JP3616896B2 - 調光型遮光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラインド、ロールスクリーン、カーテン等、窓面に取り付ける調光型遮光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12に示すように、階高の限定されたオフィス等の室内空間において室内1の照明に自然光を積極的に利用しようとする場合、(a)に示すように、窓面2を完全開放すると直射日光が眩しすぎるので、(b)、(c)に示すように、窓面2に反射板(ライトシェルフ)3やプリズム4を設置する等の方法が提案されている。しかし、建物形態が大きく変化することや、メンテナンス及びイニシャルコストの問題から、あまり採用されなかった。従って、通常は開閉自在なブラインドやロールスクリーン等を遮光体として窓面に設置し、この遮光体を開閉することによって採光を調節している。
【0003】
そして、近年では、ブラインドを自動的に制御するものも提供されつつある。このような自動制御型のブラインドとしては、時間に対応させてブラインドを開閉させるよう制御するもの、太陽高度に基づいてブラインドのスラットを太陽光を遮蔽する角度に調整するもの、室外や室内に照度センサーを設置し、センサーで検出した照度に基づいてブラインドのスラット角を調整するもの等も開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来のブラインド等の遮光体には、以下のような問題が存在する。
例えば美術館等においては、絵画や織物等の作品は、紫外線によって痛んでしまうため室内に展示し、紫外線を多く含む太陽光を直接室内に入れることは避けている。ところが、絵画等の作品は自然光の中で描かれることが多く、作者が描いたものと同じ色彩を再現して鑑賞しようとする場合には、自然光の中で鑑賞するのが望ましい。このため、窓にブラインドやロールスクリーン等の遮光体を設置し、これを適宜開閉して紫外線を含む太陽光が直接作品に当たらないように調整しながら、できるだけ自然光を導入するようにすることも考えられる。しかし、太陽光は時々刻々とその方向が変化するため、作品に直接太陽光が当たらないよう、太陽光の方向の変化に伴って遮光体を確実に開閉するのは非常に困難である。
【0005】
また、通常のオフィス空間等においても、夕方等に、太陽光のうち可視光に対して赤外光成分の割合が多くなると、太陽光により室内の空気が熱せられ、これによって冷房の負荷が上昇することもある。
【0006】
上記したような場合に、紫外線や赤外線等の特定波長の光の強度に応じて自動制御するようなブラインドがあれば好適であるが、例えば太陽光中の紫外線や赤外線の強度は、時間、季節、天気等の種々の条件によって左右されるため、単に時間や太陽高度、照度等によって自動制御する従来型の遮光体では、実現が不可能であるのが実状である。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、紫外線や赤外線等、特定波長の光を有効に遮断する等して、室内への日射を常に最適な状態に維持することのできる調光型遮光体を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ブラインド、ロールスクリーン、カーテン等、太陽光の射し込む窓面に取り付けることで、室内への採光を調節する調光型遮光体であって、該調光型遮光体には、これを開閉する開閉機構と、該開閉機構の動作を制御する制御手段とが備えられ、該制御手段では、直射光検出装置により直射光の有無を判定し、直射光無しと判定された場合は前記調光型遮光体を開き、直射光有りと判定された場合は、さらに検出手段により特定波長の光の強度を検出し、該特定波長の光の強度が予め設定した設定値以上である場合に前記調光型遮光体を閉じ、該特定波長の光の強度が予め設定した設定値以下である場合に前記調光型遮光体を開くよう前記開閉機構を制御する構成となっていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の調光型遮光体において、前記検出手段が、特定波長の光のみを透過させるフィルターと、該フィルターを透過した光の強度を検出するセンサー部材とからなることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る調光型遮光体の第一及び第二の実施の形態について、図1ないし図11を参照して説明する。
【0012】
[第一の実施の形態]
図1に示すものは、自動制御式の調光型遮光体の全体構成を示す図であって、この図において、符号Zは例えばブラインドやロールスクリーン、カーテン、シャッター等、開閉自在な調光型遮光体(以下、単に「ブラインド」と略称する)、6はブラインドZを開閉するためのモータ等からなる開閉機構、7は開閉機構6を制御する制御装置(制御手段)、8は検出部、をそれぞれ示している。
【0013】
検出部8には、光の強度を検出する光センサー(検出手段)9が備えられている。この光センサー9は、シリコンフォトダイオード等からなるセンサー部材9aの上方の受光部9bに、特定波長の光のみを透過させるフィルター9fを備えた構成からなっている。
【0014】
フィルター9fは、例えばガラスフィルター、ゼラチンフィルター、トリアセテート等からなり、波長と光の強度との間に図2に示すような相関関係を有する太陽光のうち、例えば赤外線や紫外線等、特定の波長の光のみを透過させるものである。例えば図3は、紫外線のみを透過させるフィルター9fの透過特性である。
【0015】
図1に示したように、この光センサー9では、受光部9bで光を受け、フィルター9fを透過した光、すなわち特定波長の光の強度を、センサー部材9aで検出して電流Iλに変換し、発信器9eから出力するようになっている。
【0016】
制御装置7では、光センサー9から出力された電流Iλに応じ、開閉機構6の作動を制御し、ブラインドZの開閉を制御するようになっている。
【0017】
以下に制御装置7における制御内容について、図4を参照しつつ説明する。
(ステップS1)
制御装置7は、クロック7aを内蔵しており、このクロック7aから出力される月日時間のデータに基づき、制御時間か否かを判断する。すなわち、就業時間内等、室内に人がいる時間のみブラインドZを作動させる場合等、予め設定したブラインド作動時間であるかどうかを判定する。
【0018】
(ステップS2)
次いで、制御時間であれば、光センサー9から出力された電流Iλが、予め設定した設定値Imaxよりも大きいかどうかを比較する。その結果、
Iλ>Imax
の関係を満たす場合、特定波長の光の強度が予め設定した設定値以上である、すなわち特定波長の光が強い、と判定し、後述するステップS3に進む。一方、特定波長の光の強度が予め設定した設定値以下で前記関係を満たさない場合、特定波長の光が弱いと判定し、後述するステップS4に進む。
【0019】
(ステップS3)
特定波長の光が強い、と判定した場合、ブラインドZが開いているかどうかを検出する。その結果、ブラインドZが開いていれば、開閉機構6を作動させてブラインドZを閉じる(ステップS3a)。一方、ブラインドZが閉じていれば、ステップS1に戻る。
【0020】
(ステップS4)
特定波長の光が弱い、と判定した場合、ブラインドZが閉じているかどうかを検出する。その結果、ブラインドZが閉じていれば、開閉機構6を作動させてブラインドZを開く(ステップS4a)。これにより、外からの光を室内に導入し、自然光を採光することができる。一方、ブラインドZが開いていれば、既に採光状態にあるので、そのままステップS1に戻る。
【0021】
このようにして、制御装置7では、特定波長の光、例えば赤外線や紫外線等、が弱いと判定したときにはブラインドZを開き、所定以上に強いと判定したときにはブラインドZを閉じるようになっている。なお、このブラインドZの開閉は、ブラインドZ全体を開閉しても良いし、またブラインドZのスラット角を変動させるようにしてもよい。
【0022】
上述したようブラインドZは、ブラインドZを開閉駆動するための開閉機構6と、開閉機構6の動作を制御する制御装置7とを備え、この制御装置7には、例えば赤外線や紫外線等、特定波長の光のみを透過させる光センサー9が備えられ、制御装置7では光センサー9の検出データに基づき、特定波長の光が弱いと判定したときにはブラインドZを開き、所定以上に強いと判定したときにはブラインドZを閉じるよう制御する構成となっている。これにより、例えば赤外線や紫外線等、特定波長の光の強度が設定値よりも強い場合(あるいは弱い場合)に、ブラインドZを自動的に開閉することができる。このようなブラインドZを用いることにより、例えば美術館等においては、フィルター9fに紫外線のみを透過するものを採用することによって、紫外線が弱いときにはブラインドZを自動的に開いて、できるだけ長い間、作品を自然光の中で鑑賞することができ、また紫外線が強いときにはブラインドZを自動的に閉じて作品に太陽光が直接当たるのを防ぐことが可能となる。また、オフィス等においても、フィルター9fに赤外線のみを透過するものを採用することによって、赤外線が強いときにはブラインドZを閉じることができ、これによって、冷房負荷を軽減し、消費エネルギーを低減することが可能となる。
【0023】
[第二の実施の形態]
次に、調光型遮光体として、例えばブラインドを用いる場合の例を用いて説明する。以下に説明する第二の実施の形態において、前記第一の実施の形態と共通する構成については同符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
図5に示すように、窓面2に設置されたブラインド(調光型遮蔽体)10は、水平方向に延びるスラット11を鉛直方向に間隔を持って多数配列したものであり、スラット11に反射した反射光Hが、上部のスラット11ほど室奥Bの天井5に向かい、下部のスラット11ほど窓際Aの天井5に向かうように、各スラット11の傾斜角度(スラット角)βを、上部のスラット11から下部のスラット11にかけて順次変化させたものである。即ち、上方のスラット11から下方のスラット11に行くに従い、順次スラット角βを小さく設定することにより、上記の反射の態様を達成している。このように設定することで、室内の作品や居住者(以下、単に「居住者」と称する)Kに直接スラット11からの反射光Hが当たらないようになり、室奥Bまで自然光が届くことになる。
【0025】
この場合、スラット11は図6に示すように、ラダー(はしご紐)12で上下方向に間隔を持って保持されているので、ラダー12のスラット幅方向の前側のラダーテープ(前側の紐)12Aのスラット支持ピッチPAを一定にした場合、前側のラダーテープ12Aによるスラット支持位置を基準として、後側のラダーテープ(後側の紐)12Bのスラット支持位置のずらし寸法dkを順次計算に基づいて変化させることで、スラット角βを変化させることができる。あるいは、計算により後側のラダーテープ12Bのスラット支持ピッチPBkを求めて、そのピッチPBkでスラット11の後端を支持してもよい。
【0026】
次に、スラット11の傾斜角度の設定の仕方について述べる。
図7は太陽からの入射光とスラット11による反射光Hの関係を示す図である。ここでは、太陽光線のプロフィール角度をP(°)、スラット角度をβ(°)、反射光Hが天井面に達した位置の窓面からの距離をd、反射スラットの天井面からの距離をhとしてある。但し、プロフィール角度Pについては、太陽高度hs、太陽方位αs、窓面方位αwより、下式で定義されている。
tan(P)=tan(hs)/cos(αs−αw)
【0027】
上記P、β、d、hの関係を求めるため、図8の反射の原理を考えると、
γ=P+90°−β
θ=γ+90°−β
であるから、
θ=180°−2β+P ・・・・・・・・・・・・・・・(1)
となる。図7より
tanθ=h/d ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
であるから、(1)、(2)式より、
tan(180°−2β+P)=h/d ・・・・・・・・・・・(3)
となる。
【0028】
上記の値d、P、hが定まっていて、βを求める場合は、(3)式より
180°−2β+P=tan−1(h/d)
となる。ゆえに
β=〔180°+P−tan−1(h/d)〕/2 ・・・・・・・(4)
となる。
【0029】
後側のラダーテープ12Bのスラット支持ピッチPBkは、前側のラダーテープ12Aのスラット支持ピッチPAとラダーテープの差〔dk−d(k−1)〕より、次式によって求めることができる。
PBk=PA−〔dk−d(k−1)〕 ・・・・・・・・・(5)
【0030】
従って、このスラット支持ピッチPBkに基づいて、各スラット11を支持していけば、目的のスラット角度βの変化が得られることになる。ところで、本出願人が既に出願した特願平9−127659号にも記載のように、このようにスラット角度βを変化させた場合、後側のラダーテープ12Bの差〔dk−d(k−1)〕は太陽高度が変化してもあまり大きな差がない。つまり、スラット支持ピッチPBkが太陽高度によりあまり大きな差を生じないため、一度このピッチでスラット11を取り付けたブラインド10を作成すれば、太陽高度が変化しても、スラット間隔を変化させる必要はない。そして、このブラインド10は、通常のブラインドと同様に、ラダー12を操作して全体のスラット11の角度を変動させれば、スラット11からの反射光Hが居住者Kに直接当たらず、室奥Bまで自然光が届く状態を維持できるようになっている。
【0031】
図6に示したように、上記したようなブラインド10には、スラット11の傾斜角度を調整するコントローラ15が備えられている。このコントローラ15は、スラット11の傾斜角度を変動させるためにラダー12を操作するモータ(開閉機構,駆動機構)16と、このモータ16の作動を制御する制御装置(制御手段)17とから構成されており、制御装置17による自動制御モードと、手動でスラット11の傾斜角度を調整できる手動モードとで切り替え自在な構成となっている。
【0032】
また、制御装置17は、上記第一の実施の形態で示したのと同様に、光センサー9による特定波長光の強度に応じた制御に加え、直射光有無判定プログラムで検出装置18により検出した直射光の有無を判定するようになっており、さらには、クロック20から出力される月日時間のデータを基に、予め入力されている太陽高度計算プログラムと採光スラット角度計算プログラムと遮光スラット角度計算プログラムとでスラット11の最適な角度を算出し、その結果によってモータ16の作動を制御するようになっている。
【0033】
以下に、制御装置17におけるより具体的な制御内容について、図9に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0034】
(ステップS11)
まず、クロック20から出力された月日時間のデータに基づき、制御時間か否かを判断する。すなわち、就業時間内等、室内に人がいる時間のみブラインド10を作動させるため、予め設定したブラインド作動時間であるかどうかを判定する。
【0035】
(ステップS12)
次いで、制御時間であれば、例えば1分おき等、所定時間毎に制御を行うため、新たな制御実行時間であるかどうかを判定する。
【0036】
(ステップS13)
さらに、ブラインド10が自動制御モードになっているか否かを判定する。
【0037】
(ステップS14;直射光有無判定プログラム)
以上のステップS11〜S13の条件を満たした場合、制御装置17においては、直射光検出装置18によって、太陽からの直射光の有無を判定する。
【0038】
(ステップS15)
上記ステップS14で直射光「無し」と判定した場合には、制御装置17では、モータ16を駆動させてスラット11の傾斜角度を、所定角度(例えばβ=90゜;水平)に変動させ、ブラインド10を開いた状態とする。このとき、直射光が無ければ、天空光のみであり、この天空光は拡散光であるため方向性が無く、ブラインド10を開いて外部の光を直に取り込んでも例えば赤外線や紫外線等の特定波長の光が室内に直接入り込むことはない。
【0039】
(ステップS16)
一方、ステップS14において、直射光が「有り」と判定された場合には、特定波長の光の有無を検出する。すなわち、前記第一の実施の形態におけるステップS2と同様に、所定の位置に設置された光センサー9から出力された電流Iλが、予め設定した設定値Imaxよりも大きいかどうかを比較する。その結果、
Iλ>Imax
の関係を満たす場合、特定波長の光の強度が予め設定した設定値以上である、すなわち特定波長の光が強い、と判定し、ステップS17に進む。一方、前記関係を満たさない場合、特定波長の光の強度が予め設定した設定値以下、すなわち特定波長の光が弱い、と判定し、後述するステップS18に進む。
【0040】
(ステップS17)
特定波長の光が強い、と判定した場合、ブラインド10が開いているかどうかを検出する。その結果、ブラインド10が開いていれば、モータ16を作動させてブラインド10を閉じる(ステップS17a)。一方、ブラインド10が閉じていれば、ステップS11に戻る。
【0041】
(ステップS18)
特定波長の光が弱い、と判定した場合、ブラインド10が開いているか否かに拘わらず、以下のようにしてブラインド10のスラット11の傾斜角度を制御する。まず、このステップS18においては、太陽高度の計算を以下のようにして行う。
【0042】
ここで、一般に、天空上の太陽位置は、太陽高度hsと太陽方位角αsとで表現されるが、これら太陽高度hsおよび太陽方位角αsと、緯度ψ,日赤緯δ,時角ιとの間には球面上の三角公式から、
sin(hs)=sin(ψ)sin(δ)+cos(ψ)・cos(δ)・cos(ι) ・・(7)
という関係がある。
ただし、
太陽方位角αs;真南を0゜とし、西方向を正、東方向を負とする。
緯度ψ;北緯を正とする。
日赤緯δ;天球の赤道面からの太陽高度を示し、天球の北側を正とする。
時角ι;子午線と時円(天球の北極と太陽を含む大円)のなす角度、子午線上を0゜とし、西側へ正とする。
【0043】
ところで、太陽が子午線を出発し、次に子午線と交わるまでが1日(これを「真太陽日」と言う)であり、このときの時角ι=360゜である。この真太陽日は1年を通じ日々異なるため、1年を通じて平均的な長さの1日を平均太陽日として用いている。そして、真太陽日、平均太陽日から定められる時刻を、それぞれ真太陽時τ、平均太陽時τmと呼び、その差を均時差εとしており、その関係は、
ε=τ−τm ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8)
となっている。
【0044】
また、各地においては、特定の土地の平均太陽時をその地域の標準時として用いている(日本の場合、東経135゜の兵庫県明石市における平均太陽時を日本標準時として全国で用いている)。そして、経度Lsの土地の平均太陽時τmを経度Lの土地においても標準時として用いるのであれば、平均太陽時τmと標準時Tには、
τm=T+(L−Ls)/15 ・・・・・・・・・・・・・・(9)
の関係が成り立つ。ただし、L,Lsは東経を正、西経を負とする。
【0045】
上記(8)および(9)の関係より、
τ=T+(L−Ls)/15+ε ・・・・・・・・・・・・・(10)
となる。さらに、時角ιと真太陽時τとの間には、
ι=15(τ−12) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(11)
の関係があることから、
ι=15(T−12)+L−Ls+15ε ・・・・・・・・・(12)
の関係が成り立つ。
【0046】
前記(7)〜(12)の関係から、月日時間のデータに対応した太陽高度hsを算出するプログラムを入力しておき、このプログラムによって、前記ステップS3を経てクロック20から出力された月日時間のデータから、当該時間の太陽高度を算出する。なお、上記(7)〜(12)の関係に基づいて、例えば東京のある1日における太陽高度hsを算出した結果(1時間毎)を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
なお、上記ステップS6において、月日時間のデータに基づいて太陽高度hsを算出するようにしたが、これに代えて、例えば、予め月日日時(例えば1分ごと)に対応した太陽高度のデータを予め作成し、記憶させておいても良い。その場合には、クロック20から出力された月日時間のデータに対応する太陽高度データを出力するようにする。
【0049】
(ステップS19)
このステップS18において太陽高度を算出した後は、ステップS19以降においてブラインド10の採光スラット角度(図5参照;最適傾斜角度;スラット11に反射した反射光Hが、上部のスラット11ほど室奥Bの天井5に向かい、下部のスラット11ほど窓際Aの天井5に向かうスラット11の角度)β1を計算するが、このときには便宜的に、特定のスラット11(例えば最上段のスラット11A)を対象とする。
ステップS18で算出した太陽高度hsに対応する採光スラット角度β1は、前記(4)式において、プロフィール角度Pに、算出した太陽高度hsを代入すれば求められる。その結果の一例を図10に示す。
【0050】
(ステップS20)
ところで、上記ステップS19において求めた採光スラット角度β1では、居住者Kにはスラット11での反射光Hが当たらないようになってはいても、太陽高度によっては、直接光がスラット11,11の隙間を通過して室内に直接入射してしまう場合がある。この場合は、図11に示すように、スラット11の角度を直射光が直接入射しない角度(最適傾斜角度;これを「遮光スラット角度」と称する)β2に設定する必要がある。言い換えれば、「遮光スラット角度」<「採光スラット角度」である場合(図10中矢印(イ)で示した範囲)、以下のステップS21において、スラット11の角度を遮光スラット角度β2に設定する必要がある。
【0051】
(ステップS21)
このような場合、図11において成り立つ、
s・tan(P)・cos(90゜−β2)=PBk−PA・sin(90゜−β2) …(13)
の関係から遮光スラット角度β2を求める。
【0052】
(ステップS22以降)
この後は、ステップS6で算出された採光スラット角度β1、またはステップS8で算出された遮光スラット角度β2のデータをブラインド10のコントローラ15に出力し(ステップS22,S23)、そのデータに基づいてモータ16の作動を制御し、スラット11を所定のスラット角度(採光スラット角度β1または遮光スラット角度β2)に調整する(ステップS24)。
【0053】
上述したブラインド10によれば、前記第一の実施の形態で示したブラインドZと同様、制御装置7では光センサー9の検出データに基づき、特定波長の光、例えば赤外線や紫外線等、が弱いと判定したときにはブラインドZを開き、所定以上に強いと判定したときにはブラインドZを閉じるよう制御する構成となっている。これにより、前記第一の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0054】
さらに、このブラインド10は、スラット11の傾斜角度を変化させるモータ16と、このモータ16を制御する制御装置17と、直射光検出装置18とを備え、制御装置17では、全方向の光が当たるようにした第一センサー18Aと、直射光が当たらないようにした第二センサー18Bとで検出した照度または日射量のデータに基づき、直射光の有無を検出し、その結果に基づいてモータ16を制御してブラインド10を開閉する構成となっている。このようにして、直射光検出装置18で直射光の有無を検出し、その結果に基づいてブラインド10を開閉することにより、例えば曇りや雨の日の昼間、場所によっては白夜等、直射光が無く拡散光のみである場合には、ブラインド10を開いて自然光を室内に導入することができ、単に照度等により制御していた従来のブラインドに比較して、より良い室内環境を作り出すことが可能となる。また、室外に高価な照度センサーを単に設置する従来の技術に比較して高機能化を図ることができ、ブラインド10をコストと性能とが釣り合ったものとすることができる。
【0055】
また、このブラインド10は、スラット11の傾斜角度を上部のスラット11から下部のスラット11にかけて順次変化させ、スラット11,11,…に反射した太陽光が、上部のスラット11ほど室奥Bの天井5に向かい、下部のスラット11ほど窓際Aの天井5に向かう構成となっている。そして、制御装置17では、太陽高度に基づいてスラット11の採光スラット角度β1を算出し、スラット11の傾斜角度がこの採光スラット角度β1となるようモータ16を制御する構成となっている。
このようにして、直射光が有る場合であっても、スラット11の角度を太陽高度に対応させて時々刻々と制御することによって、最適な状態、すなわち、ブラインド10からの反射光Hが居住者Kに直接当たらず、かつその反射光Hが天井5に当たった上で室内を照らす間接光となるため眩しくなく、しかも柔らかい光で室内を窓際Aから室奥Bまで均一に照らす状態、を自動的に維持することができる。この結果、遮光でなく「採光」を目的とした自動制御型のブラインド10を実現することができる。
しかも、上記スラット角を変化させたブラインド10を用いることによって、常時室内グレア(眩しさ)が生じず、その結果、室内にグレアを感知する室内光センサーを設けて制御する必要もなく、価格上昇を抑えてよりコストパフォーマンスに優れたものとすることができる。さらに、上記構成により、照明制御と完全に分けることができ、したがって、施工時、改修時、メンテナンス時等の対応が容易となり、また照明の制御方法の種類を問わず、ブラインドをいかなる方式の照明にも組み合わせて設置することが可能となる。
【0056】
さらに、上述したブラインド10によれば、制御装置17では、スラット11の傾斜角度を、スラット11に反射した太陽光が、上部のスラット11ほど室奥Bの天井5に向かい、下部のスラット11ほど窓際Aの天井5に向かい、かつ、太陽光が室内に直接入射しないような遮光スラット角度β2に設定する構成となっている。これにより採光と直射光の遮断とを兼ね備えた機能を有するブラインド10を実現することができ、より一層優れた室内環境を作り出すことが可能となる。
【0057】
なお、上記第二の実施の形態に挙げた直射光検出装置18の構成については、直射光の有無を検出するという所要の機能を果たすことができるのであれば、箱体19の形状,第一センサー18A,第二センサー18Bの設置位置、用いるセンサーの種類等、何ら問うものではない。
【0058】
さらに、ブラインド10の開閉手段として、スラット11の傾斜角を変動させるためのモータ16を用い、直射光検出装置18での検出結果に基づいて直射光「無し」と判定した場合には、スラット11の傾斜角度を変動させてブラインド10を開く構成としたが、これに限るものではなく、例えばスラット11の傾斜角度を変動させずに、ラダー12を引張操作してブラインド10全体を「全開」状態とするようにしても良い。
【0059】
また、ブラインド10を、前側のラダーテープ12Aのスラット支持ピッチPAを一定にし、後側のラダーテープ12Bのスラット支持ピッチPBkを変化させる場合について示したが、後側のラダーテープ12Bのスラット支持ピッチPB(後述するように変化させないから、符号中の「k」を省く)を、前側のスラット支持ピッチPAよりも小さな一定値(例えばスラット幅=25mm、前側のスラット支持ピッチPA=21mmの場合、後側のスラット支持ピッチPB=20.7mmとする)に設定しても、スラット傾斜角度を段階的に変化させることができる。但し、この場合は、スラット幅や前側のスラット支持ピッチPAに応じて、後側のスラット支持ピッチPBの最適値を求める必要がある。また、ブラインド10自体の構成については、上記以外の他のものを採用しても良い。
【0060】
また、制御装置17での制御方法は、上記実施の形態で示したものに何ら限定する意図はなく、本願発明の主旨、すなわち特定波長光の強度,直射光の有無や太陽高度によってブラインドを制御するのであれば、例えば制御条件、計算式、制御の優先順位、制御プログラム等、他のものを採用しても良いのは言うまでもない。
【0061】
さらに、一台の制御装置17で複数台のブラインド10を制御する場合には、コントローラで算出したスラットの傾斜角度を各ブラインド10に出力して各ブラインド10のモータ16を制御すればよい。
【0062】
なお、上記第一および第二の実施の形態において、光センサー9に用いるフィルター9fは、その材質等を何ら問うものではなく、検出すべき特定波長の光の種類、例えば赤外線や紫外線等、等に応じて適宜選定するのはいうまでもない。また、この光センサー9の検出結果に基づき、紫外線や赤外線が多いときにはブラインドZ,10を閉じる構成としたが、その用途によっては、逆に特定波長の光が多いときに開くようにしても良い。
もちろん、光センサー9で検出する光は赤外線や紫外線以外であっても良く、そのような場合にはフィルター9fを検出すべき光の波長に合わせて取り付ければよい。また、ブラインドZ,10を設置する対象についても、もちろん美術館やオフィス空間以外のいかなるものであっても良い。
【0063】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、いかなる構成を採用しても良く、また上記したような構成を適宜選択的に組み合わせたものとしても良いのは言うまでもない。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る調光型遮光体によれば、開閉機構と、開閉機構の動作を制御する制御手段とを備え、制御手段では、直射光検出装置により直射光の有無を判定し、直射光無しと判定された場合は前記調光型遮光体を開き、直射光有りと判定された場合は、さらに検出手段により特定波長の光の強度を検出し、該特定波長の光の強度が予め設定した設定値以上である場合に前記調光型遮光体を閉じ、該特定波長の光の強度が予め設定した設定値以下である場合に前記調光型遮光体を開くよう開閉機構を制御する構成となっている。そして、請求項2に係る調光型遮光体によれば、検出手段が、特定波長の光のみを透過させるフィルターと、フィルターを透過した光の強度を検出するセンサー部材とからなる構成となっている。
これにより、例えば赤外線や紫外線等、特定波長の光の強度が設定値よりも強い場合(あるいは弱い場合)に、検出手段でこれを検出して、ブラインド、ロールスクリーン、カーテン等の遮光体を自動的に開閉することができる。このような調光型遮光体を用いることにより、例えば美術館等においては、紫外線が弱いときには遮光体を自動的に開き、できるだけ長い間、作品を自然光の中で鑑賞することが可能となる。また、オフィス等においても、赤外線が強いときには遮光体を閉じることによって、冷房負荷を軽減し、消費エネルギーを低減することが可能となる。さらに、例えば曇りや雨の日の昼間、場所によっては白夜等、直射光が無く拡散光のみである場合には、遮光体を開いて自然光を室内に導入することができ、単に照度等により制御していた従来の遮光体に比較して、より良い室内環境を作り出すことが可能となる。
【0065】
また、調光型遮光体をブラインドとし、このブラインドを、太陽高度に基づいてスラットを最適傾斜角度に変動させる制御手段を備えて、また、多数のスラットを、スラットに反射した太陽光が、上部のスラットほど室奥の天井に向かい、下部のスラットほど窓際の天井に向かうように、スラットの傾斜角度が上部のスラットから下部のスラットにかけて順次変化させて設ける構成としてもよい。このような調光型遮光体によれば、太陽高度に対応させてスラットの傾斜角度を常に最適な角度に調整するができるので、最適な採光状態を自動的に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る調光型遮光体の第一の実施の形態を示す図であって、前記調光型遮光体の全体構成を示す図である。
【図2】光の波長と強度との関係を示す図である。
【図3】特定波長の光、例えば紫外線、の特性を示す図である。
【図4】前記調光型遮光体に備えた制御手段における制御方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る調光型遮光体の第二の実施の形態を示す図であって、前記ブラインドの概略構成を示す側面図である。
【図6】前記ブラインドの要部拡大側面図である。
【図7】同ブラインドにおける入射光と反射光の関係を示す図である。
【図8】同ブラインドに備えた直射光検出手段の構成を示す概略図である。
【図9】同ブラインドに備えた制御手段における制御方法を示すフローチャートである。
【図10】前記制御手段で算出した太陽高度とスラットの最適傾斜角度との関係を示す図である。
【図11】前記スラットにおける直接光を遮蔽するときのスラットの傾斜角度と入射光との関係を示す図である。
【図12】従来の採光の方式を示す図である。
【符号の説明】
6 開閉機構
7,17 制御装置(制御手段)
9 光センサー(検出手段)
9a センサー部材
9f フィルター
10,Z ブラインド(調光型遮蔽体)
16 モータ(開閉機構)
Claims (2)
- ブラインド、ロールスクリーン、カーテン等、太陽光の射し込む窓面に取り付けることで、室内への採光を調節する調光型遮光体であって、
該調光型遮光体には、これを開閉する開閉機構と、該開閉機構の動作を制御する制御手段とが備えられ、
該制御手段では、直射光検出装置により直射光の有無を判定し、直射光無しと判定された場合は前記調光型遮光体を開き、直射光有りと判定された場合は、さらに検出手段により特定波長の光の強度を検出し、該特定波長の光の強度が予め設定した設定値以上である場合に前記調光型遮光体を閉じ、該特定波長の光の強度が予め設定した設定値以下である場合に前記調光型遮光体を開くよう前記開閉機構を制御する構成となっていることを特徴とする調光型遮光体。 - 請求項1記載の調光型遮光体において、前記検出手段が、特定波長の光のみを透過させるフィルターと、該フィルターを透過した光の強度を検出するセンサー部材とからなることを特徴とする調光型遮光体。
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