JP3649820B2 - サイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造。 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、シートバックの側部にサイドエアバッグを内蔵するサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
衝突等の事故の際におけるその膨張、突出によって着座者への衝撃を軽減するエアバッグが、自動車等に装備される保護装置として、近年広く提供されている。そして、この種のエアバッグとして、たとえば、シートバックの側部に内蔵され、衝撃の発生時におけるシートバック側部から前方、つまりは着座者の側方への膨張、突出によって、着座者をドア等の壁面から保護する、いわゆるサイドエアバッグが知られている。
【0003】
このようなサイドエアバッグは、一般に、インフレータと称される起動装置を内部に配置して形成され、自動車の衝突等での衝撃を衝撃センサで検出したとき、インフレータでのガスの発生(噴射)および点火によって、シートバックから着座者の上体とドア等の壁面との間に瞬時に膨張、突出するように構成されている。
【0004】
サイドエアバッグは、通常、収縮状態で所定形状に折り畳まれ、シートバックフレームのブラケット等への基部の固着によって、シートバックの側部に内蔵されている。そして、衝突等の衝撃発生時に膨張したサイドエアバッグは、シートバックのトリムカバーの側面、上面に位置するまち部の側面前端と、前面に位置するメイン部の対応する側端との間の縫合部分を突出口とし、縫合糸の切断等のもとで当該突出口を破裂させて外部、つまりはシートバックの前方に突出可能となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、シートバックのトリムカバーとして、たとえば、側面および上面に位置するまち部と、前面に位置するメイン部と、背面に位置する背裏部との組み合わせによって袋状に形成された、いわゆる袋タイプのものが知られている。
【0006】
このような袋タイプのトリムカバーは、通常、下端に設けられた開口を介した被覆のもとでシートパッドの回りに配置され、メイン部中央のかがみ部とメイン部側方のがくぶち部との境界部分での吊り込みによって、シートバックフレーム等の固定部材に対して固定されている。
【0007】
ところで、袋タイプのトリムカバーにおいては、被覆時の作業性、および、使用時の機能性等の点から、背裏部として、伸縮性のある素材が通常使用されている。しかしながら、袋タイプのトリムカバーにおいては、通常、シートバックフレーム等の固定部材に対する背裏部サイドでの固定がなされないため、サイドエアバッグ内蔵シートのシートバックにこの袋タイプのトリムカバーを使用すると、サイドエアバッグの膨張に伴うトリムカバーの背裏部の伸びにより、トリムカバーを全体的に伸長させる虞れがある。
【0008】
つまり、袋タイプのトリムカバーをサイドエアバッグ内蔵シートのシートバックに使用する場合においては、サイドエアバッグの膨張に伴ってトリムカバーの背裏部が伸びるため、まち部の側面前端とメイン部の側端との間の縫合部分に規定された突出口の破裂が容易に得られなくなる虞れがある。
【0009】
なお、トリムカバーの背裏部を伸縮性のない素材とすればサイドエアバッグの膨張に伴う伸長は防止できる。しかし、このような構成では、シートバックのトリムカバーに要求される被覆時の作業性、および、使用時の機能性等を損なうため、好ましくない。
【0010】
この発明は、被覆時の作業性および使用時の機能性等を損なうことなく、サイドエアバッグの膨張に伴う突出口の容易な破裂を可能としたサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、この発明によれば、中央のかがみ部と側方のがくぶち部との境界部分の吊り込みによって、略袋状に予め形成されたトリムカバーのメイン部をシートバックの固定部材に固定的に連結している。そして、フック片が、略袋状に予め形成されたトリムカバーの内方で、その部位のうちのまち部の側面後端に設けられ、このフック片を、シートバックの骨格をなすシートバックフレームに設けられた係止片に係止することにより、まち部の側面後端をシートバックフレームに対して直接的かつ固定的に連結可能としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1、図2に示すように、この発明に係るサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造10においては、シートバック12のトリムカバー14が、側面および上面に位置するまち部14aと、前面に位置するメイン部14bと、背面に位置する背裏部14cとの組み合わせによって、下端の開口した袋状に形成されている。そして、この下端の開口を介した、トリムカバー14によるシートパッド16の被覆によって、サイドエアバッグ18を対応する側部、つまりはドア20等の車両の壁面サイドの側部に内蔵したサイドエアバッグ内蔵シート22のシートバック12が形成されている。
【0014】
図1に示すように、サイドエアバッグ18は、通常、追突、被追突等の衝突時の衝撃を感知する衝撃センサ(図示しない)に接続されたインフレータ26を内部に有し、収縮状態において所定形状に折り畳まれている。そして、衝撃センサによって所定以上の衝撃を検出したとき、インフレータ26でのガスの発生(噴射)および点火によって瞬時に膨張するように、サイドエアバッグ18は構成されている。
【0015】
図1を見るとわかるように、この実施の形態においては、シートバック12の骨格をなすシートバックフレーム28とそのサイドフレーム30とに架設、固定されたブラケット32が、シートパッドの中空状の収納部33に配置され、このブラケットへの基部の固定のもとで、サイドエアバッグ18はシートバックに内蔵されている。そして、この実施の形態においては、たとえば、インフレータ26に一体的に設けられたボルト34を利用し、このボルトとナット36とによる共締めにより、サイドエアバッグ18が、インフレータの配置された部分を基部として、ブラケット32に固定されている。
【0016】
なお、このサイドエアバッグ18の動作原理は公知であり、その構造およびそのための作動装置等はこの発明の趣旨でないため、ここでは詳細に説明しない。サイドエアバッグ18の動作原理、および、その基本構造として、たとえば、特開平03−281455号公報に開示のものが例示できる。
【0017】
このようなサイドエアバッグ18は、その膨張のもとでの、シートパッドの収納部33の前面壁33a、および、トリムカバー14の所定の突出口38の連続的な破裂を伴って、シートバック12の外部に突出可能となっている(図1の二点鎖線参照)。
【0018】
ここで、シートバックのトリムカバー14は、まち部14aとメイン部14bと背裏部14cとを有し、各部位の対応する端末間の縫合によって、下端の開口された略袋状に形成されている。そして、図1、図2に示すように、トリムカバー14におけるサイドエアバッグ18の突出口38は、たとえば、まち部14aの側面前端と、メイン部14bの対応する側端との縫合部分に規定されている。
【0019】
なお、トリムカバー14の背裏部14cは、シートパッド16の回りへのトリムカバーの配置、つまりはトリムカバーでのシートパッドの被覆の際の作業性、および、シートバックの使用時の機能性を高く維持するために、通常、伸縮性のある素材から形成されている。
【0020】
また、図1、図2に示すように、トリムカバーのメイン部14bは、たとえば、中央のかがみ部14b-1とその側方のがくぶち部14b-2とから形成されている。つまり、対応するサイドのがくぶち部14b-2の側端とまち部14aの側面前端との縫合部分が、トリムカバー14におけるサイドエアバッグ18の突出口38として規定されている。
【0021】
ここで、図1を見るとわかるように、この発明においては、たとえば、シートバック12の上下方向に延びて配設された吊り込みワイヤ40が、被覆布42の一体的な縫合等のもとでトリムカバーのメイン部14bのかがみ部14b-1とがくぶち部14b-2との境界部分に一体的に設けられ、シートパッド16の内部等に配置されたインサートワイヤ(図示しない)等への吊り込みワイヤの係止によって、トリムカバーのメイン部がシートバックフレーム28等の固定部材に固定的に連結されている。
【0022】
そして、図1に示すように、この発明のサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造10においては、フック片44が、トリムカバー14の内方でまち部14aの側面後端に設けられ、シートバックフレーム28に設けられた係止片46へのフック片の係止によって、まち部の側面後端がシートバックフレームに対して直接的かつ固定的に連結されている。
【0023】
フック片44は、たとえば、シートバック12の上下方向に延びた略J形状に形成されている。そして、たとえば、トリムカバーのまち部14aの側面後端と、背裏部14cの対応する側端との縫合部分での一端の一体的な縫合によってトリムカバー14の内方に延出されたサポート布48の自由端に、フック片44は設けられている。
【0024】
なお、この実施の形態においては、ブラケット32の後端に延長して設けられた延長端が、フック片44の係止可能な係止片46として形成されている。
【0025】
上記のように、この発明のサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造10においては、トリムカバーのメイン部のかがみ部14b-1、がくぶち部14b-2の境界部分での固定に加えて、トリムカバーのまち部14aの側面後端が、シートバックフレーム28に直接的かつ固定的に連結されている。つまり、サイドエアバッグ18の膨張による力が、トリムカバーの背裏部14cに伝達されないため、背裏部の伸長を伴わないサイドエアバッグの膨張が確保でき、これによって、トリムカバーのまち部14aの側面前端とメイン部のがくぶち部14b-2の端末との縫合部分に規定された突出口38の破裂が十分に得られる。
【0026】
そして、トリムカバーの背裏部14cが伸縮性のある素材から形成できるため、被覆の際の作業性、および、使用時の機能性を損なうことのないトリムカバー14が容易に確保できる。
【0027】
ここで、トリムカバー14は袋状に形成されるため、このトリムカバーの内方における、係止片46へのフック片44の係止作業は困難になりやすい。そこで、図1に示すように、トリムカバーの背裏部14cを所定位置、たとえば、サイドエアバッグ18の内蔵された部分寄りの位置で左右に分断して形成し、これにより形成された背裏部の分離片14c-1、14c-2の分断端を、連結手段50によって連結可能とするとよい。
【0028】
連結手段50として、たとえば、一対のテープ片50aの対向端に設けられた凹凸の歯部をスライダー50bのスライドによって噛合、噛合解除可能とするスライドファスナーが利用できる。なお、このようなスライドファスナー(連結手段)50としては、衣服等に広く用いられている公知の構成のものが利用でき、その構造自体はこの発明の趣旨でないため、ここでは詳細に説明しない。
【0029】
このような構成では、スライドファスナー50の開放状態においてシートパッド16をトリムカバー14で被装し、この開放状態で、フック片44を係止片46に係止すれば足りるため、フック片、係止片間の係止が確実かつ容易に行える。そして、係止片46へのフック片44の係止後、スライダ50bのスライドのもとでスライドファスナーの一対のテープ片50a間、つまりはトリムカバーの背裏部14cの分離片14c-1、14c-2間が閉鎖、連結できるため、トリムカバー14によるシートパッド16の被覆の際の作業性が向上される。
【0030】
更に、スライドファスナー50の閉鎖によって、トリムカバーの背裏部14cの分離片14c-1、14c-2間を連結するため、トリムカバー14、ひいてはシートバック12の外観品質の低下も確実に防止される。
【0031】
なお、この実施の形態においては、連結手段としてスライドファスナー50を例示しているが、これに限定されず、他の手段、たとえば、一対のホック片(フック片)やスナップ片等を利用してもよい。しかし、スライドファスナー50を連結手段とすれば、トリムカバーの背裏部14c の分離片14c-1、14c-2間の全域が連続して連結されるため、シートバック12の外観品質が一層向上される。
【0032】
また、この実施の形態においては、フック片44がサポート布48を介してトリムカバーのまち部14aの側面後端に連結されている。しかし、これに限定されず、たとえば、サポート布48を利用することなく、フック片44をトリムカバーのまち部14aの側面後端に直接に連結してもよい。
【0033】
しかしながら、この実施の形態のように、フック片44をサポート布48の自由端に設ければ、対応する係止片46の位置に応じたフック片の配置が可能となり、トリムカバーのまち部14aの側面後端を内方に必要以上に牽引することがないため、この点からも、シートバック12の外観品質の低下が防止できる。
【0034】
更に、ブラケット32の延長端を係止片46として形成しているが、これに限定されず、たとえば、別体の係止片をシートバックフレーム28の側端等への固着のもとで突設してもよい。しかし、ブラケット32の延長端を係止片46として利用すれば、部品点数が削減できるため、構成の簡素化および組み立ての際の作業性の向上等は容易にはかられる。
【0035】
また、この実施の形態においては、サイドエアバッグ18をシートバック12の正面から見た右サイドに内蔵した構成として例示しているが、これに限定されず、シートバックの正面左サイドに、サイドエアバッグを内蔵する構成としてもよい。
【0036】
更に、この実施の形態のおいては、シートバックのシートパッド16に設けられた収納部33にサイドエアバッグ18を内蔵する構成として、サイドエアバッグ内蔵シート22を例示しているが、これに限定されず、たとえば、シートパッドの側部とトリムカバーのまち部14aの側面との間にサイドエアバッグを内蔵する形態のサイドエアバッグ内蔵シートに、この発明を応用してもよい。
【0037】
なお、サイドエアバッグ内蔵シートとしては、自動車のフロントシートとなるドライバーシート、アシスタントシートが一般的に例示できるとはいえ、ドア等の壁面に隣接して装着されるシートであれば、サイドエアバッグによる保護効果が十分に機能するため、フロントシートに限定されず、たとえば、リヤシートのシートバックに、この発明のトリムカバー構造を応用してもよい。
【0038】
また、自動車のシートに適するとはいえ、これに限定されず、たとえば、電車、飛行機、船舶等のシートに、この発明を応用してもよい。
【0039】
上述した発明の実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0040】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係るサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造によれば、シートバックの固定部材に対するトリムカバーのまち部の側面後端の直接的かつ固定的な連結によって、サイドエアバッグに伴うトリムカバーの背裏部の伸長が確実に阻止できるため、サイドエアバッグの膨張に伴うトリムカバーの突出口の破裂が十分に得られる。従って、シートバック内からのサイドエアバッグの突出が容易に確保できる。
【0041】
そして、トリムカバーの背裏部が伸縮性のある素材から形成できるため、被覆の際の作業性、および、使用時の機能性を損なうことのないトリムカバーが容易に確保できる。
【0042】
また、トリムカバーのまち部の側面後端と、背裏部の対応する側端との縫合部分に一端の縫合されたサポート布の自由端に、フック片を設ければ、対応する係止片の位置に応じたフック片の配置が可能となり、トリムカバーのまち部の側面後端を内方に必要以上に牽引することがないため、シートバックの外観品質の低下が防止できる。
【0043】
そして、サイドエアバッグの固定されるブラケットの延長端を係止片とすれば、部品点数が削減できるため、構成の簡素化および組み立ての際の作業性の向上がはかられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係るサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造の概略横断面図である。
【図2】 サイドエアバッグ内蔵シートの概略斜視図である。
【符号の説明】
10 サイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造
12 シートバック
14 トリムカバー
16 シートパッド
18 サイドエアバッグ
22 サイドエアバッグ内蔵シート
26 インフレータ
32 ブラケット
38 突出口
40 吊り込みワイヤ
44 フック片
46 係止片(ブラケットの延長片)
48 サポート布
Claims (3)
- 側面および上面に位置するまち部と;前面に位置するメイン部と;背面に位置する背裏部と;の、対応する端末間の縫合のもとで略袋状に予め形成されたトリムカバーによるシートパッドの被覆によって、サイドエアバッグの内蔵されたシートバックが形成され、このトリムカバーのまち部の側面前端と、メイン部の対応する側端との縫合部分に規定された所定の突出口の破裂によって、サイドエアバッグをシートバックの内部から特定方向に膨張、突出可能とするサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造において、
中央のかがみ部と側方のがくぶち部との境界部分の吊り込みによって、トリムカバーのメイン部をシートバックの固定部材に固定的に連結するとともに、
フック片が、略袋状に予め形成されたトリムカバーの内方で、その部位のうちのまち部の側面後端に設けられ、このフック片を、シートバックの骨格をなすシートバックフレームに設けられた係止片に係止することにより、まち部の側面後端をシートバックフレームに対して直接的かつ固定的に連結可能としたことを特徴とするサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造。 - 略袋状に形成されたトリムカバーの部位のうちの、まち部の側面後端と;背裏部の対応する側端と;の縫合部分に、内方に延出されたサポート布の一端が一体的に縫合されるとともに、このサポート布の自由端に、フック片が設けられた請求項1記載のサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造。
- サイドエアバッグの固定されるブラケットをシートバックフレームの側端に固着するとともに、このブラケットの後端を延長して延長端とし、この延長端をフック片の係止可能な係止片とした請求項1または2記載のサイドエアバッグ内蔵シートのトリムカバー構造。
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