JP3675561B2 - 水処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜濾過による浄水処理および排水処理を行うに当たり、膜面への懸濁物質の堆積を極力防止しながら高回収率の濾過を可能とした水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、河川水等から水道水を製造する膜分離浄水プロセスでは、原水のおよそ10%を排水として系外へ排出することにより膜濾過槽内での濃縮を抑制していた。また、同様の理由で、前記排水の濃縮を行う膜分離排水処理プロセスにおいても、排水のおよそ10%を濃縮水として系外に排出していた。この膜濾過槽内での濃縮を抑制する手段として、回転平膜のように常に膜面へ剪断力を与えることによって懸濁物質の堆積を防止する技術が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、膜濾過による浄水処理装置や排水処理装置等の水処理装置では、膜による濾過が進むと膜濾過槽内での懸濁物質が濃縮し、膜面に付着するため濾過流量が低下するという問題があった。
【0004】
また、従来の浄水処理装置では、懸濁物質の堆積を防止するため、原水のおよそ10%を排水として引き抜くことによって原水に対する浄水の回収率は90%に留まっていたし、一方、排水処理装置でも、同様の目的で排水のおよそ10%を濃縮水として引き抜いていたため、濃縮率は10倍に留まっていた。
【0005】
さらに、前記の回転平膜では、高濃度の排水中で濾過するため、濁質の堆積を完全に防止することは困難であり、かつ多大な動力を要した。また、これは、稼動部分の多い装置となるため、その維持管理が大変であった。
【0006】
これを解決するため、物理洗浄によって膜から剥離した懸濁物質を沈殿する沈殿槽を設け、さらに沈殿物の再浮上を防止するための邪魔板を配置した装置が本出願人等によって考案された(特願平8−25522号、および特願平8−25569号)が、原水中の懸濁物質のうち1ミクロン以下の微細コロイドはそのままでは沈殿しないため、沈殿部に捕集することができず、膜濾過槽内に濃縮してゆくという問題があった。さらに、膜によって分離された懸濁物質は、膜面付近に高濃度領域を形成してゆくため、膜閉塞を起こしやすいという問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、この様な問題点を解消すべく更に検討を行った結果、膜濾過により原水または排水の濃縮を行う際に前記微細コロイドによる膜閉塞を起すことがなく、高い濃縮倍率で安定して運転を行うことのできる水処理装置を見出したのである。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、膜モジュールにより懸濁液の全量濾過を行う、膜モジュールの上端部から下端部までの高さの部分である濾過部と、濾過部の下方に設けられた濃縮された懸濁液中の濁質を堆積させる沈殿部とを有し、濾過部の上方に処理する懸濁液を導入する導入部を配設した濃縮装置において、濾過部における膜モジュールの膜密度が400m2/m3以上となるように、膜モジュールが濾過部に配設されてなることを特徴とする水処理装置にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の形態例を説明するが、本発明がそれらに限定解釈されるものでないことは勿論である。
【0010】
図1は、本発明の水処理装置の形態の一例を示す模式図である。
導入部2は、浄水処理にあっては河川水等の原水を、また、排水処理にあっては浄水処理工程において砂濾過法或いは膜分離法等によって原水中の濁質を濃縮した排水を、濃縮装置1内に導入するものである。導入部2の位置は、濃縮装置1の上部に設ける。膜モジュール3による濾過量に見合うだけの原水または排水を装置内に静かに流入させると、濁質の沈降を妨げずに濃縮装置1内に処理水を導入させることができるので好ましい。
【0011】
濃縮装置1の上方部には、前記濾過部を構成し、その内部に膜モジュール3を浸漬して原水または排水の全量濾過を膜モジュール3により行う。濃縮装置1の大きさ、材質は限定されるものではない。
【0012】
濃縮装置1内に配設される膜モジュール3は、実質的に濁質の分離濾過を行う多孔質の分離膜が配設されたものである。
膜モジュール3に用いる分離膜は、平膜、中空糸膜、管状膜、マルチル−メンタイプ等任意の形状の分離膜を使用することができる。
【0013】
分離膜の材質としては無機膜(セラミック膜)、有機膜(PAN系、セルロース系、ポリオレフィン系、ポリスルフォン系、テフロン系、フッ化ビニリデン系、アクリル系、ポリアミド系等)等いずれも使用することができる。
また、これら分離膜は、平均孔径0.01〜5μm程度の精密濾過膜であっても、分画分子量1000〜3000000ダルトン程度の限外濾過膜であってもよいが、高い濾過流量で処理を行うことができることから精密濾過膜を用いることが好ましい。
【0014】
本発明の膜モジュール3では、その膜密度が400m2 /m3 以上となるように構成されたものが使用される。本発明における膜密度とは、膜モジュールの上端部から下端部までの高さにおける濾過部内の体積(以後、「モジュール部体積」という。)中に占める、膜モジュールの膜面積をいう。分離膜としては、複数の中空糸膜を配設した中空糸膜モジュールを用いると、平膜や管状膜を用いた膜モジュールに比べて単位体積あたりの膜面積を大きく取ることができるため、容積効率の高い膜モジュール3を得ることかでき、水処理装置を小型化することが可能である。好ましくは、本発明では、中空糸膜を平板状に配設した平型中空糸膜モジュールを用い、各々の中空糸膜の配設方向が水平方向となり、かつ中空糸が積層された平板面が鉛直方向を向くように濃縮装置1内に配設する。
【0015】
本発明の濾過装置においては、分離膜の洗浄を行う方法として、膜モジュール3の二次側から濾過水を加圧逆流させて逆洗浄を行う方法、或いは膜モジュール3の下方にエアーを発散させる散気管5を配設してバブリングを行う方法により分離膜の洗浄を行うことができる。この場合、塩素、アルカリ溶液、酸性溶液、界面活性剤溶液、有機溶剤等の薬液による洗浄を併用することも可能である。
【0016】
好ましくは、膜モジュール3と以下に記載する開口部を有する邪魔板6との間に散気管5を設け、バブリングによる洗浄を行うと、分離膜を動揺させ、膜表面に付着した濁質、微細コロイドを膜表面から除去することができるので、上昇した濾過抵抗を効率的に復元することができる。なお、この場合、散気管5は邪魔板6の上端部に配設されていてもよい。
【0017】
濾過方式としては、濃縮装置1を耐圧缶体とし、膜モジュール3の一次側を加圧することにより処理水の濾過を行う加圧濾過方式と、膜モジュール3の二次側を吸引ポンプ等で吸引して処理水の濾過を行う吸引濾過方式の両者とも用いることができるが、缶体が不要でありかつ散気管5からのバブリング洗浄を行う場合のエアー抜きの制御等が不要であるという観点から吸引濾過方式を用いることが好ましい。
【0018】
また、散気管5からのバブリングによる分離膜の洗浄処理は、所定時間濾過実施後、または分離膜の膜表面に濁質、微細コロイドが付着することにより濾過圧が一定圧力を越えて上昇(或いは、濾過流量が一定流量よりも低下)してきた時点で行う。なお、洗浄処理を行う際には、濾過処理は停止しておくことが好ましい。
【0019】
本発明の水処理装置においては、濃縮装置1内の膜モジュール3の下方に、濁質を堆積させる沈殿部4を設ける。
沈殿部4を設けることにより、処理水の濾過を継続するに従って増加する濁質をこの沈殿部4に堆積保持させることができるので、導入される処理水の濃縮を充分行った後に濁質を濃縮装置1外へ排出することができる。
【0020】
本発明の水処理装置においては、濃縮装置1内に膜モジュール3と沈殿部4との間に開口部を有する邪魔板6を水平に設けるとよい。
開口部を有する邪魔板6を水平方向に配設することにより、邪魔板6の下方に設ける沈殿部4の体積をより小さくできるので、濁質を高濃度で沈殿部4に堆積させることができる。
よって、濃縮装置1より抜液する濃縮水の量を低減することができ、処理水の濃縮率をその分向上させることができる。
【0021】
開口部を有する邪魔板6としては、平板、格子組板、ハニカム構造板、パイプ構造板等を用いることができる。
邪魔板6を複数枚の平板から構成し、濃縮装置1内に水平方向に配設する場合には、各々の板の面方向を垂直方向に向けた平板を複数枚、全体としての配設方向が水平方向となるように配設する。この場合には、平板間に構成される隙間が開口部となる。
【0022】
開口部を有する邪魔板6の配設方法の他の態様としては、格子組構造を有する板、ハニカム構造板或いはパイプ状の開口部を有するパイプ板の複数枚を水平方向に配設してもよい。
また、これらの開口部を有する邪魔板6は、全体として水平方向に配設されていれば、その開口部がテーパー形状となっていてもよいし、開口部が傾斜状となっていてもよい。
【0023】
本発明の装置に設ける邪魔板6は、開口部を有する構造であるため、上方より沈降する濁質が開口部より沈殿部4に沈降するため邪魔板6上に濁質が堆積することがない。
また、導入部2より処理水を濃縮装置1内に導入する際や、膜モジュール3の洗浄処理を行う際に発生する水流は、この邪魔板6により遮られ、邪魔板6より上方で回流するため、沈殿部4に堆積した濁質が水流により膜モジュール3方向へ浮上することを防止することができる。
【0024】
本発明の水処理装置においては、凝集剤を添加せずに処理水の濾過を行うことが可能であるが、処理水中のウィルス、イオン性物質等の溶解性物質を除去する目的で、また、多孔質膜の差圧の上昇を低減する目的で、適量の凝集剤を添加してもよい。
【0025】
【作用】
処理水の導入部を膜濾過濃縮装置の上部とし、濾過部における膜モジュールの膜密度を400m2/m3 以上とすることにより、上方から供給された原水または排水は、膜濾過により次第に濃縮されながら、下方向に流れるため、1ミクロン以下の微細コロイドもこの流れによって、浮遊することなく下方に移動する。
また、この条件下では、濾過にともなう水の流れが膜表面に平行な剪断流となるため、微細コロイド等の懸濁物質の膜表面への堆積を防止することができるとともに、膜モジュール部分における懸濁物質の濃度を、導入する原水や排水と同程度に保つことができる。
下方に移動した微細コロイドは、膜モジュール下端部より下方に濃度界面をもって濃縮される。
これらの作用により、本発明では、外部からの動力を要せずに、膜面への懸濁物質の堆積を防止しながら、高回収率(高濃縮率)の濾過が可能となる。
【0026】
【実施例】
本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1および比較例1
図1に示す水処理装置を用いて、濾過試験を実施した。
膜モジュール3には、三菱レイヨン(株)社製UMF7824FAAモジュールの平型中空糸膜モジュールを用いた。
【0027】
濾過試験における水処理装置の実施例1および比較例1における運転条件(各例共通)は、次のとおりである。
標記試験の結果を、以下の表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
上記の試験結果によると、実施例1では、比較例1に比べて高い濃縮倍率で安定して本発明装置の運転を行うことができた。これに対して、比較例1では、濃縮倍率も低く、かつ短期間に膜差圧が増大し、運転停止の止むなきに至った。
【0030】
【発明の効果】
本発明の水処理装置によれば、膜モジュールの膜密度を400m2 /m3 以上とすることにより、膜面付近での微細コロイドの高濃度領域を形成することがなく、長期間安定的に運転でき、かつ濃縮効率、濾過水の回収性に極めて優れた濾過を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の水処理装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1…濃縮装置
2…導入部
3…膜モジュール
4…沈殿部
5…散気管
6…邪魔板
Claims (4)
- 膜モジュールにより懸濁液の全量濾過を行う、膜モジュールの上端部から下端部までの高さの部分である濾過部と、濾過部の下方に設けられた濃縮された懸濁液中の濁質を堆積させる沈殿部とを有し、濾過部の上方に処理する懸濁液を導入する導入部を配設した濃縮装置において、濾過部における膜モジュールの膜密度が400m2/m3以上となるように、膜モジュールが濾過部に配設されてなることを特徴とする水処理装置。
- 膜モジュールに、中空糸膜が平板状に配設された平型中空糸膜モジュールを用いることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
- 膜モジュールと沈殿部との間に、濁質の浮上を防止する邪魔板を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の水処理装置。
- 膜モジュールと邪魔板との間に散気管を配設したことを特徴とする請求項3記載の水処理装置。
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JP05925796A JP3675561B2 (ja) | 1996-03-15 | 1996-03-15 | 水処理装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP05925796A JP3675561B2 (ja) | 1996-03-15 | 1996-03-15 | 水処理装置 |
Publications (2)
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JPH09248430A JPH09248430A (ja) | 1997-09-22 |
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ID=13108153
Family Applications (1)
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JP05925796A Expired - Lifetime JP3675561B2 (ja) | 1996-03-15 | 1996-03-15 | 水処理装置 |
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-
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- 1996-03-15 JP JP05925796A patent/JP3675561B2/ja not_active Expired - Lifetime
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