JP3668263B2 - 結び目形成器具 - Google Patents
結び目形成器具 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3668263B2 JP3668263B2 JP17629294A JP17629294A JP3668263B2 JP 3668263 B2 JP3668263 B2 JP 3668263B2 JP 17629294 A JP17629294 A JP 17629294A JP 17629294 A JP17629294 A JP 17629294A JP 3668263 B2 JP3668263 B2 JP 3668263B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- knot
- operating
- bending portion
- variable bending
- operating rod
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Surgical Instruments (AREA)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、生体内での糸の結び目を形成する技術に関し、詳しくは、例えば腹腔鏡下手術において、腹腔内で生体組織の縫合、吻合、結紮を行う際に、それに用いる糸を結ぶための結び目形成器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、虫垂炎の手術や胆嚢の切除術などにおいては、開腹手術の他に、非開腹で行う非開腹的腹腔鏡下手術を行う場合がある。この腹腔鏡下手術は、腹腔内に複数本のトロカール管と呼ばれる管体を挿入し、一本のトロカール管から挿入したカメラによって腹腔内をモニターし、他のトロカール管内に挿入された器具によって、モニターを見ながら腹腔内で手術を行うものである。
【0003】
ところで、上記腹腔鏡下手術においては、縫合や結紮を行う場合、糸を結ぶ操作に手間がかかっていた。例えば、体腔内にある糸を鉗子などの器具を用いてトロカール管より体腔外へ引き出し、体腔外で結び目を作った後、再度糸をトロカール管内を通して体腔内へ戻し、縫合や結紮を完了させていた。
【0004】
このような手順では、手術に手間と時間がかかり過ぎ、また感染の機会が増すため好ましくない。
【0005】
近年、このような、手間を解消するため、縫合や結紮を行うための特別の器具が開発されている。例えば、特開平3−12126号には、ホッチキス状の針を吻合や、縫合に用いる吻合・縫合器具が提案されている。この場合には、ホッチキス針が体内に残留するといった欠点があるとともに、操作ミスによって、腹腔内に針を落としてしまうという危険があり、さらに、糸によって縫合等する場合よりも強度が弱いといった欠点があった。
【0006】
また、一般の外科手術においては、太い血管の結紮など、強固に結び目を作る必要のある場合には、2重または3重に糸を絡ませて糸の結び目を作っていた。しかしながら、このような結紮や吻合などには、上記ホッチキス状の針を用いることはできず、また上記従来の方法で糸の結び目を作るには、より多くの手間と時間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、例えば腹腔のような体腔内において、吻合、縫合、結紮等のための糸の結び目を体外からの遠隔操作により容易かつ確実に形成することができる結び目形成器具を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、糸の結び目を強固に形成し、生体組織へ確実に密着させることができる結び目形成器具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、
糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、
体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される操作杆と、
前記操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、
前記開口部より前記挿通路に糸を導入する糸導入手段と、
前記操作杆の基端部に接続され、前記操作杆を体外より操作する操作装置とを有しており、
前記操作杆の先端部は、前記操作装置の操作により、直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態とに変化し得る可変湾曲部を構成している。
【0010】
前記可変湾曲部は、少なくとも1重のループを形成するよう湾曲することが好ましい。
【0011】
この場合、前記操作装置は、先端が前記可変湾曲部内の軸心から偏心した位置に固定された少なくとも1本のワイヤと、前記ワイヤを基端側へ引っ張って前記可変湾曲部を操作する湾曲操作機構とを有し、
前記ワイヤが、前記先端が固定された位置から前記湾曲操作機構へ向けて、前記可変湾曲部に螺旋状に巻き付けられて設けられていることが好ましい。
また、前記操作装置は、前記可変湾曲部の軸心を介して対向する位置にそれぞれ先端が固定された第1のワイヤおよび第2のワイヤと、前記第1のワイヤおよび第2のワイヤの一方を基端側へ引っ張って前記可変湾曲部を所望に湾曲させる湾曲操作機構とを有し、
前記第1のワイヤおよび第2のワイヤは、前記先端が固定された位置から前記可変湾曲機構へ向けて、それぞれ、前記可変湾曲部に対し螺旋状に、かつ相互に逆方向へ巻き付けられて設けられていることが好ましい。また、前記操作装置は、さらに、先端が前記可変湾曲部に固定された第3のワイヤと、前記第3のワイヤを基端側へ引っ張って前記ループの姿勢を変える姿勢変更機構とを有することが好ましい。
【0012】
また、前記可変湾曲部は、2重以上に重なったループを形成するよう湾曲することが好ましい。
【0013】
この場合、前記操作装置は、先端が前記可変湾曲部内の軸心から偏心した位置に固定された複数本のワイヤと、前記各ワイヤを基端側へ引っ張って前記可変湾曲部を操作する湾曲操作機構とを有し、
前記各ワイヤの先端は、それぞれ前記可変湾曲部の軸方向に所定の間隔をおいて固定されており、前記各ワイヤは、この固定位置から前記湾曲操作機構へ向けて、それぞれ前記可変湾曲部に螺旋状に巻き付けられて設けられていることが好ましい。
【0014】
また、前記結び目形成器具は、前記開口部から導入されて前記挿通路を挿通している第1の糸と、前記可変湾曲部に形成された前記ループ内を通る第2の糸とによって結び目を形成することが好ましい。
【0015】
また、前記可変湾曲部は、糸の挿通孔を有する複数の単位部材と、隣接する単位部材を揺動自在に連結する連結部材とを有し、
連結部材により隣接する単位部材同士を屈曲して連結することにより、前記可変湾曲部が全体で湾曲するように構成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、
体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される操作杆と、
前記操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、
前記開口部より前記挿通路に糸を導入する糸導入手段と、
前記操作杆の基端部に接続され、前記操作杆を体外より操作する操作装置とを有しており、
前記操作杆は、その先端部に設けられた自然状態で目的形状に湾曲する可変湾曲部と、前記可変湾曲部の形状を略直線状に規制する規制部材とを有することを特徴とする結び目形成器具である。
【0017】
また、本発明は、糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、
体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される一対の操作杆と、
前記各操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、
前記各開口部より前記各挿通路に糸を導入する糸導入手段と、
前記各操作杆の基端部に接続され、前記各操作杆を体外より操作する操作装置と、
前記両操作杆の基端部を束ねる結束部材とを有しており、
前記両操作杆のうちの少なくとも一方の先端部が、前記操作装置の操作により、略直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態、特にループ状に湾曲した状態とに変化し得る可変湾曲部を構成していることを特徴とする結び目形成器具である。
【0018】
前記可変湾曲部は、少なくとも1重のループを形成するよう湾曲することが好ましい。
【0019】
また、前記糸導入手段は、前記挿通路に連通するよう挿通路の基端側に接続された吸引手段であることが好ましい。
【0020】
また、前記結び目形成器具は、前記挿通路に導入された糸を保持する保持手段を有することが好ましい。また、前記結び目形成器具は、前記挿通路に導入された糸の緊張状態を維持する緊張手段を有することが好ましい。前記緊張手段は、前記糸を巻き取る巻取軸と、前記巻取軸を回動操作する回動摘みと、前記巻取軸を所定の回転方向に付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗して巻取軸の回転を阻止するロック部材とを有することが好ましい。
【0021】
また、前記結び目形成器具は、前記付勢部材の付勢力による前記巻取軸の回転を緩和する回転緩和手段を有することが好ましい。
【0022】
また、前記結び目形成器具は、前記操作杆内に設けられ、挿通路内に位置する糸を切断する切断手段を有することが好ましい。前記切断手段は、前記操作杆の先端部に設置された一対の刃を有する鋏と、先端が二股に分岐し、その分岐端がそれぞれ前記刃と反対側の端部に固定された鋏作動用ワイヤと、前記操作装置に設置され、前記鋏作動用ワイヤを牽引操作するハンドルとで構成されていることが好ましい。
【0023】
【実施例】
以下本発明の結び目形成器具の好適実施例について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の結び目形成器具の第1の実施例の全体側面図である。本図では、操作杆3の先端が、操作装置4に対して約90°回転している状態を示すものである。
【0024】
本発明の第1の実施例である結び目形成器具1は、腹壁を貫通して設置され、体腔の一部である腹腔内に体外とを連通させる連通管としての図示しないトロカール管内に挿入して、先端部を体腔内へ及ぼしめる操作杆3と、前記操作杆3を体外より遠隔操作するための操作装置4とを有している。
【0025】
操作杆3は、ほぼ直線状態である略直線部31と可変湾曲部32とを有している。略直線部31はその基端部が前記操作装置4の本体40に回動自在に接続されており、基端部の外周部には大径部311が設けられ、その外周面が前記本体40の両側部に突出している。
【0026】
この大径部311を手でつまんで回転操作することで、操作杆3を回転させることができる。図2に示されているように、略直線部31の内部には、軸方向に沿って挿通路30が形成されている。
【0027】
図3に示されているように、操作杆3内には、後述する可変湾曲部32の湾曲状態を調整するために、それぞれ設けられたワイヤ51、52、53が挿通している。また、操作杆3の下側には切断手段を操作するためのワイヤ54が挿通している。ワイヤの構成材料としては、強化糸や金属製の線材等が挙げられるが、可変湾曲部32の剛性を高くせず、容易に湾曲させることができる点で、強化糸を用いるのが好ましい。
【0028】
一方、可変湾曲部32は、前記略直線部31の先端に接続されている。可変湾曲部32は、図2に示されているように、複数の単位部材である管体33と、各管体33を連結する環状の連結部材34とを有している。管体33は、軸方向に貫通する挿通孔331を有し、その両端部332は球体となっている。連結部材34は、前記管体33の間に位置し、管体の端部332を突き合わせた状態で、2つの管体33の端部332の外側に外嵌されている。管状の連結部材34の両端部340の内周面は、前記管体33の端部332の球状の外周面が嵌合できるように、球状の凹面となっている。
【0029】
本実施例の場合には、前記略直線部31の先端は、可変湾曲部32との接続口312となっている。この接続口312には、管体33の端部332が揺動自在に嵌合し得る球状の凹面を有する部分が形成されており、そこに可変湾曲部32の基端に位置する管体33の端部332が嵌合している。
【0030】
管体33は、連結部材34に対して、端部332に形成されている球面を摺動させながら、任意の方向に揺動することができる。即ち、連結部材34と管体33は球面接触であるため、連結部材34に対する管体33の揺動方向に特に制限はない。
【0031】
従って、可変湾曲部32は、管体33を突き合わせて球体関節を形成する連結部材34において、管体33間を屈曲させることにより、可変湾曲部32自体の形状を、全体としてほぼ連続した湾曲形状にすることができる。そして、任意の方向に任意の湾曲形状を作ることが可能となる。
【0032】
また、前記連結部材34の外周には、可撓性を有する被覆材35が外装されている。また、ワイヤが動き易いように、ワイヤの外面または被覆材35の内側に、シリコーンやグリース等の潤滑剤を塗布してもよい。
【0033】
各管体33の挿通孔331および各連結部材34の内腔によって、挿通路30の一部が構成される。挿通路30の先端、即ち可変湾曲部32の先端は、操作杆3の先端に開口する開口部301となっている。
【0034】
以上のような構成によって、可変湾曲部32はほぼ直線的な略直線状態と、任意の形状に湾曲した湾曲状態とに形状を変化することができる。
【0035】
また、図3に示されているように、先端部には、横断面において対向する位置(本実施例では、横断面正面視における左右位置)に、それぞれ前述のワイヤ51、52の先端が固定されている。そして、ワイヤ51、52は、それぞれ可変湾曲部32の各連結部材34の外周面に沿って巻き付けられて、前記被覆材35の内側を挿通し、可変湾曲部32の基端部付近で、横断面内において先端の位置と反対側の位置に達し、さらに前記略直線部31内を軸線と平行に通過している。
なお、図示されていないが、連結部材34の外周面には、各ワイヤが挿入されてワイヤの移動を円滑に行わせるためのワイヤ案内用の溝が設けられていてもよい。
【0036】
また、ワイヤ53は、横断面正面視において、上部に固定され、そのまま軸線に沿って可変湾曲部32内を挿通している。ワイヤ53の先端の軸方向における固定位置は、可変湾曲部32の中央から基端部へ寄った位置である。
【0037】
以上のように配置されたワイヤ51、52、53を引っ張ることで可変湾曲部32の形状を操作する。ワイヤ51または52を引っ張ると、可変湾曲部32はその引っ張ったワイヤの方向に湾曲し、α状の形状となる。この時、ワイヤ51、52は可変湾曲部32の連結部材34に巻きついた状態で操作杆3内を挿通しているので、可変湾曲部32は螺旋状に湾曲して、1重のループを形成する。
【0038】
また、可変湾曲部32の先端部には、糸を切断する切断手段が設けられている。切断手段は、図4に示されている鋏36と、図5に示されている該鋏36を作動させるハンドル37とを有している。
【0039】
前記鋏36を構成する各刃361、362は、可変湾曲部32の横断面形状に合わせて、すなわち外側に凸に湾曲した形状としても良い。鋏36の支点363を中心とした、刃361、362の反対側には、ワイヤ54の先端がそれぞれ接続されている。
【0040】
ワイヤ54の先端は、二股に分岐しており、分岐したそれぞれの先端は、鋏36の基端、すなわち前記各刃361、362の反対側の端部に接続される。このような分岐したワイヤ54は、鋏36の近傍で一本に束ねられる。従って、ワイヤ54を引っ張ると、分岐されたワイヤは、鋏36が閉じる方向に鋏36の基端部を引っ張る。また、この鋏36は、ワイヤ54が弛んでいるときには、例えばバネのような図示しない付勢部材により刃361、362が開く方向に付勢されている。
【0041】
以上のように構成された操作杆3の外径は、トロカール管内に挿入可能な太さであればよく、例えば、3〜5mm程度である。腹腔鏡下手術においては、操作杆3の全長は、350〜400mm程度であるのが好ましいが、この好ましい長さは手術をする部位、患者の体格、年齢などによって若干異なる。
【0042】
また、可変湾曲部32の長さは、30〜50mm程度であるとよい。この程度より短かすぎると、形成するループの大きさが小さくなって、ループに糸を通して結び目を形成することが難しくなる。また、長過ぎると、ループを形成するために操作杆3の先端が移動する空間を広くとらなければならなくなり、体内の狭い空間内で操作するのが困難となる。
【0043】
操作装置4には、前記ワイヤ51、52、53、54をそれぞれ引っ張るための機構と、挿通路30を挿通してきた糸を保持し、さらに糸が緊張状態を常時維持できるようにする緊張手段とが設けられ、さらに、糸を挿通路30へ取り込むための吸引手段が接続されている。
【0044】
操作装置4の本体40は、下部に固定把持部41を有し、該固定把持部41の基端部近傍には、可動把持部42が揺動自在に取り付けられている。把持部41の基端部であって、かつ可動把持部42の取り付け位置の近傍には、巻取歯車43が軸支されている。該巻取歯車43にはワイヤ54を巻き取る巻取軸(図示しない)が一体となっており、後述するハンドル操作により巻取歯車43を回転させることによって、ワイヤ54が巻き取られて、ワイヤ54を引っ張り、切断手段を作動させる。
【0045】
一方、前記可動把持部42には、上下方向へスリット421が形成され、該スリット421内にピン411が嵌入されている。ピン411は、本体40に立設され、可動把持部42の揺動の支点となる。
【0046】
可動把持部42は前記ピン411を中心として揺動し、かつその揺動中心は、可動把持部42を移動させて前記スリット421に対するピン411の位置を変更することによって変えることができる。
【0047】
可動把持部42において、前記巻取歯車43に対向する側面は、巻取歯車43の周面に沿って、湾曲した接触面420が形成されており、該接触面420の上下端部には、それぞれ前記巻取歯車43に噛合する歯422、423が設けられている。上記固定把持部41、可動把持部42および巻取歯車43により、鋏作動用ワイヤ54を牽引操作するハンドル手段37が構成される。
次に、ハンドル手段37によるハンドル操作について説明する。
【0048】
可動把持部42を下方にスライドさせて、スリット421の上方にピン411を位置させ、固定把持部41と可動把持部42とが開く方向に可動把持部42を揺動させると、歯422と巻取歯車43が噛合する。次に、固定把持部41と可動把持部42とが開く方向に可動把持部42をさらに動かすことにより、歯422によって巻取歯車43が図中反時計方向に回転し、ワイヤ54を弛ませる。この操作によって、操作杆3の先端部に設けられている鋏36が開く。
【0049】
逆に鋏36を閉じて、糸を切断する場合には、最初に可動把持部42を上方にスライドさせて、スリット421の下部にピン411を位置させ、把持部41と可動把持部42とが閉じる方向に可動把持部42を揺動させると、歯423と巻取歯車43が噛合する。次に、固定把持部41と可動把持部42とが閉じる方向に可動把持部42をさらに動かすことにより、歯423によって巻取歯車43が図中時計方向に回転し、ワイヤ54を巻取歯車43に巻き取ることができる。この結果、ワイヤ54が牽引されて鋏36が閉じ、挿通路30を挿通している糸を切断する。
【0050】
この操作部37によれば、一般の鋏と同様の操作感覚で、糸を切断できるといった利点がある。
【0051】
一方、本体40には、接続されている操作杆3の挿通路30に、一端が接続している通路44が設けられている。この通路44の他端は、本体40の後部に開口しており、この開口部分に、糸の吸引手段として、図示しない吸引装置の吸引ノズル45が接続される。
吸引装置を作動して吸引ノズル45より吸引すると、通路44および挿通路30内に負圧が生じ、操作杆先端の開口部301より糸が吸い込まれ、挿通路30および通路44内に導入される。
なお、吸引装置としては、モータ等の駆動源により作動するものの他、例えばゴム製のバルーンまたはベローズと逆止弁とより構成され、手動でバルーン又はベローズを収縮させて空気を吸引する構成のものであってもよい。
【0052】
前記通路44において、吸引ノズル45と、操作杆3の挿通路30の基端部との間には、緊張手段としての巻取機構6が設けられている。図6は巻取機構6の構成例を示す断面側面図である。
【0053】
図6に示すように、巻取機構6は、前記通路44を塞ぐ位置に嵌入され、本体40に回動自在に取り付けられた巻取軸61と、巻取軸61の先端に、回動自在に装着された回動摘み62と、回動摘み62と、本体40との間に介挿され、巻取軸61に巻き付けた状態で装着されている巻取軸61を所定の回転方向に付勢する付勢部材であるスプリング63と、回動摘み62が巻取軸61と一体として回転し得るように接続する接続部材64と、回動摘み62が前記スプリング63の付勢力により回転しないようにロックするロック部材65とを有している。
【0054】
巻取軸61には、通路44とほぼ同径の孔611が形成されており、巻取軸61を回転させることによって、通路44と孔611の連通状態(吸引可能な状態)と非連通状態(吸引不可能な状態)とに切換えることができる。なお、糸の吸引操作は、吸引装置を直接操作することにより行ってもよい。吸引装置は、通常の病院等の医療機関であれば設置されている一般的な設備であり、どの病院等でも吸引手段を糸導入手段として用いることができる点で、汎用性がある。
【0055】
本体40の外側に突出している巻取軸61の先端には、断面形状がほぼ正六角形である穴612が形成されており、さらにその上には、回動摘み62が回動自在に覆い被せられている。
【0056】
回動摘み62の中心には、前記穴612とほぼ同じ正六角形の孔621が形成されており、前記孔621と穴612には、接続部材64が挿脱自在に嵌入されている。接続部材64は、前記孔621と穴612の断面形状とほぼ同じ断面形状、即ち、断面がほぼ正六角形である棒状部641を有し、その一端には摘み部642を有している。この接続部材64を孔621と穴612とに同時に挿入することによって、回動摘み62と巻取軸61とは一体として回動する。回動摘み62と巻取軸61との一体回動を解除し、回動摘み62が巻取軸61に対してフリー回転し得るようにするには、図6中の二点鎖線で示すように、接続部材64の摘みを摘んで、棒状部641が穴612から抜ける程度まで、接続部材64を引き抜く。
【0057】
巻取軸61に外装されているスプリング63の一端は、本体40に係止され、他端は前記回動摘み62に係止されている。このため、回動摘み62を摘んで回転させると、その回転方向と逆方向にスプリング63による付勢力が発生する。この状態で、接続部材64を押し込んで回動摘み62と巻取軸61を接続すると、スプリング63の付勢力で巻取軸61が回転し、糸を巻き取ることができる。また、回動摘み62の底部には、図7に示すように、外周縁に沿って、等間隔で凹部623が形成され、回動摘み62の外周面には、軸方向に形成された溝622が等間隔で円周方向に刻まれている。
【0058】
巻取軸61の近傍には、ロック部材65が立設されている。ロック部材65は、前記回動摘み62の溝622に係合する係合部651が上端部に形成され、基端部には、L字型に屈曲してアーム部652が形成されている。そして、ロック部材65は、その屈曲点が軸支部653とされ、本体40に揺動自在に支持されている。アーム部652の先端部には、本体40との間に介挿されている付勢部材654の一端が当接しており、該アーム部652を上方に付勢している。これにより、前記係合部651は、常時回動摘み62の溝622に係合する方向へ付勢される。前記係合部651が回動摘み62の溝622に係合している場合は、回動摘み62の回転は規制される。
【0059】
ロック部材65による回動摘み62の回転のロックを解除する場合には、アーム部652の先端部を本体40の方へ押し込む。これにより、ロック部材65が揺動し、係合部651が溝622から外れて、回動摘み62の回転のロックが解除される。
【0060】
一方、巻取軸61に対して、前記ロック部材65が設けられている位置の反対側には、板バネ66が固定されている。図8に示されているように、該板バネ66は、本体40に固定するための固定端661と、巻取軸61が挿通する孔662と、固定端661の反対側の端に形成された凸部663とを有している。板バネ66の弾性力により、凸部663は、回動摘み62の底面に形成されている凹部623に当接する。このような板バネ66、凸部663および凹部623により、スプリング63の付勢力による巻取軸61の回転を緩和する回転緩和手段が構成される。
【0061】
回動摘み62を回転させると、板バネ66の凸部623が回動摘み62の凹部623に順次係合する。スプリング63の付勢力によって、回動摘み62と巻取軸61とが回転した場合、この板バネ66による凸部663と凹部623との係合動作により、巻取軸61が加速して高速で回転することなく、緩やかに巻取動作を行わせることができる。
【0062】
糸2を巻取る場合には、糸導入手段である吸引手段によって、糸2を巻取軸61の孔611まで引き込み、その状態で、巻取軸61を回転させる。これにより、糸2は孔611内に位置した状態で巻取軸61に巻き付けられ、挿通路30から抜け落ちないように保持される。
【0063】
次に、操作杆3の可変湾曲部32を操作する湾曲操作機構7の説明をする。
図1および図3に示されているように、本体40の操作杆3が接続されている接続部分の近傍には、巻取リール71と、引張リール72とが、本体40に軸支されて、回動自在に設けられている。
【0064】
巻取リール71には、ワイヤ53が巻き付けられ、ワイヤ53を巻き取って、ワイヤ53を牽引することにより、可変湾曲部32を上方へ湾曲させることができる。巻取リール71を回転させるには、リールの側面を指でしごいて送るようにする。
【0065】
巻取リール71はリールに限らず、ワイヤ53を引っ張る機構であればよく、例えばレバーの操作や、単に手でワイヤを引き抜く操作をすることによって、可変湾曲部32を湾曲させることもできる。
【0066】
引張リール72には、前記ワイヤ51、52がそれぞれ反対方向に巻き付けられている。従って、引張リール72を一定方向に回転させると、ワイヤ51、52のうちの一方を引っ張り、他方を緩ませる構成となり、一方のワイヤを引っ張って可変湾曲部32を湾曲させる時、他方のワイヤが突っ張って、湾曲操作の邪魔になることはない。
【0067】
また、巻取リール71を回転させると、ワイヤ53が引っ張られ、引張リール72の作用によって、可変湾曲部32で構成されたループが、操作杆3の略直線部31に対して傾斜する。このように、ループを傾斜させることによって、ループ内に、糸を通し易くする。
【0068】
以上のように構成された、本発明の結び目形成器具1を用いた結び目形成方法の一例について、図9および図10を参照しつつ説明する。腹腔内と体外とを連通させるトロカール管と呼ばれる連通管を腹壁に複数設置し、結び目形成器具1を2個用いる。
例えば、トローカル管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている2本の糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。なお、糸2a、2bは、異なる2本の糸でも、つながった一本の糸の両端部でもよい。
【0069】
それぞれ異なるトロカール管から、各々の操作杆3a、3bの可変湾曲部32を真っ直ぐにした状態で、結び目形成器具をそれぞれ挿入する。既述したように、回動摘み62および接続部材64を動かして巻取機構6を作動させると共に、既に生体組織に通されている医療用の糸2のうちの片方2aを、吸引手段を用いて、一方の結び目形成器具1aの操作杆3aの先端から吸引し、巻取機構6で確実に保持する程度まで巻き取る。巻き取った後は、ロック部材65により巻取機構6の回動をロックし、糸2aを保持しておく。
【0070】
結び目形成器具1aにおける引張リール72を所定方向に回転し、可変湾曲部32を湾曲させて、α状のループを形成する。次に、巻取リール71を回転させてワイヤ53を巻き取ると、前記形成されたループは、略直線部31に対して傾斜する姿勢にセットされる。
【0071】
他方の結び目形成器具1bの先端を略直線状態としたまま、図1に示されているように、前記α状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、略直線状の操作杆3bの先端から、他方の糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6にて確実に保持する。
【0072】
可変湾曲部32のループを挿通している操作杆3bを抜き取ると、図9Aに示すように、ループ内を糸2bが挿通する。この糸2bを、図9Bに示すように、湾曲している可変湾曲部32の先端を迂回するように、ループの外側に移動させると、図9Cに示すように、糸2bが操作杆3aの先端開口部より露出した糸2aと交差し、図9Dに示すように、糸2bが糸2aに絡んで一つ目の結び目21が形成される。なお、この操作は、操作杆3a、即ちループを形成している側の操作杆を動かす(移動または回転)ことにより行ってもよい。
【0073】
次に、結んだ糸を生体組織に密着させるために、結び目形成器具1aおよび/または結び目形成器具1bの緊張手段を作動させる。即ち、例えば両結び目形成器具1a、1bにおいて、それぞれ先端部を略直線状態に戻した後、ロック部材65による回動摘み62の回転規制を解除し、スプリング63の付勢力によって巻取軸61を回転させる。これにより、糸2a、2bは序々に巻き取られる。そして、操作杆3a、3bの先端にそれぞれ糸2a、2bが引き込まれていくにつれて、該操作杆3a、3bを生体組織に向けて突き進め、その先端で第1の結び目21を組織に押し付けることで、生体組織に密着した結び目を確実に作ることが可能となる。
【0074】
外科手術における結紮処理などにおいては、結び目をほぐれにくくするため、逆回りの第2の結び目22を形成するのが好ましい。この場合には、まず両ロック部材65によるロックを解除し、両結び目形成器具1a、1bの両巻取軸61を巻取方向とは逆方向に回転させつつ、操作杆3a、3bを後退させ、前記巻き取った糸2a、2bを結び目を形成できる程度に弛ませる。
【0075】
次に、結び目形成器具1bの巻取軸61をさらに逆回転させて図6に示す状態すなわち、操作杆3b内に引き込んだ糸2bをフリーの状態とし、例えば吸引ノズル45から通路44内へ気体を送って糸2bを操作杆3b内から吐き出す。
【0076】
次に、結び目形成器具1aの操作杆3aで、第1の結び目21を形成した向きと逆向きのループを形成し、このループに操作杆3bの先端を挿入する。操作杆3bの先端に、前記吐き出した糸2bを、吸引手段を用いて再度引き込み、操作杆3bを後退させてループから抜き取り、図10Aに示す状態とする。またこのとき両結び目形成器具1a、1bにおいて巻取機構6に糸2a、2bを確実に保持する。以後は上記説明した内容と同様の操作を行い、図10B〜Dに示すようにして、第2の結び目22を形成し、さらにこれを前記と同様にして生体組織に密着させる。
【0077】
このようにして、糸2a、2bが結ばれたら、両結び目形成器具1a、1bの可動把持部42をそれぞれ操作し、巻取歯車43を回転させてワイヤ54を引っ張り、鋏36を作動させて糸2a、2bを切断する。
【0078】
なお、第2の目の結び目の形成は、操作杆3a内から糸2aを一度吐き出し、再度吸引する方法や、両操作杆3a、3b内からそれぞれ糸2a、2bを一度吐き出し、再度吸引する方法により行ってもよい。また、前記とは逆に、操作杆3bの先端部でループを形成し、操作杆3aを前記ループに挿通して、結び目を形成してもよい。
以上のような操作によれば、体腔内で縫合や結紮の処理が容易にかつ迅速に行え、しかも糸を自動的に巻き取るので、左右の手でそれぞれ器具1a、1bを操作している時に手が足りなくなるという不都合も生じない。またホチキス針でなく、糸によって処置を行うことができるため、安全かつ確実に結紮や吻合等を行える。
【0079】
次に、本発明の結び目形成器具の第2の実施例について説明する。図11は、本発明の第2の実施例の結び目形成器具の全体側面図である。本図では、操作杆3の先端が、操作装置4に対して180°回転している状態を示すものである。以下、この第2の実施例を説明するにあたり、前記第1の実施例と同一の部材については同一の符号を用い、同様の構成については、その説明を省略する。
【0080】
本発明の第2の実施例の結び目形成器具1’は、腹壁を貫通して設置され、体腔の一例である腹腔内に体外とを連通させる連通管としての図示しないトロカール管内に挿入して、先端部を体腔内へ及ぼしめる操作杆3と、前記操作杆3を体外より遠隔で操作するための操作装置4とを有している。
【0081】
操作杆3は、前記と同様の略直線部31と可変湾曲部32とを有している。
図12に示されているように、前記略直線部31の先端は、可変湾曲部32との接続口312となっており、管体33の端部332が揺動自在に嵌合し得る球状の凹面が形成されており、ここに可変湾曲部32の基端に位置する管体33の端部332が嵌合している。図13に示されるように、可変湾曲部32は、前記と同様の構造により湾曲し得るように構成されている。
【0082】
可変湾曲部32の連結部材34には、図14に示すように、ワイヤ54をガイドする下ガイド部342と上ガイド部343とが交互に設けられている。この下ガイド部342には、基部に連結部材34の軸方向に孔が形成されており、この孔にワイヤ54が挿通する。また上ガイド部343の上部には、連結部材34の軸方向に溝が形成されており、この溝にワイヤ54が挿通する。
【0083】
図14に示されているように、操作杆3内には、可変湾曲部32の湾曲状態を調整したり、切断手段を操作するために、それぞれ設けられた前記と同様のワイヤ51、52、53、54、55、56、57が挿通している。
【0084】
図14および図15は、上記ワイヤ51、52、53、54、55、56の配置状態を示すものである。ワイヤ51、52、53および54は、可変湾曲部32を螺旋状(コイル状)のループに湾曲させるためのワイヤであり、ワイヤ55は、螺旋状のループを形成した可変湾曲部32のループの方向を変える操作をするためのワイヤであり、ワイヤ56は、湾曲した可変湾曲部32を元の状態に戻すためのワイヤである。以下、上記それぞれのワイヤの設置位置について説明する。
【0085】
ワイヤ54の先端は、可変湾曲部32の先端の固定部341aに固定され、連結されている連結部材34の下ガイド部342と上ガイド部343を交互に挿通し、操作杆3の軸線に沿って設けられ、後端は操作装置4の本体40に設けられている巻取リール71に巻き付けられている。ワイヤ54が下ガイド部342と上ガイド部343とを挿通すると、側面視で図15に示されているように、ワイヤ54は上下に順に屈折した状態となる。下ガイド部342と上ガイド部343とによって、湾曲した時の可変湾曲部32の曲率を大きくすることができる。
【0086】
巻取リール71によって、ワイヤ54を巻き取って引っ張ると、可変湾曲部32は同一平面内で湾曲し、更に引っ張るとうず巻き状に湾曲する(本実施例の場合には2回り半)。
【0087】
一方、ワイヤ51の先端は、最も先端に位置する連結部材34の周面に設けられた固定部341bに固定され、可変湾曲部32に巻き付くように、その周面に沿って設けられており、後端は操作装置4の本体40に設けられているリール72aに巻き付けられている。ワイヤ51が巻き付けられている可変湾曲部32の長さは、本実施例の場合には、可変湾曲部32の1/3程度の長さであり、巻き付け角度は、約180°程度、換言すると、可変湾曲部32の横断面視で、ワイヤ51の先端が固定された位置から反対側の位置までである。巻き付けが終わったワイヤ51は、可変湾曲部32と略直線部31の軸線に平行に配置される。
【0088】
ワイヤ51を引っ張ることによって、可変湾曲部32は捩じられ、ワイヤ54の作用との合成によって、操作杆3の最も先端に位置する螺旋状のループ(コイルの一巻き)が形成される。
【0089】
同様に、ワイヤ52は、上記ワイヤ51と同じ様に設けられている。即ち、ワイヤ52の先端は、ワイヤ51の巻き付きが終わった位置において、連結部材34の周面に設けられた固定部341cに固定され、可変湾曲部32に巻き付くように、その周面に沿って設けられており、後端は操作装置4の本体40に設けられているリール72bに巻き付けられている。
【0090】
さらに、ワイヤ53も、上記ワイヤ51と同じ様に設けられている。即ち、ワイヤ53の先端は、ワイヤ52の巻き付きが終わった位置において、連結部材34の周面に設けられた固定部341dに固定され、可変湾曲部32に巻き付くように、その周面に沿って設けられており、後端は操作装置4の本体40に設けられているリール72cに巻き付けられている。
【0091】
上記、ワイヤ51、52、53を操作することによって、可変湾曲部32は捩じられ、ワイヤ54によって形成されたうず巻き状のループを螺旋状(コイル状)に変形させることができる。
【0092】
ワイヤ55の先端は、ワイヤ53の巻き付きが終わった位置において、連結部材34の周面に設けられた固定部341eに固定され、それより基端側に設けられた上ガイド部343を通って、操作杆3の軸線に沿って設けられている。ワイヤ55の後端は操作装置4の本体40に設けられているリール72dに巻き付けられている。
【0093】
このワイヤ55を操作することによって、図1に示すように、可変湾曲部32にて形成された螺旋状のループを、基端部で屈曲させて先端が操作装置4側を向くようにすることができ、処理をしやすくすることができる。
【0094】
ワイヤ56は、可変湾曲部32の先端部の固定部341fに先端が固定されている。固定部341fは、操作杆3の横断面視において、軸線に対して前記ワイヤ51の固定部341bに対向する位置に位置している。ワイヤ56は、ワイヤ51、52、53とは、逆向きに可変湾曲部32のほぼ全長に渡って巻き付けられ、巻き付け角度は約180°程度である。ワイヤ56を引っ張ることによって、ループを形成した可変湾曲部32を元のほぼ直線の状態に戻すことができる。そして、さらに引っ張れば、逆向きの1重のループを形成できる。
【0095】
結び目形成器具1’は、糸を切断する前記と同様の切断手段が設けられている。この切断手段は、可変湾曲部32の先端部に設けられた前記と同様の図6に示す鋏36と、該鋏36を作動させる操作部37とを有している。この切断手段の作動は、前記と同様に、操作部37における可動把持部42の操作により巻取歯車43の巻取軸(図示せず)に巻き取り、ワイヤ57を牽引して鋏を作動させ、糸を切断する。
【0096】
以上のように構成された、操作杆3の好ましい外径や全長は、前記と同様である。また、可変湾曲部32の長さは、30〜100mm程度であるとよい。この程度より短かすぎると、形成するループの大きさが小さくなって、ループに糸を通して結び目を形成するのが難しくなる。また、長過ぎると、ループを形成するために操作杆3の先端が移動する空間を広くとらなければならなくなり、体内の狭い空間内で操作するのが困難となる。
【0097】
操作装置4には、前記ワイヤ51、52、53、54、55、56、57をそれぞれ引っ張るための機構、前記と同様の緊張手段および吸引手段を有する。図6、図7および図8に示す機構は、第2の実施例である結び目形成器具にも同様に適用される。
【0098】
次に、操作杆3の可変湾曲部32を操作する湾曲操作機構7の説明をする。
図11および図14に示されているように、本体40の操作杆3が接続されている接続部分の近傍には、ワイヤ54を巻き取る前記と同様の巻取リール71と、引張リール72とが、本体40に軸支されて、回動自在に設けられている。
【0099】
巻取リール71によりワイヤ54を巻き取って引っ張ることにより、可変湾曲部32を上方へ湾曲させることができる。
【0100】
引張リール72は、ワイヤ51、52、53、55がそれぞ巻き付けられるリール72a、72b、72c、72dを有し、前記ワイヤ51、52、53、55はそれぞれ同じ向きに巻き付けられている。また、ワイヤ56は、ワイヤ51が巻き付けられているリール72aにワイヤ51とは反対方向に巻き付けられている。
【0101】
従って、引張リール72を一体として例えば図14中時計回りに回転させると、一方のワイヤ51、52、53、55を引っ張り、他方のワイヤ56を緩ませる構成となり、一方のワイヤ51、52、53、55を引っ張って可変湾曲部32を湾曲させる時、ワイヤ56が突っ張って、湾曲操作の邪魔になることはない。なお、引張リール72を構成する4つのリール72a、72b、72c、72dは、各ワイヤの引張量に合わせて、径を異なるものとすることもできる。
【0102】
また、巻取リール71を回転させると、ワイヤ54が引っ張られ、引張リール72の作用によって、可変湾曲部32で構成された螺旋状のループの先端が、操作装置4の方へ向き、ループ内に、糸を通し易くする。
【0103】
以上のように構成された、本発明の結び目形成器具1’を用いた結び目形成方法の一例について、図16および図17に基づき説明する。腹腔内と体外とを連通させるトロカール管と呼ばれる連通管を腹壁に複数設置し、結び目形成器具1’を2個用いる。
【0104】
例えば、トローカル管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている2本の糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。
それぞれ異なるトロカール管から、各々の操作杆3a、3bの可変湾曲部32を真っ直ぐにした状態で、結び目形成器具1’をそれぞれ挿入する。既述したように、回動摘み62および接続部材64を動かして巻取機構6を作動させると共に、既に生体組織に通されている糸2の片方2aを、吸引手段を用いて、一方の結び目形成器具1’aの操作杆3aの先端から吸引し、巻取機構6で確実に保持する程度まで巻き取る。巻き取った後は、ロック部材65により巻取機構6の回転をロックしておく。
【0105】
結び目形成器具1’aにおける巻取リール71を回転させてワイヤ54を巻き取ると、前記形成されたループは、ほぼ同一平面内で形成される渦巻き状のものとなる。
【0106】
次に、引張リール72を回転させると、前記うず巻き状のループは、渦の回転軸方向にループが引き伸ばされて、螺旋状(コイル状)となり、さらに可変湾曲部32の基端部が湾曲して、先端が操作装置4の方向へ向く(図11の状態)。
【0107】
他方の結び目形成器具1bの先端を略直線状態としたまま、図11に示されているように、前記螺旋状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、略直線状の操作杆3bの先端から、他方の糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6にて確実に保持する。
【0108】
可変湾曲部32のループを挿通している操作杆3bを抜き取ると、図16Aに示すように、螺旋状のループ内を糸2bが挿通する。この糸2bを、図16B、Cに示すように、湾曲している可変湾曲部32の先端を迂回するように、ループの外側に移動させると、図16D、図17Aに示すように、前記と同様、糸2aおよび2bが交差して1重の結び目が形成され、さらに可変湾曲部32の先端を迂回するようにして、もう一回りさせると(図17B)ループ内から糸2bが外れて、2重の結び目が形成される(図17C)。
【0109】
このようにして、糸2aおよび2bが複数回ねじれ合った第1の結び目21’が形成されるが、この操作は、操作杆3a、即ちループを形成している側の操作杆を動かすことにより行ってもよい。
【0110】
次に、結んだ糸を生体組織に密着させるために、結び目形成器具1’aおよび/または結び目形成器具1’bの緊張手段を作動させる。即ち、例えば両結び目形成器具1’a、1’bにおいて、それぞれ先端部を略直線状態に戻した後、ロック部材65による回動摘み62の回転規制を解除し、スプリング63の付勢力によって巻取軸61を回転させる。これにより、糸2a、2bは序々に巻き取られる。そして、操作杆3a、3bの先端にそれぞれ糸2a、2bが引き込まれていくにつれて、該操作杆3a、3bを生体組織に向けて突き進め、その先端で第1の結び目21’を組織に押し付けることで、生体組織に密着した結び目を確実に作ることが可能となる。
【0111】
さらに、前記と同様の理由から、逆回りの第2の結び目22を形成する必要がある。
この場合には、まず両ロック部材65によるロックを解除し、両結び目形成器具1’a、1’bの両巻取軸61を巻取方向とは逆方向に回転させつつ、操作杆3a、3bを後退させ、前記巻き取った糸2a、2bを結び目を形成できる程度に弛ませる。
次に、結び目形成器具1bの巻取軸61をさらに逆回転させて図6に示す状態すなわち、操作杆3b内に引き込んだ糸2bをフリーの状態とし、前記と同様の方法で糸2bを操作杆3b内から吐き出す。
次に、引張リール72を前記と逆方向へ回転し、ワイヤ56によって、結び目形成器具1’aの操作杆3aの可変湾曲部32を前記と逆向きに湾曲させて1重以上のループを形成し、このループに操作杆3bの先端を挿入する。操作杆3bの先端に、前記吐き出した糸2bを、吸引手段を用いて再度引き込み、操作杆3bを後退させてループから抜き取り、図18Aに示す状態とする。またこのとき両結び目形成器具1’a、1’bにおいて巻取機構6に糸2a、2bを確実に保持する。以後は上記説明した内容と同様の操作を行い、図18B〜Dに示すようにして、第2の結び目22を形成し、さらにこれを前記と同様にして生体組織に密着させる。
【0112】
このようにして、糸2a、2bが結ばれたら、両結び目形成器具1’a、1’bの可動把持部42をそれぞれ操作して、巻取歯車43を回転させてワイヤ57を引っ張り、鋏36を作動させて糸2a、2bを切断する。
【0113】
なお、第2の結び目の形成は、操作杆3a内から糸2aを一度吐き出し、再度吸引する方法や、両操作杆3a、3b内からそれぞれ糸2a、2bを一度吐き出し、再度吸引する方法により行ってもよい。また、前記とは逆に、操作杆3bの先端部でループを形成し、操作杆3aを前記ループに挿通して、結び目を形成してもよい。
以上のような操作によれば、体腔内で縫合や結紮の処理が容易にかつ迅速に行え、しかも糸を自動的に巻き取るので、左右の手でそれぞれ器具1’a、1’bを操作している時に手が足りなくなるという不都合も生じない。またホチキス針でなく、糸によって処置を行うことができるため、安全かつ確実であり、かつ2重あるいは3重以上の結び目を一回の操作で簡単に作ることができ、より強固にかつ確実に結紮や吻合等を行うことができる。
【0114】
なお、螺旋状の形成されるループの数を増やすことによって、3重、4重の結び目を形成することができ、より強固な結び目を作ることができる。特に、引張リール72を構成する各リール72a、72b、72c、72dが独立して回転するように構成すると、任意のワイヤを操作することができ、可変湾曲部32によって形成される螺旋の数を1重、2重、3重と選択することがきる。このようにすれば、単一の結び目形成器具で、複数種類の結び目を作ることができる。
また、可変湾曲部32の湾曲を操作するワイヤの数を増やすことによって、第2の結び目を2重あるいは3重以上にすることも可能である。
【0115】
次に、本発明の結び目形成器具の第3の実施例について説明する。図19、図20および図21は、それぞれ本発明の第3の実施例の結び目形成器具の部分斜視図である。以下、この第3の実施例を説明するにあたり、前記第1の実施例と同一の部材については同一の符号を用い、同様の構成については、その説明を省略する。
【0116】
本発明の第3の実施例の結び目形成器具8は、2本の前記と同様の構成の操作杆3a、3bと、操作杆3a、3bを体外より遠隔操作する図示しない操作装置とを有している。この場合、操作装置は、前記と同様のハンドル手段37、巻取機構6、湾曲操作機構7および吸引手段等をそれぞれ2組有し、可変湾曲部32の湾曲操作、糸2a、2bの吸引操作、巻取操作、緊張操作、切断操作等を操作杆3a、3bのそれぞれに対し独立して行うことができるように構成されている。
【0117】
操作装置の先端付近には、結束管9が設置されており、この結束管9内には、操作杆3a、3bの基端部が、操作杆3a、3bをその軸方向に移動可能に収納されている。すなわち、操作杆3a、3bは、結束管9内に挿入されて束ねられた状態で、結束管9ごと前記トロカール管内に挿入され、体腔内へ導かれる。
結び目形成器具8の操作杆3a、3bにおいて、略直線部31、可変湾曲部32の構造やワイヤの配置等は、前記第1の実施例と同様である。
【0118】
以上のように構成された本発明の結び目形成器具8を用いた結び目形成方法の一例について、図19ないし図21に基づき説明する。腹腔内と体外とを連通させるトロカール管と呼ばれる連通管を腹壁に複数設置し、そのうちの1つより本発明の結び目形成器具8の操作杆3a、3bをそれぞれ略直線状態として管体8とともに挿入する。
例えば、トローカル管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている2本の糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。
【0119】
既述のごとく巻取機構6を作動させるとともに、図19に示されているように、既に生体組織に通されている糸2の片方2aを、吸引手段を用いて一方の操作杆3aの先端から吸引し、巻取機構6で確実に保持する程度まで巻き取り、その回転をロックしておく。
【0120】
図20に示されているように、引張リールの操作により操作杆3aの可変湾曲部32を湾曲させて、α状のループを形成し、次いで巻取リールを操作して前記ループを略直線部31に対し傾斜させる。
【0121】
他方の操作杆3bの可変湾曲部32を略直線状態としたまま、図21に示されているように、前記α状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、略直線状の操作杆3bの先端から、他方の糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6で確実に保持する。このとき、操作杆3bの先端は、ループから抜き取られた位置まで後退させておく。
以後、前述した第1の実施例と同様にして糸2a、2bによる第1の結び目および第2の結び目を形成する。
【0122】
このような結び目形成器具8によれば、操作杆3aおよび3bが結束管9により束ねられて1つの器具にまとめられているため、取り扱いがし易く、しかも、使用するトロカール管が1つでよいため、トロカール管の数がより少なくなり、患者の負担が軽減するといる利点がある。
【0123】
なお、結び目形成器具8の他の応用例として、操作杆3aおよび3bの少なくとも一方を、前述した第2の実施例のような可変湾曲部32が螺旋状(コイル状)のループを形成する構成としたものが挙げられる。
また、操作杆3aおよび3bのうちの一方は、可変湾曲部32を有さず、すなわち先端部が湾曲しない略直線状態であるものであってもよい。
【0124】
次に、本発明の結び目形成器具の第4の実施例について説明する。図22〜図29は、それぞれ本発明の第4の実施例の結び目形成器具による結び目形成工程を示す部分斜視図である。以下、この第4の実施例を説明するにあたり、前記第3の実施例と同一の部材については同一の符号を用い、同様の構成については、その説明を省略する。
【0125】
本発明の第4の実施例の結び目形成器具10は、操作杆3c、3dと、操作杆3c、3dを体外より遠隔操作する図示しない操作装置と、前記と同様の結束管9を有している。
結束管9内には、操作杆3c、3dの基端部が、軸方向に移動可能に収納されている。すなわち、操作杆3c、3dは、結束管9内に挿入されて束ねられた状態で、結束管9ごと前記トロカール管内に挿入され、体腔内へ導かれる。
【0126】
操作杆3cは、硬質材料で構成される外管38と、外管38内に挿入される内管39とで構成されている。内管39の先端部は、可撓性を有している。そして、内管39の先端部の外周には、湾曲状態を形成するためのコイル391が巻き付けられており、このコイル391の弾性力により、図23および図24に示すように、内管39を自然状態(外力を加えない状態)としたとき、可変湾曲部32が所望のループ形状に湾曲する。図22に示すように、内管39を外管38に対し軸方向に相対的に移動して、内管39を先端まで全て外管38内に挿入すると、可変湾曲部32は、外管38により拘束されてその形状が略直線状に規制される。
【0127】
なお、コイル391の構成材料としては、例えば、SUS304、SUS316、PHステンレス(析出硬化ステンレス)等のステンレス鋼、Ni−Ti系合金等の超弾性合金などの各種金属や、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリアリレート、ポリテトラフルオロエチレン等の各種樹脂が挙げられる。
【0128】
一方、操作杆3dは、前述したような可変湾曲部を有さず、すなわち先端部が湾曲しない略直線状の管体で構成されている。
【0129】
操作杆3c、3dの基端側に設置された操作装置は、前記と同様の巻取機構6、吸引手段等をそれぞれ2組有し、操作杆の軸方向の移動操作、糸2a、2bの吸引操作、巻取操作、緊張操作等を操作杆3c、3dのそれぞれに対し独立して行うことができるように構成されている。さらに、操作装置は、操作杆3cの可変湾曲部32の湾曲操作を行う湾曲操作機構を備えている。この場合、結び目形成器具10における湾曲操作機構は、前述した複数のワイヤおよびその牽引手段であるリール71、72ではなく、内管39を外管38に対し軸方向に相対的に移動して、内管39の湾曲部32を外管38の内腔内に収納したり外管38の先端から突出させたりすることができる機構である。
【0130】
以上のように構成された本発明の結び目形成器具10を用いた結び目形成方法の一例について、図22〜図29に基づき説明する。
腹壁に複数設置されたトロカール管のうちの1つより本発明の結び目形成器具10の操作杆3c、3dをそれぞれ結束管9とともに挿入する。このとき、操作杆3cの可変湾曲部32を外管38内に収納し、操作杆3cを略直線状態としておく。
【0131】
例えば、トロカール管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。
図22に示されているように、生体組織に通されている一方の糸2aを、吸引手段を用いて一方の操作杆3cの先端から吸引し、前述したように巻取機構6を作動して糸2aを確実に保持する程度まで巻き取り、その回転をロックしておく。
【0132】
図23に示されているように、操作杆3cの外管38を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38の先端より突出させる。これにより、その可変湾曲部32は、湾曲してα状のループを形成する。
図24に示されているように、他方の操作杆3dを前進させて、前記α状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、操作杆3dの先端から、他方の糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6で確実に保持する。このとき、操作杆3dの先端は、ループから抜き取られた位置まで後退させておく。
【0133】
図25に示されているように、操作杆3cの内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納する。これにより、糸2aが糸2bに巻き付き、第1の結び目21が形成される。必要に応じ、前述したように巻取機構6を作動して糸2aを緊張させるとともに、操作杆3cを生体組織へ向けて前進させ、生体組織に密着した固い結び目を形成する。
巻取機構6のロックを解除して糸2a、2bを弛めた後、図26に示されているように、操作杆3d内から糸2bを前記と同様の方法で吐き出し、さらに、図27に示されているように、操作杆3cの内管39を先端側へ前進させて可変湾曲部32を外管38の先端より突出させ、その可変湾曲部32をループ状にする。
【0134】
図28に示されているように、操作杆3dを前進させて、可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、操作杆3dの先端から、糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6で確実に保持する。
図29に示されているように、操作杆3cの内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納する。これにより、糸2aが、糸2bに巻き付き、第2の結び目22が形成される。前述したように巻取機構6を作動して糸2aおよび2bを緊張させるとともに、操作杆3cおよび3dを生体組織へ向けて前進させ、生体組織に密着した固い結び目を形成する。
【0135】
このような結び目形成器具10によれば、前記結び目形成器具8と同様の利点に加え、操作杆3cについては、可変湾曲部32を湾曲させるためのワイヤやそれらを牽引操作するためのリール等を必要とせず、操作杆3dについては、可変湾曲部32を有さず、よって、操作杆3c、3dのさらなる細径化が図れるとともに、可変湾曲部32の湾曲操作も極めて簡単であり、可変湾曲部32が常に、予め設定された一定の形状に湾曲するため、再現性に優れるという利点がある。なお、結び目形成器具10の他の応用例として、操作杆3cを前述した第2の実施例のような可変湾曲部32が螺旋状(コイル状)のループを形成する構成としたものが挙げられる。
【0136】
次に、本発明の結び目形成器具の第5の実施例について説明する。図30〜図33は、それぞれ本発明の第5の実施例の結び目形成器具の部分斜視図である。以下、この第5の実施例を説明するにあたり、前記第4の実施例と同一の部材については同一の符号を用い、同様の構成については、その説明を省略する。
【0137】
本発明の第5の実施例の結び目形成器具11は、操作杆3c、3d’と、操作杆3c、3d’を体外より遠隔操作する図示しない操作装置と、前記と同様の結束管9を有している。
【0138】
操作杆3d’は、操作杆3cと同様の構成である。この場合、操作杆3cの可変湾曲部32と操作杆3d’の可変湾曲部32とは、互いに逆方向のループが形成されるように構成されている。
【0139】
操作杆3c、3d’の基端側に設置された操作装置は、前記と同様の巻取機構6、吸引手段および湾曲操作機構等をそれぞれ2組有し、操作杆の軸方向の移動操作、可変湾曲部32の湾曲操作、糸2a、2bの吸引操作、巻取操作、緊張操作等を操作杆3c、3dのそれぞれに対し独立して行うことができるように構成されている。
【0140】
以上のように構成された本発明の結び目形成器具11を用いた結び目形成方法の一例について、図30〜図33に基づき説明する。
腹壁に複数設置されたトロカール管のうちの1つより本発明の結び目形成器具11の操作杆3c、3d’をそれぞれ管体8とともに挿入する。このとき、操作杆3cおよび3d’の両可変湾曲部32をそれぞれ外管38内に収納し、操作杆3cおよび3d’をいずれも略直線状態としておく。
【0141】
例えば、トロカール管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている糸2a、2bについて、前記実施例4と同様にして第1の結び目21を形成する。
次に、巻取機構6のロックを解除して糸2a、2bを弛めた後、図31に示されているように、操作杆3c内から糸2aを前記と同様の方法で吐き出す。さらに操作杆3cは可変湾曲部32を外管38内に収納した状態、操作杆3d’は可変湾曲部32を外管38の先端より突出させた状態とし、操作杆3d’の可変湾曲部32により前記と逆向きのα状のループを形成する。
【0142】
図32に示されているように、操作杆3cを前進させて、可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、操作杆3cの先端から、糸2aを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6で確実に保持する。
操作杆3d’の内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納する。これにより、図33に示されているように、糸2bが糸2aに巻き付き、第2の結び目22が形成される。前述したように巻取機構6を作動して糸2aおよび2bを緊張させるとともに、操作杆3cおよび3dを生体組織へ向けて前進させ、生体組織に密着した固い結び目を形成する。
【0143】
次に、本発明の結び目形成器具11を用いた結び目形成方法の他の例について、図34、図35、図32、図33に基づき説明する。
腹壁に複数設置されたトロカール管のうちの1つより本発明の結び目形成器具11の操作杆3c、3d’をそれぞれ結束管9とともに挿入する。このとき、操作杆3cおよび3d’の両可変湾曲部32をそれぞれ外管38内に収納し、操作杆3cおよび3d’をいずれも略直線状態としておく。
【0144】
例えば、トロカール管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。
生体組織に通されている一方の糸2bを、吸引手段を用いて一方の操作杆3d’の先端から吸引し、前述したように巻取機構6で確実に保持する。
【0145】
次に、操作杆3d’の内管39を先端側へ前進させてその可変湾曲部32を外管38の先端より突出させ、可変湾曲部32にα状のループを形成する。さらに、図34に示されているように、他方の操作杆3cを前進させて、前記α状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。
図35に示されているように、操作杆3cの内管39を先端側へ前進させてその可変湾曲部32を外管38の先端より突出させ、可変湾曲部32に糸2bを囲むα状のループを形成する。その後、糸2aを、吸引手段を用いて操作杆3cの先端から吸引し、前述したように巻取機構6で確実に保持する。
【0146】
操作杆3cの内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納するとともに、操作杆3cを基端側へ若干後退させる。これにより、図32に示されているように、糸2aが糸2bに巻き付き、第1の結び目21が形成される。
図32に示されている状態から、操作杆3cをさらに基端側へ後退させて、その先端を可変湾曲部32のループから抜き取るとともに、操作杆3d’の内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納する。これにより、図33に示されているように、糸2bが糸2aに巻き付き、第2の結び目22が形成される。以後、前記と同様にして、生体組織に密着した固い結び目を形成する。
【0147】
このような方法によれば、操作杆3c、3d’の挿通路内に導入した糸2a、2bを吐き出すことなく、第1の結び目21および第2の結び目22を形成することができるので、操作がより簡単であり、処置時間もさらに短縮される。
なお、結び目形成器具11の他の応用例として、操作杆3cおよび3d’のうちの少なくとも一方を、前述した第2の実施例のような可変湾曲部32が螺旋状(コイル状)のループを形成する構成としたものが挙げられる。
【0148】
上記各実施例により結び目を形成するのに先立ち、本発明の結び目形成器具により第1の糸および/または第2の糸を保持しつつ体腔内へ搬送し、搬送された糸により例えば針、鉗子、縫合器、結紮器を用いて生体組織に縫合や結紮を行った後、前記と同様にして結び目を形成してもよい。
以上説明した各実施例の構造の他、糸導入手段は、前述したような吸引手段に限らず、例えば対となっている引込ローラを複数個、連続的に操作杆3内に配置し、これらを連続的に駆動させて、糸を順次取り込む構成とすることもできる。
【0149】
また挿通路30内に操作装置4側から、先端にフックなどのあるガイドワイヤーを挿入して、操作杆3の先端から突出させ、ガイドワイヤーで糸を引っ掛けた後、ガイドワイヤーを引き戻して糸を取り込むような方法を用いてもよい。
【0150】
可変湾曲部32の湾曲する形状は、α状のように完全にループを形成しなくてもよく、他方の結び目形成器具1の操作杆3の先端が挿通できる程度の空間が形成できれば、どのような形状であってもよい。例えば、半円形などであっても、結び目を作ることは可能である。
【0151】
また、可変湾曲部32を構成する複数の連結された管体33の各長さを、変化させてもよい。
【0152】
所定のワイヤを引っ張って、可変湾曲部を湾曲する際、基端部側の曲率が大きくなり、先端側は小さくなる傾向にあるが、先端側が短くなるように、管体33の長さを変化させれば、先端側がより湾曲し易くなり、ワイヤの引っ張りによって、均一な螺旋形状のループを形成することが可能となる。
【0153】
以上説明した構成の他、可変湾曲部32の構造は、他の構造、例えば単位部材として節輪を用いてもよい。節輪とは直交する直径方向にそれぞれ接続軸を有した輪であって、この接続軸を介して複数の節輪を連結することによって、可変湾曲部が形成される。
【0154】
また、可変湾曲部32の湾曲する方向は上方向、下方向、左方向、右方向のいずれか1方向にのみとしてもよく、または上下方向、左右方向、上方向と右方向、上方向と左方向、下方向と右方向、下方向と左方向などのいずれか2方向としてもよく、さらには本実施例のような3方向とし、または上下左右方向の4方向とすることもできる。
【0155】
特に、上記各実施例の場合には、管体が球状関節により接続されているので、上記湾曲方向に限定されず、上記4方向以外の任意の方向に湾曲させることも可能であり、さらに軸線を中心として管体単独で回動することも可能な構成となっているため、螺旋状にループを形成するには好ましい構造となっている。
また、ワイヤ操作により所望に湾曲した可変湾曲部32は、自動的に元の略直線状態に戻るような構成としてもよい。すなわち、詳しくは、可変湾曲部32は、例えば軸方向に沿って設置された弾性体により付勢されて通常状態では、図3、図14または図19に示す基本姿勢すなわち略直線状態を維持し、ワイヤ牽引時には前述したようにループ状に湾曲し、それらのワイヤの張力を除去した場合には、前記弾性体の作用により基本姿勢に戻るように構成されてもよい。
【0156】
また、上記実施例では、保持手段および緊張手段を同じ巻取機構6にて構成したが、本発明はこれに限定されない。しかしながら、本実施例のように構成すれば、糸の保持および緊張を同一の機構で行うことができるため、装置の単純化を図ることができ、かつ糸を保持しながら容易に緊張させることができる。
【0157】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される操作杆と、前記操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、前記開口部より前記挿通路に糸を導入する糸導入手段と、前記操作杆の基端部に接続され、前記操作杆を体外より操作する操作装置とを有しており、前記操作杆の先端部は、前記操作装置の操作により、略直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態とに変化し得る可変湾曲部を構成しているため、体腔内で、吻合、縫合や結紮のための糸の結び目を容易にかつ確実に行うことができる。
【0158】
また、前記可変湾曲部が、1重のループまたは2重以上のループを形成するように湾曲する場合には、簡単な操作で糸の結び目を確実に形成することができる。特に、可変湾曲部が2重以上のループを形成するように湾曲する場合には、より強固な結び目による縫合、結紮等が可能となり、その操作の回数も少なく、処理の迅速化を図ることができ、患者の負担が軽減する。
【0159】
また、前記操作装置が、先端が前記可変湾曲部内の軸心から偏心した位置に固定された少なくとも1本のワイヤと、前記ワイヤを基端側へ引っ張って前記可変湾曲部を操作する湾曲操作機構とを有し、前記ワイヤが、前記先端が固定された位置から前記湾曲操作機構へ向けて、前記可変湾曲部に螺旋状に巻き付けられている場合には、可変湾曲部のループを確実に形成することができる。
【0160】
また、結び目形成器具が、体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される一対の操作杆と、これらの操作杆の基端部に接続され、各操作杆を体外より操作する操作装置と、両操作杆の基端部を束ねる結束部材とを有しており、両操作杆のうちの少なくとも一方の先端部が、前記操作装置の操作により、略直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態、特にループ状に湾曲した状態とに変化し得る可変湾曲部を構成しているものである場合には、取り扱いがし易く、結び目形成のために使用する連通管の数が減少し、患者の負担が軽減する。
【0161】
また、操作杆が、その先端部に設けられた自然状態で目的形状に湾曲する可変湾曲部と、前記可変湾曲部の形状を略直線状に規制する規制部材とを有するものである場合には、可変湾曲部を湾曲させるためのワイヤやそれらを牽引操作するためのリール等を必要とせず、構成が簡易であり、操作杆のさらなる細径化が図れるとともに、可変湾曲部の湾曲操作も極めて簡単であり、可変湾曲部32が常に、予め設定された一定の形状に湾曲するため、再現性に優れる。
【0162】
また、糸導入手段として、吸引手段を用いた場合には、生体組織に傷を付けることなく、かつ迅速に糸の挿通路への導入が可能となり、手術の手間を軽減し、時間の短縮を図ることができる。
【0163】
また、糸の保持手段を設けることにより、手などで糸が脱落しないよう保持する操作を行うことなく、糸を簡単かつ確実に結ぶことがでる。
【0164】
また、糸の緊張手段を設けることにより、手などで糸を引っ張るような操作を行うことなく、容易に強固な結び目を形成することができ、かつその結び目を生体組織に確実に密着させることができる。
【0165】
さらに、糸の切断手段を設けた場合には、糸の切断のために別途の器具を用いる必要がなく、かつそのような切断器具により糸の切断部を捜索する必要もないため、結び目形成後の処理を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の結び目形成器具の第1実施例の全体側面図であって、先端にループを形成した状態を示したものである。
【図2】図2は、可変湾曲部の内部構造を示す可変湾曲部の断面側面図である。
【図3】図3は、ワイヤの挿通状態を示す操作杆の断面平面図である。
【図4】図4は、切断手段の構成を示すもので、鋏の取り付け位置と構造を示す内部透視斜視図である。
【図5】図5は、切断手段の操作部の構造を示すもので、操作装置本体の部分側面図である。
【図6】図6は、巻取機構の断面側面図である。
【図7】図7は、巻取機構における回動摘みの底面図である。
【図8】図8は、巻取機構における板バネの平面図である。
【図9】図9A〜Dは、第1の実施例の結び目形成器具を用いて、結び目を形成する場合の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図10】図10A〜Dは、第1の実施例の結び目形成器具を用いて、固結びの結び目を形成する場合の2番目の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図11】図11は、本発明の結び目形成器具の第2の実施例の全体側面図であって、先端に螺旋状のループを形成した状態を示したものである。
【図12】図12は、操作杆の直線部の構造を示す操作杆の部分断面側面図である。
【図13】図13は、可変湾曲部の内部構造を示す可変湾曲部の断面側面図である。
【図14】図14は、ワイヤの挿通状態を示す操作杆の内部透視平面図である。
【図15】図15は、ワイヤの挿通状態を示す可変湾曲部の内部透視部分斜視図である。
【図16】図16A〜Dは、第2の実施例の結び目形成器具を用いて、結び目を形成する場合の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図17】図17A〜Cは、第2の実施例の結び目形成器具を用いて、結び目を形成する場合の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図18】図18A〜Dは、第2の実施例の結び目形成器具を用いて、固結びの結び目を形成する場合の2番目の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図19】図19は、本発明の結び目形成器具の第3の実施例の部分斜視図であって、両操作杆を直線状態としたときの構成を示したものである。
【図20】図20は、第3の実施例の結び目形成器具を用いて結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図21】図21は、第3の実施例の結び目形成器具を用いて結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図22】図22は、本発明の結び目形成器具の第4の実施例の部分斜視図であって、両操作杆を直線状態としたときの構成を示したものである。
【図23】図23は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第1の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図24】図24は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第1の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図25】図25は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第1の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図26】図26は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図27】図27は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図28】図28は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図29】図29は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図30】図30は、本発明の結び目形成器具の第5の実施例の部分斜視図である。
【図31】図31は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図32】図32は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図33】図33は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図34】図34は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図35】図35は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
1、8、10、11 結び目形成器具
2 糸
3 操作杆
30 挿通路
301 開口部
30 挿通路
31 略直線部
311 大径部
32 可変湾曲部
33 管体
331 挿通孔
332 端部
34 連結部材
35 被覆材
36 鋏
361 刃
362 刃
363 支点
37 操作部
38 外管
39 内管
391 コイル
4 操作装置
40 本体
41 把持部
411 ピン
42 可動把持部
420 接触面
421 スリット
422 歯
423 歯
43 巻取歯車
44 通路
45 吸引ノズル
51〜57 ワイヤ
6 巻取機構
61 巻取軸
611 孔
612 穴
62 回動摘み
621 孔
622 溝
623 凹部
63 スプリング
64 接続部材
641 棒状部
642 摘み部
65 ロック部材
651 係合部
652 アーム部
653 軸支部
654 付勢手段
66 板バネ
661 固定端
662 孔
663 凸部
7 湾曲操作機構
71 巻取リール
72 引張リール
9 結束管
【産業上の利用分野】
本発明は、生体内での糸の結び目を形成する技術に関し、詳しくは、例えば腹腔鏡下手術において、腹腔内で生体組織の縫合、吻合、結紮を行う際に、それに用いる糸を結ぶための結び目形成器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、虫垂炎の手術や胆嚢の切除術などにおいては、開腹手術の他に、非開腹で行う非開腹的腹腔鏡下手術を行う場合がある。この腹腔鏡下手術は、腹腔内に複数本のトロカール管と呼ばれる管体を挿入し、一本のトロカール管から挿入したカメラによって腹腔内をモニターし、他のトロカール管内に挿入された器具によって、モニターを見ながら腹腔内で手術を行うものである。
【0003】
ところで、上記腹腔鏡下手術においては、縫合や結紮を行う場合、糸を結ぶ操作に手間がかかっていた。例えば、体腔内にある糸を鉗子などの器具を用いてトロカール管より体腔外へ引き出し、体腔外で結び目を作った後、再度糸をトロカール管内を通して体腔内へ戻し、縫合や結紮を完了させていた。
【0004】
このような手順では、手術に手間と時間がかかり過ぎ、また感染の機会が増すため好ましくない。
【0005】
近年、このような、手間を解消するため、縫合や結紮を行うための特別の器具が開発されている。例えば、特開平3−12126号には、ホッチキス状の針を吻合や、縫合に用いる吻合・縫合器具が提案されている。この場合には、ホッチキス針が体内に残留するといった欠点があるとともに、操作ミスによって、腹腔内に針を落としてしまうという危険があり、さらに、糸によって縫合等する場合よりも強度が弱いといった欠点があった。
【0006】
また、一般の外科手術においては、太い血管の結紮など、強固に結び目を作る必要のある場合には、2重または3重に糸を絡ませて糸の結び目を作っていた。しかしながら、このような結紮や吻合などには、上記ホッチキス状の針を用いることはできず、また上記従来の方法で糸の結び目を作るには、より多くの手間と時間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、例えば腹腔のような体腔内において、吻合、縫合、結紮等のための糸の結び目を体外からの遠隔操作により容易かつ確実に形成することができる結び目形成器具を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、糸の結び目を強固に形成し、生体組織へ確実に密着させることができる結び目形成器具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、
糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、
体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される操作杆と、
前記操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、
前記開口部より前記挿通路に糸を導入する糸導入手段と、
前記操作杆の基端部に接続され、前記操作杆を体外より操作する操作装置とを有しており、
前記操作杆の先端部は、前記操作装置の操作により、直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態とに変化し得る可変湾曲部を構成している。
【0010】
前記可変湾曲部は、少なくとも1重のループを形成するよう湾曲することが好ましい。
【0011】
この場合、前記操作装置は、先端が前記可変湾曲部内の軸心から偏心した位置に固定された少なくとも1本のワイヤと、前記ワイヤを基端側へ引っ張って前記可変湾曲部を操作する湾曲操作機構とを有し、
前記ワイヤが、前記先端が固定された位置から前記湾曲操作機構へ向けて、前記可変湾曲部に螺旋状に巻き付けられて設けられていることが好ましい。
また、前記操作装置は、前記可変湾曲部の軸心を介して対向する位置にそれぞれ先端が固定された第1のワイヤおよび第2のワイヤと、前記第1のワイヤおよび第2のワイヤの一方を基端側へ引っ張って前記可変湾曲部を所望に湾曲させる湾曲操作機構とを有し、
前記第1のワイヤおよび第2のワイヤは、前記先端が固定された位置から前記可変湾曲機構へ向けて、それぞれ、前記可変湾曲部に対し螺旋状に、かつ相互に逆方向へ巻き付けられて設けられていることが好ましい。また、前記操作装置は、さらに、先端が前記可変湾曲部に固定された第3のワイヤと、前記第3のワイヤを基端側へ引っ張って前記ループの姿勢を変える姿勢変更機構とを有することが好ましい。
【0012】
また、前記可変湾曲部は、2重以上に重なったループを形成するよう湾曲することが好ましい。
【0013】
この場合、前記操作装置は、先端が前記可変湾曲部内の軸心から偏心した位置に固定された複数本のワイヤと、前記各ワイヤを基端側へ引っ張って前記可変湾曲部を操作する湾曲操作機構とを有し、
前記各ワイヤの先端は、それぞれ前記可変湾曲部の軸方向に所定の間隔をおいて固定されており、前記各ワイヤは、この固定位置から前記湾曲操作機構へ向けて、それぞれ前記可変湾曲部に螺旋状に巻き付けられて設けられていることが好ましい。
【0014】
また、前記結び目形成器具は、前記開口部から導入されて前記挿通路を挿通している第1の糸と、前記可変湾曲部に形成された前記ループ内を通る第2の糸とによって結び目を形成することが好ましい。
【0015】
また、前記可変湾曲部は、糸の挿通孔を有する複数の単位部材と、隣接する単位部材を揺動自在に連結する連結部材とを有し、
連結部材により隣接する単位部材同士を屈曲して連結することにより、前記可変湾曲部が全体で湾曲するように構成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、
体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される操作杆と、
前記操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、
前記開口部より前記挿通路に糸を導入する糸導入手段と、
前記操作杆の基端部に接続され、前記操作杆を体外より操作する操作装置とを有しており、
前記操作杆は、その先端部に設けられた自然状態で目的形状に湾曲する可変湾曲部と、前記可変湾曲部の形状を略直線状に規制する規制部材とを有することを特徴とする結び目形成器具である。
【0017】
また、本発明は、糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、
体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される一対の操作杆と、
前記各操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、
前記各開口部より前記各挿通路に糸を導入する糸導入手段と、
前記各操作杆の基端部に接続され、前記各操作杆を体外より操作する操作装置と、
前記両操作杆の基端部を束ねる結束部材とを有しており、
前記両操作杆のうちの少なくとも一方の先端部が、前記操作装置の操作により、略直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態、特にループ状に湾曲した状態とに変化し得る可変湾曲部を構成していることを特徴とする結び目形成器具である。
【0018】
前記可変湾曲部は、少なくとも1重のループを形成するよう湾曲することが好ましい。
【0019】
また、前記糸導入手段は、前記挿通路に連通するよう挿通路の基端側に接続された吸引手段であることが好ましい。
【0020】
また、前記結び目形成器具は、前記挿通路に導入された糸を保持する保持手段を有することが好ましい。また、前記結び目形成器具は、前記挿通路に導入された糸の緊張状態を維持する緊張手段を有することが好ましい。前記緊張手段は、前記糸を巻き取る巻取軸と、前記巻取軸を回動操作する回動摘みと、前記巻取軸を所定の回転方向に付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗して巻取軸の回転を阻止するロック部材とを有することが好ましい。
【0021】
また、前記結び目形成器具は、前記付勢部材の付勢力による前記巻取軸の回転を緩和する回転緩和手段を有することが好ましい。
【0022】
また、前記結び目形成器具は、前記操作杆内に設けられ、挿通路内に位置する糸を切断する切断手段を有することが好ましい。前記切断手段は、前記操作杆の先端部に設置された一対の刃を有する鋏と、先端が二股に分岐し、その分岐端がそれぞれ前記刃と反対側の端部に固定された鋏作動用ワイヤと、前記操作装置に設置され、前記鋏作動用ワイヤを牽引操作するハンドルとで構成されていることが好ましい。
【0023】
【実施例】
以下本発明の結び目形成器具の好適実施例について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の結び目形成器具の第1の実施例の全体側面図である。本図では、操作杆3の先端が、操作装置4に対して約90°回転している状態を示すものである。
【0024】
本発明の第1の実施例である結び目形成器具1は、腹壁を貫通して設置され、体腔の一部である腹腔内に体外とを連通させる連通管としての図示しないトロカール管内に挿入して、先端部を体腔内へ及ぼしめる操作杆3と、前記操作杆3を体外より遠隔操作するための操作装置4とを有している。
【0025】
操作杆3は、ほぼ直線状態である略直線部31と可変湾曲部32とを有している。略直線部31はその基端部が前記操作装置4の本体40に回動自在に接続されており、基端部の外周部には大径部311が設けられ、その外周面が前記本体40の両側部に突出している。
【0026】
この大径部311を手でつまんで回転操作することで、操作杆3を回転させることができる。図2に示されているように、略直線部31の内部には、軸方向に沿って挿通路30が形成されている。
【0027】
図3に示されているように、操作杆3内には、後述する可変湾曲部32の湾曲状態を調整するために、それぞれ設けられたワイヤ51、52、53が挿通している。また、操作杆3の下側には切断手段を操作するためのワイヤ54が挿通している。ワイヤの構成材料としては、強化糸や金属製の線材等が挙げられるが、可変湾曲部32の剛性を高くせず、容易に湾曲させることができる点で、強化糸を用いるのが好ましい。
【0028】
一方、可変湾曲部32は、前記略直線部31の先端に接続されている。可変湾曲部32は、図2に示されているように、複数の単位部材である管体33と、各管体33を連結する環状の連結部材34とを有している。管体33は、軸方向に貫通する挿通孔331を有し、その両端部332は球体となっている。連結部材34は、前記管体33の間に位置し、管体の端部332を突き合わせた状態で、2つの管体33の端部332の外側に外嵌されている。管状の連結部材34の両端部340の内周面は、前記管体33の端部332の球状の外周面が嵌合できるように、球状の凹面となっている。
【0029】
本実施例の場合には、前記略直線部31の先端は、可変湾曲部32との接続口312となっている。この接続口312には、管体33の端部332が揺動自在に嵌合し得る球状の凹面を有する部分が形成されており、そこに可変湾曲部32の基端に位置する管体33の端部332が嵌合している。
【0030】
管体33は、連結部材34に対して、端部332に形成されている球面を摺動させながら、任意の方向に揺動することができる。即ち、連結部材34と管体33は球面接触であるため、連結部材34に対する管体33の揺動方向に特に制限はない。
【0031】
従って、可変湾曲部32は、管体33を突き合わせて球体関節を形成する連結部材34において、管体33間を屈曲させることにより、可変湾曲部32自体の形状を、全体としてほぼ連続した湾曲形状にすることができる。そして、任意の方向に任意の湾曲形状を作ることが可能となる。
【0032】
また、前記連結部材34の外周には、可撓性を有する被覆材35が外装されている。また、ワイヤが動き易いように、ワイヤの外面または被覆材35の内側に、シリコーンやグリース等の潤滑剤を塗布してもよい。
【0033】
各管体33の挿通孔331および各連結部材34の内腔によって、挿通路30の一部が構成される。挿通路30の先端、即ち可変湾曲部32の先端は、操作杆3の先端に開口する開口部301となっている。
【0034】
以上のような構成によって、可変湾曲部32はほぼ直線的な略直線状態と、任意の形状に湾曲した湾曲状態とに形状を変化することができる。
【0035】
また、図3に示されているように、先端部には、横断面において対向する位置(本実施例では、横断面正面視における左右位置)に、それぞれ前述のワイヤ51、52の先端が固定されている。そして、ワイヤ51、52は、それぞれ可変湾曲部32の各連結部材34の外周面に沿って巻き付けられて、前記被覆材35の内側を挿通し、可変湾曲部32の基端部付近で、横断面内において先端の位置と反対側の位置に達し、さらに前記略直線部31内を軸線と平行に通過している。
なお、図示されていないが、連結部材34の外周面には、各ワイヤが挿入されてワイヤの移動を円滑に行わせるためのワイヤ案内用の溝が設けられていてもよい。
【0036】
また、ワイヤ53は、横断面正面視において、上部に固定され、そのまま軸線に沿って可変湾曲部32内を挿通している。ワイヤ53の先端の軸方向における固定位置は、可変湾曲部32の中央から基端部へ寄った位置である。
【0037】
以上のように配置されたワイヤ51、52、53を引っ張ることで可変湾曲部32の形状を操作する。ワイヤ51または52を引っ張ると、可変湾曲部32はその引っ張ったワイヤの方向に湾曲し、α状の形状となる。この時、ワイヤ51、52は可変湾曲部32の連結部材34に巻きついた状態で操作杆3内を挿通しているので、可変湾曲部32は螺旋状に湾曲して、1重のループを形成する。
【0038】
また、可変湾曲部32の先端部には、糸を切断する切断手段が設けられている。切断手段は、図4に示されている鋏36と、図5に示されている該鋏36を作動させるハンドル37とを有している。
【0039】
前記鋏36を構成する各刃361、362は、可変湾曲部32の横断面形状に合わせて、すなわち外側に凸に湾曲した形状としても良い。鋏36の支点363を中心とした、刃361、362の反対側には、ワイヤ54の先端がそれぞれ接続されている。
【0040】
ワイヤ54の先端は、二股に分岐しており、分岐したそれぞれの先端は、鋏36の基端、すなわち前記各刃361、362の反対側の端部に接続される。このような分岐したワイヤ54は、鋏36の近傍で一本に束ねられる。従って、ワイヤ54を引っ張ると、分岐されたワイヤは、鋏36が閉じる方向に鋏36の基端部を引っ張る。また、この鋏36は、ワイヤ54が弛んでいるときには、例えばバネのような図示しない付勢部材により刃361、362が開く方向に付勢されている。
【0041】
以上のように構成された操作杆3の外径は、トロカール管内に挿入可能な太さであればよく、例えば、3〜5mm程度である。腹腔鏡下手術においては、操作杆3の全長は、350〜400mm程度であるのが好ましいが、この好ましい長さは手術をする部位、患者の体格、年齢などによって若干異なる。
【0042】
また、可変湾曲部32の長さは、30〜50mm程度であるとよい。この程度より短かすぎると、形成するループの大きさが小さくなって、ループに糸を通して結び目を形成することが難しくなる。また、長過ぎると、ループを形成するために操作杆3の先端が移動する空間を広くとらなければならなくなり、体内の狭い空間内で操作するのが困難となる。
【0043】
操作装置4には、前記ワイヤ51、52、53、54をそれぞれ引っ張るための機構と、挿通路30を挿通してきた糸を保持し、さらに糸が緊張状態を常時維持できるようにする緊張手段とが設けられ、さらに、糸を挿通路30へ取り込むための吸引手段が接続されている。
【0044】
操作装置4の本体40は、下部に固定把持部41を有し、該固定把持部41の基端部近傍には、可動把持部42が揺動自在に取り付けられている。把持部41の基端部であって、かつ可動把持部42の取り付け位置の近傍には、巻取歯車43が軸支されている。該巻取歯車43にはワイヤ54を巻き取る巻取軸(図示しない)が一体となっており、後述するハンドル操作により巻取歯車43を回転させることによって、ワイヤ54が巻き取られて、ワイヤ54を引っ張り、切断手段を作動させる。
【0045】
一方、前記可動把持部42には、上下方向へスリット421が形成され、該スリット421内にピン411が嵌入されている。ピン411は、本体40に立設され、可動把持部42の揺動の支点となる。
【0046】
可動把持部42は前記ピン411を中心として揺動し、かつその揺動中心は、可動把持部42を移動させて前記スリット421に対するピン411の位置を変更することによって変えることができる。
【0047】
可動把持部42において、前記巻取歯車43に対向する側面は、巻取歯車43の周面に沿って、湾曲した接触面420が形成されており、該接触面420の上下端部には、それぞれ前記巻取歯車43に噛合する歯422、423が設けられている。上記固定把持部41、可動把持部42および巻取歯車43により、鋏作動用ワイヤ54を牽引操作するハンドル手段37が構成される。
次に、ハンドル手段37によるハンドル操作について説明する。
【0048】
可動把持部42を下方にスライドさせて、スリット421の上方にピン411を位置させ、固定把持部41と可動把持部42とが開く方向に可動把持部42を揺動させると、歯422と巻取歯車43が噛合する。次に、固定把持部41と可動把持部42とが開く方向に可動把持部42をさらに動かすことにより、歯422によって巻取歯車43が図中反時計方向に回転し、ワイヤ54を弛ませる。この操作によって、操作杆3の先端部に設けられている鋏36が開く。
【0049】
逆に鋏36を閉じて、糸を切断する場合には、最初に可動把持部42を上方にスライドさせて、スリット421の下部にピン411を位置させ、把持部41と可動把持部42とが閉じる方向に可動把持部42を揺動させると、歯423と巻取歯車43が噛合する。次に、固定把持部41と可動把持部42とが閉じる方向に可動把持部42をさらに動かすことにより、歯423によって巻取歯車43が図中時計方向に回転し、ワイヤ54を巻取歯車43に巻き取ることができる。この結果、ワイヤ54が牽引されて鋏36が閉じ、挿通路30を挿通している糸を切断する。
【0050】
この操作部37によれば、一般の鋏と同様の操作感覚で、糸を切断できるといった利点がある。
【0051】
一方、本体40には、接続されている操作杆3の挿通路30に、一端が接続している通路44が設けられている。この通路44の他端は、本体40の後部に開口しており、この開口部分に、糸の吸引手段として、図示しない吸引装置の吸引ノズル45が接続される。
吸引装置を作動して吸引ノズル45より吸引すると、通路44および挿通路30内に負圧が生じ、操作杆先端の開口部301より糸が吸い込まれ、挿通路30および通路44内に導入される。
なお、吸引装置としては、モータ等の駆動源により作動するものの他、例えばゴム製のバルーンまたはベローズと逆止弁とより構成され、手動でバルーン又はベローズを収縮させて空気を吸引する構成のものであってもよい。
【0052】
前記通路44において、吸引ノズル45と、操作杆3の挿通路30の基端部との間には、緊張手段としての巻取機構6が設けられている。図6は巻取機構6の構成例を示す断面側面図である。
【0053】
図6に示すように、巻取機構6は、前記通路44を塞ぐ位置に嵌入され、本体40に回動自在に取り付けられた巻取軸61と、巻取軸61の先端に、回動自在に装着された回動摘み62と、回動摘み62と、本体40との間に介挿され、巻取軸61に巻き付けた状態で装着されている巻取軸61を所定の回転方向に付勢する付勢部材であるスプリング63と、回動摘み62が巻取軸61と一体として回転し得るように接続する接続部材64と、回動摘み62が前記スプリング63の付勢力により回転しないようにロックするロック部材65とを有している。
【0054】
巻取軸61には、通路44とほぼ同径の孔611が形成されており、巻取軸61を回転させることによって、通路44と孔611の連通状態(吸引可能な状態)と非連通状態(吸引不可能な状態)とに切換えることができる。なお、糸の吸引操作は、吸引装置を直接操作することにより行ってもよい。吸引装置は、通常の病院等の医療機関であれば設置されている一般的な設備であり、どの病院等でも吸引手段を糸導入手段として用いることができる点で、汎用性がある。
【0055】
本体40の外側に突出している巻取軸61の先端には、断面形状がほぼ正六角形である穴612が形成されており、さらにその上には、回動摘み62が回動自在に覆い被せられている。
【0056】
回動摘み62の中心には、前記穴612とほぼ同じ正六角形の孔621が形成されており、前記孔621と穴612には、接続部材64が挿脱自在に嵌入されている。接続部材64は、前記孔621と穴612の断面形状とほぼ同じ断面形状、即ち、断面がほぼ正六角形である棒状部641を有し、その一端には摘み部642を有している。この接続部材64を孔621と穴612とに同時に挿入することによって、回動摘み62と巻取軸61とは一体として回動する。回動摘み62と巻取軸61との一体回動を解除し、回動摘み62が巻取軸61に対してフリー回転し得るようにするには、図6中の二点鎖線で示すように、接続部材64の摘みを摘んで、棒状部641が穴612から抜ける程度まで、接続部材64を引き抜く。
【0057】
巻取軸61に外装されているスプリング63の一端は、本体40に係止され、他端は前記回動摘み62に係止されている。このため、回動摘み62を摘んで回転させると、その回転方向と逆方向にスプリング63による付勢力が発生する。この状態で、接続部材64を押し込んで回動摘み62と巻取軸61を接続すると、スプリング63の付勢力で巻取軸61が回転し、糸を巻き取ることができる。また、回動摘み62の底部には、図7に示すように、外周縁に沿って、等間隔で凹部623が形成され、回動摘み62の外周面には、軸方向に形成された溝622が等間隔で円周方向に刻まれている。
【0058】
巻取軸61の近傍には、ロック部材65が立設されている。ロック部材65は、前記回動摘み62の溝622に係合する係合部651が上端部に形成され、基端部には、L字型に屈曲してアーム部652が形成されている。そして、ロック部材65は、その屈曲点が軸支部653とされ、本体40に揺動自在に支持されている。アーム部652の先端部には、本体40との間に介挿されている付勢部材654の一端が当接しており、該アーム部652を上方に付勢している。これにより、前記係合部651は、常時回動摘み62の溝622に係合する方向へ付勢される。前記係合部651が回動摘み62の溝622に係合している場合は、回動摘み62の回転は規制される。
【0059】
ロック部材65による回動摘み62の回転のロックを解除する場合には、アーム部652の先端部を本体40の方へ押し込む。これにより、ロック部材65が揺動し、係合部651が溝622から外れて、回動摘み62の回転のロックが解除される。
【0060】
一方、巻取軸61に対して、前記ロック部材65が設けられている位置の反対側には、板バネ66が固定されている。図8に示されているように、該板バネ66は、本体40に固定するための固定端661と、巻取軸61が挿通する孔662と、固定端661の反対側の端に形成された凸部663とを有している。板バネ66の弾性力により、凸部663は、回動摘み62の底面に形成されている凹部623に当接する。このような板バネ66、凸部663および凹部623により、スプリング63の付勢力による巻取軸61の回転を緩和する回転緩和手段が構成される。
【0061】
回動摘み62を回転させると、板バネ66の凸部623が回動摘み62の凹部623に順次係合する。スプリング63の付勢力によって、回動摘み62と巻取軸61とが回転した場合、この板バネ66による凸部663と凹部623との係合動作により、巻取軸61が加速して高速で回転することなく、緩やかに巻取動作を行わせることができる。
【0062】
糸2を巻取る場合には、糸導入手段である吸引手段によって、糸2を巻取軸61の孔611まで引き込み、その状態で、巻取軸61を回転させる。これにより、糸2は孔611内に位置した状態で巻取軸61に巻き付けられ、挿通路30から抜け落ちないように保持される。
【0063】
次に、操作杆3の可変湾曲部32を操作する湾曲操作機構7の説明をする。
図1および図3に示されているように、本体40の操作杆3が接続されている接続部分の近傍には、巻取リール71と、引張リール72とが、本体40に軸支されて、回動自在に設けられている。
【0064】
巻取リール71には、ワイヤ53が巻き付けられ、ワイヤ53を巻き取って、ワイヤ53を牽引することにより、可変湾曲部32を上方へ湾曲させることができる。巻取リール71を回転させるには、リールの側面を指でしごいて送るようにする。
【0065】
巻取リール71はリールに限らず、ワイヤ53を引っ張る機構であればよく、例えばレバーの操作や、単に手でワイヤを引き抜く操作をすることによって、可変湾曲部32を湾曲させることもできる。
【0066】
引張リール72には、前記ワイヤ51、52がそれぞれ反対方向に巻き付けられている。従って、引張リール72を一定方向に回転させると、ワイヤ51、52のうちの一方を引っ張り、他方を緩ませる構成となり、一方のワイヤを引っ張って可変湾曲部32を湾曲させる時、他方のワイヤが突っ張って、湾曲操作の邪魔になることはない。
【0067】
また、巻取リール71を回転させると、ワイヤ53が引っ張られ、引張リール72の作用によって、可変湾曲部32で構成されたループが、操作杆3の略直線部31に対して傾斜する。このように、ループを傾斜させることによって、ループ内に、糸を通し易くする。
【0068】
以上のように構成された、本発明の結び目形成器具1を用いた結び目形成方法の一例について、図9および図10を参照しつつ説明する。腹腔内と体外とを連通させるトロカール管と呼ばれる連通管を腹壁に複数設置し、結び目形成器具1を2個用いる。
例えば、トローカル管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている2本の糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。なお、糸2a、2bは、異なる2本の糸でも、つながった一本の糸の両端部でもよい。
【0069】
それぞれ異なるトロカール管から、各々の操作杆3a、3bの可変湾曲部32を真っ直ぐにした状態で、結び目形成器具をそれぞれ挿入する。既述したように、回動摘み62および接続部材64を動かして巻取機構6を作動させると共に、既に生体組織に通されている医療用の糸2のうちの片方2aを、吸引手段を用いて、一方の結び目形成器具1aの操作杆3aの先端から吸引し、巻取機構6で確実に保持する程度まで巻き取る。巻き取った後は、ロック部材65により巻取機構6の回動をロックし、糸2aを保持しておく。
【0070】
結び目形成器具1aにおける引張リール72を所定方向に回転し、可変湾曲部32を湾曲させて、α状のループを形成する。次に、巻取リール71を回転させてワイヤ53を巻き取ると、前記形成されたループは、略直線部31に対して傾斜する姿勢にセットされる。
【0071】
他方の結び目形成器具1bの先端を略直線状態としたまま、図1に示されているように、前記α状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、略直線状の操作杆3bの先端から、他方の糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6にて確実に保持する。
【0072】
可変湾曲部32のループを挿通している操作杆3bを抜き取ると、図9Aに示すように、ループ内を糸2bが挿通する。この糸2bを、図9Bに示すように、湾曲している可変湾曲部32の先端を迂回するように、ループの外側に移動させると、図9Cに示すように、糸2bが操作杆3aの先端開口部より露出した糸2aと交差し、図9Dに示すように、糸2bが糸2aに絡んで一つ目の結び目21が形成される。なお、この操作は、操作杆3a、即ちループを形成している側の操作杆を動かす(移動または回転)ことにより行ってもよい。
【0073】
次に、結んだ糸を生体組織に密着させるために、結び目形成器具1aおよび/または結び目形成器具1bの緊張手段を作動させる。即ち、例えば両結び目形成器具1a、1bにおいて、それぞれ先端部を略直線状態に戻した後、ロック部材65による回動摘み62の回転規制を解除し、スプリング63の付勢力によって巻取軸61を回転させる。これにより、糸2a、2bは序々に巻き取られる。そして、操作杆3a、3bの先端にそれぞれ糸2a、2bが引き込まれていくにつれて、該操作杆3a、3bを生体組織に向けて突き進め、その先端で第1の結び目21を組織に押し付けることで、生体組織に密着した結び目を確実に作ることが可能となる。
【0074】
外科手術における結紮処理などにおいては、結び目をほぐれにくくするため、逆回りの第2の結び目22を形成するのが好ましい。この場合には、まず両ロック部材65によるロックを解除し、両結び目形成器具1a、1bの両巻取軸61を巻取方向とは逆方向に回転させつつ、操作杆3a、3bを後退させ、前記巻き取った糸2a、2bを結び目を形成できる程度に弛ませる。
【0075】
次に、結び目形成器具1bの巻取軸61をさらに逆回転させて図6に示す状態すなわち、操作杆3b内に引き込んだ糸2bをフリーの状態とし、例えば吸引ノズル45から通路44内へ気体を送って糸2bを操作杆3b内から吐き出す。
【0076】
次に、結び目形成器具1aの操作杆3aで、第1の結び目21を形成した向きと逆向きのループを形成し、このループに操作杆3bの先端を挿入する。操作杆3bの先端に、前記吐き出した糸2bを、吸引手段を用いて再度引き込み、操作杆3bを後退させてループから抜き取り、図10Aに示す状態とする。またこのとき両結び目形成器具1a、1bにおいて巻取機構6に糸2a、2bを確実に保持する。以後は上記説明した内容と同様の操作を行い、図10B〜Dに示すようにして、第2の結び目22を形成し、さらにこれを前記と同様にして生体組織に密着させる。
【0077】
このようにして、糸2a、2bが結ばれたら、両結び目形成器具1a、1bの可動把持部42をそれぞれ操作し、巻取歯車43を回転させてワイヤ54を引っ張り、鋏36を作動させて糸2a、2bを切断する。
【0078】
なお、第2の目の結び目の形成は、操作杆3a内から糸2aを一度吐き出し、再度吸引する方法や、両操作杆3a、3b内からそれぞれ糸2a、2bを一度吐き出し、再度吸引する方法により行ってもよい。また、前記とは逆に、操作杆3bの先端部でループを形成し、操作杆3aを前記ループに挿通して、結び目を形成してもよい。
以上のような操作によれば、体腔内で縫合や結紮の処理が容易にかつ迅速に行え、しかも糸を自動的に巻き取るので、左右の手でそれぞれ器具1a、1bを操作している時に手が足りなくなるという不都合も生じない。またホチキス針でなく、糸によって処置を行うことができるため、安全かつ確実に結紮や吻合等を行える。
【0079】
次に、本発明の結び目形成器具の第2の実施例について説明する。図11は、本発明の第2の実施例の結び目形成器具の全体側面図である。本図では、操作杆3の先端が、操作装置4に対して180°回転している状態を示すものである。以下、この第2の実施例を説明するにあたり、前記第1の実施例と同一の部材については同一の符号を用い、同様の構成については、その説明を省略する。
【0080】
本発明の第2の実施例の結び目形成器具1’は、腹壁を貫通して設置され、体腔の一例である腹腔内に体外とを連通させる連通管としての図示しないトロカール管内に挿入して、先端部を体腔内へ及ぼしめる操作杆3と、前記操作杆3を体外より遠隔で操作するための操作装置4とを有している。
【0081】
操作杆3は、前記と同様の略直線部31と可変湾曲部32とを有している。
図12に示されているように、前記略直線部31の先端は、可変湾曲部32との接続口312となっており、管体33の端部332が揺動自在に嵌合し得る球状の凹面が形成されており、ここに可変湾曲部32の基端に位置する管体33の端部332が嵌合している。図13に示されるように、可変湾曲部32は、前記と同様の構造により湾曲し得るように構成されている。
【0082】
可変湾曲部32の連結部材34には、図14に示すように、ワイヤ54をガイドする下ガイド部342と上ガイド部343とが交互に設けられている。この下ガイド部342には、基部に連結部材34の軸方向に孔が形成されており、この孔にワイヤ54が挿通する。また上ガイド部343の上部には、連結部材34の軸方向に溝が形成されており、この溝にワイヤ54が挿通する。
【0083】
図14に示されているように、操作杆3内には、可変湾曲部32の湾曲状態を調整したり、切断手段を操作するために、それぞれ設けられた前記と同様のワイヤ51、52、53、54、55、56、57が挿通している。
【0084】
図14および図15は、上記ワイヤ51、52、53、54、55、56の配置状態を示すものである。ワイヤ51、52、53および54は、可変湾曲部32を螺旋状(コイル状)のループに湾曲させるためのワイヤであり、ワイヤ55は、螺旋状のループを形成した可変湾曲部32のループの方向を変える操作をするためのワイヤであり、ワイヤ56は、湾曲した可変湾曲部32を元の状態に戻すためのワイヤである。以下、上記それぞれのワイヤの設置位置について説明する。
【0085】
ワイヤ54の先端は、可変湾曲部32の先端の固定部341aに固定され、連結されている連結部材34の下ガイド部342と上ガイド部343を交互に挿通し、操作杆3の軸線に沿って設けられ、後端は操作装置4の本体40に設けられている巻取リール71に巻き付けられている。ワイヤ54が下ガイド部342と上ガイド部343とを挿通すると、側面視で図15に示されているように、ワイヤ54は上下に順に屈折した状態となる。下ガイド部342と上ガイド部343とによって、湾曲した時の可変湾曲部32の曲率を大きくすることができる。
【0086】
巻取リール71によって、ワイヤ54を巻き取って引っ張ると、可変湾曲部32は同一平面内で湾曲し、更に引っ張るとうず巻き状に湾曲する(本実施例の場合には2回り半)。
【0087】
一方、ワイヤ51の先端は、最も先端に位置する連結部材34の周面に設けられた固定部341bに固定され、可変湾曲部32に巻き付くように、その周面に沿って設けられており、後端は操作装置4の本体40に設けられているリール72aに巻き付けられている。ワイヤ51が巻き付けられている可変湾曲部32の長さは、本実施例の場合には、可変湾曲部32の1/3程度の長さであり、巻き付け角度は、約180°程度、換言すると、可変湾曲部32の横断面視で、ワイヤ51の先端が固定された位置から反対側の位置までである。巻き付けが終わったワイヤ51は、可変湾曲部32と略直線部31の軸線に平行に配置される。
【0088】
ワイヤ51を引っ張ることによって、可変湾曲部32は捩じられ、ワイヤ54の作用との合成によって、操作杆3の最も先端に位置する螺旋状のループ(コイルの一巻き)が形成される。
【0089】
同様に、ワイヤ52は、上記ワイヤ51と同じ様に設けられている。即ち、ワイヤ52の先端は、ワイヤ51の巻き付きが終わった位置において、連結部材34の周面に設けられた固定部341cに固定され、可変湾曲部32に巻き付くように、その周面に沿って設けられており、後端は操作装置4の本体40に設けられているリール72bに巻き付けられている。
【0090】
さらに、ワイヤ53も、上記ワイヤ51と同じ様に設けられている。即ち、ワイヤ53の先端は、ワイヤ52の巻き付きが終わった位置において、連結部材34の周面に設けられた固定部341dに固定され、可変湾曲部32に巻き付くように、その周面に沿って設けられており、後端は操作装置4の本体40に設けられているリール72cに巻き付けられている。
【0091】
上記、ワイヤ51、52、53を操作することによって、可変湾曲部32は捩じられ、ワイヤ54によって形成されたうず巻き状のループを螺旋状(コイル状)に変形させることができる。
【0092】
ワイヤ55の先端は、ワイヤ53の巻き付きが終わった位置において、連結部材34の周面に設けられた固定部341eに固定され、それより基端側に設けられた上ガイド部343を通って、操作杆3の軸線に沿って設けられている。ワイヤ55の後端は操作装置4の本体40に設けられているリール72dに巻き付けられている。
【0093】
このワイヤ55を操作することによって、図1に示すように、可変湾曲部32にて形成された螺旋状のループを、基端部で屈曲させて先端が操作装置4側を向くようにすることができ、処理をしやすくすることができる。
【0094】
ワイヤ56は、可変湾曲部32の先端部の固定部341fに先端が固定されている。固定部341fは、操作杆3の横断面視において、軸線に対して前記ワイヤ51の固定部341bに対向する位置に位置している。ワイヤ56は、ワイヤ51、52、53とは、逆向きに可変湾曲部32のほぼ全長に渡って巻き付けられ、巻き付け角度は約180°程度である。ワイヤ56を引っ張ることによって、ループを形成した可変湾曲部32を元のほぼ直線の状態に戻すことができる。そして、さらに引っ張れば、逆向きの1重のループを形成できる。
【0095】
結び目形成器具1’は、糸を切断する前記と同様の切断手段が設けられている。この切断手段は、可変湾曲部32の先端部に設けられた前記と同様の図6に示す鋏36と、該鋏36を作動させる操作部37とを有している。この切断手段の作動は、前記と同様に、操作部37における可動把持部42の操作により巻取歯車43の巻取軸(図示せず)に巻き取り、ワイヤ57を牽引して鋏を作動させ、糸を切断する。
【0096】
以上のように構成された、操作杆3の好ましい外径や全長は、前記と同様である。また、可変湾曲部32の長さは、30〜100mm程度であるとよい。この程度より短かすぎると、形成するループの大きさが小さくなって、ループに糸を通して結び目を形成するのが難しくなる。また、長過ぎると、ループを形成するために操作杆3の先端が移動する空間を広くとらなければならなくなり、体内の狭い空間内で操作するのが困難となる。
【0097】
操作装置4には、前記ワイヤ51、52、53、54、55、56、57をそれぞれ引っ張るための機構、前記と同様の緊張手段および吸引手段を有する。図6、図7および図8に示す機構は、第2の実施例である結び目形成器具にも同様に適用される。
【0098】
次に、操作杆3の可変湾曲部32を操作する湾曲操作機構7の説明をする。
図11および図14に示されているように、本体40の操作杆3が接続されている接続部分の近傍には、ワイヤ54を巻き取る前記と同様の巻取リール71と、引張リール72とが、本体40に軸支されて、回動自在に設けられている。
【0099】
巻取リール71によりワイヤ54を巻き取って引っ張ることにより、可変湾曲部32を上方へ湾曲させることができる。
【0100】
引張リール72は、ワイヤ51、52、53、55がそれぞ巻き付けられるリール72a、72b、72c、72dを有し、前記ワイヤ51、52、53、55はそれぞれ同じ向きに巻き付けられている。また、ワイヤ56は、ワイヤ51が巻き付けられているリール72aにワイヤ51とは反対方向に巻き付けられている。
【0101】
従って、引張リール72を一体として例えば図14中時計回りに回転させると、一方のワイヤ51、52、53、55を引っ張り、他方のワイヤ56を緩ませる構成となり、一方のワイヤ51、52、53、55を引っ張って可変湾曲部32を湾曲させる時、ワイヤ56が突っ張って、湾曲操作の邪魔になることはない。なお、引張リール72を構成する4つのリール72a、72b、72c、72dは、各ワイヤの引張量に合わせて、径を異なるものとすることもできる。
【0102】
また、巻取リール71を回転させると、ワイヤ54が引っ張られ、引張リール72の作用によって、可変湾曲部32で構成された螺旋状のループの先端が、操作装置4の方へ向き、ループ内に、糸を通し易くする。
【0103】
以上のように構成された、本発明の結び目形成器具1’を用いた結び目形成方法の一例について、図16および図17に基づき説明する。腹腔内と体外とを連通させるトロカール管と呼ばれる連通管を腹壁に複数設置し、結び目形成器具1’を2個用いる。
【0104】
例えば、トローカル管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている2本の糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。
それぞれ異なるトロカール管から、各々の操作杆3a、3bの可変湾曲部32を真っ直ぐにした状態で、結び目形成器具1’をそれぞれ挿入する。既述したように、回動摘み62および接続部材64を動かして巻取機構6を作動させると共に、既に生体組織に通されている糸2の片方2aを、吸引手段を用いて、一方の結び目形成器具1’aの操作杆3aの先端から吸引し、巻取機構6で確実に保持する程度まで巻き取る。巻き取った後は、ロック部材65により巻取機構6の回転をロックしておく。
【0105】
結び目形成器具1’aにおける巻取リール71を回転させてワイヤ54を巻き取ると、前記形成されたループは、ほぼ同一平面内で形成される渦巻き状のものとなる。
【0106】
次に、引張リール72を回転させると、前記うず巻き状のループは、渦の回転軸方向にループが引き伸ばされて、螺旋状(コイル状)となり、さらに可変湾曲部32の基端部が湾曲して、先端が操作装置4の方向へ向く(図11の状態)。
【0107】
他方の結び目形成器具1bの先端を略直線状態としたまま、図11に示されているように、前記螺旋状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、略直線状の操作杆3bの先端から、他方の糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6にて確実に保持する。
【0108】
可変湾曲部32のループを挿通している操作杆3bを抜き取ると、図16Aに示すように、螺旋状のループ内を糸2bが挿通する。この糸2bを、図16B、Cに示すように、湾曲している可変湾曲部32の先端を迂回するように、ループの外側に移動させると、図16D、図17Aに示すように、前記と同様、糸2aおよび2bが交差して1重の結び目が形成され、さらに可変湾曲部32の先端を迂回するようにして、もう一回りさせると(図17B)ループ内から糸2bが外れて、2重の結び目が形成される(図17C)。
【0109】
このようにして、糸2aおよび2bが複数回ねじれ合った第1の結び目21’が形成されるが、この操作は、操作杆3a、即ちループを形成している側の操作杆を動かすことにより行ってもよい。
【0110】
次に、結んだ糸を生体組織に密着させるために、結び目形成器具1’aおよび/または結び目形成器具1’bの緊張手段を作動させる。即ち、例えば両結び目形成器具1’a、1’bにおいて、それぞれ先端部を略直線状態に戻した後、ロック部材65による回動摘み62の回転規制を解除し、スプリング63の付勢力によって巻取軸61を回転させる。これにより、糸2a、2bは序々に巻き取られる。そして、操作杆3a、3bの先端にそれぞれ糸2a、2bが引き込まれていくにつれて、該操作杆3a、3bを生体組織に向けて突き進め、その先端で第1の結び目21’を組織に押し付けることで、生体組織に密着した結び目を確実に作ることが可能となる。
【0111】
さらに、前記と同様の理由から、逆回りの第2の結び目22を形成する必要がある。
この場合には、まず両ロック部材65によるロックを解除し、両結び目形成器具1’a、1’bの両巻取軸61を巻取方向とは逆方向に回転させつつ、操作杆3a、3bを後退させ、前記巻き取った糸2a、2bを結び目を形成できる程度に弛ませる。
次に、結び目形成器具1bの巻取軸61をさらに逆回転させて図6に示す状態すなわち、操作杆3b内に引き込んだ糸2bをフリーの状態とし、前記と同様の方法で糸2bを操作杆3b内から吐き出す。
次に、引張リール72を前記と逆方向へ回転し、ワイヤ56によって、結び目形成器具1’aの操作杆3aの可変湾曲部32を前記と逆向きに湾曲させて1重以上のループを形成し、このループに操作杆3bの先端を挿入する。操作杆3bの先端に、前記吐き出した糸2bを、吸引手段を用いて再度引き込み、操作杆3bを後退させてループから抜き取り、図18Aに示す状態とする。またこのとき両結び目形成器具1’a、1’bにおいて巻取機構6に糸2a、2bを確実に保持する。以後は上記説明した内容と同様の操作を行い、図18B〜Dに示すようにして、第2の結び目22を形成し、さらにこれを前記と同様にして生体組織に密着させる。
【0112】
このようにして、糸2a、2bが結ばれたら、両結び目形成器具1’a、1’bの可動把持部42をそれぞれ操作して、巻取歯車43を回転させてワイヤ57を引っ張り、鋏36を作動させて糸2a、2bを切断する。
【0113】
なお、第2の結び目の形成は、操作杆3a内から糸2aを一度吐き出し、再度吸引する方法や、両操作杆3a、3b内からそれぞれ糸2a、2bを一度吐き出し、再度吸引する方法により行ってもよい。また、前記とは逆に、操作杆3bの先端部でループを形成し、操作杆3aを前記ループに挿通して、結び目を形成してもよい。
以上のような操作によれば、体腔内で縫合や結紮の処理が容易にかつ迅速に行え、しかも糸を自動的に巻き取るので、左右の手でそれぞれ器具1’a、1’bを操作している時に手が足りなくなるという不都合も生じない。またホチキス針でなく、糸によって処置を行うことができるため、安全かつ確実であり、かつ2重あるいは3重以上の結び目を一回の操作で簡単に作ることができ、より強固にかつ確実に結紮や吻合等を行うことができる。
【0114】
なお、螺旋状の形成されるループの数を増やすことによって、3重、4重の結び目を形成することができ、より強固な結び目を作ることができる。特に、引張リール72を構成する各リール72a、72b、72c、72dが独立して回転するように構成すると、任意のワイヤを操作することができ、可変湾曲部32によって形成される螺旋の数を1重、2重、3重と選択することがきる。このようにすれば、単一の結び目形成器具で、複数種類の結び目を作ることができる。
また、可変湾曲部32の湾曲を操作するワイヤの数を増やすことによって、第2の結び目を2重あるいは3重以上にすることも可能である。
【0115】
次に、本発明の結び目形成器具の第3の実施例について説明する。図19、図20および図21は、それぞれ本発明の第3の実施例の結び目形成器具の部分斜視図である。以下、この第3の実施例を説明するにあたり、前記第1の実施例と同一の部材については同一の符号を用い、同様の構成については、その説明を省略する。
【0116】
本発明の第3の実施例の結び目形成器具8は、2本の前記と同様の構成の操作杆3a、3bと、操作杆3a、3bを体外より遠隔操作する図示しない操作装置とを有している。この場合、操作装置は、前記と同様のハンドル手段37、巻取機構6、湾曲操作機構7および吸引手段等をそれぞれ2組有し、可変湾曲部32の湾曲操作、糸2a、2bの吸引操作、巻取操作、緊張操作、切断操作等を操作杆3a、3bのそれぞれに対し独立して行うことができるように構成されている。
【0117】
操作装置の先端付近には、結束管9が設置されており、この結束管9内には、操作杆3a、3bの基端部が、操作杆3a、3bをその軸方向に移動可能に収納されている。すなわち、操作杆3a、3bは、結束管9内に挿入されて束ねられた状態で、結束管9ごと前記トロカール管内に挿入され、体腔内へ導かれる。
結び目形成器具8の操作杆3a、3bにおいて、略直線部31、可変湾曲部32の構造やワイヤの配置等は、前記第1の実施例と同様である。
【0118】
以上のように構成された本発明の結び目形成器具8を用いた結び目形成方法の一例について、図19ないし図21に基づき説明する。腹腔内と体外とを連通させるトロカール管と呼ばれる連通管を腹壁に複数設置し、そのうちの1つより本発明の結び目形成器具8の操作杆3a、3bをそれぞれ略直線状態として管体8とともに挿入する。
例えば、トローカル管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている2本の糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。
【0119】
既述のごとく巻取機構6を作動させるとともに、図19に示されているように、既に生体組織に通されている糸2の片方2aを、吸引手段を用いて一方の操作杆3aの先端から吸引し、巻取機構6で確実に保持する程度まで巻き取り、その回転をロックしておく。
【0120】
図20に示されているように、引張リールの操作により操作杆3aの可変湾曲部32を湾曲させて、α状のループを形成し、次いで巻取リールを操作して前記ループを略直線部31に対し傾斜させる。
【0121】
他方の操作杆3bの可変湾曲部32を略直線状態としたまま、図21に示されているように、前記α状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、略直線状の操作杆3bの先端から、他方の糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6で確実に保持する。このとき、操作杆3bの先端は、ループから抜き取られた位置まで後退させておく。
以後、前述した第1の実施例と同様にして糸2a、2bによる第1の結び目および第2の結び目を形成する。
【0122】
このような結び目形成器具8によれば、操作杆3aおよび3bが結束管9により束ねられて1つの器具にまとめられているため、取り扱いがし易く、しかも、使用するトロカール管が1つでよいため、トロカール管の数がより少なくなり、患者の負担が軽減するといる利点がある。
【0123】
なお、結び目形成器具8の他の応用例として、操作杆3aおよび3bの少なくとも一方を、前述した第2の実施例のような可変湾曲部32が螺旋状(コイル状)のループを形成する構成としたものが挙げられる。
また、操作杆3aおよび3bのうちの一方は、可変湾曲部32を有さず、すなわち先端部が湾曲しない略直線状態であるものであってもよい。
【0124】
次に、本発明の結び目形成器具の第4の実施例について説明する。図22〜図29は、それぞれ本発明の第4の実施例の結び目形成器具による結び目形成工程を示す部分斜視図である。以下、この第4の実施例を説明するにあたり、前記第3の実施例と同一の部材については同一の符号を用い、同様の構成については、その説明を省略する。
【0125】
本発明の第4の実施例の結び目形成器具10は、操作杆3c、3dと、操作杆3c、3dを体外より遠隔操作する図示しない操作装置と、前記と同様の結束管9を有している。
結束管9内には、操作杆3c、3dの基端部が、軸方向に移動可能に収納されている。すなわち、操作杆3c、3dは、結束管9内に挿入されて束ねられた状態で、結束管9ごと前記トロカール管内に挿入され、体腔内へ導かれる。
【0126】
操作杆3cは、硬質材料で構成される外管38と、外管38内に挿入される内管39とで構成されている。内管39の先端部は、可撓性を有している。そして、内管39の先端部の外周には、湾曲状態を形成するためのコイル391が巻き付けられており、このコイル391の弾性力により、図23および図24に示すように、内管39を自然状態(外力を加えない状態)としたとき、可変湾曲部32が所望のループ形状に湾曲する。図22に示すように、内管39を外管38に対し軸方向に相対的に移動して、内管39を先端まで全て外管38内に挿入すると、可変湾曲部32は、外管38により拘束されてその形状が略直線状に規制される。
【0127】
なお、コイル391の構成材料としては、例えば、SUS304、SUS316、PHステンレス(析出硬化ステンレス)等のステンレス鋼、Ni−Ti系合金等の超弾性合金などの各種金属や、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリアリレート、ポリテトラフルオロエチレン等の各種樹脂が挙げられる。
【0128】
一方、操作杆3dは、前述したような可変湾曲部を有さず、すなわち先端部が湾曲しない略直線状の管体で構成されている。
【0129】
操作杆3c、3dの基端側に設置された操作装置は、前記と同様の巻取機構6、吸引手段等をそれぞれ2組有し、操作杆の軸方向の移動操作、糸2a、2bの吸引操作、巻取操作、緊張操作等を操作杆3c、3dのそれぞれに対し独立して行うことができるように構成されている。さらに、操作装置は、操作杆3cの可変湾曲部32の湾曲操作を行う湾曲操作機構を備えている。この場合、結び目形成器具10における湾曲操作機構は、前述した複数のワイヤおよびその牽引手段であるリール71、72ではなく、内管39を外管38に対し軸方向に相対的に移動して、内管39の湾曲部32を外管38の内腔内に収納したり外管38の先端から突出させたりすることができる機構である。
【0130】
以上のように構成された本発明の結び目形成器具10を用いた結び目形成方法の一例について、図22〜図29に基づき説明する。
腹壁に複数設置されたトロカール管のうちの1つより本発明の結び目形成器具10の操作杆3c、3dをそれぞれ結束管9とともに挿入する。このとき、操作杆3cの可変湾曲部32を外管38内に収納し、操作杆3cを略直線状態としておく。
【0131】
例えば、トロカール管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。
図22に示されているように、生体組織に通されている一方の糸2aを、吸引手段を用いて一方の操作杆3cの先端から吸引し、前述したように巻取機構6を作動して糸2aを確実に保持する程度まで巻き取り、その回転をロックしておく。
【0132】
図23に示されているように、操作杆3cの外管38を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38の先端より突出させる。これにより、その可変湾曲部32は、湾曲してα状のループを形成する。
図24に示されているように、他方の操作杆3dを前進させて、前記α状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、操作杆3dの先端から、他方の糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6で確実に保持する。このとき、操作杆3dの先端は、ループから抜き取られた位置まで後退させておく。
【0133】
図25に示されているように、操作杆3cの内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納する。これにより、糸2aが糸2bに巻き付き、第1の結び目21が形成される。必要に応じ、前述したように巻取機構6を作動して糸2aを緊張させるとともに、操作杆3cを生体組織へ向けて前進させ、生体組織に密着した固い結び目を形成する。
巻取機構6のロックを解除して糸2a、2bを弛めた後、図26に示されているように、操作杆3d内から糸2bを前記と同様の方法で吐き出し、さらに、図27に示されているように、操作杆3cの内管39を先端側へ前進させて可変湾曲部32を外管38の先端より突出させ、その可変湾曲部32をループ状にする。
【0134】
図28に示されているように、操作杆3dを前進させて、可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、操作杆3dの先端から、糸2bを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6で確実に保持する。
図29に示されているように、操作杆3cの内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納する。これにより、糸2aが、糸2bに巻き付き、第2の結び目22が形成される。前述したように巻取機構6を作動して糸2aおよび2bを緊張させるとともに、操作杆3cおよび3dを生体組織へ向けて前進させ、生体組織に密着した固い結び目を形成する。
【0135】
このような結び目形成器具10によれば、前記結び目形成器具8と同様の利点に加え、操作杆3cについては、可変湾曲部32を湾曲させるためのワイヤやそれらを牽引操作するためのリール等を必要とせず、操作杆3dについては、可変湾曲部32を有さず、よって、操作杆3c、3dのさらなる細径化が図れるとともに、可変湾曲部32の湾曲操作も極めて簡単であり、可変湾曲部32が常に、予め設定された一定の形状に湾曲するため、再現性に優れるという利点がある。なお、結び目形成器具10の他の応用例として、操作杆3cを前述した第2の実施例のような可変湾曲部32が螺旋状(コイル状)のループを形成する構成としたものが挙げられる。
【0136】
次に、本発明の結び目形成器具の第5の実施例について説明する。図30〜図33は、それぞれ本発明の第5の実施例の結び目形成器具の部分斜視図である。以下、この第5の実施例を説明するにあたり、前記第4の実施例と同一の部材については同一の符号を用い、同様の構成については、その説明を省略する。
【0137】
本発明の第5の実施例の結び目形成器具11は、操作杆3c、3d’と、操作杆3c、3d’を体外より遠隔操作する図示しない操作装置と、前記と同様の結束管9を有している。
【0138】
操作杆3d’は、操作杆3cと同様の構成である。この場合、操作杆3cの可変湾曲部32と操作杆3d’の可変湾曲部32とは、互いに逆方向のループが形成されるように構成されている。
【0139】
操作杆3c、3d’の基端側に設置された操作装置は、前記と同様の巻取機構6、吸引手段および湾曲操作機構等をそれぞれ2組有し、操作杆の軸方向の移動操作、可変湾曲部32の湾曲操作、糸2a、2bの吸引操作、巻取操作、緊張操作等を操作杆3c、3dのそれぞれに対し独立して行うことができるように構成されている。
【0140】
以上のように構成された本発明の結び目形成器具11を用いた結び目形成方法の一例について、図30〜図33に基づき説明する。
腹壁に複数設置されたトロカール管のうちの1つより本発明の結び目形成器具11の操作杆3c、3d’をそれぞれ管体8とともに挿入する。このとき、操作杆3cおよび3d’の両可変湾曲部32をそれぞれ外管38内に収納し、操作杆3cおよび3d’をいずれも略直線状態としておく。
【0141】
例えば、トロカール管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている糸2a、2bについて、前記実施例4と同様にして第1の結び目21を形成する。
次に、巻取機構6のロックを解除して糸2a、2bを弛めた後、図31に示されているように、操作杆3c内から糸2aを前記と同様の方法で吐き出す。さらに操作杆3cは可変湾曲部32を外管38内に収納した状態、操作杆3d’は可変湾曲部32を外管38の先端より突出させた状態とし、操作杆3d’の可変湾曲部32により前記と逆向きのα状のループを形成する。
【0142】
図32に示されているように、操作杆3cを前進させて、可変湾曲部32のループの内側を通す。その状態で、操作杆3cの先端から、糸2aを吸引手段によって取り込んで、巻取機構6で確実に保持する。
操作杆3d’の内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納する。これにより、図33に示されているように、糸2bが糸2aに巻き付き、第2の結び目22が形成される。前述したように巻取機構6を作動して糸2aおよび2bを緊張させるとともに、操作杆3cおよび3dを生体組織へ向けて前進させ、生体組織に密着した固い結び目を形成する。
【0143】
次に、本発明の結び目形成器具11を用いた結び目形成方法の他の例について、図34、図35、図32、図33に基づき説明する。
腹壁に複数設置されたトロカール管のうちの1つより本発明の結び目形成器具11の操作杆3c、3d’をそれぞれ結束管9とともに挿入する。このとき、操作杆3cおよび3d’の両可変湾曲部32をそれぞれ外管38内に収納し、操作杆3cおよび3d’をいずれも略直線状態としておく。
【0144】
例えば、トロカール管を介して挿入された縫合器により生体組織を縫合した後、その組織から出ている糸2a、2bについて、以下のようにして結び目を形成する。
生体組織に通されている一方の糸2bを、吸引手段を用いて一方の操作杆3d’の先端から吸引し、前述したように巻取機構6で確実に保持する。
【0145】
次に、操作杆3d’の内管39を先端側へ前進させてその可変湾曲部32を外管38の先端より突出させ、可変湾曲部32にα状のループを形成する。さらに、図34に示されているように、他方の操作杆3cを前進させて、前記α状に形成された可変湾曲部32のループの内側を通す。
図35に示されているように、操作杆3cの内管39を先端側へ前進させてその可変湾曲部32を外管38の先端より突出させ、可変湾曲部32に糸2bを囲むα状のループを形成する。その後、糸2aを、吸引手段を用いて操作杆3cの先端から吸引し、前述したように巻取機構6で確実に保持する。
【0146】
操作杆3cの内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納するとともに、操作杆3cを基端側へ若干後退させる。これにより、図32に示されているように、糸2aが糸2bに巻き付き、第1の結び目21が形成される。
図32に示されている状態から、操作杆3cをさらに基端側へ後退させて、その先端を可変湾曲部32のループから抜き取るとともに、操作杆3d’の内管39を基端側へ後退させて可変湾曲部32を外管38内に収納する。これにより、図33に示されているように、糸2bが糸2aに巻き付き、第2の結び目22が形成される。以後、前記と同様にして、生体組織に密着した固い結び目を形成する。
【0147】
このような方法によれば、操作杆3c、3d’の挿通路内に導入した糸2a、2bを吐き出すことなく、第1の結び目21および第2の結び目22を形成することができるので、操作がより簡単であり、処置時間もさらに短縮される。
なお、結び目形成器具11の他の応用例として、操作杆3cおよび3d’のうちの少なくとも一方を、前述した第2の実施例のような可変湾曲部32が螺旋状(コイル状)のループを形成する構成としたものが挙げられる。
【0148】
上記各実施例により結び目を形成するのに先立ち、本発明の結び目形成器具により第1の糸および/または第2の糸を保持しつつ体腔内へ搬送し、搬送された糸により例えば針、鉗子、縫合器、結紮器を用いて生体組織に縫合や結紮を行った後、前記と同様にして結び目を形成してもよい。
以上説明した各実施例の構造の他、糸導入手段は、前述したような吸引手段に限らず、例えば対となっている引込ローラを複数個、連続的に操作杆3内に配置し、これらを連続的に駆動させて、糸を順次取り込む構成とすることもできる。
【0149】
また挿通路30内に操作装置4側から、先端にフックなどのあるガイドワイヤーを挿入して、操作杆3の先端から突出させ、ガイドワイヤーで糸を引っ掛けた後、ガイドワイヤーを引き戻して糸を取り込むような方法を用いてもよい。
【0150】
可変湾曲部32の湾曲する形状は、α状のように完全にループを形成しなくてもよく、他方の結び目形成器具1の操作杆3の先端が挿通できる程度の空間が形成できれば、どのような形状であってもよい。例えば、半円形などであっても、結び目を作ることは可能である。
【0151】
また、可変湾曲部32を構成する複数の連結された管体33の各長さを、変化させてもよい。
【0152】
所定のワイヤを引っ張って、可変湾曲部を湾曲する際、基端部側の曲率が大きくなり、先端側は小さくなる傾向にあるが、先端側が短くなるように、管体33の長さを変化させれば、先端側がより湾曲し易くなり、ワイヤの引っ張りによって、均一な螺旋形状のループを形成することが可能となる。
【0153】
以上説明した構成の他、可変湾曲部32の構造は、他の構造、例えば単位部材として節輪を用いてもよい。節輪とは直交する直径方向にそれぞれ接続軸を有した輪であって、この接続軸を介して複数の節輪を連結することによって、可変湾曲部が形成される。
【0154】
また、可変湾曲部32の湾曲する方向は上方向、下方向、左方向、右方向のいずれか1方向にのみとしてもよく、または上下方向、左右方向、上方向と右方向、上方向と左方向、下方向と右方向、下方向と左方向などのいずれか2方向としてもよく、さらには本実施例のような3方向とし、または上下左右方向の4方向とすることもできる。
【0155】
特に、上記各実施例の場合には、管体が球状関節により接続されているので、上記湾曲方向に限定されず、上記4方向以外の任意の方向に湾曲させることも可能であり、さらに軸線を中心として管体単独で回動することも可能な構成となっているため、螺旋状にループを形成するには好ましい構造となっている。
また、ワイヤ操作により所望に湾曲した可変湾曲部32は、自動的に元の略直線状態に戻るような構成としてもよい。すなわち、詳しくは、可変湾曲部32は、例えば軸方向に沿って設置された弾性体により付勢されて通常状態では、図3、図14または図19に示す基本姿勢すなわち略直線状態を維持し、ワイヤ牽引時には前述したようにループ状に湾曲し、それらのワイヤの張力を除去した場合には、前記弾性体の作用により基本姿勢に戻るように構成されてもよい。
【0156】
また、上記実施例では、保持手段および緊張手段を同じ巻取機構6にて構成したが、本発明はこれに限定されない。しかしながら、本実施例のように構成すれば、糸の保持および緊張を同一の機構で行うことができるため、装置の単純化を図ることができ、かつ糸を保持しながら容易に緊張させることができる。
【0157】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される操作杆と、前記操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、前記開口部より前記挿通路に糸を導入する糸導入手段と、前記操作杆の基端部に接続され、前記操作杆を体外より操作する操作装置とを有しており、前記操作杆の先端部は、前記操作装置の操作により、略直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態とに変化し得る可変湾曲部を構成しているため、体腔内で、吻合、縫合や結紮のための糸の結び目を容易にかつ確実に行うことができる。
【0158】
また、前記可変湾曲部が、1重のループまたは2重以上のループを形成するように湾曲する場合には、簡単な操作で糸の結び目を確実に形成することができる。特に、可変湾曲部が2重以上のループを形成するように湾曲する場合には、より強固な結び目による縫合、結紮等が可能となり、その操作の回数も少なく、処理の迅速化を図ることができ、患者の負担が軽減する。
【0159】
また、前記操作装置が、先端が前記可変湾曲部内の軸心から偏心した位置に固定された少なくとも1本のワイヤと、前記ワイヤを基端側へ引っ張って前記可変湾曲部を操作する湾曲操作機構とを有し、前記ワイヤが、前記先端が固定された位置から前記湾曲操作機構へ向けて、前記可変湾曲部に螺旋状に巻き付けられている場合には、可変湾曲部のループを確実に形成することができる。
【0160】
また、結び目形成器具が、体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される一対の操作杆と、これらの操作杆の基端部に接続され、各操作杆を体外より操作する操作装置と、両操作杆の基端部を束ねる結束部材とを有しており、両操作杆のうちの少なくとも一方の先端部が、前記操作装置の操作により、略直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態、特にループ状に湾曲した状態とに変化し得る可変湾曲部を構成しているものである場合には、取り扱いがし易く、結び目形成のために使用する連通管の数が減少し、患者の負担が軽減する。
【0161】
また、操作杆が、その先端部に設けられた自然状態で目的形状に湾曲する可変湾曲部と、前記可変湾曲部の形状を略直線状に規制する規制部材とを有するものである場合には、可変湾曲部を湾曲させるためのワイヤやそれらを牽引操作するためのリール等を必要とせず、構成が簡易であり、操作杆のさらなる細径化が図れるとともに、可変湾曲部の湾曲操作も極めて簡単であり、可変湾曲部32が常に、予め設定された一定の形状に湾曲するため、再現性に優れる。
【0162】
また、糸導入手段として、吸引手段を用いた場合には、生体組織に傷を付けることなく、かつ迅速に糸の挿通路への導入が可能となり、手術の手間を軽減し、時間の短縮を図ることができる。
【0163】
また、糸の保持手段を設けることにより、手などで糸が脱落しないよう保持する操作を行うことなく、糸を簡単かつ確実に結ぶことがでる。
【0164】
また、糸の緊張手段を設けることにより、手などで糸を引っ張るような操作を行うことなく、容易に強固な結び目を形成することができ、かつその結び目を生体組織に確実に密着させることができる。
【0165】
さらに、糸の切断手段を設けた場合には、糸の切断のために別途の器具を用いる必要がなく、かつそのような切断器具により糸の切断部を捜索する必要もないため、結び目形成後の処理を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の結び目形成器具の第1実施例の全体側面図であって、先端にループを形成した状態を示したものである。
【図2】図2は、可変湾曲部の内部構造を示す可変湾曲部の断面側面図である。
【図3】図3は、ワイヤの挿通状態を示す操作杆の断面平面図である。
【図4】図4は、切断手段の構成を示すもので、鋏の取り付け位置と構造を示す内部透視斜視図である。
【図5】図5は、切断手段の操作部の構造を示すもので、操作装置本体の部分側面図である。
【図6】図6は、巻取機構の断面側面図である。
【図7】図7は、巻取機構における回動摘みの底面図である。
【図8】図8は、巻取機構における板バネの平面図である。
【図9】図9A〜Dは、第1の実施例の結び目形成器具を用いて、結び目を形成する場合の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図10】図10A〜Dは、第1の実施例の結び目形成器具を用いて、固結びの結び目を形成する場合の2番目の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図11】図11は、本発明の結び目形成器具の第2の実施例の全体側面図であって、先端に螺旋状のループを形成した状態を示したものである。
【図12】図12は、操作杆の直線部の構造を示す操作杆の部分断面側面図である。
【図13】図13は、可変湾曲部の内部構造を示す可変湾曲部の断面側面図である。
【図14】図14は、ワイヤの挿通状態を示す操作杆の内部透視平面図である。
【図15】図15は、ワイヤの挿通状態を示す可変湾曲部の内部透視部分斜視図である。
【図16】図16A〜Dは、第2の実施例の結び目形成器具を用いて、結び目を形成する場合の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図17】図17A〜Cは、第2の実施例の結び目形成器具を用いて、結び目を形成する場合の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図18】図18A〜Dは、第2の実施例の結び目形成器具を用いて、固結びの結び目を形成する場合の2番目の手順を示す操作杆先端部の拡大斜視図である。
【図19】図19は、本発明の結び目形成器具の第3の実施例の部分斜視図であって、両操作杆を直線状態としたときの構成を示したものである。
【図20】図20は、第3の実施例の結び目形成器具を用いて結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図21】図21は、第3の実施例の結び目形成器具を用いて結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図22】図22は、本発明の結び目形成器具の第4の実施例の部分斜視図であって、両操作杆を直線状態としたときの構成を示したものである。
【図23】図23は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第1の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図24】図24は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第1の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図25】図25は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第1の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図26】図26は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図27】図27は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図28】図28は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図29】図29は、第4の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図30】図30は、本発明の結び目形成器具の第5の実施例の部分斜視図である。
【図31】図31は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図32】図32は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図33】図33は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて第2の結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図34】図34は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【図35】図35は、第5の実施例の結び目形成器具を用いて結び目を形成している状態を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
1、8、10、11 結び目形成器具
2 糸
3 操作杆
30 挿通路
301 開口部
30 挿通路
31 略直線部
311 大径部
32 可変湾曲部
33 管体
331 挿通孔
332 端部
34 連結部材
35 被覆材
36 鋏
361 刃
362 刃
363 支点
37 操作部
38 外管
39 内管
391 コイル
4 操作装置
40 本体
41 把持部
411 ピン
42 可動把持部
420 接触面
421 スリット
422 歯
423 歯
43 巻取歯車
44 通路
45 吸引ノズル
51〜57 ワイヤ
6 巻取機構
61 巻取軸
611 孔
612 穴
62 回動摘み
621 孔
622 溝
623 凹部
63 スプリング
64 接続部材
641 棒状部
642 摘み部
65 ロック部材
651 係合部
652 アーム部
653 軸支部
654 付勢手段
66 板バネ
661 固定端
662 孔
663 凸部
7 湾曲操作機構
71 巻取リール
72 引張リール
9 結束管
Claims (11)
- 糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、
体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される操作杆と、
前記操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、
前記開口部より前記挿通路に糸を導入する糸導入手段と、
前記操作杆の基端部に接続され、前記操作杆を体外より操作する操作装置とを有しており、
前記操作杆の先端部は、前記操作装置の操作により、略直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態とに変化し得る可変湾曲部を構成していることを特徴とする結び目形成器具。 - 糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、
体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される一対の操作杆と、
前記各操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、
前記各開口部より前記各挿通路に糸を導入する糸導入手段と、
前記各操作杆の基端部に接続され、前記各操作杆を体外より操作する操作装置と、
前記両操作杆の基端部を束ねる結束部材とを有しており、
前記両操作杆のうちの少なくとも一方の先端部が、前記操作装置の操作により、略直線状態と、少なくとも1方向に曲がった状態とに変化し得る可変湾曲部を構成していることを特徴とする結び目形成器具。 - 前記操作装置は、先端が前記可変湾曲部内の軸心から偏心した位置に固定された少なくとも1本のワイヤと、前記ワイヤを基端側へ引っ張って前記可変湾曲部を操作する湾曲操作機構とを有し、前記ワイヤが、前記先端が固定された位置から前記湾曲操作機構へ向けて、前記可変湾曲部に螺旋状に巻き付けられて設けられている請求項1または2のいずれかに記載の結び目形成器具。
- 糸の結び目を形成する結び目形成器具であって、この結び目形成器具は、
体腔内と体外とを連通させる連通管に挿入される操作杆と、
前記操作杆内に形成され、操作杆の先端部に開口部を有する挿通路と、
前記開口部より前記挿通路に糸を導入する糸導入手段と、
前記操作杆の基端部に接続され、前記操作杆を体外より操作する操作装置とを有しており、
前記操作杆は、その先端部に設けられた自然状態で目的形状に湾曲する可変湾曲部と、前記可変湾曲部の形状を略直線状に規制する規制部材とを有することを特徴とする結び目形成器具。 - 前記可変湾曲部は、少なくとも1重のループを形成するよう湾曲する請求項1ないし4のいずれかに記載の結び目形成器具。
- 前記開口部から導入されて前記挿通路を挿通している第1の糸と、前記可変湾曲部に形成された前記ループ内を通る第2の糸とによって結び目を形成する請求項1ないし5のいずれかに記載の結び目形成器具。
- 前記可変湾曲部は、糸の挿通孔を有する複数の単位部材と、隣接する単位部材を揺動自在に連結する連結部材とを有し、連結部材により隣接する単位部材同士を屈曲して連結することにより、前記可変湾曲部が全体で湾曲するように構成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の結び目形成器具。
- 前記糸導入手段は、前記挿通路に連通するよう挿通路の基端側に接続された吸引手段である請求項1ないし7のいずれかに記載の結び目形成器具。
- 前記挿通路に導入された糸を保持する保持手段を有する請求項1ないし8のいずれかに記載の結び目形成器具。
- 前記挿通路に導入された糸の緊張状態を維持する緊張手段を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の結び目形成器具。
- 前記操作杆内に設けられ、挿通路内に位置する糸を切断する切断手段を有する請求項1ないし10のいずれかに記載の結び目形成器具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17629294A JP3668263B2 (ja) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | 結び目形成器具 |
Applications Claiming Priority (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20731093 | 1993-07-28 | ||
JP5-215099 | 1993-08-05 | ||
JP21509993 | 1993-08-05 | ||
JP5-207310 | 1993-08-05 | ||
JP17629294A JP3668263B2 (ja) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | 結び目形成器具 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0795983A JPH0795983A (ja) | 1995-04-11 |
JP3668263B2 true JP3668263B2 (ja) | 2005-07-06 |
Family
ID=27324235
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17629294A Expired - Fee Related JP3668263B2 (ja) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | 結び目形成器具 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3668263B2 (ja) |
Families Citing this family (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE602005017792D1 (de) * | 2004-08-12 | 2009-12-31 | Hansen Medical Inc | Robotergesteuertes intravaskuläres gewebeinjektionssystem |
WO2013100233A1 (ko) * | 2011-12-29 | 2013-07-04 | Hwang Sung Oh | 카테타 시술용 가이드 와이어 삽입기 |
JP6653596B2 (ja) * | 2016-03-07 | 2020-02-26 | テルモ株式会社 | 医療デバイス |
CN106073836B (zh) * | 2016-06-01 | 2018-08-28 | 北京迈迪顶峰医疗科技有限公司 | 一种打结器及具有该打结器的打结*** |
CN117481865A (zh) * | 2017-12-27 | 2024-02-02 | 苏州优迈医疗器械有限公司 | 一种调节并固定手术网张力的装置及其手术应用 |
CN113425444A (zh) * | 2021-07-06 | 2021-09-24 | 天津市第三中心医院 | 一种缺血再灌注模型血管结扎装置 |
CN114027902B (zh) * | 2021-10-29 | 2023-10-27 | 上海汇禾医疗科技股份有限公司 | 一种经血管的打结装置及其使用方法 |
-
1994
- 1994-07-28 JP JP17629294A patent/JP3668263B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0795983A (ja) | 1995-04-11 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US5496331A (en) | Knot-forming instrument and method of forming knots | |
US10945722B2 (en) | Endoscopic stitching devices | |
EP2133028B1 (en) | Endoscopic stitching devices | |
US7131978B2 (en) | Surgical suturing instrument and method of use | |
US10433850B2 (en) | Endoscopic ligation | |
US5234443A (en) | Endoscopic knot tying apparatus and methods | |
US6045561A (en) | Surgical knot manipulator | |
JP4855405B2 (ja) | 最小侵襲の縫合のための装置および方法 | |
US20120277768A1 (en) | Axial Stitching Devices | |
JP2005502416A (ja) | 外科用縫合器具および使用方法 | |
JP3668263B2 (ja) | 結び目形成器具 | |
US20060264976A1 (en) | System and method for improved suture insertion | |
JP3715999B2 (ja) | 縫合器 | |
JP3669012B2 (ja) | 結び目形成結紮装置 | |
JP7077964B2 (ja) | 縫合装置 | |
JP2003531652A (ja) | 外科手術用縫合器具およびその使用方法 | |
JP3781450B2 (ja) | 縫合・結紮器 | |
JP3800648B2 (ja) | 結紮装置 | |
JPH08280698A (ja) | 結紮具 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050322 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050408 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |