JP3663966B2 - 波長計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度や歪み(圧力)等の物理量を、光ファイバのブラッグ回折格子(Fiber Bragg Grating、以下FBGと略す)からの反射光の波長によって測定する物理量測定システムに適用可能な波長計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、従来技術としての、光ファイバ上の温度分布を測定する温度分布測定システムの全体構成図である。
図9において、1は後述する波長検出部及び演算部を有する温度分布測定部、11,12,13,14は測定光及び反射光が通過する光ファイバ、15,16,17は測定点に対応する位置に形成されたセンサ用のブラッグ回折格子、2は光分岐器、3は接続用光ファイバ、4は広帯域光源である。
【0003】
光ファイバのブラッグ回折格子は、周知のようにコアの屈折率が光軸に沿って周期的に変化しており、屈折率に応じて特定波長を中心とした狭帯域の光を反射する。
例えば、測定対象である物理量が温度である場合、図9のあるブラッグ回折格子の位置(測定点)で温度変化が生じると、ブラッグ回折格子のコアの平均屈折率が変化するため反射光の波長も変化する。従って、広帯域光源4から照射された光の各ブラッグ回折格子からの反射波長の変化と温度変化との関係を予め測定しておけば、温度分布測定部1により検出される反射光の波長から各測定点の温度を測定することができ、光ファイバの長手方向の温度分布を得ることができる。
ここで、図9におけるブラッグ回折格子15,16,17には、所定の温度範囲に対応する固有の反射波長範囲が、互いに重複しないように予め割り当てられている。
【0004】
図10は、温度分布測定部1に使用される波長検出部の一例を示す図である。図10において、21は各ブラッグ回折格子からの反射光が入射する入力光ファイバ、22は出力光ファイバ、23,24はコリメータレンズ、25,26はハーフミラー、27,28はハーフミラー25,26の間に密接して配置された圧電素子、29は圧電素子駆動回路である。
【0005】
この波長検出部は、ハーフミラー25,26間のギャップ長gが入射光の波長に対して一定の関係にある場合に入射光が強められ、または弱められて出射することを利用したもので、圧電素子駆動回路29から圧電素子27,28に電圧を印加してギャップ長gを調節しながら出射光強度を観察し、そのときのギャップ長gから入射光の波長を検出するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図10に示したような波長検出部はメカニカルな構成であるため、耐振性に課題があった。つまり、外部から振動を受けても高い機械精度を保たなければならないからである。
また、ハーフミラー25,26同士の平行性や、ハーフミラー25,26に対するコリメータレンズ23,24の光軸の直交性を維持することも構造上、難しく、これらが製造コストの上昇や歩留まり低下の原因となっていた。
【0007】
そこで本発明は、従来のように可動部品を使用せずに反射光の波長を検出する波長計測装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、測定光が入射される光ファイバに一以上のセンサ用ブラッグ回折格子が形成され、前記センサ用ブラッグ回折格子からの反射光の波長を検出して前記センサ用ブラッグ回折格子の位置における物理量を測定する物理量測定システムにおいて、前記センサ用ブラッグ回折格子からの反射光を、特定の波長範囲で直線状に反射率が変化するリニア減衰型ブラッグ回折格子に入射させ、このリニア減衰型ブラッグ回折格子による反射光を受光素子に入射させてその光電流の変化に基づいて前記センサ用ブラッグ回折格子による反射光の波長を測定するものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、センサ用ブラッグ回折格子からの反射光を、特定の波長範囲で直線状に反射率が変化するリニア減衰型ブラッグ回折格子に入射させ、このリニア減衰型ブラッグ回折格子による反射光を第1の受光素子に入射させ、かつ、リニア減衰型ブラッグ回折格子による透過光を第2の受光素子に入射させ、第1、第2の受光素子の光電流の比の対数に基づいてセンサ用ブラッグ回折格子による反射光の波長を測定するものである。
ここで、「光電流の比の対数」を実現するに当たっては、二つの受光素子(フォトダイオード)の電流出力(I1,I2)から換算された二つの電圧出力(V1,V2)を対数増幅器にて対数出力(logV1,logV2)に換算した後、それらの差分出力(logV1−logV2)をとることにより、「光電流の比の対数」に相当するlog(V1/V2)の出力が得られる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の波長計測装置において、複数のセンサ用ブラッグ回折格子の波長変化範囲に対応した同数のリニア減衰型ブラッグ回折格子を備え、各リニア減衰型ブラッグ回折格子による複数の反射光をそれぞれ同数の受光素子に入射させ、各受光素子の光電流の変化に基づいて各センサ用ブラッグ回折格子による複数の反射光の波長を同時に測定するものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の波長計測装置において、複数のセンサ用ブラッグ回折格子の波長変化範囲に対応した同数のリニア減衰型ブラッグ回折格子を備え、各リニア減衰型ブラッグ回折格子による複数の反射光を光スイッチの切り替えにより単一の受光素子に入射させ、この受光素子の光電流の変化に基づいて各センサ用ブラッグ回折格子による複数の反射光の波長を順次測定するものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載した波長計測装置において、リニア減衰型ブラッグ回折格子の温度検出信号に基づき温度制御素子を動作させてリニア減衰型ブラッグ回折格子の温度を一定に保つことにより、波長測定精度を向上させるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。まず、図1は本発明の第1実施形態であり、請求項1に記載した発明の実施形態に相当する。
図1において、31は中心波長が1.55〔μm〕の光を照射する1.55μm光源であり、光ファイバ38には光分岐器32を介してセンサ用ブラッグ回折格子S−FBGが形成されている。
ブラッグ回折格子S−FBGによって反射された光源31の光は、光分岐器32を経て波長計測装置51に入射する。
【0014】
波長計測装置51は、光ファイバ39により前記光分岐器32に接続される光分岐器33と、光ファイバ39の端部に形成されたリニア減衰型ブラッグ回折格子L−FBGと、このブラッグ回折格子L−FBGによる反射光が光分岐器33及び光ファイバ40を介して入射するフォトダイオード(PD)34とを備えている。
【0015】
ここで、図2に示すように中心波長がほぼ1.55〔μm〕であるセンサ用ブラッグ回折格子S−FBGの反射波形がリニア減衰型ブラッグ回折格子L−FBGに入射すると、リニア減衰型ブラッグ回折格子L−FBGは図3に示すような特性(実際に販売されている加Innovative Fibers社製の「リニア分別器ファイバーブラッググレーティング」の特性を基に中心波長だけ変更したもの)を持っているので、センサ用ブラッグ回折格子S−FBGの中心波長の変化と、リニア減衰型ブラッグ回折格子L−FBGにより反射してフォトダイオード34により測定される反射受光光量との関係は、図4のようになる。
この図4の特性は完全な直線ではないが、この特性を利用すれば、センサ用ブラッグ回折格子S−FBGによる反射波長をフォトダイオード34の光電流出力から測定することができる。
【0016】
なお、上記実施形態において、センサ用ブラッグ回折格子S−FBGの特性は、グレーティング長さ10〔mm〕、屈折率変調0.00006、屈折率1.458として論文「ファイバーグレーティングとその応用」(応用物理、Vol.66,No.1)を参考に計算したものである。
【0017】
本実施形態は基本的に可動部分がなく、光ファイバと光分岐器との接続だけによって構成されているので、耐震性に強く、構成が簡単なため低コストであると共に、高速応答性を有することが明らかである。
また、リニア減衰型ブラッグ回折格子L−FBGは、その減衰範囲、中心波長等を通常のブラッグ回折格子と同様な範囲で製作可能である。
【0018】
上述した第1実施形態においては、光源31の光量が変動すると、この影響を受けて図4の波長と受光光量との関係が変化してしまう。また、波長と受光光量との関係は厳密には直線関係でないことから、図4の特性をパソコン等に記憶させてその都度、参照しなくてはならない。
【0019】
図5に示す第2実施形態は上記の点を改良したもので、リニア減衰型ブラッグ回折格子L−FBGの透過光と反射光を検出する二つのフォトダイオードの受光出力の比の対数をとるようにした。この実施形態は請求項2の発明の実施形態に相当する。
すなわち、図5の構成が図1と異なるのは、波長計測装置52において、リニア減衰型ブラッグ回折格子L−FBGの透過光を検出するフォトダイオード35が追加された点である。
【0020】
この実施形態によれば、図6に示すように、センサ用ブラッグ回折格子S−FBGの中心波長とフォトダイオード34,35の受光出力の比の対数(図6の縦軸ではLOG(PD2/PD1)として示してある)との関係が直線になる。このように受光出力の比をとっているので、光源31に光量変動があったとしても両方のフォトダイオード34,35の出力が同様に変化することになり、影響を受けにくくなる。
【0021】
次に、図7は本発明の第3実施形態であり、請求項3に記載した発明の実施形態に相当する。この実施形態は、第1実施形態(図1)に対して、センサ用ブラッグ回折格子を複数備え、更に、リニア減衰型ブラッグ回折格子、光分岐器及びフォトダイオードの組を複数、縦続接続して多点計測システムとしたものである。
図7において、S−FBG1〜S−FBGnは光ファイバ38上のセンサ用ブラッグ回折格子、波長計測装置53内のL−FBG1〜L−FBGnは光ファイバ39上のリニア減衰型ブラッグ回折格子、331,332,……,33nは光分岐器、341,342,……,34nはフォトダイオードである。
【0022】
この実施形態では、各センサ用ブラッグ回折格子S−FBG1〜S−FBGnの波長変化範囲に対して、それぞれの変化範囲で反射特性が直線状に変化する同数のリニア減衰型ブラッグ回折格子L−FBG1〜L−FBGnを用意しておき、それぞれの検出波長範囲が重ならないようにしておく。これにより、波長多重化による多点計測が可能となり、各センサ用ブラッグ回折格子S−FBG1〜S−FBGnの位置における温度等の物理量の同時測定が可能になる。
【0023】
図8は本発明の第4実施形態であり、請求項4に記載した発明の実施形態に相当する。この実施形態は、第3実施形態のフォトダイオード341,342,……,34nの特性上のバラツキによる影響を取り除くために、光スイッチを用いた例である。
図8において、波長計測装置54内の光分岐器331,332,……,33nには光スイッチ37を介して単一のフォトダイオード34が接続されており、光スイッチ37を切り替えることで所望のリニア減衰型ブラッグ回折格子からの反射光(すなわち、対応するセンサ用ブラッグ回折格子からの反射光)をフォトダイオード34が受光する。
このように構成すると、第3実施形態に見られるフォトダイオード間の特性のバラツキがなくなり、波長測定精度を高めることができる。
【0024】
上記各実施形態において、リニア減衰型ブラッグ回折格子の温度を検出し、その温度検出信号に基づきペルチェ素子等の温度制御素子によりリニア減衰型ブラッグ回折格子の温度を一定に保って光フィルタリング特性の変動を少なくすれば、波長測定精度が一層向上する。これは、請求項5に記載した発明の実施形態に相当する。
【0025】
なお、本発明に適用される波長検出方法は、光ファイバを用いた波長多重通信にも適用できることは明らかである。
【0026】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、従来のようにギャップ長の微小変位を得るために機械的可動部分を有する波長検出部を用いるのではなく、リニア減衰型ブラッグ回折格子の反射光量を受光素子により計測するようにしたので、耐震性に強く、低コストで製品の歩留まりも高いとともに、高速応答性を有する波長計測装置を実現することができる。
請求項2記載の発明によれば、センサ用ブラッグ回折格子の中心波長と二つの受光素子の光電流出力の比の対数値とが直線関係となり、光源の光量変動を受けにくいシステムを構成することができる。
請求項3記載の発明によれば、中心波長とリニア減衰範囲とが異なるリニア減衰型ブラッグ回折格子をセンサ用ブラッグ回折格子と同数用意することで多点計測が可能となり、また、請求項4記載の発明によれば、多点計測時に問題となる受光素子間の特性上のバラツキを低減できるという効果がある。
更に、請求項5に記載したごとく、リニア減衰型ブラッグ回折格子の温度を一定に保つようにすれば、光フィルタリング特性の変動が少なくなって波長測定精度が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1のセンサ用ブラッグ回折格子の反射波長と光量との関係を示す図である。
【図3】図1のリニア減衰型ブラッグ回折格子の波長と透過率との関係を示す図である。
【図4】図1のセンサ用ブラッグ回折格子の中心波長とフォトダイオードにより測定される反射受光光量との関係を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す構成図である。
【図6】図5のセンサ用ブラッグ回折格子の中心波長と二つのフォトダイオードの受光出力の比の対数との関係を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す構成図である。
【図8】本発明の第4実施形態を示す構成図である。
【図9】従来技術としての温度分布測定システムの全体構成図である。
【図10】従来技術における温度検出部の構成図である。
【符号の説明】
S−FBG,S−FBG1〜S−FBGn センサ用ブラッグ回折格子
L−FBG,L−FBG1〜L−FBGn リニア減衰型ブラッグ回折格子
31 1.55μm光源
32,33,331,332,……,33n 光分岐器
34,35,341,342,……,34n フォトダイオード(PD)
36 光スイッチ
38,39,40 光ファイバ
51,52,53,54 波長計測装置
Claims (5)
- 測定光が入射される光ファイバに一以上のセンサ用ブラッグ回折格子が形成され、前記センサ用ブラッグ回折格子からの反射光の波長を検出して前記センサ用ブラッグ回折格子の位置における物理量を測定する物理量測定システムにおいて、
前記センサ用ブラッグ回折格子からの反射光を、特定の波長範囲で直線状に反射率が変化するリニア減衰型ブラッグ回折格子に入射させ、このリニア減衰型ブラッグ回折格子による反射光を受光素子に入射させてその光電流の変化に基づいて前記センサ用ブラッグ回折格子による反射光の波長を測定することを特徴とする波長計測装置。 - 測定光が入射される光ファイバに一以上のセンサ用ブラッグ回折格子が形成され、前記センサ用ブラッグ回折格子からの反射光の波長を検出して前記センサ用ブラッグ回折格子の位置における物理量を測定する物理量測定システムにおいて、
前記センサ用ブラッグ回折格子からの反射光を、特定の波長範囲で直線状に反射率が変化するリニア減衰型ブラッグ回折格子に入射させ、このリニア減衰型ブラッグ回折格子による反射光を第1の受光素子に入射させ、かつ、前記リニア減衰型ブラッグ回折格子による透過光を第2の受光素子に入射させ、第1、第2の受光素子の光電流の比の対数に基づいて前記センサ用ブラッグ回折格子による反射光の波長を測定することを特徴とする波長計測装置。 - 請求項1記載の波長計測装置において、
複数のセンサ用ブラッグ回折格子の波長変化範囲に対応した同数のリニア減衰型ブラッグ回折格子を備え、各リニア減衰型ブラッグ回折格子による複数の反射光をそれぞれ同数の受光素子に入射させ、各受光素子の光電流の変化に基づいて各センサ用ブラッグ回折格子による複数の反射光の波長を同時に測定することを特徴とする波長計測装置。 - 請求項1記載の波長計測装置において、
複数のセンサ用ブラッグ回折格子の波長変化範囲に対応した同数のリニア減衰型ブラッグ回折格子を備え、各リニア減衰型ブラッグ回折格子による複数の反射光を光スイッチの切り替えにより単一の受光素子に入射させ、この受光素子の光電流の変化に基づいて各センサ用ブラッグ回折格子による複数の反射光の波長を順次測定することを特徴とする波長計測装置。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載した波長計測装置において、
リニア減衰型ブラッグ回折格子の温度検出信号に基づき温度制御素子を動作させてリニア減衰型ブラッグ回折格子の温度を一定に保つことを特徴とする波長計測装置。
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