JP3636474B2 - 正常神経上皮前駆細胞 - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明は、細胞複製、拡張、及びin vitroでの長時間培養が可能である一方、in vitro及びin vivoでの分化能力を維持する正常神経上皮前駆細胞を単離する方法に関する。本発明の型の正常神経上皮前駆細胞の単離方法は、実質的に均質の非−形質転換、非−腫瘍形成性の神経上皮前駆細胞群をもたらす。従って、本発明は、哺乳類起源の正常神経上皮前駆細胞系にも関する。本発明の単離された神経上皮前駆細胞は、ここに述べる方法を用いた培地中で維持し拡張することができる。
従来技術の説明
哺乳類中枢神経系は、神経管内の神経上皮細胞から発生的に誘導される(Murphy,M.,等,J.Neurosci.Res.(1990)25:463−475;一般的には、"Developmental Biology"Fourth Edition,Gilbert,S.,(1994)Sinauer Associates,Inc.;"Post Implantation Mammalian Embryos:A Practical Approach",Copp,A.J.,及びCockroft,D.L.,eds.(1992)Oxford University Press,New York参照)。in vivoの神経上皮細胞は、未だ特定されていない環境因子に応答して成長及び異なる型の神経及びグリア細胞へ分化する。in vitroで特定の神経前駆細胞を単離し維持する可能性は、これらの因子を決定するのに非常に重要である。さらに、発生の胚初期段階における非−腫瘍形成性神経細胞型を単離及び拡張する可能性は、大脳内移植及び遺伝子転写を含む細胞ベースの治療の成功にとって決定的である(Gage等,(1991)TINS,14:8328−333;Mucke及びRockenstein,(1993)Transgene,1:3−9;Jiao等,(1992)Brain Res.575:143−147)。
広く言われているように、哺乳類神経系の細胞の維持及び特性化のための2つの培地がある(Bottenstein,J.E.,"growth and Differebtiation of Neural Cells in Defined Media",Cell Culture in the Neurosciences,Bottenstein及びSato,eds.,pp 3−43[1985])。第1の培地は、組織外植片及び分散された細胞または組織の有限の生存時間の間分散された細胞または外植された組織のいずれかの培地を含む。培地において数日後、細胞は一般的に種々の型のニューロン細胞に同時に分化する(Cattaneo及びMackey(1990)Nature 347:762−765)。分離した細胞培地の第1の利点は、実際にin vivo細胞型の代表として単一の細胞型が研究できることである("Developmental Biology of Cultured Nerve,Muscle,and Glia",David Shubert,John Wiley & sons,Inc.(1984))。第1の培地を用いて、細胞の不均質のサンプルが単離でき、均質な表現型の代表的な細胞群が達成される。外植された組織から誘導される多くの細胞群は、これまでは、おそらくin vitro加齢によって(Orgel,L.E.(1973)Nature,243:441−445)または適当でない培養条件によって分割できる回数に制限されていた。
連続的な細胞培養は、発生哺乳類中枢神経系の細胞に対するin vitro細胞培養の第2の変形例である(Bottenstein,J.(1985)同上)。連続的細胞培養は、長時間培養及び貯蔵の利点を提供する。神経上皮細胞の増殖及び分化はin vivoでプログラムされた過程であり、in vitroで培養される神経上皮細胞は限られた***の後に同時に分化する傾向があるので、神経上皮細胞の長時間培養は、従来はウイルス又はオンコジーン形質転換に頼っていた。
幾つかのグループが、レトロウイルス遺伝子転写を通して多型潜在性の神経細胞系の確立を報告している(snyder,等,Cell(1992)68:33−51;Ryder,等,J.Neurobiol.(1990)21:356−375;Geller及びDubois−Dalq,(1988)J.Cell Biol.107:1977−1986;Bartlett,(1988)Proc.Natl.Aced.Sci.USA 85:3255−3259;Birren及びAnderson(1990)Neuron 4:189−201;Evrad等,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:3062−3066;及びFrederikson,等,(1988)Neuron,1:439−448)。オンコジーンは一般的に、v−myc,SV40 T抗原,及びneuを含む発生神経系から細胞を確立するために用いられる(Frederiksen,等,(1988)Neuron,1:439−448;Gao及びHatten(1994)Development,120:1059−1070)。細胞系は、lacZ等の外因性遺伝子の発現を含む遺伝子型交替によって同定される(Snyder等,(1992)同上)。形質転換した細胞系は、発生の種々の段階における胚細胞から確立される。Snyder等は、胚13日齢外胚葉誘導大脳細胞からのv−myc−不朽化細胞を確立した(Snyder等,(1992)同上)。
他者が神経分化の研究に胚癌腫(EC)細胞を用いたのは、EC細胞が多量に得られ、種々の表現型の細胞に分化できるからである(Edde,B.及びDarmon M.,"Neural Differentiation of Pluripotent Embryonal Carcinoma Cells."Cell Culture in the Neurosciences,Bottenstein及びSato,eds.,237−285([1985])。
ウイルストランスフェクション及びオンコジーン形質転換は、細胞分化プログラムを分化の特定の段階で停止させることができる(Frederikson,等,(1988)Neuron 1:439−448)。これらの方法は、神経前駆細胞特性の変化もたらす。SV40巨大T−抗原オンコジーンは、顆粒細胞同一性を滅亡させる(Gao及びHatten,(1994)Development 120:1059−1070)。それらの形質転換された表現型及びそれらのin vivoでの侵襲的成長能力により、これらの細胞は、細胞ベース治療の候補にはなりにくい(Jiao等,(1992)Brain Res.143−147)。
最近、神経上皮細胞分化を停止することができ、適当な成長因子を添加した血清を含まない媒質中で形質転換していないネズミの神経前駆細胞を無限に増殖させることができることを示唆する証拠がある(Loo等,(1987)Science 236:200−202;Loo等,(1991)J.Neurosci.Res.28:101−109)。従来の血清添加媒質中で培養されたマウス胚とは異なり、これらの細胞は遺伝子的に変化した細胞系を導く増殖能力を失わない(Loo等,(1987)Science,236:200−202)。研究者等は、表皮誘導成長因子(EGF)の絶対要件を示す16日齢の細胞系を確立した(Loo等,(1989)J.Cell.Physiol.139:484−491)。不朽化したグリア前駆細胞系(SFME)が、EGFの存在下で確立されている(Loo等,(1987)同上)。細胞は、繊維芽細胞成長因子(FGF)の絶対要件を示す10日齢マウス胚から単離された(Murphy,等,(1994)J.Neurosci.Res.25:463−475)。
マウスSFMEに類似する血清無しの胚細胞は、ヒト胚脳から、発生の類似の段階においてEGFを用いて導くことが出来る(Loo等,J.Neurosci.Res.28:101−109)。しかしながら、20−24週齢ヒト胚から導かれたこれらの細胞系は、約70個体群の倍増の後、増殖を終了する(Loo等,(1991)同上)。EGF反応性細胞も、成人哺乳類中枢神経系で同定されている(Reynolds及びWeiss,Science(1992)225:1707−1710)。EGFは、成人マウスからの側室(subventricilar)神経祖先細胞及び網膜神経前駆細胞の無限の成長を支持する(Reynolds及びWeis(1992)同上)。
塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)が、ある種のCNS個体群の有系***促進物質になりうることが示されている(Murphy等,(1990)同上;Cattaneo及びMcKay(1990)同上;Ghosh及びGreengerg(1995)Neuron 15:89−103;及びVicario−Abejon等,(1995)Neuron 15:105−114)。また、bFGF及び神経成長因子(NGF)が協力して、胚線状(striatal)ニューロンの増殖及び分化を促進することもわかっている(Cattaneo及びMcKay(1990)同上)。しかし、EGFもFGFも、発生の初期段階、例えば胚9日齢ラット神経管から培養された神経上皮細胞を支持しない。
脳内外植及び遺伝子転写などの細胞ベース治療のための良好な細胞の候補は、最適には、遺伝子修飾を含まず入手しやすいものである。さらに、良好な候補は、延長されたin vivoの生存及び非−侵襲成長を示す(gage等,(1991)TINS 14:328−333)。近年、不朽化神経前駆細胞が、脳におけるNGFの局所輸送のキャリアとして用いられた(Martinez−Serrono(1995)Neuron 15:473−484)。NGF分泌細胞は、トランスジーンを発現し、移植されたラットにおいて反コリン作用性の神経萎縮に十分なレベルの生物活性神経成長因子を分泌した(Martinez−Serrono等,(1995)同上)。これらの細胞は、移植後10週間まで生存可能であり、モデルにおける経年性認識障害に反する。他のグループは、ヒト胎児中脳組織をパーキンソン病患者の有尾核に移植した(Spencer等,(1992)new England J.Med.,327:1541−1548)。脳内外植は、繊維芽細胞(Gage,等(1991)Trends Neurosci.14:328−333;Gage及びFisher,等,(1991)Neuron 6:1−12;Fisher(1994)Neurochem.Int.,25:47−52)及び主要筋細胞(Jiao等,(1992)575:143−147)などの非−神経細胞型で示され、腫瘍形成およびヘルパーウイルスの混入の可能性を部分的に回避し、in vivoの不朽化主要ニューロン細胞に刺激を与える。
他者は、ラットモデルにおけるヒト神経成長因子トランスジーン産物の輸送に遺伝子的に変化したポリマーカプセル化細胞を用いた(Winn等,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.91:2324−2328;Hoffman,等,(1993)Experimental Neurology 122:100−106;Maysinger等,(1994)Neurochem.Int.,24:495−503)。ポリマーカプセル化は、高分子の拡散を可能にし、滋養分の露出を可能にする(Winn等,(1994)同上)。
Snyder等は、初期胚前駆細胞を植え付け、マウス脳の成長に参加させることができることを示した(Snyder等,(1992)Cell 68:33−51)。
従って、細胞ベースの治療を含む様々な目的のために、複製可能であり、なおかつin vitro及びin vivoの両方で拡張可能な、発生の初期胚段階からの正常な神経上皮細胞に対する要求が存在する。
発明の概要
ここに、神経前駆細胞型が、胚神経組織から単離することができ、それはin vitroでの連続細胞培養が可能であることが見出された。胚神経組織からの血清無し培地で単離される細胞型は、表皮成長因子に反応せず、ウイルス性トランスフェクションまたはオンコジーン形質転換による表現型異常を示さず、そして、成長危機、老化、または自発的分化を受けること無しに連続培養を維持する。この細胞型は、中間径フィラメントであるネスチン(nestin)を発現する神経上皮前駆細胞(NEP細胞)と同定された。よって本発明は、発育している哺乳類胚から正常神経上皮前駆細胞型を単離する方法を提供する。
本発明によれば、ラットの胚9日齢に相当する発生のゼロ−体節(zero−somite)段階において、発育中の哺乳類中枢神経系からの神経組織が、胚シュワン細胞又は胚シュワン細胞条件の媒質の存在下で培養されると、神経上皮前駆細胞型が単離され、それは血清を含まない媒質中の連続培地で維持することができる。従って、本発明は、正常神経上皮前駆細胞型の単離方法を提供し、この方法は、発生のゼロ−体節段階における哺乳類胚からの神経組織を胚シュワン細胞または胚シュワン細胞条件の媒質の存在下で培養し、次いで、正常神経上皮前駆細胞を単離する過程を含む。
本発明は、さらに、本発明の方法で単離した正常神経上皮前駆細胞も提供する。本発明の神経上皮細胞系は哺乳類起源のものである。本発明の一態様によれば、発生の9日齢におけるラット胚からの神経管が本発明の方法に従って培養される。本発明のこの態様によると、ラット起源の神経上皮前駆細胞系が得られる。本発明の好ましい態様では、発生の等しい段階におけるヒト胚からの胚組織が本発明の方法に従って培養される。発明のこの態様によれば、正常ヒト神経上皮前駆細胞が得られる。
本発明は、さらに、本発明の細胞系の長期間の培養、拡張、及び維持のための方法も提供する。本発明の方法によれば、正常神経上皮前駆細胞型が長期間培地中に維持される。好ましくは、細胞は、ラミニンで被覆したプレート、又はラミニンを含む細胞外マトリクス上で培養する。
さらに本発明は、本発明の正常神経上皮前駆細胞を含む組成物にも関する。本発明の組成物は、製薬的に許容される媒体中に調製される。製薬的に許容される媒体の一つの実施態様は、等張食塩水である。さらなる実施態様では、固体又は半固体、ゼラチン質、又は粘性支持媒質が、製薬的に許容される媒体である。好ましいゼラチン質媒体は、コラーゲン及びヒドロゲルを含み、任意にラミニンなどの関係する細胞外マトリクスタンパク質を添加してもよく、適当な成長因子を含んでもよい。このような組成物は、末梢又は中枢神経系のいずれかへの移植に適している。
【図面の簡単な説明】
図1A−1F。ここに述べる方法で単離した神経上皮前駆(NEP)細胞は、種々の因子の存在下または不存在下で培養した。図1Aでは、細胞をウシ下垂体抽出物(2μg/ml)、フォルスコリン(forskolin)(5μM)、インシュリン(10μg/ml)及びトランスフェリン(10μg/ml)を添加したF12/DME中(レーン4F)、又は、同じ培地でi)ウシ下垂体抽出物を除いたもの(レーン−BPE)、ii)フォルスコリンを除いたもの(レーン−For)、iii)及びインシュリンを除いたもの(レーン−Ins)で成長させた。図1B−1Eは、ラミニン被覆したウェル中で、ウシ下垂体抽出物(BPE)、インシュリン、ヘレグリン(1nM)、ビタミンE(5μg/ml)、プロゲステロン(3nM)、トランスフェリン(10μg/ml)、及びフォルスコリンを含むF12/DME中でのNEP細胞の培養の結果を示し、フォルスコリン及びウシ下垂体抽出物(図1B)、インシュリン(図1C)インシュリン様成長因子I及びII(図1D)、神経成長因子及び表皮成長因子(図1E)を増加させたときのものである。図1FのNEP細胞は、ウシ下垂体抽出物(BPE)(2μg/ml)、インシュリン(10μl/ml)、ヘレグリン(1nM)、ビタミンE(5μg/ml)、プロゲステロン(3nM)、トランスフェリン(10μg/ml)、及びフォルスコリン(5μg/ml)を含むF12/DME中で、ラミニン被覆プレート上で、血小板誘導成長因子(PDGF)、インターロイキン1B(IL−1B)、インターロイキン11(IL−11)、ヒト肝細胞成長因子(hHGF)及びニュートロフィン3(NT−3)の存在下又は不存在下で培養した。
図2A−図2B。NEP細胞は、インシュリン、トランスフェリン、ウシ下垂体抽出物、フォルスコリンプロゲステロン、及びビタミンEを含むDME/F12中で、成長させ、記載した濃度のヘレグリンまたはトランスフォーミング増殖因子β(図2A)または酸性又は塩基性繊維芽細胞成長因子(図2B)に曝した。
好ましい実施態様の詳細な説明
定義
本発明の神経上皮前駆細胞に関して用いる「正常(normal)」なる用語は、ウイルス性トランスフェクション又はオンコジーントランスフェクションによる表現型異常を示さない細胞型を意味するものとする。本発明の正常細胞型は、連続培地で維持でき、in vitroでの複製、拡張、及び長期間培養が可能である一方、成長危機(growth crisis)、老化、又は自発的分化を受けることなく、in vitro及びin vivoでのその分化能力を維持している。このような細胞型は、
アデノウイルス、SV40、ras、又はc−myc等のトランスフォーミング媒体での感染後にのみ無限増殖能力及び長期間連続培養ができる細胞系とは区別されるべきである。正常細胞系は、非−腫瘍形成性である。非−腫瘍形成性は、同系又は免疫処理動物に注入されたときに腫瘍を発生させない細胞を意味する。
本発明における「細胞系(cell line)」は、組織または器官からの細胞サンプルの培養を通して誘導される細胞の本質的に均質なグループ又は群である。「実質的に均質な」とは、共通の親により、一般的に表現型及び遺伝子型が一致する細胞群を意味する。このような均質細胞調製物は、細胞群における表現型の変化を与える自然突然変異(対立性変異)の結果として逸脱すると理解される。そのような自然突然変異は、実質的に均質の定義内に含まれると解され、従って、ここに定義する細胞系の定義に含まれると解される。好ましくは、「実質的に均質」は、群の中の約90から100%、好ましくは99から100%の細胞が同一細胞であることを意味する。
「不朽化」は、in vitroにおける、細胞の無限増殖能力を持つ株への形質転換である。
「神経上皮前駆(NEP)細胞」は、中間径フィラメントタンパク質のネスチンの発現によって同定される(Frederickson及びMcKay(1988)J.Neurosci.,8:1444−1151;Lendahl,等,(1990)Cell 60:585−595;Cattaneo及びMcKay(1990)Nature 347:762−765;Hockfield,S.及びMdKay R.D.G.(1995)J.Neurosci.5,3310−3328)。ネスチンの発現は、神経上皮前駆細胞を、神経管起源のさらに分化した細胞から区別する(Lendahl,等,(1990)Cell,60:585−595;Reynold及びWeiss,(1992)Science,225:1707−1710)。細胞は、胚9日齢ラット神経管と発生的に等価な神経組織から単離される。EGFもFGFもNEP細胞のマイトジェンではなく、それらは、塩基性繊維芽細胞成長因子及びフォルスコリンの存在下で種々の神経細胞型に分化する。
「発生的に等価」とは、胚組織の特別な源が、胚発生の等価な段階で発育中の哺乳類胚から得られることを意味する。胚発生は、顕著なモルホロジー上の特徴の出現によって種間で比較することができる。主要なモルホロジー上の特徴の出現のタイミングが種間で異なるのが、これは妊娠時間から区別できる。本発明では、哺乳類胚組織は、発生の胚ゼロ−体節段階と等価な段階において得られる。本発明によれば、胚発生の9日齢におけるラット胚と発生的に等価な哺乳類胚が得られる。本発明では、ラット胚齢9日は、午前8時から10時の2時間に雄と雌のラットをかけ合わせ、即座に連結プラグを捜すことにより測定した。連結プラグ(copulatory plug)は、妊娠のゼロ日と定義する。しかし、他の哺乳類種では、妊娠日ではなく重要な胚の発生段階である。従って、本発明では、ラットE9胚または他の哺乳類種からの発生的に等価な胚を採用する。ラットE9胚は、一般的に、羊膜形成を伴う原溝(primitive groove)及び尿膜の出現を特徴とする、発生ゼロ−体節段階にある。他の哺乳類胚の発生的に等価な段階については、読者は、Post implantation Mammalian Embryos:A Practical Approach、Copp,A.,及びCockcroft,D.,編,Oxford University Press,New York(1990),pp 81−91のKaufman,M.H.,"Morphological Stages pf Post Implantation Embryonic Development";Downs及びDavis,(1993)118:1255−1266;及びFujinaga及びBaden(1992)Teratology,45:661−670;及びO'Rahilly,R.及びMuller,F.(1987)"Developmental Stages in Human Embryos",Carnegie Institution of Washington,Publication no.637.Carnegie Institute,Washington DC.に向けられる。
「シュワン細胞」は、神経冠由来の細胞であり、その場での末梢神経線維の周囲に連続包膜を形成する。シュワン細胞は、グリア繊維酸性タンパク質(GFAP)またはS100等のシュワン細胞マーカーの1つ又はそれ以上の存在を、例えばこれらのマーカーに対する抗体を用いて検出すること等により同定される。さらに、シュワン細胞は、その培地の顕微鏡検査によって検出できる特徴的なモルホロジーを有する。単離されたシュワン細胞は、培地中の知覚ニューロンを結合する能力、あるいは、ミエリン又はPo等のミエリン関連タンパク質及びミエリン結合糖タンパク質(MAG)を生成する能力といった分化したシュワン細胞機能の維持について評価することができる。「胚シュワン細胞」は、誕生までのラット胚14日齢と発生的に等価な段階における哺乳類胚から単離されるシュワン細胞またはシュワン細胞前駆体である。好ましくは、胚シュワン細胞は、ラット胚14日齢からラット胚18日齢、最も好ましくは約15日齢胚と発生的に等価な段階の哺乳類から単離される。
「細胞培養媒質」及び「培養媒質」なる用語は、典型的には下記のカテゴリーの1つ又はそれ以上からの少なくとも1つの成分を提供する、哺乳類細胞成長のために用いられる滋養溶液を意味する:
1)エネルギー源、通常はグルコース等の炭化水素の形態;
2)全必須アミノ酸、通常は20アミノ酸の基本の組にシスチンを加えたもの;
3)ビタミン及び/または低濃度で要求される他の有機化合物;
4)遊離脂肪酸;及び
5)微量元素、但し、微量元素は、典型的には極めて低濃度、通常はマイクロモル範囲で要求される無機化合物又は天然元素と定義する。
滋養溶液は、任意に、以下のカテゴリーからの1つ又はそれ以上の成分を付加してもよい。
1)1つ又はそれ以上のマイトジェン剤;
2)例えば、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸などの塩及び緩衝剤;
3)例えば、アデノシン及びチミジン、ヒポキサンチンなどのヌクレオシド及び塩基;及び
4)タンパク質及び組織の加水分解物。
本発明によると、細胞培養媒質は、一般的に「血清無し(serum free)」であり、これは、媒質が(例えば、ウシ胎児血清[FBS]等の)あらゆる哺乳類由来の血清を実質的に含まないことを意味する。「実質的に含まない」とは、細胞培養媒質が、約0−5%の血清、好ましくは約0−1%の血清、最も好ましくは約0−0.1%の血清(v/v)しか含まないことを意味する。
「マイトジェン剤」または「成長因子」は、研究している特定の細胞型の有系***を刺激する分子である。一般的に、マイトジェン(剤)又は成長因子は、細胞培地中の細胞型の生存及び/または増殖を促進する。マイトジェン剤の例は、Rse/Axlレセプターアクチベーター;erbBレセプターファミリーの1又はそれ以上の成員のアクチベーター;培養媒質中のcAMPレベルを上昇させる薬剤(例えば、フォルスコリン、コレラ毒素、cAMPまたはそれらの類似物);神経細胞培養因子(N−CAM)、ラミニンまたはフィブロネクチン等の接着分子;プロゲステロン;脳由来神経栄養因子(BDNF)及び毛様体神経栄養因子(CNTF)等の神経栄養因子;ニューロトロフィン−3、−4、−5及び−6(NT−3,NT−4,NT−5及びNT−6);あるいは、NGF−β等の神経成長因子;血小板由来成長因子(PDGF);表皮成長因子(EGF);繊維芽細胞成長因子、例えば、酸性FGF(aFGF)及び塩基性FGF(bFGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えばTGF−α及びTGF−β1,TGF−β2,TGF−β3,TGF−β4,TGF−β5を含むTGF−β;IGF−1、−2、−3、−4、−5または−6を含むインシュリン様成長因子;及び、エストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、チロイドホルモン、及びインシュリンを含むホルモン類を含む。
「製薬的に許容される」キャリア又は媒体は、用いられる投与量及び濃度で曝されたときに哺乳類に対して非毒性のものである。製薬的に許容されるキャリアは、しばしば、水性pH緩衝溶液である。製薬的に許容されるキャリアの例は、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸等の酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭化水素;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/または、Tween、Pluronics、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。また、製薬的に許容されるキャリア又は媒体は、半固体、ゼラチン質または粘性支持媒質も含む。そのようなゼラチン質キャリア又は媒体は、コラーゲン、コラーゲン−グリコサミノグリカン、フィブリン、ポリ塩化ビニル、ポリリジン又はポリオルニチン等のポリアミノ酸、ヒドロゲル、アガロース、硫酸デキストラン及びシリコーンを含む。発育している神経細胞の移植に適した製薬的に許容される媒体は、例えば、国際公開第WO 92/03536号公報に見られる。
神経系疾患又は障害は、外傷的障害(例えば、肉体的障害又は手術、及び圧迫障害によるもの);虚血障害(例えば、脳または脊髄梗塞及び虚血);悪性障害;感染障害(例えば、膿瘍によりもの、又は、ヒト免疫不全ウイルス、ライム病、結核、梅毒、又はヘルペスの感染に伴うもの);退行性障害(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチングトンの舞踏病または筋萎縮性側方硬化症);滋養疾患又は障害に伴う障害(例えば、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ヴェルニッケ病、タバコ−アルコール弱視、マーチアルファバ−ビグナミ病及びアルコール性脳変性);全身疾患に伴う神経障害(例えば、糖尿病、紅班性狼瘡、癌、サルコイド−シスに伴うもの);毒性物質による障害(例えば、アルコール、鉛または神経毒素);脱髄障害(例えば、多発性硬化症、ヒト免疫不全ウイルスに伴う脊髄障害、種々の病因による横筋脊髄障害、進行性多病巣性白質脳症及び中枢脳橋ミエリン溶解)を意味する。
本発明における「処置(treatment)」は、疾患又は障害に対する治療的処置、並びに、予防、又は抑制手段を意味する。よって、例えばアルツハイマー病の場合、発病前または発病中の薬剤の有効な投与は、その投与が明らかな臨床的利益を伴えば、疾患の発病の遅延または抑制を伴うか否かに関わらず、疾患の「処置」をもたらす。そのような利益は、如何なる利益でもよく、他の治療の副作用の低減又は徴候の消滅を含むがそれらに限られるものではない。例えば、疾患の臨床的発現の後に疾患の徴候と闘う薬剤の有効な投与も、疾患の「処置」に含まれる。「処置」は、疾患の発現後に疾患を根絶するための薬剤の投与も含む。疾患の発病及び徴候が進行した後の、臨床的徴候の低減及び疾患の改善の可能性を持つ薬剤の有効な投与も、疾患の「処置」に含まれる。
「哺乳類」という用語は、ヒト、非−ヒト霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ及びネコを含む哺乳類として分類される任意の哺乳類を指す。本発明の好ましい実施態様では、哺乳類はヒトである。
発明の実施の形態
当業者には理解されることだが、本発明の神経上皮前駆細胞のin vitro培養のために、日常的な無菌細胞培養技術が本発明の方法に従って採用されるべきである。ここに本発明を、これら及び他の細胞培養技術を参照して説明する。
本発明の神経上皮前駆細胞(NEP細胞)を単離するために、発生のゼロ−体節(0−体節)段階の哺乳類から哺乳類神経組織を得る。この胚発生段階は、神経溝の出現、尿膜の発生、及び羊膜の形成を特徴とする。この段階は第1の体節の出現へ進み、一般的に神経板の出現によって同定される。本発明によれば、この段階はラット胚発生の9日齢と発生的に等価である。従って、本発明では、胚9日齢のラット神経組織または発生的に等価な他の哺乳類種の神経組織が用いられる。本発明の好ましい態様では、ラット胚発生の9日齢における午前3時から4時の胚神経組織または発生的に等価な他の哺乳類種の神経組織が用いられる。
当業者には理解されるように、哺乳類胚は、類似の発生パターンに従い、それは顕著なモルホロジー上の段階として同定できる。この段階は、神経板といった特定のモロホロジー上の特徴の出現の日によって広く同定される。しかし、主要なモルホロジーの特徴の出現のタイミングは種によって変化する。従って、胚神経組織は第1の体節が出現する直前に単離される。この段階は、共通して発生の「ゼロ−体節」又は「0−体節」段階と呼ばれる。ラット種では、第1の体節は胚発生の9日と10日の間に現れ、発育している神経組織が、第1の体節が現れる直前の発生9日目に得る。ラット種は、同じ主要な特徴の出現について、1.5から2日発生的にマウス種に先んじられる。従って、マウス種では、第1の体節は、胚発生のほぼ8日目に現れる。よって、マウス種では、神経組織は一般的にマウス胚発生の約6日目から約8日目に得る。ヒトでは、第1の体節が、胚発生の20から24日目のヒト発生の第9段階の間に現れる。従って、本発明では、ヒト哺乳類神経組織は、一般的に、胚発生の約20日目から28日後の発育しているヒト胚から選択する。
E9ラット胚と発生的に等価な胚から得た神経組織は、一般的に、当業者には共通して明らかな技術を用いた解剖により発育している胚から単離される。哺乳類発生生物学の熱練者は、この分野で標準的な技術を用いて、神経組織を同定し単離することができるであろう。一般に、顕微鏡解剖は、胚から尾部を分離し、次いで中胚葉と内胚葉を除去するのに用いられる。本発明によれば、残った神経組織が用いられ、好ましくは神経管が用いられる。
ラットE9または発生的に等価な段階の発育している胚からの神経組織、好ましくは神経管は、胚シュワン細胞の存在下、又は、好ましくは胚シュワン細胞のin vitro培地から得た培養媒質の存在下で培養する。胚シュワン細胞は、ここに述べる方法又は当業者に周知の方法で単離される。胚シュワン細胞は、一次又は二次培地またはここに述べるような連続増殖系から得ることができる。さらに、ウイルス形質転換又はオンコジーントランスフェクションによって得られる連続胚シュワン細胞系を、胚シュワン細胞または胚シュワン細胞条件の媒質の源として用いてもよい。あるいは、胚シュワン細胞は、例えば(Ansselin及びCorbeil(1995)In Vitro Cell Dev.Biol.31:253−254;Brockes等,(1979)Brain Res.277:389−392;Morrissey等,(1991)J.Neurosci.11(8):2433−2442;Peulve等,(1994)Exp.Cell.Res.214:543−550;Rutkowski等,(1992)Ann.Neurol.31:580−586;Watabe等,(1990)J.Neuropathol.Exp.Neurol.49:455−467)に記載されているようなシュワノーマであってもよい。胚シュワン細胞及びそれを得る方法は、当業者には周知である(Messing等,(1994)J.Neurosci.14:3533−3539)。共に係属している1995年5月10日に出願された米国特許出願第08/433,436号は、胚シュワン細胞培地を得る方法の例を記載している。
シュワン細胞の単離のためにシュワン細胞を得るに当たって、またはシュワン細胞を含む神経組織(例えば、末梢神経組織)を選択するに当たって、細胞は哺乳類胚から誘導されたものであることが重要である。本発明によれば、胚シュワン細胞は、ラットの胚発生14日目と発生的に等価な発生段階、または、その後の胚発生最終日1までの任意の段階における哺乳類から得る。好ましくは、ラット胚15日齢と発生的に等価なシュワン細胞が用いられる。適当な組織源は、例えば、背側根本神経節を含む。
本発明の好ましい態様では、シュワン細胞を得る哺乳類種は、正常NEP細胞を単離する種と一致する。しかし、種の一致は絶対に必要なわけではない。例えば、ラット胚シュワン細胞は、ラット正常NEP細胞に加えて、マウス並びにヒトの正常NEP細胞の単離のための胚シュワン細胞源として用いてもよい。
胚シュワン細胞の単離の実験的方法では、発育している神経細胞(一般的には、14から20日齢ラット)が得られる。適当な出発神経組織は、一般的に1mgから1gmである。神経組織は、培養前に、媒質中(例えば、RPMI−1640[Sigma]、LiebovitzのL15またはBelzerのUW溶液)に保存できる。神経組織が有髄神経を含む場合、胚シュワン細胞の予備インキュベーションは、シュワン細胞の脱髄を促進するために有利である。胚シュワン細胞の予備インキュベーションのために、神経組織は、結合組織を解くのに十分の時間1またはそれ以上のプロテアーゼ酵素で処理し、それにより脱髄を促進するのが好ましい。この過程に用いられる商業的に入手可能な多くのプロテアーゼ酵素は、例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及び他のセリンプロテアーゼを含む。過剰の酵素は、培養媒質で洗浄することにより除去できる。
胚シュワン細胞培養は、典型的には固相(例えば、プラスチック組織培養ディッシュまたはプレート)で行われ、それは、細胞外マトリクス/ラミニン、フィルムブロネクチン、ポリリジンまたはコラーゲン等の接着タンパク質、好ましくはラミニンで被覆されている。これにより、被覆固体相上のシュワン細胞の好ましい接着及び泳動が得られる。シュワン細胞は、好適な培養媒質中で、ラミニン被覆培養プレート内で培養される。
胚シュワン細胞培養用の媒質は当業者に周知であり、F12/DME、HamのF10(Sigma)、最小必須媒質([MEM],Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、及びDulbeccoの変性Eagleの媒質([DMEM],Sigma)等の商業的に入手可能な媒質を含むが、これらに限定されない。これらの媒質全てに、必要に応じて、イオン(ナトリウム、クロリド、カルシウム、マグネシウム及びリン酸等)、緩衝液(HEPES等)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジン等)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物と定義されるもの)、及びグルコースまたは等価なエネルギー源を添加してもよい。また、他の添加剤を、当業者が知る適当な濃度で含んでもよい。好ましい培養媒質は、15mM HEPES,pH 7.4、1.2g/lの重炭酸ナトリウムを添加した、4.5g/lのグルコースを含むF12/DME(1:1)である。
本発明によれば、in vitroにおいて、胚シュワン細胞の成長及び拡張を促進するために媒質に上記のような添加をしてもよいが、本発明の目的にためには、血清無しの条件が用いられる。胚シュワン細胞は、好ましくは、適当なマイトジェン剤を添加した培養媒質中で、ディッシュ(例えば、100mmペトリ皿)内に配置される。例えばラット胚シュワン細胞については、培養媒質は、好ましくは、少なくとも1つのerbBアクチベーター(例えば、ヘレグリン)、インシュリン(または、IGF)、ウシ下垂体抽出物(Roberts等,(1990)Am.J.Physiol.3:415−425)、及びcAMP生成の刺激剤(例えば、フォルスコリン)を含む1またはそれ以上のマイトジェン剤を、胚シュワン細胞の成長及び拡張を促進するのに適当な範囲で添加した血清無しの媒質であり、なおかつ、酸性または塩基性繊維芽細胞成長因子、表皮成長因子等の成長因子の使用を回避する。
従って、本発明の共培養(co−culture)のためのラット胚シュワン細胞の単離の実験的方法において、E14ラット胚または他の哺乳類源からの発生的に等価な胚からの脊側根本神経節が単離される。清浄な背側根本神経節は、コラゲナーゼ/ディスパーゼ(Boehringer Mannheim Cat.No.1097113)とともに、0.3%の濃度で約45分間インキュベートされる。背側根本神経節は、次いで、清浄にリンスされ、1mlのPipetman(商品名)で優しく分散する。分散された細胞は、遠心分離(1000rpm、5分間)で収集され、F12/DMEMで3回洗浄され、組み換えヒトインシュリン(5μg/ml)、トランスフェリン(10μg/ml)、プロゲステロン(2×10-8M)、ウシ下垂体抽出物(Roberts等,同上)(10μg/ml)、組み換えヘレグリン(3nM、HRG−β1177-244)(Holmes等,[1992]Science 256:1205−1210)、フォルスコリン(5μM)及びα−トコフェロール(5μg/ml)を添加したF12/DMEM中で、ラミニン被覆プレート上に配置される。シュワン細胞は4日後に融合性の単層に成長した。
ラミニン基体上で成長した一次培地からのシュワン細胞は、4日ごとに、1:4の分断比率で、プロゲステロン、インシュリン、α−トコフェロール、ヘレグリン、フォルスコリン、及びトランスフェリン並びにウシ下垂体抽出物を添加した媒質中で、ラミニン被覆ディッシュ上に継代した。胚シュワン細胞の培地からの培養媒質は、細胞が融合に到着した後の任意の段階で、胚シュワン細胞培地から得られる。好ましくは、シュワン細胞条件の媒質は、培養の約2から4日後、最も好ましくは約4日後に回収される。
胚シュワン細胞または胚シュワン細胞条件の媒質との共培養による胚神経上皮前駆細胞の単離のために、ラットE9胚または発生的に等価な哺乳類源から上記のようにして得られた分散された神経組織は、胚シュワン細胞(ESC)を持つ培地または胚シュワン細胞条件の媒質(ESCCM)を添加した培地に配置される。神経組織とESCとの共培養は、同じ培養容器に配置された細胞によって起こしてもよく、同様に、ESCと発育している神経管の細胞とを、可溶性因子は半透性膜を通して移動できるようにした物理的障壁によって分離し、細胞自体の物理的接触を回避する共培養によって行なってもよい。
本発明では、適当な培養容器は、ラミニン等の適当な細胞外マトリクスで予め被覆されている。本発明の神経上皮前駆細胞の単離及び培養のための適当な培養容器は、ガラス及びプラスチック容器を含む。ガラス容器を用いてもよいが、一般的な固相は、哺乳類細胞培養に日常的に用いられているような、プラスチックまたはポリスチレンの組織培養ディッシュまたはプレートである。組織培養容器は、最初は少量の細胞が培養されることを心に刻んで選択される。一般的に、約100から1×105が、容器上または容器中に配置される。容器は、細胞が小さな、一般的に100から200マイクロリットル容量の接触を保つ用に選択される。
さらに、プラスチックプレートまたは組織培養容器は、通常は、発育している脊椎生物の殆どの細胞が正常な発育中に接触する細胞外マトリクスの成分の幾つかまたは全てを含む細胞外マトリクスまたは接着因子で被覆される。コラーゲン及びラミニンは、発育している哺乳類神経芽細胞によって一般的に生成される。従って、コラーゲン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン及び糖タンパク質等の細胞外マトリクス/接着タンパク質が用いられる。最も好ましいのは、フィブロネクチン、ラミニン、エンタクチン及びヒアルロネクチンなどの糖タンパク質である。本発明で最も好ましいのはラミニンである。
本発明の神経上皮細胞の共培養単離に用いられる媒質は、商業的に入手できる多数の合成基礎媒質の任意のものでよい。この媒質は、基礎媒質が、生存、成長、及び分化促進特性が異なることを念頭に置いて選択される。好ましい培養媒質は、F12/DME、HamのF10(Sigma)、最小必須媒質([MEM],Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及びDulbeccoの変性Eagleの媒質([DMEM],Sigma)等の商業的に入手できる媒質を含むがこれらに限定されない。さらに、開示をここに参考として取り入れるHam及びWallace,Meth.Enz.,58:44(1979)、Barnes及びSato,Anal.Biochem.,102:255(!980)、U.S.4,767,704;4,657,866;4,927,762;又は4,560,655;WO 90/03430;WO 87/00195;U.S.Pat.Re.30,985;又はU.S.5,122,469に記載された媒質の任意のものは、基礎培養媒質として用いられる。好ましい培養媒質は、F12/DME(1:1)である。
これらの媒質、特にF12/DMEは、イオン(ナトリウム、クロリド、カルシウム、マグネシウム、リン酸等)、緩衝液(HEPES等)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジン等)、微量元素(通常はマイクロモルの最終濃度で存在する無機化合物と定義されるもの)、及び、グルコースまたは等価なエネルギー源を添加してもよい。
本発明によれば、胚シュワン細胞又は胚シュワン細胞条件の媒質との共培養からの神経上皮細胞の単離のために、上記の基礎媒質に、約0.01〜約100μl/ml、好ましくは約3−5μl/mlのウシ下垂体抽出物をさらに含む。媒質中のcAMPレベルを上昇させる薬剤をさらに含有するのが望ましい。フォルスコリンがそのような薬剤として好ましく、この分子の好ましい濃度は、0.1μM〜50μMのフォルスコリンの範囲、好ましくは1μM〜20μMのフォルスコリン、最も好ましくは約5μMである。インシュリン又はIGF(例えば、IGF−I又はIGF−II)も共培養に望ましい。好ましくは、0.01μg/ml〜100μg/mlの範囲、好ましくは1μg/ml〜10μg/ml、最も好ましくは10μg/mlが媒質に添加される。さらに、培養媒質は、任意に、erbBレセプターファミリーの成員を活性化する分子などのマイトジェン剤を含んでもよい。ヘレグリンは好ましいアクチベーターであり、ヒトヘレグリン−β1177-244フラグメントが最も好ましいマイトジェン剤である(Holmes等,(1990 Science,256:1205−1210)。媒質中のヘレグリン濃度は、好ましくは約0.01nM〜10nMの範囲、より好ましくは、0.1nM〜10nM、最も好ましくは、1nMから10nMである。また、培養媒質に、約0.1nM〜200nMの範囲、より好ましくは約1nM〜100nM、最も好ましくは、約3nMのプロゲステロンを添加してもよい。トランスフェリンなどの鉄源を用いてもよい。媒質中のトランスフェリンの濃度は、一般的に約0.1μg/ml〜約100μg/mlの範囲、好ましくは5μg/ml〜10μg/mlである。他の任意の添加剤は、ビタミンE(抗酸化剤及び抗形質転換剤)の好ましくは0.1μg/ml〜100μg/mlの範囲、より好ましくは1μg/ml〜20μg/ml、最も好ましくは5μg/ml〜10μg/ml;並びに、化学的に定義された脂質(Sigma Cat # 11905−015)の好ましくは1μL/ml〜500μL/mlの範囲、より好ましくは10μL/ml〜100μL/ml、最も好ましくは25μL/ml〜50μL/mlを含む。
本発明での好ましい媒質調合物は、約5μg/mlの組み換えヒトインシュリン、約2×10-8Mのプロゲステロン、約10μg/mlのウシ下垂体抽出物(Roberts等,(1990)Am.J.Physiol.3:415−425)、約3nMの組み換えヘレグリン(HRG−β1177-244(Holmes等,[1992]Science 256:1205−1210)、約5μMのフォルスコリン、約5μg/mlのトランスフェリン、及び約5g/mlのα−トコフェロールを含む。
温度、pH、溶存酸素(dO2)等の培養条件は、哺乳類細胞培養に一般的に用いられるものであり、当業者には明らかである。一般に、pHは、酸(例えばCO2)または塩基(例えば、Na2CO3、NaOH)を用いて、約6.5から7.5のレベルに調節される。哺乳類細胞の培養に好ましい温度範囲は、約30から38℃であり、好ましいdO2は、空気飽和の5−90%である。
有利には、本発明の細胞は、胚シュワン細胞に換えてシュワン細胞条件の媒質とともに共培養されて単離される。本発明のこの態様において、上記の媒質は、胚シュワン細胞の培地から得た培養媒質を添加される。好ましくは、このような条件の媒質は、胚シュワン細胞培養のポスト−イニシエーションの1−4日後胚シュワン細胞培地から得る。最小限でも、胚シュワン細胞は、培養媒質の取得の前に融合に達していなければならない。好ましくは、胚シュワン細胞から細胞を除去することにより上清が取得される。これは、一般的に遠心分離及び/または濾過によって行われる。残った培養媒質が、添加媒質として用いられる。
このようにして得られた胚シュワン細胞条件の媒質は、得られたままで添加媒質として使用できるが、先ず濃縮してもよい。濃縮は、一般的には、濃縮装置が実質的に全てのタンパク質物質を維持しなければならないことに注意して行う。これは一般的に、約3000から500キロダルトンの低タンパク質結合分子量カットオフを備えた装置を用いることを意味する。濃縮は、記載した媒質の少量の添加を可能にするので有利である。
添加媒質として用いられる胚シュワン細胞条件の媒質(ESCCM)の量は固定量ではなく、用いる条件媒質のバッチによって変化する。ESCCMは、少なくとも、本発明の神経上皮細胞の成長を促進するのに十分な量で存在しなければならない。胚シュワン細胞条件の媒質は、上記の媒質調合物の胚シュワン細胞条件媒質に対する比率が約1:1から約10:1部で添加され、好ましくは、約1部のESCCMに約5部の上記の媒質調合物である。添加媒質として添加する前に濃縮したESCCMでは、添加するESCCM媒質の量は濃度によって変化する。10倍に濃縮されたESCCMでは、ESCCMは、基礎媒質に、1%〜約50%(v/v)、好ましくは約30%(v/v)で添加される。
神経組織が胚シュワン細胞とともに共培養に付された場合、胚シュワン細胞条件媒質を含む基礎媒質を添加する必要はない。神経組織は、胚シュワン細胞が添加される、適当な細胞外マトリクスで予め被覆されたプレート上に配置される。共培養に用いられる胚シュワン細胞の数は、培養容器のサイズによって変化する。培養容器内に単層を形成するのに足りる胚シュワン細胞の量が十分な量である。一般的に、胚シュワン細胞は、培養媒質1cm2当たり約5×105細胞の初期密度とすれば十分である。
上記の分散した神経細胞から得られる神経上皮前駆細胞は、生存のために細胞と細胞の接触が必要であることを念頭に置いて配置する。最適な細胞成長は、1ml当たりに約0.5から5×105細胞の初期配置密度で得られる。
これらの条件下で、神経上皮前駆細胞は生存し増殖し、長い突起を有する幾つかの分化ニューロンを含む密集した単層上皮細胞の大きなコロニーを形成する。
培養の2−6日後、一般的には培養の約4日後、上記のようにして得られた神経上皮前駆細胞は、細胞外マトリクスタンパク質被覆されたプレートから除去され、上記の媒質中に、約1−2×105細胞/mlの密度で再配置される。細胞が、細胞数代に渡り、このプロセスを繰り返して二次培養される。一般的に、5から6継代が密使される。
この期間の間、培地は2つの主要な細胞型を含み、一方は本発明の神経上皮前駆細胞型であり、他方は二極シュワン細胞様細胞である。二極シュワン細胞は、培養媒質からヘレグリンを除去することにより培地から取り除かれる。
これに次いで、正常神経上皮細胞系は、上記の媒質中、好ましくは、フォルスコリン、BPE、トランスフェリン、プロゲステロン、及びα−トコフェロールを手kなしたF12/DME中で培養を維持される。胚シュワン細胞または胚シュワン細胞条件媒質は、一般に、本発明の細胞系を単離するためにのみ必要とされる。
胚から単離した細胞系は、10%のジメチルスルホキシド(DMSO)又はグリセロールを含む血清無し媒質中で、長期間保存のために連結することができる。
使用
神経上皮前駆細胞は、多数のニューロン及び神経成長−促進因子を生成し(Placzek等(1993)Development 177:205−218;Ghosh及びGreenberg(1995)Neuron 15:89−103)、それら自身が多くの成長促進物質に反応する。従って、ここに述べた技術を用いて単離され培養された正常神経上皮前駆細胞は、これらの因子の生成及び検出に使用することができる。ソニックヘッジホッグ(SHH)等の神経上皮前駆細胞に特異的な因子を単離し検出するために、細胞培地中の正常神経上皮前駆細胞の群を有するのが望ましい(Hynes,M.等,(1994)Neuron,15:35−44)。このような因子は、それら自身が診断用具として有用であり、あるいは、診断用途の抗体を生成するための抗原として用いることもできる。
細胞系自身は、診断目的のために有用である。例えば、本発明の細胞は、種々の成長促進物質の存在の検出に用いることができる。本発明のこの態様では、細胞は、単離操作の間に、特異的な神経上皮成長促進因子のモニター及び単離のために用いることができる。細胞ベースのアッセイは、本発明の神経上皮前駆細胞を利用して簡単に編み出すことができる。例えば、DNAの合成及び放射線ラベルしたヌクレオチドの導入は、成長促進物質を含む特定のサンプルの反応性を決定するための細胞ベースのアッセイにおいて共通に用いられる。このような細胞性アッセイは、臨床的に関係する物質の存否の検出のため、あるいは、治療処理中において、診断的に関連していてもよい。
さもなくば、正常神経上皮細胞は、ウイルスタンパク質の組み換え発現及び製造に用いてもよい。本発明のこの態様では、本発明によって単離された細胞系は、選択したタンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターでトランスフェクションされる。当業者は、本発明の細胞系と共同して用いる適当なDNA発現系を選択するであろう。この用にして製造されるタンパク質は、有利には、神経上皮前駆細胞の特定のグリコシル化パターン特性を有する。
また、細胞ベースの治療のために、哺乳類NEP細胞(好ましくはヒトNEP細胞)の群を有するのも有利である。本発明のNEP細胞は、単独でも他の細胞型との組み合わせでも、神経系の疾患または障害の治療のために、損傷した神経組織の領域に直接移植するために用いることができる。この細胞単独又は他の細胞型との組み合わせは、神経系障害の再生または再集合のための直接置換または補助的援助を提供する。本発明のこの態様では、正常神経上皮細胞は、ここに述べる適当な製薬媒体中に調製される。単離されたNEP細胞、NEP細胞を含む製薬組成物、又はNEP細胞を満たしたプロテーゼは、神経系損傷に導入されるが、用いられる方法は、上記の神経疾患、特に、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチングトンの舞踏病または筋萎縮性側方硬化症を含む神経退行疾患または障害の治療のために当業者に知られた方法である。
特別な実施態様では、本発明の正常神経上皮細胞は、ニューロン疾患又は障害の再集合(repopulate)領域のために用いてもよい。このタイプの細胞ベース治療は、ヒト胎児中脳組織のパーキンソン病患者の有尾核への片側移植(Spencer等,(1992)New Englg.J.Med.327:1541−1548)に類似している。アルツハイマー病及びダウン症候群、脳炎後のパーキンソン症候群、痴呆症等の他の疾患はニューロン細胞欠損及びニューロンモルホロジーの変化を特徴とする(Golgman及びCote(199)"Aging of Brain")。in vivoでの分化及び統合が可能な本発明の神経上皮前駆細胞は、損傷ニューロン組織の特定の領域の再集合に用いることができる。細胞の脳への輸送方法は一般的に知られ、国際公開第WO 90/06757号及び第WO 93/14790号公報に記載されている。
神経移植またはグラフティング(grafting)は、神経上皮前駆細胞のホスト又は受容体の中枢神経系への移植を含む。これらの方法は、実質内移植のような、ホスト脳無いの神経上皮前駆細胞の移植、並びに、以下に記載するようなゼラチン質媒体中のホスト脳表面での細胞の析出を含む。実質内移植は、本発明の神経上皮前駆細胞をホスト又は受容体の脳実質に注入することによって達成される。細胞のホスト脳の選択された領域への移植の方法は一般的に知られ、国際公開第WO 90/06757号公報及びその中の参考文献に記載されている。
移植(グラフティング)のために、一般的に、単離され神経上皮前駆細胞は、グルコース平衡食塩水等の生理学的に許容される媒体中に添加され、ホストの脳の予め決められた部位に、無菌マイクロシリンジを用いて注入される。従って、本発明は、正常神経上皮細胞型を単離し、該正常神経上皮細胞を受容者の脳に注入又はグラフティングすることを含んでなる細胞移植方法も含む。
特別な実施態様では、正常神経上皮細胞は、in vivoでの内生的好中球及び神経成長因子の輸送のための神経上皮前駆細胞特異的なタンパク質の製造に用いられる。あるいは、現在では、生物学的に活性なタンパク質の部位特異的輸送のために神経由来の細胞を修飾する種々の方法が利用できる。例えば、アルツハイマー病において、アセチルコリンの欠乏は、本発明の細胞系を神経伝達物質のその場での発現のための媒体として用いることによるアセチルコリンの輸送によって矯正することができる。近年、神経前駆細胞が、脳内の神経成長因子のキャリアとして用いられている(Martinez−Serrono(1995)Neuron 15:473−484)。例えば、神経繊維成長を促進することが知られている特定の分子をコードする遺伝子、または、ニューロンの健康を維持または促進すると考えられている特定の成長因子の遺伝子を誘発することもできる。神経上皮前駆細胞は、哺乳類神経成長因子または神経伝達物質等の生物学的活性タンパク質をコードするDNAでトランスフェクション又は感染され、従って、タンパク質の増加した局所化された生成のために用いられる。特定の分子の細胞及び部位特異的発現は、一般的に、所定の生物学的活性タンパク質の予防及び治療的有効量の局所的生成をもたらす。脳内でトランスフェクションされた遺伝子を発現するか否かに関わらず、細胞移植の一般的方法が、国際公開第WO 93/14790号及び第WO 93/10234号公報に記載されている。
何ら限定しない例として、生物学的関連タンパク質をコードするDNA配列を含む組み換えレトロウイルスベクターは、本発明の神経上皮前駆細胞のin vivoでの直接感染に利用される。感染した細胞は、次いで、神経障害が予想される領域の再集合に共通に用いられるがそれに限定されないこの分野で周知の方法を用いて特異的組織標的部位に輸送される。生物学的活性タンパク質を発現する任意の数のレトロウイルス構造体が、本発明のこの態様に従って、当業者によって使用される。
ここで用いられる「製薬的に許容される」という用語は、一般的に、連邦の規制部局によって認容された、または、米国薬局方又は一般に認められた他の薬局方に動物、特にヒトでの使用のために列挙されたものを意味する。ここに記載する単離されたNEP細胞及び製薬的に許容されるキャリア又は媒体の含んでなる製薬組成物は、この分野で良く知られた技術を用いて調製される。好ましい組成物は、リン酸緩衝食塩水等の生物学的緩衝液、食塩水、Dulbeccoの媒質等である。組成物の選択は、上記の種々の緩衝液、あるいは、例えば製薬級のグルコース、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリンセルロース、炭酸マグネシウム、等を含む補助剤を用いてなされる。任意に、製薬組成物は、1またはそれ以上のマイトジェン剤及び他の成分(例えば、ラミニン等の細胞外マトリクス)を含んでもよい。製薬的に許容される媒体としてゼラチン質支持体が用いられる場合、NEP細胞は、媒体の液相に導入されてもよく、それは、より固体となるように処理されてもよい(例えば、非重合媒体は重合を誘導してもよい)。例えば、NEP細胞は、H2O中の酢酸で安定化されたコラーゲンが、塩の添加によって等張的に、NaOH等の適当な塩基の添加により中性pHにされた後に添加してもよい。
また、NEP細胞は、文献に記載されているようなプロテーゼ又は器具に導入することもできる。一般的に、(好ましくはゼラチン質媒体中に調製された)NEP細胞を充填した固体多孔質チューブがプロテーゼとして用いられる。
以下の実施例は本発明を例示するが、何ら限定するものではない。本明細書中の引用文献の開示は、参考としてここに取り入れる。
実施例
実施例1
導入
発育能力を有する胚9日齢、0−体節ラット胚からの神経上皮細胞を、血清無しのホルモン添加媒質中で成長させた。ここでは、in vitro及びin vivoで神経細胞型への分化が誘発される神経上皮前駆細胞系の単離、確立、及び特性化が示される。
方法
A.神経上皮細胞成長:
E9ラット神経管(0−体節)を、解剖顕微鏡下で、微小ニードルを用いて解剖した。ハッセン節の中間を切断することにより尾部を取り除いた。コラゲナーゼ及びディスパーゼ(Boehringer Mannheim,0.2%,0℃で10分間)との簡便なインキュベーションの後、中胚葉及び内胚葉を取り除いた。1%のBAを含むE12/DMEMをプレートからプレートへ移すことにより、清浄な神経管を5回洗浄した。次いで、神経管を、200μlのPipetman(商品名)ピペッターの黄色チップで優しくピペッティングすることにより、小さな集塊(好ましくは、各塊20から50細胞)に分散させた。完全な分散は避けるべきである。分散させた細胞を、異なる成長因子の組み合わせを添加した血清無しの媒質中の接着因子で予め被覆した96ウェルのマルチプレートに、(20の神経節を96に分割する密度で)配置した。良好な生存及び成長は、ウシ下垂体抽出物(Robeerts等1989同上)、インシュリン、フォルスコリンを含む条件、及び、胚シュワン細胞系または胚シュワン細胞条件の媒質(ESCCM)との共培養においてのみ観察された。これらの条件では、幾つかの前駆細胞が生存かつ増殖して、長い突起を有する耐える幾つかの分化したニューロンを含む単層上皮細胞の密集した大きなコロニーを形成した。他の条件の細胞は、4日以内に培地中で死亡した。
B.長期間培養
7F(フォルスコリン(約5μM)、BPE(約10μg/ml)、インシュリン(約5μg/ml)、トランスフェリン(約5μg/ml)、ヘレグリン(約3nM)、プロゲステロン(約2×10-8M)、α−トコフェロール(約5μg/ml))及びESCCMを添加したF12/DMEの一次培地で形成された上皮細胞のコロニーを、37℃において0.2%コラゲナーゼ/ディスパーゼを用いて、基質から取り除いた。細胞を、3%のBAの層上での遠心分離により酵素が無くなるように洗浄し、7Fを添加したF12/DMEを満たした24ウェルプレートに配置した。細胞は、5−6継代に渡り同様の方法で日常的に二次培養した。この期間の間、培地は2つの主要な細胞型を含み、一方は密集した上皮細胞であり、他方はシュワン細胞又は放射状グリアに類似した二極性細胞であり、それは、ヘレグリンを培養媒質から除去することによって培地から取り除き、上皮細胞を高密度で成長できるようにした。次いで、細胞をラミニン被覆プレート上の6F(7Fからヘレグリンを除いた)媒質に移し、1から4分割を用いて毎週継代させた。
C.細胞増殖実験
25から35継代の細胞を下記の実験に用いた。細胞は、日常的に培養容器から脱着させ、試験すべき成長因子を異なる濃度で含有するF12/DME媒質中で、ラミニン被覆した24ウェルプレートに記載した密度で配置した。あるいは、細胞は、6F中に24時間配置し、次いで、実験すべき成長因子を、他の全て成長因子を含む6F中に異なる濃度で含むものを添加した。細胞数は、37℃におけるトリプシン−EDTA(Gibco BRL)で少なくとも15分間完全に分散した後、コールター・カウンターで計数した。
D.細胞分化実験
細胞を、6Fを添加したF12/DMEを満たした24ウェルプレート内で、6F(インシュリン(5μg/ml)、トランスフェリン(5μg/ml)、α−トコフェロール(5μg/ml)プロゲステロン(2×10-8M)、フォルスコリン(5μM)及びウシ下垂体抽出物(10μg/ml))に、1:8***で48時間配置し、次いで、F12/DMEで洗浄し、インシュリン、トランスフェリン及びα−トコフェロールを添加した新鮮な媒質を再供給した。bFGF(組み換えヒトbFGF、Gibco BRL)、aFGF(組み換えヒトaFGF、Gibco BRL)、フォルスコリン(Calbiochem)及び/またはNGF(7.5SマウスNGF、Collaborative Research Inc.)等の成長因子を、記載のように個々にまたは組み合わせて添加した。媒質は、インキュベーションの48時間後に一度、対応する因子に取り替えた。培地は、氷上3%スクロース溶液中の氷冷1%グルタルアルデヒド(Ted Pella,Inc.)で30分間、記載した時間において免疫細胞化学的に固定した。固定した細胞は、氷冷milli−Q水でリンスし、3%のH2O2を含むメタノールで室温において30分間処理し、PBSで洗浄した。次いで、細胞を0.2%のTRITON X−100(商品名)洗剤、5%のヤギ血清及び0.1MのNH4HCO3を含むPBSで、37℃において1時間インキュベートした。一次抗体を、希釈緩衝液(0.1%TRITON X−100(商品名)洗剤及び1%のBAを含むPBS)中で希釈し、250μl/ウェルで添加した。一次抗体とのインキュベーションを4℃で終夜行った。過剰な一次抗体は希釈緩衝液で5回洗浄し、次いで細胞は、二次抗体と接合した適当な酵素(Boehringer Mannheimから市販されている抗−マウスIgF(ab)’−アルカリホスファターゼ、抗−マウスIgF(ab)’−ペルオキシダーゼ及び抗−ラビットIgF(ab)’−ペルオキシダーゼ)とともに37℃で60分間インキュベートした。細胞は、希釈緩衝液で5回、ペルオキシダーゼ接合体用の0.05Mの酢酸ナトリウムpH5.0またはホスファターゼ基質緩衝液で2回洗浄した。特異的に結合したペルオキシダーゼ活性は、Sigmaのペルオキシダーゼ基質キットを用いて製造したDAB−H2O2溶液で検出した。アリカリホスファターゼは、希釈緩衝液で希釈したBoehringerのアルカリホスファターゼ基質(NTB/BCIP)で検出した。発色反応は、tap水でのリンスによって完全に停止し、試料はグリセロール/PBS(50:50)中に保存した。染色サンプルを観察し、顕微鏡写真は、Nikon−明光視野顕微鏡を用いて撮影した。
E.免疫蛍光法
ネスチン(nestin)免疫蛍光法のために、チャンバースライド上の細胞成長を、燐酸緩衝液pH7.4中のパラホルムアルデヒドで、室温において30分間その場に固定した。固体下細胞は、PBSで3回洗浄し、0.2%のTRITON X−100(商品名)を加えたPBS中の5%のヤギ血清で、37℃において60分間ブロックした。ラビットにおいて、ラットネスチン配列の最後の1200アミノ酸に対する抗−ネスチン抗血清が生じた。この抗血清を希釈緩衝液で1:1000に希釈した(さらに、細胞と共に4℃で終夜インキュベートした)。希釈緩衝液(0.1%のTRITON X−100(商品名)及び1%のBAを含むPBS)で5回洗浄した後、サンプルをヤギ抗−ラビットIgGF(ab)’−FITC(Boehringer Mannheim)とともに37℃で1時間インキュベートした。スライドを希釈緩衝液で5回洗浄し、PBS中の50%のグリセリンでシールした。特異的免疫蛍光法はを観察し、NIKON(商標)表面蛍光顕微鏡下で顕微鏡写真を撮影した。
F.ウェスタンブロット
約106細胞を100μlの充填緩衝液に直接溶解し、95度に5分間加熱した。サンプルを氷冷し、ミニゲル(Novexの予めキャストしたSDS gel 4−20%)に充填した。サンプルを75mAでのSDS電気泳動で、染料の先端が終点近傍に来るまで分画した。Tris−グリシン−メタノール緩衝液中において、100Vで1時間ニトロセルロース膜の電気輸送を行った。膜は、水で洗浄し、緩く攪拌しながら37℃で1%のBAとともにインキュベートすることにより飽和させた。一次抗体(抗−ネスチン抗血清1:1000、抗ニューロン特異的抗血清1:1000)のインキュベーションを37℃で2時間行った。過剰の一次抗体は、インキュベーション緩衝液の3階の取り替えで取り除き、その取り替えは各々10分とした。次いで、膜を抗ラビットIgG F(ab)’−ペルオキシダーゼとともに1時間インキュベートした。最後に、膜を、免疫蛍光法のために上記のようにDAB−H2O2で染色した。
結果
E9ラット胚の解剖からの神経上皮細胞は、殆どの血清無し条件において僅かにしか生存しなかった。EGF、FGF、IGF及び神経ホルモンを単独又は組み合わせて添加した条件では、4日を越えて生存する細胞は無かった。有意な細胞生存及び増殖は、インシュリン、トランスフェリン、α−トコフェロール、プロゲステロン、フォルスコリン、ウシ下垂体抽出物、及びヒト組み換えヘレグリンを含むシュワン細胞成長媒質の存在下での胚シュワン細胞との共培養における細胞にのみ見られた。これらの条件下では、上皮細胞は即座に増殖して大きな細胞コロニーを形成し、それはシュワン細胞を押しのけるか、シュワン細胞単層の下に成長する。細胞コロニーは、二次培養の後に二次コロニーを形成できる。二次培地へのbFGFの添加は、細胞の長い突起を延長させ、モルホロジー的にニューロン突起に類似している。
純粋な細胞を達成するために、胚シュワン細胞条件の媒質(ESCCM)が試験され、同様に、シュワン細胞を含むウェル間挿入での培養も試験された。これは、シュワン細胞を神経上皮細胞と物理的障壁で隔離するとともにシュワン細胞分泌分子は通過できるようにしたものである。両方の方法が、神経上皮細胞の小さな群の生存及び増殖をもたらし、この群は、10日後に長く延びた突起を持つ分化したニューロンを含む上皮細胞の大きなコロニーを形成した。ESCCM又は共培養の無い条件では生存した細胞は無かった。ESCCMの存在下で成長した細胞は良好に二次培養された。最初の5から6継代の間、培地は、細胞型の混合物、上皮型の細胞、紡錘体型のシュワン細胞様細胞型、及び長くて細い突起を持つ小さなニューロンの集合を含む。二次培地は、もはやシュワン細胞条件の媒質を必要としない。上皮型の細胞は、ヘレグリン強力なグリア細胞マイトジェンを取り除いて細胞を高密度に維持することにより豊富化されて続く培養で優勢となる。
これらの正常神経上皮前駆細胞は、生存及び成長のために細胞−細胞接触を必要とする。簡単なトリプシン処理によってさえ、培地の単細胞への分散は細胞死をもたらした。最適な成長は、細胞を1−2×105細胞/cm2密度で配置したときに達成された。群の倍加時間が50時間と計算されたが、成長速度は、細胞が密になるに連れて極端に上昇する細胞の倍加時間に非線形である。融合性培地は、106細胞/cm2の密度を達成したが、常に単層として維持された。細胞は、40継代を越えて(>80群倍加)成長したが、細胞モルホロジー及び成長形態に明らかな変化は見られず、明瞭な細胞老化は観察されなかった。
細胞モルホロジー
細胞系は、上記の日常的二次培養の間、大きな核/細胞質比率を持つ単層上皮細胞モルホロジーを示した。殆どの細胞は、神経前駆細胞−特異的中間径フィラメントタンパク質であるネスチンについて、陽性の免疫系抗染色性を示した。可溶化した細胞膜のウェスタンブロットは、抗−ネスチン抗体で染色されると、報告されているネスチンの分子量に相当する220キロダルトン(Kd)の分子量に1本のバンドを示した。割合は少ないが(<5%)、ニューロン特異的エノラーゼに対して陽性の染色を示し。それは、ウェスタンブロットで46Kdの分子量を有していた。
成長因子反応
NEP細胞系は、生存及び成長のために、インシュリン、ウシ下垂体抽出物、及びフォルスコリン(又はコレラ毒素、又はcAMP類似物)を必要とする。これら3つの成長因子のうちの1つの除去は、細胞数の急激な減少をもたらす(図1A)。これらの成長因子の最適濃度は、10μg/mlのインシュリン、3−10μMのフォルスコリン、及び0.3%(v/v)のウシ下垂体抽出物と決定された(図1B及び1C)。また、インシュリンは、インシュリン様成長因子で置換してもよい。細胞は、IGF−IIよりもIGF−Iに対して感受性である(図1D)。PDGF、EGF、ヘレグリン、白血球阻害因子(LIF)、肝細胞成長因子(HGF)、及び神経ホルモン(NGF、NT−3及びBDNF)等の成長因子は、細胞数を増加させなかった(図1E、F)。TGFβファミリーの成長因子の成員は、細胞成長に阻害効果を有していた(図2A)。TGFβの添加は、かなりの細胞死をもたらした(図2A)。フォルスコリン及びBPEの不存在下では、bFGFが細胞生存を増加させた。インシュリンのみを添加したE12/DMEでは全ての細胞が死亡したが、bFGFを添加すると、細胞の大きな群が浮遊細胞集合として生存した。しかし、7Fの存在下でのbFGFの添加は、細胞増殖を大きく阻害し、処理の24時間を越えて細胞成長を完全にブロックした。それに対して、aFGFは殆ど影響を与えなかった(図2B)。
NEP細胞系のin vitroでの分化
この仮説を試験するために、細胞を6F(インシュリン、トランスフェリン、ウシ下垂体抽出物、ヘレグリン、プロゲステロン、及びα−トコフェロール)のみ、6F+bFGF、又は6F+bFGF+フォルスコリンの存在下で48時間成長させ、次いで、種々のニューロンマーカーで免疫染色した。細胞は、bFGFの存在下で顕著なモルホロジー変化を示し、gFGF+フォルスコリンの存在下でニューロン−様モルホロジーに向けてさらなる発達を示した。これらのモルホロジー変化は、免疫組織化学的に可視化された神経特異的マーカーの発現の増加を伴う。発現している細胞の数及びビメンチン及びツブリンβの両方の発現の程度は、bFGFによって増大し、bFGFとフォルスコリンの組み合わせによって更に増大した。細胞がより分化したモルホロジーとなるにつれ、Map−2、ベリフェリン及び160kd神経フィラメントタンパク質(NF160)等の特異的ニューロンマーカーも誘導されるが、これらは、異なる条件下で異なる程度及び異なる方法で発現する。例えば、NF160は、対照条件における僅かな細胞/細胞接合においてのみ発現される。FGFのみでは、接合における連続した発現及び幾つかの細胞質発現が存在するが、FGF+フォルスコリン条件では、NF160は、細胞表面上及び細胞質と同様に神経突起において見られる。Map2は、両方の因子の存在下で殆どの細胞において発現されるが、ペリフェリンは僅かな細胞にのみ存在する。両方の因子に曝された細胞は、タンパク質キナーゼ(Pkc)、並びに興奮性アミノ酸グルタメート及びアスパルテートを発現する。ニューロン特異的エノラーゼ、シナプトフシン、及びTauを誘発した培地の細胞もあった。低レベルのGFAP及びGal−c等のグリアマーカーが、幾つかの細胞で幾つかの条件に置いて誘発された。これらの結果を表1にまとめる。
Figure 0003636474
実施例II
NEP細胞のin vivo注入及び分化
NEP細胞は、上述のように単離し拡張させた。約1×105から1×106細胞を培地から取り出し、グルコースを含む平衡食塩水中に分散した。細胞を、無菌マイクロシリンジを介して新生ラット脳に注入した。
移植用のNEP細胞は、蛍光生存可能マーカーPKH−26でラベルした。新生ラット脳に注入したとき、NEP細胞は、幾つかの神経細胞表現型を生じた。2つの主要な細胞型が、小脳の適当な層内の典型的なモルホロジーによって同定された。これらの細胞は、Bergmanグリア及び顆粒細胞のモルホロジー特性を有していた。海馬において、殆どの蛍光ラベルされた細胞は、歯状回に組み込まれた。これらの細胞の大部分は、歯状回顆粒細胞に典型的なモルホロジーを有していた。他の細胞は、ニューロン様分化を示したが、モルホロジー的に正確に分類することはできなかった。大脳皮質では、細胞突起の束が脳室領域に及び、環状グリア細胞突起に類似する末端枝を持つ皮質表面までかかる。細胞体の幾つかが追跡され、側方脳室の内側に位置していた。組み込まれた細胞は、脳の右半球のみに注入したにも関わらず左半球にも見られた。
bFGF及びフォルスコリンの存在下、in vitroでNEPから分化したニューロンの大部分は、皮質ニューロン密度に相当するマーカーを示した。分化したニューロンは、タンパク質キナーゼCイソ酵素を発現し、それは排他的にCNS皮質ニューロンで発現された。さらに、これらのニューロンは、その細胞質及び突起の中に興奮性アミノ酸、グルタメート及びアルパルテートを蓄積する。これらのアミノ酸は、皮質ニューロンにおいてのみ神経伝達物質として用いられる。これらのin vitroでのデータは、in vivo実験の結果によって確認された。
bFGF及びフォルスコリンの存在下で、殆どのNEP細胞がアミノ酸性(aminonergic)ニューロンに分化した。しかし、少量の細胞は、アセチルコリン合成の鍵となる酵素であるコリンアセチル−トランスフェラーゼの発現を始めた。NEP系におけるコリン性(cholinergic)ニューロンの分化は、白血球阻害因子(LIF)の添加によって促進された。この結果は、神経冠細胞及び海馬細胞におけるLIFによるコリン性ニューロンの誘発に相当する。成熟したグリア細胞は、in vitroでは同定されなかったが、大脳皮質の小脳及び環状グリア細胞に注入されたとき、NEP細胞はBergmannグリア細胞に分化した。これらを考え合わせると、これらのデータは、NEP細胞系は神経上皮分化の初期段階で停止するが、環境に応じて幾つかの異なるニューロン及びグリア細胞へ分化する能力を維持することを示唆している。
実施例III
ヒトNEP細胞系の単離
神経管は、好ましくは、移植(gestation)の3−4週の胚から得る。解剖した神経管は、上記のNEP培養で記載したようなコラゲナーゼ及び分散溶液で簡単に処理した。次いで、細胞集合体は洗浄して酵素を除去し、予めラットESC、あるいは好ましくはヒト胚シュワン細胞又はシュワン細胞条件の媒質を播種したヒトのラミニン被覆組織培養ディッシュ上に配置(plate)した。ヒトNEP細胞の培養用の培養媒質は、ヒトインシュリン、哺乳類(好ましくはヒト)下垂体抽出物、フォルスコリン、ビタミンE、組み換えヒトヘレグリン、プロゲステロン及びトランスフェリンを含む血清無しの媒質である。上皮細胞の大きなコロニーが成長すると、細胞は、ラットNEP細胞について上述(同上)したように二次培養できる。(共培養された場合)シュワン細胞は、媒質からのヘレグリンの除去及び特異な酵素消化作用により取り除かれる。
材料の寄託
以下の培地を、American Type Culture Collection,12301 Parklawn Drive,Rockville,MD,USA(ATCC)に寄託した。
細胞系 ATCC番号 寄託日
NEP95 CLR11993 1995年10月31日
寄託は、特許手続上の微生物寄託の国際的承認に関するブタペスト条約(ブタペスト条約)の規定に従ってなされた。これは、寄託日から30年間生存可能な培地の保管を保証する。細胞系は、ブタペスト条約の条件下でATCCによって利用可能とされ、直接関係する米国特許の発行時に、公衆に対して培地の子孫を永久に制限無しに利用可能にすることを保証するジェネンテックとATCCとの合意の下にある。
本出願の譲受人は、寄託した培地が適切な条件で培養されたときに死亡または喪失または破壊された場合、通知があったら即座に、同じ培地の生存可能な試料と置き換えることに同意した。寄託された細胞の利用可能性は、権限を持つ全ての政府に下でその特許法に従って許可された権利を侵害する発明の実施の許諾として解釈されるべきではない。
上記の詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのに十分であると考える。本発明は、寄託された培地によって範囲を限定されるものではなく、なぜならば、寄託された実施態様は、本発明の1つの態様を例示することを目的とし、機能的に等価な培地は全て本発明の範囲に含まれる。ここの材料の寄託は、ここに含まれる記載が、最良の形態を含む本発明の全ての態様を実施可能にするのに不十分であり、請求の範囲が代表する特定の例示に限定されると解釈されることを容認するものではない。

Claims (20)

  1. 発生のゼロ−体節段階における哺乳類胚か ら単離された神経組織から正常神経上皮前駆細胞を単離 する方法であって、
    a)前記神経組織を胚シュワン細胞または胚シュワン細胞条件の媒質の存在下で培養し、次いで、
    b)正常神経上皮前駆細胞を単離すること
    を含方法。
  2. 神経組織が神経管である請求項1記載の方法。
  3. 神経組織が、接着因子を予め被覆した固体支持体上で培養される請求項2記載の方法。
  4. 接着因子がラミニンである請求項3記載の方法。
  5. 神経組織が血清無しの媒質中で培養される請求項4記載の方法。
  6. 血清無しの媒質が、ウシ下垂体抽出物、インシュリン、及びフォルスコリンを含む請求項5記載の方法。
  7. 血清無しの媒質が、プロケステロン及びα−トコフェロールをさらに含む請求項6記載の方法。
  8. 神経管が、ラットの胚から誘導されたものである請求項2記載の方法。
  9. 神経管が、9日齢胚からのものである請求項8記載の方法。
  10. 神経管が、ヒトの胚から誘導されたものである請求項2記載の方法。
  11. 他の細胞型から神経上皮前駆細胞を分離する工程をさらに含む請求項7記載の方法。
  12. 正常神経上皮細胞が、ヘレグリンを欠く血清無しの媒質中で二次培養される請求項11記載の方法。
  13. 請求項1記載の方法で単離された正常神経上皮前駆細胞系。
  14. ラット細胞である請求項13記載の正常神経上皮前駆細胞系。
  15. ヒト細胞である請求項13記載の正常神経上皮前駆細胞系。
  16. American Type Culture Collectionに寄託され、CRL11993なる寄託番号を付与された請求項14記載の正常神経上皮前駆細胞系。
  17. 請求項13記載の細胞系と、製薬的に許容される媒体とを含んでなる組成物。
  18. 請求項14記載の細胞系と、製薬的に許容される媒体とを含んでなる組成物。
  19. 請求項15記載の細胞系と、製薬的に許容される媒体とを含んでなる組成物。
  20. 請求項16記載の細胞系と、製薬的に許容される媒体とを含んでなる組成物。
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