JP3657664B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、中高圧用電解コンデンサの駆動用電解液に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来より電解コンデンサの駆動用電解液（以下電解液という）には、酸化皮膜形成能を有し、アルミ箔の耐水性を向上させ、かつ皮膜劣化の抑制を目的としたオルトリン酸またはそのアンモニウム塩等のリン酸化合物の添加が検討されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
オルトリン酸またはそのアンモニウム塩は酸化皮膜形成時に消費されるため電解液中の濃度は経時的に低下し、長期に及ぶ電解コンデンサの高温負荷試験や高温無負荷試験においてアルミ箔の酸化皮膜の劣化により静電容量の低下や、漏れ電流の増大を招く。そこでオルトリン酸またはそのアンモニウム塩の添加量を過剰に増加させると、アルミ箔および酸化皮膜に対して溶解性が増大し腐食を生じさせるので好ましくない。さらに、オルトリン酸またはそのアンモニウム塩は熱的安定性に乏しく、高温領域では上述の酸化皮膜の劣化を抑制する効果が減少するなどの欠点をもっていた。
本発明は以上の欠点を改善し、電解コンデンサの特性を長時間にわたって安定化し、高温下において皮膜劣化抑制効果を示す電解コンデンサの駆動用電解液を提供することを目的とする。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
エチレングリコールを主成分とする溶媒に、高級二塩基酸またはそのアンモニウム塩及びホウ酸またはそのアンモニウム塩を溶解した電解コンデンサ用電解液に、メタリン酸またはメタリン酸ナトリウム、あるいはヘキサメタリン酸ナトリウムを溶解させた電解液であり、上記メタリン酸またはメタリン酸ナトリウムを電解液全体に対して０．０１〜０．４５重量％溶解するか、あるいは上記ヘキサメタリン酸ナトリウムを電解液全体に対して０．０１〜０．０９重量％溶解した電解液を用いることで、長期にわたって安定した特性を示す電解コンデンサを提供できることを見いだした。
【０００５】
【作用】
メタリン酸は水溶液中において水和反応によりオルトリン酸に変化するが、水分の少ない電解コンデンサ用電解液中ではその反応が緩やかに進行し、徐々にオルトリン酸が電解液中に供給されるため、オルトリン酸のもつアルミ箔の耐水性、酸化皮膜形成能を低下させず維持できることから、電解コンデンサの静電容量の低下や、漏れ電流の増大を防止できる。
また、分子量の大きいヘキサメタリン酸ナトリウムはその構造から熱的安定性に優れるため高温領域においても電解コンデンサの特性の長期安定化が可能である。
【０００６】
【実施例】
以下、実施例の具体的内容について説明する。溶媒には、エチレングリコール等の多価アルコールを用いる。溶質には７−ビニル−９−ヘキサデセン−１−１６−ジカルボン酸またはそのアンモニウム塩を用いる。添加剤としてはホウ酸、マンニットを用いる。表１、表２に実施例の組成および測定結果を示す。但し、比抵抗は３０℃、火花電圧は８５℃において測定した。表１、表２から明らかなように、従来例及び実施例ともに比抵抗は７１０Ω・ｃｍ程度であったが、従来例において火花電圧は４３０Ｖであったのに対し実施例１〜９では４４０〜４５０Ｖとなる。すなわち比抵抗はほぼ同等で、火花電圧は実施例１〜９の方が２．０〜５．０％高い値を示した。
【０００７】
【表１】

【０００８】
【表２】

【０００９】
また、表１、表２に示す従来例及び実施例１〜９の電解液を用いた定格４００Ｖ、１０μＦの電解コンデンサによる高温負荷試験及び高温無負荷試験を行った。高温負荷試験条件は、温度１０５℃、印加電圧４００Ｖ、放置時間２０００ｈとし、高温無負荷試験条件は、温度１０５℃、放置時間２０００ｈとし、電解コンデンサ試料数は各電解液、各試験１０個とした。測定結果を表３及び表４に示す。
【００１０】
【表３】

【００１１】
【表４】

【００１２】
表３、表４より明らかなように、初期において、実施例１〜６は従来例と顕著な差はみられないが、実施例７〜９については、従来例と比較するとｔａｎδ、漏れ電流で若干改善されている。
高温負荷試験２０００ｈ後においては、表３より明らかなように従来例と実施例の差はより顕著にみられ、特に実施例７〜９では従来例に対して、静電容量変化率、ｔａｎδ、漏れ電流のいずれにおいても大幅に改善されている。
【００１３】
表４に示されているように、高温負荷試験２０００ｈ後と同様、高温無負荷試験２０００ｈ後の測定結果においても従来例に比べ実施例では各特性において改善されている。このことから、メタリン酸、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムはコンデンサ特性を向上させ、特にヘキサメタリン酸ナトリウムは高温領域でも改善効果が顕著であることがわかる。メタリン酸、メタリン酸ナトリウムおよびヘキサメタリン酸ナトリウムにおいて添加量が０．０１％未満では、顕著な効果がみられず、メタリン酸およびメタリン酸ナトリウムは添加量が０．５％以上、ヘキサメタリン酸ナトリウムは添加量が０．１％以上では、溶解に時間を要し、また溶質の析出を招き、さらに火花電圧が低下するので好ましくない。
【００１４】
【発明の効果】
上述の通り、本発明は、従来の電解液に比べ、静電容量、ｔａｎδ、漏れ電流等の電解コンデンサの諸特性を向上させ、高温下で長時間にわたって安定な電解コンデンサを実現できる電解液の提供が可能である。

Claims (3)

1. エチレングリコールを主成分とする溶媒に高級二塩基酸またはそのアンモニウム塩及びホウ酸またはそのアンモニウム塩を溶解した電解コンデンサの駆動用電解液に、メタリン酸またはメタリン酸ナトリウム、あるいはヘキサメタリン酸ナトリウムを溶解させたことを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
2. 上述メタリン酸またはメタリン酸ナトリウムを電解液全体に対して０．０１〜０．４５重量％溶解することを特徴とする請求項１の電解コンデンサの駆動用電解液。
3. 上記ヘキサメタリン酸ナトリウムを電解液全体に対して０．０１〜０．０９重量％溶解することを特徴とする請求項１の電解コンデンサの駆動用電解液。