JP3655055B2 - 船舶用推力方向ユニット - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は一般的に船舶を操縦するのに使用される推進装置に関する。特に、本発明は、船舶を操縦及び／又は推進させるのに使用される方向的に調整可能な水ジェット流のエネルギー効率の良い発生を達成するために、推進装置に使用され改良された推力方向ユニットに関する。
【０００２】
【従来の技術】
船舶の厳密な方位操縦に使用されるための船推進装置は一般的に当該技術分野において知られている。かかる推進装置は、船体の一方の側面から水線より下に吐出される水流を発生させるように設計され、その結果、改良された厳密な方位操縦のために十分な水力反力が船舶に加えられる。１つの伝統的な形態では、推進装置は比較的大きい直径のプロペラを有し、該プロペラは船体に形成された対応的に寸法決めされた横向きの開口又はトンネル内に取り付けられ、プロペラは、プロペラ回転の方向に従って船舶の一方の側に向けられた十分な量の水流を発生させるようになっている。このタイプの所謂トンネル推進器は、特に、船着場への接近又は船着場からの出航に関する船舶の厳密な方位操縦において著しい利点を提供するが、トンネル推進装置は船舶の船体内に大きい容積空間を占める。その上、必要な大口径の流れトンネルの取付けの便宜を図るために通常、乾ドック環境で大きい開口を船舶の船体内に形成しなければならない。その結果、トンネル推進装置は、装置の大きさ及び取付け費用に関して著しい不利益を示す。
【０００３】
近年、高容量水ポンプが、船舶の船体の両側に取付けられた比較的小さいノズルを通して高速流ジェットとして吐出用の水を送出する、別のかつ比較的より小型の推進装置が設計されてきた。例えば、米国特許第４，０５６，０７３号、第４，２１４，５４４号、第４，４５５，９６０号、第５，２８９，７３号を参照。これらの推進装置では、ポンプは船体に形成された開放流入口を通して水を吸い込み、その水をディフーザ及び方向制御式羽根を通して送出し、１つ又はそれ以上の船体ノズルを通して流れを吐出し、その結果、船舶操縦を補助するのに効果的である水圧反力を生じる。横向き推進力を発生させるために水ジェット流を横向き方向に或いは夫々に逆推進力又は前方推進力を生じさせるために前方又は後方斜め方向に方向的に調整するための、調整可能な羽根を有する推力方向ユニットがしばしば吐出ノズルに使用される。この点について、かかる推力方向ユニットは、典型的には、前方斜め方向乃至後方斜め方向の範囲にわたって方向ジェット流の調整に順応するように、広がり前方壁及び後方壁が形成されたノズルハウジングを含んでいた。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
広がり形態のかかるノズルハウジングの外形は、それによって吐出されたジェット流を広げさせかつ拡散させ、従って、特に、羽根が横向きの推力位置に設定されたとき、かなりのエネルギー非効率が存在する。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水ジェット流の調整可能な方向吐出に順応する広がり形状のノズルハウジング外形を設け、そらせ羽根がノズルハウジングと協働して広がらない断面形状の吐出流路を構成するようにした、船舶推進装置に使用される推力方向ユニットの著しい改良を提供する。
本発明によれば、船舶の推進装置に使用するための改良された推力方向ユニットを提供する。推力方向ユニットは、厳密な方位操縦及び／又は船舶推進力のための反動推力を生じさせるために、船舶の船体の側面から水線より下に選択的に調節可能な方向に水ジェット流を吐出させる。推力方向ユニットは、広がり前方壁及び広がり後方壁によって構成されたハウジング流出口を有する比較的小型の推進器、即ち、ノズルハウジングと、前記ハウジング流出口内に取付けられ、方向的に修正される吐出流路を構成するために一緒に移動できる少なくとも２つのそらせ羽根との組合せからなる。特に、船舶の中心線とほぼ垂直な横向きの方向に水ジェット流を吐出するようにそらせ羽根を向けたとき、この吐出流路の流れ断面は形状が広がっていない。
【０００６】
推力方向ユニットは、ここに援用する米国特許第５，２８９，７９３号に説明されたような高容量の主ポンプと組合せて使用されるようになっている。その上、好ましい形態では、改良された推力方向ユニットは船舶の船体の両側に取付けられた一対のユニットで設けられ、各推力方向ユニットは、水面下の場所で船体から外方に吐出させるために多量の水流を主ポンプから受け入れるようになっている。その結果、船舶を操縦するのに使用し得る反動推力を生じさせる。
概略的に言えば、各推力方向ユニットは主ポンプによって関連した流れ導管を通って吐出された水流を受け入れるための流入口を有する推進ハウジングを含む。各推力方向ユニットと関連したそらせ羽根は、横向きの推進力を生じさせるために横向きの推力位置に一緒に移動でき、又は逆駆動推進力又は前方駆動推進力を夫々に生じさせるために前方斜め位置又は後方斜め位置に移動できる。横向きの推力位置では、主ポンプと関連した適当な流れ制御部材が、典型的には水ジェット流を推力方向ユニットの両方ではなく一方に送出する。前方駆動位置又は逆駆動位置において、これらの流れ制御部材は通常、水ジェット流を主ポンプから両方の推力方向ユニットに送出するように作動する。
【０００７】
各推力方向ユニット用そらせ羽根は、ハウジング流出口を横切って垂直に延びるように平行関係をなして枢着され、そらせ羽根を一緒に回動させるためのアクチュエータ手段が設けられる。前方斜め位置では、そらせ羽根はハウジング流出口の前方壁とほぼ平行に向き、前方壁と協働して斜め前方へ水ジェット流を吐出するための広がらない断面形状の吐出流路を構成し、逆推進力を達成する。後方斜め位置では、そらせ羽根はハウジング流出口の後方壁と平行に向けられ、後方壁と協働して斜め後方へ水ジェット流を吐出するための広がらない断面形状の吐出流路を構成し、前方推進力の推進を達成する。
そらせ羽根を船舶中心線とほぼ垂直に向けた横向きの推力位置では、そらせ羽根はハウジング流出口と協働してハウジング流出口の広がり前方壁及び広がり後方壁と隔絶状態をなした広がらない形状の吐出流路を構成する。この外形によって広がりノズルハウジング構造物と関連したエネルギー損失は回避される。
【０００８】
本発明の他の特徴及び利点は、例示として示した添付図面、本発明の原理に関連してなされた以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【０００９】
【発明の実施の形態】
実施例の図面に示すように、参照番号１０で全体的に示す、船舶１２の厳密な方位操縦及び／又は前方又は後方推進のための改良された推力方向ユニットを提供する。図１乃至図３は、船体１４の両側で船舶１２の船体１４内に取付けられた一対の推力方向ユニット１０を示す。推力方向ユニット１０は、、米国特許第５，２８９，７９３号に示されかつ説明されているタイプの高容量主ポンプ１６からの多量の水流を受け入れるようになっており、各推力方向ユニット１０内には水流を選択された方向の配向で調整可能に吐出させる調整可能なそらせ羽根１８が設けられている。各調整位置では、そらせ羽根１８は推力方向付けハウジング２０と協働して広がらない外形の水ジェット吐出路を構成する。
【００１０】
本発明の推力方向ユニット１０は米国特許第５，２８９，７９３号に示されかつ説明され、ここに援用するタイプの船舶推進装置に使用するために特に設計される。かかる推進装置は、典型的に船舶１２内にほぼ中央位置に取付けられ、水圧反力を生じさせて船舶の操縦を行うために水面下の場所で船体１４から選択的に吐出させることができる多量の水流を生じさせるように設計された主ポンプ１６を含む。主ポンプ１６は通常、船体１４の底の流入口（図示せず）から水を吸い込み、多量の水流を一対の横方向に向けられた流れ導管２２を通して船体１４の両側の対の推力方向ユニット１０に吐出する。図２及び図３に概略的に示すように、推力方向ユニット１０内のそらせ羽根１８は、前方推進力を発生させるために水を後方に斜め方向（図２）に吐出させ、又は逆推進力を発生させるために水を前方斜め方向（図３）に吐出させることができる。別の例として、そらせ羽根１８は、厳密な方位操縦等のための横向きの推進力を生じさせるために船体１４の中心線２４とほぼ垂直横向きの方向（図１）に水を吐出するように向けることができる。横向きの推進形態では、主ポンプ１６と関連した適当な流れ制御部材２５を通常操作して推力方向ユニット１０の両方でなく一方へポンプ流出量を送出する。
【００１１】
図４乃至図６は推力方向ユニット１０の１つをより詳細に示し、ここで２つのユニット１０は構造及び操作が同一であり、船体１４の両側に鏡像関係で取り付けられるものであることが理解される。図示するように、各推力方向ユニット１０は外方に広がる前方壁３０と後方壁３２によって相互に連結されたほぼ水平で平行な上壁２６及び底壁２８によって構成される小型のハウジング２０を有する。ハウジング壁２６、２８、３０、３２の組は、船首尾方向平面に広がる外形の開放流路を形成し、ハウジング壁の船外縁はほぼ船舶１２の船体１４で終っている。ハウジング壁の船内壁は、多量の水流を主ポンプ１６からもたらす関連した流れ導管２２の下流端に連結された円筒導管部分３４に接合されている。
そらせ羽根１８はハウジング壁２６、２８、３０、３２によって構成された開放流路内に取り付けられる。各推力方向ユニット１０は少なくとも２つのそらせ羽根１８を備え、好ましい構造では、各そらせ羽根１８は、相互に連結された対の外側ブレード３６及び内側ブレード３８によって形成される。添付図面に示すように、そらせ羽根１８は開放流路の中に垂直に突出するように垂直に延びた平行関係に取り付けられ、上端及び下端がスピンドル４０（図４及び図５）で終わっており、スピンドル４０はハウジング２０の上壁及び底壁の上下にそれぞれ配置された適当な軸受４２によって支持される。スピンドル４０の上端は一対のクランクリンク４４に結合され、一対のクランクリンク４４は同時駆動運動のためにコネクタリンク４６によって相互に連結される。クランクリンク４４の一方は油圧シリンダユニット５０から延びる駆動ラム４８の端部に結合された延長部分４４'を含む。
【００１２】
油圧シリンダユニット５０及び関連したラム４８並びに関連したリンクは、ハウジング２０内でのそらせ羽根１８の角度設定を調節可能に修正するためのアクチュエータ手段を構成する。特に、油圧シリンダユニット５０を作動して２つのそらせ羽根１８を共通の角度増分互いに回転させるやり方で駆動ラム４８を伸縮させる。従って、そらせ羽根１８を横向きの推力位置（図１及び図７）に回転可能に設定して、水ジェット流を船体中心線２４とほぼ垂直の横向き方向に吐出させ、或いは水ジェット流を斜め後方に（図２及び図９）又は斜め前方に（図３及び図８）吐出させ、夫々に前方駆動推力又は逆駆動推力を生じる。
本発明の主要な特徴によれば、そらせ羽根１８は、推進ハウジング２０の壁と協働して船体１４の側面から吐出される水流のエネルギーを失わせる広がりなしに実質的に水ジェット流の効率的な吐出を行う。特に、そらせ羽根１８はハウジング壁と協働して横向き推力位置、前方推力位置及び後方推力位置の各々においてほぼ広がらない断面形状の実際の吐出流路を構成する。この広がらない流路は、所ましくない広がり通路に沿った著しい水流を防ぐためにそらせ羽根１８の上流縁が推進ハウジング２０のハウジング前方壁３０、及び／又はハウジング後方壁３２と整合し、かつ実質的にハウジング後方壁３２に当接又は係合するようにそらせ羽根１８を形成することによって達成される。
【００１３】
即ち、横向きの推力位置では（図１及び図７）、そらせ羽根１８はハウジング上壁２６及びハウジング下壁２８と協働して前方壁３０及び後方壁３２を吐出流路から実質的に隔絶する。同様に、前方推力位置では、そらせ羽根１８は吐出流路を前方壁３０から実質的に隔絶し、これに対して、そらせ羽根１８が後方推力位置にあるとき、後方壁３２は流路から実質的に隔絶される。
好ましいそらせ羽根の外形は図６に最も良く示すように双ブレード式構造を有する。図示するように、一対の上下突張り５２が対の個々のブレード３６及び３８間で相互に連結され、突張り５２はスピンドル４０の連結用に設計されている。２つのブレード３６及び３８は、羽根１８が横向き推力位置にあるとき、推進ハウジング２０の船外端に又はその近くに配置された共通平面で終わる下流縁を有する。しかしながら、関連した広がり前方壁３０又は広がり後方壁３２の近くに配置されたブレード３６は、上流縁３６’は関連したブレード３８の上流縁３８’に対して上流で終る上流縁３６’を有する。従って、各そらせ羽根１８のブレード３８の上流縁３８’は、組のブレード３６に対して流入導管部分３４に向かって突出する。
【００１４】
図７に最も良く示すように、横向きの推力位置では、そらせ羽根１８は、組のブレード３６、３８が船体１４の中心線２４とほぼ垂直をなすように向けられる。この位置では、そらせ羽根１８の短いブレード３６は、前方壁３０及び後方壁３２の上流端と近接及び／又は当接関係に位置した上流縁３６’を有する。かくして、ブレード３６は広がり壁３０、３２を吐出流路から隔絶し、それによって、広がらない吐出流路が、ハウジング上壁２６及びハウジング下壁２８と組合せたそらせ羽根１８によって協働して構成される。
図９に示すように前方推力位置では、そらせ羽根１８を回転させて、吐出水流を斜め後方に再び向ける。この位置では、ブレード３６、３８はハウジング後方壁３２とほぼ平行に配置され、前方ブレード組のブレード３８の上流縁３８’を前方壁３０の上流端で又はその近くでハウジング２０と係合させる。かくして、この形態では、吐出水流が前方壁３０に沿って阻止され、全水流は、ブレード組によって後方壁３２に沿って構成された広がらない形状の流路を通して斜め後方に向けられる。
【００１５】
同様に、図８に示すように後方推力位置では、そらせ羽根１８を回転させて水流を斜め前方に再び向ける。ブレード３６、３８は前方壁３０とほぼ平行に配置され、後方ブレード組のブレード３８の上流縁３８’を後方壁３２の上流端で又はその近くでハウジング２０と係合させる。従って、この位置では、吐出水流が後方壁３２に沿って阻止され、水流は、ブレード組によって前方壁３０に沿って構成された広がらない流路を通して斜め前方に向けられる。
かくして、推力方向ユニット１０は方向羽根調整の３つの主要な位置の各々について広がらない外形の吐出流路を作る。その結果、吐出されたジェット流の広がりは、ジェット流が船体を取り囲む水域に送出されるまで阻止され、従って、船舶操縦のための最大反動推力を発生させる。
【００１６】
本発明の推力方向付け組立体に対する種々の修正及び改良は当業者にとって明らかであろう。従って、添付の特許請求の範囲で述べることを除いて前述の説明及び添付図面によって発明が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は、本発明の新規な特徴を実施する一対の改良された推力方向ユニットを有する推進装置を装備した船舶を示す概略図であり、推力方向ユニットを横向き推力位置で示す。
【図２】図２は、対の推力方向ユニットを前方推力位置で示す、図１と同様な概略図である。
【図３】図３は、対の推力方向ユニットを後方推力位置で示す、図１及び図２と同様な概略図である。
【図４】図４は、図１の囲み領域４にほぼ対応する、推力方向ユニットの１つの拡大部分上面図である。
【図５】図５は、図４のほぼ線５−５における推力方向ユニットの船外の側立面図である。
【図６】図６は、本発明に使用するためのそらせ羽根の１つの好ましい形態を示す拡大斜視図である。
【図７】図７は、推力方向ユニットを横向き推力位置で示す、図５のほぼ線７−７における水平断面図である。
【図８】図８は、推力方向ユニットを後方推力位置で示す、図７と同様な水平の断面図である。
【図９】図９は、推力方向ユニットを前方推力位置で示す、図７と同様な水平の断面図である。
【符号の説明】
１０ 推力方向ユニット
１２ 船舶
１４ 船体
１６ 高容量の能率主ポンプ
１８ そらせ羽根
２０ 推力方向ハウジング
２２ 流れ導管
２６ 上壁
２８ 底壁
３０ 前方壁
３２ 後方壁
３４ 円筒導管部分
３６、３８ ブレード
４０ スピンドル
４２ 軸受
４４ クランクリンク
４６ コネクタリンク
４８ 駆動ラム
５０ 油圧シリンダユニット

Claims (4)

1. 船舶の船体の一方の側面に取り付け、流入口と流出口との間に水流の通過のための開放流路を構成するためのハウジング手段を有し、前記流出口は、ほぼ平行な上壁および底壁によって相互に連結された広がり前方壁および後方壁によって構成された広がり断面形状を有し、
   前記流出口内に取り付けられ、前記上壁と底壁の間で回転自在に支持され、且つ船体の中心線とほぼ垂直な方向に水流を吐出するための横向きの推力位置と船体の中心線に対して斜めの方向に水流を吐出するための交互の推力位置の間で移動できる少なくとも２つのそらせ羽根を含み、
   前記そらせ羽根を前記横向きの推力位置と交互の推力位置の間で移動させるためのアクチエータ手段を含み、
   前記少なくとも２つのそらせ羽根の各々は、それぞれ、上流縁を有する外側ブレード及び内側ブレードを含み、前記外側及び内側ブレードは、前記外側ブレードの前記上流縁が前記前方壁及び後方壁の上流端とほぼ当接関係に配置される前記横向きの推力位置にほぼ平行な関係をなして移動でき、前記そらせ羽根は前記ハウジング手段の前記上壁および底壁と協同してほぼ広がらない吐出流路を構成し、且つ前記そらせ羽根が前記横向きの推力位置にあるとき、前記前方壁および後方壁を水流から隔絶し、前記交互の推力位置は、前記内側ブレードの前記上流縁が前記前方壁の上流端とほぼ当接関係に配置される前方推力位置及び前記内側ブレードの前記上流縁が前記後方壁の上流端とほぼ当接関係に配置される後方推力位置を含む、船舶用推力方向ユニット。
2. 前記外側及び内側ブレードは、前記そらせ羽根が前記交互の推力位置のいずれか１つにあるとき、前記ハウジングの上壁及び底壁と協同してほぼ広がらない吐出流路を構成する、請求項１に記載の推力方向ユニット。
3. 前記アクチュエータ手段は、前記流出口内で２つのそらせ羽根を一緒に回転移動させる、請求項１に記載の推力方向ユニット。
4. 前記外側及び内側ブレードは、前記そらせ羽根が前方推力位置にあるとき、前記後方壁とほぼ平行に向けられ、前記そらせ羽根が後方推力位置にあるとき、前記前方壁とほぼ平行に向けられる、請求項１に記載の推力方向ユニット。

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