JP3656523B2 - 高炉改修時の炉体支持方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉改修時の炉体支持方法に関し、特に炉体吊下げ用のリフトジャッキとロッドとを、解体工事,建設 (組み立て) 工事の進捗状況に合わせて調節することで、工期の短縮、施工の簡素化、改修経費の削減を実現しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、高炉の改修は、高炉近傍に据え付けた炉頂クレーンを用い、炉体の上部から炉底部まで順次に解体したのち、全く逆の手順で炉底部から上部までを組み立てることにより、行われていた。しかしながら、この技術は、解体、組み立てに際しては、炉頂クレーンの吊り上げ能力により、炉体の鉄皮や耐火レンガ等を数多くの小ブロックに分けて行わなければならず、改修終了までには相当の期間を必要とするという問題があった。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するものとして、最近、種々の方法が提案されている。なかでも、例えば、建設方法については、特公昭53−39322号公報では、高炉を炉頂部から炉底部までを数個のブロックに分けて、高炉の基礎以外の場所で建造しておき、炉体支持柱の上に設けた高炉建設用の付設櫓を利用して、各分割ブロックをいわゆるリフトアップ工法により炉頂部から順次組み立て、最後に炉底部を炉底定盤ごと高炉の基礎上に固定する方法を提案している。
【0004】
一方、炉体の解体方法については、特開平10−96005号公報や特開平11−21606号公報では、リングブロック工法と呼ばれている方法を提案している。即ち、この工法は、図1に示すように、吹き止め後の高炉炉体1を冷却した後、高炉炉体1を水平方向に輪切りにし、鉄皮、ステーブ、レンガ等を一体にした数個のリングブロック (A、B、C、D、E)に切断分割し、分割して得られたそのリングブロックA〜Eをそれぞれ一体のまま、炉床レベルから横方向へ順次搬出することによって、現地工事の時間短縮を図る工法である。この工法は、高炉改修工事による高炉の解体を大幅に低減できる方法として注目されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上掲の各従来技術において採用しているリングブロックをリフトアップして解体し、建設する場合、一般には、炉周方向に配設した36台のジャッキとこれらのジャッキにつながるそれぞれの吊下げ用ロッドとを使用している。ところが、その使用量がリングブロックの撤去数や組み合わせ数 (荷重負荷) には一切関係なく一定の数に管理しているため、このことが作業量 (工数) 、コスト、工期の点で著しい負担を強いる結果となり、ひいては短期改修の障害要因の1つとなっていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、高炉の短期改修を実効のあるものにするべく、工事期間のより一層の短縮と、施工の簡素化、ならびに改修経費の削減を図ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上掲の目的の実現に向けたいくつかの試みの中で、発明者らは、ジャッキならびに吊下げ用ロッドの使用については、工事の進捗状況,即ち荷重負荷に応じて調節することが作業量 (工数) 、部品調達コスト、ひいては工期の一層の短縮につながることを知見し、本発明に想到した。
【0008】
即ち、炉体を、その炉頂部から炉底部までを数個のリングブロックに切断分割し、得られた炉体の各リングブロックを、高炉支持柱の上部デッキに設置された複数のリフトジャッキ、およびこれらのリフトジャッキに取付けられる吊り下げ用ロッドを介して吊り下げた状態として、高炉基礎上から順次に搬出し、もしくは同位置に順次に搬入して、高炉の改修を行うに当たり、既に搬出し、搬入した前記リングブロックの数によって決まる炉体荷重に応じ、前記リフトジャッキの使用台数を、解体時にあっては減らす一方建設時にあっては増加するように調節すると共に、それらのリフトジャッキにそれぞれ取付けられる吊り下げ用ロッドの接続本数を、リングブロックの搬出、搬入数に応じ、解体時には順次増加させる一方建設時には順次減少させるように調節することを特徴とする高炉改修時の炉体支持方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の実施形態の説明のために、リングブロック工法に基づく炉体の解体方法の例を以下に説明する。
図1,図2は、高炉の解体方法の1例について示すものであり、図中、番号1は炉体、2は環状管、3は炉体支持柱である。
(1) 炉体の解体はまず、炉体1を水平方向に切断し、垂直方向を複数個 (この例では、A〜Eの5個) に分割して、炉内れんが、冷却設備、鉄皮をリング状一体構造のままのリングブロックとして解体し、搬送して撤去する。この時、炉底部ブロックEとその直上のブロックDとは、縁切りした場合にブロックDのれんがが崩壊しない場所で分割する必要がある。
(2) 分割した上記リングブロックのうち、炉底れんがを含む最下段のリングブロックEの解体に際しては、鉄皮に複数個の垂直方向の切断線を入れ、複数個に分割して、花びら状に切断して解体し、撤去する (図2) 。この時、上部のリングブロックA〜Dは、高炉支持柱3に取り付けた適数個の油圧等のリフトジャッキ4により、昇降可能に吊り下げて支持しておく。
(3) 最下段ブロックの炉底れんが壁部は、鉄皮解体後、外部に露出するので、外部から、大型の解体機によって解体撤去する。
(4) 炉底部の残銑を含む炉底中心部の底板上の炉底れんがは、高炉基礎面まで解体することなく、一体のまま炉底基礎面とジャッキまたは発破等の手段により地切りした後、基礎面上を一体のまま摺動させ、炉外に搬送する。
(5) 最下段ブロックEを解体撤去した後、上段のリングブロックA〜Dを順次、前記リフトジャッキ4によって降下させ、鉄皮、冷却設備、れんがをリングブロックのまま、基礎面上に降ろし、直上のリングブロックと分割したのち、基礎面上を横送りして搬出する。搬出に当たっては、基礎面上と同レベルになる移動設備 (図示せず) を基礎隣接位置まで移動させ、各リングブロックをそのまま移動設備上に移して搬出する。また、基礎面上にレールを敷設し、台車によって搬送することもできる。
(6) 上段ブロックの切断に当たっては、昇降の事前に、下段のリングブロックの重量に耐えるだけの鉄皮切断線を残し、基礎面上に上架したのち最終切断して、各リングブロックを順次に切り離す。
上記手順を順次繰り返し、上段のリングブロックを解体し、搬出する。
【0011】
一方、既存の炉体を上述のようにして解体したのち、その基礎上に新たに高炉、即ち炉体の建設、つまりリングブロック (A〜E)の組み立てによる炉体の建設を行う。
その方法は、炉体を、その炉頂部から炉底部まで上下方向の複数個のリングブロックに分割し、予め高炉基礎以外の工場内で各リングブロック毎に円筒状に組み立てる。上記の例では、A〜Eの5ブロックに分割した場合である。各リングブロックの組み立てに際しては、鉄皮にステーブ、冷却板等の冷却設備を取り付け、れんが積みを実施し、また鉄皮、ステーブ間に不定形耐火物の流し込みまたは圧入を実施する。好ましくは、この段階で炉内乾燥を終えておく。そして、各リングブロックは、移動設備が下部に入り込めるだけの空間を保って支持する。ついで、各リングブロックA〜Eを、順次高炉基礎まで搬送したのち、前記リフトジャッキ4によりリフトアップし、互いを接合するのである。
【0012】
かかるリングブロック工法の特徴は、上述したように、炉体の解体、組み立てに当たって、炉上部や炉胸部、炉腹部などのリングブロック (A〜E)からなる炉体を吊り下げる必要がある。
そのために本発明では、図4(a) に示すような、油圧式を好適例とするリフトジャッキ4を用いる。このリフトジャッキ4は、高炉支持柱 (櫓) 3に固定されている上部デッキ5上に設置されており、そしてこのリフトジャッキ4にはそれぞれ、図4(c) のカップラー7を介して接続可能な吊下げ用ロッド6 (図4(b))が繰り出し、繰り込み可能に取付けられている。
【0013】
さて、本発明において用いる上記リフトジャッキ4は、例えば、6000トンの高炉の炉体を懸吊するには、該ジャッキの能力 (1本当たり) が180トンのものを用いる場合を考えると、約36台が必要になる。そこで、従来のリングブロック工法では正に、炉周方向に、東西南北にそれぞれ9台づつ合計36台のリフトジャッキ4・・・を、前記上部デッキ7上に補強柵8を介して設置し、そして、各リフトジャッキ4・・・にはそれぞれ、解体もしくは組み立ての各段階に応じて2〜9本の吊下げ用ロッド6・・・をカップラー7を介して接続し、炉体の吊り下げ支持を行っている。
従って、従来技術の下で、例えば炉頂部 (Aブロックのみを懸吊する図3(c)の状態) では、合計で最大 324本 (9×36) のロッドを使用することになり、このことが、作業負荷の増大 (工数増) を招き、工期とコストの制約となっていた。
【0014】
この点に関し、本発明では、例えば解体工事の場合、撤去するリングブロックの数、即ち各リフトジャッキ4にて支持する残りの炉体荷重 (懸吊リングブロック数) に応じて、該リフトジャッキ4の使用台数を調節すると共に、それぞれのリフトジャッキ4に取付ける前記吊下げ用ロッド6の数をも調節することとした。
【0015】
例えば、図3(a) は、炉底部 (ブロックE)のみを撤去した状態であり、炉体 (約6000トン) のほとんどを懸吊支持している。この場合、上述した例のとおり、36台のリフトジャッキ4に対し、それぞれ2本づつの吊下げ用ロッド6が取付けられた状態であり、合計で72本の吊下げ用ロッド6が使用されている。
一方、図3(b) の例では、懸吊支持する炉体は、炉頂部 (ブロックA) と炉胸部 (ブロックB) であり、総荷重は3000トンになる。このとき必要となるリフトジャッキ4の台数は、3000トン/180 トン≒16台であり、地方法に比べて約半数でよいことになる。そして、それぞれのリフトジャッキ4 (16台) に使用されるロッドの数は図示のとおり7本づつであるから、合計で112本 (従来例=252本) である。
また、図3(c) の例では、解体が最終段階であり、炉頂部 (ブロックA) のみを懸吊する状態であり、総荷重は1400トンになる。このとき必要となるリフトジャッキ4の台数は8台であり、当初の約1/4の数ですむ。しかも、このときに使用する上記ロッドの数は、各々9本づつ合計で72本の吊下げ用ロッド6が用いられる。
【0016】
ところで、図示を省略したが、懸吊炉体が (ブロックA,B,C) の場合、総荷重は約5000トンである。これを能力 180トンのリフトジャッキ4で吊り下げるとしたら、5000/180 ≒28台のリフトジャッキ4が必要で、各々には5本づつのロッド6を接続する必要があることから、合計では140本のロッドが使われている。
【0017】
つまり、このときをピークにして、使用するロッドの数は順次減少することになる。従って、本発明方法に従えば、従来のように解体の最終段階、あるいは組み立ての初期のように324本ものロッド6を使用する必要はなく、しかも工事の段階で不必要になったリフトジャッキ4に取付けられている不要のロッドを転用するようにすれば、ロッドストック格納数も少なくてすみ、コスト的にも大きなメリットが生じると共に、作業負担の著しい減少とともに工期の短縮に大きく寄与することになる。
【0018】
なお、上述した説明は、主として解体のときを例にとって説明したが、炉体の組み立てのときも、工程が単に逆転するだけで、リフトジャッキ4と吊下げ用ロッド6の使用数の調節の仕方に何ら変わりはなく、同じ作用、効果が得られるので、詳しい説明は省略する。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高炉改修時における解体,建設の期間をより一層短縮することができるだけでなく、改修工事 (解体,建設工事) の簡素化、および改修・建設費用の削減をも併せて達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】解体前の既設高炉の断面図である。
【図2】炉底部 (ブロックE)解体段階の説明図である。
【図3】高炉解体の各段階におけるリフトジャッキ懸吊のもようを示す模式図である。
【図4】リフトジャッキ、吊下げ用ロッド、カップラーの略線図である。
【符号の説明】
1 炉体
2 環状管
3 高炉支柱
4 リフトジャッキ
5 上部デッキ
6 吊下げ用ロッド
7 カップラー
8 補強柵
Claims (1)
- 炉体を、その炉頂部から炉底部までを数個のリングブロックに切断分割し、得られた炉体の各リングブロックを、高炉支持柱の上部デッキに設置された複数のリフトジャッキ、およびこれらのリフトジャッキに取付けられる吊り下げ用ロッドを介して吊り下げた状態として、高炉基礎上から順次に搬出し、もしくは同位置に順次に搬入して、高炉の改修を行うに当たり、
既に搬出し、搬入した前記リングブロックの数によって決まる炉体荷重に応じ、前記リフトジャッキの使用台数を、解体時にあっては減らす一方建設時にあっては増加するように調節すると共に、それらのリフトジャッキにそれぞれ取付けられる吊り下げ用ロッドの接続本数を、リングブロックの搬出、搬入数に応じ、解体時には順次増加させる一方建設時には順次減少させるように調節することを特徴とする高炉改修時の炉体支持方法。
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