JP3606135B2 - ばね用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法 - Google Patents

ばね用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間圧延鋼板→前熱処理→鋼板の成形加工(製品ばね)→各種機器への組み込み→必要に応じ後熱処理(皮膜処理)のプロセスにより製造、利用される、テレビブラウン管内部の支持ばねなどに好適なばね特性に優れたばねで、成形性に優れたばね用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄板ばねとして使用されるばね用ステンレス冷間圧延鋼板としては、JIS G4313に、ばね用オーステナイト系ステンレス鋼板(SUS301−CSP、SUS304−CSP)、ばね用マルテンサイト系ステンレス鋼板(SUS420J2−CSP)、およびばね用析出硬化系ステンレス鋼板(SUS631−CSP)が規定されている。
【0003】
ばね用オーステナイト系ステンレス鋼板は、冷間加工によってオーステナイト相をマルテンサイト相へ変態させることによってばね特性を高めている。SUS301−CSPについて4種類、SUS304−CSPについて3種類の材料硬度水準が規定されている。目標とする材料硬度およびばね特性を得るためには、仕上げ調質圧延での圧下率を適切に調整する必要がある。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼は、その材料特性としてフェライト系ステンレス鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼よりも熱膨張係数が大きいため、製品ばねが比較的高温で使用され、かつ厳密な寸法精度維持が要求される電子部品用ばねなどの用途には不向きである.またばね用オーステナイト系ステンレス鋼板は、異方性が大きく、板幅方向のばね限界値が、圧延方向の値に比べて大きくなるため、製品ばねの付加荷重の方向によって、ばね特性が変化したり、製品ばねの採取方向に制限を受けたりする問題がある。
【0004】
ばね用マルテンサイト系ステンレス鋼板のSUS420J2−CSPは、所定板厚の冷間圧延鋼板の焼鈍材を加工メーカーにて目的の形状に成形加工した後に、焼き入れ処理によるマルテンサイト変態を利用して硬度を上昇させ、その後に時効硬化熱処理を兼ねた焼戻し処理により、ばね特性を高めている。しかし、機器への組み込み後の工程で500℃以上の温度に加熱されると、硬いマルテンサイト相が比較的軟らかいフェライト相へ変態し、ばね特性が急激に劣化する。またSUS420J2−CSPばね鋼の製品ばねを他の部材と溶接する場合には、溶接時の熱影響部が脆化して延性を損なう場合がある。
【0005】
また、ばね用析出硬化系ステンレス鋼のSUS631−CSPは、冷延後焼鈍した鋼板を目的製品の形状に成形加工した後に、焼き入れ硬化処理と、Ni−Al化合物の析出硬化熱処理によりばね特性を向上させる。しかし、良好な特性を得るためには、化学組成に見合う熱処理条件を選定する必要があり、製造が難しい。
【0006】
さらに特開平3−56621号公報では、成分調整と熱処理によりフェライト相とマルテンサイト相の複合組織としたステンレス鋼板に、さらに時効処理を施す方法が開示されている。しかし、上記機器の製造工程で500℃以上に加熱された場合のばね特性の低下はさけられないものと思われる。
【0007】
本発明は、(a)鋼板および後熱処理(500〜600℃)後のばね特性および(b)成形加工性に優れ、更に(c)熱膨張係数が小さく(d)鋳片割れが無く製造しやすくて安価な、テレビブラウン管内部の支持ばねなどに好適なばね用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
(1)質量%で、C:0.12%以下、Si:1.0〜3.5%、Mn:0.10〜2.0%、Cr:11.0〜23.0%、Ni:0.2〜4.0%、N:0.12%以下、Cu:0〜0.8%、ならびにNb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、Al:0〜0.1%およびZr:0〜0.1%のうち1種または2種以上を合計で0〜0.3%含有し、かつ、C+N:0.02%以上を満足し、A=(Ni+0.5Mn+35C+40N+0.3Cu)−0.31(Cr+1.5Si+0.5Nb+12Ti+6Al+12Zr)なる関係式で定まるA値が−2.7から−0.5の範囲内にあり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するこばね用フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板。
【0009】
(1)質量%で、C:0.12%以下、Si:1.0〜3.5%、Mn:0.10〜2.0%、Cr:11.0〜23.0%、Ni:0.2〜4.0%、N:0.12%以下、Cu:0.8%以下、ならびにNb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、Al:0.1%以下およびZr:0.1%以下のうち1種または2種以上を合計で0.3%以下含有し、かつ、C+N:0.02%以上を満足し、A=(Ni+0.5Mn+35C+40N+0.3Cu)−0.31(Cr+1.5Si+0.5Nb+12Ti+6Al+12Zr)なる関係式で定まるA値が−2.7から−0.5の範囲内にあり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するばね用フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板。
【0010】
(2)上記(1)に規定する化学組成を有する冷間圧延鋼板に、焼鈍後、圧下率10%以上の仕上げ冷間圧延を施すばね用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
【0011】
(3)仕上げ冷間圧延後に、300〜600℃で熱処理する上記(2)に記載のばね用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
【0012】
なお、ここで「鋼板」とは、長尺のコイル形状の鋼板とシート形状の鋼板とをいう。
【0013】
本発明者らは、熱膨張係数の小さいフェライト系ステンレス鋼に注目して、高いばね特性を得る方法を検討した。
【0014】
まず、各種のフェライト系ステンレス鋼の熱延板を作製し、冷間圧延を施し、化学組成と冷間圧延材のばね特性との関係を詳細に検討した。試験材の硬度は、主にビッカース硬度試験により評価した。なお、ばね特性は、JIS H3130に記載のばね限界値試験の中のモーメント式試験にて評価した。永久たわみ量0.075mmに相当する曲げの表面最大応力値をばね限界値とした。
【0015】
先ず、ばね特性に最も影響力の大きい硬度に対しては、Siの影響が最も顕著であり、またSiに加えてNi、Mn、Mo、Cuを複合添加することによって、さらに硬度が増す事が確認された。
【0016】
次に、健全な鋳片の製造しやすさに関する製造性は、一般にフェライト系ステンレス鋼は、鋳造後の鋳片を放冷すると熱歪みによって鋳片割れが発生しやすいが、特にSiの添加量を多くした場合には、この傾向が著しい。そこで、Siを添加した合金の鋳片割れを改善するために、各種合金元素の影響について調査したところ、A=(Ni+0.5Mn+35C+40N+0.3Cu)−0.31(Cr+1.5Si+0.5Nb+12Ti+6Al+12Zr)から定まるA値を−2.7以上とすることにより割れを防止できることが分かった。これはスラブ冷却過程で高温で存在するオーステナイト相がMs点を通過する際に膨張し、スラブ内部と外周部との熱膨張差に起因する歪みを緩和する効果と考えられる。
【0017】
したがって、フェライト系ステンレス鋼の硬度を上昇させ、かつ上記の製造性を良好に保つためには、Siを添加した上で高温オーステナイト相の割合を適正化することが最も効果的であることが判明した。
【0018】
図1は、16%Cr−Feを基本組成として、これにSiを単独添加およびSi+Niを複合添加した材料について、冷間圧延圧下率を0〜60%の範囲で変化させて測定した冷間圧延後のビッカース硬度を図示したものである。Si添加量の増加、冷間圧延圧下率の増加により、冷間圧延後の硬度が上昇し、Niを複合添加することによってさらに硬度が上昇することがわかった。
【0019】
一方、A値が−0.5を超えると、その製品ばねを他の部材と溶接した場合に、熱影響部の延性が著しく損なわれ、外部からの力によって割れを生ずる場合があることがわかった。これは熱影響部に、急冷による硬いマルテンサイト相が生成するためと考えられる。
【0020】
次に16%Cr−2%Si−1%Ni−Feの化学組成を有するフェライト系ステンレス熱延板を、圧下率が0〜60%の範囲で冷間圧延し、さらに材料温度が450℃で60分の熱処理をおこなった後、熱処理前後でのばね特性変化を調査するために、ばね限界値試験を実施した。図2に、試験結果を代表的なフェライト系であるSUS430鋼と比較して示した。本鋼はSUS430鋼と比較して、熱処理後のばね特性向上が顕著であり、良好なばね特性が得られることがわかった。
【0021】
また本鋼(16%Cr−2%Si−1%Ni−Fe)の熱延板を、圧下率50%で冷間圧延した。このほかに、ばね用マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS420J2−CSP鋼)の冷延板に、焼入れ、焼戻し処理をした。これらの鋼に、300〜700℃の温度で、60分間の熱処理を施した後、ばね限界値試験を実施した。図3に試験結果を示した。
【0022】
本鋼は、300〜600℃の熱処理温度範囲で良好なばね特性を示すが、特に450℃超え〜600℃の高温域で優れ、SUS420J2−CSP鋼に認められるようなばね特性の低下が生じない。SUS420J2−CSP鋼では、450℃を超えると、硬いマルテンサイト相が比較的軟らかいフェライト+Cr炭化物相に変態してばね特性が急激に劣化した。一方、開発鋼では650℃以上の回復・再結晶による軟化が開始する温度域まで高いばね特性の維持が可能である。
【0023】
さらに、本鋼に、極微量のNb、Ti、Al、Zrを1種以上含有させることによって、500〜600℃で後熱処理した後のばね特性がさらに向上することがわかった。これは、Nb、Ti、Al、Zrの1種以上の極微量添加によって生成した析出物が、転位や結晶粒界の移動を抑止するために、回復・再結晶の開始を遅らせ、温度が高温化したためと考えられる。
【0024】
また、本鋼は、冷間圧延率が大きくなると、加工硬化によって延性が低下するが、300〜600℃の温度範囲での熱処理によって、ばね特性の向上と同時に伸び値が向上することが見出された。またCuの添加によって、さらに伸び値が向上する事が見いだされた。これら知見によって本材は、伸びの要求される成形加工をおこなう製品ばねとしても好適である。
【0025】
以上の知見により、500〜600℃の後熱処理をおこなっても、従来のばね用マルテンサイト系ステンレス鋼等では実現困難だった高いばね特性と成形性が得られ、さらに熱膨張係数が小さく製造性にも優れたばね用フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板の発明を完成するに至った。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の詳細について解説する。
【0027】
まず、本発明のステンレス鋼の化学成分について説明する。%表示は質量%を示す。
【0028】
C、N:
C、Nはいずれも侵入型固溶元素として素地を強化して硬度を増大させるとともに、後熱処理による析出硬化に寄与してばね特性の増大に重要な元素である。このため、CとNを合計で0.02%以上含有することが必要である。しかし、CおよびNは、いずれも0.12%を超えると延性が低下するため上限はそれぞれ0.12%とした。
【0029】
Si:
Siは本発明を構成する上で最も重要な元素であり、硬度を高め、高いばね特性を実現するためには不可欠な元素である。ここで高いばね特性を得るためには少なくとも1%以上の添加が必要であるが、3.5%を超えて多量に添加した場合には靭性が低下して鋼板の製造が難しくなるため、上限値を3.5%とする。
【0030】
Mn:
Mnはステンレス鋼の溶製時に脱酸材として加えられる元素である。またMnは熱間加工性に悪影響をおよぼSをMnSとして固定する働きがある。したがって、Mn含有量の下限値を0.1%とした。2.0%を超えて添加すると延性を低下させるので上限値を2.0%とした。
【0031】
Cr:
Crはステンレス鋼の耐食性を維持するために重要な元素であり、Cr含有量の下限値を11%とした。23%を超えると、靭性が低下し、製造中に割れやすいので、上限を23%とした。
【0032】
Ni:
Niは硬度の増加に有効で、0.2%以上必要である。Siとの複合添加でその効果は顕著となるが、4.0%を超えて添加してもその効果は飽和状態となり、製品コストの増加を招くので上限値は4.0%とする。
【0033】
Cu:
Cuは、無添加でもよい。しかしNiと同様にSiとの複合添加により、硬度の増加に有効である。その場合、0.1%以上が望ましい。しかし0.8%を超えると製造工程での熱間加工性に悪影響を与えるので、上限値を0.8%とする。
Nb、Ti、Al、Zr:
Nb、Ti、Al、Zrは、いずれも無添加でもよい。しかし極微量添加によって軟化開始温度を高温側へ移動させ、製品ばねを500〜600℃で後熱処理した場合のばね特性劣化を抑制する効果がある。その場合、0.01%以上が望ましい。しかし合計で0.3%を超えると介在物量が増し、ばね疲労特性を劣化させる場合があるため、上限値を合計で0.3%とする。
【0034】
A値:
それぞれの化学成分の含有量バランス(高温でのオーステナイト相の生成傾向)の指標であるA値が−2.7未満では、高温においてオーステナイト相の析出が減少し、冷却後のスラブに割れが生じる。一方、A値が−0.5を超えると、製品ばねを溶接した時に、高温においてオーステナイト相の析出が過多となり、冷却時に硬質なマルテンサイト相に変態するため、外部からの力によって割れが生じる場合がある。従ってA値は−2.7〜−0.5とする。
【0035】
次に製造方法について詳細に説明する。
仕上げ冷間圧延圧下率および熱処理:
通常のフェライト系ステンレス鋼板と同様に、鋼塊法または連続鋳造法によって鋳造し、熱間圧延で熱間圧延ステンレス鋼板とした後に、軟化焼鈍、酸洗工程および冷間圧延工程を繰り返すことによって、冷間圧延ステンレス鋼板とする。その後に所望の板厚と硬度およびばね特性を調整するために、圧下率10%以上の仕上げ冷間圧延を実施する。
【0036】
良好なばね特性を得るには、仕上げ冷間圧延での圧下率を10%以上とする必要がある。圧下率を大きくした場合には、加工硬化によって材料の延性が低下して2次加工性が損なわれる場合がある。そこで製品ばねの製造工程において成形加工が施される場合には、仕上げ冷間圧延後に300℃〜600℃の温度で熱処理を実施することによって延性を回復させ、2次加工性を向上させることができる。この効果は10秒程度の短い熱処理時間でも得られる。しかし、60分を超えて熱処理を実施してもその効果が飽和に達するために、熱処理時間は60分以下とすることが好ましい。
【0037】
また、仕上げ冷間圧延後に300℃〜600℃の温度で熱処理を実施することによって、ばね特性も大幅に向上させることができる。しかし、この後に所望のばね形状へ成形加工する場合には、加工部位でのばね特性が急激に劣化する場合があるため、製品ばね形状への成形加工を終えた後に熱処理を実施することが好ましい。以上の方法により、ばね用フェライト系ステンレス鋼板および鋼板が得られる。
【0038】
【実施例】
表1に本発明の実施例の化学組成とA値の計算結果を示す。
【0039】
【表1】
Figure 0003606135
【0040】
表1の試料番号5と18以外は、同表に示す化学組成を有する10kg平型鋼塊を実験用小型高周波炉で溶製した。得られた50mm厚の鋼塊を加熱温度1200℃で4mm厚にまで熱間圧延した後、750〜1000℃の軟化焼鈍と冷間圧延とを繰り返す事により、0.6mm厚の冷間圧延焼鈍材を製作した。
【0041】
また表1の試料番号5と18は、同表に示す化学成分を有するスラブを量産型の連続鋳造設備を使用して製造し、これを加熱温度1200℃の熱間圧延工程を経て3mm厚のホットコイルとした後に、800℃の軟化焼鈍、酸洗および冷間圧延を繰り返すことによって0.6mm厚の冷間圧延焼鈍材を製作した。
【0042】
次に、圧下率0〜80%で冷間圧延を実施した。一般に、ばね特性はビッカース硬度で評価できる。ばね用鋼板として良好なばね特性をうるためにはビッカース硬度(測定荷重9.8N)が310以上必要とされるので、310以上のビッカース硬度をうるために必要とされる冷間圧下率を以ってばね特性を評価し、表2に示した。評価は下記の表記を用いた。
【0043】
◎:冷間圧下率20%以下の範囲でビッカース硬度が310を上回るもの。
【0044】
○:冷間圧下率20超え〜80%の範囲でビッカース硬度が310を上回るもの。
【0045】
×:冷間圧下率80%超えにおいてもビッカース硬度が310を上回らないもの。
【0046】
また、上記のビッカース硬度が310になるように調製した冷間圧延鋼板について、2枚の試料を電気抵抗溶接により接合した後に、溶接部の180度繰り返し曲げ試験を行い、破断に至るまでの繰り返し曲げ回数を表2に示した。
【0047】
【表2】
Figure 0003606135
【0048】
同様に、上記のビッカース硬度が310になるように調製した冷間圧延鋼板について、さらに450℃で60分の熱処理を実施した鋼板について引張試験をおこない、伸び値によって鋼板の延性を評価した。評価結果を下記の表記を用いて表2に示した。
【0049】
◎:冷間圧延ままで伸び値が5%を上回るもの。
【0050】
○:所定の熱処理によって伸び値が5%を上回るもの。
【0051】
×:所定の熱処理によっても伸び値が5%を上回らないもの。
【0052】
−:冷間圧延によってビッカース硬度が310を上回らなかったもの。
【0053】
さらにそれぞれの冷間圧延鋼板について、鋼板温度が450℃で60分の熱処理を実施した後、ばね限界値試験(JIS H 3130)としてモーメント式試験を実施することよってばね特性を評価した。ばね用鋼板として良好なばね特性を得るための基準として800MPaのばね限界値を設定し、この基準値を得るために必要とされる事前の冷間圧下率を以ってばね特性を評価した。評価結果は下記の表記を用いて表2に示した。
【0054】
◎:最終冷間圧延率が15%以下で、ばね限界値が800MPa以上
○:最終冷間圧延率が15%超え、40%以下で、ばね限界値が800MPa以上
×:最終冷間圧延率が40%超えで、ばね限界値が800MPa未満
さらに、600℃で60分の後熱処理をおこない、同様な方法で、ばね特性を評価した。
【0055】
表2に示す結果からも明らかなように、本発明によれば良好な製造性を保ちつつ、ばね用鋼板として充分な硬度およびばね特性が得られ、さらには良好な成形性が得られた。
【0056】
試料番号18の比較例は通常量産されているSUS430鋼であるが、試料番号14とともにに本発明を特徴づけるSi含有量が少ないため、ばね用鋼板として必要とされるばね特性を得る事ができなかった。また試料番号15は逆にSi含有量が多すぎ、またNi量が比較的少ないために、A値が本発明で規定する範囲よりも小さくなっている。このため鋳造時に鋳片割れが発生した。試料番号16と17はA値が本発明で規定する範囲よりも大きくなっており、電気抵抗溶接部の曲げ試験において破断に至るまでの曲げ回数が本発明例に比べて著しく劣っていた。さらに試料番号19は、Nb、Ti、Al、Zrの総量を本発明で規定する範囲を超えて添加した例である。この場合にも抵抗溶接部の曲げ試験において破断に至るまでの曲げ回数が本発明例に比べて劣っており、また別途実施したばね疲労試験によってばね疲労特性に劣ることが確認された。
【0057】
試料番号1〜10は本発明例であり、試料番号1〜7は主にSi、Cr、Niの量を変化させた例である、また試料番号8〜13ではさらにCuやNb、Ti、Al、Zrの各元素を添加した例である。これら本発明例にあってはいずれも比較例に比べて、その製造性に優れ、かつ、ばね用鋼板として充分なばね特性が実現されることがわかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明のばね用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法は、500〜600℃の後熱処理をおこなっても、従来のばね用マルテンサイト系ステンレス鋼では実現困難だった高いばね特性と成形性が得られ、さらに熱膨張係数が小さく製造性にも優れているため、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】16%Cr−Feを基本組成としてSi単独もしくはSi+Niを複合添加した鋼板のビッカース硬度におよぼす冷間圧下率の影響を示す図である。
【図2】16%Cr−2%Si−1%Ni−Fe鋼に、材料温度が450℃で60分の時効熱処理を行った後のばね限界値におよぼす冷間圧下率の影響を示す図である。
【図3】16%Cr−2%Si−1%Ni−Fe鋼に、50%の冷間圧延をした鋼板と、比較鋼(SUS420J2−CSP鋼)について、ばね限界値におよぼす後熱処理温度の影響を示す図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.12%以下、Si:1.0〜3.5%、Mn:0.10〜2.0%、Cr:11.0〜23.0%、Ni:0.2〜4.0%、N:0.12%以下、Cu:0〜0.8%、ならびにNb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、Al:0〜0.1%およびZr:0〜0.1%のうち1種または2種以上を合計で0〜0.3%含有し、かつ、C+N:0.02%以上を満足し、A=(Ni+0.5Mn+35C+40N+0.3Cu)−0.31(Cr+1.5Si+0.5Nb+12Ti+6Al+12Zr)なる関係式で定まるA値が−2.7から−0.5の範囲内にあり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有することを特徴とするばね用フェライト系ステンレス冷間圧延鋼板。
  2. 請求項1に規定する化学組成を有する冷間圧延鋼板に、焼鈍後、圧下率10%以上の仕上げ冷間圧延を施すことを特徴とするばね用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  3. 仕上げ冷間圧延後に、300〜600℃で熱処理することを特徴とする請求項2に記載のばね用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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