JP3612122B2 - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、セラミックスやカーボンに代表されるような脆性材料からなる基板の精密加工技術、特に超平滑加工技術が求められている。例えば、ガラス基板、カーボン基板、セラミックス基板等の基板は、磁気記録媒体用基板としての用途がある。また、シリコンウエハー等は半導体の材料として用いられる。上記の磁気記録媒体用基板やシリコンウエハーには超平滑性が要求されることから、これらの基板については一般的に、遊離砥粒を用いて平滑化が行われる。
【0003】
遊離砥粒を用いて特にガラス基板、カーボン基板、セラミックス基板、シリコンウエハーのような脆性材料の研摩を行う場合、基板の脆さのために研摩時にマイクロクラックが発生することがある。このようなクラックには、基板を磁気ディスク化した際に記録再生エラーを誘発したり、また研摩時等に入り込む汚染物質、又は放置中に毛管凝縮する水によって基板の腐食を誘発する、という危険性が存在する。このため従来は、生産性を犠牲にして研摩工程を多段階に分けることによりマイクロクラックの発生の抑制に努めているのが一般的である。また、遊離砥粒による研摩は極めてアート的技術要素が多いため、品質安定化には高度な熟練を必要としていた。
【0004】
さらに、別の問題として、研摩後の基板中に砥粒の一部が残留するという問題がある。この残留物は洗浄を行っても完全な除去は困難である。砥粒が残留したまま基板にスパッタ膜を成膜すると、砥粒残留に起因する膜欠陥が発生し、その結果磁気ヘッドを損傷させることになる。また、遊離砥粒を用いて上記基板を研摩する場合は、材料の不均質性に由来する研摩ムラ、即ち研摩されやすい部分が深く研摩されることによるくぼみ(シャローピット)、が発生するという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、遊離砥粒を使わないで平滑化を行う方法が種々検討されており、そのひとつとして固定砥粒による延性モード加工での研削により平滑化を行う方法が提案されている(原ら、1992年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集第19頁及び第20頁)。延性モード加工でカーボン基板、セラミックス基板のような脆性材料の研削を行うことは次の様な効果が期待できるため、より好ましいものと考えられる。即ち、この方法では、1)個々の砥粒の基板への食い込み量をその基板の延性−脆性遷移点以下に設定できるため、基板の加工形態が脆性破壊から延性(塑性)変形中心にコントロールでき、マイクロクラックの発生が抑制される、2)遊離砥粒を使わなくてもよいため、基板に砥粒が残留する危険性がない、3)平坦度に優れ、エッジ部での面だれ性が少ない、4)固定砥粒の消耗が軽微であるため、使い捨ての遊離砥粒の場合に比べて消耗工具費用が大幅に安くなる、5)アート的技術要素が少なく、工程管理、全自動化が容易である、6)材質の不均一性の有無によらず均一な研削面が得られる、というメリットがある。
【0006】
しかしながら、上記の原らの方法ではCUPE製超精密研削盤にカップホイールを装着して研削を行っているので、研削痕は図1に示すような多重あやめ形状となる。このような研削痕ではところどころで研削痕同士が交差し、重なった点でマイクロクラックが発生するおそれがあったり、研削痕の密度差が径方向に現れ、内周側と外周側とでは表面に残留する内部応力又は加工変質層の分布にムラが生じる。このため、表面の物理・化学特性が不均一となり、表面のエッチング性、密着性に差が生じたり、ソリの原因となったりするおそれがある。また、固定砥粒付両面研摩機を用いて研削した場合も、研削痕はランダムなクロス状となり、研削痕同士が交差点を数多くもつことになるためマイクロクラックの発生のおそれがあった。さらに、カップホイールを用いた平面研削加工の場合、工作物とホイール作業面とは面接触している。そのため、切り込み送り方向は接触面と直角となり、切り込み方向の研削抵抗が過大なため被加工基板およびホイールが損傷しやすく、脱粒を招いて被加工基板に深いスクラッチ傷やマイクロクラックを与えやすい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、上記課題を解決すべくマイクロクラックの発生しない表面加工基板を用いてなる磁気記録媒体及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨は、
(1) 少なくとも下地層、磁性層及び保護層からなる記録媒体構成層が、扇状の加工痕を有する表面加工基板上に形成されてなり、表面加工基板の平坦度が10μm以下であり、表面加工基板のRa(平均中心線粗さ)が1〜100Åであり、Rp(最大中心線高さ)/Raが2〜10であることを特徴とする磁気記録媒体、並びに
【0009】
(2) 砥石設定切り込み深さが0.05〜20μmでの延性モード加工により、平坦度が10μm以下である基板表面をRa(平均中心線粗さ)が1〜100Åとなり、Rp(最大中心線高さ)/Raが2〜10となるように研削して該基板表面に扇状の加工痕を形成させ、得られた表面加工基板の表面に少なくとも下地層、磁性層及び保護層からなる記録媒体構成層を形成させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
1.表面加工基板について
本発明において研削される基板は、成形直後または焼成直後のものであってもよく、Ra(平均中心線粗さ)が0.05〜20μm、好ましくは0.1〜2.0μmのもの、いわゆる粗研削や中間研削を終えたものであってもよい。基板の粗研削、中間研削については特に限定されるものではなく、通常行われる公知の方法により行えばよい。即ち、本発明の表面加工基板は、(1)成形直後または焼成直後のものを本発明の方法により加工して得たもの、(2)成形直後または焼成直後のものを従来法により粗研削し、本発明の方法により中間研削、仕上げ研削して得たもの、(3)中間研削までを従来法により行い仕上げ研削を本発明の方法により得たもの、のいずれであってもよい。尚、本明細書においてRaは、触針式表面粗さ計(Tencor(株)製:型式P2)を用いて下記条件で測定して得た値である。
【0011】
測定条件
触針先端半径 :0.6μm(針曲率半径)
触針押し付け圧力:7mg
測定長 :250μm×8箇所
トレース速度 :2.5μm/秒
カットオフ :1.25μm(ローバスフィルター)
【0012】
また、その被研削基板材料としては特に限定されるものではなく通常用いられる公知のものでよいが、本発明においては、特に脆性材料の研削時にその効果を充分発揮できるため、脆性材料が好ましい。その具体例としてはカーボン、ガラス、SiC等のセラミックス、シリコン等が挙げられる。中でも、カーボンは研削安定性に優れ、低いRaが得られるため、本発明の製造方法はカーボン基板への適用において特に優れた効果が得られる。
【0013】
本明細書において「延性モード加工」とは、脆性材料においてもクラックの発生を伴わない塑性流動的な除去加工、即ち脆性破壊(破砕)ではなく材料の無損傷を特徴とする研削加工を意味する。かかる加工技術は、材料への個々の砥粒の切込み深さを常に延性−脆性遷移点以下に保つことにより達成される。このことを達成する手段としては特に限定されるものではなく、通常公知の方法を用いることができる。例えば、上記の脆性材料であるカーボン、ガラス、セラミックス、シリコンを含む、一般的に磁気記録媒体用基板やシリコンウエハー等に用いられる材料の多くは、その延性−脆性遷移点(dc)が2〜100nmであるため、砥石の設定切り込み深さを0.05〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5.0μmとすればよい。ここで、砥石の設定切り込み深さは、装置位置決め精度の観点から0.05μm以上が好ましく、研削負荷及びマイクロクラック発生を抑制する観点から20μm以下とするのが好ましい。
【0014】
さらに、その砥石の設定切り込み深さに応じてホイール(固定砥粒)外周の肩にRをつけることは、砥石の設定切り込み深さが大きくてもマイクロクラックのない延性加工面が得られるため、より好ましい。Rの形状等については、個々の砥粒の切り込み深さが被研削材料のdcより小さくなるよう設定すればよい。例えば、下記で表される式において、
【0015】
【数1】
【0016】
(ここで、dN は被加工基板1回転当たりの切り込み深さであり、次式で表される。
【0017】
【数2】
【0018】
また、fは被加工基板1回転当たりのホイール送り量、Δは設定切り込み深さ、Rはホイール外周の肩の曲率半径、dg は個々の砥粒の切り込み深さ、aは砥粒の間隔、Vw は被加工基板周速度、Vs はホイール周速度、及びDはホイール直径を示す。)
dg <dcとなるように設定すればよい。
このように研削することで、マイクロクラックの発生が抑えられた表面加工基板が得られる。
【0019】
本明細書における扇状の加工痕の「扇状」とは、図2に模式的に示したような、実質的に同心円状の形状である。当該同心円の中心は基板上にあってもよく、基板外にあってもよい。好ましくは、基板の半径r1 と加工痕の半径r2 との関係が、r2 ≧r1 を満たすものであり、より好ましくは、被加工基板(ワーク)の取り付け作業性及び装置の加工精度の点から、100r1 ≧r2 ≧2r1 の関係を満たすものである。
【0020】
さらに、研削を電解インプロセスドレッシング(以下ELIDと呼ぶ)を用いて延性モード加工で行うことにより、より高精度で高能率な研削を行うことができる。具体的には、研削装置において、固定砥粒をメタルボンドホイール(ストレートホイールの外周上に砥粒をメタルバインダーで固定させたもの)とし、電極をホイール外周の一部をおおうように設置し、電解質を含んだ水溶液クーラントをホイール外周表面/被加工基板間に供給し、ホイール側にプラスの電場を印加し、基板とホイールの双方を回転させながら研削することによりELID型延性加工が達成できる。
【0021】
砥石の設定切り込み深さが0.05〜20μmでの延性モード加工を達成するためには、研削装置、砥粒等は次の条件を満たす必要がある。
1)動剛性が極めて高い砥石スピンドルの設計と製作。半径方向、軸方向の運動誤差が100nm以下。
2)動剛性の極めて高い工作物支持及び運動系の設計と製作。経験則から、加工機工具と工作物間のループ剛性として150N/μm(静剛性)以上の値。
3)ホイールの高精度ツルーイング及び適度な気孔度を確保するための砥粒結合剤のドレッシング。さらに、ホイール上の個々の砥粒の切れ刃高さ分布がdc以下であることが望ましい。
【0022】
したがって、本発明に用いられる研削装置としては、上記の諸条件を満たすものであれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、(株)日進機械製作所製超精密平面研削装置(HPG−2A)等が挙げられる。超精密平面研削装置(HPG−2A)は、脆性材料の延性モード加工を目的として開発されたものであり、次のような特質を有する。
【0023】
1)半径、軸方向の運動精度が100nm以下
2)加工機工具と工作物間のループ剛性が170N/μm(静剛性)
3)ツルーイング精度が100nm
したがって、この超精密平面研削装置(HPG−2A)は上記装置条件のすべてを満たすものである。
【0024】
また、扇状の加工痕を形成させるには、例えば、被加工基板(ワーク)をワークスピンドルの工作物取り付け面板(ワークテーブル)上で、ワークスピンドル回転中心を含まないように、即ちr2 ≧r1 の関係を満たすように偏心して取り付けてその面板を回転させ、ストレートホイールに微小切り込みを与えた上、ホイールを面板にそって横送りすればよい。
偏心度が0、即ち、ワークをワークテーブルの中心に取り付けても、交差しない加工痕を付与できるが、その場合ワークを1枚しか取り付けられないため、生産性が低く、好ましくない。本発明の方法では、複数枚のワークの取り付けが可能であるため、生産性、研削コスト低減の点でも有利である。
【0025】
本発明における研削工程について、図3を参照して説明する。ここで図3は、超精密平面研削装置(HPG−2A)の概略構成図である。
本装置は、ストレートホイールの外周を用いてトラバース研削を行うロータリー平面加工機である。NCは2軸の制御を行う。すなわち、X軸(ワークテーブルのトラバース送り)とZ軸(ホイールの切り込み送り)の位置決めである。
【0026】
この機械の設計上の特徴は、
▲1▼ X軸、Z軸のT字形平面配置、ねじを用いないクローズドループ位置決め方式、10nmのレーザスケール、
▲2▼ V−Vすべり案内面、低熱膨張鋳鉄、
▲3▼ 基準真直ゲージによる真直度インプロセス補正、
である。
また性能としては、
▲1▼ 指令分解能10nmでの輪郭加工、
を特徴としている。
研削ホイールの母線形状は修正ホイールの位置をXZで制御することにより創成され、目的とする正確な形状を得ることが可能である。
また、本装置を用いて研削痕が扇状となるように研削するには、例えば図4に示すように、被加工基板をワークテーブル上に取り付ければよい。
【0027】
脆性材料をクラックなしに研削する(延性モード研削)ためには、個々の砥粒の切り込み深さを延性−脆性遷移点(dc値)以下に保つことが必要である。そのためには高剛性かつ高精度の加工機が要求される。
本装置は研削ホイール軸単体では1300N/μm以上、ロータリーテーブル軸単体では1000N/μm以上、ループ剛性として150N/μm以上で、上記条件を満たすものである。
ロータリテーブルのスラスト方向の振れ、研削ホイール軸のラジアル方向の振れ、ツルーイング後の研削ホイールの外周振れは、共に100nm以下である。X軸、Z軸の位置決めは、分解能10nmのレーザスケールによって制御され、100nm以下の微小切り込みを与えることができる。
【0028】
また、研削に用いられる固定砥粒(ホイール)は特に限定されるものではなく、通常用いられる公知のものが用いられるが、基板材料、中間研削の程度、加工しろ(砥石の設定切り込み深さ)により、砥粒の種類、および形、粒度、ボンド剤、ホイール形状が違ってくるため一概には言えない。例えば上記研削装置(HPG−2A)を用い、基板がカーボン基板、中間研削の程度がRa100nm、加工しろ20μm/片面の場合、砥粒には工業用ダイヤモンド砥粒を用い(砥粒の平均粒径は1〜5μm、より好ましくは1〜2.5μm)、ボンド剤はメタル等が用いられる。ELID法を用いる場合には、ボンド剤は、Fe(鋳鉄など)、Cu、Ni等の単体もしくはこれらの一種以上を含む合金を用いることが好ましい。また、この場合の他の条件、例えば砥石周速度、送り速度、ロータリテーブル回転数等、については特に限定されるものではなく、通常用いられる公知の程度でよい。
【0029】
上記のようにして、扇状の加工痕を有する表面加工基板を製造することができる。ここで、当該表面加工基板のRaは好ましくは1〜100Å、より好ましくは2〜50Å、特に好ましくは2〜30Åである。研削生産性の観点から1Å以上が好ましく、例えば磁気記録媒体用に用いる際のヘッドの浮上特性の観点から100Å以下が好ましい。また、Rp/Raは好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜4である。ここで、ホイールのツルーイング(形状修正)工程の管理負担軽減の観点から2以上が好ましく、表面の摺動耐久性の観点から10以下が好ましい。さらに、得られる表面加工基板の平坦度は、磁気ヘッドの浮上走行安定性の観点から10μm以下のものが好ましく、6μm以下のものがより好ましい。
【0030】
2.磁気記録媒体について
次に、上記の基板を用いる本発明の磁気記録媒体について説明する。
本発明の磁気記録媒体は、延性モード加工により研削された、加工痕が扇状の表面加工基板を用いることにより所望の効果を得るものである。そのため、記録媒体構成層の材料、厚さ、及びその形成方法等については何ら限定されるものではなく、通常用いられる公知のものでよい。以下、より具体的に説明する。
【0031】
表面加工基板上に設けられる記録媒体層は、少なくとも、下地層、磁性層、保護層からなるものである。
下地層は、磁性層の配向性等を向上させるために基板と磁性層との間に形成される。下地層の厚さ、材料等は特に限定されるものではなく、通常用いられる公知の厚さ、材料でよい。下地層は、層の数が単数若しくは複数のどちらであってもよい。用いられる材料の具体例としては、Al−Si等のアルミニウム合金、Ti、カーボン、Cr又はCr合金等が挙げられる。このような下地層は、PVD手段等の公知の方法により形成される。
【0032】
磁性層は、例えばPVD手段により形成される金属薄膜型のものが挙げられる。磁性層を構成する材料としては特に限定されるものではなく、通常用いられる公知のものが挙げられる。例えばCoCr、CoCrX、CoCrPtX、CoNiX、CoW、CoSm、CoSmX等で表されるCoを主成分とするCo系の磁性合金が挙げられる。ここでXとしては、Ta、Pt、Au、Ti、V、Cr、Ni、W、La、Ce、Pr、Nd、Cu、Pm、Sm、Eu、Li、Si、B、Ca、As、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ag、Sb、Hfよりなる群から選ばれる1種以上の元素が挙げられる。これらのうち、高出力,耐食性の観点からCoCrやCoCrPtを好ましいものとして挙げることができる。合金中の各元素の重量比については、通常用いられる公知の程度でよい。このような磁性層の膜厚は10〜100nmが好ましく、20〜60nmが特に好ましい。出力の観点から膜厚は10nm以上が好ましく、ノイズの観点から100nm以下が好ましい。
【0033】
磁性層上に設けられる保護層は、例えばPVDやCVD、スピンコーティング等により形成されるものであり、耐摩耗性の観点から力学的強度の高い材料で形成されていることが好ましい。保護層を構成する材料としては特に限定されるものではなく、通常用いられる公知のものが挙げられる。例えば、Al、Si、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Ta、W等の酸化物(酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等)、窒化物(窒化ホウ素等)、炭化物(炭化ケイ素、炭化タングステン等)、ダイヤモンドライクカーボン、ガラス状カーボン等のカーボン、ボロンナイトライド、及びAlとカーバイド形成金属との合金等からなる群より選択される一種以上のものが挙げられる。これらの材料のうちで、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タングステン、カーボン、及びAlとカーバイド形成金属又はこれらの複合体が好ましい。
なお、本明細書において「カーバイド形成金属」とは、熱、物理吸着、又は化学吸着によりカーバイドを形成し得る金属の意であり、具体的にはSi、Cr、Ta、Ti、Zr、Y、Mo、W、V、等が挙げられる。
【0034】
このような保護層の膜厚は5〜50nmが好ましく、5〜25nmが特に好ましい。完全被覆性の観点から膜厚は5nm以上が好ましく、スペーシングロス(磁束エネルギーの空間損失)の観点から50nm以下が好ましいが、かかる範囲に特に限定されるものではない。
【0035】
また、本発明において、磁気ヘッドの走行性を向上させるために、媒体表面に潤滑層を設けてもよい。潤滑層は公知の方法で設けることができ、例えば塗布法等により所望の厚さの層を設けることができる。用いる潤滑剤としては特に限定されるものではなく、通常用いられる公知のものを使用することができる。例えば、分子量が2000〜10000のパーフルオロポリエーテル系のものが挙げられる。具体的には、フォンブリンAM2001、フォンブリンZ03(ともにモンテカチーニ社製)、デムナムSP(ダイキン工業社製)等が挙げられる。潤滑剤は単独で塗布してもよく、複数のものを混合して塗布してもよく、潤滑剤を塗布後に別の潤滑剤を塗布してもよい。このような方法で塗布する場合には、潤滑層の厚さを0.2〜5.0nm、特に0.5〜3.0nmとするのが好ましい。ここで、潤滑効果を得る観点から潤滑層の厚さは0.2nm以上が好ましく、スペーシングロスを抑制する観点から5.0nm以下が好ましい。
【0036】
本発明の磁気記録媒体において、ヘッドの吸着を抑える観点から、媒体に凹凸を形成してもよい。このとき、凹凸形成若しくは基板表面のさらなる加工は基板以外の層、すなわち下地層、磁性層及び保護層のうち、少なくとも1つ以上の層において形成すればよい。
各層における凹凸形成は公知の方法によって達成できる。例えばドライエッチング、イオンミリング、イオンボンバード、スパッタ法によって、またPVDによるクラスターの形成、島状の保護層形成、陽極酸化、熱酸化、レーザー照射、パウダービーム(砥粒噴射)等によって達成できる。
【0037】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、延性モード加工により研削して得られる扇状の加工痕を有する表面加工基板上に、少なくとも下地層、磁性層、保護層からなる記録媒体構成層を上記のように形成することを特徴とするものである。本発明の製造方法は、マイクロクラックの発生が抑えられた表面加工基板を用いるため、またシンプルなプロセスにより研削が行われ、しかも装置、被加工基板に与える負荷も小さいため、生産性の優れた製造方法といえる。
なお、上記の説明において、特に詳述しなかった点については、従来公知の磁気記録媒体の製造方法と同様の方法を特に制限なく用いることができる。
【0038】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0039】
製造例1
フルフリルアルコール樹脂を公知の方法である成形、予備焼成処理によりカーボン基板を製造した。より具体的には、次のようにして製造した。フルフリルアルコール500重量部、92%ホルムアルデヒド400重量部および水30重量部を80℃で攪拌して溶解した。次いで、攪拌下でフェノール520重量部、水酸化カルシウム9.5重量部および水45重量部の混合液を滴下し、80℃で3時間反応させた。その後フェノール80重量部、上記のフェノール/水酸化カルシウム/水混合液をさらに滴下し、80℃で2時間反応させた。30℃に冷却後、30%パラトルエンスルホン酸水溶液で中和した。この中和物を減圧化で脱水し、170重量部の水を除去し、フルフリルアルコール500重量部を添加混合し、樹脂中の不溶分をメンブランフィルターで濾過した。この樹脂が含むことのできる水の量を測定したところ、35重量%であった。
【0040】
この熱硬化性樹脂100重量部に対し、パラトルエンスルホン酸70重量%、水20重量%、セルソルブ10重量%の混合液0.5重量部を添加し、充分攪拌後、厚さ2mmの円盤状の型に注入し、減圧脱泡した。次いで、50℃で3時間、80℃で2日間加熱硬化した。この熱硬化物を所定のドーナツ形状に加工し、このあと有機物焼成炉で窒素雰囲気下で2〜5℃/時の昇温速度で700℃まで加熱し、次いで5〜20℃/時の昇温速度で1200℃まで加熱焼成し、この温度で2時間保持した後、冷却し、直径1.8インチのカーボン基板を得た。以下、このカーボン基板を「未研磨カーボン基板」とする。このようにして得られた未研磨カーボン基板は、Ra10μm、密度1.5g/cm3 、ビッカース硬度650、構造はアモルファス状であった。
【0041】
上記のようにして得られた未研磨カーボン基板を、スピードファーム社製9B5L型両面研磨機を使用し、粉砕炭化ケイ素砥粒のひとつであるGC(緑色炭化ケイ素研磨材)#600を用い、濃度4重量%の遊離砥粒方式によるラッピング加工を行った。定盤には鋳鉄定盤を用いた。研磨しろは、片面当たり300μmとした。得られたカーボン基板のRaは2μmであった。この後、芝技研製チャンファー加工機SG−Tにより、内・外径を所定の寸法に切り揃え、面取加工(45°)を行った。
【0042】
製造例2
製造例1で得られたラッピング加工されたカーボン基板を、下記条件でさらにラップ研磨を行った。製造例1と同じ装置を使用し、GC#4000砥粒を用い、濃度20重量%の遊離砥粒方式により研磨した。定盤には鋳鉄定盤を用い、研磨しろは、片面当たり50μmとした。得られたカーボン基板のRaは0.1μmであった。この後、芝技研製チャンファー加工機SG−Tにより、内・外径を所定の寸法に切り揃え、面取加工(45°)を行った。
【0043】
実施例1
製造例1で得たカーボン基板(Raは2μm)を延性モード加工により仕上げ研削を行い、表面加工基板を得た。主な加工条件は次の通りである。
研削装置:超精密横型平面研削装置
((株)日進機械製作所製HPG−2A)
ロータリーワークテーブルの直径:200mm
ロータリーワークテーブルの回転数:530rpm
砥石周速:1260m/min
砥石送り速度:60mm/min
【0044】
【0045】
研削ホイールの肩は精密ツルーイングにより、一例として図5に示すように母線形状を整え、個々の砥粒の切り込み深さがカーボン基板の延性−脆性遷移点(約50nm)以下となるように設定した。基板は加工テーブルに多数存在する真空吸引孔により真空チャック方式で固定した。砥石の設定切り込み深さを15μmで6パス(#600を使用)、次いで8μm、4μm、2μmでそれぞれ1パス(#8000を使用)研削し、これを両面について行った。チャンファー加工は#600ホイールでの加工後、製造例1と同様に行った。なお、被加工基板の加工テーブルへのセット状態を図4に示す。ELID電極の取り付け構成を図6に示す。このようにして得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、扇状の加工痕を有するものであった。また加工痕の交差は見られなかった。
【0046】
この表面加工基板31上に、Arガス圧3mTorr)基板温度を180℃に保持したままの条件でDCマグネトロンスパッタリングにより100nm厚さのTi層32を設けた。ついでArガス圧3mTorr)基板温度180℃の条件でDCマグネトロンスパッタリングによりTi層32上に30nm厚さのAl−Si合金層33を設けた。このあと、Al−Si合金層33の上にDCマグネトロンスパッタリングにより20nm厚さのカーボン層34、40nm厚さのCr層35を設け、ついで40nm厚さのCoCrPtB系合金磁性層36を設けた。32〜36の層を形成する際、32及び33層形成時以外は基板に−200Vのバイアス電圧を印加した。さらにDCマグネトロンスパッタリングにより、CoCrPtB系合金磁性層36上に保護層(ガラス状カーボン層)37を15nm厚さ設けた。このあと、フォンブリンZ03溶液を浸漬塗布し、15nm厚さの潤滑層38を設け、図7に示すような磁気記録媒体を得た。
【0047】
実施例2
製造例2で得たカーボン基板(Raは0.1μm)を下記以外は実施例1と同じ条件で基板表面を延性モード加工により仕上げ研削を行い、表面加工基板を得た。また、得られた表面加工基板を用いて磁気記録媒体を製造した。研削及び磁気記録媒体の製造は実施例1と同様の方法で行った。
研削ホイール肩は精密ツルーイングにより図8に示すように母線形状に整え、個々の砥粒の切り込み深さがカーボン基板の延性−脆性遷移点(約50nm)以下となるように設定した。
なお、得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、扇状の加工痕を有するものであった。また加工痕の交差は見られなかった。
【0048】
実施例3
製造例2で得たカーボン基板を延性モード加工により仕上げ研削を行い、表面加工基板を得た。また、得られた表面加工基板を用いて磁気記録媒体を製造した。研削は実施例1の方法に準じて以下の条件で行った。
加工条件
研削装置:超精密横型平面研削装置
((株)日進機械製作所製HPG−2A)
ロータリーワークテーブルの直径:200mm
ロータリーワークテーブルの回転数:530rpm
砥石周速:1260m/min
砥石送り速度:60mm/min
【0049】
砥粒種類/番手:#20000ダイヤモンド(平均粒径約1.2μm)
(新東ブレータ(株)製鉄ファイバーボンド砥石:SD20000NFX3)
クーラント:ユシロ化学製、ELIDNO.35の2%水溶液
ELID電源:新東ブレータ(株)製、パルス電源EDP−10A
初期ツルーイング:#200ダイヤモンド(平均粒径約75μm)
((株)オリエンタルダイヤ工具研究所製:SD200Q75M)
初期ドレッシング:3A×15分
パルス(矩形波)サイクル:4マイクロ秒
【0050】
研削ホイールの肩は精密ツルーイングにより、一例として図8に示すように母線形状を整え、個々の砥粒の切り込み深さがカーボン基板の延性−脆性遷移点(約50nm)以下となるように設定した。基板は加工テーブルに多数存在する真空吸引孔により真空チャック方式で固定した。砥石の設定切り込み深さを3μm、2μm、0.2μmでそれぞれ1パスずつ研削し、これを両面について行った。尚、被加工基板の加工テーブルへのセット状態を図4に示す。ELID電極の取り付け構成を図6に示す。
なお、得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、扇状の加工痕を有するものであった。また加工痕の交差は見られなかった。
このようにして得られた表面加工基板を用いて実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を製造した。
【0051】
実施例4
製造例2で得たカーボン基板を延性モード加工により仕上げ研削を行い、表面加工基板を得た。また、得られた表面加工基板を用いて磁気記録媒体を製造した。研削は実施例3の方法に準じて、以下の条件で行った。
加工条件
研削装置:超精密横型平面研削装置
((株)日進機械製作所製HPG−2A)
ロータリーワークテーブルの直径:200mm
ロータリーワークテーブルの回転数:530rpm
砥石周速:1260m/min
砥石送り速度:60mm/min
【0052】
砥粒種類/番手:#8000ダイヤモンド(平均粒径約1.8μm)
(新東ブレータ(株)製鉄ファイバーボンド砥石:SD8000N100FX3)
クーラント:ユシロ化学製、ELIDNO.35の2%水溶液
ELID電源:新東ブレータ(株)製、パルス電源EDP−10A
初期ツルーイング:#200ダイヤモンド(平均粒径約75μm)
((株)オリエンタルダイヤ工具研究所製:SD200Q75M)
初期ドレッシング:3A×15分
パルス(矩形波)サイクル:4マイクロ秒
【0053】
研削ホイールの肩は精密ツルーイングにより、一例として図5に示すように母線形状を整え、個々の砥粒の切り込み深さがカーボン基板の延性−脆性遷移点(約50nm)以下となるように設定した。基板は加工テーブルに多数存在する真空吸引孔により真空チャック方式で固定した。砥石の設定切り込み深さを10μmで2パス、5μmで2パス、1μmで1パス研削し、これを両面について行った。尚、被加工基板の加工テーブルへのセット状態を図4に示す。ELID電極の取り付け構成を図6に示す。
なお、得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、扇状の加工痕を有するものであった。また加工痕の交差は見られなかった。
このようにして得られた表面加工基板を用いて、実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を製造した。
【0054】
実施例5
製造例2で得たカーボン基板を延性モード加工により仕上げ研削を行い、表面加工基板を得た。また、得られた表面加工基板を用いて磁気記録媒体を製造した。研削は実施例3の方法に準じて、以下の条件で行った。
加工条件
研削装置:超精密横型平面研削装置
((株)日進機械製作所製HPG−2A)
ロータリーワークテーブルの直径:200mm
ロータリーワークテーブルの回転数:530rpm
砥石周速:1260m/min
砥石送り速度:10mm/min
【0055】
砥粒種類/番手:#12000ダイヤモンド(平均粒径約1.2μm)
(新東ブレータ(株)製鋳鉄ファイバーボンド砥石:SD12000N100FX3)
クーラント:ユシロ化学製、ELIDNO.35の2%水溶液
ELID電源:新東ブレータ(株)製、パルス電源EDP−10A
初期ツルーイング:#200ダイヤモンド(平均粒径約75μm)
((株)オリエンタルダイヤ工具研究所製:SD200Q75M)
初期ドレッシング:3A×15分
パルス(矩形波)サイクル:4マイクロ秒
【0056】
研削ホイールの肩は精密ツルーイングにより、一例として図5に示すように母線形状を整え、個々の砥粒の切り込み深さがカーボン基板の延性−脆性遷移点(約50nm)以下となるように設定した。基板は加工テーブルに多数存在する真空吸引孔により真空チャック方式で固定した。砥石の設定切り込み深さを3μm、2μm、0.1μmでそれぞれ1パスずつ研削し、これを両面について行った。尚、被加工基板の加工テーブルへのセット状態を図4に示す。ELID電極の取り付け構成を図6に示す。
なお、得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、扇状の加工痕を有するものであった。また加工痕の交差は見られなかった。
このようにして得られた表面加工基板を用いて、実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を製造した。
【0057】
実施例6
直径1.8インチの強化ガラス基板(内径・外径調整済み、チャンファー加工済み、Raは10nm)を延性モード加工により仕上げ研削を行い、表面加工基板を得た。また、得られた表面加工基板を用いて磁気記録媒体を製造した。研削及び磁気記録媒体の製造は下記以外は実施例5と同様の方法で行った。
なお、ここで用いた強化ガラス基板は、延性−脆性遷移点は約25nmである。また、得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、扇状の加工痕を有するものであり、加工痕の交差は見られなかった。
【0058】
実施例7
直径1.8インチの結晶化ガラス基板(内径・外径調整済み、チャンファー加工済み、Raは0.1μm)を延性モード加工により仕上げ研削を行い、表面加工基板を得た。また、得られた表面加工基板を用いて磁気記録媒体を製造した。研削及び磁気記録媒体の製造は実施例6と同様の方法で行った。
なお、ここで用いた結晶化ガラス基板は、延性−脆性遷移点は約35nmである。また、得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、扇状の加工痕を有するものであり、加工痕の交差は見られなかった。
【0059】
実施例8
直径1.8インチにカットしたチャンファー加工済みシリコン基板(Raは0.1μm)を延性モード加工により仕上げ研削を行い、表面加工基板を得た。また、得られた表面加工基板を用いて磁気記録媒体を製造した。研削及び磁気記録媒体の製造は実施例5と同様の方法で行った。
なお、ここで用いたシリコン基板は、延性−脆性遷移点は約15nmである。また、得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、扇状の加工痕を有するものであり、加工痕の交差は見られなかった。
【0060】
比較例1
製造例2で得たカーボン基板を従来の遊離砥粒を用いる公知の方法により仕上げ研磨を行い、表面加工基板を得た。より具体的な加工方法は次のとおりである。装置としてスピードファーム社製、9B5P型両面研磨機を用い、0.45μmアルミナ系砥粒(フジミインコーポレーテッド製WA2000)をスラリー状で供給し、押し付け圧力150gf/cm2 で70分間研磨した。キャリアにはエポキシ・ガラス素材を使用し、パッドには硬質パッド(ロデールニッタ製C14A)を用いた。
得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、ランダムな加工痕を有しており、スクラッチ加工痕の交差が無数に確認された。
次いで、この表面加工基板を用いて、実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を製造した。
【0061】
比較例2
製造例2で得たカーボン基板を砥粒に粒径約0.5μmの工業ダイヤモンド(フジミインコーポレーテッド製DIATECWAM0.5)を用いた以外は比較例1と同様に研磨を行った。
得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、ランダムな加工痕を有しており、スクラッチ加工痕の交差が無数に確認された。
次いで、この表面加工基板を用いて、実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を製造した。
【0062】
比較例3
製造例1で得たカーボン基板を、縦型平面研削機((株)日進機械製作所製VPG)を用い、カップ型砥石を用い下記条件にて両面の研削を行った。
砥石の設定切り込み深さは#600ホイールでは3μm、#3000ホイールでは1μmとし、それぞれにより90μm、16μmを研削除去した。チャンファー加工は#600ホイールでの加工後実施例1と同様に行った。
【0063】
得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、多重あやめ形状の加工痕を有するものであった。また加工痕の交差が無数確認された。
次いで、この表面加工基板を用いて、実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を製造した。
【0064】
比較例4
製造例2で得たカーボン基板を、縦型平面研削機((株)日進機械製作所製VPG)を用い、カップ型砥石を用い、下記条件にて両面の研削を行った。
主な研削条件
ワークテーブルの直径:400mm
ワークテーブルの回転数:350rpm
砥石周速:1200m/min
砥粒種類/番手:#3000ダイヤモンド(平均粒径約5μm)
((株)東京ダイヤモンド工具製作所製、レジンボンドホイールSD3000L100B)
クーラント:水
初期ツルーイング:#200ダイヤモンド(平均粒径約75μm)
((株)オリエンタルダイヤ工具研究所製、SD200Q75M)
砥石の設定切り込み深さ:1μm
【0065】
上記の諸条件で表面層の30μmを研削除去した。
得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、多重あやめ形状の加工痕を有するものであった。また加工痕の交差が無数確認された。
次いで、この表面加工基板を用いて、実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を製造した。
【0066】
比較例5
実施例6で用いたものと同じ、直径1.8インチの強化ガラス基板を、縦型平面研削機((株)日進機械製作所製VPG)を用い、カップ型砥石を用い下記条件にて両面の研削を行った。
主な研削条件
ワークテーブルの直径:400mm
ワークテーブルの回転数:350rpm
砥石周速:1200m/min
砥粒種類/番手:#3000ダイヤモンド(平均粒径約5μm)
((株)東京ダイヤモンド工具製作所製、レジンボンドホイールSD3000L100B)
クーラント:水
初期ツルーイング:#200ダイヤモンド(平均粒径約75μm)
((株)オリエンタルダイヤ工具研究所製、SD200Q75M)
砥石の設定切り込み深さ:1μm
【0067】
上記の諸条件で表面層の30μmを研削除去した。
得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、多重あやめ形状の加工痕を有するものであった。また加工痕の交差が無数確認された。
次いで、この表面加工基板を用いて、実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を製造した。
【0068】
比較例6
実施例7で用いたものと同じ、直径1.8インチの結晶化ガラス基板を、縦型平面研削機((株)日進機械製作所製VPG)を用い、カップ型砥石を用い下記条件にて両面の研削を行った。
主な研削条件
ワークテーブルの直径:400mm
ワークテーブルの回転数:350rpm
砥石周速:1200m/min
砥粒種類/番手:#3000ダイヤモンド(平均粒径約5μm)
((株)東京ダイヤモンド工具製作所製、レジンボンドホイールSD3000L100B)
クーラント:水
初期ツルーイング:#200ダイヤモンド(平均粒径約75μm)
((株)オリエンタルダイヤ工具研究所製、SD200Q75M)
砥石の設定切り込み深さ:1μm
【0069】
上記の諸条件で表面層の30μmを研削除去した。
得られた表面加工基板を光学顕微鏡で観察したところ、多重あやめ形状の加工痕を有するものであった。また加工痕の交差が無数確認された。
次いで、この表面加工基板を用いて、実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を製造した。
【0070】
上記の製造例及び比較例で得られた表面加工基板について、加工痕形状、平坦度、Ra、Rp/Raを調べた。粗さ測定は、加工痕に対し測定器の針が直交する方向、即ち粗さが最大となる方向にスキャンして求めた。
表面加工基板の加工痕形状は、表面を光学顕微鏡により観察し、形状を確認した。
平坦度はZYGO社製型式Mark4により測定した。
Rpは触針式表面粗さ計(Tencor(株)製、型式P2)を用いて、前述のRaと同じ条件で測定した。結果を表1及び表2に示す。
さらに、表面加工基板の表面を光学顕微鏡とSEM(走査型電顕)とAFM(原子間力顕微鏡、Degital Instruments Incorporation 社製Nano−Scope−III)により観察し、研削が延性モードで進行してスムーズな研削痕が残っているか、脆性モードで進行してスムーズでなく荒れた表面やマイクロクラックを残存した表面になっているか確認した。
【0071】
また、実施例及び比較例で得られた磁気記録媒体について、外観検査及び記録再生エラーの程度の指標としてのエラー特性を調べた。
外観検査は、磁気記録媒体のスクラッチ傷等の有無を明るい照明下、肉眼で調べることにより行った。そして全媒体における合格媒体の割合を百分率で示した。
エラー特性は外観検査後の傷のない磁気記録媒体100枚について行った。即ち、媒体1枚当たりのエラー個数が15個以下のものを合格品とし、媒体100枚中の合格品の割合(合格率)を百分率で示した。エラー個数の測定は次の条件で行った。ヘッドはヤマハ製の薄膜ヘッドを用いた。ギャップ幅は0.4μm、トラック幅は5μm、巻数は20turn、回転数は6000r.p.m.、周波数は6MHzで全面を検査した。片面あたり大きさ1ビット以上の欠陥をエラーとした。結果を表1及び表2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
上記の結果より以下のことがわかった。
本発明の方法によって得られた磁気記録媒体は、外観検査、エラー特性のいずれについても好ましいものであった(実施例1〜8)。従って、本発明の磁気記録媒体はエラーの少ない良好なものであり、また本発明の製造方法は効率の良い優れた方法であることがわかった。
また光顕/SEM観察によると研削面はスムーズで、マイクロクラックも含まず、極めてスムーズな研削痕を残していることから、実施例1〜8の表面加工基板はいずれも延性加工モードで研削されていることが分かった。
【0075】
一方、従来の遊離砥粒によって加工された表面加工基板を用いた磁気記録媒体(比較例1及び2)のエラー特性は悪いものであった。
また、加工痕が多重あやめ形状の磁気記録媒体のエラー特性も悪いものであった。加工後の基板表面を光顕/SEM観察すると延性加工モードと脆性モードとが混在していることが判明したことから、このことは、研削痕の交差等によるマイクロクラックによるものと考えられる(比較例3〜6)。また、いずれの比較例においても外観検査の結果は悪く、比較例の製造方法は効率の悪いものであるといえる。
【0076】
【発明の効果】
本発明により、従来法より簡便な方法でエラー特性の良好な磁気記録媒体を効率よく製造することができる。また、本発明の磁気記録媒体はエラー特性が良好であり、記録媒体として好ましいものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、多重あやめ形状の加工痕を示す模式図である。
【図2】図2は、扇状を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明における研削工程に用いる装置の概略構成図である。
【図4】図4は、図3の研削装置における、被加工基板のワークテーブルへのセット状態を示した模式図である。
【図5】図5は、研削砥石の肩部分の母線形状を示す模式図である。
【図6】図6は、ELID電極の取り付け構成を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の磁気記録媒体の要部断面図である。
【図8】図8は、研削砥石の肩部分の母線形状を示す模式図である。
【符号の説明】
1 ワークテーブル
2 研削ホイール
3 修正ホイール
4 チャック
5 スライドベース
6 スピンドル/油静圧軸受け
7 低膨張材料
8 クーラント供給ユニット
9 ワーク(被加工基板)
11 すき間調整ネジ
12 絶縁体
13 電極
14 砥石
21 砥粒コーティング層
31 表面加工基板
32 Ti層
33 Al−Si合金層
34 カーボン層
35 Cr層
36 CoCrPtB系合金磁性層
37 保護層
38 潤滑層
NC 数値制御装置
PI 比例・積分制御装置
a 圧力制御サーボ弁
b 圧油源
c 油圧アクチュエータ
d レーザスケール(分解能10nm)
Claims (4)
- 少なくとも下地層、磁性層及び保護層からなる記録媒体構成層が、扇状の加工痕を有する表面加工基板上に形成されてなり、表面加工基板の平坦度が10μm以下であり、表面加工基板のRa(平均中心線粗さ)が1〜100Åであり、Rp(最大中心線高さ)/Raが2〜10であることを特徴とする磁気記録媒体。
- 表面加工基板がカーボン基板である請求項1記載の磁気記録媒体。
- 砥石設定切り込み深さが0.05〜20μmでの延性モード加工により、平坦度が10μm以下である基板表面をRa(平均中心線粗さ)が1〜100Åとなり、Rp(最大中心線高さ)/Raが2〜10となるように研削して該基板表面に扇状の加工痕を形成させ、得られた表面加工基板の表面に少なくとも下地層、磁性層及び保護層からなる記録媒体構成層を形成させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
- 電界インプロセスドレッシングを用いて延性モード加工を施す請求項3記載の磁気記録媒体の製造方法。
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