JP3638529B2 - ディスクブレーキアッセンブリ及びディスクブレーキローター - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自転車等の車輌に使用されるディスクブレーキローター及びディスクブレーキアッセンブリに関する。より詳しくは、一対の浮動型ディスクブレーキ部材を備えたディスクブレーキローター及びディスクブレーキアッセンブリに関する。
【０００２】
【従来の技術】
自転車や自動二輪車等の車輌は、輸送手段としてばかりではなく、レクレーションの形態としても急速に人気が高まってきており、さらに、大変に人気のある競技スポーツとなっている。斯かる車輌がレクレーション，輸送手段又は競技の何れに使用されるものであろうと、業界は常に構成部品の開発に努めている。過去何年にも亘って大きく設計変更されてきている部品の一つとして、ブレーキシステムが存在する。特に、ブレーキシステムにおける制動力は常に上昇し続けている。以下、前記車輌として自転車を例にとって説明する。
【０００３】
現在、数タイプの自転車ブレーキ装置が市販されている。一般的な自転車ブレーキ装置のタイプとしては、リムブレーキ、キャリパーブレーキ、及びディスクブレーキが例示される。高性能なブレーキシステムを望むライダーは、通常、ディスクブレーキシステムを選択する。ディスクブレーキシステムは、ブレーキレバーに付加される操作力に対して大きな制動力を提供する。さらに、ディスクブレーキシステムは、一般的に、天候や走行条件に拘わらず、高レベルな確実性を提供する。もちろん、ライダーは、ディスクブレーキシステムに対し、より大きな制動力等のより良い性能を常に要求している。
【０００４】
このような要求に応えるべく、２つのディスクローターを備えたブレーキシステムが開発されてきた。該ダブルディスクブレーキシステムは、固定された中央に位置する摩擦部材と、該中央摩擦部材に向かって押動される一対の端部摩擦部材とを備えている。しかしながら、斯かるタイプのブレーキシステムの一つの欠点は、前記中央摩擦部材に向かって一対の端部摩擦部材を押動する為に一対のピストンを要し、これにより、価格が高騰する点である。さらに、一対のピストンユニットが滑動自在とされたキャリパーハウジングは、ピストンユニットが一つだけしか連結されないキャリパーハウジングに比して、かなり高重量になるという問題もある。従来のダブルディスクブレーキシステムにおける他の問題として、ディスブレーキローターの変形を避ける為に、キャリパーハウジングをローターに正確に位置合わせしなければならないという問題もある。
【０００５】
これらの観点から、重量又は製造コストの実質的な増加を招くことなく、従来のディスクブレーキが抱える問題を解消し得るディスクブレーキが望まれている。本発明は、従来技術における斯かる要望と共に、本開示から当業者にとって明らかになるであろう他の要望に鑑みなされたものである。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の一の目的は、制動力を上昇させるべく、ダブルディスクローターを備えた自転車ディスクブレーキアッセンブリを提供することである。
又、本発明の他の目的は、制動力の大きさに対して、コンパクト化且つ軽量化し得るディスクブレーキアッセンブリを提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、製造コストが比較的安価なディスクブレーキアッセンブリを提供することである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成する為に、支持部材と、第１ディスクブレーキ部材と、第２ディスクブレーキ部材とを備えたディスクブレーキローターを提供する。
前記支持部材は、中央回転軸回りに回転部材と回転し得るように連結される内側取付部と、該内側取付部の径方向外側に位置する外側取付部とを有している。
前記第１ディスクブレーキ部材は、前記支持部材に対して回転軸方向に第１距離だけ移動し得るように前記外側取付部に移動自在に連結されている。
前記第２ディスクブレーキ部材は、前記支持部材に対して回転軸方向に第２距離だけ移動し得るように前記外側取付部に移動自在に連結されている。
前記第２距離は前記第１距離とは異なる長さとされている。従って、第１又は第２ディスクブレーキ部材の一方をシングルピストンユニットで押動することによって、該両ディスクブレーキ部材上に摩擦力を得ることができる。
又、前記第２ディスク部材は、前記第１ディスク部材に対して回転軸方向に離間され且つ略平行に配設されている。
【０００８】
さらに、本発明は前記目的を達成する為に、支持部材と、第１端部ディスクブレーキ部材と、第２端部ディスクブレーキ部材と、キャリパーハウジングと、第１端部摩擦部材と、第２端部摩擦部材と、中間摩擦部材とを備えたディスクブレーキアッセンブリを提供する。
前記支持部材は、中央回転軸回りに回転部材と回転し得るように連結される内側取付部と、該内側取付部の径方向外側に位置する外側取付部とを有している。
前記第１ディスク部材は、前記支持部材に対して回転軸方向に第１距離だけ移動し得るように前記外側取付部に移動自在に連結されている。
前記第２ディスク部材は、前記支持部材に対して回転軸方向に第２距離だけ移動し得るように前記外側取付部に移動自在に連結されている。
前記第２距離は前記第１距離とは異なる長さとされている。
又、前記第２ディスク部材は、前記第１ディスク部材に対して回転軸方向に離間され且つ略平行に配設されている。
前記キャリパーハウジングには、前記第１及び第２ディスクブレーキ部材に制動力を掛ける為のピストンユニットが開放位置とブレーキ位置との間で移動し得るように移動自在に連結されている。
前記第１端部摩擦部材は、前記ピストンユニットによって開放位置とブレーキ位置との間で移動されるように、前記キャリパーハウジングに移動自在に連結されている。
前記第２端部摩擦部材は、前記第１端部摩擦部材と略平行に配設されるように、前記キャリパーハウジングに連結されている。
前記中間摩擦部材は、前記第１端部摩擦部材と第２端部摩擦部材との間において前記キャリパーハウジングに移動自在に連結されている。
【０００９】
本発明におけるこれらの及び他の目的，構成，仕様及び効果は、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を開示する以下の詳細な説明から、当業者にとって明らかであろう。
【００１０】
【発明の実施の形態】
まず、図１及び図２を参照すると、本発明の一実施の形態に係るディスクブレーキアッセンブリ１２が連結された自転車１０の前部分が描かれている。自転車１０を含む自転車は当業界において広く知られており、従って、自転車１０及びその種々の構成部材については、ここでは詳細には説明又は描写しない。自転車１０がマウンテンバイク，ハイブリッドバイク又はロードバイク等の何れのタイプでも可能であることは、当業者にとって明らかであろう。自転車１０は、ハンドルバー１５を備えた自転車フレーム１４と、フロント及びリアフォーク１６（フロントフォークのみ図示）と、フロント及びリアホイール１８（フロントホイールのみ図示）と、駆動トレイン（図示せず）とを有する一般的な自転車とされている。
【００１１】
なお、自転車１０の前部分だけが、ディスクブレーキアッセンブリ１２を有するように描かれているが、第２又はリアディスクブレーキアッセンブリ１２が自転車１０のリアホイールを停止させる為に利用され得ることは、本開示から当業者にとって明らかであろう。さらに、特許請求の範囲によって画される本発明の要旨から逸脱することなく、開示の実施の形態から種々の変更及び変形態様が可能であることは、本開示から当業者にとって明らかであろう。
【００１２】
ディスクブレーキアッセンブリ１２は、ディスクブレーキキャリパー２０と、ディスクブレーキローター２２と、ブレーキ操作機構２４とを備えている。ディスクブレーキキャリパー２０は、ディスクブレーキローター２２の近傍において、自転車１０のフロントフォーク１６に装着されている。ディスクブレーキローター２２は、フロントホイール１８に相対回転不能に連結されている。ブレーキ操作機構２４は、好ましくは、図３に示すように、ハンドルバー１５の把持位置近傍において該ハンドルバー１５に固着される。ブレーキ操作機構２４は、ブレーキ流体ホース２６を介して、ディスクブレーキキャリパー２０に作動的に接続されている。斯かるブレーキ操作機構２４は、ディスクブレーキキャリパー２０を解放状態とブレーキ状態との間で移行させる為に、操作される。より詳しくは、ディスクブレーキキャリパー２０は、ブレーキ操作機構２４の操作に基づき、自転車ホイール１８及びディスクブレーキローター２２が回転自在となる解放状態と、自転車ホイール１８及びディスクブレーキローター２２の回転を停止させるべく該ディスクブレーキローター２２に対して制動力を掛けるブレーキ状態とをとり得るようになっている。
【００１３】
図９〜図１６に示すように、ディスクブレーキローター２２は、ディスク支持部材３０と、６個の支持ピン３４によって該ディスク支持部材３０の外周部に連結された一対のディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂとを備えている。従って、ディスクブレーキローター２２は、同サイズの単一ディスクブレーキに比して、２倍のブレーキ表面を有している。斯かる構成によって、ディスクブレーキローター２２は、同サイズの一般的なディスクブレーキに比して、２倍の制動力を有している。
【００１４】
前記ディスク支持部材３０は、径方向中央又は内側取付部３６と、外側取付部を形成する６つの取付アーム３８とを有している。好ましくは、ディスク支持部材３０は、スチール，チタニウム又はアルミニウム等の剛性材料で形成される一個の単一部材とされる。内側取付部３６は、ディスク支持部材３０をホイール１８のハブに固定する為のボルト４２を受け入れる６個の取付穴４０を有している。斯かる構成に代えて、内側取付部３６に、ホイール１８のハブに固定する為のスプラインを備えることも可能である。何れにせよ、ディスク支持部材３０は、ホイール１８と共に回転するように構成される。
【００１５】
ディスク支持部材３０の取付アーム３８のそれぞれには、ディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂを浮動状態で連結させる為の支持ピン３４を受け入れる装着孔４３が備えられている。即ち、ディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂは、該両ブレーキ部材３２ａ，３２ｂが支持ピン３４上で軸線方向に移動し得るように、ディスク支持部材３０に連結される。好ましくは、ディスクブレーキ部材３２ａの軸方向移動量は約3.10mm±0.1mm、ディスクブレーキ部材３２ｂの軸方向移動量は約1.00mm±0.1mmとすることができる。
【００１６】
図１２に詳細に示すように、ディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂは、好ましくは、複数の通気孔４４と支持ピン３４受入用の６つの連結孔４６とを有するリング形状の部材とされる。好ましくは、ディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂは同一形状とすることができ、ローターに使用されるものとして業界で公知の剛性材料で形成される。ディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂは、該両ブレーキ部材３２ａ，３２ｂの内面がディスク支持部材３０から軸方向に離間されるように、該ディスク支持部材３０を挟んで両側に配設される。ディスクブレーキ部材３２ａは、支持部材３０に対して軸方向へ移動し得るように、支持ピン３４によって該支持部材３０に連結されている。ディスクブレーキ部材３２ｂも、支持部材３０に対して軸方向へ移動し得るように、支持ピン３４によって該支持部材３０に連結されている。好ましくは、ディスクブレーキ部材３２ａは、ディスクブレーキ部材３２ｂに比して、少なくとも約３倍の距離、軸方向に移動可能とされる。即ち、本実施の形態においては、ディスクブレーキ部材３２ａは第１摩擦部材７４ａを介してピストンユニット７２によって押動され、ディスクブレーキ部材３２ｂは第１摩擦部材７４ａ，ディスクブレーキ部材３２ａ，第２摩擦部材７４ｂ及び第３摩擦部材７４ｃを介して押動されるようになっている。従って、ディスクブレーキ部材３２ａはディスクブレーキ部材３２ｂよりも軸方向に沿って長い距離移動する必要があり、好ましくは、少なくとも３倍とされる。
【００１７】
図１３〜図１６に示すように、支持ピン３４のそれぞれは、ディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂを支持し得るように、互いに固定連結されるフロートボス４８及びフロートワッシャ５０を有している。より詳しくは、ディスクブレーキ部材３２ａはフロートボス４８に軸方向移動可能に支持され、他方、ディスクブレーキ部材３２ｂはフロートワッシャ５０に軸方向移動可能に支持される。
【００１８】
フロートボス４８は、管状軸部５２と該軸部５２の一端部に形成された環状停止フランジ５４とを有する管状ピンとされている。該フロートボス４８は、好ましくは、剛性金属材料で形成される。前記軸部５２は、第１円筒部５２ａと、第２円筒部５２ｂと、該第１円筒部５２ａ及び第２円筒部５２ｂ間に設けられた当接面５２ｃとを有する段付形状とされている。第１円筒部５２ａは環状停止フランジ５４に隣接しており、第２円筒部５２ｂより大径とされている。フロートボス４８の第１円筒部５２ａはディスクブレーキ部材３２ａの連結孔４６に受け入れられる大きさとされている。又、フロートボス４８の第２円筒部５２ｂは取付アーム３８の装着孔４３に受け入れられる大きさとされている。斯かる構成により、ディスクブレーキ部材３２ａは、停止フランジ５４と取付アーム３８との間において軸方向に移動し得るようになっている。該ディスクブレーキ部材３２ａが停止フランジ５４に当接した場合、軸方向スペースＡはディスクブレーキ部材３２ａと取付アーム３８との間によって定義される。
【００１９】
フロートワッシャ５０は、管状軸部６０と該軸部６０の一端部に形成された環状停止フランジ６２とを有する管状ピンとされている。該フロートワッシャ５０は、好ましくは、剛性金属材料で形成される。前記フロートワッシャ５０の管状軸部６０は、ディスク支持部材３０の取付アーム３８がフロートボス４８の当接面５２ｃとフロートワッシャ５０との間に位置する状態で、該フロートボス４８の第２円筒部５２ｂに装着される。軸部６０は、第２円筒部５２ｂの外径と略等しいか若しくは若干大きい直径の内部孔６０ａが形成された筒状とされている。より詳しくは、各フロートボス４８の第２円筒部５２ｂの先端部は、該第２円筒部５２ｂがフロートワッシャ５０の内部孔６０ａ内に挿通された後に、変形され、これにより、フロートワッシャ５０がフロートボス４８から外れないようになっている。軸部６０は、フロートボス４８の第１円筒部５２ａの外径と等しい外径とされている。即ち、軸部６０はディスクブレーキ部材３２ｂの連結孔４６に受け入れられる外径を有しており、且つ、第２円筒部５２ｂ上に位置している。ディスクブレーキ部材３２ｂは、停止フランジ６２と取付アーム３８との間において、軸方向に沿って移動し得るようになっている。ディスクブレーキ部材３２ｂが取付アーム３８に当接している場合、軸方向スペースＢはディスクブレーキ部材３２ｂと停止フランジ６２との間によって定義される。前記軸方向スペースＡは、好ましくは、軸方向スペースＢの少なくとも約３倍とされる。
【００２０】
図４〜図８を再度参照しつつ、ディスクブレーキキャリパー２０について詳細に説明する。ディスクブレーキキャリパー２０は、ホイール１８及びローター２２の回転を停止させる締め付け力を与えるべく、ローター２２の近傍においてフォーク１６に固定連結されている。ディスクブレーキキャリパー２０は、ハウジング７０と、ピストンユニット７２と、一対のボルト７６によって前記ハウジング７０に装着される４つの摩擦部材又はパッド７４ａ，７４ｂ，７４ｃ，７４ｄとを備えている。ディスクブレーキキャリパー２０は、制動力を上昇させる為に浮動摩擦部材７４ｂ，７４ｃが追加されている点を除き、基本的には一般的なディスクブレーキキャリパーと同様に作動するシングルピストンキャリパーである。従って、ディスクブレーキキャリパー２０の一般的な構成については、詳細には説明又は図示しない。
【００２１】
図１及び図７に示すように、ハウジング７０は、ディスクブレーキキャリパー２０をボルト７８によって自転車１０のフォーク１６に締結する為の装着部材を形成する一対の外方延在フランジ７０ａを有している。ハウジング７０は、さらに、ピストンユニット７２を摺動自在に収容する円筒状ピストンリセス７０ｂと、ブレーキ流体ホース２６を介してブレーキ操作機構２４と円筒状ピストンリセス７０ｂとを流体的に接続する内部流体作動路７０ｃとを備えている。従って、ブレーキ流体ホース２６からのブレーキ流体は、内部流体作動路７０ｃを通ってピストンリセス７０ｂ内に流入し、該ピストンリセス７０ｂ内を昇圧する。該ピストンリセス７０ｂ内の圧力が上昇すると、ピストンユニット７２は該ピストンリセス７０ｂから外方へ摺動する。これにより、第１摩擦部材７４ａはピストンユニット７２によって押動され、第１ディスクブレーキ部材３２ａを押動する。斯かる第１ディスクブレーキ部材３２ａの動作によって、該第１ディスクブレーキ部材３２ａは浮動型摩擦部材７４ｂ，７４ｃを押動する。そして、該浮動型摩擦部材７４ｂ，７４ｃは、第２摩擦部材３２ｂを第４摩擦部材７４ｄへ向けて押動する。
【００２２】
前記ハウジング７０は、内部流体作動路７０ｃの外端部に流体的に連通された第１ネジ付開口７０ｅを有している。該開口７０ｅは、油圧ライン又はブレーキ流体ホース２６が連結され得るように形成されている。前記ハウジング７０には、さらに、ブリードニップル７１が螺入される第２ネジ付開口７０ｆが形成されている。第２ネジ付開口７０ｆはピストンリセス７０ｂに流体的に連通されており、過剰空気が作動システムから排除され得るようになっている。内部流体作動路７０ｃは、ピストンユニット７２を作動させる作動流体又は圧力流体を受け入れるべく、前述のように、ピストンリセス７０ｂに連通されている。
【００２３】
図６及び図８に示すように、一対のボルト７６が、全ての摩擦部材７４ａ，７４ｂ，７４ｃ，７４ｄをハウジング７０に移動自在に連結させている。好ましくは、摩擦部材７４ａ，７４ｂ，７４ｃ，７４ｄは全て、実質的に同一構成を有するものとされる。即ち、摩擦部材７４ｂ，７４ｃ，７４ｄは、図１７に示す摩擦部材７４ａと実質的に同一とされる。摩擦部材７４ａ〜７４ｄのそれぞれは、ボルト７６が挿通さえる一対の孔７７を有しており、前記ボルト７６に摺動自在に支持される。前記ピストンユニット７２は、ディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂを摩擦係合させるべく、摩擦部材７４ａ〜７４ｃを摩擦部材７２ｄへ向かって移動させる。中間に位置する中間摩擦部材７４ｂ，７４ｃは、摩擦部材７４ａと７４ｄとの間において、浮動状態とされている。なお、図示の形態に代えて、端部に位置する摩擦部材７４ａ，７４ｄの一方がハウジング７０に固定され、且つ、ピストンユニットが端部摩擦部材の他方及び中間摩擦部材を前記固定された摩擦部材に向かって移動させるように構成し得ることは、本開示から当業者にとって明らかであろう。
【００２４】
図４〜図８に示すように、ピストンユニット７２は、好ましくは、シングルピストン７９と、前記ハウジング７０と該ピストン７９との間に配設されたピストンシール７９ａとを有している。ピストン７９は摩擦部材７４と係合し、該摩擦部材７４ａを第１ディスク部材３２ａへ向かって押動する。該ピストン７９は、開放位置とブレーキ位置との間で移動し得るように、ピストンリセス７０ｂ内に摺動自在に収容されている。即ち、ピストン７９が開放位置からブレーキ位置へ移動すると、摩擦パッド７４ａ〜７４ｄも開放位置からブレーキ位置へ移動する。ブレーキ位置において、摩擦部材７４ａ〜７４ｄは、ディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂと摩擦係合し、ディスクブレーキローター２２及びホイール１８の回転を停止させる。
【００２５】
他方、開放位置においては、摩擦部材７４ａ〜７４ｄはディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂから所定距離Ｓだけ離間され、ディスクブレーキローター２２が自由に回転することを許容する。従って、ホイール１８も同様に自由に回転する。
【００２６】
ピストン７９及び摩擦部材７４ａ〜７４ｄは、作動又は油圧流体が該ピストン７９に作用することによって、開放位置からブレーキ位置へ移動する。より詳しくは、ブレーキ操作機構２４が操作されると、作動流体が昇圧してピストン７９及び摩擦部材７４ａを摩擦部材７４ｄへ向かって押動させ、これにより、ディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂと該両ブレーキ部材間に位置する摩擦部材７４ｂ，７４ｃとが狭圧される。
【００２７】
ここで図１及び図３を参照しつつ、ブレーキ操作機構２４についてより詳細に説明する。ブレーキ操作機構２４は、ディスクブレーキローターに強制的な把持動作を作用させ、これにより、フロントホイール１８の回転を停止させるべく、ディスクブレーキキャリパー２０を作動させるように構成されている。該ブレーキ操作機構２４は、ブレーキレバー８０と、油圧又はマスターシリンダー８１と、油圧又はマスターピストン８２と、作動流体リザーバ８３とを備えている。
【００２８】
好ましくは、ブレーキ操作機構２４は、ハンドルバー１５に装着されるシングルユニットとされる。特に、ブレーキレバー８０は、装着部８４及びレバー部８５を有している。前記装着部８４は、通常の方法によってハンドルバー１５に締結されるように構成されている。該装着部８４は、マスターシリンダー８１，マスターピストン８２及び作動流体リザーバ８３が全て該装着部８４に支持されるように、マスターシリンダー８１と一体形成される。レバー部８５は、開放位置とブレーキ位置との間で移動し得るように、装着部８４に回動自在に連結されている。通常状態において、前記レバー部８５は、戻しバネ（図示せず）等の一般的な方法によって、開放位置に維持される。
【００２９】
マスターピストン８２は、一般的な方法によってマスターシリンダー８１内に摺動自在に収容されている。より詳しくは、作動流体リザーバ８３は、マスターシリンダー８１の内部孔に作動流体を供給すべく、該内部孔に流体的に連通された状態で、マスターシリンダー８１に装着されている。マスターピストン８２は、マスターシリンダー８１内において軸方向へ摺動し得るように、一端部がレバー部８５に連結されている。従って、レバー部８５を移動させると、マスターピストン８２がマスターシリンダー８１内において軸方向へ摺動するようになっている。斯かるマスターピストン８２の動きによって、ディスクブレーキキャリパー２０に接続された油圧ライン又はブレーキ流体ホース２６を通る流体圧力が上昇する。そして、昇圧された作動流体が、ピストン７９及び摩擦部材７４ａ〜７４ｄをディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂへ係合させ、これにより、ホイール１８の回転が停止する。
【００３０】
実施の形態２
図１８を参照すると、本発明の実施の形態２に係るディスクブレーキアッセンブリ１１２が図示されている。該ディスクブレーキアッセンブリ１１２は、ディスクブレーキキャリパー１２０及びディスクブレーキローター１２２を有している。ディスクブレーキアッセンブリ１１２は、前記実施の形態１におけるディスクブレーキアッセンブリ１２と実質的に同一方法によって、自転車１０に装着されるように構成されている。より詳しくは、ディスクブレーキキャリパー１２０は、油圧ライン又はホース２６を介してブレーキ操作機構２４（図３参照）に接続されている。該ディスクブレーキキャリパー１２０は前記ディスクブレーキキャリパー２０と同一であり、従って、ここでは詳細には説明又は図示しない。ディスクブレーキローター１２２は、前記実施の形態１における支持ピン３４が支持ピン１３４に置換されている点を除き、前記実施の形態１におけるディスクブレーキローター２２と実質的に同一である。従って、ディスクブレーキローター１２２に関しては、支持ピン１３４についてのみ詳細に説明又は図示する。さらに、前記実施の形態１におけるディスクブレーキキャリパー２０及びディスクブレーキローター２２の説明が、ディスクブレーキキャリパー１２０及びディスクブレーキローター１２２におけるディスクブレーキキャリパー２０及びディスクブレーキローター２２と同一又は相当する構成部分に関して適用され得ることは、本開示から当業者にとって明らかであろう。
【００３１】
支持ピン１３４は、浮動型ボス１４８と、該浮動型ボス１４８に固定される一対のスナップワッシャ１４９，１５０とを備えている。詳しくは、浮動型ボス１４８は、スナップワッシャ１４９，１５０を受け入れる一対の環状リセスが形成された筒状軸部１５２を備えている。該筒状軸部の基端部には、停止フランジ１５４が設けられている。該停止フランジ１５４及びスナップワッシャ１４９が、第１ディスクブレーキ部材１３２ａを受け入れる為のスペースを形成する。言い換えると、第１ディスクブレーキ部材１３２ａは、停止フランジ１５４とスナップワッシャ１４９との間において軸線方向に移動可能となっている。同様に、ブレーキディスク部材１３２ｂは、スナップワッシャ１４９，１５０間において軸線方向に移動可能となっている。第１ディスクブレーキ部材１３２ａとスナップワッシャ１４９との間によって定義されるスペースＡは、好ましくは、ディスクブレーキ部材１３２ｂとスナップワッシャ１５０との間によって定義されるスペースＢの３倍の距離を有するものとされる。
【００３２】
前記実施の形態１におけると同様、ピストン１７９は、流体圧力によって、ピストンリセス１７０ａ内を軸線方向に沿って移動し、摩擦部材１７４ａ〜１７４ｃ及びディスクブレーキ部材３２ａ，３２ｂを摩擦部材１７４ｂへ向かって押動する。
【００３３】
本発明を説明する為に数種の実施の形態のみを選択したが、特許請求の範囲によって画される発明の範囲を逸脱することなく、種々の変化及び変更が可能であることは、本開示から当業者にとって明らかであろう。さらに、本発明に係る前記実施の形態の説明は説明の為のみに備えられたものであり、特許請求の範囲及びその均等範囲によって画される発明を限定するものではない。
【００３４】
【発明の効果】
本発明に係るディスクブレーキローター及びディスクブレーキアッセンブリによれば、一対のディスクブレーキ部材をシングルピストンユニットで押動し得るように構成したので、十分な制動力を維持しつつ、コンパクト化及び軽量化を図ることができ、製造コストの低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は、本発明の実施の形態１に係るディスクブレーキアッセンブリが連結された自転車の前部分の側面図である。
【図２】図２は、図１に示す自転車のフロントフォークに連結された，本発明の実施の形態１に係る自転車ディスクブレーキアッセンブリの拡大部分側面図である。
【図３】図３は、図１示す自転車のハンドルバーに装着された，本発明の実施の形態１に従ったブレーキ操作機構の平面図である。
【図４】図４は、図１及び図２に示す自転車ディスクブレーキアッセンブリにおけるディスクブレーキキャリパーの部分正面図であり、開放位置のピストンユニットを示す為に一部を切り欠いた状態で示している。
【図５】図５は、図１及び図２に示す自転車ディスクブレーキアッセンブリにおけるディスクブレーキキャリパーの部分正面図であり、ブレーキ位置のピストンユニットを示す為に一部を切り欠いた状態で示している。
【図６】図６は、図１及び図２に示す自転車ディスクブレーキアッセンブリにおけるディスクブレーキキャリパーの拡大平面図である。
【図７】図７は、図１及び図２に示す自転車ディスクブレーキアッセンブリにおけるディスクブレーキキャリパーとディスクブレーキローターの一部とを示す拡大側面図である。
【図８】図８は、図７における8-8線に沿って視た図であり、図１及び図２に示す自転車ディスクブレーキアッセンブリにおけるディスクブレーキキャリパーとディスクブレーキローターの一部との分解断面図である。
【図９】図９は、図１及び図２に示すディスクブレーキアッセンブリにおけるディスクブレーキローターの端面図である。
【図１０】図１０は、図１及び図２に示すディスクブレーキアッセンブリにおけるディスクブレーキローターの分解断面図である。
【図１１】図１１は、図１及び図２に示すディスクブレーキアッセンブリにおけるディスク支持部材の側面図である。
【図１２】図１２は、図１及び図２に示すディスクブレーキアッセンブリにおける一のディスクブレーキローターの側面図である。
【図１３】図１３は、図１及び図２に示すディスクブレーキアッセンブリにおけるディスクブレーキローターのフロートピン又はボスの拡大側面図である。
【図１４】図１４は、図１３に示すフロートピン又はボスの端面図である。
【図１５】図１５は、図１及び図２に示すディスクブレーキアッセンブリにおけるディスクブレーキローターのフロートワッシャの拡大側面図である。
【図１６】図１６は、図１５に示すフロートワッシャの端面図である。
【図１７】図１７は、図１及び図２に示すディスクブレーキアッセンブリのキャリパーにおける一の摩擦部材の側面図である。
【図１８】図１８は、本発明の実施の形態２に従ったディスクブレーキキャリパー及びディスクブレーキローターの一部の部分正面図であり、一部を切り欠いた状態で示している。
【符号の説明】
３０ ディスク支持部材
３２ａ 第１ブレーキディスク部材
３２ｂ 第２ブレーキディスク部材
３４ 支持ピン
３６ 内側取付部
３８ 外側取付部
７０ キャリパーハウジング
７２ ピストンユニット
７４ａ 第１端部摩擦部材
７４ｄ 第２端部摩擦部材
７４ｃ，７４ｄ 中間摩擦部材

Claims (10)

1. 内側取付部及び外側取付部を有し、回転部材と共に回転軸回りに回転し得るように構成された支持部材と、
   前記支持部材に対して第１移動量だけ回転軸方向に移動し得るように前記外側取付部に移動自在に連結された第１ブレーキディスク部材と、
   前記支持部材に対して前記第１移動量とは異なる第２移動量だけ回転軸方向に移動し得るように前記外側取付部に移動自在に連結された第２ブレーキディスク部材とを備え、
   前記第２ブレーキディスク部材は、前記第１ブレーキディスク部材に対して回転軸方向に離間され且つ略平行に配設されており、
   前記第１ディスクブレーキ部材は前記支持部材の軸方向第１面側に配設され、前記第２ディスク部材は前記支持部材の第１面側とは反対側の第２面側に配設されており、
   前記支持部材は、前記第１及び第２ディスクブレーキ部材を該支持部材の外側取付部に連結する複数の支持ピンを有し、
   前記支持ピンは第１及び第２当接部を備えており、
   前記第１当接部は、前記第１移動量に応じた第１距離だけ前記支持部材の軸方向第１面から離間され、
   前記第２当接部は、前記第２移動量に応じた第２距離だけ前記支持部材の軸方向第２面側から離間されていることを特徴とするディスクブレーキローター。
2. 前記第１移動量は、前記第２移動量の３倍であることを特徴とする請求項１に記載のディスクブレーキローター。
3. 前記支持ピンは、一端部に第１当接部を備えたフロートボスと、第２当接部を備えたフロートワッシャとを有し、
   前記フロートボス及びフロートワッシャは、前記支持部材に連結されていることを特徴とする請求項１に記載のディスクブレーキローター。
4. 前記フロートボス及びフロートワッシャは、それぞれ、前記支持部材を挟んで軸方向第１面側及び第２面側に配設されていることを特徴とする請求項３に記載のディスクブレーキローター。
5. 前記フロートワッシャは、対応するフロートボスの一部を受け入れる軸線孔を有していることを特徴とする請求項３又は４に記載のディスクブレーキローター。
6. 外側取付部及び内側取付部を有し、中央回転軸回りに回転部材と共に回転し得るように該回転部材に連結される支持部材と、
   前記支持部材に対して第１移動量だけ回転軸方向に移動し得るように前記外側取付部に移動自在に連結された第１ディスクブレーキ部材と、
   前記支持部材に対して前記第１移動量とは異なる第２移動量だけ回転軸方向に移動し得るように前記外側取付部に移動自在に連結された第２ブレーキディスク部材であって、前記第１ブレーキディスク部材に対して回転軸方向に離間され且つ略平行に配設された第２ブレーキディスク部材と、
   前記第１及び第２ブレーキディスク部材に対して制動力を付加するピストンユニットが開放位置とブレーキ位置との間で移動し得るように移動自在に連結されたキャリパーハウジングと、
   前記ピストンユニットによって開放位置とブレーキ位置との間で移動されるように、前記キャリパーハウジングに連結された第１端部摩擦部材と、
   前記第１端部摩擦部材に対して略平行となるように、前記キャリパーハウジングに連結された第２端部摩擦部材と、
   前記第１端部摩擦部材と第２端部摩擦部材との間において前記キャリパーハウジングに移動自在に連結された中間摩擦部材とを備えており、
   前記第１ディスクブレーキ部材は前記支持部材の軸方向第１面側に配設され、前記第２ディスク部材は前記支持部材の第１面側とは反対側の第２面側に配設されており、
   前記支持部材は、前記第１及び第２ディスクブレーキ部材を該支持部材の外側取付部に連結する複数の支持ピンを有し、
   前記支持ピンは第１及び第２当接部を備えており、
   前記第１当接部は、前記第１移動量に応じた第１距離だけ前記支持部材の軸方向第１面から離間され、
   前記第２当接部は、前記第２移動量に応じた第２距離だけ前記支持部材の軸方向第２面側から離間されていることを特徴とするディスクブレーキアッセンブリ。
7. 前記第１移動量は、前記第２移動量の３倍であることを特徴とする請求項６に記載のディスクブレーキアッセンブリ。
8. 前記支持ピンは、一端部に第１当接部を備えたフロートボスと、第２当接部を備えたフロートワッシャとを有し、
   前記フロートボス及びフロートワッシャは、前記支持部材に連結されていることを特徴とする請求項６に記載のディスクブレーキアッセンブリ。
9. 前記フロートボス及びフロートワッシャは、それぞれ、前記支持部材を挟んで軸方向第１面側及び第２面側に配設されていることを特徴とする請求項８に記載のディスクブレーキアッセンブリ。
10. 前記フロートワッシャは、対応するフロートボスの一部を受け入れる軸線孔を有していることを特徴とする請求項８又は９に記載のディスクブレーキアッセンブリ。

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