JP3610297B2 - マイクロ構造体アレイ、及びその作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光エレクトロニクス分野等で使用されるマイクロレンズアレイなどのマイクロ構造体アレイを作製するための金型(本明細書では、特に区別する場合を除いて、金型と言う場合は金型及び金型マスターを含めた意味で使用する)などの作製方法等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マイクロレンズアレイは、直径数μmから数100μmの微小な略半球状のレンズを複数配置したものであり、液晶表示装置、受光装置、光通信システムにおけるファイバー間接続等の様々な用途に使用されるようになってきた。
【0003】
一方、発光素子間隔を狭くできアレイ化が容易な面発光レーザー等の開発が進み、レンズアレイの間隔を狭くでき開口数(NA)の大きなマイクロレンズの要求が高まっている。
【0004】
受光素子においても同様に、半導体プロセス技術の発達に伴い、素子間隔が狭まり、CCD等に見られるように、ますます受光素子の小型化がなされている。この結果、ここでも、レンズ間隔の狭い、開口数の大きなマイクロレンズアレイが必要となっている。この様なマイクロレンズでは、レンズ面に入射する光の利用効率が高い高集光率のマイクロレンズが望まれている。
【0005】
さらに、今後期待される光情報処理分野である光並列処理・演算、光インターコネクション等においても、同様の要望がある。
【0006】
また、エレクトロルミネッセンス(EL)等の自発光型のディスプレイ装置の研究開発もさかんに行われ、高精細且つ高輝度のディスプレイの提案がなされている。この様なディスプレイにおいては、小型且つ開口数の大きなマイクロレンズアレイに加えて、低コストで大面積のマイクロレンズアレイの要求がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上の様な状況において、従来、イオン交換法(M. Oikawa, et al., Jpn. J. Appl. Phys. 20(1) L51−54, 1981)を用いて多成分ガラスからなる基板上の複数の箇所を高屈折率化して、複数のレンズを形成する様にしたマイクロレンズアレイの製造方法が知られている。しかしながら、この方法では、レンズ同士の間隔に比べてレンズの開口径を大きくとれず、開口数の大きなレンズの設計が困難であった。
【0008】
また、大面積のマイクロレンズアレイを作製するにはイオン拡散装置等の大規模な製造装置が必要とされ、製造が容易でないという問題もあった。また、金型を用いたモールディングに比べてガラス毎にイオン交換工程を施す必要があり、製造装置の作製条件管理を十分に行わないと、レンズの品質、例えば焦点距離のばらつきがロット間で大きくなるという問題があった。また、この方法は、金型を用いた方法に比べて、割高になる。
【0009】
さらに、イオン交換法では、ガラス基板中に被イオン交換用のアルカリイオンが必須となり、基板材料がアルカリガラスに限定されアルカリイオンフリーを前提とする半導体をベースとする素子との適合性が悪い。さらに、ガラス基板そのものの熱膨張係数が受光装置や発光装置の基板の熱膨張係数と大きく異なる為に、素子の集積密度が増加するに伴い、熱膨張係数の不整合によるミスアライメントが発生する。また、元来、ガラス表面のイオン交換法は、表面に圧縮歪みを残すことが知られており、どうしてもガラス表面の残留応力と反り変形のトレードオフの課題が生じ、マイクロレンズアレイが大判化するに従い受光装置や発光装置の基板との接着・接合が困難となってくる。
【0010】
他の方法としては、マイクロレンズアレイの原版を作製し、原版にレンズ材料を塗布し、塗布したレンズ材料を剥離して作製する方法がある。原版となる金型の作製に当たっては、電子ビームを用いて描画する方法(特開平1−261601号公報)、金属板の一部をエッチングし形成する方法(特開平5−303009号公報)がある。これらの方法は、モールディングにてマイクロレンズを複製することができ、ロット毎のばらつきが発生しにくく、また低コストにて作製することが可能である。また、イオン交換法に比べて熱膨張係数差に伴うアライメント誤差の発生や反り等の問題を回避できる。しかしながら、電子ビームを用いる方法では、電子ビーム描画装置が高価であり多額の設備投資が必要となること、描画面積が制限されているために、10cm角以上の大面積の原版を作製するのが困難であること等の問題がある。
【0011】
また、エッチングする方法では、主として化学反応を利用した等方性エッチングを用いるため、金属板の組成や結晶構造がわずかでも変化すると所望の形状にエッチングできなくなるという問題がある。また、エッチングする方法では、所望の形状が得られた時点で直ちに水洗しないとエッチングが継続する。微小なマイクロレンズを形成する場合には、所望の形状が得られた時点から水洗に至るまでの時間に進行するエッチングにより、所望の形状から逸脱する場合がある。
【0012】
他の方法としては、レジストリフロー法(D. Daly, et al., Proc. Microlens Arrays Teddington., p23−34, 1991)がある。この方法では、基板上に形成した樹脂をフォトリソグラフィプロセスを利用して円筒状にパターニングし、加熱しリフローさせてマイクロレンズアレイを作製する。この方法により、様々な形状のレンズを低コストで作製することが可能である。また、イオン交換法に比べて熱膨張係数や反り等の問題がない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このレジストリフロー法では、隣接するレンズ同士がリフローにより接触すると表面張力により所望のレンズ形状を保つことができなくなる。すなわち、隣接するレンズを触させてレンズ間の光未使用領域を小さくし高集光率化することが困難である。
【0014】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑み成されたものであり、その目的は、
(1)レンズなどのマイクロ構造体の形状の制御が容易で、
(2)比較的安価に作製可能で、
(3)隣接するレンズなどのマイクロ構造体間の未使用領域を容易に無くし得る、
マイクロレンズアレイなどのマイクロ構造体アレイ用の金型などであるマイクロ構造体アレイ、及びその作製方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段と作用】
上記目的を達成する本発明のマイクロレンズアレイ用金型などのマイクロ構造体アレイの作製方法は、
(1)基板上に熱可塑材料層を所望のマイクロ構造体アレイの配列に応じて所望の形状でパターニングする工程、
(2)離散状態において前記パターニングした熱可塑材料層を熱処理にて変形させる工程、
(3)前記変形した熱可塑材料層面及び基板上に、無電解メッキないし化学堆積法 (CVD) により、隣接する熱可塑材料層の間の平面部がなくなるまで、連続膜を等方的に形成する工程、を有することを特徴とする。
【0016】
この作製方法では、前記工程(3)において、前記マイクロ構造体アレイ用の配列領域内で、連続膜は、隣接するマイクロ構造体同士が繋がりマイクロ構造体同士間の平面部が無くなるまで容易に形成することができるので、隣接するレンズなどのマイクロ構造体間の未使用領域を容易に無くし得る。勿論、所望ならマイクロ構造体同士間に平面部を残すことも可能である。同時に、隣接する熱可塑材料層同士がリフローにより接触することがないので、表面張力により所望のマイクロ構造体形状を保つことができなくなるという問題が解消され、歩留まりが向上する。更に、基板と熱可塑材料層にわたりメッキ層などの連続膜を形成するので、必要ならマイクロ構造体アレイのサイズの面内分布を小さくすることもでき、さらに熱可塑材料層が基板に強固に固定されて構造がより強固になる。
【0018】
前記工程(1)において、パターニングした熱可塑材料層の形状は、円柱、ライン状、四角柱や六角柱などの多角柱などに形成され得る。また、パターニングした熱可塑材料層の形状は複数種形成されてもよいし、全て同一に形成されてもよい。更に、パターニングした熱可塑材料層は、左右、上下に等間隔で配列されるといった様に規則的に配列されてもよいし、不規則的に配列されてもよい。これらは用途に応じて適宜決定すればよい。
【0019】
前記工程(1)において、熱可塑材料層は、フォトレジストなどの樹脂層であったり、金属メッキ層などであったりする。これらは、後述するように、その材料に応じた製法で形成すればよい。また、熱可塑材料層を形成する前に基板表面を適当に撥水処理するなどして、熱処理変形される熱可塑材料層の形状を適当に制御することもできる。
【0020】
前記工程(1)において、前記マイクロ構造体アレイ用の配列領域外のアライメントマーカー領域にもアライメントマーカー用構造用の熱可塑材料層を形成してもよい。これにより、適当な位置にアライメントマーカー用構造を形成できて、アライメントマーカーを備えるマイクロレンズアレイなどを歩留まり良く作製できることになる。
【0021】
また、上記マイクロ構造体アレイは、典型的には、マイクロ構造体アレイ用金型ないしマイクロレンズアレイ用金型として作製される。
【0024】
以上が本発明の基本的及びより具体的な構成要素であり、その詳細及び作用について典型的な例に沿って以下に更に説明する。
【0025】
典型的にはマイクロレンズアレイであるマイクロ構造体アレイ用の金型の作製方法の典型例を示す。ここで、マイクロレンズないしマイクロレンズアレイと言う場合はマイクロ構造体を代表して指すものとする。当然、ここで述べることは他のマイクロ構造体アレイ用金型の作製方法にも適用できる。
【0026】
本発明の基板材としてはガラス、石英、セラミックス、樹脂、金属、結晶材料等が使用できる。次に、マイクロレンズアレイにおける各レンズとの配列に応じて熱可塑材料層をパターニングする。熱可塑材料としてはフォトレジスト、ガラス、金属等が使用できるが、使用する基板よりも軟化点温度が低い材料を選ぶ必要がある。
【0027】
パターニングの方法としては基板上に熱可塑材料層を形成し、典型的には、半導体フォトリソグラフィーとエッチングによって所望のレンズピッチ、個数に応じて熱可塑材料層をエッチングしパターニングする。ここで、熱可塑材料層にフォトレジストを用いるとエッチング工程が省略できる。また、ここで同時にアライメントマーカー用のパターンも形成することができる。また、熱可塑材料層のパターニングをライン状に行なえばレンチキュラーレンズ用の金型も形成することもできる。
【0028】
その他にも、導電性基板もしくは電極層を形成した基板上にマスク層としてフォトレジスト等をパターニングし、露出した導電部にメッキ層を形成し、そしてマスク層を除去することによってメッキ層をパターニングすることもできる。基板上に熱可塑材料の小滴を所望のパターンに従って滴下する方法でもよい。
【0029】
次に、パターニングされた熱可塑材料層に対して熱変形温度以上のリフロー工程を実行することによって、点在化等された熱可塑材料層は、その熱変形性及び表面張力により略球面形状ないし円筒面形状に変形する。ここで、基板の表面エネルギー(撥水処理によりこれは小さくなり、熱可塑材料はより強く弾かれることになる)及び熱可塑材料層の厚みを制御していれば、自在に熱可塑材料の形状及び曲率を制御することができる。この状態においては、隣接する熱可塑材料のマイクロ構造体同士の間には平面部が存在する。
【0030】
次に、熱可塑材料のマイクロ構造体同士の間の平面部が無くなるまで、熱可塑材料層及び基板上に連続膜を形成する。これによって、パターニングによって形成された隣接する熱可塑材料のマイクロ構造体(典型的には、半球状である)同士の間の平面部は無くなる。これをマイクロレンズアレイ用金型として用いれば、光利用効率の高いマイクロレンズアレイが得られる。ここで、連続膜はメッキ層、化学堆積層(CVD層)、真空蒸着層、電着層(電着液には、電着性有機化合物(アニオン型電着のアクリル系酸樹脂、カチオン型電着のエポキシ系樹脂等)の電着液がある)等の何れでもよい。
【0031】
連続膜のメッキ層の形成方法として電気メッキを用いる場合、樹脂面等及び基板上に電極層を形成する必要があるが、無電解メッキを用いる場合はその必要がない。メッキにおいてはメッキ時間、メッキ温度を制御して曲面形状を容易に制御することが可能である。主なメッキの金属としては、単金属では、Ni,Au,Pt,Cr,Cu,Ag,Zn等、合金では、Cu−Zn,Sn−Co,Ni−Fe,Zn−Ni等がある。メッキが可能な材料であれば、いずれの材料でも用いられる。
【0032】
樹脂等の熱可塑材料のリフロー工程によって得られたプロフィールの曲率を維持したいのならば、連続膜の形成方法としては、等方的な層成長がなされる無電解メッキ、化学堆積法などが好ましい。ここでも、連続膜の厚みを制御することによって、自在に熱可塑材料マイクロ構造体の形状及び曲率を制御することができる。
【0033】
マイクロレンズアレイ用金型は、上記マイクロレンズアレイ用金型マスター(原版)に金型材料を形成した後、金型を剥離することで得られる(各部の材料によっては、上記の構造をそのままマイクロレンズアレイなどのマイクロ構造体アレイとして用いることもできる)。マイクロレンズアレイ用金型は、上記した原版から直接形成できるために、高価な設備を必要とせず、低コストで作製できる。剥離の方法としては、機械的に原版と基板を剥離すれば良い。しかしながら、大判化すると剥離時に変形する場合がある為、基板、熱可塑材料層、連続膜を順次裏面よりエッチング除去する方法を取っても良い。
【0034】
連続膜上に犠牲層を設けた後に金型を形成する場合には、犠牲層を除去することにより金型と基板を剥離することが可能である。この場合、犠牲層をエッチングするエッチャントにより金型が腐蝕されないような犠牲層の材料を選ぶ。犠牲層をエッチングするエッチャントにより連続膜及び基板も腐蝕されない場合、連続膜を形成した基板を原版として、複数回使用することが可能である。原版が複数回の使用により傷、汚れ等により使用できなくなった場合には、同様の方法により金型マスターを作製すればよい。
【0035】
マイクロレンズ用金型の材料としては、連続膜を形成した基板上に形成でき且つ剥離できるものであれば、樹脂、金属、絶縁体等の何れの材料も用いることができる。簡略な金型の形成方法としては、樹脂や金属、ガラスの溶融または溶解した溶液を連続膜が形成された基板上に塗布して、これが硬化した後に、上述した剥離の方法により剥離し形成する。この場合、金型材料としては、基板や連続膜が合金化しない材料を選択する。他の方法としては、基板を陰極として連続膜上に電極層を形成し、金型を電気メッキして形成する。犠牲層を用いるのであれば、犠牲層上に金型用電極層を形成し該金型用電極層を陰極として電気メッキを行う。
【0036】
さらに、上記マイクロレンズアレイ用金型上にマイクロレンズとなる材料を形成した後、これを剥離することにより、マイクロレンズアレイを形成することができる。これにより、低コストで且つ容易に、同一の形状のマイクロレンズを作製することが可能となる。マイクロレンズの材料としては、マイクロレンズ用金型との剥離性が容易な材料が用いられる。マイクロレンズ材料として樹脂を用いる場合は、光透過性の熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂等をマイクロレンズアレイ用金型上に塗布した後、紫外光照射、電子線照射等により硬化させる。硬化時には、気泡が形成されないようにする。樹脂を塗布する場合には、脱気を行うと良い。
【0037】
硬化後に、樹脂は金型から剥離されマイクロレンズアレイが形成される。マイクロレンズアレイとなる樹脂としては、マイクロレンズを用いる受光または発光装置が利用する光の波長領域で光透過可能な材料を用いる。上記方法でマイクロレンズを作製する場合には、アルカリガラスが必須とはならず、イオン交換法と比べて、マイクロレンズ、支持基板の材料の制限を少なくできる。樹脂の代わりに溶融したガラスを使用すれば、ガラスのマイクロレンズアレイを作製できる。
【0038】
勿論、本発明の金型は、適用可能であれば、マイクロレンズアレイに限らず、どのような構造を作製するのにも使用し得る。
【0039】
【発明の実施の態様】
以下に、図面を参照しつつ発明の実施の態様ないし実施例を詳細に説明する。
【0040】
(第1実施例)
第1実施例は、本発明によるマイクロレンズアレイ用金型の製造方法の第1の態様である。図1から図3を用いて製造方法を説明する。
【0041】
まず、4インチφのシリコン基板1上に、フッ素を有する官能基を持つシランカップリング剤で表面処理して撥水面を形成する。次に、ポジ型レジストからなる熱可塑材料層としての樹脂層2をスピンコートで厚さ8μm塗布する(図1(a))。
【0042】
その後、半導体フォトリソグラフィーを用いて円柱状レジストパターン2を、隣接するパターンとの間隔を18μmで、1064×808個形成する(図1(b))。
【0043】
次に、その基板を150℃で15分間べ一キングすることによって、樹脂層2をリフローし、球面形状を有する樹脂層2を形成する(図1(c))。この時、樹脂球面と基板1との接触角は80度であった。
【0044】
冷却後、この基板をコンディショナー溶液に浸けた後、パラジウム−スズのコロイドを含有するキャタリスト溶液に浸し、触媒核を基板1及び樹脂2表面に形成する。
【0045】
次に、無電解ニッケルメッキ液(S−780、日本カニゼン社製)を用いて90℃にて無電解メッキを行なう。無電解メッキは、メッキ層3が基板1及び樹脂2表面上に形成されていき、隣接する球面マイクロ構造体同士の間の平面部が無くなるまで行なう。この場合、無電解メッキ層3は等方的に積層したため、リフロー後形成された樹脂2の曲率を保持しており、曲率半径は15μmであった。
【0046】
これにより1064×808個のマイクロレンズアレイ用金型4が得られる。(図1(d)参照)。
【0047】
次に、無電解メッキ層3上に電鋳用離型剤を塗布することによって離型層5を形成する(図2(a))。この基板を陰極とし、スルファミン酸ニッケルと臭化ニッケルとほう酸及び光沢剤からなるNiメッキ浴を用いて、浴温50℃、陰極電流密度5A/dm2でNi電気メッキを行ない、電鋳層6を形成する(図2(b))。その後、基板から電鋳層6を離型してマイクロレンズアレイ用金型7を形成する。これにより、1064×808個のマイクロレンズアレイ用金型7が得られた。(図2(c)参照)。
【0048】
この金型7を用いてマイクロレンズアレイを作製する。マイクロレンズアレイ用金型7に紫外線硬化樹脂を塗布後、支持基板となるガラス基板をその上に載せる。紫外線照射により該樹脂を硬化させた後に剥離することにより、1064×808個の凸型マイクロレンズアレイを作製した。ここで得られた凸型マイクロレンズアレイは、隣接するレンズ球面間に平面部が無いため、光の未利用領域が無かった。また、レンズ球面の曲率は、リフロー後形成された樹脂2の曲率と一致しており、レンズ曲率半径は15μmであった。
【0049】
(第2実施例)
本実施例は、本発明によるマイクロレンズアレイ用金型の製造方法の第2の態様である。第1実施例と同様に、図1から図3を用いて製造方法を説明する。
【0050】
樹脂層2がリフローされて球面形状を有する樹脂層2が形成されるまでは第1実施例と同じである(図1(c)参照)。ただし、この時、樹脂球面と基板1との接触角は85度である。この角度は第1実施例より大きく、より半球面(このとき接触角は90度になる)に近いので、第1実施例の球面形状樹脂層2よりも高い樹脂層2であることを示す。この制御は、前述した様に、基板の表面エネルギー等を制御することで行われる。
【0051】
更に、第1実施例と同様に、冷却後、この基板をコンディショナー溶液に浸けた後、パラジウム−スズのコロイドを含有するキャタリスト溶液に浸し、触媒核を基板1及び樹脂2表面に形成する。次に、無電解ニッケルメッキ液(S−780、日本カニゼン社製)を用い、90℃にて無電解メッキを行なう。無電解メッキは、メッキ層が基板1及び樹脂2表面上に形成されていき、隣接する球面同士の間の平面部が無くなるまで行なう。この場合、無電解メッキ層3は等方的な積層をしたため、リフロー後形成された樹脂2の曲率を保持しており、曲率半径は14μmであった。この値は第1実施例のものより若干小さい。これにより、1064×808個のマイクロレンズアレイ用金型4が得られる。(図1(d)参照)。
【0052】
これ以降の工程も、第1実施例と同様に行ない、1064×808個のマイクロレンズアレイ用金型を得る(図2(c)参照)。
【0053】
この金型7を用いて、第1実施例と同様にマイクロレンズアレイを作製することにより、1064×808個の凸型マイクロレンズアレイを作製できた。ここで得られた凸型マイクロレンズアレイも、隣接するレンズ球面間に平面部が無いため、光の未利用領域が無かった。ここでも、レンズ球面の曲率はリフロー後形成された樹脂2の曲率と一致しており、レンズ曲率半径は14μmであった。
【0054】
(第3実施例)
第3実施例では、4インチφのシリコン基板1上にポジ型レジストからなる樹脂層2をスピンコートで厚さ8μm塗布する(図1(a)参照)。
【0055】
その後、半導体フォトリソグラフィーを用いて、隣接するパターンとの間隔を2μmで、1064×808個の一辺16μmの正方形レジストパターンを形成する。これと共に、その周囲の任意の位置にアライメントマーカー用のパターンを形成する。
【0056】
次に、その基板を150℃で15分間べ一キングすることによって樹脂層2をリフローし、球面形状を有する樹脂層2を形成する(図1(c)参照)。
【0057】
その上に、電子ビーム蒸着法によってクロムと金を夫々50A,1000A成膜し、電極層を形成する。この基板を陰極とし、硫酸ニッケルと塩化ニッケルとほう酸及び光沢剤からなるNiメッキ沿を用いて、浴温60℃、陰極電流密度5A/dm2でNiメッキを行なう。メッキ層3が電極層上に形成されていき、隣接する球面同士の間の平面部が無くなった。これにより、アライメントマーカー用構造を有する1064×808個のマイクロレンズアレイ用金型が得られた(図1(d)参照)。
【0058】
次に、メッキ層3上に、電鋳用離型剤を塗布することによって離型層5を形成する(図2(a)参照)。この基板を陰極とし、スルファミン酸ニッケルと臭化ニッケルとほう酸及び光沢剤からなるNiメッキ浴を用いて、浴温50℃、陰極電流密度5A/dm2でNi電気メッキを行なって電鋳層6を形成する(図2(b)参照)。その後、基板から電鋳層6を雛型しマイクロレンズアレイ用金型7を形成する(図2(c)参照)。こうしてアライメントマーカーを有する1064×808個のマイクロレンズアレイ用金型7が得られた。
【0059】
ここでもマイクロレンズアレイが次の様に作製される。マイクロレンズアレイ用金型7に紫外線硬化樹脂を塗布後、支持基板となるガラス基板をその上に載せる。紫外線照射により該樹脂を硬化させた後に剥離することにより、アライメントマーカーを有する1064×808個の凸型マイクロレンズアレイが作製できた。ここで得られた凸型マイクロレンズアレイも、隣接するレンズ球面間に平面部が無いため、光の未利用領域が無かった。
【0060】
つづいて、TFT液晶基板に形成されたマーカーに上記凸型マイクロレンズアレイのマーカーを合わせて貼り付けることにより、各画素に対応した位置に各マイクロレンズを配置することができた。これらを駆動回路に繋ぎ液晶プロジェクターとして駆動させたところ、入射光はマイクロレンズによって集光され明るい表示画像を得ることができた。
【0061】
(第4実施例)
図1、図2、図4を用いて第4実施例を説明する。
【0062】
第4実施例においては、まず、5インチφのシリコン基板1上にポジ型レジストからなる樹脂層2をスピンコートで厚さ8μm塗布する。その後、半導体フォトリソグラフィーを用いて、一辺16μmの正方形レジストパターンを、隣接するパターンとの間隔を2μmで、1064×808個形成した領域を、同一面内に8個所1.8mm間隔で設ける。この際、さらに貼り合わせ等の位置合わせに用いるマーカー用の構造として、前記1064×808個領域外の任意の位置にも、アライメントマーカー用のパターンを形成する。
【0063】
次に、その基板を150℃で15分間べ一キングすることによって、樹脂層2をリフローさせ、球面形状を有する樹脂層2を形成する。冷却後、この基板をコンディショナー溶液に浸けた後、パラジウム−スズのコロイドを含有するキャタリスト溶液に浸し、触媒核を基板1及び樹脂2表面に形成する。
【0064】
次に、無電解ニッケルメッキ液(S−780、日本カニゼン社製)を用い、90℃にて無電解メッキを行なうことにより、メッキ層3を基板1及び樹脂2表面上に形成させていき、隣接する球面同士の間の平面部を無くする。この場合、無電解メッキ層3は等方的な積層をしたため、リフロー後形成された樹脂2の曲率を保持している。これによって、アライメントマーカー用構造8と1064×808個のパターンを同一面内に8個所有するマイクロレンズアレイ用金型が得られた(図4参照)。図4では、1064×808個の各パターンの4隅にアライメントマーカー用構造8が4個ずつ形成されている。
【0065】
次に、メッキ層3上に電鋳用離型剤を塗布することによって雛型層5を形成する。この基板を陰極とし、スルファミン酸ニッケルと臭化ニッケルとほう酸及び光沢剤からなるNiメッキ浴を用いて、浴温50℃、陰極電流密度5A/dm2でNi電気メッキを行なって電鋳層6を形成する。その後、基板から電鋳層6を離型してマイクロレンズアレイ用金型7を形成する。これにより、アライメントマーカー用構造8と1064×808個の半球状マイクロ構造体パターンを同一面内に8組所有するマイクロレンズアレイ用金型が得られた。
【0066】
凸型マイクロレンズアレイは次のように作製される。このマイクロレンズアレイ用金型に紫外線硬化樹脂を塗布後、支持基板となるガラス基板をその上に載せる。紫外線照射により該樹脂を硬化させた後に剥離し、各マイクロレンズアレイに切り取ることにより、一枚の金型から8個の凸型マイクロレンズアレイを作製することができた。
【0067】
(第5実施例)
図1、図2を用いて第5実施例を説明する。第5実施例においては、まず、4インチφのシリコン基板1上にポジ型レジストからなる樹脂層2をスピンコートで厚さ8μm塗布する。その後、半導体フォトリソグラフィーを用いて、一辺16μmの正方形レジストパターンを、隣接するパターンとの間隔を2μmで1064×808個形成したものと、一辺14μmの正方形レジストパターンを、隣接するパターンとの間隔を4μmで1064×808個形成したものと、一辺12μmの正方形レジストパターンを、隣接するパターンとの間隔を6μmで1064×808個形成したものの3種類を同一面内に1つずつ1.8mm間隔で形成する。
【0068】
次に、その基板を150℃で15分間べ一キングすることによって樹脂層2はリフローされ、球面形状を有する樹脂層2が形成される。冷却後、この基板をコンディショナー溶液に浸けた後、パラジウム−スズのコロイドを含有するキャタリスト溶液に浸して、触媒核を基板1及び樹脂2表面に形成する。
【0069】
次に、無電解ニッケルメッキ液(S−780、日本カニゼン社製)で90℃にて無電解メッキを行なうことにより、メッキ層3が基板1及び樹脂2表面上に形成されていき、隣接する球面同士の間の平面部を無くする。この場合、無電解メッキ層は等方的な積層をしたため、リフロー後形成された樹脂2の曲率を保持していた。これによって、3種類の曲率を有する1064×808個のパターンを同一面内に1つずつ有するマイクロレンズアレイ用金型が得られた。
【0070】
次に、メッキ層3上に電鋳用離型剤を塗布することによって雛型層5を形成する。この基板を陰極とし、スルファミン酸ニッケルと臭化ニッケルとほう酸及び光沢剤からなるNiメッキ浴を用いて、浴温50℃、陰極電流密度5A/dm2でNi電気メッキを行なって電鋳層6を形成する。
【0071】
その後、基板から電鋳層6を離型してマイクロレンズアレイ用金型7を形成する。これにより、3種類の曲率を有する1064×808個のパターンを同一面内に1つずつ有するマイクロレンズアレイ用金型が得られた。
【0072】
このマイクロレンズアレイ用金型に紫外線硬化樹脂を塗布後、支持基板となるガラス基板をその上に載せる。紫外線照射により該樹脂を硬化させた後に剥離し、各マイクロレンズアレイに切り取ることにより、一枚の金型から3種類の曲率を有する凸型マイクロレンズアレイを作製できた。
【0073】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明により、作製プロセス、レンズなどのマイクロ構造体の形状の制御が容易で、各レンズ間の光の未利用領域の無い、安価なマイクロレンズアレイ用金型などのマイクロ構造体アレイ、及びその作製方法を提供することができた。また、一枚の基板面内に複数個または複数種のマイクロレンズアレイ用金型などのマイクロ構造体アレイを形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマイクロレンズアレイ用金型の製造工程の一部を示す断面図である。
【図2】本発明のマイクロレンズアレイ用金型の製造工程の一部を示す断面図である。
【図3】本発明のマイクロレンズアレイ用金型を示す上面図である。
【図4】本発明の第4実施例によるマイクロレンズアレイ用金型の上面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 熱可塑材料層
3 連続膜
4 金型
5 離型層
6 電鋳層
7 金型
8 アライメントマーカー
Claims (1)
- マイクロ構造体アレイの作製方法であって、(1)基板上に熱可塑材料層を所望のマイクロ構造体アレイの配列に応じて所望の形状でパターニングする工程、(2)離散状態において前記パターニングした熱可塑材料層を熱処理にて変形させる工程、(3)前記変形した熱可塑材料層面及び基板上に、無電解メッキないし化学堆積法(CVD)により、隣接する熱可塑材料層の間の平面部がなくなるまで、連続膜を等方的に形成する工程、を有することを特徴とするマイクロ構造体アレイの作製方法。
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