JP3649676B2 - エポキシ化ジエン系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料、樹脂改質剤、ゴム改質剤、接着剤等に使用されるエポキシ化ジエン系重合体の製造方法に関する。更に詳しくは、ジエン系重合体の分子鎖中にある二重結合をエポキシ化するに際し、ジエン系重合体を水溶媒中、熱安定剤の共存下、懸濁させた状態でエポキシ化を行うことによる熱安定性に優れたエポキシ化ジエン系重合体の製造方法である。
【0002】
【従来の技術】
従来、エポキシ化対象のジエン系重合体を酸化してエポキシ化ジエン系重合体にする方法としては、次の方法が知られている。
(1)予め過酸化水素と蟻酸、酢酸などの低級カルボン酸とを反応させ過カルボン酸を製造しておき、反応系にエポキシ化剤としての過カルボン酸を加え、溶剤の存在化又は非存在下にエポキシ化反応を行う方法。
(2)オスミウムの塩、タングステン酸などの触媒及び溶媒の存在下、過酸化水素を用いてエポキシ化する方法。
前記(1)、(2)の方法は、いずれもエポキシ化反応を効率的に行うために、エポキシ化対象ジエン系重合体を溶媒に溶解させることが特徴である。しかしながら、溶媒への溶解工程、エポキシ化反応後の副生成物であるカルボン酸類の除去のための水洗処理及び脱溶媒操作工程の煩雑さがあり、製品の回収には困難を極める。特に、エポキシ化対象有機系重合体がゴム系重合体であるときは、エポキシ化した製品が接着性を持ち、製造直後の製品のブロッキング、製品の取扱い難さ、作業性悪化、保管時のブロッキング等の問題がある。そのため、エポキシ化変性後、粉末、クラム、ペレットとして製品化できず、ベール形態となるケースもあり、改質剤として使用する場合の使用が制限される。
【0003】
エポキシ化ジエン系重合体の製造方法に関しては、本発明者らは多数発案しており、例えば特開平8−120022号公報では、(1)ジエン系重合体又はその部分水添物と有機溶剤とを混合し、重合体の有機溶剤スラリーもしくは有機溶液を得る工程、(2)エポキシ化剤を用いて、ジエン系重合体に存在する不飽和炭素結合をエポキシ化する工程、(3)前記エポキシ化反応溶液を中和及び/又は水洗する工程、(4)重合体の濃度が5〜50重量%のエポキシ化ブロック共重合体の溶液を、界面活性剤の存在下、有機溶媒の沸点又は該溶媒と水とが共沸する場合はその共沸温度以上、120℃以下の温度でストリッピングし、重合体が水中に分散したスラリーを得る工程、(5)前記で得られた水分を含むエポキシ化ブロック共重合体のクラムを脱水し、含水率を1〜30重量%にする工程、(6)前記で得られたエポキシ化ブロック共重合体を乾燥し、含水率を1重量%以下にする工程を経てエポキシ化ジエン系重合体を得る方法を提案している。また、特開平9−60479号公報では、前記(6)の乾燥工程において、スクリュー押出機式絞り脱水機を利用製造方法、特開平9−95512号公報では、前記工程(3)で得られたエポキシ化ブロック共重合体溶液を蒸発機に供給し直接有機溶剤を蒸発させて除去することを特徴とするエポキシ化ブロック共重合体の回収方法を提案している。また、特開平8−104709号公報では、製品の酸価を規定することによりゲル含有量を改善すべくその製造方法を提案している。
【0004】
しかし、これらの方法はすべて溶媒に原料である重合体を溶解させた後にエポキシ化する溶液法によるエポキシ化ブロック共重合体の製法に関する発明であり、高粘度スラリーの取扱いは困難を極める。更に、これらの方法で得られたエポキシ化ブロック共重合体は軟化点が比較的低く、製造、加工、輸送、使用する間に、例えばこの共重合体のペレットが相互に表面でブロッキングしたり、又は相互に強固に接着し合い、取扱いに支障を来すという問題がある。その改善方法として、特開平9−67502号公報では得られたエポキシ化共重合体に対してブロッキング防止剤を後工程により添加することを提案している。また、特開平9−208617号公報においては、化学変性ジエン系重合体組成物及びその製造方法として、水中に0.05〜10μmという微粒子状態にある重合体をエポキシ変性し組成物を製造する方法を提案しているが、組成物としての製造方法でありエポキシ変性重合体の回収に関する点、製品ブロッキング改良などの点に関しては言及されていない。また、特開平10−298232号公報においては、水性分散液においてのエポキシ化を提案しているが、重合体粒子表面のみを特異的にエポキシ化した水性分散液を提供しているのみである。両公報ともに、得られたエポキシ化品単独の熱安定性に関しては何ら言及されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱安定性に優れたエポキシ化ジエン系重合体を経済的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水分散系でエポキシ化を実施する際に、熱安定剤を共存させた状態で、エポキシ化することにより熱安定性に優れた重合体を製造できることを見出した。具体的にはジエン系重合体を水溶媒中、フェノール系安定剤及び/又はリン系安定剤及び粉末粒子存在下に、ペレット又はパウダーなどの固体状のまま分散ないし懸濁させた系において、過酢酸及び反応促進剤を使用してエポキシ化し、固体状態のまま分離回収し、脱溶剤工程を実施することにより、熱安定性に優れたエポキシ化ジエン系重合体が得られるのである。本発明は、これらの事実により完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、水媒体中、フェノール系安定剤及び/又はリン系安定剤の存在下、球換算粒子径が0.05〜20mmの範囲のジエン系重合体を分散及び/又は懸濁させた状態下、エポキシ化するエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。ジエン系重合体が、ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、イソプレン重合体、スチレン−イソプレン共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びそれらの一部水素化物からなる群から選ばれた少なくとも1種である前記発明のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。過酢酸又は過酸化水素を用いて誘導される他の過カルボン酸をエポキシ化剤として使用する前記発明のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。エポキシ化剤が過酢酸である前記発明のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。前記発明においてエポキシ化反応促進用溶剤を用いるエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。エポキシ化反応促進用溶剤が、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、メチルエチルケトン及びクロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤である前記発明のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。前記発明においてエポキシ化反応促進用溶剤のSP(溶解性パラメーター)値が10以下であるエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、フェノール系安定剤及び/又はリン系安定剤の合計使用量が、ジエン系重合体100重量部に対して、0.05〜5重量部である前記発明いずれかのエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。粉末粒子のブロッキング防止剤を用いる前記発明のいずれかのエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。前記発明において粉末粒子が無機粒子であるエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。前記発明において無機粒子がタルク、シリカであるエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。
水媒体中でジエン系重合体を、エポキシ化剤又は該エポキシ化剤とエポキシ化反応促進用溶剤の存在下にエポキシ化してエポキシ化ジエン系重合体とする第1工程、該エポキシ化ジエン系重合体の水洗、又は中和と水洗のための第2工程、エポキシ化反応促進用溶剤の除去のために必要に応じて設けられる第3工程とからなる前記発明のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。
第2工程が、第3工程へ供給する重合体の分離のための固液分離操作を含む前記発明のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。第3工程における溶剤の除去が、第2工程で得られた重合体の粒状形状を保持したまま乾燥させる前記発明のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。第3工程における溶剤除去が、混練式蒸発器により行われる前記発明のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。
エポキシ化ジエン系重合体中のオキシラン酸素濃度が0.3〜5.0重量%である前記発明のいずれかのエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。得られたエポキシ化ジエン系重合体のゲル含有量が2重量%以下である前記発明のいずれかのエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。更に、本発明はエポキシ化ジエン系重合体の加熱後のゲル含有量が加熱前のゲル含有量の2.5倍未満である前記発明のいずれかのエポキシ化ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明においてエポキシ化されるジエン系重合体は、ブタジエンの単独重合体、イソプレン単独重合体、ブタジエンと他の単量体との共重合体又はイソプレンと他の単量体との共重合体からなる。ブタジエン又はイソプレンと共重合させる他の単量体としては、例えば、他の共役ジエン、ビニル化合物等を挙げることができる。ブタジエンと共重合させる他の共役ジエンとしては、例えば、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピペリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。これらの他の共役ジエンは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、イソプレンと共重合させる他の共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピペリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。中でもブタジエン、イソプレンが好ましい。これらの他の共役ジエンは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0009】
更に、ブタジエン又はイソプレンと共重合させるビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−第3級ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル等の不飽和モノカルボン酸エステル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
【0010】
3−(トリメチルシロキサニルジメチルシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3−〔トリス(トリメチルシロキサニル)シリル〕プロピル(メタ)アクリレート、ジ−〔3−(メタ)アクリロイルプロピル〕ジメチルシリルエーテル等の(メタ)アクリロイル基含有シロキサニル化合物;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのモノ−又はジ−(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチレン(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−シアノエチル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート等のシアノアルキル(メタ)アクリレート類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールアルカン(アルカンの炭素数は、例えば、1〜3)等の3価以上の多価アルコールのジ−、トリ−又はテトラ(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレート類;
【0011】
(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等のシアノ化ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;クロトン酸2−ヒドロキシエチル、クロトン酸2−ヒドロキシプロピル、ケイ皮酸2−ヒドロキシエチル、ケイ皮酸2−ヒドロキシプロピル等の不飽和モノカルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アリルアルコール等の不飽和アルコール類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸類;(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ポリカルボン酸(無水物)類;前記不飽和ポリカルボン酸のモノ−又はジ−エステル類;(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物のほか、塩化ビニル、酢酸ビニル、イソプレンスルホン酸ナトリウム、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等を挙げることができる。
これらの中で特にスチレン系のビニル化合物が好ましい。これらのビニル化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0012】
本発明において、ブタジエンの共重合体及びイソプレンの共重合体は、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でもよい。本発明においてエポキシ化される重合体としては、ブタジエンの単独重合体、ブタジエンとスチレンとのランダム共重合体、ブタジエンと(メタ)アクリロニトリルとのランダム共重合体、ブタジエンとスチレンとのブロック共重合体、イソプレンとスチレンとのランダム共重合体、イソプレンと(メタ)アクリロニトリルとのランダム共重合体、イソプレンとスチレンとのブロック共重合体のほか、ブタジエンとイソプレンとの共重合体が好ましい。ブタジエンとイソプレンとの共重合体は、場合によりスチレン、(メタ)アクリロニトリル等のビニル化合物を含有することもできる。
【0013】
ブタジエンの共重合体におけるブタジエンの含有率及びイソプレンの共重合体におけるイソプレンの含有率は、通常、0.5〜99.5重量%、更には1〜95重量%、特に5〜90重量%が好ましい。また、ブタジエンとイソプレンとの共重合体において、ブタジエンの含有率は、通常、0.5〜99.5重量%、更には1〜95重量%、特に5〜90重量%が好ましく、イソプレンの含有率は、通常、0.5〜99.5重量%、更には5〜99重量%、特に10〜95重量%であり、場合により使用されるビニル化合物の含有率は、通常、0〜99重量%、更には0〜95重量%、特に0〜90重量%が好ましい。本発明におけるブタジエンの単独重合体もしくは共重合体及びイソプレンの共重合体の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜5,000,000、更に好ましくは5,000〜500,000である。
【0014】
共重合体がブロック共重合体の場合、共重合体の組成は例えば、ポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)、ポリアクリロニトリル−ポリブタジエンブロック共重合体(NBR)などが挙げられる。また、これらのジエン系共重合体についてはジエン成分の一部が水素添加された部分水素添加品を使用しても差し支えない。これらブロック共重合体の分子自体の構造は、直鎖状、分岐状、放射状などいずれの構造であってもよい。ブロック共重合体の平均分子量は、特に制限はないが、低分子量の有機溶媒類に溶解しない程度のものが好ましい。エポキシ化対象ジエン系重合体となる樹脂又はゴム系重合体の末端基については、特に制限はない。これらの中ジエン系重合体としては、ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、イソプレン重合体、スチレン−イソプレン共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びそれらの一部水素化物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジエン系重合体であることが好ましい。
【0015】
なお、前記のエポキシ化対象ジエン系重合体となる樹脂又はゴム系重合体は、水媒体の反応系でフェノール系安定剤及び/又はリン系安定剤の存在下、球換算粒子径が0.05〜20mm、好ましくは0.07〜20mm、更に好ましくは0.1〜20mmの範囲で、分散及び/又は懸濁している必要がある。反応温度でエポキシ化対象ジエン系重合体が分散又は懸濁しているとは、反応を通してエポキシ化対象ジエン系重合体が粉末又は粒状などの固体状を呈していることを意味し、反応温度で該ジエン系重合体が液体状又はペースト状の粉末又は粒状、更にはそれらが任意に合体した連結体を呈しないことを意味する。液体状又はペースト状になるとそれらが合体しやすくなり、撹拌が困難となる。エポキシ化対象ジエン系重合体の球換算粒子径が0.05mm未満であると取り扱い上、特に固液分離が困難であり、20mmを超えると表面積が小さくなり、本発明の特徴である表面より進行するエポキシ化の進行が遅くなり好ましくない。エポキシ化対象ジエン系重合体の球換算粒子径が、前記の範囲内であれば、市販されているペレットの形態でもよい。エポキシ化反応を効率的に行うためには、粉砕しエポキシ化対象ジエン系重合体の表面積を大きくしておいてもよい。粉砕の方法は、通常の粉砕機で粉砕する方法によってもよいが、エポキシ化対象ジエン系重合体がゴム系重合体である場合には、凍結粉砕法によって粉砕することが好ましい。ここで、球換算粒子径とは、エポキシ化対象ジエン系重合体の平均体積と同じ体積を有する球の直径として定義される。
本発明の製造方法においては、エポキシ化反応は水媒体中で行われるが、エポキシ化剤をエポキシ化対象ジエン系重合体の分散粒子内部に浸透させるため後記のような有機溶剤をエポキシ化反応促進用溶剤として用いることもできる。
【0016】
本発明の製造方法では、エポキシ化反応の際、製品エポキシ化ジエン重合体の熱安定性を向上させるためにフェノール系安定剤及び/又はリン系安定剤を反応系に存在させる。
フェノール系安定剤の代表例としては、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3−5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート,トリエチレングリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス(2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジシクロヘキシル−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス−6−tert−ブチルm−クレゾール、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5メチルフェニル)メタン、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1−メビス−(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。これらフェノール系の安定剤は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
またリン系安定剤の代表例としては、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ホスファイト等が挙げられる。これらリン系の安定剤は、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。これらのフェノール形及びリン系安定剤は、併用して用いてもよいし、それぞれ単独で用いてもよい。
安定剤の使用量は、エポキシ化対象ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、更に0.1〜5重量部が好ましい。これらの安定剤をエポキシ化反応時に添加することによりエポキシ化ジエン重合体に均一に分散させることが可能であり、且つ、押出時等に行う後添加と云う操作の一つが不要となる。
【0017】
本発明の製造方法は以下の通りである。第1工程としては水溶媒中、ジエン系重合体及び熱安定剤の存在下に過酸化物によるエポキシ化反応を行う工程、第2工程として水洗工程、又は中和及び水洗工程、及び第1工程で反応促進用溶剤として有機溶剤を使用する場合には、第3工程として溶剤除去工程が設けられることもある。第2工程において、水洗工程、又は中和及び水洗工程を実施した重合体を固液分離により重合体を分離し、第3工程へ供給する。その後第3工程において、第2工程で得られた重合体形状を保持したまま乾燥及び/又は混練式蒸発機により乾燥させることにより、エポキシ化ジエン系重合体を回収する製造方法である。本発明の特徴は、熱安定剤をエポキシ化時に使用し、ジエン系重合体中に均一に浸透させることにより、得られるエポキシ化ジエン系重合体の熱安定性が優れることが特徴である。
【0018】
エポキシ化対象ジエン系重合体を分散及び/又は懸濁状態でエポキシ化反応させるためにエポキシ化反応を行う際に使用される反応促進用溶剤は、エポキシ化条件下では、エポキシ化対象ジエン系重合体を溶解、膨潤、又は該ジエン系重合体に浸透する溶剤であることが望ましい。有機溶剤の選択は、エポキシ化対象ジエン系重合体の種類、エポキシ化の反応条件によって異なるが、ヘキサン、オクタンなどの直鎖および分岐状炭化水素類、ならびにそれらのアルキル置換誘導体類;シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの脂環式炭化水素類、及びそれらのアルキル置換誘導体類;ベンゼン、ナフタレン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、及びアルキル置換芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類;クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。これらの中では、エポキシ化剤としての過酸化物を溶解して使用できる点、エポキシ化対象ジエン系重合体の溶解性及びその後の有機溶剤回収容易性などの観点から、シクロヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラヒドロフランなどが好ましく、1種類又は2種類以上の混合溶剤系でも使用可能である。
【0019】
また、これらの有機溶剤はエポキシ化対象であるジエン系重合体により選択される。有機溶剤は、エポキシ化剤である過酸化物及び熱安定剤を溶解するか、又は固体状態であるジエン系重合体の内部に浸透してそれらを運搬し、内部までエポキシ化及び安定剤を固着させる機能があり、選択基準としては、エポキシ化対象ジエン系重合体を溶解、膨潤、又は該ジエン系重合体に浸透できる有機溶剤であり、溶解性パラメーター値が10以下の有機溶剤を選択するのが好ましい。溶解性パラメーター値が10を超える有機溶剤に関しては、エポキシ化対象のジエン系重合体への溶解、膨潤、又は対象のジエン系重合体への浸透能力が小さく、反応促進剤として機能しない。反応促進用溶剤として有機溶剤を用いる場合、エポキシ化対象ジエン系重合体100重量部に対して0.5〜100、更に0.5〜75重量部が好ましい。水はエポキシ化対象ジエン系重合体100重量部に対して50〜1000、更に100〜1000重量部が好ましい。なお、水の使用割合は有機溶剤を使用しない場合も同じ程度用いられる。
【0020】
エポキシ化反応を行う際にブロッキング防止剤を使用することもできる。ブロッキング防止剤としては、粉末粒子が使用される。上述の反応促進用溶剤はエポキシ化対象ジエン系重合体を溶解、膨潤、又は該ジエン系重合体に浸透することから、使用量によっては重合体粒子同士のブロッキングが発生し本発明の特徴である水分散系での反応を進行させることができなくなる。そこで、重合体粒子同士のブロッキングを回避し反応を進行させるためにブロッキング防止剤を使用する。粉末粒子としては無機粒子が好ましい。無機粒子としては、種類、大きさや形状など、特に限定されるものではない。例えば炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、マイカ、タルク、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの難水溶性又は非水溶性無機化合物の粒子が挙げられる。これらの無機粒子のうち、タルク、シリカは少量でブロッキング防止効果がある点で更に好ましい。ブロッキング防止剤の使用割合はエポキシ化対象ジエン系重合体100重量部に対して0.01〜5、更に0.05〜3重量部が好ましい。また、ブロッキング防止剤の平均粒径は0.1〜100μm、更には0.1〜50μmが少量でブロッキング防止効果がある点で好ましい。
【0021】
エポキシ化剤として使用される過酸化物としては、過蟻酸、過酢酸、過プロピオン酸などの過カルボン酸化合物が挙げられる。過酸化水素を用いて誘導された過酸化物によるエポキシ化も可能である。
中でも過酢酸がエポキシ化を効率的に進行させることから好ましい。過カルボン酸類をエポキシ化剤として使用する場合には、過カルボン酸類を溶媒に溶解して使用することが好ましい。過カルボン酸類の溶媒としては、ヘキサンなどの炭化水素類、酢酸エチルなどの有機酸エステル類、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。これら溶媒は、エポキシ化反応に及ぼす効果としては上記の反応促進剤と同様であり、エポキシ化対象ジエン系重合体の内部に浸透してエポキシ化反応を促進するので、これらを使用することが望ましい。
【0022】
過酸化水素から誘導された過酸化物を用いる系では、予め過酸化水素と蟻酸、酢酸などの低級カルボン酸とを反応させ過カルボン酸を製造し、この過カルボン酸を反応系にエポキシ化剤として加え、エポキシ化反応を行う方法と、オスミウムの塩、タングステン酸などの触媒及び溶媒の存在下、過酸化水素を使用してエポキシ化する方法がある。この場合に使用できる溶媒は、上に挙げたものと同じである。
【0023】
本発明の製造方法によりエポキシ化する際、得られるエポキシ化物のオキシラン酸素濃度は、0.3〜5.0重量%、更に0.3〜4.5重量%が好ましい。オキシラン酸素濃度は、エポキシ化対象ジエン系重合体の二重結合量とエポキシ化剤との反応モル比を変えることにより、調節することが可能である。この反応モル比は、得られるエポキシ化物のオキシラン酸素濃度の水準により変るが、エポキシ化対象ジエン系重合体に含まれる二重結合量と過酸化物純分の反応モル比を、1.0〜3.0の範囲で選ぶことができ、特に1.1〜2.5の範囲で選ぶことが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法に従いエポキシ化対象ジエン系重合体をエポキシ化する際の反応温度は、エポキシ化対象ジエン系重合体の種類、表面積の大小、溶媒の種類、エポキシ化剤の種類及び量、反応時間にもよるが、10〜70℃の範囲で選ぶことが好ましい。反応温度が10℃未満の場合は、反応速度が遅く実用的でない。逆に70℃以上になると、過酸化物の自己分解が著しくなり好ましくない。更に、エポキシ化ジエン系重合体表面の有機溶剤による溶解が進行し、ブロッキングを発生するため問題がある。更に好ましい反応温度は、30〜60℃の範囲である。反応圧力は、大気圧下が普通であるが、やや減圧下でも、やや加圧下であってもよい。
【0025】
本発明の製造方法に従いエポキシ化対象ジエン系重合体をエポキシ化する際の反応時間は、エポキシ化対象ジエン系重合体の種類、表面積の大小、溶媒の種類、エポキシ化剤の種類・量、反応温度にもよっても変るが、通常1〜24時間の範囲で選ぶことができる。反応時間が1時間未満の場合には、二重結合の転化率が低く実用的でなく、逆に24時間以上になると、例えば、過酢酸を用いた場合には、有機系重合体の副反応が発生するため、収率低下の原因となり好ましくない。
【0026】
本発明の製造方法によると、エポキシ化反応終了後の反応液は、生成物のエポキシ化ジエン系重合体が水溶媒に固体状で分散ないし懸濁した状態であり、有機溶剤やカルボン酸が溶媒に溶解した懸濁液として得られる。懸濁液から固体状を呈する生成物のエポキシ化物を分離・回収するには、ろ過、遠心分離などの方法によればよい。分離・回収した固体状を呈する生成物のエポキシ化物は、水で洗浄して表面付着の溶媒、カルボン酸などを除去する。必要に応じて中和処理、水洗処理を行う。中和のために使用するアルカリ水溶液は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アンモニヤ水などの水溶液が用いられる。
次に得られた生成物を乾燥し、製品化する。ここに乾燥するとは、スチームストリッピング法などの間接加熱法により脱溶媒を行った後に直接加熱により水分等を除去する方法でもよく、真空乾燥機、熱風乾燥機、混練式蒸発機等の少なくとも1種の乾燥機により得られた重合体から有機溶剤を直接除去し、含水率を1重量%未満にすることを云う。
本発明の方法において、目的に応じて種々の添加剤を重合体に添加することができる。例えば、オイル等の軟化剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、無機充填剤、有機繊維・無機繊維、カーボンブラックなどの補強剤、他の熱可塑性樹脂などが添加剤として使用できる。尚、これら添加剤は、乾燥工程に投入する前に添加するのが好ましい。
【0027】
本発明の方法により得られたエポキシ化ジエン系重合体は、ゲル含有量が2重量%以下、更に0.2重量%以下であることがエポキシ化ジエン系重合体を使用した最終製品の外観(表面状態)が良好となる点で好ましい。また、エポキシ化ジエン系重合体の耐熱性の目安としては、所定条件による加熱後のゲル含有量が元のゲル含有量の2.5倍未満、更には0〜2倍未満であることが好ましい。ゲル含有量がこの規定値の範囲内であれば、熱安定性が改善されたと云うことができる。また、同じ加熱後、更に押出機によりストランドを引きその表面状態の目視観察を行っても、異物が認められず、このことは熱安定性が良好であることを意味する。
なお無機粒子などの粉末粒子のブロッキング防止剤を用いる場合には、本発明により得られるエポキシ化されたペレット状等のジエン系重合体粒子の表面層に、該粒子全体に対して0.01〜5重量%の該粉末が付着していても構わない。またエポキシ化ジエン系重合体粒子にはエポキシ化反応でエポキシ化されていない未反応のジエン系重合体が中心部に含まれていても構わない。
得られたエポキシ化ジエン系重合体は、シート、フィルム、各種形状の射出成形品、中空成形品等の多様の成形品として活用できるほか、各種熱可塑性樹脂の改質剤、粘着剤、接着剤の素材、アスファルト改質剤、家電製品、自動車部品、工業部品、家庭用品、玩具等の素材として有用である。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の記載例に限定されるものではない。なお、以下の記載例において、「部」及び「%」は、いずれも重量基準によるものとする。
以下に記載の方法で各種測定を行った。
(1)オキシラン酸素濃度:ASTM−1652に従って測定した。
(2)ゲル含有量:10mlのトルエンに乾燥したエポキシ化ジエン系共重合体を約0.1g加え、25℃にて3時間攪拌溶解した後、溶液を200メッシュの金網に通し、金網を通過しない不溶物を120℃、2時間の条件で乾燥した後の重量を測定して求めた重量%で示す。
(3)加熱後のゲル含有量:乾燥したエポキシ化ジエン系共重合体を180℃のオーブン中で30分間(空気中)放置した後の溶剤不溶物含有量を測定した。この測定結果を熱安定性の一つの目安とした。加熱後のゲル含有量が元のゲル含有量の2.5倍未満であれば、熱安定性はほぼ良好であるとする。
(4)加熱後のエポキシ化ジエン系共重合体の表面状態:前記(3)と同じ加熱条件で加熱した後のペレットを用い、メルトインデクサー(加熱温度180℃、加熱溶融時間5分間、荷重5kg、ダイス直径1mm)より直径約1mmの線状ストランドを押し出し、その表面を目視観察した。
○:表面滑らか、×:表面ぶつぶつ状態。
(5)球換算粒子径:乾燥した5gのエポキシ化対象ジエン系共重合体粒子の体積を蒸留水中の重量を量ることから量り、1粒子当たりの平均体積を求めた後、この体積と同じ体積を有する球の直径を求めた値である。
【0029】
(実施例1)
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を備えた容量3リットルの4つ口丸底フラスコに、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)のブロック共重合体{日本合成ゴム(株)製;商品名TR2000}300g(球換算粒子径3.5mm)、水600g、フェノール系熱安定剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製:商品名イルガノックス1010)1.5g及びタルク(林化成(株)製タルクMW HS−T、平均粒径2.7μm)0.6gをそれぞれ仕込み、撹拌してよく混合し、SBSを分散させた。フラスコ内温を40℃に加温し、これに過酢酸30%の酢酸エチル(SP=8.9)溶液100gを連続的に滴下し、撹拌下40℃で5時間エポキシ化を行った。反応はペレット同士のブロッキングを生じることなく進行した。
反応終了後の反応液から、固形物をろ過により回収した後、脱イオン水で洗浄した。回収した固形物をベント式混練押出機により水や残存する溶媒を取り除き、エポキシ化されたSBS302gを得た。得られたエポキシ化されたSBSは、ゲル含有量が0.02重量%、オキシラン酸素濃度が1.5重量%であった。また、加熱後のゲル含有量は0.04重量%、得られたエポキシ化物ペレットを加熱後ストランドに引いたものの表面状態は○であった。
【0030】
(実施例2)
実施例1で使用した同じ4つ口丸底フラスコに、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)の共重合体{旭化成(株)製;商品名タフプレン125}300g(球換算粒子径3.0mm)、水600g、フェノール系熱安定剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製:商品名イルガノックス1010)1.5g及びタルク(林化成(株)製タルクMW HS−T)0.6gをそれぞれ仕込み、撹拌してよく混合し、SBSを分散させた。フラスコ内温を40℃に加温し、これに過酢酸30%の酢酸エチル溶液100gを連続的に滴下し、撹拌下40℃で6時間エポキシ化を行った。反応はペレット同士のブロッキングを生じることなく進行した。
反応終了後の反応液から、固形物をろ過により回収した後、脱イオン水で洗浄した。回収した固形物をベント式混練押出機により水や残存する溶媒を取り除き、エポキシ化されたSBS300gを得た。得られたエポキシ化されたSBSは、ゲル含有量が0.02重量%、オキシラン酸素濃度が1.5重量%であった。また、加熱後のゲル含有量は0.04重量%、得られたエポキシ化物ペレットを加熱後ストランドに引いたものの表面状態は○であった。
【0031】
(実施例3)
実施例1で使用した同じ4つ口丸底フラスコに、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)の共重合体{旭化成(株)製;商品名タフプレン125}300g(球換算粒子径3.0mm)、水600g、フェノール系熱安定剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製:商品名イルガノックス1010)3.0g及びタルク(林化成(株)製タルクMW HS−T)0.6gをそれぞれ仕込み、撹拌してよく混合し、SBSを分散させた。フラスコ内温を40℃に加温し、これに過酢酸30%の酢酸エチル溶液100gを連続的に滴下し、撹拌下40℃で5時間エポキシ化を行った。反応はペレット同士のブロッキングを生じることなく進行した。
反応終了後の反応液から、固形物をろ過により回収した後、脱イオン水で洗浄した。回収した固形物をベント式混練押出機で水や残存する溶媒を取り除き、エポキシ化されたSBS300gを得た。得られたエポキシ化されたSBSは、ゲル含有量が0.02重量%、オキシラン酸素濃度が1.5重量%であった。また、加熱後のゲル含有量は0.02重量%、得られたエポキシ化物ペレットを加熱後ストランドに引いたものの表面状態は○であった。
【0032】
(実施例4)
実施例1で使用した同じ4つ口丸底フラスコに、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)の共重合体{日本合成ゴム(株)製;商品名TR2000}300g(球換算粒子径3.5mm)、水600g、フェノール系熱安定剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製:商品名イルガノックス1010)3.0g及びタルク(林化成(株)製タルクMW HS−T)0.6gをそれぞれ仕込み、撹拌してよく混合し、SBSを分散させた。フラスコ内温を40℃に加温し、これに過酢酸30%の酢酸エチル溶液100gを連続的に滴下し、撹拌下40℃で5時間エポキシ化を行った。反応はペレット同士のブロッキングを生じることなく進行した。
反応終了後の反応液から、固形物をろ過により回収した後、脱イオン水で洗浄した。回収した固形物をベント式混練押出機で水や残存する溶媒を取り除き、エポキシ化されたSBS300gを得た。得られたエポキシ化されたSBSは、ゲル含有量が0.02重量%、オキシラン酸素濃度が1.5重量%であった。また、加熱後のゲル含有量は0.02重量%、得られたエポキシ化物ペレットを加熱後ストランドに引いたものの表面状態は○であった。
【0033】
(比較例1)
実施例1において、フェノール系熱安定剤を使用せずに同条件下で反応及び回収を行い、エポキシ化されたSBS300gを得た。得られたエポキシ化されたSBSは、ゲル含有量が0.10重量%、オキシラン酸素濃度が1.5重量%であった。また、加熱後のゲル含有量は1.0重量%、得られたエポキシ化物ペレットを加熱後ストランドに引いたものの表面状態は×であった。
【0034】
(比較例2)
実施例2において、フェノール系熱安定剤を使用せずに同条件下で反応及び回収を行い、エポキシ化されたSBS300gを得た。得られたエポキシ化されたSBSは、ゲル含有量が0.12重量%、オキシラン酸素濃度が1.5重量%であった。また、加熱後のゲル含有量は0.35重量%、得られたエポキシ化物ペレットを加熱後ストランドに引いたものの表面状態は×であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明により、加熱によるゲル発生が少なく、熱安定性に優れたエポキシ化ジエン系重合体を、例えば、ペレット原料をそのままの形でエポキシ化し、安定剤も含有させることが出来、混練による安定剤などの練り込みが不要であること、原料を有機溶液として、エポキシ化させる方法に比べ、溶剤への溶解、溶剤の回収のエネルギーコストが削減すること等、経済性に優れた方法で得ることができる。
Claims (18)
- 水媒体中、フェノール系安定剤及び/又はリン系安定剤の存在下、球換算粒子径が0.05〜20mmの範囲のジエン系重合体を分散及び/又は懸濁させた状態下、エポキシ化することを特徴とするエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- ジエン系重合体が、ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、イソプレン重合体、スチレン−イソプレン共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びそれらの一部水素化物からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- 過酢酸又は過酸化水素を用いて誘導される他の過カルボン酸をエポキシ化剤として使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- エポキシ化剤が過酢酸であることを特徴とする請求項3に記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- エポキシ化反応促進用溶剤を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- エポキシ化反応促進用溶剤が、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、メチルエチルケトン及びクロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤である請求項5に記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- エポキシ化反応促進用溶剤のSP(溶解性パラメーター)値が10以下である請求項6に記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- フェノール系安定剤及び/又はリン系安定剤の合計使用量が、ジエン系重合体100重量部に対して、0.05〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- 粉末粒子のブロッキング防止剤を用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- 粉末粒子が無機粒子であることを特徴とする請求項9に記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- 無機粒子がタルク、シリカであることを特徴とする請求項10に記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- 水媒体中でジエン系重合体を、エポキシ化剤又は該エポキシ化剤とエポキシ化反応促進用溶剤の存在下にエポキシ化してエポキシ化ジエン系重合体とする第1工程、該エポキシ化ジエン系重合体の水洗、又は中和と水洗のための第2工程、エポキシ化反応促進用溶剤の除去のために必要に応じて設けられる第3工程とからなることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- 第2工程が、第3工程へ供給する重合体の分離のための固液分離操作を含む請求項12記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- 第3工程における溶剤の除去が、第2工程で得られた重合体の粒状形状を保持したまま乾燥させることを含む請求項12記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- 第3工程における溶剤除去が、混練式蒸発器により行われる請求項12記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- エポキシ化ジエン系重合体中のオキシラン酸素濃度が0.3〜5.0重量%である請求項1〜15のいずれかに記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- 得られたエポキシ化ジエン系重合体のゲル含有量が2重量%以下である請求項1〜15のいずれかに記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
- エポキシ化ジエン系重合体の180℃のオーブン中で30分間(空気中)加熱後のゲル含有量が加熱前のゲル含有量の2.5倍未満である請求項1〜17のいずれかに記載のエポキシ化ジエン系重合体の製造方法。
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