JP3647647B2 - エレベータのロープ振れ止め装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、昇降行程が長いエレベータの巻上装置とかごとの間の昇降路中に設けられ、主ロープ(以下、ロープという。)等の横ゆれの範囲を制限することによりロープの振れ止めを行うエレベー夕ーのロープ振れ止め装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7及び図8は、従来のロープ振れ止め装置を備えたエレベータの一例を示すもので、図7は、エレベータのかごが下方階にあり、ロープ振れ止め装置が昇降路内に置かれている状態を示す正面図、図8は同じく平面図である。図において、昇降路1は四方を壁2で囲むことにより形成した空間であり、その中を、複数のロープ3の一端を固定したかご上梁4とかご枠5とかご床6とから構成したかご7が昇降する。ロープ3はかご上梁4にロープ止め8により固定されている。
【0003】
従来のエレベータでは、一段すなわち1セットのロープ振れ止め装置9を、昇降路1中の壁2に固定した昇降路側受台10に載置して位置決めするように設置した構造となっている。図8に示すように、中央部に複数のロープ3を挿通する開口9aを設け、この開口9aの中にロープ3を通し、かつ、ロープ振れ止め装置9をロープ3の振幅が大きくなる位置に設置することにより、ロープ3の横揺れを制限し、昇降路1内の突起物や他の機器にロープ3が引っ掛かるトラブルを防止するものである。
【0004】
下方階に待機していたかご7が出発し、ロープ振れ止め装置9の設置場所まで上昇すると、がご7のかご上梁4に設置されているかご側受台11がロープ振れ止め装置9に衝突し、そのまま、ロープ振れ止め装置9を上方へ持ち上げていく。
【0005】
逆に、上方階に待機していたかご7が出発し、昇降路側受台10の所まで降下すると、かご上梁4のかご側受台11に置かれているロープ振れ止め装置9が昇降路側受け台10に衝突する。そして、かご7は、ロープ振れ止め装置9を昇降路側受台10の上に載置して下方階に向かう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の従来のエレベータのロープ振れ止め装置9は、かご7が上昇してかご側受台11とロープ振れ止め装置9とが衝突すると、衝突の衝撃で大きな衝突音を発生すると共に、衝撃の繰り返しにより、かご側受台11の緩衝部等の破損事故が起き易いという問題点を有していた。
【0007】
また、かご7が降下する場合、かご側受台11上に載置されていたロープ振れ止め装置9が昇降路側受台10に衝突する。この時の衝突の衝撃力も同様に激しく、大きな衝突音を生じたり、エレベータシステムを構成するの各部機器の破損事故が短期間に発生するという問題点を有していた。
【0008】
さらに、エレベータ速度が大きい場合、衝突の衝撃力がさらに大きくなるので、現状の装置では90m/分以上の高速のエレベータや、それ以下であっても衝突音が気になる乗用エレベータには適用できないという問題点を有していた。
【0009】
またさらに、地震や風圧により、1節以上の多節のロープ揺れが発生する100mを越える超高昇降行程のエレベータに対して、現状の装置はロープの十分な振れ止め効果を得ることができず、また、地震等の事態が発生した場合、ロープの振れ止めが十分でなく、ロープの振れ振幅が大きくなる危険が大きいので、エレベータをできる限り速やかに停止させるか、休止させ利用できないようにする必要があり、利用が制限されるという問題点を有していた。
【0010】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたものであり、衝撃の緩衝を十分に行い、従来より低騒音で機器の破損事故を低減し、長寿命で乗り心地がよく、一層の高速化にも対応でき、また、ロープの振れ止めを十分に行って地震や風圧に対する安全性を高め、今後、建物がますます高層化し、エレベータの昇降行程が長くなった場合にも対応でき、エレベータの利用に安心感を持てるエレベータのロープ振れ止め装置を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るエレベータのロープ振れ止め装置は、エレベータの昇降路に少なくとも一対の昇降路側受台を設け、この昇降路側受台に当接し位置決めされる大きさを有すると共に、中央部にエレベータを懸垂するロープを挿通する挿通部を設た本体部をかごの上方の昇降路内に少なくとも一個備えたものである。そして、前記本体部の両端部の前記昇降路側受台とかごとにそれぞれ当接可能な位置に、連結手段により互いに連動可能に連結し、本体部と昇降路側受台又はかごとの衝突エネルギーを移動エネルギーに変換して吸収する複数の可動受部を設けたものである。
【0012】
また、連結手段は、それぞれ回転制動可能な一組の軸受により軸支された上下一対の軸により回動可能に支持されたベルトとしたものである。
【0013】
さらに、ベルトを弾性材料で形成し、可動受部とベルトとを緩衝座を介して結合してなるものである。
【0014】
またさらに、昇降路側受台に当接する可動受部をそれぞれ設けた複数の本体部をかごの上方の昇降路内に多段に備え、上方段の本体部に設けた可動受部の平面位置を下方段の本体部の可動受部より外側に位置するようにずらして形成してなるものである。
【0015】
また、可動受部は、昇降路側受台又はかごと衝突する部分に一次緩衝手段を備えたものであり、これらの一次緩衝手段は、ゴムやばねなどの弾性部材とするか、又は、油などを利用した流体緩衝手段としたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明に係るエレベータのロープ振れ止め装置を備えたエレベータシステムの要部正面図、図2は同じく平面図である。また、図3は、図2に示すロープ振れ止め装置の本体部の片側の拡大平面図であり、図4は、図3のA−A線での縦断面図である。さらに、図5は、図2に示すロープ揺れ止め装置の可動受部を拡大して示す図であり、図6は、図5のB−B線での縦断面図である。
【0017】
図1において、昇降路1は四方を壁2で囲むことにより形成した空間であり、その中を複数のロープ3の一端を固定した、かご上梁4、かご枠5、及びかご床6を備えてなるかご7が昇降するようになっている。ロープ3はかご上梁4にロープ止め8により固定されている。
【0018】
かご7の上方の昇降路1の互いに向かい合った壁2の表面には、一対の昇降路側受台10が固定されており、その水平面10a上にロープ振れ止め装置15が載置可能となっている。
【0019】
ロープ振れ止め装置15は、本体部20と、本体部20の両端部に設けた可動受部40とから構成されている。本体部20は、図2,図3、図4に示すように、互いに平行に配置された断面四角形状の一対の上部フレーム21と、同じく下部フレーム22、及び、断面L形の2個の上部補強横フレーム23、下部補強横フレーム24、さらに同じく断面L形の各2個ずつの補強縦フレーム25、26を含んで構成されている。本体部20の中央部にはロープ3を挿通させるための挿通部20aが形成されている。
【0020】
また、可動受部40を上下に移動可能に支持するために、本体部20の両端側面部には、中空円筒状の一対の昇降路側上部ガイド31と、同じく中空円筒状の昇降路側下部ガイド32とが備えられている。また、本体部20の両端側面部のやや内側に寄った部分には、中空円筒状の一対のかご側上部ガイド33とかご側下部ガイド34とが備えられている。さらに、上部フレーム21の下面には、昇降路側上部ガイド31とかご側上部ガイド33との中間位置に、中空円筒状の上部摩擦軸受35が取り付けられており、同様に、下部フレーム22の上面には、昇降路側下部ガイド32とかご側下部ガイド34との中間位置に、中空円筒状の下部摩擦軸受36が取り付けられている。
【0021】
可動受部40においては、図5及び図6に示すように、昇降路側上部ガイド31と昇降路側下部ガイド32とにより上下に移動可能に支持される円筒状の一対の昇降路側移動棒41と、同じくかご側上部ガイド33とかご側下部ガイド34とにより上下に移動可能に支持される円筒状の一対のかご側移動棒42とを含んでおり、それらは繋ぎ板43及び44によりそれぞれ連結されている。また、繋ぎ板43及び44には取付板45がそれぞれ取り付けられており、それら取付板45は緩衝座46とベルト取付板47を介してベルト48に連結されている。
【0022】
ベルト48は、一対の上部摩擦軸受35に軸支された上部回転軸49と、一対の下部摩擦軸受36に軸支された下部回転軸50と、により回動可能に支持される。上部摩擦軸受35は上部回転軸49に対して一定の摩擦力を伴いながら回転するようになっており、同様に、下部摩擦軸受36も下部回転軸50に対して一定の摩擦力を伴いながら回転するようになっている。かかる可動受部40はロープ振れ止め装置15の本体部20に対して、左右対称に設けられている。
【0023】
上記構成のロープ振れ止め装置15の本体部20は、本体部20の中央部に設けられた挿通部20aにロープ3を通すことにより、ロープ3の揺れを一定の範囲内に制限し、昇降路1内の突起物や他の機器への引っ掛かりを防止することができる。
【0024】
また、可動受部40の主要部をなす昇降路側移動棒41とかご側移動棒42は、それぞれ、エレベータの降下、上昇の二方向の動作に対応して、昇降路側受台10とかご側受台11とに交互に衝突し、この衝突時の衝撃により上方に移動し、衝突時の衝撃に対する緩衝動作をする。その際、昇降路側移動棒41とかご側移動棒42とがベルト48等の連結手段の働きで、一方が上方に移動する際に他方が下方に移動するという互いに相反する動作をする。そして、ベルト48が弾性部材で形成されていること、及び、昇降路側移動棒41又はかご側移動棒42とベルト48の間が緩衝座46を介して結合されていることから、昇降路側移動棒41やかご側移動棒42の急激な移動を可動受部40の全体に分散させて受け止めることができる。
【0025】
以下、可動受部40の動作を詳細に説明する。
【0026】
図6は、ロープ振れ止め装置15がかご7の側にあり、かご側移動棒42の下端部42aがかご側受台11に当接し、かつ、かご側下部ガイド34にも当接していて、上側に突き上げられた状態を示している。この際、昇降路側移動棒41とかご側移動棒42とがベルト48により相互に結合されているため、昇降路側移動棒41の上端部41bは、反対に昇降路側上部ガイド31に当接しており、下側に突き下げられた状態になっている。
【0027】
この状態でエレベータのかご7が下方階の呼びに応答して降下すると、昇降路側受台10の水平面10aに昇降路側移動棒41の下端部41aが衝突し、昇降路側下部ガイド32の位置まで突き上げられる。本実施の形態においては、昇降路側移動棒41の下端部41aが衝突する先端部は、ゴム又はばねなどの弾性材料を含んで形成した構造になっており、衝突時の衝撃を一次吸収し衝突時の衝撃をより和らげることができる。かご側移動棒42の下端部42aも同様にゴム又はバネなどの弾性材料を含んで構成されており、かご側受台11との衝突時の衝撃を吸収することができるようになっている。
【0028】
また、取付板45とベルト取付板47との間には十分弾力性のあるゴムなどの弾性材料で作られた緩衝座46が取り付けられており、一対の昇降路側移動棒41を一体化している繋ぎ板43はこの緩衝座46を介してベルト48に固定されているため、該昇降路側移動棒41の衝突時の衝撃は緩衝座46により二次吸収される。かご側移動棒42の衝突の際も同様に緩衝座46により衝撃吸収がなされる。
【0029】
また、一対の昇降路側移動棒41の衝突では、そのエネルギーが緩衝座46を介して移動するベルト48に伝えられ、上部回転軸49と下部回転軸50とを回転させる。上部回転軸49は回転に対して制動をかけることができる構造を有する上部摩擦軸受35に、また、下部回転軸50も同様に回転に対して制動をかけることができる構造を有する下部摩擦軸受36により軸支されているので、ベルト48に制動をかけることができる。従って、これらの軸受部による制動により衝突時の衝撃を三次吸収することができる。かご側移動棒42の衝突の際も同様に軸受部により衝撃吸収がなされる。
【0030】
また、衝突時に移動する一対の昇降路側移動棒41の下端部41aは、かご降下時に昇降路側下部ガイド32に衝突する。この際、かご側移動棒42は、緩衝座46を介してベルト48に固定されているので、昇降路側移動棒41とともに移動し、かご側移動棒42の上端部42bがかご側上部ガイド33に衝突する。この衝突においては、かご側移動棒42の上端部42bはゴム又はばねなどの弾性構造になっているので、衝突時の衝撃を四次吸収することができる。
【0031】
一方、ロープ振れ止め装置15が昇降路側にある場合、すなわち、昇降路側移動棒41の下端部41aが昇降路側受台10に当接している場合は、以上説明した動作とは逆方向の、図6における昇降路側とかご側の勝手を置き換えた動作がなされる。
【0032】
本実施の形態の構成によれば、本体部20と昇降路側受台10又はかご側受台11との衝突エネルギーを衝撃軽減手段である可動受部40の各構成部材の移動エネルギーに変換して吸収し、衝撃の緩衝を十分に行い、衝撃力と衝突音を軽減し、エレベータの高速化にも十分対応できる。
【0033】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、可動受部を設けた本体部を1個、すなわち一段だけ設ける構造であったが、同様の構成の本体部を複数備え、上方段の本体部に設けた可動受部の平面位置を下方段の本体部の可動受部より外側に位置するようにずらして形成したものをかごの上方の昇降路内に多段に設けるようにしてもよい。
【0034】
この場合、上方段のロープ振れ止め装置の受部分を徐々に外側に配置することにより、複数のロープ振れ止め装置を多段構造に配置し、ロープの振れを複数の場所で抑制することができ、建築物が現在以上に超高層になった場合にも、十分なロープ振れ止め効果を得ることができる。
【0035】
なお、上方段の本体部に設けた可動受部の平面位置を下方段の本体部の可動受部の平面位置に一致させ、かごの上方の昇降路内にロープ振れ止め装置15を多段に設けるようにしてもよい。
【0036】
実施の形態3.
上記実施の形態の構成において、昇降路側移動棒やかご側移動棒の端部だけでなく、昇降路側受台やかご側受台の上面の部分に、ゴムやばねなどの弾性部材、又は油などの流体緩衝手段からなる公知の一次緩衝手段を併用することにより、より良好な衝撃力の緩衝と衝突音の低減の効果が得られる。
【0037】
【発明の効果】
この発明は、以上述べたように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0038】
すなわち、連結手段により相互に連動可能な複数の可動受部を備え、本体部と昇降路側受台又はかごとの衝突エネルギーを構成部材の移動エネルギーに変換して吸収することにより、ロープ振れ止め装置がかご枠や昇降路側受台に衝突した時の衝撃力と衝突音を低減し、快適な乗り心地を得ると共に、衝撃時の歪みによる機器破損事故を減少させ、エレベータの長寿命化を図ることができる。
【0039】
また、連結手段を回転制動可能な軸受部により軸支された軸により回動可能に支持されたベルトとすることにより、一方の可動受部が昇降路受台又はかごに衝突したときの衝撃力を連動する他の可動受部の移動エネルギーに変換して分散させ、衝撃力と衝突音を大幅に低減することができる。
【0040】
ベルトを弾性材料で形成し、また、可動受部とベルトとを緩衝座を介して結合することにより、より一層衝撃力を緩和し、エレベータ速度がより一層高速の場合にも適用できる。
【0041】
昇降路内に複数段のロープ振れ止め装置を設置することにより、建築物が現在以上に超高層になった場合にも、複数の位置でロープの振幅を制限することができ、地震や風圧に対しても十分なロープ振れ止め効果を得ることができる。
【0042】
可動受部の昇降路側受台又はかごと衝突する部分に、ゴムやばね、油などを用いた一次緩衝手段を備えることにより、衝突の衝撃をより一層確実に和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係るロープ振れ止め装置を備えたエレベータの要部正面図である。
【図2】 この発明に係るロープ振れ止め装置を備えたエレベータの平面図である。
【図3】 図2に示すロープ振れ止め装置の本体部の片側の拡大平面図である。
【図4】 図3のA−A縦断面図である。
【図5】 図2における可動受部を拡大して示す平面図である。
【図6】 図5のB−B縦断面図である。
【図7】 従来のロープ振れ止め装置を備えたエレベータの要部正面図である。
【図8】 従来のロープ振れ止め装置を備えたエレベータの平面図である。
【符号の説明】
1 昇降路、3 ロープ、4 かご上梁、7 かご、10 昇降路側受台、11 かご側受け台、20 本体部、20a 挿通部、40 可動受部、41 昇降路側移動棒、42 かご側移動棒、46 緩衝座、48 ベルト、49,50
回転軸。
Claims (6)
- エレベータの昇降路に少なくとも一対の昇降路側受台を設け、この昇降路側受台に当接し位置決めされる大きさを有すると共に、中央部にエレベータを懸垂するロープを挿通する挿通部を設けた本体部をかごの上方の昇降路内に少なくとも一個備えたエレベータのロープ振れ止め装置において、前記本体部の両端部の前記昇降路側受台とかごとにそれぞれ当接可能な位置に、連結手段により互いに連動可能に連結し、本体部と昇降路側受台又はかごとの衝突エネルギーを移動エネルギーに変換して吸収する複数の可動受部を設けてなるエレベータのロープ振れ止め装置。
- 連結手段は、それぞれ回転制動可能な一組の軸受部により軸支された上下一対の軸により回動可能に支持されたベルトを含むことを特徴とする請求項1記載のエレベータのロープ振れ止め装置。
- ベルトを弾性材料で形成してなることを特徴とする請求項2記載のエレベータのロープ振れ止め装置。
- 可動受部とベルトとを緩衝座を介して結合してなることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載のエレベータのロープ振れ止め装置。
- 昇降路側受台に当接する可動受部をそれぞれ設けた複数の本体部をかごの上方の昇降路内に多段に備え、上方段の本体部に設けた可動受部の平面位置を下方段の本体部の可動受部より外側に位置するようにずらして形成してなることを特徴とする請求項1記載のエレベータのロープ振れ止め装置。
- 可動受部は、昇降路側受台又はかごと衝突する部分に一次緩衝手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至5記載のエレベータのロープ振れ止め装置。
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