JP3649464B2 - 心機能評価装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、生体の心臓の血液駆出機能を評価するための心機能評価装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体の心臓が備えている血液駆出機能は、生体に付与される運動負荷に応じて増大し、その運動負荷の付与が解消されると安静時の状態に向かって回復する性質がある。たとえば上記心臓の血液駆出量は1拍当たりの拍出量SV(Stroke Volume )×心拍数HR(Heart Rate)により決定されていることから、末梢抵抗がそれほど変化しないという前提では上記拍出量SVを反映する血圧値を運動負荷の付与前後において測定し、その運動負荷の付与前後の変化や運動負荷の付与後の回復状態を見れば、心臓の血液駆出機能や疾患の有無を推定するための参考データとすることができる。
【0003】
【発明が解決すべき課題】
ところで、心臓疾患の一種に、無痛性心筋虚血(Silent Myocardinal Ischemia )と称されるものがある。このような疾患は無自覚であることから、精度の高い診断を可能とすることが望まれる。しかしながら、上記のような心筋虚血の場合には、心機能すなわち拍出量が低下する性質があるため、前記のように心拍数HRを用いて心臓の血液駆出機能を判定しようとしても、正確な判定ができないという欠点があった。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、心機能を正確に評価できる心機能評価装置を提供することにある。
【0005】
本発明者等は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、心電誘導波形のQ点から大動脈内の脈波の立ち上がり点までの前駆出期間が心機能と密接な関連を示すことを見出した。すなわち、心筋虚血状態では心筋の収縮が弱くなることから、脈波の立ち上がり点が遅れて上記前駆出期間が長くなる傾向となるのである。本発明は以上の知見に基づいて為されたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨とするところは、生体の心臓の血液駆出機能を評価するための心機能評価装置であって、(a) 前記生体の心電誘導波形を検出する心電誘導装置と、(b) 前記生体上の予め定められた2個所に装着されてそれら2個所に発生する脈波をそれぞれ検出する一対の脈波センサと、(c) (c1)その一対の脈波センサ によりそれぞれ検出された脈波の発生時間差を算出する時間差算出手段と、(c2) その時間差算出手段により算出された脈波の発生時間差に基づいて大動脈内の脈波の立ち上がり点を推定する立上り点推定手段と、 (c3)前記心電誘導波形のQ点を実質的に検出するQ点検出手段と、 (c4)予め設定された関係から、上記Q点検出手段により検出されたQ点と前記立上り点推定手段により推定された前記脈波の立ち上がり点とに基づいて前記前駆出期間を算出する前駆出期間算出手段とを備え、前記心電誘導装置により検出された心電誘導波形のQ点と前記脈波センサにより検出された脈波の検出点とに基づいて、該心電誘導波形のQ点から前記心臓の大動脈内の脈波の立ち上がり点までの間の前記心臓の前駆出期間を算出する前駆出期間測定手段と、(d) その前駆出期間測定手段により測定された前駆出期間に基づいて前記心臓の心機能を評価する評価手段とを、含むことにある。
【発明の効果】
このようにすれば、心筋の虚血状態に直接的に関連する前駆出期間に基づいて心機能が評価されるので、正確な心機能の評価結果が得られる。また、Q点と脈波の発生時間差とに基づいて前記前駆出期間が算出されるので、前駆出期間の精度が高められる。
【0011】
ここで、好適には、前記前駆出期間測定手段は、前記時間差算出手段により算出された脈波の発生時間差に基づいて前記大動脈内の脈波の立ち上がり点を推定する立上り点推定手段を含み、前記Q点検出手段により検出されたQ点とその立上り点推定手段により推定された大動脈内の脈波の立上り点とに基づいて前記前駆出期間を算出する。このようにすれば、Q点検出手段により検出されたQ点とその立上り点推定手段により推定された大動脈内の脈波の立上り点とに基づいて前記前駆出期間が算出されるので、前駆出期間を正確に且つ容易に算出できる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、心機能評価装置が血圧監視装置8と共に設けられた場合の構成を説明する図である。
【0013】
図1において、血圧監視装置8は、ゴム製袋を布製帯状袋内に有してたとえば患者の上腕部12に巻回されるカフ10と、このカフ10に配管20を介してそれぞれ接続された圧力センサ14、切換弁16、および空気ポンプ18とを備えている。この切換弁16は、カフ10内への圧力の供給を許容する圧力供給状態、カフ10内を徐々に排圧する徐速排圧状態、およびカフ10内を急速に排圧する急速排圧状態の3つの状態に切り換えられるように構成されている。
【0014】
圧力センサ14は、カフ10内の圧力を検出してその圧力を表す圧力信号SPを静圧弁別回路22および脈波弁別回路24にそれぞれ供給する。静圧弁別回路22はローパスフィルタを備え、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力すなわちカフ圧を表すカフ圧信号SKを弁別してそのカフ圧信号SKをA/D変換器26を介して電子制御装置28へ供給する。
【0015】
上記脈波弁別回路24はバンドパスフィルタを備え、圧力信号SPの振動成分である脈波信号SM1 を周波数的に弁別してその脈波信号SM1 をA/D変換器30を介して電子制御装置28へ供給する。この脈波信号SM1 が表すカフ脈波は、患者の心拍に同期して図示しない上腕動脈から発生してカフ10に伝達される圧力振動波であり、上記カフ10、圧力センサ14、および脈波弁別回路24は、後述のカフ脈波センサ70として機能している。
【0016】
上記電子制御装置28は、CPU29,ROM31,RAM33,および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU29は、ROM31に予め記憶されたプログラムに従ってRAM33の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行することにより、I/Oポートから駆動信号を出力して切換弁16および空気ポンプ18を制御する。
【0017】
圧脈波検出プローブ34は、前記カフ10が装着されているか或いは装着されていない上腕部12の動脈下流側の手首42において、容器状を成すハウジング36の開口端が体表面38に対向する状態で装着バンド40により手首42に着脱可能に取り付けられるようになっている。ハウジング36の内部には、ダイヤフラム44を介して圧脈波センサ46が相対移動可能かつハウジング36の開口端からの突出し可能に設けられており、これらハウジング36およびダイヤフラム44等によって圧力室48が形成されている。この圧力室48内には、空気ポンプ50から調圧弁52を経て圧力エアが供給されるようになっており、これにより、圧脈波センサ46は圧力室48内の圧力に応じた押圧力PHDで前記体表面38に押圧される。
【0018】
上記圧脈波センサ46は、たとえば、単結晶シリコン等から成る半導体チップの押圧面54に多数の半導体感圧素子(図示せず)が配列されて構成されており、手首42の体表面38の撓骨動脈56上に押圧されることにより、撓骨動脈56から発生して体表面38に伝達される圧力振動波すなわち圧脈波を検出し、その圧脈波を表す圧脈波信号SM2 をA/D変換器58を介して電子制御装置28へ供給する。
【0019】
また、前記電子制御装置28のCPU29は、ROM31に予め記憶されたプログラムに従って、空気ポンプ50および調圧弁52へ駆動信号を出力し、圧力室48内の圧力すなわち圧脈波センサ46の皮膚に対する押圧力を調節する。これにより、連続血圧監視に際しては、圧力室48内の圧力変化過程で逐次得られる圧脈波に基づいて圧脈波センサ46の最適押圧力PHDP が決定され、圧脈波センサ46の最適押圧力PHDP を維持するように調圧弁52が制御される。
【0020】
心電誘導装置60は、生体の所定の部位に貼り着ける複数の電極62を介して心筋の活動電位を示す心電誘導波形すなわち心電図を連続的に検出するものであり、その心電誘導波形(ECG波形)を示す信号を前記電子制御装置28へ供給する。
【0021】
図2は、本実施例の心機能評価装置および上記血圧監視装置8を制御する電子制御装置28の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図において、血圧測定手段72は、カフ10の圧迫圧力を緩やかに上昇させ或いは下降させる圧迫圧力変化過程において脈波弁別回路24により採取される脈波の大きさの変化に基づいて良く知られたオシロメトリック法(JIS T 1115)により患者の最高血圧値SAPおよび最低血圧値DAPを測定する。カフ脈波センサ70は、カフ10が好適には最低血圧値よりも低く予め設定された一定の圧に維持された状態でそのカフ10に心拍に同期して発生する圧力振動であるカフ脈波を検出する。
【0022】
圧脈波センサ46は、好ましくは患者のカフ10が装着される腕と同じ腕の手首に押圧されることによりその手首の撓骨動脈から発生する圧脈波を検出する。圧脈波血圧対応関係決定手段74は、圧脈波センサ46により検出される圧脈波の大きさPM と血圧測定手段72により測定された血圧値(監視血圧値MBP)との間の対応関係を所定の患者について予め決定する。この対応関係は、たとえば図3に示すものであり、MBP=A・PM +B式により表される。但し、Aは傾きを示す定数、Bは切片を示す定数である。監視血圧値決定手段76は、その対応関係から圧脈波センサ46により検出される圧脈波の大きさPM すなわち最高値(上ピーク値)PM2max および最低値(下ピーク値)PM2min に基づいて最高血圧値MBPSYS および最低血圧値MBPDIA (モニタ血圧値)を逐次決定し、その決定した監視血圧値MBPを表示器32に連続的に出力させる。
【0023】
前駆出期間測定手段78は、Q点検出手段80と、時間差算出手段82と、立上り点推定手段84と、前駆出期間算出手段86とを備え、心電誘導波形のQ点から心臓の大動脈内の脈波の立ち上がり点までの間の心臓の前駆出期間PEP(Pre-ejection period ) を測定する。そして、評価手段88は、上記前駆出期間測定手段78により測定された前駆出期間PEPに基づいて心臓の心機能を評価する。
【0024】
上記Q点検出手段80では、心電誘導装置60により検出された心電誘導波形のQ点すなわちQ波の最低点(時刻TQ )が検出される。心電誘導波形において、Q波の最低点であるQ点、R波の最大点であるR点、S波の最低点であるS点は時間的に僅差でありしかも必要に応じてその僅差を補償することが可能であるから、Q点検出手段80では、心電誘導波形のQ点、R点、S点のいずれが検出されても実質的に変わりはない。しかし、心電誘導波形ではそのR波が最も顕著に表れることから、そのR波の最大値であるR点を検出する場合には、最も高い信頼性が得られる。
【0025】
時間差算出手段82では、カフ脈波センサ70により検出されたカフ脈波と圧脈波センサ46により検出された圧脈波との発生時間差TDM が算出される。上記時間差算出手段82では、たとえば上記のカフ脈波および圧脈波の立上り点或いは最大点がそれぞれ検出され、それら立上り点間或いは最大点間の発生時間差が求められることにより上記発生時間差TDM が算出される。図4では、カフ脈波および圧脈波の立上り点(最小点)の時刻TM1LPおよびTM2LP間の時間差TDM (=TM2LP−TM1LP)が示されている。
【0026】
立上り点推定手段84では、上記発生時間差TDM に基づいて大動脈内の脈波の立上り点(時刻TDLP )が推定される。その立上り点推定手段84では、たとえば数式1に示す予め記憶された関係(データマップ或いは函数)から実際の発生時間差TDM に基づいて大動脈内の脈波の立上り点(発生時刻TDLP )が推定される。図5に示すように、数式1のL1 は心臓Hの左心室からカフ10が装着されている部位までの動脈Aの長さであり、L2 はカフ10が装着されている部位から圧脈波センサ46が装着されている部位までの動脈の長さである。また、k1 は、上記距離L1 における大動脈を含む動脈の径、柔軟度などに由来する伝播速度の差を補正する補正係数であり、k2 は、上記距離L2 における大動脈を含む動脈の径、柔軟度に由来する伝播速度の差を補正する補正係数である。上記の距離L1 およびL2 と補正係数k1 およびk2 は、予め実験的に求められた値であり、一定の値が設定される。
【0027】
【数1】
TDLP =TM1LP−TDM (k1 L1 /k2 L2 )
【0028】
前駆出期間算出手段86では、心電波形のQ点(時刻TQ )から上記大動脈内の脈波の立上り点(時刻TDLP )までの期間である前駆出期間PEP(=TDLP −TQ :m sec )が算出される。そして、評価手段88では、上記前駆出期間PEPに基づいて心機能が評価され、評価結果が表示器32に出力される。たとえば、上記評価手段88では、図示しない運動負荷装置により生体に運動負荷が与えられる前の安静時の前駆出期間PEP1 を記憶する図示しない第1記憶手段と、運動負荷装置により生体に運動負荷が与えられる後の前駆出期間PEP2 を記憶する図示しない第2記憶手段とが設けられ、その前駆出期間PEP2 と前駆出期間PEP1 との変化量ΔPEP(=PEP2 −PEP1 )或いは変化率RPEP (PEP2 /PEP1 )が予め設定された複数段階の判断基準値を超えたか否かに基づいて心機能を評価する。心筋虚血がある場合には心筋の機能が低下して前駆出期間PEPが増加することから、上記変化量ΔPEP或いは変化率RPEP が大きい程、心機能が低下していると評価する。或いは、上記評価手段88では、運動負荷付与終了後の前駆出期間PEP2 が安静時の前駆出期間PEP1 に向かって回復する回復時間或いは回復率に基づいて心機能を評価する。回復時間が長い程或いは回復が緩やかである程、心機能が低下していると評価する。
【0029】
図6および図7は、上記電子制御装置28の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図6のステップSA1(以下、ステップを省略する。)では、図示しない起動釦の操作により装置の起動が行われたか否かが判定される。このSA1の判断が肯定された場合には、前記前駆出期間測定手段78に対応するSA2の前駆出期間測定ルーチンが図7に示すように実行される。
【0030】
図7のSA2−1では、心電誘導装置60により検出された心電誘導波、カフ脈波センサ70により検出されたカフ脈波、および圧脈波センサ46により検出された圧脈波が所定のサンプリング周期毎にそれぞれ読み込まれる。次いで、前記Q点検出手段80に対応するSA2−2では、心電誘導波のQ点が検出されたか否かが判断される。この判断が否定された場合にはSA2−1以下が繰り返し実行される。しかし、SA2−2の判断が肯定された場合には、SA2−3において上記心電誘導波のQ点の発生時刻TQ が記憶される。図4のTQ 時点はこの状態を示す。
【0031】
次いで、SA2−4では、カフ脈波の立上り点が検出されたか否かが判断される。この判断が否定された場合にはSA2−1以下が繰り返し実行される。しかし、SA2−4の判断が肯定された場合には、SA2−5において上記カフ脈波の立上り点の発生時刻TM1LPが記憶される。図4のTM1LP時点はこの状態を示す。続くSA2−6では、圧脈波の立上り点が検出されたか否かが判断される。この判断が否定された場合にはSA2−1以下が繰り返し実行される。しかし、SA2−6の判断が肯定された場合には、SA2−7において上記圧脈波の立上り点の発生時刻TM2LPが記憶される。図4のTM2LP時点はこの状態を示す。そして、SA2−8では、上記カフ脈波の立上り点の発生時刻TM1LPと圧脈波の立上り点の発生時刻TM2LPとの時間差TDM (=TM2LP−TM1LP)が算出される。本実施例では、上記SA2−4乃至SA2−8が前記時間差算出手段82に対応している。
【0032】
次いで、前記立上り点推定手段84に対応するSA2−9では、予め記憶された数式1から実際の時間差TDM およびカフ脈波の立上り点の発生時刻TM1LPに基づいて、大動脈内の脈波の立ち上がり点の発生時刻TDLP が算出される。そして、前記前駆出期間算出手段86に対応するSA2−10では、SA2−3において記憶されたQ点の発生時刻TQ とSA2−9において推定された大動脈内の脈波の立ち上がり点の発生時刻TDLP とに基づいて、前駆出期間PEP(=TDLP −TQ )が算出される。当初は、運動負荷付与前の安静時のものであるから、上記前駆出期間PEPは、PEP1 として記憶される。
【0033】
図6に戻って、続くSA3では、運動負荷付与後の前駆出期間PEP2 の測定が完了したか否かが判断される。当初はこのSA3の判断が否定されるので、SA4において運動負荷付与が終了したか否かが判断される。当初はこのSA4の判断も否定されるので、SA5において、図示しない運動負荷装置の作動を許可する信号が出力される。運動負荷装置としては、たとえばよく知られたトレッドミル、エルゴメータなどが用いられ、その運動負荷量は、生体の負担が過大とならない範囲で心機能評価が可能となる値に医療従事者によって設定される。
【0034】
次いで、前記SA3により運動負荷付与後の前駆出期間PEP2 の測定が完了したか否かが判断されるが、その運動負荷付与後の前駆出期間PEP2 の測定が未だ完了していない状態であるので、SA4において運動負荷付与が終了したか否かが繰り返し判断される。
【0035】
運動負荷装置による運動負荷の付与が完了すると、上記SA4の判断が肯定されるので、前記SA2の前駆出期間測定ルーチンが実行されることにより、前記と同様にして前駆出期間PEPが測定される。このときには運動負荷付与後であるから、今回測定された前駆出期間PEPは、PEP2 として記憶される。
【0036】
そして、前記評価手段88に対応するSA6においては、前駆出期間PEP1 およびPEP2 に基づいて心機能が評価される。たとえば、前駆出期間PEP2 と前駆出期間PEP1 との変化率RPEP (PEP2 /PEP1 )が予め設定された複数段階の判断基準値を超えたか否かに基づいて心機能を複数段階に評価し、評価結果を表示器32に表示させる。
【0037】
上述のように、本実施例によれば、心電誘導装置60により検出された心電誘導波形のQ点(TQ )とカフ脈波センサ70および圧脈波センサ46によりそれぞれ検出された脈波の検出点(TM1LPおよびTM2LP)とに基づいて、そのQ点から心臓の大動脈内の脈波の立ち上がり点TDLP までの間の前駆出期間PEP1 およびPEP2 が、前駆出期間測定手段78に対応するSA2により測定されると、評価手段88に対応するSA6により、その前駆出期間PEP1 およびPEP2 に基づいて心機能が評価される。したがって、心筋の虚血状態に直接的に関連する前駆出期間PEP1 およびPEP2 に基づいて心機能が評価されるので、正確な心機能の評価結果が得られる。
【0038】
また、本実施例によれば、前駆出期間測定手段78に対応するSA2は、生体に運動負荷が与えられる前後において前駆出期間PEP1 およびPEP2 をそれぞれ測定し、評価手段88に対応するSA6は、前駆出期間測定手段78によりそれぞれ測定された前駆出期間PEP1 およびPEP2 の相互変化に基づいて心機能を評価するものである。このため、運動負荷が付与されることによって心筋虚血による心筋機能の低下が顕著に表れるので、前駆出期間の変化を見ることによって心機能の評価が一層正確に得られる。
【0039】
また、本実施例によれば、脈波センサは、生体上の予め定められた2個所に装着されてそれら2個所に発生する脈波をそれぞれ検出する一対のカフ脈波センサ70および圧脈波センサ46からなるものであり、前駆出期間測定手段78は、それら一対のカフ脈波センサ70および圧脈波センサ46によりそれぞれ検出されたカフ脈波および圧脈波の発生時間差TDM (=TM2LP−TM1LP)を算出する時間差算出手段82と、心電誘導波形のQ点を実質的に検出するQ点検出手段80と、予め設定された関係から、Q点検出手段80により検出されたQ点と前記時間差算出手段82により算出された脈波の発生時間差TDM とに基づいて前駆出期間PEPを算出する前駆出期間算出手段86とを含むものである。このように、Q点(TQ )とカフ脈波および圧脈波の発生時間差TDM とに基づいて前駆出期間PEPが算出されるので、その前駆出期間PEPの精度が高められる。
【0040】
また、本実施例によれば、前駆出期間測定手段78は、時間差算出手段82により算出された脈波の発生時間差TDM に基づいて前記大動脈内の脈波の立ち上がり点を推定する立上り点推定手段84を含み、Q点検出手段80により検出されたQ点(TQ )とその立上り点推定手段84により推定された大動脈内の脈波の立上り点TDLP とに基づいて前駆出期間PEPが算出されるので、前駆出期間PEPを一層正確に且つ容易に算出できる。
【0041】
また、本実施例によれば、心機能評価装置が血圧監視装置8と共に設けられているので、カフ10を含むカフ脈波センナ70、および圧脈波センサ46を兼用できる利点がある。
【0042】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0043】
たとえば、前述の実施例においては、数式1からQ点(TQ )とカフ脈波および圧脈波の発生時間差TDM とに基づいて前駆出期間PEPが算出されていたが、予め求められた関係からカフ脈波センサ70と圧脈波センサ46との間の実際の脈波伝播速度に基づいて前駆出期間PEPが算出されてもよい。
【0044】
また、心臓の左心室と上腕部との間における脈波の発生時間差TDA は略一定と見做せる場合には、実際のカフ脈波の立上り点TM1LPから予め設定された上記発生時間差TDA を差し引くことにより大動脈内の脈波の立上り点TDLP が求められてもよい。このような場合には、脈波センサが1個だけ用いられる利点がある。
【0045】
脈波伝播速度は、血圧値に関連して変化することを考慮して、前記補正係数k1 或いはk2 は生体の実際の血圧値の函数としてもよい。このようにすれば、一層高い精度が得られる。
【0046】
また、前述の実施例では、カフ10を用いたカフ脈波センサ70が生体の上腕部に発生するカフ脈波を検出し、同じ腕の撓骨動脈の真上に押圧される圧脈波センサ46が手首に発生する圧脈波を検出するように説明されていたが、上記カフ脈波センサ70と圧脈波センサ46とは異なる腕に装着されてもよい。
【0047】
また、前述の実施例では、脈波センサとしてカフ10を用いたカフ脈波センサ70、および動脈の真上から押圧される圧脈波センサ46が用いられていたが、生体の皮膚を照射する光源と、その光源から放射された光の透過光或いは反射光を検出する光検出素子とを備えた光電脈波センサ、或いは超音波を用いて動脈壁の振動を検出する超音波式脈波センサなどの他の形式の脈波センサが用いられ得る。検出される脈波に時間差が発生する部位であれば、上記脈波センサは生体のいずれの部位に装着されてもよい。また、上記光電脈波センサが用いられる場合には、2種類の波長の照射光を用いて脈波を検出する光電脈波センサを備えたパルスオキシメータとともに心機能評価装置を設けることにより、光電脈波センサを兼用することができる利点がある。
【0048】
その他、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である血圧監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の実施例の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図3】図1の実施例において用いられる対応関係を例示する図である。
【図4】図1の心電誘導装置により検出される心電誘導波形、カフ脈波センサにより検出されるカフ脈波、圧脈波センサにより検出される圧脈波を示すタイムチャートである。
【図5】図1の実施例において用いられる前駆出期間PEPの算出式を説明する図である。
【図6】図1の実施例の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図7】図6の前駆出期間測定ルーチンを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
46:圧脈波センサ(脈波センサ)
60:心電誘導装置
70:カフ脈波センサ(脈波センサ)
78:前駆出期間測定手段
80:Q点検出手段
82:時間差算出手段
84:立上り点推定手段
86:前駆出期間算出手段
88:評価手段
Claims (1)
- 生体の心臓の血液駆出機能を評価するための心機能評価装置であって、
前記生体の心電誘導波形を検出する心電誘導装置と、
前記生体上の予め定められた2個所に装着されて該2個所に発生する脈波をそれぞれ検出する一対の脈波センサと、
該一対の脈波センサによりそれぞれ検出された脈波の発生時間差を算出する時間差算出手段と、該時間差算出手段により算出された脈波の発生時間差に基づいて大動脈内の脈波の立ち上がり点を推定する立上り点推定手段と、前記心電誘導波形のQ点を実質的に検出するQ点検出手段と、予め設定された関係から、該Q点検出手段により検出されたQ点と前記立上り点推定手段により推定された前記脈波の立ち上がり点とに基づいて前記前駆出期間を算出する前駆出期間算出手段とを備え、前記心電誘導装置により検出された心電誘導波形のQ点と前記脈波センサにより検出された脈波の検出点とに基づいて、該心電誘導波形のQ点から前記心臓の大動脈内の脈波の立ち上がり点までの間の前記心臓の前駆出期間を算出する前駆出期間測定手段と、
該前駆出期間測定手段により測定された前駆出期間に基づいて前記心臓の心機能を評価する評価手段と
を、含むことを特徴とする心機能評価装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06727595A JP3649464B2 (ja) | 1995-03-27 | 1995-03-27 | 心機能評価装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP06727595A JP3649464B2 (ja) | 1995-03-27 | 1995-03-27 | 心機能評価装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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