JP3617571B2 - 映像機器用ポリカ−ボネ−ト樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の波長領域における分光光線透過率を制御したポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体に関し、詳しくはテレビジョン、自動車ナビゲーションシステムや携帯電話、携帯端末等の移動体通信機器、AV機器、OA機器、ワープロ、パソコン等の各種機器の映像表示部の前面に設置されるポリカーボネート樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラーテレビジョンに代表される映像機器に於いては、映し出される画像の高精細化と大画面化という市場要求により、従来のCRTを用いた直視型テレビジョンに加えて、プラズマディスプレイ等を用いた発光型パネル方式、液晶ディスプレイ等を用いた非発光型パネル方式、映像プロジェクターが内蔵されたリアプロジェクション方式等のテレビジョンが進出しつつある。
【0003】
映像機器の仕様や構成する部品構造が多様化するにつれて、画像信号源となる光源或いは放電部あるいは画像を構成する各々の画素部分の構造的要因により、可視から赤外あるいはマイクロ波領域にわたって、カラー映像の3原色(赤、緑、青色)の波長帯以外の光線が発せられ、画面のちらつきや色調ムラ及び電磁波放射による機器の誤作動等の問題が生じている。
【0004】
これらの問題を映像機器の駆動回路上の電気信号の調整により解決しようとすると、画面の全体的な輝度の低下や色分解能の低下等の二次的な問題が発生するため、好ましいカラー映像を得るためには光の散乱や拡散による光量損失が小さく、かつ赤、緑、青色の全ての波長帯の光線、特に人間の視感度が高い450〜650nmの波長帯の光線を効率よく透過する機能を有した材料の提供が望まれている。
【0005】
従来、このような問題を解決するために、映像機器に特定波長帯の光線を通さない光学フィルター機能を持たせた材料を設置することが提案されている。例えば、特開昭58−160941号公報にはメタクリル樹脂にカルボン酸のネオジム化合物を含有した材料、特開平4−72361号公報には透明樹脂中にネオジム化合物を含有した材料、特開平5−179147号公報には透明樹脂中にエルビウム化合物を含有した材料等が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法によって得られる材料は非常に狭い波長帯の光線を吸収することしかできず、カラー映像の3原色である赤、緑、青色の波長帯の光線、特に450〜650nmの波長帯の光線を効率よく透過する機能を有した材料とは言えない。但し、この可視領域の光線透過率を単純に高くすると、周囲の照明等による外光が映像に重なりコントラストが低下して好ましくないこと、映像機器の電源を切った時にハウジング部に対して映像表示部が浮き出てしまい好ましくないこと、といった新たな問題が生じる。
【0007】
また上記材料には光学特性に優れたメタクリル樹脂がよく用いられてきたが、映像機器の仕様や構成する部品構造が多様化するにつれ、画像信号源となる光源或いは放電部あるいは画像を構成する各々の画素部分の構造的要因により、材料自体が高温下にさらされるため耐熱性が求められている。
本発明の目的は、光の散乱や拡散による光量損失が小さく450〜650nmの波長帯の光線を有効に透過し、映像コントラストも高く、機器の電源を切った時にハウジング部と映像表示部とに一体感を持たせ、かつ耐熱性を高めた材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、画像信号源となる光源或いは放電部から発せられる光線の特定波長領域に於いて光学的に活性、即ち光吸収特性を有する化合物を樹脂中に分散させることによって、必要な光学特性を満足した材料を造り出せることを見い出し、従来用いられてきたメタクリル樹脂にかわり耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂を用いることによって本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、ポリカーボネート樹脂と、250〜3000nmの波長領域での吸光度が0.01以上である少なくとも一種以上の光吸収化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、該組成物をシート状物に成形した時の全光線透過率が50〜90%、かつ450〜650nmの可視光波長領域に於ける分光光線透過率が50〜85%の範囲内にある映像機器用ポリカーボネート樹脂組成物、および該組成物を任意の形状に成形した成形体である。
【0010】
また、ポリカーボネート樹脂と少なくとも一種以上の上記光吸収化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、該組成物をシート状物に成形した時の波長800nmに於ける分光光線透過率が20%以下であることを特徴とする映像機器用ポリカーボネート樹脂組成物、および該組成物を任意の形状に成形した成形体により、映像機器からの赤外からマイクロ波領域の電磁波放射を防ぐことができ、本発明としては更に好ましい。
【0011】
また、ポリカーボネート樹脂と少なくとも一種以上の上記光吸収化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、該組成物をシート状物に成形した時の全光線透過率が50〜90%、かつ450〜650nmの可視光波長領域に於ける分光光線透過率が50〜85%の範囲内にあり、更に波長800nmに於ける分光光線透過率が20%以下であることを特徴とする映像機器用ポリカーボネート樹脂組成物、および該組成物を任意の形状に成形した成形体であり、本発明としては更に好ましいものである。
【0012】
更に、上記の樹脂組成物を成形することを特徴とする映像表示部の前面に設置されるプラズマディスプレイ用成形体である。
図1により、2種類のプラズマディスプレイと本発明により得られる成形体との構成について説明する。プラズマ1により生じた紫外線11によって3種類の蛍光体4を光学的に励起し、エネルギー的に緩和する際に発する3種類の可視光12が映像の3原色となる。観測者側である映像表示面の前面に設置された成形体材料5が本発明で得られる成形体である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、下記化1で表される繰り返し単位からなる主鎖を有する。
【0014】
【化1】
(式中、Arは二価の芳香族残基であり、例えばフェニレン、ナフチレン、ビフィニレン、ピリジレンや、下記化2で表されるものが挙げられる。)
【0015】
【化2】
(式中、Ar1 及びAr2 はそれぞれアリレーン基である。例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレン等の基を表し、Yは下記化3及び化4で表されるアルキレン基または置換アルキレン基である。)
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれぞれ水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であって、場合によりハロゲン原子、アルコシ基で置換されていてもよく、kは3〜11の整数であり、化4の水素原子は、低級アルキル基、アリール基、ハロゲンとうで置換されてもよい。)
【0018】
また、下記化5で示される二価の芳香族残基を共重合体成分として含有していてもよい。
【化5】
(式中、Ar1 、Ar2 は化2と同じ。Zは単なる結合、または、−O−、−CO−、−S−、−SO2 −、−CO2 −、−CON(R1 )−、(R1 は前記と同様)等の二価の基である。)
これら二価の芳香族残基の例としては、下記化6及び化7で表されるもの等が挙げられる。
【0019】
【化6】
【0020】
【化7】
(式中、R5 及びR6 はそれぞれ水素、ハロゲン、C1 〜C10アルキル基、C1 〜C10アルコキシ基、C1 〜C10シクロアルキル基またはフェニル基である。m及びnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各R5 はそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合は各R6 はそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。)
【0021】
中でも、下記化8で表されるものが好ましい一例である。特に、下記化8をArとする繰り返しユニットを85モル%以上含むものが好ましい。
【化8】
【0022】
また、本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、三価以上の芳香族残基を共重合成分として含有していてもよいし、脂肪族または芳香族のエステル成分を共重合成分として含有してもよい。
ポリマー末端の分子構造は特に限定されないが、ヒドロキシ基、アリールカーボネート基、アルキルカーボネート基から選ばれた1種以上の末端基を結合することができる。アリールカーボネート末端基は、下記化9で表され、具体例としては例えば下記化10が挙げられる。
【0023】
【化9】
(式中、Ar3 は一価の芳香族残基で、芳香環は置換されていてもよい。)
【0024】
【化10】
【0025】
アルキルカーボネート末端基は、下記化11で表され、具体例としては例えば下記化12等が挙げられる。
【化11】
(式中、R7 は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキル基)
【0026】
【化12】
【0027】
これらの中で、フェニルカーボネート基、p−t−ブチルフェニルカーボネート基、p−クミルフェニルカーボネート基等が好ましく用いられる。またヒドロキシ基末端と他の末端との比率は1:100以上であることが好ましく、更に好ましくは1:40以上である。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂の分子量は特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂に含有される加水分解可能な塩素は好ましくは1ppm以下、更に好ましくは0.5ppm以下である。1ppmを超える量の塩素がポリカーボネート樹脂中に含有されていると、成形加工時等長時間高温下にさらされることによって着色してしまいポリカーボネート樹脂の特徴である透明感が失われてしまう。
【0028】
これらポリカーボネート樹脂は公知の方法で製造できる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応せしめる公知の方法、例えば芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンを水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(ホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートを反応させるエステル交換法(溶融法)、結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開平1−158033号公報、特開平1−271426号公報、特開平3−68627号公報)等の方法により製造できる。
【0029】
本発明に用いられる光吸収化合物は、250〜3000nmの波長領域に於ける少なくとも一箇所以上の波長又は波長帯での吸光度が0.01以上である物、すなわち250〜3000nmの波長領域での吸光度スペクトルに於いて0.01以上となる線状又は任意の幅を有するスペクトル構造を一箇所以上示す物から選ばれて使用される。光吸収化合物の形態は、ポリカーボネート樹脂中に均一に分散しかつ該樹脂組成物の光学特性が一様となるために、25℃に於いて粉末状であることが好ましい。また、光吸収化合物粉末の大きさも組成物の光学特性に影響を及ぼすため、粉末の重量平均粒子径が0.01〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【0030】
具体的には、無機系顔料として硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、炭酸鉛、塩基性炭酸鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、二酸化チタン、含硫黄ナトリウムアルミノシリケート系顔料、フェロシアン化鉄、フェロシアン化第二鉄、アルミン酸コバルト、酸化クロム、含水酸化クロム、クロム酸鉛、塩基性クロム酸鉛、硫酸鉛、モリブデン酸鉛、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、炭酸カドミウム、酸化鉄、酸化第二鉄、酸化第一銅、塩基性クロム酸亜鉛カリウム、ストロンチウムクロメート系顔料、カーボンブラック等、有機系顔料としてアゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、バット系顔料(アントラピリミジン、フラバンスロン、臭素化アンサンスロン、ペリノン、ペリレン、チオインジゴ、塩素化イソビオランスロン、インダンスロン、オキサジン、アリザリン)等、染料としてアゾ系染料、ビスアゾ系染料、トリスアゾ系染料、アントラキノン系染料、トリフェニルメタン系染料、ポリメチン系染料、インジゴイド系染料、スチルベン系染料、ピラゾロン系染料、ナフタジン系染料等が挙げられる。
【0031】
特に好ましくは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の遷移金属、及びカルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の中から選ばれた少なくとも一種以上の金属を構造中に含む化合物が用いられる。これらの光吸収化合物は単独で使用しても良いし、複数混合しても好ましく使用できる。
【0032】
光吸収化合物の配合量は特に限定されないが、好ましくはポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.0001〜50重量部、より好ましくは0.0001〜10重量部の範囲である。ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.0001〜10重量部であれば、ポリカーボネート樹脂中への分散が容易にかつ均一にできる点で好ましい。
【0033】
本発明に用いられる化合物の吸光度とは、下記(1)のAで定義される値であり、図2にその測定原理を示している。光源6から発せられ試料7に入射する光線61の光量をI0 とすると、試料から出射する光線71は光量Iに減じる。この光量変化率I/I0 を、式(1)に従って計算して求めた値Aが吸光度である。光源から発せられた光線の波長を分光する装置を備えた一般の分光測定器を用いれば、各波長に於ける吸光度が求められる。
【数1】
A=−log(I/I0 ) ・・・(1)
【0034】
測定する試料の形態や波長領域によって吸光度の測定手法は異なるが、粉末状試料の吸光度を測定する場合には、試料中を拡散して透過する光線成分も検出する必要があるため、例えばJIS−Z8722に示される光学測定系を利用することができる。
本発明に於ける樹脂組成物の製造方法は、ポリカーボネート樹脂中に前記の化合物が均一に分散する方法であれば特に制限されないが、例えば重合性単量体もしくは部分重合した重合性単量体のシラップ中に該化合物を分散させて重合する方法、あらかじめ重合しておいたポリカーボネート樹脂に該化合物を混合し、溶融混練して押出し造粒する方法等がある。
【0035】
本発明に於いては、樹脂組成物及びその成形体の光学特性及び機械的熱的特性を損なわない範囲に於いて他の成分、例えば補強剤、充填剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、核剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を、樹脂組成物の製造時やその成形時など任意の過程において含有させることができる。
本発明に於ける樹脂組成物は任意の形状に成形し、各種映像機器用部品として使用することができる。樹脂成形体の構造は、ポリカーボネート樹脂と化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物を成形した物であれば、一種類の樹脂組成物から成る単層構造又は二種類以上の樹脂組成物から成る多層構造のいずれでも良い。
【0036】
成形体の形状とその成形方法は特に限定されるものではないが、例えばTダイによる押出シート成形法を用いれば平滑、波形、プリズム形のシート状成形体を得ることができる。当該シート状成形体を真空成形、圧空成形、スタンパブル成形により二次加工しても良い。映像機器の部品形状が複雑な場合には、環状ダイによる異形押出成形、ブロー成形、射出成形、圧縮成形等により所望の形状の成形体を得ることができる。
【0037】
また、多層構造を有する成形体を得るためには、二種類以上の樹脂組成物を同時に溶融押出する共押出成形方法、二種類の樹脂組成物の一方を単層押出しながら予め成形された他方をラミネートする方法、二種類の樹脂組成物を予め成形した後プレスして熱圧着する方法、連続的に重ねて貼り合わせる方法、真空成形、圧空成形時に積層する方法等がある。
本発明に於いて、全光線透過率の測定は、樹脂組成物又はその成形体を0.1〜30mm、より好ましくは0.5〜10mmの範囲の厚みを有するシート状物にて、JIS−K7105法に準じた市販の測定機を用いて行うことができる。全光線透過率が50〜90%であれば、映像機器の本来の輝度を低下させることがない点で好ましい。
【0038】
また、分光光線透過率の測定は、樹脂組成物又はその成形体を0.1〜30mm、より好ましくは0.5〜10mmの範囲の厚みを有するシート状物にて、市販の分光測定機を用いて行うことができる。450〜650nmの可視光波長領域に於ける分光光線透過率が50〜85%であれば、カラー映像の3原色である赤、緑、青色の波長帯の光線を有効に透過することができる点で好ましい。また、波長800nmに於ける分光光線透過率が20%以下であれば、映像機器からの赤外からマイクロ波領域の電磁波放射を防ぐことができ好ましい。
【0039】
以上のようにして製造された、ポリカーボネート樹脂と250〜3000nmの波長領域に於ける少なくとも一箇所以上の波長又は波長帯での吸光度が0.01以上である少なくとも一種以上の光吸収化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物を、シート状物に成形した時の全光線透過率が50〜90%の範囲にあり、かつ450〜650nmの可視光波長領域に於ける分光光線透過率が50〜85%の範囲内にあることを同時に満足する場合に、本発明は達成される。また、ポリカーボネート樹脂と少なくとも一種以上の上記光吸収化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物を、シート状物に成形した時の波長800nmに於ける分光光線透過率が20%以下である場合は、本発明は更に好ましく達成される。また、これらの樹脂組成物及び任意の形状に成形した成形体は、映像表示部の前面に設置されるプラズマディスプレイ用成形体として非常に有用である。
【0040】
【実施例】
以下、実施例、および比較例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、各実施例、比較例で用いた評価及び試験方法は次の通りである。
(1)吸光度の測定:
粉末試料を2枚の石英ガラスで1mmの間隔を持たせて挟んだ状態にし、島津製作所社製自記分光光度計UV−3100PC型(商品名)を用いて220〜2000nmの範囲にて光吸収スペクトルを測定する。2000〜3000nmの範囲の吸収スペクトルは、粉末試料を臭化カリウム粉末と混合、粉砕して1mm厚の錠剤状に固めた状態にし、日本分光社製分光測定器IR−700型(商品名)を用いて測定する。得られたスペクトルに於いて、最大ピークを示す波長帯での吸光度を前記式(1)に従って求める。
【0041】
(2)光線透過率の評価:
樹脂試験片を島津製作所社製自記分光光度計UV−3100PC型に設置し、300〜900nmの波長範囲にて透過スペクトルを測定し、測定チャートから450〜650nmに於ける分光光線透過率を読みとる。全光線透過率は、JIS−K7105に準じた日本電色工業社製1001−DP型(商品名)ヘイズメーターを用いて測定する。
【0042】
(3)映像コントラストの評価:
平滑シート状の樹脂成形体を、市販のプラズマディスプレイパネル(富士通ゼネラル社製 プラズマビジョンM21 PDS−2123型:商品名)の前面に設置し、映像のコントラストを目視判定した。◎は良好な場合、△は効果が認められない場合、×は使用できないと判断される場合を示す。
【0043】
(4)映像表示部とハウジング部との一体感の評価:
平滑シート状の樹脂成形体を、市販のプラズマディスプレイパネル(富士通ゼネラル社製 プラズマビジョンM21 PDS−2123型)の前面に設置し、映像のコントラストを目視判定した。◎は良好な場合、△は効果が認められない場合、×は使用できないと判断される場合を示す。
(5)荷重たわみ温度の評価:
平滑シート状の樹脂成形体の耐熱性の評価としてJIS−K7207 A法に準拠した荷重たわみ温度を測定した。
【0044】
(実施例1、実施例2)
ポリカーボネート樹脂(商品名:パンライトK1300、帝人化成社製)と、上記(1)の方法により測定した吸光度が0.02以上を示す光吸収化合物(ニッケル系有機化合物、商品名:SIR−159、三井東圧染料社製)を表1に示す濃度で配合し、ヘンシェルミキサーでブレンドした後ベント付き押出機40mmφで樹脂温度290℃にてペレット化して樹脂組成物を得る。得られたペレットを押出機(スクリュー径50mmφ、L/D=32、単軸)、マルチマニホールドダイ、及びポリッシングロール3本から成るユニットを用いて押出シート成形を行い、幅300mmの単層シートを作成する。積層シートを作成する場合は、第二の押出機(スクリュー径25mmφ、L/D=32、単軸)を組み合わせて共押出シート成形を行い、同様に幅300mmの積層シートを得ることができる。シートの厚みはポリッシングロールのクリアランスで2.0mmを目標に調整する。積層シートの積層部の厚みは、二機の押出機の吐出量バランスで調整する。得られたシートを試験片として上記(2)〜(5)の評価を行う。結果を表2に示す。
【0045】
実施例1では、試験片の全光線透過率が59%で、450〜650nmの分光光線透過率が59〜68%を示し好ましい結果を得る。更に、800nmに於ける分光光線透過率も2%を示し非常に好ましく、プラズマディスプレイ前面に設置した場合、画像のコントラストの向上及びハウジング部との一体感が認められ非常に好ましい。また荷重たわみ温度も140℃あり好ましい。
【0046】
実施例2では、試験片の全光線透過率が72%で、450〜650nmの分光光線透過率が73〜78%を示し好ましい結果を得る。更に、800nmに於ける分光光線透過率も7%を示し非常に好ましい。また、プラズマディスプレイ前面に設置する材料として映像コントラスト及びハウジング部との一体感の効果が認められ好ましい。
【0047】
(実施例3)
各々の吸光度が全て0.03以上を示す化合物3種類を、表1に示す配合濃度で用いた以外はすべて実施例1と同じ条件で試験片を作成し、(2)〜(5)の評価を行う。評価結果を表2に示す。
で、450〜650nmの分光光線透過率が60〜69%を示し好ましい結果を得る。800nmに於ける分光光線透過率は20%以下を示さないが、プラズマディスプレイ前面に設置した場合、映像コントラストの向上及びハウジング部との一体感が認められ好ましい。
【0048】
(比較例1〜4)
化合物の種類及び配合濃度を表1に従って変えた以外はすべて実施例1と同じ条件で試験片を作成し、(2)〜(5)の評価を行う。用いた化合物の各々の吸光度は表1に示す通りである。評価結果を表2に示す。
比較例1〜2では、試験片の450〜650nmの分光光線透過率が85%を超え好ましくない。また、プラズマディスプレイ前面に設置した場合、特に映像のコントラストの向上が認められない点で好ましくない。
【0049】
比較例3では、試験片の全光線透過率は75%を示すが、450〜500nmの範囲で分光光線透過率がほぼ0%を示し好ましくない。また、プラズマディスプレイ前面に設置した場合、特に電源を切った後に画面が浮き出て見えるため効果はないと判断でき好ましくない。
比較例4では、試験片の全光線透過率は52%を示すが、450〜650nmの分光光線透過率は36%を示し好ましくない。また、不透明性を示すためプラズマディスプレイの前面材料として使用できない。
【0050】
(比較例5)
使用した樹脂をポリカーボネート樹脂から現在よく用いられているメタクリル樹脂(商品名:デルパウダ70H、旭化成工業製)に変えた以外は実施例1と同様に行った。光学特性としては、試験片の全光線透過率が63%で、450〜650nmの分光光線透過率が62〜71%を示し好ましい結果を得、更に800nmに於ける分光光線透過率も2%を示し非常に好ましい。またプラズマディスプレイ前面に設置した場合、画像のコントラストの向上及びハウジング部との一体感が認められ非常に好ましいが、耐熱性が実施例1に比べると40℃も低く好ましくない。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明によって得られる樹脂組成物及び成形体は、光の散乱や拡散による光量損失が小さく450〜650nmの波長帯の光線を有効に透過し、映像コントラストが高く、機器の電源を切った時にハウジング部と映像表示部とに一体感があり、かつ従来品に比べ耐熱性も向上しており、各種映像機器の映像表示部の前面に設置する材料として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により得られる樹脂成形体と、2種類のプラズマディスプレイとの構成について模式的に表現した図である。
【図2】本発明に用いられる化合物の吸光度の測定原理を模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 プラズマ
11 紫外線
12 可視光線
2 ガラス基板
21 表示電極
22 アドレス電極
23 カソード電極
24 アノード電極
25 隔壁
31 誘電体
32 保護層
33 抵抗
34 絶縁体
4 蛍光体
5 成形体材料
6 光源
61 試料へ入射する光線
7 測定する試料
71 試料から出射する光線
Claims (5)
- ポリカーボネート樹脂と、250〜3000nmの波長領域での吸光度が0.01以上である少なくとも一種以上の光吸収化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、該組成物をシート状物に成形した時の全光線透過率が50〜90%、かつ450〜650nmの可視光波長領域に於ける分光光線透過率が50〜85%の範囲内にあることを特徴とする映像機器用ポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂と、250〜3000nmの波長領域での吸光度が0.01以上である少なくとも一種以上の光吸収化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、該組成物をシート状物に成形した時の全光線透過率が50〜90%、かつ波長800nmに於ける分光光線透過率が20%以下であることを特徴とする映像機器用ポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂と、250〜3000nmの波長領域での吸光度が0.01以上である少なくとも一種以上の光吸収化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、該組成物をシート状物に成形した時の全光線透過率が50〜90%、かつ450〜650nmの可視光波長領域に於ける分光光線透過率が50〜85%の範囲内にあり、更に波長800nmに於ける分光光線透過率が20%以下であることを特徴とする映像機器用ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を任意の形状に成形してなることを特徴とする成形体。
- 成形体が映像表示部の前面に設置されるプラズマディスプレイ用成形体であることを特徴とする請求項4に記載の成形体。
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