JP3627902B2 - 圧縮機駆動装置におけるロック検出方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は圧縮機駆動装置におけるロック検出方法およびその装置に関し、さらに詳細にいえば、インバータにより制御されるブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動する装置において、ブラシレスDCモータのロック状態を検出するための方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、インバータにより制御されるブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動する装置が提案されている。このような圧縮機駆動装置は、ブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出して位置信号を生成し、位置信号を基準としてインバータの出力波形を制御することによりブラシレスDCモータを安定に動作させ、このブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動するようにしている。
【0003】
したがって、通常の状態においては、ブラシレスDCモータによって圧縮機を安定に駆動することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような圧縮機駆動装置においてブラシレスDCモータのロックが発生した場合には、そのまま運転のための動作を継続すればブラシレスDCモータの焼損事故が発生する。また、圧縮機の設置現場においてはブラシレスDCモータの起動不良が発生する。
【0005】
このような場合において、設置現場では、ブラシレスDCモータのロックの原因が、圧縮機のメカ部の不良によるものか、ブラシレスDCモータを駆動するインバータの不良によるものか、を明確に識別することができなかった。したがって、設置現場においてブラシレスDCモータの起動不良が発生した場合には、現場において圧縮機、あるいは電装品を交換する対処法を採用することになり、不良対策に著しく多大なコストがかかるとともに、起動不良発生原因の解明に著しく長い時間がかかるという不都合が生じる。
【0006】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、起動不良が発生した場合に、圧縮機の不良に起因するブラシレスDCモータのロックが発生していることを簡単に検出することができる圧縮機駆動装置におけるロック検出方法およびその装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の圧縮機駆動装置におけるロック検出方法は、インバータにより制御されるブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動するシステムにおいて、
内部に永久磁石を埋め込んでなる回転子を含むブラシレスDCモータの固定子巻線の中性点電位と、固定子巻線と並列に接続された抵抗の中性点電位との差電位を検出し、検出された差電位の周波数がブラシレスDCモータの運転周波数の3倍以外の周波数であることに応答して、圧縮機不良に起因するブラシレスDCモータのロックが発生していることを検出する方法である。
【0010】
請求項2の圧縮機駆動装置におけるロック検出装置は、インバータにより制御されるブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動するシステムにおいて、
内部に永久磁石を埋め込んでなる回転子を含むブラシレスDCモータの固定子巻線の中性点電位と、固定子巻線と並列に接続された抵抗の中性点電位との差電位を検出する差電位検出手段と、差電位検出手段により検出された差電位の周波数がブラシレスDCモータの運転周波数の3倍以外の周波数であるか否かを判定し、3倍以外の周波数であることに応答して、圧縮機不良に起因するブラシレスDCモータのロックが発生していると判定するロック判定手段とを含むものである。
【0013】
請求項3の圧縮機駆動装置におけるロック検出装置は、インバータにより制御されるブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動するシステムにおいて、
内部に永久磁石を埋め込んでなる回転子を含むブラシレスDCモータの固定子巻線の中性点電位と、固定子巻線と並列に接続された抵抗の中性点電位との差電位を検出する差電位検出手段と、差電位検出手段により検出された差電位の振幅に基づいて圧縮機不良に起因するブラシレスDCモータのロックが発生しているか否かを判定するロック判定手段とを含むものである。
【0015】
【作用】
請求項1の圧縮機駆動装置におけるロック検出方法であれば、インバータにより制御されるブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動するに当たって、
内部に永久磁石を埋め込んでなる回転子を含むブラシレスDCモータの固定子巻線の中性点電位と、固定子巻線と並列に接続された抵抗の中性点電位との差電位を検出し、検出された差電位の周波数がブラシレスDCモータの運転周波数の3倍以外の周波数であることに応答して、圧縮機不良に起因するブラシレスDCモータのロックが発生していることを検出するのであるから、差電位の周波数を検出することにより、特別な検出回路を追加することなく、設置現場において起動不良が発生した場合に、圧縮機のメカ部の不良が原因であるか否かを簡単に識別することができ、起動不良発生原因の解明の所要時間を短くすることができるとともに、不良対策のコストを低減することができる。また、ブラシレスDCモータの焼損、インバータ素子の焼損を未然に防止することができる。さらに、ロック非発生時に、モータトルクのみならずリラクタンストルクを利用して圧縮機を効率よく駆動することができる
【0018】
請求項2の圧縮機駆動装置におけるロック検出装置であれば、インバータにより制御されるブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動するに当たって、
差電位検出手段によって、内部に永久磁石を埋め込んでなる回転子を含むブラシレスDCモータの固定子巻線の中性点電位と、固定子巻線と並列に接続された抵抗の中性点電位との差電位を検出し、ロック判定手段によって、差電位検出手段により検出された差電位の周期に基づいて圧縮機不良に起因するブラシレスDCモータのロックが発生しているか否かを判定することができる。
したがって、差電位の周波数を検出することにより、特別な検出回路を追加することなく、設置現場において起動不良が発生した場合に、圧縮機のメカ部の不良が原因であるか否かを簡単に識別することができ、起動不良発生原因の解明の所要時間を短くすることができるとともに、不良対策のコストを低減することができる。また、ブラシレスDCモータの焼損、インバータ素子の焼損を未然に防止することができる。さらに、ロック非発生時に、モータトルクのみならずリラクタンストルクを利用して圧縮機を効率よく駆動することができる。
【0019】
したがって、特別な検出回路を追加することなく、設置現場において起動不良が発生した場合に、圧縮機のメカ部の不良が原因であるか否かを簡単に識別することができ、起動不良発生原因の解明の所要時間を短くすることができるとともに、不良対策のコストを低減することができる。また、ブラシレスDCモータの焼損、インバータ素子の焼損を未然に防止することができる。
【0022】
請求項3の圧縮機駆動装置におけるロック検出装置であれば、インバータにより制御されるブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動するに当たって、
差電位検出手段によって、内部に永久磁石を埋め込んでなる回転子を含むブラシレスDCモータの固定子巻線の中性点電位と、固定子巻線と並列に接続された抵抗の中性点電位との差電位を検出し、ロック判定手段によって、検出された差電位の振幅に基づいて圧縮機不良に起因するブラシレスDCモータのロックが発生しているか否かを判定することができる。
したがって、差電位の振幅を検出することにより、特別な検出回路を追加することなく、設置現場において起動不良が発生した場合に、圧縮機のメカ部の不良が原因であるか否かを簡単に識別することができ、起動不良発生原因の解明の所要時間を短くすることができるとともに、不良対策のコストを低減することができる。さらに、ロック非発生時に、モータトルクのみならずリラクタンストルクを利用して圧縮機を効率よく駆動することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明の圧縮機駆動装置におけるロック検出方法およびその装置の実施の態様を詳細に説明する。
【0025】
図1は圧縮機駆動装置の一実施態様を示す概略図である。
【0026】
この圧縮機駆動装置は、直流電源1を入力とするインバータ2からの出力をブラシレスDCモータ3のY接続された固定子巻線3u,3v,3wに供給し、このブラシレスDCモータ3の出力軸を直接、もしくは間接に圧縮機4の回転軸と連結している。そして、ブラシレスDCモータ3の固定子巻線3u,3v,3wと並列に抵抗5u,5v,5wをY接続し、ブラシレスDCモータ3の固定子巻線3u,3v,3wの中性点電位と抵抗5u,5v,5wの中性点電位とをローパスフィルタとして機能するオペアンプ6に供給して差電位を得、得られた差電位をコンパレータとして機能するオペアンプ7に供給して、差電位のゼロクロスで立ち上がり、または立ち下がる位置検出信号を得、得られた位置検出信号を1チップマイコンなどからなるインバータ制御部8に供給して、位置検出信号の立ち上がり、立ち下がり毎に切り替わるインバータ波形制御信号を生成し、生成されたインバータ波形制御信号を図示しないドライバを介してインバータ2に供給している。なお、前記インバータ制御部8は、前記差電位を入力としてロック状態か否かを検出する機能を有している。
【0027】
図2は表面磁石構造のブラシレスDCモータの構成を概略的に示す図であり、回転子3aの表面所定位置に永久磁石3bが装着されてある。また、固定子3cは、図示しない固定子巻線が巻回された多数のスロット3dを有している。また、図中矢印で示されたd軸は、永久磁石3bが発生する磁束の方向を示す軸であり、q軸はd軸と電気的に90°ずれた軸である。
【0028】
図3は埋込磁石構造のブラシレスDCモータの構成を概略的に示す図であり、回転子3eの表面に露呈しない状態で永久磁石3fが装着されてある。但し、隣合う永久磁石3f同士の間には非磁性体3gが装着されてあり、隣合う永久磁石3f同士の間で磁束短絡が生じることを防止している。尚、固定子3cの構成は図2のブラシレスDCモータと同様であるから、説明を省略する。
【0029】
図4は図1の構成の圧縮機駆動装置においてロック状態が発生しているか否かを判定する処理を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、位置検出信号の立ち上がり、立ち下がり毎に行われる。
【0030】
ステップSP1において、運転要求の有無を判定し、運転要求がないと判定された場合には、そのまま一連の処理を終了する。逆に、運転要求があると判定された場合には、ステップSP2において、位置検出運転への切り替えが許可されているか否かを判定する。
【0031】
ステップSP2において位置検出運転(位置検出信号に基づいてインバータ出力波形を制御する運転)への切り替えが許可されていると判定された場合には、ステップSP3において、位置検出運転を行い、ステップSP4において、位置検出運転への切り替えが既に行われていることを示す位置検出運転切済みフラグがセットされているか否かを判定し、位置検出運転切済みフラグがセットされていると判定された場合には、そのまま一連の処理を終了する。逆に、ステップSP4において位置検出運転切済みフラグがセットされていないと判定された場合には、ステップSP5において、位置検出運転切済みフラグをセットし、ステップSP6において、ロック状態フラグをクリアし、そのまま一連の処理を終了する。
【0032】
ステップSP2において位置検出運転への切り替えが許可されていないと判定された場合には、ステップSP7において、位置検出信号に基づく割り込み数のカウントが許可されているか否かを判定し、許可されていない場合には、そのまま一連の処理を終了する。逆に、ステップSP7において位置検出信号に基づく割り込み数のカウントが許可されていると判定された場合には、ステップSP8において、位置検出信号に基づく割り込み数をインクリメントし、そのまま一連の処理を終了する。
【0033】
図5はインバータ制御部におけるキャリア周期ごとの割り込み処理を説明するフローチャートである。
【0034】
ステップSP1において、運転要求の有無を判定し、運転要求がないと判定された場合には、そのまま一連の処理を終了する。逆に、運転要求があると判定された場合には、ステップSP2において、位置検出運転への切り替えが完了しているか否かを判定し、位置検出運転への切り替えが完了していると判定された場合には、ステップSP3において、位置検出運転を行い、逆に、位置検出運転への切り替えが完了していないと判定された場合には、ステップSP4において、同期運転を行う。そして、ステップSP3の処理、またはステップSP4の処理が行われた後は、そのまま一連の処理を終了する。
【0035】
図6は図5のステップSP4の処理を説明するフローチャートである。
【0036】
ステップSP1において、運転モードの更新タイミングであるか否かを判定し、運転モードの更新タイミングであると判定された場合には、ステップSP2において、ロック判定処理を行い、ステップSP3において、運転モードを更新し、ステップSP4において、ブラシレスDCモータの加速が終了したか否かを判定し、加速が終了したと判定された場合には、ステップSP5において、位置検出運転への切り替えの判定処理を行う。
【0037】
そして、ステップSP1において運転モードの更新タイミングでないと判定された場合、ステップSP4において加速が終了していないと判定された場合、または、ステップSP5の処理が行われた場合には、ステップSP6において、該当する運転モードに対応する波形を出力する処理を行い、そのまま一連の処理を終了する。
【0038】
図7は図6のステップSP2の処理を説明するフローチャートである。
【0039】
ステップSP1において、差電位を示す出力波形周期の数が第1の所定数n0と等しいか否かを判定し、等しければ、ステップSP2において、位置検出信号による割り込みを許可し、そのまま一連の処理を終了する。
【0040】
ステップSP1において電流波形などの出力波形周期の数が第1の所定数n0と等しくないと判定された場合には、ステップSP3において、出力波形周期の数が第2の所定数(n0+n1)と等しいか否かを判定し、等しければ、ステップSP4において、位置検出信号に基づく割り込み数のカウントを許可し、そのまま一連の処理を終了する。
【0041】
ステップSP3において出力波形周期の数が第2の所定数(n0+n1)と等しくないと判定された場合には、ステップSP5において、出力波形周期の数が第3の所定数(n0+n1+n2)と等しいか否かを判定し、等しければ、ステップSP6において、位置検出信号に基づく割り込み数が2(n2−n1)以上かつ{3(n2−n1)−1}以下であるか否かを判定し、位置検出信号に基づく割り込み数が2(n2−n1)以上かつ{3(n2−n1)−1}以下である場合には、ステップSP7において、ロック状態であることを示すロック状態フラグをセットし、そのまま一連の処理を終了する。逆に、位置検出信号に基づく割り込み数が2(n2−n1)以上かつ{3(n2−n1)−1}以下でないと判定された場合には、そのまま一連の処理を終了する。
【0042】
ステップSP5において出力波形周期の数が第3の所定数(n0+n1+n2)と等しくないと判定された場合には、ステップSP8において、出力波形周期の数が第3の所定数(n0+n1+n2)を1だけインクリメントした値と等しいか否かを判定し、等しければ、ステップSP9において、位置検出信号に基づく割り込み数が{2(n2+1−n1)−a1}未満または{2(n2+1−n1)+b}よりも大きいか否かを判定し{ただし、a1は0以上かつ2(n2+1−n1)未満、bは0以上}、位置検出信号に基づく割り込み数が{2(n2+1−n1)−a1}未満または{2(n2+1−n1)+b}よりも大きいと判定された場合には、ステップSP10において、ロック状態フラグをクリアし、そのまま一連の処理を終了する。逆に、位置検出信号に基づく割り込み数が{2(n2+1−n1)−a1}未満または{2(n2+1−n1)+b}よりも大きい、の何れでもないと判定された場合には、そのまま一連の処理を終了する。
【0043】
ステップSP8において出力波形周期の数が第3の所定数(n0+n1+n2)を1だけインクリメントした値と等しくないと判定された場合には、出力波形周期の数が、第4の所定数(n0+n1+n2+n3)に達するまで順次インクリメントした値と等しいか否かを判定し、判定結果に応じてステップSP9、ステップSP10と同様の処理を行う。
【0044】
そして、ステップSP11において、出力波形周期の数が第4の所定数(n0+n1+n2+n3)と等しいか否かを判定し、等しければ、ステップSP12において、位置検出信号に基づく割り込み数が{2(n2+n3−n1)−an3}未満または{2(n2+n3−n1)+b}よりも大きいか否かを判定し{ただし、an3は0以上かつ2(n2+n3−n1)未満}、位置検出信号に基づく割り込み数が{2(n2+n3−n1)−an3}未満または{2(n2+n3−n1)+b}よりも大きいと判定された場合には、ステップSP13において、ロック状態フラグをクリアする。そして、ステップSP12において位置検出信号に基づく割り込み数が{2(n2+n3−n1)−an3}未満または{2(n2+n3−n1)+b}よりも大きい、の何れでもないと判定された場合、またはステップSP13の処理が行われた場合には、ステップSP14において、位置検出信号に基づく割り込み数のカウントを不許可にし、ステップSP15において、位置検出信号による割り込みを不許可にし、そのまま一連の処理を終了する。
【0045】
また、ステップSP11において出力波形周期の数が第4の所定数(n0+n1+n2+n3)と等しくないと判定された場合にも、そのまま一連の処理を終了する。
【0046】
なお、上記のフローチャートの処理において、n0、n1、n2、n3の値としては、例えば経験的に定められる値が採用される。
【0047】
以上、要約すれば、起動後、電流波形などの出力波形がn0周期経過した時点で位置検出信号に基づく割り込みを許可し、出力波形(n0+n1)周期後に、位置検出信号に基づく割り込み数のカウントを許可し、出力波形(n0+n1+n2)周期後、位置検出信号に基づく割り込み数が2(n2−n1)以上かつ{3(n2−n1)−1}以下である場合にロック状態フラグをセットする。
【0048】
そして、出力波形(n0+n1+n2+1)周期後、(n0+n1+n2+n3)周期後まで、任意の周期ごとに位置検出信号に基づく割り込み数を所定の閾値と比較し、ロック状態と判定されない場合にはロック状態フラグをクリアする。
【0049】
出力波形(n0+n1+n2+n3)周期目、ロック状態か否かの判定を行った後に、位置検出信号に基づく割り込み数のカウント、および位置検出信号に基づく割り込みを不許可にする。
【0050】
また、同期運転から位置検出運転への切り替えが正常に行われた場合にもロック状態フラグをクリアする。
【0051】
したがって、ロック状態フラグがセットされたままである場合に、圧縮機のメカ部不良に起因するロックであることを検出することができる。
【0052】
さらに詳細に説明する。
【0053】
正常に回転子が回転している場合は、固定子巻線の中性点電位と固定子巻線と並列接続された抵抗の中性点電位との差電位は、基本波の3倍の周波数で発生することが知られている。
【0054】
しかしながら、ブラシレスDCモータのロック時は、逆起電圧が発生しないため、図3に示す埋込磁石構造のブラシレスDCモータの場合には、回転子が突極構造を有しているため、電流波形1周期中に差電位が2倍の周期で変動することになると思われる。
【0055】
他方、図2に示す表面磁石構造のブラシレスDCモータの場合には、回転子が突極構造を持たないため、差電位が変動しないと思われる。
【0056】
したがって、回転子が正常に回転している非ロック状態と、回転子が正常に回転していないロック状態とで、差電位が互いに異なることを利用して、ロック状態であることを検出できると思われる。
【0057】
具体的には、図3に示す埋込磁石構造のブラシレスDCモータが正常動作している場合には、電流波形と差電位の波形とがそれぞれ図8中(A)(B)に示すとおりになり、差電位の周波数が電流波形の周波数の3倍になっている。これに対して、ロック状態に起因して起動不良が発生した場合には、電流波形と差電位の波形とがそれぞれ図9中(A)(B)に示すとおりになり、差電位の周波数が電流波形の周波数の2倍になっている。また、起動時以外にロック状態が発生した場合には、電流波形と差電位の波形とがそれぞれ図10中(A)(B)に示すとおりになり、差電位の周波数が電流波形の周波数の2倍になっている。
【0058】
したがって、差電位の周波数が電流波形の周波数の3倍であれば非ロック状態であり、差電位の周波数が電流波形の周波数の2倍であればロック状態である。
【0059】
また、図2に示す表面磁石構造のブラシレスDCモータが正常動作している場合には、電流波形と差電位の波形とがそれぞれ図11中(A)(B)に示すとおりになり、差電位の周波数が電流波形の周波数の3倍になっている。これに対して、ロック状態が発生した場合には、電流波形と差電位の波形とがそれぞれ図12中(A)(B)に示すとおりになり、差電位がほぼ0になっている。
【0060】
したがって、差電位の周波数が電流波形の周波数の3倍であれば非ロック状態であり、差電位がほぼ0であればロック状態である。
【0061】
図13はこの発明のロック検出方法の他の実施態様を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、位置検出運転への切り替えの判定処理ごとに行われる。
【0062】
ステップSP1において、同期運転を開始し、ステップSP2において、ブラシレスDCモータの固定子巻線の中性点電位と固定子巻線と並列に接続された抵抗の中性点電位との差電位(位置信号)の電圧を検出し、ステップSP3において、検出された電圧が前回検出された電圧よりも大きいか否かを判定する。
【0063】
そして、検出された電圧が前回検出された電圧よりも大きいと判定された場合には、ステップSP4において、位置信号の電圧を検出し、ステップSP5において、検出された電圧が前回検出された電圧よりも大きいか否かを判定する。逆に、検出された電圧が前回検出された電圧よりも大きくないと判定された場合には、ステップSP6において、位置信号の電圧を検出し、ステップSP7において、検出された電圧が前回検出された電圧よりも大きいか否かを判定する。そして、ステップSP5において検出された電圧が前回検出された電圧よりも大きいと判定された場合、またはステップSP7において検出された電圧が前回検出された電圧よりも大きくないと判定された場合には、ステップSP8において、ロック可能性フラグをONにし、逆に、ステップSP5において検出された電圧が前回検出された電圧よりも大きくないと判定された場合、またはステップSP7において検出された電圧が前回検出された電圧よりも大きいと判定された場合には、ステップSP9において、ロック可能性フラグをOFFにする。なお、ステップSP4からステップSP9の処理をM回(ただし、Mは3以上の整数)繰り返して行う。
【0064】
そして、ステップSP8の処理、またはステップSP9の処理が行われた場合には、ステップSP10において、位置検出運転への切り替えの判定処理(例えば、差電位の各周期の振幅の最大値が所定の閾値を越えて安定している場合に、位置検出運転への切り替えを許可する処理)を行い、ステップSP11において、ロック状態か否かの判定を行い、そのまま一連の処理を終了する。なお、ロック状態か否かの判定は、例えば、ロック可能性フラグが連続してN回(ただし、NはMよりも少ない整数)ONであるか否かに基づいて行えばよく、ロック可能性フラグが連続してN回ONである場合にロック状態であると判定する。
【0065】
具体的には、図8中(B)、図9中(B)、図10中(B)を対比すれば、図3に示す埋込磁石構造のブラシレスDCモータが正常動作している場合には、差電位の振幅の最大値が各周期において一定であるのに対して、ロック状態である場合には、差電位の振幅の最大値が1周期おきに増減することが分かる。したがって、ロック状態である場合には、図13のフローチャートの処理を行うことにより、ロック可能性フラグが連続してN回ONになり、非ロック状態である場合には、ロック可能性フラグがON、OFFを繰り返すことになり、ロック状態か否かを確実に判定することができる。
【0066】
また、図2に示す表面磁石構造のブラシレスDCモータの場合には、図11中(B)、図12中(B)を対比することにより明らかなように、正常動作している場合には差電位の振幅の最大値が各周期において一定であるのに対して、ロック状態である場合には、差電位がほぼ0になることが分かる。したがって、表面磁石構造のブラシレスDCモータを採用する場合には、差電位がほぼ0であることを検出することによりロック状態の検出を達成することができる。
【0067】
図14はこの発明の圧縮機駆動装置におけるロック検出装置の一実施態様を示すブロック図である。
【0068】
このロック検出装置は、ブラシレスDCモータ3の何れかの相の電流を入力として電流波形の周波数を検出する第1周波数検出部11と、ブラシレスDCモータ3の固定子巻線の中性点電位と固定子巻線と並列接続された抵抗の中性点電位との差電位を入力として差電位の周波数を検出する第2周波数検出部12と、両周波数を入力として、差電位の周波数が電流波形の周波数の3倍か3倍以外かを判定する周波数判定部13と、周波数判定部13により差電位の周波数が電流波形の周波数の3倍であると判定されたことに応答して非ロック状態であると判定し、周波数判定部13により差電位の周波数が電流波形の周波数の3倍以外であると判定されたことに応答してロック状態であると判定する状態判定部14とを有している。
【0069】
上記の構成のロック検出装置を採用した場合には、差電位の周波数が電流波形の周波数の3倍か3倍以外かに基づいて非ロック状態かロック状態かを判定することができる。
【0070】
図15はこの発明の圧縮機駆動装置におけるロック検出装置の他の実施態様を示すブロック図である。
【0071】
このロック検出装置は、ブラシレスDCモータ3の固定子巻線の中性点電位と固定子巻線と並列接続された抵抗の中性点電位との差電位を入力として差電位の1周期ごとの振幅の最大値を検出する振幅最大値検出部21と、検出された振幅の最大値がほぼ0であるか否かを判定する第1判定部22と、検出された振幅の最大値が1周期おきに大小の変化を伴うか否かを判定する第2判定部23と、第1判定部22により、検出された振幅の最大値がほぼ0でないと判定され、かつ第2判定部23により、検出された振幅の最大値が1周期おきに大小の変化を伴わないと判定されたことに応答して非ロック状態であると判定し、第1判定部22により、検出された振幅の最大値がほぼ0であると判定され、または、第2判定部23により、検出された振幅の最大値が1周期おきに大小の変化を伴うと判定されたことに応答してロック状態であると判定する状態判定部24とを有している。
【0072】
上記の構成のロック検出装置を採用した場合には、差電位の1周期ごとの振幅の最大値がほぼ0か否か、または差電位の1周期ごとの振幅の最大値が1周期おきに大小の変化を伴うか否かに基づいて非ロック状態かロック状態かを判定することができる。
【0073】
もちろん、使用されるブラシレスDCモータが表面磁石構造のものか埋込磁石構造のものかが予め分かっているのであるから、第1判定部22、第2判定部23の何れかを省略することが可能である。
【0074】
以上の何れかの実施態様によってロック状態であると判定された場合には、圧縮機のメカ部の異常に起因するロックが発生しており、逆に、以上の何れかの実施態様によってロック状態であると判定されず、しかもブラシレスDCモータの運転ができない場合には、インバータ不良によるものである。したがって、設置現場においても簡単に、かつ短時間でブラシレスDCモータの運転を行うことができないことの原因を解明することができる。この結果、不良対策のコストを低減することができる。もちろん、原因解明の所要時間を短くすることができるので、大電流を長時間にわたって流すことがなくなり、ブラシレスDCモータの焼損、インバータ素子の焼損を未然に防止することができる。
【0075】
【発明の効果】
請求項1の発明は、差電位の周波数を検出することにより、特別な検出回路を追加することなく、設置現場において起動不良が発生した場合に、圧縮機のメカ部の不良が原因であるか否かを簡単に識別することができ、起動不良発生原因の解明の所要時間を短くすることができるとともに、不良対策のコストを低減することができ、しかも、ブラシレスDCモータの焼損、インバータ素子の焼損を未然に防止することができ、さらに、ロック非発生時に、モータトルクのみならずリラクタンストルクを利用して圧縮機を効率よく駆動することができるという特有の効果を奏する。
【0078】
請求項2の発明は、差電位の周波数を検出することにより、特別な検出回路を追加することなく、設置現場において起動不良が発生した場合に、圧縮機のメカ部の不良が原因であるか否かを簡単に識別することができ、起動不良発生原因の解明の所要時間を短くすることができるとともに、不良対策のコストを低減することができ、しかも、ブラシレスDCモータの焼損、インバータ素子の焼損を未然に防止することができ、さらに、ロック非発生時に、モータトルクのみならずリラクタンストルクを利用して圧縮機を効率よく駆動することができるという特有の効果を奏する。
【0081】
請求項3の発明は、差電位の振幅を検出することにより、特別な検出回路を追加することなく、設置現場において起動不良が発生した場合に、圧縮機のメカ部の不良が原因であるか否かを簡単に識別することができ、起動不良発生原因の解明の所要時間を短くすることができるとともに、不良対策のコストを低減することができ、しかも、ブラシレスDCモータの焼損、インバータ素子の焼損を未然に防止することができ、さらに、ロック非発生時に、モータトルクのみならずリラクタンストルクを利用して圧縮機を効率よく駆動することができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧縮機駆動装置の一実施態様を示す概略図である。
【図2】表面磁石構造のブラシレスDCモータの構成を概略的に示す図である。
【図3】埋込磁石構造のブラシレスDCモータの構成を概略的に示す図である。
【図4】図1の構成の圧縮機駆動装置においてロック状態が発生しているか否かを判定する処理を説明するフローチャートである。
【図5】インバータ制御部におけるキャリア周期ごとの割り込み処理を説明するフローチャートである。
【図6】図5のステップSP4の処理を説明するフローチャートである。
【図7】図6のステップSP2の処理を説明するフローチャートである。
【図8】図3に示す埋込磁石構造のブラシレスDCモータが正常動作している場合における電流波形と差電位の波形とを示す図である。
【図9】図3に示す埋込磁石構造のブラシレスDCモータにロック状態に起因する起動不良が発生した場合における電流波形と差電位の波形とを示す図である。
【図10】図3に示す埋込磁石構造のブラシレスDCモータの起動時以外にロック状態が発生した場合における電流波形と差電位の波形とを示す図である。
【図11】図2に示す表面磁石構造のブラシレスDCモータが正常動作している場合における電流波形と差電位の波形とを示す図である。
【図12】図2に示す表面磁石構造のブラシレスDCモータにロック状態が発生した場合における電流波形と差電位の波形とを示す図である。
【図13】この発明のロック検出方法の他の実施態様を説明するフローチャートである。
【図14】この発明の圧縮機駆動装置におけるロック検出装置の一実施態様を示すブロック図である。
【図15】この発明の圧縮機駆動装置におけるロック検出装置の他の実施態様を示すブロック図である。
【符号の説明】
2 インバータ 3 ブラシレスDCモータ
3e 回転子 3f 永久磁石
3u,3v,3w 固定子巻線 4 圧縮機
5u,5v,5w 抵抗 6 ローパスフィルタとして機能するオペアンプ
8 インバータ制御部 14、24 状態判定部
Claims (3)
- インバータ(2)により制御されるブラシレスDCモータ(3)によって圧縮機(4)を駆動するシステムにおいて、
内部に永久磁石を埋め込んでなる回転子を含むブラシレスDCモータ(3)の固定子巻線(3u)(3v)(3w)の中性点電位と、固定子巻線(3u)(3v)(3w)と並列に接続された抵抗(5u)(5v)(5w)の中性点電位との差電位を検出し、検出された差電位の周波数がブラシレスDCモータ(3)の運転周波数の3倍以外の周波数であることに応答して、圧縮機不良に起因するブラシレスDCモータ(3)のロックが発生していることを検出することを特徴とする圧縮機駆動装置におけるロック検出方法。 - インバータ(2)により制御されるブラシレスDCモータ(3)によって圧縮機(4)を駆動するシステムにおいて、
内部に永久磁石を埋め込んでなる回転子を含むブラシレスDCモータ(3)の固定子巻線(3u)(3v)(3w)の中性点電位と、固定子巻線(3u)(3v)(3w)と並列に接続された抵抗(5u)(5v)(5w)の中性点電位との差電位を検出する差電位検出手段(6)と、差電位検出手段(6)により検出された差電位の周波数がブラシレスDCモータの運転周波数の3倍以外の周波数であるか否かを判定し、3倍以外の周波数であることに応答して、圧縮機不良に起因するブラシレスDCモータのロックが発生していると判定するロック判定手段(8)(14)(24)とを含むことを特徴とする圧縮機駆動装置におけるロック検出装置。 - インバータ(2)により制御されるブラシレスDCモータ(3)によって圧縮機(4)を駆動するシステムにおいて、
内部に永久磁石を埋め込んでなる回転子を含むブラシレスDCモータ(3)の固定子巻線(3u)(3v)(3w)の中性点電位と、固定子巻線(3u)(3v)(3w)と並列に接続された抵抗(5u)(5v)(5w)の中性点電位との差電位を検出する差電位検出手段(6)と、差電位検出手段(6)により検出された差電位の振幅に基づいて圧縮機不良に起因するブラシレスDCモータ(3)のロックが発生しているか否かを判定するロック判定手段(8)(14)(24)とを含むことを特徴とする圧縮機駆動装置におけるロック検出装置。
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