JP3678841B2 - 造波装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、造波板によって波を人工的に発生させる造波装置に関し、特に大型の波を発生させることができるようにした造波装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、模型実験などに用いられるこの種の造波装置としては、ピストン型とフラップ型の2種類が知られている(例:特公昭59−13691号、特公平4−20136号公報等)。ピストン型造波装置は、図2に示すように有限長の閉路を形成する水槽1内の一端部側において、造波板2を油圧シリンダ等の駆動装置3によりガイドレール4に沿って一定の周期で平行に往復動させることにより波5を人工的に発生させるようにしたものである。フラップ型造波装置は、造波板2の下端を回動支点として前後方向に一定の周期で傾動させることにより波を発生させるようにしたものである。
【0003】
このようなピストン型やフラップ型の造波板に、振幅a、波周期Tの運動を与えて造波すると、造波板の動きは、
角速度:ω=(2π)/T
位 置:x=a・sinωt
速 度:v=aω・cosωt
加速度:α=−(a・ω2)・sinωt
となる。
ここで、造波板2の前面および背面側に水6がある場合には、造波板2を駆動するために必要な力Fは、規則的な造波を考えると、次式によって表される。
F=Fp・cosωt−(Fl+Fi)sinωt ・・・(1)
ただし、Fは総駆動力、Fpは造波減衰力(水から受ける力)、Flは流体付加質量(水から受ける力)、Fiは造波板の慣性力(造波装置で消費される力)である。
∴ Fmax={Fp2+(Fl+Fi)2}0.5 ・・・(2)
造波板等の動作部分の重量をWo とすると、
であるから、
Fi=Wo ・a・ω2/g ・・・(4)
したがって、
Fmax={Fp2+(Fl+Wo・a・ω2 /g)2}0.5 ・・・(5)
となる。なお、gは重力である。
ただ、このような従来の造波装置では、造波板2の背面側にも水が存在し、そこに不可避的に波を発生させてしまうため、本来的に不必要な動力を費やし、大きな駆動装置が必要である。
【0004】
そこで、このような無駄を動力の損失を少なくするため、水槽と造波板との間を止水装置によって止水し、造波板の背面側に水が回り込まない構造とした造波装置(以下、このような装置を「背面空気式造波装置」という)が中村、鹿島等によって提案されている(第28回海岸工学講演会論文集「海浜変形実験用大型造波水路の建設と計測システム」(1981))。このような背面空気式造波装置においては、造波板の背面側で波を作らないため、Fp,Flは半分で済むが、造波板の前面に静水圧Fsがオフセットとして加わるため、駆動力Fは、
となる。
前記静水圧Fsを相殺するため、中村、鹿島等は図3に示すように静圧シリンダ7によって造波板2の背面側に静水圧Fsと逆方向の力−Fsを作用させ、静水圧Fsとバランスさせるようにしている。なお、8は窒素ガスアキュムレータで、これによってストローク変動に伴う容積変化および供給圧力の変動を補償している。9は油圧ポンプ、10は油圧配管である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示した従来の背面空気式造波装置にあっては、静圧シリンダ7として高圧(概ね140Kg/cm2 以上)の油圧シリンダを使用しているため、シリンダ自体のコストが高く、また大波高の波を発生させる場合、数百にも及ぶ窒素ガスアキュムレータ8を必要とするため、窒素ガスアキュムレータ8を収納する大きな油圧ユニット室を設ける必要があり、装置自体が大型化し製造コストが著しく高くなるという問題があった。
また鉱物油などの油と、窒素ガスの2種類の流体を必要とするばかりか、高圧配管が必要なため、一層コストが嵩み、しかも高圧のためメインテナンスが面倒であるという問題もあった。
そこで、このような問題を解決する方法として、図4に示すように静圧シリンダの代わりに機械的なばね11を用いて造波板2に静水圧Fsと逆向きの力−Fsを作用させるようにした背面空気式造波装置も提案されている。しかしながら、このような装置においては、ばね11自体の製作が面倒であるとともに、静水圧Fsに応じてばね力を可変設定するための張力調整機構を必要とするといった問題があった。
【0006】
本発明は上記した従来の問題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、背面空気式造波装置において、静水圧を空気ばねによって相殺することにより、大波高の波を発生させることができ、また装置の簡素化と製造コストを低減することができるようにした造波装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、水槽内で造波板に往復動を与えて波を発生させる造波装置において、前記造波板と水槽との間を止水して造波板の後面側を水のない空間にし、造波板前面側にのみ静水圧を作用させるとともに、この静水圧に抗する方向に力が作用する空気ばねを設け、この空気ばねを造波板の移動方向に直列に接続された複数個の伸縮自在なベローズで構成し、空気圧縮機に空気配管を介して接続したことを特徴とする。
【0008】
本発明において、空気ばねは造波板の前面に加わる静水圧に抗する方向の力を造波板に作用することで、静水圧を相殺する。ベローズは、造波板の往復動に伴い伸縮する。空気圧縮機は、市販されている低圧のものを使用すればよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る造波装置の概略構成を示す断面図である。なお、従来技術の欄で説明した構成部材等と同一のものについては同一の符号を付し、その説明を省略する。これらの図において、この実施の形態では、水槽1の全長、水深、幅は、それぞれ200m、6m、5mで、その一端部に背面空気式の造波装置20が設けられている。
【0010】
前記造波装置20は、造波時に水槽1の一端部側において、油圧シリンダ等の駆動装置3によりガイドレール4に沿って平行に往復動されるピストン型の造波板2を備えている。この造波板2の両側面および下面と、水槽1の内壁面および底面との隙間は、止水装置21によって止水されることにより、造波板2の背面側には水槽1内の水6が侵入しないようにしている。このため、造波板2の前面側にのみ水6が存在し、背面側には造波板2の往復動を可能にする空気室22が形成されている。造波板2の前面に作用する水6の全圧力の大きさ、すなわち静水圧Fsは90トン、造波板2の重量Woは10トン、最大振幅は±4m、最大速度は2m/sである。前記止水装置21としては、従来から一般に用いられているチューブ式の止水装置が用いられる。このような造波板2は、大きな静水圧Fsに耐え得るようにトラス構造によって補強されるとともに、たとえば4つの空気ばね23によって前記静水圧Fsと等しく向きが反対方向の力(−Fs)が付与されている。各空気ばね23は、造波板2の移動方向に直列に接続された4つの伸縮自在なベローズ23a〜23dからなり、空気圧縮機24に空気配管25を介して接続されることにより、10Kg/cm2 以下の低圧が供給される。また、空気配管25には、空気タンク26、圧力計27、弁28等が接続されている。空気タンク26は、造波板2の往復動に伴う空気ばね23の容積変化および供給圧力の変動を吸収、低減する。空気ばね23による力−Fsは、静水圧Fsに応じて空気圧縮機24から供給される空気圧を調整することにより容易に調整することができる。なお、空気ばね23を構成するベローズの形状、数、大きさ等は、静水圧Fsに応じて変更すればよい。
【0011】
このような構造からなる造波装置20において、波5を発生させるには静水圧Fsに見合う力−Fsを空気ばね23によって圧造波板2に静水圧Fsと逆方向に作用させることにより、造波板2を初期位置に保持する。この場合、造波板2は空気ばね23による力−Fsを増大させると静水圧Fsに打ち勝つため前進し、減少させると後退し、振幅0の位置に設定される。振幅0の位置としては、造波板2の移動ストロクの中央位置、前進位置、後退位置のいずれの位置であってもよい。
次に、この状態より駆動装置3をコンピュータ制御で駆動して造波板2をプログラム中で所定の角速度および振幅で往復動させると、波高Hの波5を発生させることができる。この時、造波板2の駆動力Fは、Fsが相殺される代わりに、造波板2の総重量がWo+Wsに増加するため、
となる。
ただし、Wsは空気ばねの重量である。
【0012】
ここで、空気ばね23を用いると、一般的に造波装置の可動部分の重量増加に伴う機械系慣性力Fiの増加が過大となり、流体力Fp,Flが半分になる利点が生かせなくなるが、きわめて大きな波を発生させる場合は角速度ωが小さくなるため、これが有効であることが判った。すなわち、一般に、波の波高の最大値Hmaxは、砕波が起こるため、波長Lの0.1程度である。波長Lは、周期Tおよび角速度ωから、簡略式で、
造波装置で発生する波の時間は、通常数秒であり、そこで砕波波高を計算すると、次の表のようになる。
【0013】
【表1】
【0014】
通常、造波装置に要求される性能は、周期Tが1ないし2秒で、波高Hが0.3m程度が多いが、波高Hが3mを越えるような大波高の波を発生させる装置では、上記表から明かなように周期Tが4秒ないし6秒となる。
これは、大波高を発生させる場合には、通常の装置に比べて3倍程度長い周期で造波することになる。また、これは上記した(9)式でいうと、(Wo+Ws)・a・ω2/gの項のω2が、小さな波を発生させる場合に比べて1/9程度に小さくなることになる。このことは、Wsの増加重量が造波板を駆動するために大した負担にならなくなることを意味する。
【0015】
また、図3に示した従来の背面空気式造波装置においては、高圧(概ね140Kg/cm2 )の静圧シリンダ7を用いているため、シリンダ自体が高価で、多数の窒素ガスアキュムレータ8を必要とし、装置の製造コストが著しく高くなるが、本発明においては低圧の空気圧縮機24によって10Kg/cm2 程度の低圧を空気ばね23に供給して静水圧Fsとバランスさせればよいので、市販の安価な圧縮機を使用することができ、また、窒素ガスアキュミュレータが不要である。また、低圧を供給さればよいので、空気配管25として低圧用のものが使用でき、さらに低圧であればメインテナンスが容易で、安価に提供することができる。
また、図4に示した機械的なばね11を用いた背面空気式造波装置においては、ばね自体の製作が面倒であるとともに、ばねの張力調整機構を必要とするが、本発明においてはベローズからなる空気ばね23を用いているので、製作が容易で、張力調整機構を必要とせず静水圧Fsに応じて空気力を弁28によって可変するだけでよい。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る造波装置は、水槽内で造波板に往復動を与えて波を発生させる造波装置において、前記造波板と水槽との間を止水して造波板の後面側を水のない空間にし、造波板前面側にのみ静水圧を作用させるとともに、この静水圧に抗する方向に力が作用する空気ばねを設け、この空気ばねを造波板の移動方向に直列に接続された複数個の伸縮自在なベローズで構成し、空気圧縮機に空気配管を介して接続したので、構造が簡単で、安価な低圧の空気圧縮機を使用することができ、製造コストを低減することができる。また、静水圧に応じて空気ばねに供給される空気圧を変えればよいので、装置の取り扱いが簡単かつ容易で、特に大きな波高の波を発生させる場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る造波装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】 従来のピストン型造波装置の断面図である。
【図3】 静圧シリンダを用いた従来の背面空気式造波装置の断面図である。
【図4】 ばねを用いた従来の背面空気式造波装置の断面図である。
【符号の説明】
1…水槽、2…造波板、3…駆動装置、4…ガイドレール、7…静圧シリンダ、8…窒素ガスアキュミュレータ、9…油圧ポンプ、10…油圧配管、21…止水装置、22…空気室、23…空気ばね、23a〜23d…ベローズ、24…空気圧縮機、25…空気配管、26…空気タンク。
【発明の属する技術分野】
本発明は、造波板によって波を人工的に発生させる造波装置に関し、特に大型の波を発生させることができるようにした造波装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、模型実験などに用いられるこの種の造波装置としては、ピストン型とフラップ型の2種類が知られている(例:特公昭59−13691号、特公平4−20136号公報等)。ピストン型造波装置は、図2に示すように有限長の閉路を形成する水槽1内の一端部側において、造波板2を油圧シリンダ等の駆動装置3によりガイドレール4に沿って一定の周期で平行に往復動させることにより波5を人工的に発生させるようにしたものである。フラップ型造波装置は、造波板2の下端を回動支点として前後方向に一定の周期で傾動させることにより波を発生させるようにしたものである。
【0003】
このようなピストン型やフラップ型の造波板に、振幅a、波周期Tの運動を与えて造波すると、造波板の動きは、
角速度:ω=(2π)/T
位 置:x=a・sinωt
速 度:v=aω・cosωt
加速度:α=−(a・ω2)・sinωt
となる。
ここで、造波板2の前面および背面側に水6がある場合には、造波板2を駆動するために必要な力Fは、規則的な造波を考えると、次式によって表される。
F=Fp・cosωt−(Fl+Fi)sinωt ・・・(1)
ただし、Fは総駆動力、Fpは造波減衰力(水から受ける力)、Flは流体付加質量(水から受ける力)、Fiは造波板の慣性力(造波装置で消費される力)である。
∴ Fmax={Fp2+(Fl+Fi)2}0.5 ・・・(2)
造波板等の動作部分の重量をWo とすると、
であるから、
Fi=Wo ・a・ω2/g ・・・(4)
したがって、
Fmax={Fp2+(Fl+Wo・a・ω2 /g)2}0.5 ・・・(5)
となる。なお、gは重力である。
ただ、このような従来の造波装置では、造波板2の背面側にも水が存在し、そこに不可避的に波を発生させてしまうため、本来的に不必要な動力を費やし、大きな駆動装置が必要である。
【0004】
そこで、このような無駄を動力の損失を少なくするため、水槽と造波板との間を止水装置によって止水し、造波板の背面側に水が回り込まない構造とした造波装置(以下、このような装置を「背面空気式造波装置」という)が中村、鹿島等によって提案されている(第28回海岸工学講演会論文集「海浜変形実験用大型造波水路の建設と計測システム」(1981))。このような背面空気式造波装置においては、造波板の背面側で波を作らないため、Fp,Flは半分で済むが、造波板の前面に静水圧Fsがオフセットとして加わるため、駆動力Fは、
となる。
前記静水圧Fsを相殺するため、中村、鹿島等は図3に示すように静圧シリンダ7によって造波板2の背面側に静水圧Fsと逆方向の力−Fsを作用させ、静水圧Fsとバランスさせるようにしている。なお、8は窒素ガスアキュムレータで、これによってストローク変動に伴う容積変化および供給圧力の変動を補償している。9は油圧ポンプ、10は油圧配管である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示した従来の背面空気式造波装置にあっては、静圧シリンダ7として高圧(概ね140Kg/cm2 以上)の油圧シリンダを使用しているため、シリンダ自体のコストが高く、また大波高の波を発生させる場合、数百にも及ぶ窒素ガスアキュムレータ8を必要とするため、窒素ガスアキュムレータ8を収納する大きな油圧ユニット室を設ける必要があり、装置自体が大型化し製造コストが著しく高くなるという問題があった。
また鉱物油などの油と、窒素ガスの2種類の流体を必要とするばかりか、高圧配管が必要なため、一層コストが嵩み、しかも高圧のためメインテナンスが面倒であるという問題もあった。
そこで、このような問題を解決する方法として、図4に示すように静圧シリンダの代わりに機械的なばね11を用いて造波板2に静水圧Fsと逆向きの力−Fsを作用させるようにした背面空気式造波装置も提案されている。しかしながら、このような装置においては、ばね11自体の製作が面倒であるとともに、静水圧Fsに応じてばね力を可変設定するための張力調整機構を必要とするといった問題があった。
【0006】
本発明は上記した従来の問題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、背面空気式造波装置において、静水圧を空気ばねによって相殺することにより、大波高の波を発生させることができ、また装置の簡素化と製造コストを低減することができるようにした造波装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、水槽内で造波板に往復動を与えて波を発生させる造波装置において、前記造波板と水槽との間を止水して造波板の後面側を水のない空間にし、造波板前面側にのみ静水圧を作用させるとともに、この静水圧に抗する方向に力が作用する空気ばねを設け、この空気ばねを造波板の移動方向に直列に接続された複数個の伸縮自在なベローズで構成し、空気圧縮機に空気配管を介して接続したことを特徴とする。
【0008】
本発明において、空気ばねは造波板の前面に加わる静水圧に抗する方向の力を造波板に作用することで、静水圧を相殺する。ベローズは、造波板の往復動に伴い伸縮する。空気圧縮機は、市販されている低圧のものを使用すればよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る造波装置の概略構成を示す断面図である。なお、従来技術の欄で説明した構成部材等と同一のものについては同一の符号を付し、その説明を省略する。これらの図において、この実施の形態では、水槽1の全長、水深、幅は、それぞれ200m、6m、5mで、その一端部に背面空気式の造波装置20が設けられている。
【0010】
前記造波装置20は、造波時に水槽1の一端部側において、油圧シリンダ等の駆動装置3によりガイドレール4に沿って平行に往復動されるピストン型の造波板2を備えている。この造波板2の両側面および下面と、水槽1の内壁面および底面との隙間は、止水装置21によって止水されることにより、造波板2の背面側には水槽1内の水6が侵入しないようにしている。このため、造波板2の前面側にのみ水6が存在し、背面側には造波板2の往復動を可能にする空気室22が形成されている。造波板2の前面に作用する水6の全圧力の大きさ、すなわち静水圧Fsは90トン、造波板2の重量Woは10トン、最大振幅は±4m、最大速度は2m/sである。前記止水装置21としては、従来から一般に用いられているチューブ式の止水装置が用いられる。このような造波板2は、大きな静水圧Fsに耐え得るようにトラス構造によって補強されるとともに、たとえば4つの空気ばね23によって前記静水圧Fsと等しく向きが反対方向の力(−Fs)が付与されている。各空気ばね23は、造波板2の移動方向に直列に接続された4つの伸縮自在なベローズ23a〜23dからなり、空気圧縮機24に空気配管25を介して接続されることにより、10Kg/cm2 以下の低圧が供給される。また、空気配管25には、空気タンク26、圧力計27、弁28等が接続されている。空気タンク26は、造波板2の往復動に伴う空気ばね23の容積変化および供給圧力の変動を吸収、低減する。空気ばね23による力−Fsは、静水圧Fsに応じて空気圧縮機24から供給される空気圧を調整することにより容易に調整することができる。なお、空気ばね23を構成するベローズの形状、数、大きさ等は、静水圧Fsに応じて変更すればよい。
【0011】
このような構造からなる造波装置20において、波5を発生させるには静水圧Fsに見合う力−Fsを空気ばね23によって圧造波板2に静水圧Fsと逆方向に作用させることにより、造波板2を初期位置に保持する。この場合、造波板2は空気ばね23による力−Fsを増大させると静水圧Fsに打ち勝つため前進し、減少させると後退し、振幅0の位置に設定される。振幅0の位置としては、造波板2の移動ストロクの中央位置、前進位置、後退位置のいずれの位置であってもよい。
次に、この状態より駆動装置3をコンピュータ制御で駆動して造波板2をプログラム中で所定の角速度および振幅で往復動させると、波高Hの波5を発生させることができる。この時、造波板2の駆動力Fは、Fsが相殺される代わりに、造波板2の総重量がWo+Wsに増加するため、
となる。
ただし、Wsは空気ばねの重量である。
【0012】
ここで、空気ばね23を用いると、一般的に造波装置の可動部分の重量増加に伴う機械系慣性力Fiの増加が過大となり、流体力Fp,Flが半分になる利点が生かせなくなるが、きわめて大きな波を発生させる場合は角速度ωが小さくなるため、これが有効であることが判った。すなわち、一般に、波の波高の最大値Hmaxは、砕波が起こるため、波長Lの0.1程度である。波長Lは、周期Tおよび角速度ωから、簡略式で、
造波装置で発生する波の時間は、通常数秒であり、そこで砕波波高を計算すると、次の表のようになる。
【0013】
【表1】
【0014】
通常、造波装置に要求される性能は、周期Tが1ないし2秒で、波高Hが0.3m程度が多いが、波高Hが3mを越えるような大波高の波を発生させる装置では、上記表から明かなように周期Tが4秒ないし6秒となる。
これは、大波高を発生させる場合には、通常の装置に比べて3倍程度長い周期で造波することになる。また、これは上記した(9)式でいうと、(Wo+Ws)・a・ω2/gの項のω2が、小さな波を発生させる場合に比べて1/9程度に小さくなることになる。このことは、Wsの増加重量が造波板を駆動するために大した負担にならなくなることを意味する。
【0015】
また、図3に示した従来の背面空気式造波装置においては、高圧(概ね140Kg/cm2 )の静圧シリンダ7を用いているため、シリンダ自体が高価で、多数の窒素ガスアキュムレータ8を必要とし、装置の製造コストが著しく高くなるが、本発明においては低圧の空気圧縮機24によって10Kg/cm2 程度の低圧を空気ばね23に供給して静水圧Fsとバランスさせればよいので、市販の安価な圧縮機を使用することができ、また、窒素ガスアキュミュレータが不要である。また、低圧を供給さればよいので、空気配管25として低圧用のものが使用でき、さらに低圧であればメインテナンスが容易で、安価に提供することができる。
また、図4に示した機械的なばね11を用いた背面空気式造波装置においては、ばね自体の製作が面倒であるとともに、ばねの張力調整機構を必要とするが、本発明においてはベローズからなる空気ばね23を用いているので、製作が容易で、張力調整機構を必要とせず静水圧Fsに応じて空気力を弁28によって可変するだけでよい。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る造波装置は、水槽内で造波板に往復動を与えて波を発生させる造波装置において、前記造波板と水槽との間を止水して造波板の後面側を水のない空間にし、造波板前面側にのみ静水圧を作用させるとともに、この静水圧に抗する方向に力が作用する空気ばねを設け、この空気ばねを造波板の移動方向に直列に接続された複数個の伸縮自在なベローズで構成し、空気圧縮機に空気配管を介して接続したので、構造が簡単で、安価な低圧の空気圧縮機を使用することができ、製造コストを低減することができる。また、静水圧に応じて空気ばねに供給される空気圧を変えればよいので、装置の取り扱いが簡単かつ容易で、特に大きな波高の波を発生させる場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る造波装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】 従来のピストン型造波装置の断面図である。
【図3】 静圧シリンダを用いた従来の背面空気式造波装置の断面図である。
【図4】 ばねを用いた従来の背面空気式造波装置の断面図である。
【符号の説明】
1…水槽、2…造波板、3…駆動装置、4…ガイドレール、7…静圧シリンダ、8…窒素ガスアキュミュレータ、9…油圧ポンプ、10…油圧配管、21…止水装置、22…空気室、23…空気ばね、23a〜23d…ベローズ、24…空気圧縮機、25…空気配管、26…空気タンク。
Claims (1)
- 水槽内で造波板に往復動を与えて波を発生させる造波装置において、前記造波板と水槽との間を止水して造波板の後面側を水のない空間にし、造波板前面側にのみ静水圧を作用させるとともに、この静水圧に抗する方向に力が作用する空気ばねを設け、この空気ばねを造波板の移動方向に直列に接続された複数個の伸縮自在なベローズで構成し、空気圧縮機に空気配管を介して接続したことを特徴とする造波装置。
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