JP3634941B2 - ポリプロピレン系樹脂発泡体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリプロピレン系樹脂の発泡体に関する。さらに詳しくは、本発明は、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤との反応によりえられる改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる低密度で発泡体強度の大きい発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂からなる発泡体は、一般に軽量で断熱性や外部からの応力の緩衝性が良好であることから、断熱材、緩衝材、芯材、食品容器などに幅広く利用されている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡体は、低密度ポリエチレンを中心に利用されているが、ポリエチレン系樹脂は、耐熱性が極端に劣るという欠点を有している。一方、ポリプロピレン系樹脂は、弾性が高く、耐溶剤性、耐熱性、ヒンジ特性などに優れていることから、発泡体として、極めて広い利用範囲が期待できる。しかしながら、溶融時の粘度、張力が低く、そのため発泡時に気泡壁の強度が充分に保持されず、ポリエチレン系樹脂の如く肉厚の発泡体にすることは困難であった。
【0004】
そこで、近年、たとえば特願平7−189614号公報においては、ポリプロピレン系樹脂にスチレンモノマーを反応させて作製した改質ポリプロピレン系樹脂を使用して発泡体を製造する方法が開示されている。当該方法は、肉厚で高発泡倍率の発泡体を提供することができる点、および前記改質樹脂を市販のポリプロピレン系樹脂を原料樹脂として使用して安価に製造できる点などから工業的に有用である。
【0005】
前記方法によりえられるポリプロピレン系樹脂発泡体は耐熱性を有するが、さらに長期間にわたって高温下での過酷な環境に耐えて発泡体の特性を維持するためには、優れた機械特性を有することが重要である。しかし、かかる要請を充分に満足する発泡体は現在のところ見いだされていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤との反応によりえられる改質ポリプロピレン系樹脂発泡体であって、発泡体強度が高く、外観美麗な発泡体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、改質したポリプロピレン系樹脂の発泡体に関して詳細な検討を実施したところ、発泡体内部における気泡の状態と発泡体の強度が密接に関係していることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤との反応によりえられる改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる押出発泡体であって、該発泡体の見掛密度が10〜300kg/m3、厚さが15mm以上であり、前記発泡体の幅方向に沿って測定した気泡の平均径LTD、前記発泡体の押出方向に沿って測定した気泡の平均径LMDおよび前記発泡体の厚さ方向に沿って測定した気泡の平均径LVDがいずれも1.2〜2.5mmの範囲内にあり、LTDに対するLMDの比をRMD/TDとし、LTDに対するLVDの比をRVD/TDとするばあい、RMD/TDおよびRVD/TDがいずれも0.5〜2.0の範囲内にある改質ポリプロピレン系樹脂発泡体に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
このばあい、前記改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる押出発泡体において、発泡体内部にある気泡の気泡壁の最大厚さと最小厚さの比が5〜18であるのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の発泡体の特徴は、特定の改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなること、および特定の密度、平均気泡径および気泡形状を有することにある。
【0011】
前記特定の改質ポリプロピレン系樹脂組成物は、原料ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを反応させることによりえられる。
【0012】
本発明に用いうる原料ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体またはプロピレンとほかの単量体とのランダム共重合体などの結晶性の重合体があげられ、剛性が高く、安価であるという点からはプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からはプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体が好ましい。原料ポリプロピレン系樹脂がプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体またはプロピレンとほかの単量体とのランダム共重合体であるばあい、原料ポリプロピレン系樹脂の特徴である高結晶性、高い剛性および良好な耐薬品性を保持する点から、含有されるプロピレン単量体成分が全体の75重量%以上であることが好ましく、全体の90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0013】
前記原料ポリプロピレン系樹脂において、プロピレンと共重合しうるほかの単量体としては、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体およびビニル単量体よりなる単量体の群から選ばれた1種または2種以上の単量体があげられる。また、この単量体としてはプロピレンと共重合しやすく、安価である点から、エチレン、α−オレフィンまたはジエン系単量体が好ましい。
【0014】
前記のプロピレンと共重合しうるα−オレフィンの例としては、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、3−メチル−ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、3,4−ジメチル−ブテン−1、ヘプテン−1、3−メチル−ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1などの炭素数が2または4〜12のα−オレフィンがあげられる。また、前記のプロピレンと共重合しうる環状オレフィンの例としては、シクロペンテン、ノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,8,8a−6−オクタヒドロナフタレンなどがあげられる。また、前記のプロピレンと共重合しうるジエン系単量体の例としては、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどがあげられる。また、前記のプロピレンと共重合しうるビニル単量体の例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどがあげられる。
【0015】
これらの単量体のうち、エチレン、ブテン−1が安価である点からさらに好ましい。
【0016】
前記原料ポリプロピレン系樹脂の分子量(重量平均分子量)は入手しやすいという点から、5万〜200万の範囲内にあることが好ましく、安価であるという点から、10万〜100万の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0017】
また、原料ポリプロピレン樹脂には、必要に応じて、ほかの樹脂、ゴムを本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。ほかの樹脂、ゴムとしては、たとえばポリエチレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1などのポリα−オレフィン、プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン、エチレン/ブテン−1、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1などのα−オレフィン/α−オレフィン共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネンなどのα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン共重合体、エチレン/塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのα−オレフィン/ビニル単量体共重合体、ポリイソブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン、(水素化)スチレンブタジエンランダム共重合体などの(水素化)ビニル単量体/ジエンランダム共重合体、(水素化)スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体などの(水素化)ビニル単量体/ジエン/ビニル単量体ブロック共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレンなどのビニル単量体/ジエン/ビニル単量体グラフト共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体、塩化ビニル/アクリロニトリル、塩化ビニル/酢酸ビニル、アクリロニトリル/スチレン、メタクリル酸メチル/スチレンなどのビニル共重合体などがあげられる。
【0018】
さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸収剤などの安定剤、架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤などの混練材を使用してもよい。
【0019】
また、前記の混練材(ほかの樹脂、ゴム、安定剤および/または添加剤)を用いるばあいは、この混練材は予め原料ポリプロピレン系樹脂に添加されているものであっても、この原料ポリプロピレン系樹脂をイソプレン単量体およびラジカル重合開始剤と反応させるときに添加されるものであってもよい。また、改質ポリプロピレン系樹脂組成物を製造したのちに適宜の方法でこの改質ポリプロピレン系樹脂組成物に添加されるものであってもよい。
【0020】
原料ポリプロピレン系樹脂(前記の各種混練材を含むばあいもある)は粒子状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではない。
【0021】
つぎに、本発明において用いるイソプレン単量体の添加量としては、原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部、とくに0.1〜50重量部が改質ポリプロピレン系樹脂組成物において、ポリプロピレン系樹脂の特徴である耐衝撃性、耐薬品性などが保持されている点で好ましい。
【0022】
なお、イソプレン単量体と共重合可能な単量体、たとえばスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、ニトロスチレン、ビニルフェノール、ジビニルベンゼン、イソプロペニルスチレンなどのビニル単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸エステル、などを併用してもよい。このばあいの添加量の比率としては、本発明の効果を損なわない範囲であればよい。
【0023】
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられるが、本発明においては、ポリプロピレン系樹脂とビニル単量体(からなる重合体)またはポリプロピレン系樹脂とのあいだにグラフト反応を起こさせるために、いわゆる水素引き抜き能を有するものが必要であり、たとえばケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどの有機過酸化物などがあげられる。これらのうちでもとくに水素引き抜き能の高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0024】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、改質ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融粘度が過度に低下せず、かつ経済的であるという点から、原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.5〜5重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0025】
本発明において、原料ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体およびラジカル重合開始剤から改質ポリプロピレン系樹脂組成物を製造する方法は、とくに制限なく、含浸重合法、溶融混練重合法など一般に用いられている方法が採用可能であるが、連続的に改質ポリプロピレン系樹脂組成物を製造することが可能であるという点で、とくに溶融混練重合法が好適に用いられる。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを混合、混練(撹拌)する順序、方法にはとくに制限はない。ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを混合したのち溶融混練(撹拌)してもよいし、ポリプロピレン系樹脂を溶融混練(撹拌)したのち、イソプレン単量体あるいはラジカル重合開始剤を同時にあるいは別々に、一括してあるいは分割して混合してもよい。
【0027】
また、溶融混練時の加熱温度は130〜400℃であることが、原料ポリプロピレン系樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しにくいという点で好ましい。また溶融混練の時間は、通常1〜60分間である。
【0028】
前記の溶融混練の装置としては、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型撹拌機またはダブルヘリカルリボン撹拌機などの縦型撹拌機など高分子材料を適宜の温度に加熱しえ、適宜の剪断応力を与えながら混練しうる装置があげられる。これらのうち、とくに単軸または2軸押出機が生産性の点から好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0029】
改質ポリプロピレン系樹脂組成物を発泡させる方法としては、特に制限はないが、たとえば(1)改質ポリプロピレン系樹脂組成物を溶融させた状態で揮発型発泡剤を圧入して高圧に保持しつつ混練し、ダイより吐出する方法や、(2)改質ポリプロピレン系樹脂組成物と加熱により気体を発生する分解型発泡剤とを溶融混練し成形した後、該発泡剤を分解させて気体を発生させ発泡させる方法などがあげられる。
【0030】
前記方法(1)のばあい、好ましい分解型発泡剤としては、たとえばアゾジカルボンアミド、トリヒドラジノトリアジン、ベンゼンスルホニセミカルバジド、ジアゾジアミノベンゼン、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロテレフターイミド、アゾジカルボン酸バリウム、p,p′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドなどの1種または2種以上があげられる。
【0031】
また、前記方法(2)のばあいに好ましい揮発型発泡剤としては、たとえばプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、クロロジフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類、二酸化炭素、窒素、空気などの無機ガスなどの1種または2種以上があげられる。
【0032】
発泡剤の添加量(含有量)は発泡剤の種類および目標発泡倍率によって選択されるが、一般に前記改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して1〜100重量部であるのが好ましい。
【0033】
また本発明においては、気泡径のコントロールのため、必要に応じて、重曹−クエン酸、タルクなどの公知の発泡核剤を併用してもよい。
【0034】
改質ポリプロピレン系樹脂組成物と発泡剤を混練するための装置としては、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置なの横型撹拌機、ダブルヘリカルリボン撹拌機などの縦型撹拌機などがあげられる。これらのうち、とくにロール、押出機が生産性の点から好ましい。
【0035】
本発明の発泡体は、見掛密度が10〜300kg/m3の範囲内にあり、厚さが15mm以上であることが必要である。見掛密度が10kg/m3未満のばあい、発泡体強度が低下して、緩衝材としての使用に悪影響をおよぼす傾向があり、また、300kg/m3を超えるばあいには、軽量性および価格面から好ましくない。また、発泡体厚さが15mm未満のばあい、積層体とするばあいの如く後加工をしないと発泡体単品では高い衝撃性の発揮が充分に行なえないためである。
【0036】
また、本発明の発泡体は、その幅方向に沿って測定した気泡の平均径LTD、その押出方向に沿って測定した気泡の平均径LMDおよびその厚さ方向に沿って測定した気泡の平均径LVD がいずれも1.2〜2.5mmの範囲内にある。前記のそれぞれの方向に沿って測定した気泡径の少なくともいずれかが1.2mm未満のばあい、発泡体の強度、とくに圧縮強度が低くなり、一方2.5mmを超えるばあい、発泡体の外観および手触りがわるく、緩衝包装材などとして適用しにくいものである。
【0037】
また、本発明の発泡体は押出成形により製造されるが、発泡体の気泡がつぎのような形状のものである必要がある。すなわち、前記発泡体の押出方向に沿って測定した気泡の平均径をLMDとし、幅方向に沿って測定した気泡の平均径をLTDとし、厚さ方向に沿って測定した気泡の平均径をLVDとし、幅方向に沿って測定した気泡の平均径LTDに対する押出し方向に沿って測定した気泡の平均径LMDの比をRMD/TDとし、幅方向に沿って測定した気泡の平均径LTDに対する厚さ方向に沿って測定した気泡の平均径LVDの比をRVD/TDとするばあい、RMD/TDおよびRVD/TD がいずれも0.5〜2.0の範囲内にあることが好ましい。前記RMD/TDおよびRVD/TDの少なくともいずれかが前記の範囲内にない発泡体は、その気泡が偏平した形状を呈し、発泡体強度に方向性を有することになり、偏平している方向(径の短かい方向)に対する応力に対してのみ高い緩衝性を有するものになり好ましくない。また、さらに偏平が進むと気泡が破泡して、独立気泡率が低下することもある。
【0038】
ここで、気泡径(LMD、LVD、LTD)および気泡径の比(RMD/TD、RVD/TD)を算出するに際しては、発泡体の特定の切断面より算出する必要がある。通常、熱可塑性樹脂の押出発泡体は、表面に発泡していないか、または低発泡の薄皮、いわゆるスキン層を有しており、そのスキン層を取り除いた部分における気泡を観測する必要が生じてくる。本発明の改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡体においても発泡体のスキン層を除いた内部の気泡径を測定する必要がある。本発明における発泡体の内部とは、発泡体表層部から少なくとも2mm以上、好ましくは4mm以上内側の、発泡体外周部のスキン層に影響されない箇所をいう。
【0039】
本発明の発泡体の一形態は、改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる押出発泡体のうち、発泡体内部の気泡壁の最大厚さと最小厚さの比が好ましくは5〜18、さらに好ましくは5〜16の発泡体である。
【0040】
最大厚さと最小厚さの比が18より大きな改質ポリプロピレン系樹脂発泡体のばあい、外部より加重が加わった際に内部気泡壁に亀裂および開口が生じ、さらに加重除去後には気泡の変形の回復に時間を要するとともに発泡体強度が著しく低下してしまうため、本発明の発泡体として好ましくない。
【0041】
【実施例】
つぎに実施例および比較例にもとづいて本発明に関する発泡体について説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
実施例1
ポリプロピレン単独重合体(三井石油化学工業(株)製、ハイポールB200、230℃でのメルトフローインデックス0.5g/10分)100重量部に対して、ラジカル重合開始剤としてα,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製、パーブチルP、1分間半減期温度175℃)0.5重量部を配合し、リボンブレンダーを用いて10分間混合撹拌した。この混合物を、(株)日本製鋼所製の2軸押出機(TEX44)のホッパーから50.5kg/hの供給速度で供給し、途中に設けた導入部より、イソプレンモノマー(和光純薬(株)製、特級)10重量部を定量ポンプを用いて5kg/hの速度(プロピレン単独重合体100重量部に対して10重量部となる割合)で供給した。えられた直径約4mmのロッド状の改質ポリプロピレン系樹脂組成物を水冷し、3mmの厚さに細断することにより改質ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットをえた。
【0043】
前記2軸押出機は、同方向2軸タイプであり、シリンダーの孔径が44mmφであり、最大スクリュー有効長(L/D)が28であった。この2軸押出機のシリンダー部の設定温度は、フィード部160℃とし、ラジカル重合開始剤の供給部分までは180℃とし、それ以降は200℃に設定した。スクリューの回転速度は150rpmに設定した。ラジカル重合開始剤の供給部以降の平均滞留時間は約1分間とした。
【0044】
えられた改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部と、ブレンドオイル(越谷化成工業(株)製、スーパーイーズ)0.05重量部、重曹−クエン酸(永和化成(株)製セルボンSC/K)0.1重量部を添加し、リボンブレンダーで混合した。この混合物を65mm−90mmタンデム型押出機に供給し、第一段押出機(60mm)中にて200℃で可塑化したのち、発泡剤としてイソブタンを改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して15重量部圧入し、第二段押出機(65mm)中にて樹脂温度が140℃になるように冷却し、スリット幅40mm、スリット厚3.0mmの矩形ダイより押出し、矩形ダイに直結した成形用金型を通すことにより板状の発泡体をえた。
【0045】
[評価]
えられた板状発泡体の見掛密度、厚さ、独立気泡率、平均気泡径、板状発泡体の押出方向に沿って測定した気泡の平均径(以下、「LMD」ともいう)、板状発泡体の幅方向に沿って測定した気泡の平均径(以下、「LTD」ともいう)、板状発泡体の厚さ方向に沿って測定した気泡の平均径(以下、「LVD」ともいう)、LTDに対するLMDの比(以下、「RMD/TD」ともいう)、LTDに対するLVDの比(以下、「RVD/TD」ともいう)、発泡体の気泡壁厚さをつぎの方法により測定し、外観を目視でつぎの評価基準により評価した。結果を表1に示す。
【0046】
▲1▼見掛密度:重量と水没法により求められる体積から算出した。
【0047】
▲2▼厚さ:ノギスにより測定した。
【0048】
▲3▼発泡体の平均気泡径は、具体的にはつぎの方法により測定した。
【0049】
押出方向の平均気泡径LMD:発泡体を平面上に置き、厚さ1/2の高さのところを、設置平面と平行な平面で切断する。押出方向先端部より少なくとも2mm以上内部をASTM D 3576に準拠して押出方向に沿って測定した結果をLMDとした。
【0050】
幅方向の平均気泡径LTD:発泡体断面において、厚さ1/2の任意の2点を通り、かつ発泡体側部表面より少なくとも2mm以上内部をASTMD 3576に準拠して測定した結果をLTDとした。
【0051】
厚さ方向の平均気泡径LVD:発泡体断面において、幅の1/2の任意の2点を通り、かつ発泡体表面より少なくとも2mm以上内部をASTM D 3576に準拠した結果をLVDとした。
【0052】
RMD/TDおよびRVD/TD:つぎの式:
RMD/TD=LMD/LTDおよびRVD/TD=LVD/LTD
により算出する。
【0053】
▲4▼強度の異方性評価:えられた板状発泡体の圧縮試験をJIS K 7220に準拠して、この発泡体の押出方向、厚さ方向および幅方向について行ない、押出方向への圧縮強度、厚さ方向への圧縮強度および幅方向への圧縮強度を測定する。そして、前記それぞれの圧縮強度のうち最小のものの値に対して、最大のものの値が3倍以下である発泡体を○と評価し、3倍より大きい発泡体を×と評価する。
この評価結果が×である発泡体は、強度の異方性が顕著なものであり、そのためにたとえば緩衝材として不適当なものである。
【0054】
▲5▼発泡体内部の気泡壁厚さ:発泡体表面より少なくとも2mm以上内部から採取した発泡体サンプル10個(切断片)の切断面について、電子顕微鏡写真を撮り(100倍)、1サンプル5個の気泡についてそれぞれ気泡壁の最大厚さと最小厚さを測定したのち、各々の平均値を最大厚さおよび最小厚さとし、その比を求めた。
【0055】
▲6▼発泡体の表面状態:目視で観察し、均一気泡で外観美麗なばあいには○、局部に粗大セルが発生し、発泡が不均一で外観不良なばあいは×とした。
【0056】
実施例2
ホモポリプロピレン(三井石油化学工業(株)製、ハイポールB200)100重量部とイソプレンモノマー10重量部およびα,α′−ビス(ジ−t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製、パーブチルP)1.5重量部を使用して改質ポリプロピレン系樹脂をえた。
【0057】
えられた改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部と、ブレンドオイル0.05重量部および発泡核剤として重曹−クエン酸0.1重量部をリボンブレンダーを用いて混合した。この混合物を65−90φmmタンデム型押出機に供給し、第1段押出機中にて200〜230℃で可塑化した後、発泡剤としてイソブタンを、改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して15重量部圧入し、第2段押出機中にて樹脂温度が140℃になるよう冷却し、スリット幅40mm、スリット厚2.8mmの矩形ダイより押出し、矩形ダイに直結した成形用金型を通すことにより板状の発泡体をえた。えられた発泡体の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0058】
実施例3
エチレンランダムポリプロピレン(三井石油化学工業(株)製ポリプロピレン、ハイポール230、230℃でのメルトフローインデックス0.5g/10分)100重量部とイソプレンモノマー10.0重量部およびα,α′−ビス(ジ−t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製、パーブチルP)0.5重量部を使用して改質ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットをえた。
【0059】
えられた改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部と、ブレンドオイル0.05重量部および発泡核剤として重曹−クエン酸0.1重量部をリボンブレンダーを用いて混合した。この混合物を65−90mmφタンデム型押出機に供給し、第1段押出機中にて200℃で可塑化したのち、発泡剤としてイソブタンを改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して14重量部圧入し、第2段押出機中にて樹脂温度が140℃になるよう冷却し、スリット幅40mm、スリット厚3.5mmの矩形ダイより押出し、矩形ダイに直結した成形用金型を通すことにより発泡体をえた。えられた発泡体の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
エチレンランダムポリプロピレン(三井石油化学工業(株)製ポリプロピレン、ハイポール230)100重量部とイソプレンモノマー11.0重量部およびα,α′−ビス(ジ−t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製、パーブチルP)1.0重量部を、200℃に設定(ただしホッパー口下のみ160℃)した32φmm二軸押出機(L/D=25.5)に供給し、溶融混練し、改質ポリプロピレン系樹脂組成物をえた。
【0061】
えられた改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部、ブレンドオイル0.05重量部および発泡核剤として重曹−クエン酸0.1重量部をリボンブレンダーを用いて混合した。この混合物を65−90mmφタンデム型押出機に供給し、ダイ1段押出機中にて200℃で可塑化したのち、発泡剤としてイソリッチブタン(ノルマル/イソ=15/85)を改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して16重量部圧入し、第2段押出機中にて樹脂温度が138℃になるよう冷却し、スリット幅40mm、スリット厚3.5mmの矩形ダイより押出し、矩形ダイに直結した成形用金型を通すことにより発泡体をえた。えられた発泡体の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
改質ポリプロピレン系樹脂組成物のかわりにホモポリプロピレン(三井石油化学工業(株)製、ハイポールB200、230℃でのメルトフローインデックス0.5g/10分)を用いたほかは実施例1と同様にして、発泡体をえた。この発泡体を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0063】
比較例2
ホモポリプロピレン(三井石油化学工業(株)製、ハイポールB200)100重量部とイソプレンモノマー5重量部およびα,α′−ビス(ジ−t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製、パーブチルP)5重量部を使用して改質ポリプロピレン系樹脂組成物をえた。
【0064】
えられた改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部、ブレンドオイル0.05重量部および発泡核剤として重曹−クエン酸0.1重量部をリボンブレンダーを用いて混合した。この混合物を65−90φmmタンデム型押出機に供給し、第1段押出機中にて200℃で可塑化した後、発泡剤としてイソブタンを、改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して16重量部圧入し、第2段押出機中にて樹脂温度が140℃になるよう冷却し、スリット幅40mm、スリット厚3.0mmの矩形ダイより押出し、矩形ダイに直結した成形用金型を通すことにより板状の発泡体をえた。えられた発泡体の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、従来うることができなかった発泡体強度が高く、外観美麗な発泡体をうることができる。
Claims (2)
- ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤との反応によりえられる改質ポリプロピレン系樹脂組成物からなる押出発泡体であって、該発泡体の見掛密度が10〜300kg/m3、厚さが15mm以上であり、前記発泡体の幅方向に沿って測定した気泡の平均径LTD、前記発泡体の押出方向に沿って測定した気泡の平均径LMDおよび前記発泡体の厚さ方向に沿って測定した気泡の平均径LVDがいずれも1.2〜2.5mmの範囲にあり、LTDに対するLMDの比をRMD/TDとし、LTDに対するLVDの比をRVD/TDとするばあい、RMD/TDおよびRVD/TDがいずれも0.5〜2.0の範囲にある改質ポリプロピレン系樹脂発泡体。
- 発泡体内部にある気泡の気泡壁の最大厚さと最小厚さの比が5〜18である請求項1記載の改質ポリプロピレン系樹脂発泡体。
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