JP3634257B2 - Ni拡散メッキ鋼板の製造方法および鋼板 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、Ni拡散メッキ層が軟質でプレス加工時の塑性加工性、加工後の耐食性に優れ、更に、優れた光沢度のミラーブライト表面を有するNi拡散メッキ鋼板の製造方法および鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Niメッキ後、 熱処理を施すNi拡散メッキ鋼板の製造方法としては、 文献−1(大村等、大村英雄: 東洋鋼鈑,29(1991),p43)、特開昭61−235594号公報、特開平6−2104号公報の方法がある。これらのいずれの方法においても、 Niメッキ後熱処理を施すことによって、 Niメッキ層が再結晶すると共に軟質化し、プレス加工後においてもNiメッキ層の良好な塑性加工性が確保され、 優れた耐食性が得られるのであるが、 本発明が目標とする光沢度の良好なNi拡散メッキ鋼板は得られない。
【0003】
文献−1は、 該社のNiメッキ鋼板の製造品種の製造法とその特性を紹介したものである。 同文献は、 「Ni拡散メッキ法はブライトとダル仕上げ表面(文献ではbright and dull finishと記載) の製品が製造でき、 本発明が目標とするミラーブライト表面を有する光沢度の優れたNiメッキ鋼板は、 半光沢Niメッキ層の上に光沢Niメッキを施してミラーブライト(文献ではmirror−like Iustrous surfaceと記載)表面の製品が造れること( 熱拡散処理無しの2重めっき処理) が、 また、 硫黄が添加される光沢メッキは、 硫黄がNiメッキ層中に吸着され、 その後の拡散熱処理時に硫黄の影響でNi拡散メッキ層が脆化する。 従って、 光沢メッキには熱拡散処理の適用は困難である。」を明らかにしている。
【0004】
また、 特開平6−2104号公報は、 文献−1とほぼ同じ技術に基づいたものでブライト或はダルの表面仕上げのものはできる技術を開示しているが、ミラーブライト表面のNi拡散メッキ鋼板の開示はない。 更に、 特開昭61−235594号公報も同様にミラーブライト表面のNi拡散メッキ鋼板の開示はない。
尚、特開平10−280184号公報には、本発明と目的を同じくする発明が開示され、最も高い光沢度のものは、調質圧延ロールを硬質Crロールにすることによって、最高で、光沢度が1020が得られている実施例が示されているが、硬質Crメッキロールを使わねばならず製造コストが高くなる。
【0005】
以上、 上述のように、 本発明が狙いとするNiメッキ層が軟質でプレス加工時の塑性加工性に優れ加工後の耐食性にも優れた光沢度が1020超のミラーブライト表面を有するNi拡散メッキ鋼板はなく、又、製造コストの高い硬質Crメッキロールを使用しないで通常の調質圧延ロールで950以上の良好な光沢度を有する鋼板の製造方法もない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、 Ni拡散メッキ層が軟質でプレス加工時の塑性加工性、加工後の耐食性に優れ、更に、優れた光沢度のミラーブライト表面を有するNi拡散メッキ鋼板の製造方法および鋼板を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、 Ni拡散メッキ層が軟質でプレス加工時の塑性加工性に優れ加工後の耐食性にも優れたミラーブライト表面を有する光沢度の優れたNi拡散メッキ鋼板の製造方法および鋼板を提供することについて、 鋭意検討を行い本発明を完成したものであり、 その要旨とするところは下記の通りである。
(1)通常の製法で造られた熱延鋼板を酸洗後、冷間圧延を行うに当り、少なくとも最終スタンドの圧延ロールをRa:0.3〜2.0μmのダルロールを用い冷間圧延鋼板を製造し、脱脂、 酸洗を経て、 Niメッキを行うに当り、 無光沢或は半光沢Niメッキ浴で浴中のS濃度を規制し、 Niメッキ層中のS含有量を0.05%以下に制御した5〜50g/m2 のNiメッキ鋼板を製造した後、 650℃以上で再結晶焼鈍とNiメッキ層の合金化拡散熱処理を行い、 その後、 表面粗さRaが0.07μm以下のロールでの伸び率が1.3%以上でドライ調質圧延を施すことを特徴とする光沢度が950超のミラーブライト表面を有し、 最表層のFe濃度が50%以下であることを特徴とする塑性加工性と耐食性に優れたNi拡散メッキ層を有するNi拡散メッキ鋼板の製造方法。
【0008】
(2)通常の製法で造られた熱延鋼板を酸洗後、冷間圧延を行うに当り、少なくとも最終スタンドの圧延ロールをRa:0.3〜2.0μmのダルロールを用い冷間圧延鋼板を製造し、再結晶焼鈍後、必要に応じ調質圧延を施し、その後、Niメッキを行うに当り、 無光沢或は半光沢Niメッキ浴で浴中のS濃度を規制し、 Niメッキ層中のS含有量を0.05%以下に制御した5〜50g/m2 のNiメッキ鋼板を製造した後、 550℃以上でNiメッキ層の合金化拡散熱処理を行い、 その後、 表面粗さRaが0.07μm以下のロールでの伸び率が1.3%以上でドライ調質圧延を施すことを特徴とする光沢度が950超のミラーブライト表面を有し、 最表層のFe濃度が50%以下であることを特徴とする塑性加工性と耐食性に優れたNi拡散メッキ層を有するNi拡散メッキ鋼板の製造方法。
【0009】
(3)前記(1)または(2)記載のNi拡散メッキ鋼板の製造法において、 Niメッキ後の調質圧延工程での、Raが0.07以下のロールでの伸び率が1.8%以上で、 ドライ調質圧延を施すことを特徴とする光沢度が1020超であるNi拡散メッキ鋼板の製造方法。
(4)前記(1)〜(3)のNi拡散メッキ鋼板の製造法において、Niメッキ後の調質圧延を施すに当り、 少なくともRa:0.07μm以下のロールが硬質Crメッキロールであることを特徴とする光沢度が1020超のNi拡散メッキ鋼板の製造方法。
【0010】
(5)Niのめっき量が5〜50g/m2 で、 熱処理によりそのNiメッキ層の少なくとも一部がFe−Ni合金層を形成しているNi拡散メッキ鋼板において、 Ni拡散メッキ層のS含有量が0.05%以下で、 且つ、 Ni拡散メッキ層が圧延ロールで平滑化された光沢度が1020超のミラーブライト表面を有し、 最表層のFe濃度が50%以下であることを特徴とする塑性加工性と耐食性に優れたNi拡散メッキ鋼板である。
尚、本発明では、Ni拡散メッキ層とは、焼鈍によって延性が向上した「純Niメッキ層+Fe−Ni拡散メッキ層」或いは、「Fe−Ni拡散メッキ層」をさす。又、Ni拡散メッキ鋼板とは、上記のNi拡散メッキ層を有する鋼板をさす。
【0011】
以下に本発明について詳細に述べる。
本発明者らは、 まず、 Niメッキ後、 熱処理を施すNi拡散メッキ層が優れた塑性加工性を有し、且つ耐食性にも優れたNi拡散メッキ鋼板について、 種々の検討を行った。Ni拡散メッキ層の塑性加工性について、 再結晶焼鈍を施していない冷間圧延後のIF鋼に、 無光沢、 半光沢、 光沢Niメッキを施し、 26.4g/m2 のNiメッキ鋼板を施し、 連続焼鈍で焼鈍温度時間を変え拡散状態を変えた種々のNi拡散メッキ鋼板に1.0%の調質圧延を施した試験片を造り、 Niメッキ層中のS含有量とNi拡散メッキ最表層のFe濃度とを測定すると共に、 試験片を円筒深絞り加工を行い側壁部のNi拡散メッキ層表面を倍率200倍で走査型顕微鏡でNi拡散メッキ層にクラックが入っているか否かの観察(以下、Ni拡散メッキ層の割れ評価試験と記す) と、 絞り缶を塩水噴霧試験(5%塩水、35℃、6Hr.:以下、単にSST試験という) を行い赤錆発生率(面積%)の調査を行った。
【0012】
絞り加工後の側壁のNi拡散メッキ層の割れ性は、1)Ni拡散メッキ層中のS含有率が0.05%超になると割れが発生し始めることが明らかとなりNi拡散メッキ層中のS含有率は少なくとも0.05%以下でなければ良好な塑性加工性を有するNi拡散メッキ層が得られないことが判明した。 2)Ni拡散メッキ層の最表層まで拡散してきたFeの含有率は、 少なくとも50%以下でなければならないことが判明した。 尚、 本発明の場合は、Ni拡散メッキ層の最表層のFe含有率が50%まで良好な塑性加工性が得られる理由はNi拡散メッキの拡散条件が連続焼鈍で均熱時間が10〜120secと短いことに起因しているものと思われる。
【0013】
絞り缶のSST試験での赤錆発生率は、 Ni拡散メッキ層の健全性で整理できNi拡散メッキ層が割れていなければ良好な加工後の耐食性が得られず、 優れた加工後の耐食性を得るには、 Ni拡散メッキ最表層の拡散してきたFeの含有率は、 少なくとも50%以下にする必要がある。
Niメッキは、 良好な耐食性とメッキ層の加工性を得るには、 少なくとも、 無光沢或は半光沢NiメッキでS含有量が0.05%以下で、 Niメッキ目付量が5g/m2 以上に規制しなければならない。 Ni目付量が5g/m2 未満では、 Niメッキ後拡散処理を行った場合でも目付量が少なすぎピンホール欠陥を防止できなくなり耐食性が確保できなくなる。
【0014】
次に、 本発明者らは、 Ni拡散メッキ層が軟質でプレス加工時の塑性加工性に優れ加工後の耐食性にも優れ、 且つ、ミラーブライト表面を有する光沢度の優れたNi拡散メッキ鋼板の製造方法および鋼板を提供することについて検討を行った。本発明者らは、 特開平10−280184号公報と同様に、上述の検討において、 一般的に行われている光沢Niメッキはメッキ層中にSが含有されるため、 Ni拡散メッキ層が脆くなりプレス加工時に剥離すること、またプレス加工後の耐食性も劣化すると言う問題を有していることが明らかとなったので、 無光沢メッキ後拡散処理を行いその上に光沢Niメッキを行うことを検討した。 その結果、 優れた光沢度が得られプレス加工後の耐食性も確保できるが、 表層の光沢メッキは熱処理が成されていないため硬く脆いのでプレス加工時に光沢メッキ部が割れ剥離脱落しやすいことが判明した。 また、 この方法は2重メッキを施す必要があり製造コストも高くなる。
【0015】
そこで、 本発明者らは、 特開平10−280184号公報の請求項6の硬質Crメッキロールで調質圧延で得られる良好な光沢度のNi拡散メッキ鋼板を、製造コストの安い通常のミラーブライトロールで製造する方法、および、光沢度が1020超の更に優れたNi拡散メッキ鋼板並びに製造方法を種々検討し、本発明の鋼板および製造方法を見出した。
通常のミラーブライトロールを用いた調質圧延方法で更に優れたミラーブライト表面光沢を得る方法について、種々検討した結果、特開平10−280184号公報のような調質圧延方法のみでは達成が困難で、冷間圧延時のタンデム圧延の少なくとも最終スタンドのロールを、通常使用されているスムースロールから、Raが0.3〜2.0μmのダルロールにすることが必要であることを見いだした。
【0016】
即ち、より光沢度の優れたNi拡散メッキ鋼板を得るには、冷間圧延ロールよりも平滑なロールにするのが好ましいと考えられるが、結果は逆で、より粗いダルロールとすることで、特開平10−280184号公報の発明の効果を更に向上させることが可能であることを見いだしたのである。
本発明者等は、その原因を究明した結果、スムースロールで冷間圧延を施すと、冷間圧延の後段でロールがスリップしたり焼き付いてできるスリップ痕が全面に多数発生し、ミラーブライトロールを用いた調質圧延でもそのスリップ痕が除去できず残るため到達する光沢度に限界があるが、ダルロールではスリップ痕が入らず、金属光沢をした冷間圧延鋼帯ができ、その後のミラーブライトロールを用いた調質圧延でより高いレベルの光沢度が得られることを見いだした。又、更に、製造コストは高くなるが、硬質Crメッキのミラーブライトロールで調質圧延を施すと、更に光沢度が向上し1050以上の極めて優れた光沢度が得られることも見いだした。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の構成条件の詳細な説明を行う。
対象となるNi拡散メッキ鋼板は、 5 〜50g/m2 厚みのNi拡散メッキ鋼板で、 メッキ厚みが5g/m2 未満では処理中に地鉄からのFeの拡散が速くNi最表層にFe濃度が50%を越えやすくなるとともに、5g/m2 未満ではNiメッキ時のピンホールが多くなり耐食性が劣化するので5g/m2 以上に規制する必要がある。 又、 上限を50g/m2 としたのは、 耐食性の向上効果が飽和しかつ電気メッキで50g/m2 超のメッキを施すには製造コストが高くなりするので、 上限値を50g/m2 とした。
【0018】
下地の鋼板は、 Niメッキを施せるものであれば特に限定する必要がないが、 冷間圧延時に、少なくとも最終スタンドの圧延ロールをRa:0.3〜2.0μmのダルロールを用いて冷間圧延された未再結晶の鋼板を用いる必要がある。
尚、 再結晶焼鈍後の鋼板でも更に調質圧延後の鋼板でも同等の品質が得られるが焼鈍を2 回行うことになるので経済的には未再結晶板にNiメッキを行う1回焼鈍法が好ましい。
【0019】
Niメッキ条件は、 例えばワット浴のような通常行われているメッキ方法で、 無光沢或は半光沢NiメッキでNiメッキ層中のS含有量が0.05%以下に規制し、 Niメッキ目付量を5g/m2 以上にしなければならない。 絞り加工後の側壁のNiメッキ層の割れ性は、メッキ層中のS含有率が0.05%超になると割れが発生し始めるようになるのでNiメッキ層中のS含有率は少なくとも0.05%以下でなければならない。 尚、 Ni目付量が5〜50g/m2 でなければならない理由は上述の通りである。
【0020】
鋼板自体の再結晶焼鈍を兼ねたNi拡散熱処理は、 連続焼鈍炉で650℃以上で、鋼板の再結晶焼鈍とNiメッキ層の合金化拡散熱処理とを行う必要がある。又、2回焼鈍法の場合は、鋼板の再結晶焼鈍を行い、Niメッキを施し、その後、Ni拡散熱処理を550℃以上で連続焼鈍或いは箱焼鈍で行えばよい。但し、箱焼鈍法の場合には焼鈍時間が非常に長いのでNi−Feの相互拡散の距離が長すぎNiメッキ層の最表層のFe濃度が50%超にならないようにする必要がある。この拡散処理により、Ni拡散メッキ層の塑性加工時並びに耐食性がすぐれたものになる。
【0021】
調質圧延条件は, 表面粗さRaが0.07μm以下のロールで、 伸び率が1.3%以上になるように行わなければならない。又、1020超の優れた光沢度を得るには、表面粗さRaが0.07μm以下のロールで、 全伸び率を1.8%以上でなければならない。又、調質圧延ロールを硬質Crメッキロールとするときは、硬質Crメッキロールでの伸び率を1.3%以上にすると1020超の光沢度が得られ、更に、硬質Crメッキロールでの伸び率を1.8%以上にすると1050超の極めて優れた光沢度が得られる。
以上の製造方法で得られためっき量が5〜50g/m2 、Ni拡散メッキ層中のS含有量が0.05%以下で、 且つ、 Ni拡散メッキ層が圧延ロールで平滑化され光沢度の優れたミラーブライト表面を有し、 最表層のFe濃度が50%以下であるNi拡散メッキ鋼板は、優れた光沢とNi拡散メッキ層の優れた塑性加工性と耐食性とを両立させることができる。
【0022】
【実施例】
以下に本発明の効果を実施例により説明する。
表1および表2に示す組成、 熱延、冷延条件で0.26mm厚みの冷間圧延コイルを製造し、表2に示す条件で、アルカリ脱脂、 酸洗後ワット浴でのNiメッキ、鋼板の再結晶焼鈍を兼ねたNi拡散熱処理或いは、鋼板の再結晶焼鈍後NiメッキおよびNi拡散熱処理を行い、表3に示す調質圧延を施しNi拡散メッキ鋼板を試作した。試作したNi拡散メッキ鋼板の品質を調査するため、 前述と同様の条件で、 光沢度、 Fe濃度(Fe/Fe+Ni比%)、円筒絞り加工後の側壁外面をSEM観察し評価したNi拡散メッキ層の割れ(0:割れ無し、 ×: 割れ発生)、胴缶外側面のSST耐食試験後の赤錆発生面積率%を調査し、 その結果を表3に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
供試鋼Aは、 C含有量が0.0019%で、Tiを0.035%、Nbを0.008%、Bを0.0003%添加したNb−Ti添加極低炭素鋼で、軟質で深絞り性に優れた特性が得られる鋼である。
供試鋼Bは、 C含有量が0.040%のブリキ原板として一般に用いられるAl−K鋼である。
試料No.1,2は、特開平10−280184号公報の従来例で、絞り缶のNiメッキ層の割れ、赤錆の発生はなく、光沢度も850,800とまずまずではあるが、本発明の目標とするレベルには未達である。
【0027】
試料No.3,4−1は本発明の請求項2の実施例で、 光沢度も1025,1040と優れた値が得られている。
試料No.4−2は、調質圧延ロールを硬質CrメッキしたMB(ミラーブライト)仕様のRaが0.04μmの調質圧延ロールで2.0%の調質圧延を行った本請求項4、5の実施例で、1100の極めて優れた光沢度が得られている。
試料No.4−3は、タンデムロールをダルロールとした本発明の冷間圧延条件であるが、調質圧延ロールをRa:0.10μmのブライトロールとした比較例で、光沢度は800にとどまっている。
【0028】
試料No.5は、冷間圧延時のロールがダルロールであるがRaが3.50μmと粗すぎた比較例で、目標の950以上の光沢度が得られていない。
試料No.6は、低炭Al−K鋼を用いた本発明の実施例で、良好な光沢度が得られている。
試料No.7は、冷間圧延時のロールを硬質Crメッキのダルロールを使用した本発明の実施例で、光沢度が1090と極めて優れた値が得られている。
【0029】
試料No.8,9は、何れも2回焼鈍方式の本発明の実施例で、良好な光沢度並びに絞り缶のNiメッキ層の割れおよび赤錆発生のないNiメッキ鋼板が得られた。
試料No.10は、冷間圧延ロールがスムースロールで、且つメッキ層中のS濃度が本発明の限度を超えた比較例で、光沢度が未達で、絞り加工後のNi拡散メッキ層が割れ、そして耐食性が劣悪となっている。
以上の実施例の結果から明らかなように、 本発明の方法によって、 「Ni拡散メッキ層が軟質でプレス加工時の塑性加工性,加工後の耐食性に優れ、更に、優れた光沢度のミラーブライト表面を有するNi拡散メッキ鋼板の製造方法および鋼板を提供すること」が十分に達成できる。
【0030】
【発明の効果】
以上の実施例の結果から明らかなように、 本発明の方法によって、 本発明が解決しようとする課題の、 「Ni拡散メッキ層が軟質でプレス加工時の塑性加工性、加工後の耐食性に優れ、更に、優れた光沢度のミラーブライト表面を有するNi拡散メッキ鋼板の製造方法および鋼板を提供すること」が十分に達成でき、 工業的価値が極めて大である。
Claims (5)
- 通常の製法で造られた熱延鋼板を酸洗後、冷間圧延を行うに当り、少なくとも最終スタンドの圧延ロールをRa:0.3〜2.0μmのダルロールを用い冷間圧延鋼板を製造し、脱脂、 酸洗を経て、 Niメッキを行うに当り、 無光沢或は半光沢Niメッキ浴で浴中のS濃度を規制し、 Niメッキ層中のS含有量を0.05%以下に制御した5〜50g/m2 のNiメッキ鋼板を製造した後、 650℃以上で再結晶焼鈍とNiメッキ層の合金化拡散熱処理を行い、 その後、 表面粗さRaが0.07μm以下のロールでの伸び率が1.3%以上でドライ調質圧延を施すことを特徴とする光沢度が950超のミラーブライト表面を有し、 最表層のFe濃度が50%以下であることを特徴とする塑性加工性と耐食性に優れたNi拡散メッキ層を有するNi拡散メッキ鋼板の製造方法。
- 通常の製法で造られた熱延鋼板を酸洗後、冷間圧延を行うに当り、少なくとも最終スタンドの圧延ロールをRa:0.3〜2.0μmのダルロールを用い冷間圧延鋼板を製造し、再結晶焼鈍後、必要に応じ調質圧延を施し、その後、Niメッキを行うに当り、 無光沢或は半光沢Niメッキ浴で浴中のS濃度を規制し、 Niメッキ層中のS含有量を0.05%以下に制御した5〜50g/m2 のNiメッキ鋼板を製造した後、 550℃以上でNiメッキ層の合金化拡散熱処理を行い、 その後、 表面粗さRaが0.07μm以下のロールでの伸び率が1.3%以上でドライ調質圧延を施すことを特徴とする光沢度が950超のミラーブライト表面を有し、 最表層のFe濃度が50%以下であることを特徴とする塑性加工性と耐食性に優れたNi拡散メッキ層を有するNi拡散メッキ鋼板の製造方法。
- 請求項1または2記載のNi拡散メッキ鋼板の製造法において、 Niメッキ後の調質圧延工程での、Raが0.07以下のロールでの伸び率が1.8%以上で、 ドライ調質圧延を施すことを特徴とする光沢度が1020超であるNi拡散メッキ鋼板の製造方法。
- 請求項1〜3のNi拡散メッキ鋼板の製造法において、Niメッキ後の調質圧延を施すに当り、 少なくともRa:0.07μm以下のロールが硬質Crメッキロールであることを特徴とする光沢度が1020超のNi拡散メッキ鋼板の製造方法。
- Niのめっき量が5〜50g/m2 で、 熱処理によりそのNiメッキ層の少なくとも一部がFe−Ni合金層を形成しているNi拡散メッキ鋼板において、 Ni拡散メッキ層のS含有量が0.05%以下で、 且つ、 Ni拡散メッキ層が圧延ロールで平滑化された光沢度が1020超のミラーブライト表面を有し、 最表層のFe濃度が50%以下であることを特徴とする塑性加工性と耐食性に優れたNi拡散メッキ鋼板。
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