JP3632225B2 - 研削装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、工作物の外径を研削する研削装置に関する。詳細にはインプロセス定寸装置を有する研削装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
円筒研削盤等の研削装置においては、図17に示すように、主軸台と心押台のセンタ15a,16aにより支持した工作物Wに対し回転する砥石車19を有する砥石台を送り込んで被研削面Waの外径を研削している。この種の円筒研削加工においては、高い精度を得るために定寸装置24を用いて研削中に被研削面Waの外径を計測しながら加工を行っている(インプロセス定寸制御)。
【0003】
この定寸装置24は工作物Wの被研削面Waの外径寸法を連続的に測定し、その測定信号(アナログ信号)をA−Dコンバータを介して研削装置の制御装置に出力するようになっている。この入力された測定値は研削装置の制御装置にて所定のサンプリング周期で使用されその瞬間における測定値とされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図15に定寸装置24にて測定した被研削面Waの外径寸法(以下、工作物径という)dwおよび砥石台駆動用のサーボモータに取り付けられたエンコーダからの出力から測定した砥石台の位置(以下、砥石位置という)dxの時間推移を示した測定結果の一例を示す。なお、砥石位置dxは定寸装置24のサンプリング周期と同じ周期で測定されており、測定値は工作物Wの被研削面Waの外径に変換してある。すなわち、工作物Wの回転軸線から砥石車19の先端位置までの距離を半径としたときの直径の値として格納される。図15の径dwおよび砥石位置dxはマクロ的に見ると直線的に変化している。ところが、図16に示す工作物径dwの時間推移の拡大図のように工作物径dwをミクロ的に見ると、トルクの変動に起因する周期的な変動やノイズによるバラツキが発生している。ただし、このバラツキは工作物径dwに対して誤差範囲内にあるため、工作物径dwの値を直接利用する場合や砥石位置dxとの差である研削残量を算出する場合には影響を与えない。しかし、工作物径dw変位の傾きである工作物径の変化率を計算する場合にはその誤差が拡散されるために測定された工作物径dwを直接利用して工作物径dwの変化率を算出することができないといった問題があった。
【0005】
また、この定寸装置24を用いて工作物Wと砥石車19の接触点を検知する場合、工作物径dwの変化を監視し、工作物径dwの値が減少し始めた時を砥石車19と工作物Wの接触点として検知することが行われているが、上述したトルク変動に起因する周期的な変動やノイズによるバラツキにより、砥石車19と工作物Wの接触点が実際の接触点とずれるといった問題があった。
【0006】
さらに、インプロセス定寸制御においては、定寸装置24からの測定値(工作物径dw)に従って研削加工が行われるため、定寸装置24に何らかの要因で不都合が生じ、誤った測定値(工作物径dw)が研削装置の制御装置に出力されると正常な加工が行われなくなる。そして、砥石車19による研削加工が行われているにもかかわらず、定寸装置24からの測定値(工作物径dw)が変化しない場合には、砥石車19による切り込みが継続され工作物Wの目標加工径を越えても切り込みがなされてしまい、手直し加工の不可能な工作物Wが発生してしまうという問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した問題点を解決するための請求項1記載の発明の構成は、定寸装置を用いて加工中の工作物径を測定しながら研削加工を行う研削装置において、前記定寸装置により測定される工作物径を所定のサンプリング周期で入力し、工作物径の測定値として記憶保持する測定値保持手段と、前記測定値保持手段により記憶保持されている前記工作物径の少なくとも工作物1回転当たりの測定回数分の前記工作物の測定値を平均化した工作物径の平均値を前記サンプリング周期毎に求める測定値平均化手段と、前記測定値平均化手段により求められた前記工作物径の平均値の変化の傾きを算出し、この傾きに前記サンプリング周期に前記測定回数を乗じて求められる時間の半分を乗じることにより補正した平均化工作物径を求める平均値補正手段と、前記平均値補正手段により求められた前記平均化工作物径を前記定寸装置の測定時における工作物径として砥石台の送りを制御する制御手段とからなる。
【0008】
また、請求項2記載の構成は、前記研削装置において、前記砥石台の位置を前記所定のサンプリング周期にて測定する砥石位置測定手段と、前記平均化工作物径と前記砥石台の位置とから前記定寸装置の測定時における研削残量を算出する研削残量算出手段と、前記研削残量算出手段により求められた前記研削残量に基づき砥石車と前記工作物が接触したことを検知する接触検知手段とからなる。
【0009】
さらに、請求項3記載の発明の構成は、請求項2記載の研削装置において、前記測定値保持手段に保持された前記工作物径から工作物径の変化量を前記サンプリング周期毎に算出する径変化量算出手段と、前記研削残量算出手段により算出された前記研削残量と前記径変化量算出手段により算出された前記工作物径の変化量に基づき前記定寸装置の異常を判断する定寸装置異常判別手段とからなる。
【0010】
【作用】
請求項1に係る本発明の作用は、定寸装置による工作物径の測定が開始されると、あらかじめ設定されているサンプリング周期で工作物径の測定値が入力され、測定値保持手段により記憶保持される。そして、測定値平均化手段によって前記測定値保持手段に記憶保持されている工作物径の測定値の少なくとも工作物1回転当たりの測定回数分の工作物の測定値から工作物径の平均値が前記所定のサンプリング周期で随時求められる。続いて、前記測定値平均化手段によって求められた工作物径の平均値を平均値補正手段により時間的に補正し平均化工作物径が求められる。以上により求められた平均化工作物径を定寸装置の測定時の工作物径として制御手段により砥石台の送りを制御して研削加工を行う。
【0011】
また、請求項2に係る発明の作用は、砥石位置測定手段によって前記所定のサンプリング周期にて測定された砥石台の位置と前記平均化工作物径から前記研削残量が研削残量算出手段にて算出される。そして、この研削残量の値に基づいて工作物と砥石車の接触が接触検知手段にて検出される。
さらに、請求項3に係る発明の作用は、定寸装置による工作物径の測定が開始されると、工作物径測定手段によりあらかじめ設定されているサンプリング周期で工作物径が入力される。この入力された工作物径は、測定値保持手段により記憶保持される。そして、径変化量算出手段によって前記測定値保持手段に記憶保持されいる工作物径の測定値から工作物径の変化量が前記所定のサンプリング周期毎に随時求められる。また、砥石位置測定手段により前記所定のサンプリング周期毎に測定された砥石台の位置と前記径変化量算出手段によって算出された工作物径の変化量に基づいて定寸装置の異常が定寸装置異常判別により判別される。
【0012】
【実施例】
以下図面に基づき本発明の実施例を説明をする。
図1は本発明の実施例である研削装置の全体構成図であり、研削盤10のベッド11上に左右方向(Z方向)移動可能に案内支持した工作物テーブル12上には、主軸15を軸承する主軸台14と心押台16が左右方向に対向して同軸的に設けられ、工作物Wは主軸15と心押台16に設けたセンタ15a,16aにより両端が支持されている。主軸15は主軸台14に設けたモータ18により回転駆動され、工作物Wは左端部が主軸15から突設された回止め部材17に係合されて主軸15と共に回転される。
【0013】
また、ベッド11上には、Z方向と直交する水平なX方向に移動可能に砥石台13が案内支持され、この砥石台13にはCBN砥石等の砥石車19が主軸15と平行な砥石軸20により軸承され、Vベルト回転伝達機構21を介してモータ22により回転駆動される。ベッド11に設けたサーボモータ23は、数値制御装置30のパルス分配回路34から分配される制御パルスに基づいて作動する駆動回路41により制御駆動され、図略の送りねじ装置を介して砥石台13にX方向の送りを与えるものである。エンコーダ等の位置検出器25はサーボモータ23の回転角度を介して砥石台13の移動位置を検出し、この検出値はセンサコントローラ42を介して数値制御装置30に入力される。
【0014】
工作物テーブル12上に設置された定寸装置24は、1対の測定子34aの先端部を研削中の工作物Wの被研削面に係合してその外径寸法を連続的に直接測定し、その測定信号(アナログ信号)は数値制御装置30に入力される。
数値制御装置30は、図1に示すように、研削装置全体を制御し管理する中央処理装置(CPU)31、メモリ32、外部とのデータの授受を行うインタフェース33、及びCPU31からの指令に応じて駆動パルスを分配送出するパルス分配回路34を備えている。CPU31には、A−Dコンバータ35を介して定寸装置24が接続され、またセンサコントローラ42が接続されている。このセンサコントローラ42はCPU31により制御され、前述の位置検出器25が接続されている。更に、インタフェース33には、制御データ等を入力するキーボード等の入力装置40が接続され、またパルス分配回路34には、駆動回路41を介して前述のサーボモータ23が接続されている。メモリ32には、工作物Wを加工するための加工プログラム及びその他のデータ等が格納されている。また、メモリ32には後述する砥石位置dxおよび工作物径dw、砥石位置の平均値Adxおよび工作物径の平均値Adw並びに平均化砥石位置DXおよび平均化工作物径DWをそれぞれ工作物1回転当たりの測定回数分ずつ記憶保持する第1バッファ32a、第2バッファ32bおよび第3バッファ32cがそれぞれ設けられている。
【0015】
次に、上記のように構成された本実施例の動作を、図2に示すフローチャート並びに図3、図4および図5に示す説明図により説明する。
数値制御装置30のCPU31は入力装置40からの指令により研削装置が作動を開始すると砥石車19を回転し、主軸台14と心押台16により支持された工作物Wがモータ18により所定の速度で回転する。また、定寸装置24の測定も開始される。そして、図2のフローチャートに示すプログラムが実行される。ただし、以下の各ステップは全てサンプリング周期Δt毎に実行されるものとする。なお、サンプリング周期Δtとは定寸装置24にて測定される工作物Wの被研削面の外形寸法をサンプリングする時間である。
【0016】
まず、ステップ101にて定寸装置24によって測定された工作物Wの被研削面の外径(以下、工作物径という)dwがA−Dコンバータ35を介してデジタル信号としてCPU31に入力される。なお、説明のため、時刻tにおける工作物径をdw(t)と記す。
続くステップ102にて位置検出器25によって測定された砥石台13の切り込み位置(以下、砥石位置という)dxがセンサコントローラ42を経てCPU31に入力される。なお、説明のため、時刻tにおける砥石位置をdx(t)と記す。また、この砥石位置dxの値は工作物Wの被研削面の外径、すなわち、工作物Wの回転軸線から砥石車19の先端位置までの距離を半径としたときの直径の値に換算されているものとする。
【0017】
ステップ103にて、ステップ101で入力された工作物径dw(t)および後述する第1バッファ32a(図3参照)内に記憶保持されている工作物径dw(t−Δt),dw(t−2NΔt),...,dw(t−(N−1)Δt)から次式より工作物径の平均値Adw(t)が算出される。
【0018】
【数1】
【0019】
この式(1)にて算出される工作物径の平均値Adw(t)は、工作物1回転中に測定された工作物径dwの平均値である。なお、Nは工作物1回転当たりの工作物径測定回数であり、工作物Wの回転速度と前記サンプリング周期Δtから決定される。
続いてステップ103同様にステップ104にて、ステップ102で入力された砥石位置dx(t)および後述する第1バッファ32a(図3参照)内に記憶保持されている砥石位置dx(t−Δt),dx(t−2NΔt),...,dx(t−(N−1)Δt)から次式より砥石位置の平均値Adx(t)が算出される。
【0020】
【数2】
【0021】
ステップ105にて、前記入力された工作物径dwおよび砥石位置dxがメモリ32内に設けられた第1バッファ32aに、前記算出された工作物径の平均値Adwおよび砥石位置の平均値Adxが第2バッファ32bにそれぞれ格納される。
第1バッファ32aは図3に示すように、工作物1回転当たりの測定回数N個分の工作物径dwおよび砥石位置dxが格納される領域が設けられており、容量を越えたバッファ内の測定値(工作物径dwおよび砥石位置dx)は古いものから削除され、常に1回前の測定値から工作物1回転分の測定値(dw(t−Δt)からdw(t−NΔt)およびdx(t−Δt)からdx(t−NΔt))が保持されるようになっている。例えば、サンプリング周期Δtが10msで、工作物Wの回転数が200/minとすると、工作物1回転あたりの測定回数Nは30となり、30個の測定値dw,dxがそれぞれ保持される。
【0022】
第2バッファ32bは図4に示すように、工作物1回転当たりの測定回数N個分の工作物径の平均値Adwおよび砥石位置の平均値Adxが格納される領域が設けられており、第1バッファ32a同様に容量を越えたバッファ内の測定値(工作物径の平均値Adwおよび砥石位置の平均値Adx)は古いものから削除され、常に1回前の算出値から工作物1回転分の算出値(Adw(t−Δt)からAdw(t−NΔt)およびAdx(t−Δt)からAdx(t−NΔt))が保持されるようになっている。
【0023】
ステップ106にて工作物径dwおよび砥石位置dxがそれぞれ2N回以上測定されたか否かの判別がなされる。これは、第2バッファ32b内の工作物径の平均値Adwおよび砥石位置の平均値Adxの値が、測定値(工作物径dwおよび砥石位置dx)のみから算出された値ですべて満たされたか否かの判別を行っている。すなわち、定寸装置24による測定が始まってから工作物Wが1回転するまでは、第1バッファ32a内の値は測定値dw,dxで満たされないため、工作物Wが測定開始から2回転するまでは平均値Adw,Adxの値は誤った値が算出される。そして、ステップ106で、測定回数が2N以上と判断される、すなわち、工作物Wが測定開始から2回転した場合にはステップ107に移行し、測定回数が2Nに満たない場合にはステップ101からステップ105を繰り返す。
【0024】
ステップ107に移行すると、平均化工作物径DWが次式にて算出される。
【0025】
【数3】
【0026】
この平均化工作物径DWは、式(1)にて算出した工作物径の平均値Adwに時間的な補正をした値ある。すなわち、図6に示すように、算出した工作物径の平均値Adw(t)は工作物径の測定値dw(t)に対してほぼ半回転分の時間差(N−1)Δt/2を有している。そこで、工作物Wの1回転中の工作物径dwの変化を線形と仮定し、前回の工作物径の平均値Adw(t−NΔt)と今回の工作物径の平均値Adw(t)とから工作物径の変位の傾き(Adw(t)−Adw(t−NΔt))/NΔtを算出し、この工作物径の変位の傾きに時間差(N−1)Δt/2を乗して工作物径の変位量を求めて今回の工作物径の平均値Adw(t)に加えて補正している。以上の演算により算出された平均化工作物径DW(t)は時刻tにおける工作物径の測定値dwからトルク変動に起因する周期的な変動やノイズによるバラツキを除去された値になる。そして、この平均化工作物径DW(t)を時刻tでの工作物径として以下のステップを実行する。なお、図示はしないが測定を開始して一番最初に算出された平均化工作物径DWは初期工作物径D0としてメモリに記憶保持される。
ステップ108にて、平均化砥石位置DX(t)が平均化工作物径DWと同様に次式にて算出される。
【0027】
【数4】
【0028】
そして、工作物径DWと同様に、平均化砥石位置DX(t)を時刻tでの砥石位置として以下のステップを実行する。ただし、後述するステップ113等で砥石位置dxは変化量を算出しないので、ステップ104、ステップ108等を行わず、砥石位置の測定値dxをそのまま使用してもよい。
ステップ109にて工作物径dwおよび砥石位置dxがそれぞれ3N回以上測定されたか否かの判別がなされる。これは、後述する第3バッファ32c内に平均化工作物径DWおよび平均化砥石位置DXの値がすべて満たされたか否かの判別を行っている。すなわち、定寸装置24による測定が始まってから工作物Wが3回転すると第3バッファ32c内に平均化工作物径DWおよび平均化砥石位置DXが満たされる。そして、ステップ109で、測定回数が3N以上と判断される、すなわち、工作物Wが測定開始から3回転した場合にはステップ110に移行し、測定回数が2Nに満たない場合にはステップ115に移行する。
【0029】
ステップ115に移行すると、前記式(3)および式(4)で算出された平均化工作物径DWおよび平均化砥石位置DXがメモリ32内に設けられた第3バッファ32cに記憶され、ステップ101に戻る。なお、この第3バッファ32cは図5に示すように、第1第2バッファ32a、32b同様、N個の平均化工作物径DWおよび平均化砥石位置DWが格納される領域が設けられており、容量を越えたバッファ内の算出値DW,DXは古いものから削除され、常に1回前の算出値からN分の算出値(DW(t−Δt)からDW(t−NΔt)およびDX(t−Δt)からDX(t−NΔt))が保持されるようになっている。
【0030】
一方、ステップ110に移行すると、砥石位置DXと工作物径DWの差である研削残量DRが次式で算出される。
【0031】
【数5】
【0032】
次にステップ111にて、定寸装置24の異常判断の処理が行われる。この定寸装置異常判断処理を図7および図8のフローチャートにて詳細に説明する。
図7のステップ151にて前記式(5)にて算出された研削残量DRが正か負、すなわち切り込みが有るか無いかの判別がなされる。切り込みが有る(DR>0)と判断された場合はステップ152に移行し、切り込みが無い(DR<0)と判断された場合には図8のステップ171に移行する。
【0033】
切り込みが有ると判断された場合、ステップ152に移行するとスパークアウト等により砥石台13が切り込みを停止しているかの判断がなされる。切り込みが停止されている場合は、後述するステップ112に移行し、切り込みが停止されていない場合にはステップ153に移行する。
ステップ153にて、現在の工作物径DW(t)と工作物径最小値MinDWの大小が比較され、現在の工作物径DW(t)が最小値であるか、すなわち、工作物径DWが減少しているか否かの判別がなされる。なお、工作物径最小値MinDWは後述するステップ155にて工作物径DW(t)が代入され、ステップ153が初めて実行される場合には以前の図略のステップで工作物径最小値MinDWに上述した初期工作物径DW0が代入されている。
【0034】
ステップ153で、現在の工作物径DW(t)が最小値と判別されると(DW(t)<MinDW)、ステップ154に移行して所定の時間をカウントするカウンタTC1をリセットし、ステップ155にて工作物径最小値MinDWを現在の工作物径DW(t)で更新して、後続のステップ112に移行する。
一方、ステップ153で、現在の工作物径DW(t)が最小でない、すなわち工作物径DWが減少しない場合には、ステップ156に移行してカウンタTC1をカウントアップする。そして、ステップ157にて、カウンタTC1があらかじめ設定された所定時間MaxTC1内の場合には図2のステップ112に移行し、カウンタTC1が所定時間MaxTC1を越えた場合、すなわち、切り込みが有ると判断したのに工作物径DWが所定時間減少しない場合には定寸装置24の異常と判断して、ステップ158に移行して研削加工を中止し異常終了とする(後述する異常状態1の場合)。
【0035】
また、ステップ151にて切り込み無し(DR<0)と判断されると図8のステップ171に移行し、次式にて工作物1回転当たりの工作物径の変化量DW1を算出する。
【0036】
【数6】
【0037】
なお、この工作物1回転当たりの工作物径の変化量DW1は前記第3バッファ32c内に保持されている1回転前の工作物径DW(t−NΔt)と現在の工作物径DW(t)の差である。
ステップ172にて、上記式(6)にて算出した工作物1回転当たりの工作物径の変化量DW1があらかじめ設定された変化量の許容値MaxDW1と比較され、工作物1回転当たりの工作物径の変化量DW1が変化量の許容値MaxDW1内の場合は後続のステップ173に移行し、変化量の最大値MaxDW1を越えた場合、すなわち切り込みが無いと判断したのにの工作物1回転当たりの切り込み量が許容値を越えた場合には定寸装置24の異常と判断して、ステップ178に移行して研削加工を中止し異常終了とする(後述する異常状態3(その1)の場合)。
【0038】
ステップ173に移行すると、次式により工作物径測定開始からの工作物径の変化量DW2が算出される。
【0039】
【数7】
【0040】
なお、この工作物径測定開始からの工作物径の変化量DW2は、前記初期工作物径DW0と現在の工作物径DW(t)の差である。
ステップ174にて、上記式(7)にて算出した工作物径測定開始からの工作物径の変化量DW2があらかじめ設定された変化量の許容値MaxDW2と比較される。工作物径測定開始からの工作物径の変化量DW2が変化量の最大値MaxDW2内の場合にはステップ174に移行し、工作物径測定開始からの工作物径の変化量DW2が減少量の許容値MaxDW2を越えた場合、すなわち切り込みが無いと判断したのに工作物径の測定を開始してからの切り込み量が許容値を越えた場合には定寸装置24の異常と判断して、ステップ178に移行して研削加工を中止し異常終了とする(後述する異常状態3(その2)の場合)。
【0041】
ステップ175に移行すると、工作物径DWが減少しているかの判断がなされる。すなわち、現在の工作物径DW(t)および第3バッファ32c内の1回前に算出した工作物径DW(t−Δt)との大小が比較される。
ステップ175において、現在の工作物径DW(t)が1回前に測定した工作物径DW(t−Δt)よりも小さいと判別されると(DW(t)<DW(t−Δt))、ステップ176に移行する。一方、現在の工作物径DW(t)が1回前に測定した工作物径DW(t−Δt)よりも同等もしくは大きいと判別されると(DW(t)>=DW(t−Δt))、ステップ176に移行して所定の時間をカウントするカウンタTC2をリセットし、後続のステップ112に移行する。
【0042】
ステップ176に移行すると、カウンタTC2をカウントアップし、ステップ177にて、カウンタTC2があらかじめ設定された所定時間MaxTC2内の場合には後続のステップ112に移行し、カウンタTC2が所定時間MaxTC2を越えた場合、すなわち、切り込みが無いと判断したのに工作物径DWが所定時間減少する場合には定寸装置24の異常と判断して、ステップ178に移行して研削加工を中止し異常終了とする(後述する異常状態2の場合)。
【0043】
以上に説明したように、ステップ111(ステップ151からステップ179)により以下の3つの状態により定寸装置24の異常が判別される。
1.研削残量DR>0(切り込み有り)でかつ一定時間(MaxTC1)の間、工作物径DWが減少しない。すなわち、異物等により定寸装置24がメカ的に作動せず測定が正常に行われない、もしくは定寸装置が24が断線等により保持した値を出力し続けている等の異常。
【0044】
2.研削残量DR<0(切り込み無し)でかつ一定時間(MaxTC2)の間、工作物径DWが減少する。すなわち、砥石19と定寸装置24の位置的誤差が大きい場合や、時間的なノイズが乗っている等の異常。
3.研削残量DR<0(切り込み無し)でかつ一定時間(MaxTC2)の間、工作物径DWの変化量が許容値以上である。すなわち、定寸装置24が測定系の異常を起こしている等の場合に該当する。なお、本実施例において異常状態3は、
(その1)工作物1回転当たりの工作物径の変化量D1
(その2)工作物径測定開始からの工作物径の変化量D2
の2つ工作物径の変化量により異常を判断している。
【0045】
なお、上述した定寸装置の異常判別処理において、研削残量DRおよび工作物径の変化量D1,D2は、時間的な補正を行った値である平均化工作物径DWおよび平均化砥石位置DXによって算出しているが測定値dw,dxや平均値Adw,Adxより求めた研削残量および工作物径の変化量から定寸装置の異常判別を行ってもよい。
【0046】
続いて図2のステップ112について説明する。ステップ112は研削加工の各種制御処理の全般が行われるステップであり、砥石台13の切り込みをはじめとする加工制御が行われる。ここでは、ステップ107、108で算出した平均化工作物径DWおよび平均化砥石位置DXに基づいて工作物径の変化率の算出および砥石車19と工作物Wの接触検知処理が行われる。
【0047】
まず、工作物径の変化率の算出処理について詳細に説明する。この工作物径の変化率は、例えば、砥石台送り制御における研削残量を予測する処理に使用されるものである。ただし、この研削残量の予測処理は本発明の主旨と関係ないため説明を省略する。
工作物径の変化率DW’(t)は次式により算出される。
【0048】
【数8】
【0049】
なお、この工作物径の変化率DW’(t)は現在の工作物径DW(t)および第3バッファ32cに記憶されている1回前の工作物径DW(t−Δt)の差をサンプリング周期Δtで除したものである。この工作物径の変化量DW’(t)は平均化処理された平均化工作物径DWにより算出されるためにトルク変動に起因する周期的な変動やノイズによるバラツキから発生する誤差の小さい精度の良い値が求められている。
【0050】
次に、図9に基づき砥石車19と工作物Wの接触検知処理について説明する。この接触検知処理は研削開始位置の測定に使用されるものである。
まず、ステップ191にて工作物径DWが減少しているかが判別される。すなわち、現在の工作物径DW(t)が工作物径の最小値MinDWと比較され現在の工作物径DW(t)の方が小さい場合はステップ192に移行して工作物径の最小値MinDWを更新しステップ193に移行する。一方、現在の工作物径DW(t)の方が大きい場合には、砥石車19と工作物Wは接触していないと判別しステップ112の種々の加工制御ルーチンを実行してステップ113に移行する。
【0051】
ステップ193では、研削残量DRが正、すなわち切り込みが有るか否かの判別を行う。ステップ193にて研削残量DR>0の場合、砥石車19と工作物Wは接触したと判別され、ステップ194で接触フラグをONにし、ステップ195にて、この時の工作物径DW(t)および砥石位置(t)を接触点における工作物径DWCおよび砥石位置DXCとしてそれぞれメモリ32に記憶する。そして、この接触点における工作物径DWCおよび砥石位置DWCはステップ112内の種々の加工制御ルーチンに使用される。
【0052】
また、ステップ193で研削残量DRが負(切り込み無し)と判断されると、砥石車19および工作物Wは接触していないと判別しステップ115の種々の加工制御ルーチンを実行してステップ113に移行する。
以上に説明したように、接触検知処理(ステップ191からステップ195)においては、工作物径DWが減少し、かつ、研削残量DR>0である時に砥石車19と工作物Wが接触したと判別しており、研削残量DR<0になった時点のみで接触したことを判別する場合より正確に接触を検知できるようになっている。
【0053】
以上の加工制御処理(ステップ112)を実行し、ステップ113に移行すると、上述したステップ115同様にステップ107およびステップ108で算出した現在の平均化工作物径DWと平均化砥石位置DXを第3バッファ32cに記憶する。そして、ステップ114に移行すると、研削加工が完了したか否かが判断され、加工が途中の場合にはステップ101に戻りステップ101からステップ113を繰り返す。一方、ステップ116で加工が完了した場合にはプログラムを終了する。
【0054】
なお、上述した実施例において、平均化工作物径DWの算出の際、測定した工作物径dwの工作物1回転分の測定値(dw(t),dw(t−Δt),・・・,dw(t−NΔt))から算出しているが、この平均化する測定値の個数は図10から図13に示す実験結果より決定されている。
この実験は工作物の回転速度を200/min、定寸装置24からの工作物径dwの測定時間(サンプリング周期)Δtを10msした場合に、図16の切り込みを行った場合の工作物径DWの変化率(工作物径の変化率DW’)の時間的推移を示したグラフである。
【0055】
図10は測定した工作物径の測定値dwそのものから工作物径の変化率DW’を算出したグラフである。図11は工作物径の測定値dwを10個バッファリングして平均化した工作物径DWより工作物径の変化率DW’算出したグラフである。同様に図12は工作物径の測定値dwを30個、図13は50個バッファリングして算出した工作物径の変化率DW’を算出したグラフである。
【0056】
すなわち、平均化する測定値の個数を1から増やしていくと工作物径の変化率DW’の変動の振幅は徐々に小さくなり、30個の時変動の振幅ははぼ0になる。この場合、工作物回転速度をが200/minでサンプリング周期が10msなので工作物1回転当たりの径測定の回数Nは30となり、これに相当する。つまり、平均化によって1回転周期の工作物径dwの変動がキャンセルされたことになる。このことは、平均化処理の測定値数をさらに増加させて、50とすると、再び周期的な変動が現れることから確認ができる。そこで、工作物径DWは、定寸装置24からのサンプリング周期とその時の工作物回転速度から算出される工作物1回転分の個数の測定値を平均化して求めるのがよい。
【0057】
また、上述した実施例において、時間的な補正を行う手段としてステップ105にて工作物径の平均値Adwを工作物1回転分バッファリングし、前回の工作物径の平均値Adw(t−NΔt)と今回の工作物径の平均値Adw(t)の値から今回の平均化工作物径DW(t)を求めている。しかし、現在の工作物径の平均値Adw(t)と前回工作物径の測定値dw(t−NΔt)から、ステップ107で次式(9)により平均化工作物径DWを求め、同様に、今回の砥石位置の平均値Adx(t)と前回砥石位置の測定値dx(t−NΔt)により、ステップ105で次式(10)により平均化砥石位置DXを求めれば、ステップ105にて工作物径の平均値Adwおよび砥石位置の平均値Adxをバッファリングしなくてもよい。
【0058】
【数9】
【0059】
【数10】
【0060】
上記式(9)および式(10)は、図14のように補正したものである。この場合、上記実施例の工作物径DWよりも精度は落ちるが、バッファリングするデータを少なくできるといった利点がある。
【0061】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明の研削装置は、工作物径を工作物1回転当たりの測定回数分の測定値を平均化した値より求めているので、トルクの変動に起因する周期的な変動やノイズによるバラツキを除去でき、精度の高い工作物径の測定が行え、高精度な砥石と工作物の接触検知や研削加工が行えるといった効果がある。その上、周期的な変動やバラツキを除去できるために各種研削制御で使用される工作物径の変化率の算出も可能になる。
【0062】
また、本発明の研削装置は、算出された研削残量と工作物径の変化量の2つの条件に基づき定寸装置の異常を検知できるため、定寸装置の異常に起因する切り込みすぎによる手直し不可能な工作物の発生を防止できるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す研削装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例を示す研削装置の動作を示したフローチャートである。
【図3】第1バッファ32aを示した図である。
【図4】第2バッファ32bを示した図である。
【図5】第3バッファ32cを示した図である。
【図6】平均化工作物径算出を説明する説明図である。
【図7】定寸装置異常判別処理を示したフローチャートである。
【図8】定寸装置異常判別処理を示したフローチャートである。
【図9】接触検知処理を示したフローチャートである。
【図10】工作物径の変化率を時間的推移で示した実験結果である。
【図11】工作物径の変化率を時間的推移で示した実験結果である。
【図12】工作物径の変化率を時間的推移で示した実験結果である。
【図13】工作物径の変化率を時間的推移で示した実験結果である。
【図14】平均化工作物径算出を説明する説明図である。
【図15】工作物径および砥石位置を時間的推移で示したグラフである。
【図16】工作物径の誤差を示したグラフである。
【図17】本発明が対象とする研削装置の一例を主要部を示した図である。
【符号の説明】
13 砥石台
19 砥石車
24 定寸装置
30 制御装置
32 メモリ
32a 第1バッファ
32b 第2バッファ
32c 第3バッファ
W 工作物
dw 工作物径の測定値
dx 砥石位置の測定値
Adw 工作物径の平均値
Adx 砥石位置の平均値
DW 平均化工作物径
DX 平均化砥石位置
DR 研削残量
DW0 初期工作物径
DW1 工作物1回転当たりの工作物径の変化量
DW2 測定開始からの工作物径の変化量
Claims (3)
- 定寸装置を用いて加工中の工作物径を測定しながら研削加工を行う研削装置において、
前記定寸装置により測定される工作物径を所定のサンプリング周期で入力し、工作物径の測定値として記憶保持する測定値保持手段と、
前記測定値保持手段により記憶保持されている前記工作物径の少なくとも工作物1回転当たりの測定回数分の前記工作物の測定値を平均化した工作物径の平均値を前記サンプリング周期毎に求める測定値平均化手段と、
前記測定値平均化手段により求められた前記工作物径の平均値の変化の傾きを算出し、この傾きに前記サンプリング周期に前記測定回数を乗じて求められる時間の半分を乗じることにより補正した平均化工作物径を求める平均値補正手段と、
前記平均値補正手段により求められた前記平均化工作物径を前記定寸装置の測定時における工作物径として砥石台の送りを制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする研削装置。 - 前記請求項1記載の研削装置において、前記砥石台の位置を前記所定のサンプリング周期毎に測定する砥石位置測定手段と、前記平均化工作物径と前記砥石台の位置とから前記定寸装置の測定時における研削残量を算出する研削残量算出手段と、前記研削残量算出手段により求められた前記研削残量に基づき砥石車と前記工作物が接触したことを検知する接触検知手段とを備えたこと特徴とする研削装置。
- 前記請求項2記載の研削装置において、前記測定値保持手段に保持された前記工作物径から工作物径の変化量を前記サンプリング周期毎に算出する径変化量算出手段と、前記研削残量算出手段により算出された前記研削残量と前記径変化量算出手段により算出された前記工作物径の変化量に基づき前記定寸装置の異常を判断する定寸装置異常判別手段とを備えたことを特徴とする研削装置。
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