JP3643042B2 - 画像処理装置、画像処理方法および記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、階調変換およびエッジ強調を行う画像処理装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタルカメラ等の画像処理装置において、入力した画像データに対して階調変換処理やエッジ強調処理が行われる。階調変換処理は、モニタの入出力特性に応じた変換処理である。エッジ強調処理は、画像を鮮明化したり、強調したりする処理であるが、画像の特質によって、適正なエッジ強調を行うことが望ましい。
【0003】
従来、デジタルカメラ等の画像処理装置においては、入力した画像データに対して、まず、階調変換処理を施し、その後、階調変換された画像データに対してエッジ強調処理を施すようにしていた。
【0004】
画像処理装置における一般的なエッジ強調処理について説明する。入力されたRGBデータのうち、Gデータに対してHPF(High Pass Filter)をかけ、高周波成分を抽出する。HPFにおいて抽出した高周波成分から所定のレベル以下の成分を除去(ノイズ除去)する。そして、ノイズ除去された高周波成分に対しゲイン調整を行う。
【0005】
ゲイン調整されたGデータの高周波成分を元のGデータに加算し、加算後のGデータを出力する。さらに、BデータおよびRデータに対しても、ゲイン調整されたGデータの高周波成分を加算し、加算後のB,Rデータを出力する。
【0006】
このような処理によりエッジ強調処理が行われている。そして、従来、エッジ強調の度合を切り換えるために、ゲイン調整部の変換特性であるゲイン値を複数保有するようにしていた。そして、複数のゲイン値を切り換えることで、ゲイン調整部における変換特性を切り換え、画像の特質に応じてエッジの度合を変化させるようにしていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ゲインを切り換えることによりエッジ強調の度合を切り換える方法では、複数のゲイン値をメモリ内に格納しておく必要があり、メモリ容量を余分に使用するという問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み、複数のゲインの値を保有しない場合であっても、エッジの強調度合を切り換えることを可能とする画像処理装置等を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、画像に対して階調変換処理およびエッジ強調処理を施す処理方法であって、処理対象画像についてのエッジ強調度合の要求レベルに応じて、前記処理対象画像に対する階調変換処理とエッジ強調処理との処理順序を決定する処理順序決定工程と、前記処理順序決定工程において決定された順序に従って、前記処理対象画像に対する階調変換処理とエッジ強調処理とを順次に実行する工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1に記載の画像処理方法において、前記階調変換処理の変換特性はγ値であらわされるものであり、前記γ値は1以外の値としたことを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の画像処理方法において、さらに、前記処理対象画像のシーンを判定するシーン判定工程を含み、前記処理順序決定工程は、前記シーン判定工程の判定結果に基づいて、前記処理対象画像に対する前記処理順序を決定することを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体コンピュータであって、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像処理方法を実行させるためのプログラムを記録してあることを特徴とする。請求項5の発明は、画像の階調変換を行う階調変換手段と、画像のエッジ強調を行うエッジ強調手段と、前記階調変換手段と前記エッジ強調手段とによる処理対象画像のシーンを判定するシーン判定手段と、シーン判定手段の判定結果に基づいて、前記階調変換手段と前記エッジ強調手段とによる処理対象画像の処理順序を切り替える手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
{1.デジタルカメラの構成}
本実施の形態にかかる画像処理装置について、デジタルカメラを例として説明する。図1は、デジタルカメラ1の正面斜視図、図2は、デジタルカメラ1の背面図である。
【0025】
デジタルカメラ1の正面には撮影レンズ11、ファインダ窓12、フラッシュ13が設けられ、撮影レンズ11から入力した被写体像はCCD素子14に結像される。
【0026】
また、デジタルカメラ1の上面には、シャッタ指示を行うレリースボタン15、撮影モードの選択操作など各種設定操作を行うことが可能な設定キー16a、撮影モード等の状態を表示する液晶パネル17が設けられている。
【0027】
デジタルカメラ1の側面には、記録メディアの挿入口であるスロット18が設けられ、スロット18にメモリカード20を挿入することで、デジタルカメラ1で撮影した画像データの受け渡しを行うことを可能としている。
【0028】
また、デジタルカメラ1の背面1Bには、撮影モードの選択操作など、各種設定操作を行うことが可能な設定キー16bと、撮影した画像のプレビュー表示や、各種設定メニューなどを表示する液晶モニタ19とが設けられている。以下の説明においては、設定キー16a,16bを総称して設定キー16として説明する。
【0029】
次に、図3を用いて、デジタルカメラ1の内部構成について説明する。CCD素子14は、原色または補色のカラーフィルターを画素ごとに配置した撮像素子であり、被写体の光像をRGBの画像信号に光電変換して出力する。本実施の形態におけるCCD素子14のカラーフィルターはベイヤー配列されている。
【0030】
A/D変換部31は、CCD素子14から出力された各画素の電気信号をデジタル信号に変換する。黒レベル補正部32は、画素信号のうち濃度部を基準の黒レベルに補正する。ホワイトバランス(WB)補正部33は、撮影光源の分光による色バランスのずれを補正するためにRGB各色の画素信号のレベル変換を行う。そして、画素補間部34において、欠落色画素の補間が行われ、各画素についてRGB3色の電気信号が出力される。
【0031】
エッジ強調調整部36は、階調変換部42とエッジ強調部41を含む、本発明の特徴部とする画像処理部である。
【0032】
階調変換部42は、RGB各色に対する階調変換LUTをもち、RGBデータの階調変換を行う。画像をモニタで観察することを想定してモニタの入出力特性の逆特性の補正がかけられる。ここで、階調変換LUTは、変換特性であるγ値により特徴付けられる。
【0033】
エッジ強調部41は、HPF411、コアリング部412、ゲイン調整部413を含み、エッジ強調を行う。エッジ強調部41の構成を図4に示す。
【0034】
入力されたRGBデータのうち、Gデータに対してHPF411をかけ、高周波成分を抽出する。HPF411において抽出した高周波成分に対して、コアリング部412において所定のレベル以下の成分を除去(ノイズ除去)する。そして、コアリング部412から出力した高周波成分に対しゲイン調整部413においてゲイン調整を行う。
【0035】
ゲイン調整されたGデータの高周波成分を元のGデータに加算し、加算後のGデータを出力する。さらに、BデータおよびRデータに対しても、ゲイン調整されたGデータの高周波成分を加算し、加算後のB,Rデータを出力する。このように、Gの高周波成分を利用して、エッジ強調処理を行う。
【0036】
本実施の形態におけるコアリング部412およびゲイン調整部413の処理特性を図5に示す。図中、横軸は、HPF411から出力された値を入力としたときのレベルであり、縦軸は、コアリング部411およびゲイン調整部413における処理が行われた後の出力のレベルである。
【0037】
コアリング部412は、HPF411から出力されたGデータの値gが−V1<g<V1であれば0に変換し、それ以外の値である場合には、そのままのレベルを出力する。ゲイン調整部413では、コアリング部412から出力されたレベルに応じて図に示すような傾きをもった変換を行う。つまり、HPF411から出力されたレベルが−V1からV1である場合には0を出力し、それ以外の値である場合には、図に示すような傾きをもった特性(ゲイン値)により変換したレベルを出力するのである。
【0038】
再び、図3を参照する。処理順序制御部40は、後述するシーン判定部35の判定結果に基づいて階調変換部42とエッジ強調部41の処理順序を決定し、階調変換部42とエッジ強調部41の処理順序の制御を行う。
【0039】
記録画像生成部37は、記録用の圧縮画像を生成し、画像情報を付加してメモリカード20に画像を記録する。
【0040】
{2.シーン判定および処理順序の制御}
次に、シーン判定部35におけるシーン判定処理、および、処理順序制御部40における制御処理について説明する。
【0041】
シーン判定部35は、撮影モード情報、距離情報(被写体倍率)、輝度分布情報、光源検知情報、輪郭検出情報などから画像のシーンを判定し、その結果を処理順序制御部40に出力する。
【0042】
このうち、まず、撮影モード情報からの判定方法について説明する。撮影モード情報からの判定は、前述した設定キー16を用いたオペレータ操作によって明示的に撮影モードが選択された場合に、その情報を基準とするものである。
【0043】
図6は、シーンの種別の一例を示す。本実施の形態においては、「ポートレート」、「風景」、「夜景」、「スローシンクロ」、「マクロ」、「文字モード」といった6つのシーン(撮影モード)が選択可能である。
【0044】
オペレータが設定キー16を用いた所定の操作を行うことにより、液晶モニタ19には6つのシーンが選択可能に表示される。そして、設定キー16を用いた所定の操作を行うことにより、オペレータは1のシーンを選択するのである。
【0045】
このようにシーン判定部35は、オペレータによって明示的に撮影モードが設定されることにより、シーンを判定することが可能である。さらに、本実施の形態においては、シーン判定部35は、被写体までの距離情報(被写体倍率)、輝度分布情報、光源検知情報、輪郭検出情報、人物検出情報(これらを総称して図3中、各種情報38として図示)などから画像のシーンを判定することが可能である。
【0046】
被写体倍率を基にシーンを判定する方法では、シーン判定部35は、デジタルカメラ1の撮影部から、フォーカス対象の主被写体の撮影倍率の情報を取得し、この情報をもとにシーン判定を行う。そして、たとえば、主被写体倍率が大きい、つまり、被写体までの距離が近い場合には、その距離に応じて「マクロ」モードや「ポートレート」モードと判定し、被写体倍率が小さい場合には、「風景」モードと判定するのである。
【0047】
別の方法として、画像の輪郭(エッジ)検出情報とエッジの重心検出情報から主被写体の存在する領域を検出する。そして、主被写体領域と背景領域との占有比率を求め、主被写体の占有比率が高い場合には「マクロ」モード、低い場合は「風景」モード、それ以外は「ポートレート」モードと判定するようにしてもよい。このように、シーン判定部35は、各種情報38を用いた画像解析を行うことにより、シーン(モード)を判定する機能を兼ね備えているのである。
【0048】
そして、処理順序決定手段40は、シーン判定部35のシーン判定結果に基づいて、階調変換部42とエッジ強調部41の処理順序を制御する。つまり、図6に示すように各シーン(撮影モード)に対しては、異なる度合のエッジ強調を行うこととしており、このエッジ強調度合に応じて、階調変換部42とエッジ強調部41の処理順序を切り換えるのである。
【0049】
本実施の形態においては、「ポートレート」、「夜景」、「スローシンクロ」の3つの撮影モードに対しては、「弱」のエッジ強調を施し、「風景」、「マクロ」、「文字モード」の3つの撮影モードに対しては「強」のエッジ強調を施すようにしている。このような各シーンとエッジ強調度合を対応づけた理由を以下に説明する。
【0050】
「ポートレート」モードは、人物を被写体とした撮影モードであり、一般に人物の肌は滑らかにソフトに仕上がるのが好まれる。
【0051】
「風景」モードは、遠方の風景を撮影する撮影モードであり、被写体が微細であるので、鮮明度が落ちたように見える。よって、よりコントラストを強調する方が好まれる。
【0052】
「夜景」モードは、夜景、または、夜景を背景にした人物を撮影するモードであり、暗い部分が多くなるのでノイズ除去が必要である。
【0053】
「スローシンクロ」モードは、スローシャッターでのフラッシュ撮影モードであり、露光時間を長くするとノイズが増加するのでノイズ除去が必要である。
【0054】
「マクロ」モードは、被写体を接写するモードであり、被写体を鮮明にするのが好まれる。
【0055】
「文字」とは、雑誌、書籍、ホワイトボードなどの文字を被写体とした画像である。文字をくっきりと見せることが好まれる。
【0056】
そして、処理順序制御部40は、エッジ強調度合に応じて階調変換処理とエッジ強調処理の処理順序を切り換えるのである。
【0057】
ここで、いずれの処理を先にした場合、エッジ強調の度合が強くなるかは、階調変換部42における変換特性に依存している。つまり、階調変換部42の変換特性を示すγ値(cγ)について、cγ<1である場合には、エッジ強調処理を先に行うことによって、エッジ強調度合を強くすることができる。これに対して、cγ>1である場合には、逆の現象がおきる。つまり、階調変換処理を先に行うことによって、エッジ強調度合を強くすることができるのである。
【0058】
本実施の形態においては、階調変換部42の変換特性は、cγ<1としており、エッジ強調の度合を「弱」とするためには、階調変換処理をおこなった後、エッジ強調処理を行うようにし、エッジ強調の度合を「強」とするためには、エッジ強調処理をおこなった後、階調変換処理を行うようにしている。この対応についても図6に示している。これによって処理対象画像についてのエッジ強調の要求レベルに応じた処理順序の切り換えが行われることになる。
【0059】
{3.処理フロー}
以上の如く構成されたデジタルカメラ1において、エッジ強調調整部36における処理フローについて図7を用いて説明する。
【0060】
まず、画素補間部34における補間処理が行われたRGB画像データがエッジ強調調整部36に入力される(ステップS101)。
【0061】
次に、処理順序制御部40において、処理順序が決定される(ステップS102)。この決定は、前述の如く、オペレータ操作によって明示的に撮影モードが選択される場合には、選択された撮影モードに基づいて行われる。もしくは、輝度分布情報などをもとに自動判定される。
【0062】
そして、階調変換処理を先に行う場合(ステップS103でYes)には、入力したRGB画像データに対して、階調変換処理を行った後(ステップS104)、エッジ強調処理を行う(ステップS105)。これによって、弱いエッジ強調が施された画像が出力される(ステップS108)。
【0063】
これに対して、階調変換処理を先に行わない場合(ステップS103でNo)には、入力したRGB画像データに対して、エッジ強調処理を行った後(ステップS106)、階調変換処理を行う(ステップS107)。これによって、強いエッジ強調処理が施された画像が出力される(ステップS108)。
【0064】
{4.処理の比較}
次に、階調変換処理とエッジ強調処理の処理順序を切り換えることによりエッジの強調度合が変化する様子を、サンプルデータを用いた実際の計算により説明する。
【0065】
ここでは、簡単のため1次元のエッジ形状についてエッジ強調処理を行う。画像データは8bit(0〜255)であるとし、階調変換の変換特性であるγ値(cγ)はcγ=0.45とする。また、エッジ強調は図8に示すような空間フィルターをかけることで行う(ここでは、コアリングは行わないものとする)。
【0066】
<4−1 階調変換の後にエッジ強調を行った場合>
まず、階調変換の後にエッジ強調を行う場合の処理結果を計算する。図9(a)は、処理前のエッジ形状であり、横軸に画素位置、縦軸にデジタル値をとったものである。各画素位置X1,X2,X3,X4,X5,X6におけるデジタル値を、それぞれf(X1),f(X2),f(X3),f(X4),f(X5),f(X6)とする。また、初期状態(階調変換およびエッジ強調を施す前)のf(X1),f(X2),f(X3),f(X4),f(X5),f(X6)を、それぞれd1,d2,d3,d4,d5,d6とし、ここでは、例としてd1=d2=d3=60,d4=d5=d6=100の場合を考える。
【0067】
そして、各画素について階調変換処理を行う。ここで、変換特性はcγ=0.45であるので、数1式に示すような変換式を用いて、各画素について階調変換計算を行うと、f(X1)=133.2,f(X2)=133.2,f(X3)=133.2,f(X4)=167.6,f(X5)=167.6,f(X6)=167.6となる。ただし、数1式中、dnとは、n=1,2,3・・・に対して、d1,d2,d3・・・が対応しており、Xnとは、n=1,2,3・・・に対して、X1,X2,X3・・・が対応している(後述する数2式から数4式においても同様である)。
【0068】
【数1】
【0069】
ただし、数1式中のAは255/(255cγ)から計算される定数であり、この例ではA=21.1となる。このようにして計算されたf(X1),f(X2)・・・を再びプロットしたものが図9(b)である。
【0070】
次に、各画素についてエッジ強調処理を行う。ここで、エッジ強調処理は図8に示した空間フィルタを使うので、数2式に示す計算式が与えられる。
【0071】
【数2】
【0072】
数2式を用いてエッジ強調計算を行うと、f(X2)=133.2,f(X3)=98.8,f(X4)=202.0,f(X5)=167.6となる。このようにして計算されたf(X2),f(X3)・・・を再びプロットしたものが図9(c)である。
【0073】
<4−2 エッジ強調処理の後に階調変換を行った場合>
次に、エッジ強調処理の後に階調変換を行う場合の処理結果を計算する。図10(a)は、処理前のエッジ形状であり、横軸に画素位置、縦軸にデジタル値をとったものである。同様に、各画素位置X1,X2,X3,X4,X5,X6におけるデジタル値を、それぞれf(X1),f(X2),f(X3),f(X4),f(X5),f(X6)とし、初期状態のf(X1),f(X2),f(X3),f(X4),f(X5),f(X6)を、それぞれd1,d2,d3,d4,d5,d6(d1=d2=d3=60,d4=d5=d6=100)とする。
【0074】
そして、各画素についてエッジ強調処理を行う。ここで、エッジ強調処理は図8に示した空間フィルタを使うので、数3式に示す計算式が与えられる。
【0075】
【数3】
【0076】
数2式を用いてエッジ強調計算を行うと、f(X2)=60,f(X3)=20,f(X4)=140,f(X5)=100となる。このようにして計算されたf(X2),f(X3)・・・を再びプロットしたものが図10(b)である。
【0077】
次に、階調変換処理を行う。ここで、変換特性はcγ=0.45であるので、数4式に示した変換式を用いて、各画素について階調変換計算を行うと、f(X2)=133.2,f(X3)=81.2,f(X4)=195.0,f(X5)=167.6となる。ただし、数1式中のA=255/(255cγ)=21.1である。
【0078】
【数4】
【0079】
このようにして計算されたf(X2),f(X3)・・・・・・を再びプロットしたものが図10(c)である。
【0080】
<4−3 処理結果の比較>
このように、階調変換処理とエッジ強調処理の処理順序を入れ換えて処理をおこなった場合には、図9(c)、図10(c)に示すように、いずれの場合にもエッジ強調が行われているが、エッジ強調の度合が異なる。
【0081】
つまり、エッジ立ち上がり部のコントラストを数5式で示す計算式を用いて求めると、階調変換処理を先に行った場合(上述4−1)には、Co=0.34、エッジ強調処理を先に行った場合(上述4−2)には、Co=0.41となり、Coの値が大きい程コントラストが高くなったことを示すので、エッジ強調処理を先に行った場合の方がエッジのコントラストが高くなったことがわかる。つまり、階調変換の後、エッジ強調を行ったものと、エッジ強調の後、階調変換を行ったものでは、エッジの立ち上がりの形が異なるため、処理順序によってエッジ強調度合を異ならせることができるのである。
【0082】
【数5】
【0083】
このような理由から、上述した実施の形態においては、「ポートレート」モードなど、エッジ強調を弱くしたい場合には、階調変換処理を先に行い、「マクロ」モードなど、エッジ強調を強くしたい場合には、エッジ強調処理を先に行うようにしているのである。
【0084】
本実施の形態においては、階調変換の変換特性であるγ値(cγ)をcγ<1としているので、上述した計算で示したように、エッジ強調処理を先に行うことで、エッジ強調度合を強くすることができるが、逆に、cγ>1の関係にある場合には、エッジ強調度合を強くするためには、階調変換処理を先に行うような制御を行うようにすればよい。cγ>1である場合の計算も同様な計算により求められるが、ここでは省略する。
【0085】
このことは、階調変換の特性がcγ<1であっても、cγ>1であっても、階調変換とエッジ強調の処理順序を切り換えることで、エッジ強調度合を変化させられることを意味している。
【0086】
以上、<4−1>および<4−2>の比較は、1次元の信号(エッジ形状)を例とした計算処理である。これを上述した実施の形態におけるデジタルカメラ1のGデータ(2次元信号)に適用すれば、同様の効果が得られることとなる。つまり、Gデータに対する階調変換特性γ値(cγ)の値を1以外の値(たとえば0.45)とし、階調変換とエッジ強調の処理順序を切り換えることにより、Gデータの強調度合を変化させることができる。そして、図4で示したように、R、Bデータに対しても、強調度合の異なるGデータの高周波成分が加算されることとなるので、出力画像の強調度合を変化させることができるのである。
【0087】
本実施の形態においては、階調変換とエッジ強調の処理を切り換えることにより、エッジ強調の度合を変更することを特徴としているが、従来から行われていたエッジ強調の度合の切り換え方法と併用するようにしてもよい。
【0088】
エッジ強調部41におけるゲイン調整部413のゲイン値を複数種保有しておき、このゲイン値を切り換えながらエッジの強調度合を変化させる方法と、階調変換とエッジ強調の処理順序を切り換える方法を併用するのである。これにより、ゲイン値の種類に対して2倍の種類のエッジ強調度合を切り換えることが可能となる。
【0089】
{5.変形例}
上述した、実施の形態の中で、デジタルカメラ1が備える各処理部(WB補正部33、画素補間部34、エッジ強調調整部36など)は、ハードウェアによる処理で実現されてもよいし、ソフトウェアによる処理で実現されてもよい。
【0090】
そして、各処理をソフトウェア処理により実現することで、本実施の形態にかかるデジタルカメラ1において実行したような処理を、一般のコンピュータにおいても実行させることが可能である。そして、このような処理を実行するプログラムを記録媒体として配布することが可能である。
【0091】
図11は、コンピュータ5の概観図である。コンピュータ5は、たとえば、パーソナルコンピュータであり、フロッピディスクやCD−ROM等の記録媒体51を読み込むことが可能である。
【0092】
そして、記録媒体51に本実施の形態にかかるデジタルカメラ1と同様の画像処理を実行可能なプログラム6を記録しておくことにより、コンピュータ5は、プログラム6をハードディスクにインストールすることにより実行することが可能である。もしくは、記録媒体51に記録されたプログラム6を直接実行するようにしてもよい。
【0093】
図12は、プログラム6の処理フローである。プログラム6は、まず、データの読み出し(ステップS201)を行う。たとえば、プログラム6は、所定のディレクトリに格納されている画像データの読み出しを行う。ここでの画像データは、ベイヤー配列のCCDから出力されたRGBデータであるものとする。
【0094】
次に、プログラム6は、WB補正処理(ステップS202)、画素補間処理(ステップS203)を行う。
【0095】
そして、図3で示した実施の形態においてエッジ強調調整部36に相当する機能が実行されて処理順序が決定される(ステップS204)。ここでは、たとえば、画像ヘッダ情報に含まれている撮影モード情報や、他の定義ファイルなどから撮影モード情報を読み取るものとする。
【0096】
そして、階調変換処理を先に行う場合(ステップS205でYes)には、階調変換処理(ステップS206)を行い、続いてエッジ強調処理(ステップS207)を行う。ただし、階調変換処理の変換特性はcγ<1であり、前述した実施の形態において図6で示した場合と同様な関係で階調変換処理とエッジ強調処理の順序が切り換えられる。
【0097】
階調変換処理を先に行わない場合(ステップS205でNo)には、エッジ強調処理(ステップS208)を行い、続いて階調変換処理(ステップS209)を行う。このように、いずれかの処理順序により、階調変換処理とエッジ強調処理とが施された画像データが出力されると、画像圧縮処理を行い(ステップS210)、ハードディスクや記録媒体等にデータの書込みを行う(ステップS211)。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項3に記載の発明では、階調変換処理とエッジ強調処理の処理順序を切り換える方法であり、エッジ強調処理の変換特性を複数保有することなく、エッジの強調度合を変化させることが可能である。
【0109】
請求項4記載の発明では、請求項1ないし請求項3に記載の方法を実行可能なプログラムを配布することにより、記録媒体読み取り可能なコンピュータにおいて、本発明の画像処理方法が実行可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかるデジタルカメラの概観斜視図である。
【図2】デジタルカメラの背面図である。
【図3】デジタルカメラの内部ブロック構成図である。
【図4】エッジ強調部の処理ブロック図である。
【図5】コアリング部およびゲイン調整部により制御される出力レベルを示す図である。
【図6】デジタルカメラが有する撮影モードと、エッジ強調の度合と、処理順序の関係を示す図である。
【図7】デジタルカメラにおけるエッジ強調調整処理を示すフローチャートである。
【図8】エッジ強調部における空間フィルタを示す図である。
【図9】階調変換処理を先に行った場合の、各画素の演算結果を示す図である。
【図10】エッジ強調処理を先に行った場合の、各画素の演算結果を示す図である。
【図11】コンピュータの概観図である。
【図12】コンピュータ上で実行されるエッジ強調調整処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 デジタルカメラ
16 設定キー
34 画素補間部
35 シーン判定部
36 エッジ強調調整部
40 処理順序制御部
41 エッジ強調部
42 階調変換部
Claims (5)
- 画像に対して階調変換処理およびエッジ強調処理を施す処理方法であって、
処理対象画像についてのエッジ強調度合の要求レベルに応じて、前記処理対象画像に対する階調変換処理とエッジ強調処理との処理順序を決定する処理順序決定工程と、
前記処理順序決定工程において決定された順序に従って、前記処理対象画像に対する階調変換処理とエッジ強調処理とを順次に実行する工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。 - 請求項1に記載の画像処理方法において、
前記階調変換処理の変換特性はγ値であらわされるものであり、前記γ値は1以外の値としたことを特徴とする画像処理方法。 - 請求項1または請求項2に記載の画像処理方法において、さらに、
前記処理対象画像のシーンを判定するシーン判定工程、
を含み、
前記処理順序決定工程は、前記シーン判定工程の判定結果に基づいて、前記処理対象画像に対する前記処理順序を決定することを特徴とする画像処理方法。 - コンピュータにおいて請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像処理方法を実行させるためのプログラムを記録してあることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
- 画像の階調変換を行う階調変換手段と、
画像のエッジ強調を行うエッジ強調手段と、
前記階調変換手段と前記エッジ強調手段とによる処理対象画像のシーンを判定するシーン判定手段と、
シーン判定手段の判定結果に基づいて、前記階調変換手段と前記エッジ強調手段とによる処理対象画像の処理順序を切り替える手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
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