜け止め部材30を挿通した後、後部軸受組立12の軸受20を貫通し、その先端が蓋部材22に当接してスラスト支持されるまで圧挿されることにより組込まれる。
尚、上記モータ軸15を挿入する場合、モータ軸15が抜止め部材30の開口部を押し広げながら挿入され、その組込み状態では、抜止め部材30がモータ軸15の径小部15aに嵌合した状態となり、以って一旦組込まれると、抜止め部材30によりモータ軸15は簡単には抜けない抜け止め構成とされている。
【0029】
斯くして、ファン部17およびプラスチックマグネット16と一体化されたモータ軸15は、前部と後部の2個の軸受27,20に回転可能に支持され、ロータマグネットたるプラスチックマグネット16は、その筒部16b内周面がステータ13を近接した状態で覆い、具体的には、少なくとも厚肉部31の軸方向長さL1にほぼ相当する内周面が、前記ステータコア22の外周面と僅かなギャップを存して対向するように配設されている。
【0030】
しかして、上記したファン部17,プラスチックマグネット16およびモータ軸15を一体化する成形手段につき、図7,8を参照して説明する。この図7および図8は、一つの成形金型35の概略構造を示す縦断面図にあって、その成形過程を説明するための異なる状態を示したものである。この金型35は、図示左側が固定型35a、右側が可動型35bで、特に本実施例では一つの金型35の内部の上下部において、異なる形態の成形を同時に可能とした第1の成形部36および第2の成形部37を設けている。従って、型締めにより形成されるキャビティ38,41に連通する湯道39,42およびゲート40,43を、夫々固定型35aの上下部に形成している。
【0031】
因みに、第1の成形部36ではプラスチックマグネット16の成形を行うと同時に、モータ軸15のインサート成形を行い、一方、第2の成形部37では、上記第1の成形部36での成形に続く成形工程におけるファン部17を成形するようにしている。従って、これらファン部17およびプラスチックマグネット16等の成形品はいずれもカップ状をなしているから、型締めの際、一方の可動型35bを雄型として固定型35aに嵌合する構成としている。また、可動型35bには、モータ軸15をインサート成形するため、および該モータ軸15を位置決めの衝として固定支持する軸支部44,45を有している。
【0032】
更に本実施例では、上記第1の成形部36において、プラスチックマグネット16を成形する際、併せてこの金型35内で該マグネット16に異方性配向の磁路を形成するようにしている。そのため、磁場形成用マグネット46を可動型35bに設けており、これはプラスチックマグネット16の厚肉部に対応して配設されている。
【0033】
斯かる構成の成形金型35において、図7を参照して上部の第1の成形部36におけるプラスチックマグネット16の成形手段につき述べるに、まず同時にインサート成形するモータ軸15を可動型35bの軸支部44の所定位置に保持固定する。そして、型締めした後、ゲート40および湯道39から溶融材料(ナイロン系磁性粉末)を注入してキャビティ38内に充填する。これにより、図8に示すように第1の成形部36では、カップ状のプラスチックマグネット16が形成され、同時に、そのボス部16cにモータ軸15の前端側の一端が埋設され、所謂インサート成形される。
【0034】
この場合、モータ軸15の埋設された端部には、図3,5等に示した切欠部15bが形成されているので、成形後のプラスチックマグネット16が冷却固化することにより、該モータ軸15は抜けたり空回りすることなく強固に固定される。そして、モータ軸15は軸支部44を介して可動型35bの所定位置に倒れたりすることなく確実に保持固定される。従って、プラスチックマグネット16(キャビティ38)の中心位置に設定支持された状態でインサート成形されるので、プラスチックマグネット16との軸心がずれたりすることなく高精度のもとに一体化(組立)される。
【0035】
併せて、キャビティ38内に充填された磁性粉末等の溶融材料は、特に厚肉部31に対応して磁場形成用マグネット46より発生する磁束の流れ方向に配向して異方性処理が行われる。即ち、図9,10は、その作用を説明するため図8のB−B線に沿って切断して示す要部の拡大断面図で、図9に示すように磁場形成用マグネット46のN,S極を介してプラスチックマグネット16の厚肉部31との磁場中において磁路が形成され、成形中の溶融材料の磁性粒子がこの磁路に沿って揃えられ異方性配向がなされる。
【0036】
これにより、プラスチックマグネット16の厚肉部31には、その磁路の一部である図9の破線で示した矢印方向の磁路47a,47b,47c…が形成される。このように厚肉部31は、内部に十分な磁路47a等が形成される厚さ寸法となしている。尚、図10は、上記工程を経て成形された後のプラスチックマグネット16に対し、必要に応じ一旦脱磁した後、周知の着磁装置によって所定の、本実施例では、極数が8極に着磁された形態を示したもので、この場合、上記成形時に形成された磁路47a等と同じ方向で磁束が揃っている。
【0037】
従って、本構成によれば内方に配置されるステータ13との間で磁路が形成でき、従来のロータヨーク(バックヨーク)を不要とする外転形マグネットモータ18が構成できる。
【0038】
一方、先の図7,8において、成形金型35の下部における第2の成形部37では、第1の成形部36で成形された後のプラスチックマグネット16が改めて金型35内に装着されていて、ファン部17が成形される。即ち、第1の成形部36にてモータ軸15を組込み成形されたプラスチックマグネット16を、型開きして図示しないロボットのチャックアーム等を利用して取り出し、そして下部の第2の成形部37に装着する。この場合、第2の成形部においても可動型35bの軸支部45にモータ軸15を衝として保持固定させる。
【0039】
しかる後、再び型締めすると共に溶融材料をゲート43および湯道42を介してキャビティ41内に充填することにより、図8に示す如くプラスチックマグネット16の外周囲にファン部17がアウトサート成形される。換言すれば、ファンブ17を成形するに際し、プラスチックマグネット16をインサート成形することである。この場合、ファン部17の材料である熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)の成形収縮率がプラスチックマグネット16の材料より大きいため、成形後においてファン部17はプラスチックマグネット16に対し、これを圧縮するように接合する。従って、これらファン部17およびプラスチックマグネット16間にあっては、その外周面の凹凸部32、更には凹溝33に溶融材料が流入して一層強固に結合される。
【0040】
このように、第1,第2の成形部36,37にて同時にプラスチックマグネット16およびファン部17が成形され、即ち、モータ軸15をインサートしたプラスチックマグネット16、およびファン部17の組立が一つの金型35内にて簡単にできると共に、これら3者の軸心も高精度に維持した状態で一体化構成できる。
斯くして、上記構成からなるファンモータ(図1,2参照)は、その取付部11dを介して、例えば図示しない冷蔵庫の庫内に組込まれ、庫内における冷気循環用として使用されるものである。
【0041】
このように、本発明は上記実施例によれば次のような効果を有する。
今、図1に示すステータコイル23に通電し、ロータマグネットとしてのプラスチックマグネット16を回転させる。即ち、外転形マグネットモータ18が通電駆動され、これによりファン部17も一体に回転し、冷気が矢印W方向に送風される。このようにモータ18が回転駆動されると、ステータ13と着磁されたプラスチックマグネット16の厚肉部31との間に作用する電磁力により吸引力や反発力が発生し、これに基づき振動が発生する。特に本構成では、従来のロータヨークが存在せず、その振動が、プラスチックマグネット16から直にファン部17へと伝播する構成にある。
【0042】
しかるに本実施例によれば、厚肉部31の外周囲と羽根部17bの根元にあたるファン基部17aとは隙間34を存して設けられているから、振動伝播を有効に低減できる。このことは、ファン部17の3枚の羽根部17bからの送風抵抗とか、共振現象に伴う振動が発生した場合においても、同様に振動伝播を遮断し低減するのに有効である。
【0043】
加えて、特に本実施例によれば、モータ軸15、ロータマグネットとしてのプラスチックマグネット16およびファン部17の共通の軸心を高精度に確保でき、低振動のファンモータを得ることができる。即ち、前述した図11に示した従来構成では、ロータマグネット9を組込んだロータヨーク8(ロータ6)に対し、モータ軸5を圧入すると共に、ファン部7の成形時にインサート成形して一体化しているため、部品点数が多くて部品精度のばらつきや組立誤差が大きい。また組立作業も面倒で、これら部品を同軸心に組込む精度の確保が難しく、そのためアンバランスによる振動および騒音を低減するに苦慮していた。
【0044】
これに対し、本実施例では、モータ軸15、プラスチックマグネット16およびファン部17の3点からなり、所謂従来のロータヨーク8の部品を削減するのみならず、図7,8に示すようにこれら3部品を成形金型35を用いた成形手段にて容易に組立でき、且つ型成形により精度良く構成できると共に、特に軸心となるモータ軸15を衝としてインサート成形等行うので、一層軸心精度の優れたファンモータが得られる。しかも、モータ軸15の端部の切欠部15bがプラスチックマグネット16のボス部16c内に埋設されるので、該モータ軸15の倒れや回動することがない確実な位置固定ができる。
従って、本実施例によれば部品精度および組立精度等に起因するアンバランスによる振動に対し、大幅な改善ができてファンモータ全体の振動や騒音の低減が図れる。勿論、部品点数も少なく組立作業も簡便にでき、対アンバランス調整作業も軽減されることからコスト的にも有利で、安定した品質を確保できる。
【0045】
また、熱可塑性樹脂のファン部17を成形する際に、プラスチックマグネット16をインサート成形しているが、このファン部17材料の熱収縮率がプラスチックマグネット16の材料(例えば、ナイロン系磁性材料)より大きいので、成形後の収縮により内部のプラスチックマグネット16に対して圧縮し接合する方向に作用し、しかも、この接合するプラスチックマグネット16の外周面に凹凸部32を形成しているので、強固な結合状態を得てファン部17と該マグネット16間に滑り(空回り)が生ずるようなおそれもない。
【0046】
そして、プラスチックマグネット16は、そのマグネット16内部とする厚肉部31内に異方化処理した磁路47a,47b,47c…(図9参照)を形成するようにしたので、従来の如きロータヨーク(バックヨーク)がなくても漏れ磁束がなく、ステータ13との間で必要な磁路が構成できて、簡易な構成にて一層のコンパクト化が図れる外転形マグネットモータ18を得ることができる。
しかも、ファン部17とプラスチックマグネット16とが一体的に連結されて振動が直に伝わる構成でありながら、上記の如く軸心バランスが高精度であるなど振動量を小さく抑えることができて、実用に供し得るファンモータを提供できる。
尚、本発明は、上記し図面に示した上記実施例に限定されるものではなく、実施に際して要旨を逸脱しない範囲内にて具体形状など設計的に種々変更して実施できるものである。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、以上の説明から明らかなように、外転形マグネットモータにあって、そのロータマグネットをプラスチックマグネットにて構成し、このプラスチックマグネットの外周囲に熱可塑性樹脂によりファン部を一体的に設けるとともに、このファン部の熱可塑性樹脂の成形収縮率を前記プラスチックマグネットより大きくしたものである。
これにより、部品点数が低減できて軸心調整はプラスチックマグネットとファン部の両部品の精度のみにて管理できるので、高精度の軸心バランスを容易に得られて振動および騒音を低減でき、更には成形後のファン部は内側のプラスチックマグネットを圧縮する如く保持するので両者の結合が確実となり、組立作業も簡便にできて品質の安定化と共に、コスト的にも有利なファンモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す全体構成の縦断側面図
【図2】全体の背面図
【図3】モータ軸を有するプラスチックマグネットの縦断面図
【図4】図3の正面図
【図5】図3のA−A線に沿って切断したモータ軸の断面図
【図6】成形を終えた要部の縦断側面図
【図7】成形金型の概略構成と成形過程を説明するための縦断面図
【図8】図7と異なる過程を説明するための縦断面図
【図9】図8のB−B線に沿って切断して示す要部の拡大断面図
【図10】図9の異なる態様における要部の拡大断面図
【図11】従来例を示す図1相当図
【符号の説明】
11はケーシング、13はステータ、15はモータ軸、15bは切欠部、16はプラスチックマグネット(ロータマグネット)、16aは閉塞端部、16bは筒部、17はファン部、17aはファン基部、17bは羽根部、18は外転形マグネットモータ、31は厚肉部、32は凹凸部、35は金型、35aは固定型、35bは可動型、36は第1の成形部、37は第2の成形部、46は磁場形成用マグネット、および47a,47b,47c…は磁路を示す。
Claims (3)
- ステータの外周囲に、ロータマグネットを配した外転形マグネットモータにあって、
前記ロータマグネットをプラスチックマグネットにて構成し、このプラスチックマグネットの外周囲に熱可塑性樹脂によりファン部を一体的に設けるとともに、このファン部の熱可塑性樹脂の成形収縮率を前記プラスチックマグネットより大きくしたことを特徴とするファンモータ。 - プラスチックマグネットの外周面には凹凸部を形成したことを特徴とする請求項1記載のファンモータ。
- プラスチックマグネットは、そのマグネット内部で磁路を形成するよう異方化し、バックヨークをなくしたことを特徴とする請求項1記載のファンモータ。
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