JP3613387B2 - 成形加工後の耐肌あれ性および高温疲労特性に優れるフェライト系ステンレス熱延鋼板 - Google Patents

成形加工後の耐肌あれ性および高温疲労特性に優れるフェライト系ステンレス熱延鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、成形加工用に用いて好適であり、とくに深絞り性 ( r値 ) 成形加工後の耐肌荒れ性および疲労特性に優れるフェライト系ステンレス熱延鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べると加工性や耐食性の点ではやや劣っているものの、耐応力腐食割れ性に優れるとともに安価であることから各種厨房器具、自動車排気系部品(エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、コンバーターシェル、マフラー等)などの分野で幅広く使用されている。
このような加工用途に用いられる場合において、フェライト系ステンレス鋼の加工性を改善するために、例えば特開昭51−14811号公報、特開昭51−14812号公報、特開昭52−31919号公報などに開示されているように、Ti,Nb といった元素を添加して鋼中に固溶するCやNなどの不純物元素を固定する技術が広く行われている。
【0003】
さて、このフェライト系ステンレス鋼板は、通常、連続鋳造鋳片を加熱した後、熱間圧延熱延板焼鈍・酸洗冷間圧延仕上げ焼鈍・酸洗の各工程を経て製造される。そこで、これらのうちの一部の工程、とくに冷間圧延以降の工程を省略して製造されるステンレス熱延鋼板は、冷間圧延以降の設備費や運転費を大幅に軽減できるため、オーステナイト系に比較して安価であるフェライト系ステンレス鋼板を一層安価にかつ短期間に製造することができ、工業上のメリットは極めて大きい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に熱延鋼板は冷延鋼板と比較して焼鈍後の結晶粒が大きく、成形加工後の表面の肌荒れが大きいという問題があった。この粗大結晶粒および成形加工後の肌荒れは、表面の美観を損なうばかりでなく、自動車排気系部品(エキゾーストパイプなど)のように、高温下でエンジンなどの振動を受ける部材においては高温疲労特性を低下させるという問題もあった。
この現象は、高温疲労環境下において、粗大結晶粒を有する組織では、母材より強度が低い粒界で容易に疲労破壊が発生すること、あるいは表面肌荒れ部に応力集中し破壊の起点となることにより説明される。
ところで、このように加工後の肌荒れや疲労破壊特性に大きな影響を及ぼす鋼板の結晶粒径は、焼鈍の温度・時間などの条件によりある程度調整可能であるが、結晶粒径を微細にするために低温・短時間の焼鈍を施した場合には、完全な再結晶組織は得られなくなり、鋼板の板厚方向中央部付近は熱延時の展伸組織を残したままのものとなる。その結果、伸び(El.)や深絞り性の指標となるランクフォード値(r値)が小さくなり、十分な成形加工性を得ることが出来ない。これらのことが、フェライト系ステンレス熱延鋼板における良好な成形加工性と優れた耐肌あれ性や高温疲労特性を両立させることを困難にし、前記特性が要求される自動車排気系部材へのフェライト系ステンレス熱延鋼板の適用を妨げている大きな原因であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、深絞り性 ( r値 ) 成形加工後の耐肌荒れ性および高温疲労特性が良好な、しかも成形加工性を損なうことのない、フェライト系ステンレス熱延鋼板を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
さて、上掲の目的の実現に向けて鋭意研究した結果、発明者らは、フェライト系ステンレス鋼において、TiによるC,Nの固定、VとBの複合添加などの化学組成を適正範囲に調整することにより、深絞り性 ( r値 ) 成形加工後の耐肌荒れ性、高温疲労特性および成形加工性のいずれもに優れるステンレス熱延鋼板を製造可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、上記の考え方を具体化した下記の構成を要旨とするものである。
(1) C:0.03wt%以下、Si:2.0wt%以下、Mn:0.8wt%以下、S:0.03wt%以下、Cr:6〜25wt%、N:0.03wt%以下、Al:0.3wt%以下、Ti:0.4wt%以下、V:0.02〜0.4wt%、B:0.0002〜0.0050wt%、Nb:0.5wt%以下を含み、かつ下記式:
Ti/48>N/14
Ti/48+Nb/92>N/14+C/12
V/B>10
を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、r値が 1.05 以上であることを特徴とする深絞り性、成形加工後の耐肌あれ性および高温疲労特性に優れるフェライト系ステンレス熱延鋼板。
【0008】
(2) C:0.03wt%以下、Si:2.0wt%以下、Mn:0.8wt%以下、S:0.03wt%以下、Cr:6〜25wt%、N:0.03wt%以下、Al:0.3wt%以下、Ti:0.4wt%以下、V:0.02〜0.4wt%、B:0.0002〜0.0050wt%、Nb:0.5wt%以下を含み、かつ下記式:
Ti/48>N/14
Ti/48+Nb/92>N/14+C/12
V/B>10
を満たして含有し、さらにCa:0.01wt%以下、Mo:2.0wt%以下Cu:2.0wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、r値が 1.05 以上であることを特徴とする深絞り性、成形加工後の耐肌あれ性および高温疲労特性に優れるフェライト系ステンレス熱延鋼板。
【0009】
【作用】
以下、本発明における鋼の各化学成分値を上記要旨構成のように限定した理由について説明する。
C:0.03wt%以下
Cは、成形加工性(r値)、耐食性を低下させる元素であるので、可能な限り低減させることが望ましい。また、後述するようなVの効果を発揮させるためにも、固溶する量を可能な限り低減することが望ましい。そのために本発明においては、CをTiあるいはさらにNbの添加により固定し、成形加工性およびフェライト安定性への悪影響を軽減し、Vの効果を充分に発揮させる。しかしながら、C含有量が0.03wt%を超えると、鋼板中の析出物量が増加し加工性の低下および表面性状の悪化を招くので、その含有範囲を0.03wt%以下、好ましくは0.015wt%以下とする。
【0010】
Si:2.0 wt%以下
Siは、鋼の脱酸のために有効なほか、高温での耐酸化性や高温塩害特性を向上させる元素である。しかし、2.0 wt%を超えて含有すると伸び特性を劣化させるので、2.0 wt%以下に限定する。なお、自動車排気系部材などの用途で使用する場合には、0.6 wt%以上含有することが望ましい。
【0011】
Mn:0.8 wt%以下
Mnは、鋼中のSを析出固定し、熱間圧延性を改善するのに有効な元素であるが、成形加工性に有害な元素である。従って、その添加範囲は0.8 wt%以下、好ましくは0.5 wt%以下とする。
【0012】
S:0.03wt%以下
Sは、熱間加工性を劣化させる有害元素であるが、通常Mnと結合してMnSを形成するため0.03wt%以下の含有では影響は小さい。しかしながら、0.03wt%を超えて含有すると析出したMnSが初錆の起点となり耐食性が劣化するとともに、結晶粒界に偏析し粒界脆化を促進する。したがって含有量は、0.03wt%以下、好ましくは0.005 wt%以下に制限する。
【0013】
Cr:6〜25wt%
Crは、耐食性および高温下での耐酸化性を向上させるために不可欠な元素である。Crの添加量が6wt%未満では十分な効果が得られず、一方25wt%を超えて添加すると加工性が劣化し、素材コストの上昇をも招くため、添加量は6wt%〜25wt%とする。
なお、成形加工性を優先する用途への使用を目的とする場合には15wt%以下とすることが、また常温での耐食性が求められる用途に使用する場合には10wt%以上とすることが望ましい。
【0014】
N:0.03wt%以下
Nは、Cと同様に、鋼板の成形加工性(r値)を低下させる元素であるので、可能な限り低減させることが望ましい。また、後述するようなBの効果を発揮させるためにも、固溶する量を可能な限り低減することが望ましい。そのために本発明においては、NをTiあるいはさらにNbの添加により固定し、無害化するしかしながら、その含有量が0.03wt%を超えると鋼板中の析出物量が増加し、成形加工性の低下および表面性状の悪化を招く。従って、Nの含有量は0.03wt%以下、好ましくは0.01wt%以下に制限する。
【0015】
Al:0.3 wt%以下
Alは、脱酸に有効な元素であるが、過剰に添加すると熱延焼鈍板の加工性を劣化させるため、0.3 wt%以下、好ましくは0.1 wt%以下とする。
【0016】
Ti:0.4 wt%以下
Tiは、強力なC,N安定化元素であり、成形加工性を改善する効果を有する。また、Cr炭窒化物の粒界析出を抑制して耐食性を改善する効果も有する。これらの効果を発揮させるためには、Tiの添加量は後述するようなC,Nとの関係を満たす必要がある。一方、Ti添加量が0.4 wt%を超えると、成形加工性がかえって低下するとともに、溶接部の加工性が大きく低下する。また、靭性の劣化を引き起こし製造性を低下させる。従って、Ti添加量は0.4 wt%以下とする。
【0017】
V:0.02〜0.4 wt%、
B:0.0002〜0.0050wt%、かつ V/ B>10
VおよびBは、本発明において極めて重要な元素である。VとBとを、それぞれ0.02〜0.4 wt%、0.0002〜0.0050wt%、かつV/ B>10を満たして複合添加することにより、熱延焼鈍板の結晶粒を微細化し、かつ再結晶後の粒成長を抑制する効果を有する。
このような効果が得られる理由については必ずしも明確ではないが、Vはフェライト粒内に固溶することにより焼鈍時の再結晶粒の微細化および粒成長抑制し、Bは焼鈍再結晶後のフェライト粒界に濃縮し粒界移動を遅らせることにより粒成長抑制を補助するものと考えられる。また、VとBの含有比により効果が異なるのは、フェライト結晶粒の体積とフェライト粒界面積のバランスが関係するものと思われる。このように結晶粒の細粒化が達成されることにより、成形加工後の表面の肌荒れが著しく改善され、さらに、自動車排気系部材(エキゾーストパイプなど)のように高温下で高サイクルの機械振動を受ける材料の疲労特性も向上する。
結晶粒の細粒化により、疲労特性が向上する理由は、おおよそ次のような理由によるものと思われる。
1)応力集中により破壊の起点となりやすい、成形加工後の肌荒れが軽減できる。
2)粒界は応力集中が大きく亀裂の伝播経路になるが、細粒化すれば、粒界面積の増加により単位粒界当たりの応力集中が緩和される。
3)Bの粒界濃縮により、粒界強度が強化される。
ここで、Vは、Ti, NbによるCの析出固定が十分でない場合には、Cと反応してVCあるいはVCとして析出し粒成長抑制効果が低下する。一方、Bは、TiによるNの析出固定が十分でない場合には、Nと反応してBNとして析出し、逆に粒成長を促進させる。
したがって、Cは、Vより強力な炭化物形成元素であるTi, Nbの十分な添加により、Nは、VおよびBより強力な窒化物形成元素であるTiの十分な添加により析出固定されなければならない。
なお、Bの添加効果は、上記のほかに、熱延中の加工歪みの蓄積を促進し、焼鈍後の再結晶集合組織に関して{111}面の集積を高め、成形性を改善する効果も有するので、冷延鋼板と比較して成形性の劣る熱延鋼板にとって添加の意義は大きい。
上述したV,Bの添加効果は、V量が0.02wt%以上、B量が0.0002wt%以上、かつ各添加量の比V/ B>10を満たした場合に始めて発揮される。
一方、VおよびBをそれぞれ0.4 wt%、0.0050wt%を超えて過剰に添加すると、焼鈍中の結晶粒微細化および成長抑制、成形性改善の効果が飽和するだけでなく、逆に材質が硬化し伸び特性が劣化して成形加工性が低下する。したがって、V量は0.02〜0.4 wt%、B量は0.0002〜0.0050wt%、かつV/ B>10とする。
【0018】
Nb:0.5 wt%以下
Nbは、C,N安定化元素であり、Tiを補完して、成形加工性を改善するとともに、Cr炭窒化物の粒界析出を抑制して耐食性を改善する効果を有する。これらの効果を発揮させるためには、Nbの添加量は後述するようなC,Nとの関係を満たす必要がある。一方、Nb添加量が0.5 wt%を超えると、成形加工性がかえって低下するとともに、溶接部の加工性が大きく低下する。また、靭性の劣化を引き起こし製造工程において支障をきたす。従って、Nb添加量は0.4 wt%以下とする。なお、Tiと複合添加する場合、Ti+Nbで0.6 wt%以下に制限するのが好ましい。
【0019】
Ti/48 >N/14 かつ
Ti/48 +Nb/92 >N/14 +C/12
TiおよびNbは、前述したVおよびBの効果を有効に作用させるため、すなわち、NをTiNとして、CをTiCまたはNbCとして析出固定するために添加する。そこで、化学量論比から、TiおよびNbの複合添加の場合にはTi/48 >N/14 かつTi/48 +Nb/92 >N/14 +C/12 を満足する量を添加することが必要である。
【0020】
本発明では、さらに、必要に応じて以下の元素を含有することができる。
Ca:0.01wt%以下
Caは、溶鋼中でCaSを生成して、Tiを含有する溶鋼を鋳造する際に発生するTiS系介在物によるノズル詰まりを抑制するのに有用な元素である。しかし、過剰に添加すると耐食性の劣化をもたらすので、その添加量を0.01wt%以下、好ましくはS含有量との関係においてS≦(32/40)Ca≦1.5 Sの範囲とする。
【0021】
Mo:2.0 wt%以下
Moは、耐食性を一層向上させる効果があり、必要に応じて添加することができる。しかしながら、添加量が2.0 wt%を超えると熱間圧延中の加工性が低下するので、2.0 wt%以下とする。なお、Cuと複合添加する場合には、両者の合計含有量で2.0 wt%以下とするのが望ましい。
【0022】
Cu:2.0 wt%以下
Cuは、耐食性を一層向上させる効果があり、必要に応じて添加することができる。しかしながら、添加量が2.0 wt%を超えると熱間圧延中の加工性が低下するので、2.0 wt%以下とする。なお、Moと複合添加する場合には、両者の合計含有量で2.0 wt%以下とするのが望ましい。
【0023】
なお、Pについては言及しなかったが、Pは、一般にPb、Snと同様に熱間割れ性を高め、熱間圧延性および熱延板靭性を低下させるので0.03wt%以下とすることが望ましい。
また、本発明鋼板の製造にあたっては、加熱温度:1250〜1050℃、仕上げ温度:900 〜600 ℃、巻取温度:700 ℃以下の熱間圧延ののち、800 〜1100℃で焼鈍するのが望ましい。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
表1に示す化学組成の鋼1〜22を、容量30kgの真空溶解炉にて溶製した。得られた小型鋼塊を1250℃に加熱したのち、仕上げ温度:700 ℃、圧延パス数:8パスからなる熱間圧延により、板厚2mmの熱延板を製造した。この熱延板を表2に示す温度にて60sec 保持の焼鈍を施し、酸洗した。
【0025】
【表1】
Figure 0003613387
【0026】
【表2】
Figure 0003613387
【0027】
得られた熱延焼鈍板について、表面を#1000のエメリー紙により研磨して熱延ロール面などの影響を除去した。
この供試材から、圧延方向にJIS13号B引張試験片を採取し、r値(15%の引張歪みを与えた後、3点法により測定)を測定した。さらに肌荒れ性の指標としてこの15%の引張後の試験片について引張方向の表面粗さ(Ra)を調査した。最後にこの試験片を破断まで引っ張り、破断伸び(El.)を測定した。
また、高温疲労特性は図1に示す板状試験片を用いて、試験温度700 ℃、試験速度1700回/ 分の曲げモーメントとするシェンク式高温平面曲げ疲労試験機により評価した。試験方法の概要は、図2に示すように、試験片の一端を固定し逆側に繰り返し曲げモーメントを加えることにより疲労試験が行うものである。
図3は、試験結果の一例として、No. 8(発明例)とNo. 6b(比較例)の結果を示したものである。このような試験結果より破損寿命が10サイクルとなる応力(10疲労限応力、以下単に「疲労限応力」と略記する。)を求めた。上記の方法により、成形加工性(r値、破断伸び)、耐肌荒れ性(Ra)、高温疲労特性(疲労限応力)を評価しこれらの試験結果を表2に示す。
【0028】
鋼1〜3は11wt%Crベースのものである。VとBの添加量が不足する鋼1を850℃で焼鈍したNo. 1aは、焼鈍温度が低く再結晶不足であり、伸び、r値が低かった。焼鈍温度を900℃に高めたNo. 1bは、伸び、r値は向上し加工性は満足するものの、表面粗度がRa=7,3と高く、目視によっても激しい肌荒れが確認された。さらに焼鈍温度を950℃に高めたNo. 1cは、耐肌荒れ性が一層劣化するだけでなく、疲労限応力も成形加工性を満足する焼鈍温度で製造したNo. 1bに対して7.7%低下してしまい高温疲労特性も劣化することがわかる。また、B添加量が不足する鋼を900℃で焼鈍したNo. 2は、No. 1bに対して耐肌荒れ性および高温疲労特性は若干向上するもののその効果は十分ではない。V添加量が不足するNo. 3も同様である。
【0029】
鋼6〜12は、15Cr系でTi−Nb複合添加したものである。V,Bの添加量が不足する鋼6は、950℃の焼鈍(No. 6a)では再結晶が十分ではなく、伸び,r値が低く、また焼鈍温度を1000℃(No. 6b)に高めると加工性は向上するものの再結晶粒が粗大化し、耐肌荒れ性および高温疲労特性が劣化する。また、VとBを含有してもV/Bが低すぎるNo. 7は、耐肌荒れ性、疲労特性ともNo. 6bに比して若干の向上は見られるもののその効果は僅かである。
それに対して、鋼6をベースにV,Bを複合添加した発明例No. 8〜10はいずれも良い成形加工性を有しつつ、良好な耐肌荒れ性(Ra:3.0 以下)を示し、さらに良好な高温疲労特性(疲労限応力:90MPa以上で、No. 6bに対して11%以上向上)を有していることが分かる。
なお、Bを過剰に含む比較例No. 11、Vを過剰に含む比較例No. 12はいずれも加工性(伸び、r値)が劣っている。
【0030】
鋼13〜22は、18Cr系のものである。V,Bの量が不足するNo. 13は、再結晶粒が粗大化し、耐肌荒れ性および高温疲労特性に劣る。C量が過剰なNo. 14は常温での成形加工性が劣るばかりでなく、耐肌荒れ性および高温疲労強度も低い。N量に対してTiが不足するNo. 15は耐肌荒れ性に劣る。
それに対し発明例No. 16、17、18a、19はいずれも優れた耐肌荒れ性および高温疲労特性を有している。また、より高温の1100℃で焼鈍した18bも粒成長は抑制されており、1050℃で焼鈍した比較例No. 13よりも良好な成形性、耐肌荒れ性、高温疲労特性を示す。この傾向は、さらにMoを添加したNo. 20やCuを添加したNo. 21、MoとCuを添加したNo. 22においても同様である。
【0031】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、成形加工性を劣化させることなく、深絞り性 ( r値 ) 成形加工後の表面の肌荒れや高温振動環境下での高温疲労特性を向上させることが可能となるので、従来高価な冷延鋼板を用いざるを得なかった自動車排気系部材等の用途にも適用可能なフェライト系ステンレス熱延鋼板が提供できる。さらに、本発明によれば、熱延鋼板の焼鈍時における焼鈍温度域が広範囲に許容できるので工業的に容易に製造可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シェンク式高温平面曲げ疲労試験用板状試験片を示した図である。
【図2】シェンク式高温平面曲げ疲労試験方法の概略を示した図である。
【図3】高温疲労試験による破損寿命と疲労限応力の関係を示したグラフである。

Claims (2)

  1. C:0.03wt%以下、Si:2.0wt%以下
    Mn:0.8wt%以下、S:0.03wt%以下、
    Cr:6〜25wt%、N:0.03wt%以下、
    Al:0.3wt%以下、Ti:0.4wt%以下、
    V:0.02〜0.4wt%、B:0.0002〜0.0050wt%、Nb:0.5wt%以下を含み、かつ下記式:
    Ti/48>N/14
    Ti/48+Nb/92>N/14+C/12
    V/B>10
    を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、r値が 1.05 以上であることを特徴とする深絞り性、成形加工後の耐肌あれ性および高温疲労特性に優れるフェライト系ステンレス熱延鋼板。
  2. C:0.03wt%以下、Si:2.0wt%以下
    Mn:0.8wt%以下、S:0.03wt%以下、
    Cr:6〜25wt%、N:0.03wt%以下、
    Al:0.3wt%以下、Ti:0.4wt%以下、
    V:0.02〜0.4wt%、B:0.0002〜0.0050wt%、Nb:0.5wt%以下を含み、かつ下記式:
    Ti/48>N/14
    Ti/48+Nb/92>N/14+C/12
    V/B>10
    を満たして含有し、さらにCa:0.01wt%以下、Mo:2.0wt%以下Cu:2.0wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、r値が 1.05 以上であることを特徴とする深絞り性、成形加工後の耐肌あれ性および高温疲労特性に優れるフェライト系ステンレス熱延鋼板。
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