JP3631590B2 - 配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスセラミックスから成る単板又は積層構造の基板に、該基板と一体的に焼結されるCuを主成分とするメタライズ配線層を表面又は内部に形成した配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラスセラミックスから成る基板に、該基板と一体的に焼結される内部配線層を表面配線層を有する配線基板は、ガラスセラミックス基板となる未焼成状態の基板と内部配線層又は表面配線層となる配線パターンを800〜1000℃で一体的に焼結して形成されるものであり、低温焼成配線基板と言われている。
【0003】
この低温焼成配線基板は、800〜1000℃という比較的低温で焼成が可能であり、配線層を構成する材料に、Au、Ag、Cuなどの低抵抗材料が使用できることなどから、半導体素子が収容搭載される半導体素子収納用パッケージや、回路配線導体を有する各種回路基板、携帯電話やパーソナルハンディホンシステム、各種衛星通信用の高周波用多層配線基板に用いられている。
【0004】
近年、配線基板においては、高周波回路の対応性、高密度化、高速化が要求され、アルミナ系セラミック材料に比較して低い誘電率が得られ、配線層の低抵抗化が可能な低温焼成配線基板が一層注目されている。
【0005】
低温焼成配線基板に用いる低抵抗の配線層の材料、Au系、Ag系、Cu系材料のうち、Au系材料は非常に高価な材料でコスト的に不利であり、Ag系材料は基板材料にAgが拡散してしまい、また、マイグレーションなどを起こすために、配線基板の用途、構造などに制限があった。
【0006】
これに対して、Cu系材料は、焼成処理を還元性雰囲気で行う必要があるものの、配線基板の高密度化、配線基板中の回路の高周波化の要求に充分に応えることができる材料である。
【0007】
Cuを主成分とするメタライズ配線層を、ガラスセラミックからなる基板の表面及び内部に形成した配線基板は、一般に、(1)ガラスセラミック原料粉末、有機バインダーに溶剤を添加して調製したスラリーをドクターブレード法等によってシート状に成形し、(2)得られたガラスセラミックグリーンシートに貫通孔等を打ち抜き加工し、該貫通孔にCuを主成分とするメタライズペーストを充填し、同時にグリーンシート上にCuを主成分とするメタライズペーストを用いて配線層となる所定の配線パターンを周知のスクリーン印刷法等で印刷形成し、(3)配線パターンや貫通孔に充填された導体が形成されたガラスセラミックグリーンシートを複数枚加圧積層し、(4)得られた積層体を加熱して有機バインダーを焼失し、(5)次いで800〜1000℃で焼結することにより作製されていた。尚、表面配線層となる配線は、(2)の工程で印刷形成したり、また、(3)の工程で得られた未焼成の積層体に印刷形成していた。その後、必要応じて基板の表面配線層にICなどの各種電子部品を実装していた。
【0008】
上述の800〜1000℃の比較的低温で絶縁基板と同時に焼成され、Cuを主成分とするメタライズ配線層となるメタライズペーストは、Cu系材料(Cu単体゛Cuの酸化物、Cu合金)の導電材料と、メタライズペーストの焼結挙動をガラスセラミックに近似させるためのガラス成分と、有機ビヒクル(有機バインダー、有機溶剤)とを均一混合して形成していた。そして、ガラスセラミック材料の焼結挙動を近似されるためのガラス成分としては、Bi2 O3 やMoO3 、Cr2 O3 などが用いられていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来、一般にガラスセラミック材料の焼結開始温度は、800〜1000℃、例えば850℃前後であり、Cuを主成分とするメタライズ配線層の焼結開始温度が700〜800℃、例えば750℃前後である。従って、この焼結開始温度の差異によって、焼成過程での収縮にズレを生じ、さらに焼結終了温度の相違によりCuを主成分とするメタライズ配線層が先に緻密化してガラスセラミック材料の収縮を抑制してしまう。その結果、焼成された配線基板には、例えばRmaxで30μmを越える大きな反りやうねり等の変形が発生するという問題があった。
【0010】
この大きな反りやうねり等の変形の発生を防止するために、Cuを主成分とするメタライズペーストのガラス成分を調整して、メタライズ配線パターンの焼結焼結挙動をガラスセラミック材料の焼結挙動に近似させることが考えられる。しかし、これでは、Cuを主成分とするメタライズ配線層のもつ低抵抗特性を損ねることになり、ガラス成分の調整は、非常に難しかった。
【0011】
また、Cuを主成分とするメタライズ配線パターンが過焼結されると、Cu粒子が緻密化し、ガラスセラミック材料のガラス成分で強固な接合を行うとしても、これを阻み、その結果、接着強度が悪くなる。例えば、2kg未満の引っ張り荷重で剥離してしまう。このような弱い接着強度では、前記ガラスセラミック基板の表面配線層に各種チップ部品を搭載したり、マザーボードなどに実装する際、接合不要等の不具合を生じるという問題もあった。
【0012】
本発明者等は、鋭意研究の結果、Cuを主成分とするメタライズ配線材料中に、SiO2 を含有させることにより、ガラスセラミック絶縁基板と強固に接合され、Cuを主成分とするメタライズ配線層の焼結開始温度を遅らせ、焼結挙動をガラスセラミックス基板の焼結挙動に近似させることができ、基板の反り、うねり等の変形も低減できることを知見した。
【0013】
本発明は上述の知見に基づくものであり、その目的は、Cuメタライズ配線層とガラスセラミックからなる絶縁基板とを同時焼成しても、基板の反りやうねりを有効に防止することができ、Cuメタライズ配線層とガラスセラミック材料との界面の接着強度が高く、しかも、Cuメタライズ配線層がもつ低抵抗特性、ガラスセラミック材料がもつ低誘電率特性を損ねることがない配線基板を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、Cuを主成分とし、0.5〜2.0wt%のSiO2、及び0.5〜40wt%の導電性繊維を含有するメタライズ配線層を、ガラスセラミックからなる基板の表面及び/または内部に具備した配線基板である。この導電繊維とは、カーボン(C)、SiCの内少なくとも一種以上の繊維体である。
【0015】
尚、上述の導電性繊維は、直径0.1〜5μm、長さ1〜50μmである。
【0016】
【作用】
本発明によれば、Cuを主成分とするメタライズ配線層に、導電性繊維を含有させている。即ち導電性繊維を含有したCuを主成分とするメタライズペーストを周知のスクリーン印刷法等でガラスセラミックグリーンシート上にメタライズ配線層となる配線パターンを印刷形成すると、この導電性繊維は配線パターン中に実質的に水平方向に配向し分散される。その後の焼結により、配線パターンのCu粒子が凝集しようとしても、導電性繊維がこのCu粒子の凝集を阻害し、配線パターンの収縮開始温度を遅らせることとなる。これにより、メタライズ配線パターンとガラスセラミック材料の焼結挙動とが近似し、配線基板の表面に反り、うねり等の発生が減少される。
【0017】
また、ガラスセラミック材料のガラス成分が、配線パターンのCu粒子の隙間に浸透しやすくなる。このとき、配線パターンに含まれるSiO2 と互いにと強固に結合しあい、その結果、焼結されたメタライズ配線層とガラス−セラミック基板との接着強度を向上させる。
【0018】
尚、Cuを主成分とするメタライズ配線層にガラス成分を含有し、また、ガラスセラミック基板側からガラス成分が浸透することにより、メタライズ配線層の抵抗率を悪化させる傾向となるが、本発明では、上述の導電性繊維を含有させて、抵抗率を悪化を防止し、逆に低抵抗化を図っている。
【0019】
本発明において、Cuを主成分とするメタライズペーストに用いるCu系の材料は、Cu単体、自然に酸化、または意図的に酸化した酸化銅(CuO、CuO2 )、銅合金、それらの混合物が例示でき、いずれの粒子も、平均粒径が0.5〜15μm、好ましくは、3〜5μmの球状粉末を用いるのが好ましい。これはCuを主成分とするメタライズ配線パターンの焼結開始温度を遅らせるためである。
【0020】
また、前記Cuを主成分とするメタライズ配線層中のSiO2 の含有量が0.5wt%未満の場合、配線パターンを焼成処理する際に、ガラスセラミック基板からメタライズ配線パターンに浸透してくるガラス成分との反応が少なくなり、その結果、焼成されたメタライズ配線層とガラスセラミック基板との接着強度が2.0kg/2mm角を下回ってしまう。
【0021】
逆に、2.0wt%を越える場合、Cu系粒子の過焼結が起こるため、その結果、メタライズ配線層とガラスセラミック基板との接着強度が低下する。同時に、配線層の抵抗を増大させる傾向になる。
【0022】
さらに、前記導電性繊維のうち少なくとも一種の含有量が、0.5wt%未満の場合、メタライズ配線層となる配線パターンの焼結開始温度を遅らせる効果が十分でないため、その結果、配線基板の反り、うねりが大きくなる。
【0023】
逆に、40wt%を越えて添加すると、メタライズ配線パターンの焼結の阻害の度合いが大きくなることから、焼結開始温度の遅れが大きくなり、その結果、メタライズ配線層とガラスセラミック基板との接着強度の低下し、配線抵抗の増大するという問題が発生する。
【0024】
従って、前記SiO2 の含有量は0.5〜2.0wt%、導電性繊維は0.5〜40wt%が好適な範囲である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の配線基板について、図面を基づいて説明する。
【0026】
尚、説明では、配線基板の構造を複数のガラス−セラミック層からなる多層配線基板も用いて説明する。
【0027】
図において、1は配線基板、10は積層体、5はICなどの各種電子部品である。積層体10は、ガラスセラミック層1a〜1eと、ガラスセラミック層1a〜1eの各層間に配置されたCuを主成分とするメタライズ内部配線層(以下、単に内部配線層2という)とが積層して形成されるとともに、さらに、各ガラスセラミック層1a〜1eの厚み方向を貫くように形成されたビアホール導体4が形成され、積層体10の表面に形成されたCuを主成分とするメタライズ表面配線層(以下、単に表面配線層3という)が形成されている。これにより、積層体10で所定回路を達成するための回路網が形成される。
【0028】
ガラスセラミック層1a〜1eは、例えば850〜1000℃で焼成可能とするガラスセラミック材料から成る。具体的には、ガラスセラミック材料のガラス成分は、複数の金属酸化物を含むガラスフリットであり、焼成処理することによって、コージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライトやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種類を析出するものである。例えば、SiO2 、Li2 O、Al2 O3 、P2 O5 、K2 O、ZnO、Na2 Oのリチウム珪酸ガラスやSiO2 、Al2 O3 、MgO、ZnO、B2 O3 、PbOを含有するホウ珪酸ガラスなどが例示できる。また、ガラスセラミック材料のセラミック成分は、クリストバライト、石英、コランダム(αアルミナ)、ムライト、コージライトなどが例示できる。ガラス成分とセラミック成分の構成比率はガラス成分が30〜70wt%、セラミック成分が70wt%〜30wt%であり、ガラスセラミック層1a〜1eの厚みは、例えば100〜300μm程度である。
【0029】
内部配線層2は、Cu系(Cu単体、Cu酸化物、これらの合金)、C、SiCなどの耐熱性を有する導電性繊維、SiO2 ガラス成分から成り、ガラスセラミック層1a〜1e間に厚み8〜25μmで、所定パターンに形成されている。
【0030】
この内部配線層2は、所定回路網を形成する配線として、また、インダクタンス成分を形成する線路として、他の内部配線層2との間の容量成分を発生させるためにグランドプレートとして用いられる。
【0031】
内部配線層2は、具体的にはガラスセラミック層1a〜1eなるガラスセラミックグリーンシート上に上述の固形成分を含むメタライズペーストを所定パターンに印刷し、ガラスセラミック層1a〜1eと同時に還元性雰囲気で焼結されて形成される。
【0032】
ビアホール導体4は、ガラスセラミック層1a〜1eを貫くように形成された直径80〜200μmの貫通孔内に、Cuを主成分とする導体が充填されて形成されている。ビアホール導体4は、所定内部配線層2、2どうしを接続し、また、所定表面配線層3と所定内部配線層2とを接続する。
【0033】
ビアホール導体4は、具体的にはガラスセラミック層1a〜1eなるガラスセラミックグリーンシートに貫通孔を形成し、該貫通孔内に上述と同様のメタライズペーストを印刷・充填して、還元性雰囲気で焼結されて形成される。
【0034】
表面配線層3は、Cu系(Cu単体、Cu酸化物、これらの合金)、炭素(C)、SiCなどの耐熱性を有する導電性繊維、SiO2 ガラス成分から成り、積層体10の表面に厚み8〜25μmで、所定パターンに形成されている。この表面配線層3は、所定回路網を形成する配線として、また、ICチップなどの各種電子部品6を搭載するためのパッドとして、シールド用導体膜として、さらに、外部回路と接続する端子電極として用いられる。
【0035】
表面配線層3は、具体的にはガラスセラミック層1a、1eとなるグリーンシートの積層体10の表面となる面に、上述の固形成分を含むメタライズペーストを所定パターンに印刷し、ガラスセラミック層1a〜1eと同時に還元性雰囲気で焼結されて形成される。
【0036】
また、積層体10の表面配線層3上には、必要に応じて、ICチップなどの各種電子部品5が実装されている。具体的には、各種電子部品5は表面配線層3に半田や導電性樹脂接着剤などを介して接合される。尚、図示していないが、必要に応じて、積層体10の表面には、珪化タンタル、珪化モリブデンなどの厚膜抵抗体膜や配線保護膜などを形成しても構わない。
【0037】
本発明の特徴的なことは、ガラスセラミック材料からなる積層体10に、該積層体10と同時に焼結される内部配線層2及び/又は表面配線層3が形成されている。そして、内部配線層2、表面配線層3は、Cu系材料を主成分として、さらに、SiO2 、導電性繊維を含んでいる。
【0038】
また、SiO2 は、配線層2、3を構成する固形成分(Cu系、SiO2 、導電性繊維など)中、0.5〜2.0wt%の割合で含有しており、導電性繊維は固形成分中0.5〜40wt%の割合で含有している。
【0039】
これにより、内部配線層2、表面配線層3となる配線パターンとガラスセラミック層1a〜1eとなるガラスセラミック材料とが同時に焼成処理することができ、しかも、焼結された配線基板1の表面に反りやうねりを有効に防止することができる。
【0040】
また、焼結された内部配線層2、表面配線層3とガラスセラミック層1a〜1eとの接着強度が強固となり、しかも、Cuを主成分とする内部配線層2、表面配線層3のもつ低抵抗特性を悪化させることのない配線基板10が得られる。
【0041】
上述の内部配線層2は、上述したように、ガラスセラミック層1a〜1eとなるガラスセラミックグリーシート上に、Cu系材料、導電性繊維、SiO2 を含むCuを主成分とするメタライズペーストを用いて内部配線層2となる配線パターンを形成し、このようなガラスセラミックグリーシートを複数積層したのち、焼成処理されな形成される。
【0042】
上述の表面配線層3は、上述したように、ガラスセラミック層1a、1eとなるガラスセラミックグリーシートの積層体10の表面となる面上に、Cu系材料、導電性繊維、SiO2 を含むCuを主成分とするメタライズペーストを印刷して形成し、上記の内部配線層2と同様に形成される。尚、この表面配線層3に関しては、ガラスセラミック層1a〜1eとなるグリーンシートを積層して形成した未焼成状態の積層体の表面に、上述のメタライズペーストを印刷して表面配線層3となる配線パターンを形成し、未焼成状態の積層体を焼成処理する際に配線パターンを同時に焼成して形成して構わない。
【0043】
また、上述の内部配線層2や表面配線層3を形成するためのCuを主成分とするメタライズペーストは、固定成分であるCu系材料、SiO2 、導電性繊維と、アクリル樹脂などからなる有機バンダーと、トルエン、イソプロピルアルコール、アセントンなどの有機溶剤とを均質混合して形成される。
【0044】
固形成分を構成するCu系材料としては、Cu単体、Cu合金、CuOやCu2 Oなどの酸化Cuの単体またはこれらの混合物が用いられる。尚、酸化銅は、還元性雰囲気で焼成されることによって実質的に還元される。
【0045】
また、SiO2 は、固形成分中に0.5〜2.0wt%の範囲で用いられる。
【0046】
また、導電性繊維は炭素(C)やSiCなどの高融点の導電性材料を直径0.1〜5μm、長さ1〜50μmに繊維状にしたものであり、固形成分中に0.5〜40wt%の範囲で用いられる。尚、導電性繊維の直径、長さは、メタライズ配線パターンを印刷、形成する際に、スクリーンメッシュの開口を容易に通過し、且つパターン寸法から突出することがない値に設定される。
【0047】
有機バインダーは、固形成分に対して、0.5〜5.0wt%の割合で分散し、有機溶剤は、固形成分及び有機バインダに対して5〜100wt%の割合で混合されている。
【0048】
上述のメタライズペーストは、ガラスセラミックスグリーン上に、内部配線層2、表面配線層3となる配線パターンが印刷により形成し、乾燥工程によって、有機溶剤が揮発し、さらに、焼成処理によって、有機バインダー、有機溶剤等の有機成分が消失される。
【0049】
本発明の内部配線層2、表面配線層3には、0.5〜40wt%の範囲で導電性繊維が含まれている。この含有する導電性繊維は、内部配線層2、表面配線層3を形成すべく、ガラスセラミック層1a〜1eとなるガラスセラミックグリーンシート上に、上述のメタライズペーストをスクリーン印刷法で所定形状に印刷し、乾燥させて、配線パターンを形成した時に、該配線パターン中に実質的に水平方向に配向し分散されることになる。この状態で、ガラスセラミックグリーンシートとともに焼成処理すると、配線パターンのCu系材料のCu粒子の凝集しようとする。しかし、導電性繊維の存在により、Cu粒子の凝集を阻害し、実質的にその結果、ガラスセラミック層1a〜1eが収縮開始されても、Cuを主成分とするメタライズ配線パターンでは、ある程度追随性が現れ、焼成された積層体10の表面に反り、うねり等の発生を有効に抑えることができる。
【0050】
即ち、ガラスセラミックが液相を生成する温度で、配線パターンでもほぼ同時に液相を生成するため、両者の収縮も同時に開始されるため、最終的に配線基板の反りやうねり等の変形が極めて小さくすることができものである。
【0051】
また、内部配線層2、表面配線層3には、0.5〜2.0wt%の範囲でSiO2 が含有している。上述のように配線パターンの収縮開始温度が遅れることにより、ガラスセラミック材料に含有されたガラス成分が配線パターン側に浸透しやすくなり、配線パターン側に含まれる同質のガラス成分であるSiO2 と互いにと強固に結合しあう。その結果、焼成された配線層2、3とガラスセラミック層1a〜1eとの接着強度を非常に向上する。
【0052】
また、Cuを主成分とする内部配線層2、表面配線層3には、上述の導電性繊維が含有しているため、抵抗率を悪化するSiO2 やガラスセラミック材料から浸透したガラス成分が存在しても、抵抗率を悪化を防止し、逆に低抵抗化を向上させている。
【0053】
尚、上述の説明では、焼成された積層体10の表面に発生する反り、うねりの発生を抑制するのは、導電性繊維の存在によって、Cuを主成分とするメタライズ配線パターンの収縮開始温度を遅らせることによって達成しているが、導電性繊維が、印刷された配線パターン中に水平に配向されることによっても配線基板1の表面に発生する反り、うねりの発生を減少させている。即ち、積層体10の焼結収縮は厚み方向の応力によって主に発生するが、高い融点の炭素(C)やSiCから成る導電性繊維が配線パターン中に水平に配向されることによって、この応力を遮断するように働く。また、導電性繊維は原形を強固に維持するため、水平方向の収縮をも抑制するようにも働く。
【0054】
【実施例】
本発明者らは、本発明の効果を調べるために、Cuを主成分とするメタライズペーストの組成を種々変えて、ガラスセラミック層1a〜1eとともに、同時に焼成される配線層2、3による効果を調べた。
【0055】
まず、ガラスセラミック材料のガラス成分の材料としては、SiO2 、Li2 O、Al2 O3 、P2 O5 、K2 O、ZnO、Na2 Oのリチウム珪酸ガラス粉末を、無機物フィラーとして、SiO2 粉末を、バインダーにアクリル樹脂を、可塑剤にDBP(ジブチルフタレート)を、有機溶剤にトルエン、イソプロピルアルコールを、夫々調製したスラリーを形成し、ドクターブレード法により厚さ500μmのグリーンシートを作製した。
【0056】
また、Cuを主成分とするメタライズペーストとして、平均粒径が5μmのCu単体を用い、固形成分全体に対してSiO2 、導電性繊維を表1に示す割合で秤量し、それに有機バインダーとしてアクリル樹脂と、溶媒としてDBPを添加混練し、Cuを主成分とするメタライズペーストを作製した。
【0057】
尚、有機バインダー量は、固形成分に対して2.0wt%であり、固形成分、有機バインダーに対して75wt%の割合で溶剤を加えた。
【0058】
そして、ガラスセラミックグリーンシートの一方主面に、上述のCuを主成分とするメタライズペーストで配線抵抗を評価するサンプルパターンとして、焼成後の寸法で幅0.2mm、長さ20mm、厚さ約15μmとなる配線パターンを形成し、このようなガラスセラミックグリーンシートを3枚加圧積層した。 同時に、ガラスセラミックグリーンシートの一方主面に、上述のCuを主成分とするメタライズペーストで印刷接着強度、反りを評価するサンプルパターンとして、焼成後の寸法で縦横2mm、厚さ約15μmとなる配線パターンを形成し、このようなガラスセラミックグリーンシートを3枚加圧積層した。
【0059】
次いで、この未焼成状態のサンプルパターンが形成された積層体を、有機バインダ等の有機成分を分解除去するために、水蒸気を含んだ窒素雰囲気中、700℃の温度で3時間保持して脱脂した後、炉内雰囲気を乾燥窒素に切り替え、900℃に昇温して1時間保持し、積層体10の内部及び表面にCuを主成分とする配線層2、3が形成された配線基板1の試料を作製した。
【0060】
先ず、印刷接着強度、反りを評価する配線基板1の2mm角のCuを主成分とするメタライズ配線パターン上に厚さ2.0μmのNiメッキを行い、その上に厚さ0.1μmのAuメッキを施した後、該メッキ被覆層上のCu系のリード線を配線層表面と平行に半田付けし、リード線を配線層表面に対して垂直方向に曲げ、該リード線を10mm/minの引っ張り速度で垂直方向に引っ張り、リード線が剥離したときの荷重を配線層の接着強度として評価した。尚、良否の判断としては、リード線が剥離したときの荷重が2kg/2mm角を越える場合を良品とした。
【0061】
また、ガラスセラミック配線基板の反りは、前述の2mm角の配線層直下のガラスセラミック基板表面を、配線層部を含めて長さ7mm、該配線層を横切るように表面状態を計測し、そのRmaxを反り量として評価した。尚、良否の判断としては、Rmaxが30μm以下のものを良品とした。
【0062】
次に、配線抵抗を評価する配線基板を用いて、幅0.2mm、長さ20mmの配線層の抵抗をテスターで測定し、配線層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)、配線の長さを40倍の顕微鏡を用いて測定し、得られた面積、長さから抵抗率を算出した。尚、良否の判断としては、抵抗率が10.0μΩ・cm以下を良品とした。
【0063】
表1の結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1から明らかなように、試料番号1、2、8は、Cuを主成分とする配線層とガラスセラミック基板との接着強度が弱いものとなり、良品の範囲からはずれる。
【0066】
試料番号1、2のように、SiO2 の含有量が0.5wt%未満の場合、ガラスセラミック基板から配線層中に浸透してくるガラス成分との反応が少なくなり、配線層とガラスセラミック基板との接着強度が低下する。尚、試料番号1、2では、抵抗率も大きく実用的ではない。
【0067】
試料番号8のように、SiO2 の含有量が2.0wt%を越える場合、Cu粒子の過焼結が起こるため、配線層とガラスセラミック基板との接着強度が低下する。
【0068】
試料番号9、10は、資料番号4のようにSiO2 の含有量が特性上最も安定する含有量(0.8wt%)であっても、配線層とガラスセラミック基板との接着強度が1.6kg/2mm角以下と弱く、しかも、ガラスセラミック配線基板の反りがいづれも30μm越えて大きくなる。
【0069】
試料番号9、10のように、導電性繊維のうち少なくとも一種の含有量が、0.5wt%未満の場合、配線層の収縮開始温度を遅らせる効果がなくなるため、ガラスセラミック基板側から浸透するガラス成分が少なくあり、接着強度が低下し、同時にガラスセラミック基板の反り、うねりが増大する。
【0070】
試料番号21、22は配線層とガラスセラミック磁器との接着強度が2kg/2mm角以下と弱く、抵抗率も大であるため実用的ではない。
【0071】
試料番号21、22のように、導電性繊維のうち少なくとも一種の含有量が、40wt%を越えて添加すると、配線層の焼結の阻害の度合いが大きくなることから、収縮開始温度の遅れが大きくなり、その結果、配線層とガラスセラミック基板との接着強度の低下、配線抵抗の増大という問題が発生する。
【0072】
また、試料番号23、24のように、導電性繊維として、SiCから炭素(C)に変えても、良好な結果が得られ、さらに、試料番号25〜27のように、Cu系材料を酸化銅単体、またはCu単体と酸化銅を混合した場合でも、良好な結果が得られる。さらに、試料番号28〜30のように、Cu系材料を酸化銅単体、またはCu単体と酸化銅を混合し、且つ導電性繊維として、炭素(C)を用いても良好な結果が得られる。
【0073】
さらに、Cu系材料を銅合金に変えても、良好な結果が得られることを確認した。
【0074】
尚、上述の実施例では、基板構造が積層体で説明したが、単状のガラスセラミックシート上に上述のCuを主成分とするメタライズペーストを用いて、所定配線パターンを形成し、グリーンシートと所定配線パターンとを一体的に焼結した配線基板でも構わない。
【0075】
また、基板構造が積層構造であっても、内部配線層2のみを積層体と同時に焼成処理し、表面配線層を既に焼成された積層体に焼き付け処理で形成しても構わない。
【0076】
【発明の効果】
以上、本発明の配線基板は、Cuを主成分とするメタライズ配線層が、ガラスセラミック材料のガラス成分と反応するためにSiO2 とCuを主成分とするメタライズ配線層の収縮開始温度を遅らせる導電繊維を含有することから、Cuを主成分とするメタライズ配線層の収縮開始温度をガラスセラミック基板の収縮開始温度に近似させることができ、一体的な焼結が可能となる。
【0077】
しかも、ガラスセラミックスが液相を生成する温度で、Cuを主成分とするメタライズ配線層組成物もほぼ同時に液相を生成し、両者の収縮も同時に開始されるため、最終的に配線基板の反りやうねり等の変形が極めて小さくすることができる。
【0078】
配線層の収縮開始温度が遅れることによって、ガラスセラミック材料のガラス成分が配線層側に浸透し、その結果、配線層に含有したSiO2 と強固に結合するため、配線層とガラスセラミックからなる基板との界面の接着強度が高くなる。しかも、SiOの存在、ガラス成分が浸透したとしても、導電性繊維の含有によって、配線層の低抵抗特性を安定的に維持または向上することがてきる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の一例を示す配線基板の断面図である。
【符号の説明】
1・・・・配線基板
10・・・積層体
1a〜1e・・・ガラスセラミック層
2・・・・メタライズ内部配線層
3・・・・メタライズ表面配線層
4・・・・ビアホール導体
5・・・・電子部品
Claims (2)
- Cuを主成分とし、0.5〜2.0wt%のSiO2、及び0.5〜40wt%の導電性繊維を含有するメタライズ配線層を、ガラスセラミックからなる基板の表面及び/または内部に具備した配線基板。
- 前記導電繊維が、カーボン(C)、SiCの内少なくとも一種以上の繊維体であることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
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