JP3679964B2 - 柱状体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、支持杭、地滑り抑止杭、土留め柱列杭、構造体の柱等に使われる柱状体に関し、詳しくは、一方の柱状体に筒部を設けると共に、他方の柱状体端部に軸部を設けて、柱状体軸芯方向で隣り合う柱状体の前記筒部と前記軸部とを嵌合自在に構成し、前記筒部の筒部内周面部に、周方向に沿う内向き溝部を形成すると共に、前記軸部の軸部外周面部に、周方向に沿う外向き溝部を、その軸部外周面部に嵌合した前記筒部内周面部の前記内向き溝部に対向するように形成し、前記内向き溝部と前記外向き溝部とに跨ってキー部材を嵌め込んで、互いに嵌合した隣り合う柱状体の前記筒部と前記軸部とを抜け止め状態で接続自在に構成してあるキー連結部を備えた柱状体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の柱状体としては、図8に示すように、互いに嵌合した柱状体A1,A2に対して縦断面上で作用する軸方向力の作用線S上よりも柱状体A1,A2の径方向内側にキー連結部Rが配置形成されたものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の柱状体によれば、キー連結部Rを、互いに嵌合した柱状体A1,A2に対する縦断面上で作用する引き抜き力の作用線S上よりも柱状体の半径方向内側に配置形成されてあるため、例えば、柱状体A1,A2に引き抜き力が作用したときには、図6(ロ)の作用説明図に示すように、キー連結部Rに対して引き抜き力がズレた位置で作用するため、キー18に回転モーメントが作用して外れ易くなり、筒部端部1TではB方向に曲げモーメントが働いて筒部端部1Tが外側に変形し易くなると共に、軸部端部2TではA方向に曲げモーメントが働いて軸部端部2Tが内側に変形し易くなる。このとき、引き抜き力が強く作用して上記両モーメントが大きく働いた場合には、内向き溝部6と外向き溝部12とに跨って嵌め込んであるキー部材Kの係合が外れて、筒部1と軸部2との接続が解除される虞があった。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、柱状体に引き抜き力が強く作用したとしても、筒部端部及び軸部端部が変形するのを防止して、内向き溝部と外向き溝部とに跨って嵌め込んであるキー部材の係合が外れるのを防止し、筒部と軸部との接続が解除される虞のない柱状体を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕
請求項1の発明の特徴構成は図1,4〜6(イ)に例示するごとく、一方の柱状体に筒部1を設けると共に、他方の柱状体端部に軸部2を設けて、柱状体軸芯X方向で隣り合う柱状体A1,A2の前記筒部1と前記軸部2とを嵌合自在に構成し、前記筒部1の筒部内周面部4に、周方向に沿う内向き溝部6を形成すると共に、前記軸部2の軸部外周面部10に、周方向に沿う外向き溝部12を、その軸部外周面部10に嵌合した前記筒部内周面部4の前記内向き溝部6に対向するように形成し、前記内向き溝部6と前記外向き溝部12とに跨ってキー部材Kを嵌め込んで、互いに嵌合した隣り合う柱状体A1,A2の前記筒部1と前記軸部2とを抜け止め状態で接続自在に構成してあるキー連結部Rを備えた柱状体であって、互いに嵌合した隣り合う柱状体A1,A2に対して縦断面上で柱状体壁部に作用する軸方向力の作用線S上に、前記キー連結部Rを配置形成すると共に、前記キー部材とは別体で前記筒部1と前記軸部2との柱状体軸芯X周りの相対回転を防止する回転抑止キー20を、前記筒部1と前記軸部2との嵌合面より柱状体径方向での外側で、且つ、前記キー部材と柱状体軸芯方向に位置ずれさせた位置に、前記筒部1と前記軸部2とにわたって嵌合自在に設けてあるところにある。
【0006】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【0007】
〔作用及び効果〕
請求項1の発明により、互いに嵌合した隣り合う柱状体に対して縦断面上で柱状体壁部に作用する軸方向力の作用線上に、前記キー連結部を配置形成してあるから、柱状体に引き抜き力が作用したとしても、筒部端部及び軸部端部が変形するのを防止することができるようになった。
つまり、本件だと、例えば、柱状体に引き抜き力が作用したときには、図6(イ)の作用説明図に示すように、キー連結部Rに対して引き抜き力が真っ直ぐに作用し、従来例のごとく、筒部端部1Tが外側へ変形するモーメントや、軸部端部2Tが内側へ変形するモーメントが働き難くなるから、内向き溝部6と外向き溝部12とに跨って嵌め込んであるキー部材Kの係合が外れるといった心配がない。
その結果、引き抜き力が強く作用したとしても、筒部と軸部との接続が解除される虞のない柱状体を提供することができるようになった。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について柱状体の一例である鋼管製の支持杭について図面を参照して説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0009】
図1 、4に示すように、A1は上支持杭、A2は下支持杭である。上支持杭A1には、下支持杭A2と結合される下端に雌形の筒部1が溶接3により下方に突出して設けられ、また、下支持杭A2には、上支持杭A1と結合される上端に、上記筒部1に貫入、嵌合する軸部2が溶接3により上方に突出して設けられている。
【0010】
前記筒部1は、内径が上支持杭A1、下支持杭A2の管厚中心径と略同径とした筒状をなしており、その内面は後述する軸部2が嵌合する筒部内周面部4に形成されているとともに、その筒部内周面部4における筒部1の基端側に形成の段部1Dには、周溝5が設けられている。そして、前記筒部内周面部4には、上下に間隔をおいて断面方向に複数の内向き溝部6が周設されている。また、筒部1の下端には、周方向に間隔をおいて複数の切欠部7が設けられている。
【0011】
前記軸部2は、外径が上支持杭A1、下支持杭A2の外径と同径な部分と前記外径よりも径方向外方に膨出させた部分とで形成された基軸部8に続き、外周が上支持杭A1、下支持杭A2の管厚中心径と略同径とした前記筒部1の筒部内周面部4と係接する軸部外周面部10に形成した嵌挿部9により形成され、軸部先端部2Sには筒部1の周溝5と嵌合する突条11が設けられている。そして、嵌挿部9外周の軸部外周面部10には、筒部1の内向き溝部6と対応する位置に外向き溝部12が周設されている。また、基軸部8の上部には、筒部1の筒部先端部1Sと接合する接合凹部13が周設されているとともに、その周方向に間隔をおいて、筒部1の切欠部7と対応する位置に、切欠部7と同じ厚さで上下に所要の深さを有する切欠凹部14が設けられ、各切欠凹部14の奥壁部には複数のネジ孔15が設けられている。
【0012】
そして、図1,2,4に示すように、上記の各内向き溝部6には、筒部1の外周より、周方向に間隔をおいて複数設けられたネジ孔16が連通されているとともに、その内向き溝部6内には、ネジ孔16に螺合させた、セットボルト17の操作によって、内向き溝部6内から、嵌挿部9の外向き溝部12内と内向き溝溝6内に跨る位置まで移動可能な円弧キー18(キー部材Kの一例)が収容されている。この円弧キー18を移動させる構造は、例えば図5に示すように、セットボルト17により行う。セットボルト17は、その基端部にネジ孔16と螺合する右ネジの頭部17aを有し、先端部に円弧キー18に設けた左ネジ(逆ネジ)と螺合する尾部17bを有しており、セットボルト17を正(右)回転させてネジ込めば円弧キー18が前進し、逆(左)回転させれば円弧キー18が後退するようになっている。なお、円弧キー18を移動させる構造はこれに限定されるものではない。
【0013】
また、支持杭を埋設する際に、中堀工法、ソイルセメント合成杭工法、回転埋設杭工法等の支持杭を回転圧入により沈設する工法や沈設にあたって支持杭に回転を与えるその他の工法においては、図1,3,4に示すように、上支持杭A1の筒部1と下支持杭A2の軸部2との相対回転を防止するための回転抑止キー20を設ける。
前記回転抑止キー20は、図7に示すように、筒部1の切欠部7と軸部2の切欠凹部14とにわたって嵌合する形状に形成するとともに、切欠凹部14に設けられたネジ孔15と対応する位置にボルト挿通孔21を設ける。
【0014】
上支持杭A1と下支持杭A2とを縦継ぎするには、上支持杭A1をクレーンで吊り上げ、下支持杭A2の直上に運んで吊り降ろし、筒部1の中に軸部2を挿入して行けば、筒部1の周溝5と軸部2の軸部先端部2Sの突溝11とが接合すると共に、筒部1の筒部先端部1Sと接合凹部13とが接合し、上支持杭A1と下支持杭A2とが嵌合されることになる。そして、上支持杭A1の回転調整により、筒部1 の切欠部7を軸部2の切欠凹部14に合致させる。
【0015】
その後は、切欠部7と切欠凹部14にわたって回転抑止キー20を嵌め込み、取付ボルト22をネジ孔15にネジ込んで固定する。それにより上下両支持杭A1、A2は相対回転不能に結合されることになる。続いて、セットボルト17を螺進させて、内向き溝部6に収まっている円弧キー18を外向き溝部12に向けて押し入れてやる。それによって、円弧キー18は図5の鎖線で示すように両溝部6,12に跨って係合することになり、両柱状体A1、A2は円弧キー18を介して軸芯X方向への抜き差しが不能に結合されることになる。
【0016】
この円弧キー18を介しての結合では、引き抜き力は内向き溝部6にある両溝側壁のうち、軸芯X方向における筒部先端側の溝側壁から円弧キー18を介した剪断力として外向き溝部12の軸芯X方向における軸部先端側の溝側壁に伝達される。また、圧縮力は内向き溝部6にある両溝側壁のうち、軸芯X方向における筒部基端側の溝側壁から円弧キー18を介した剪断力として外向き溝部12の軸芯X方向における軸部基端側の溝側壁に伝達される。
このとき、図1に示すように、内向き溝部6と外向き溝部12とに跨って円弧キー18を嵌め込んだキー連結部Rが、互いに嵌合した隣り合う支持杭A1,A2に対して縦断面上で作用する軸方向力の作用線S上に配置形成されているため、支持杭A1,A2に引き抜き力が作用したときには、図6(イ)の作用説明図に示すごとく、キー連結部Rに対して引き抜き力が真っ直ぐに作用し、図8、及び図6(ロ)に示す作用説明図に示す従来例のごとく、筒部端部1Tが外側へ変形するモーメントや、軸部端部2Tが内側へ変形するモーメントが働き難くなるから、内向き溝部6と外向き溝部12とに跨って嵌め込んである円弧キー18にも回転モーメントが発生しないので、係合が外れるといった心配がなくなる。
尚、軸方向力が作用する方向を、便宜上作用線Sと記載したが、互いに嵌合した隣り合う支持杭A1,A2に対する縦断面上において線状に見えるだけであって、柱状体の横断面上において、柱状体の肉厚内の略中央に、ある程度の巾を有した支持杭の形状に沿った連なりとして存在するものである。
【0017】
〔別実施形態〕
以下に他の実施形態を説明する。
〈1〉キー部材Kは先の実施形態で説明した円弧キー18に限るものではなく、例えば、C形状の弾性リングキーを、内向き溝部もしくは外向き溝部内に収容しておき、筒部と軸部との嵌合操作に伴って、内向き溝部と外向き溝部に跨る状態に嵌入する構成のものにおいても本発明は適用可能である。
〈2〉キー部材の数、及び、そのキー部材に対応する内向き溝部と外向き溝部の数は先の実施形態で説明した夫々2つづつ設けた構成のものに限るものではなく、1つ以上であればその数は任意である。
〈3〉上記実施形態では柱状体を回転圧入により沈設する工法や、沈設にあたって柱状体に回転を与えるその他の工法において、上下両柱状体の相対回転を抑止する回転抑止キーを設けた例について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、地中に形成した縦穴に落とし込む地滑り抑止杭や、建て込みに使用する構造体の柱等のように回転抑止キーを設ける必要のないものにも適用できる。つまり、キー部材で連結した柱状体において、引き抜き力が作用するものに対して本発明は適用可能であり、その他の構成は任意である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1 実施例を示す半部截断側面図
【図2】図1 イ−イ線の半部平断面図
【図3】図1ロ−ロ線の半部平断面図
【図4】上柱状体と下柱状体の端部を離して示した半部側断面図
【図5】円弧キーによる係合部分の拡大側断面図
【図6】キー連結部における作用説明図
【図7】回転抑止キーによる係合部分を示す斜視図
【図8】従来例を示す半部截断側面図
【符号の説明】
1 筒部
2 軸部
4 筒部内周面部
6 内向き溝部
10 軸部外周面部
12 外向き溝部
R キー連結部
K キー部材
X 軸芯
A1 上柱状体
A2 下柱状体
Claims (1)
- 一方の柱状体に筒部を設けると共に、他方の柱状体端部に軸部を設けて、柱状体軸芯方向で隣り合う柱状体の前記筒部と前記軸部とを嵌合自在に構成し、前記筒部の筒部内周面部に、周方向に沿う内向き溝部を形成すると共に、前記軸部の軸部外周面部に、周方向に沿う外向き溝部を、その軸部外周面部に嵌合した前記筒部内周面部の前記内向き溝部に対向するように形成し、前記内向き溝部と前記外向き溝部とに跨ってキー部材を嵌め込んで、互いに嵌合した隣り合う柱状体の前記筒部と前記軸部とを抜け止め状態で接続自在に構成してあるキー連結部を備えた柱状体であって、互いに嵌合した隣り合う柱状体に対して縦断面上で柱状体壁部に作用する軸方向力の作用線上に、前記キー連結部を配置形成すると共に、前記キー部材とは別体で前記筒部と前記軸部との柱状体軸芯周りの相対回転を防止する回転抑止キーを、前記筒部と前記軸部との嵌合面より柱状体径方向での外側で、且つ、前記キー部材と柱状体軸芯方向に位置ずれさせた位置に、前記筒部と前記軸部とにわたって嵌合自在に設けてある柱状体。
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