JP3605983B2 - 負荷電性一成分現像剤及びそれを用いる画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真複写機やレーザービームプリンタ等に用いられる負荷電性一成分現像剤及びそれを用いる電子写真画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一成分現像剤を使用すると現像装置や画像形成装置を小型化でき、また、これらの装置はメンテナンス性等の信頼性にも優れるという利点を有するので、低速の画像形成装置を中心に近年その採用が活発化している。
前記した装置では、これらの一成分現像剤を速やかに帯電させかつ現像剤の薄層を効率よく現像スリーブ上に形成させる目的で、現像スリーブに接触させた状態で層形成部材を設けることがよく行われている。また、静電潜像を保持する感光体としては、材料の選択等により種々の電気特性が得られること、材料としての安全性が高いこと、ドラム、シート、ベルトなどへの加工が容易であること等の理由から有機光導電体(OPC)が多く使用され、現像像転写後の残存粒子のクリーニング方式としてはポリウレタン等のゴムブレードの採用が一般的である。
【0003】
一成分現像剤としては、現像剤中に磁性材料を含有せしめた磁性一成分現像剤と磁性材料を含有しない非磁性一成分現像剤とが知られている。これらの現像剤の製造方法としては、樹脂、帯電制御剤、着色剤、その他の添加物を混合し、溶融混練し、粉砕し、分級してトナー粒子を得るいわゆる粉砕法や、重合性単量体、帯電制御剤、着色剤、必要に応じて架橋剤その他の添加剤を溶解または分散させた単量体組成物を懸濁安定剤を含む水相中で攪拌下造粒し、重合してトナー粒子を得るいわゆる重合法とがある。このトナー粒子に対して、その流動性を向上させ、現像スリーブでのトナー層形成を容易にするためにシリカ微粒子などの添加剤が外添によって加えられ、一成分現像剤として調製される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
第1に、一成分現像剤によって現像を行うときには、いかに現像剤粒子を十分に帯電させるかが大きな課題である。
第2に、感光体は現像剤を介在するクリーニングブレードとの継続的な摺擦によって表面の磨耗及び研磨筋が発生し易い。感光体が有機光導電体(OPC)の場合は、その表面が有機高分子材料で構成されており、硬度が小さいので特に発生しやすい傾向にある。場合によっては、その研磨筋に現像剤が擦り込まれて点状やフィルム状の欠陥が感光体上に発生する。このような表面の劣化は、感光体の電気特性の著しい低下要因となるし、得られる画像に致命的な汚染が生じることも改良すべき課題であった。
【0005】
まず、現像剤粒子の現像に係わる帯電性の課題について述べる。
本来、一成分現像剤では、その現像剤粒子の帯電機構が現像スリーブとの接触によるものであるから、キャリア粒子を有する二成分現像剤と比較して帯電のための接触機会及び接触時間とも少なく、結果として粒子当たりの帯電量は低くなり、また現像剤としての帯電量分布も逆極性部分を多く含むものにならざるを得ない。さらに、長期間使用していくと初期の帯電量が維持されずに低下するという問題もある。上記において、現像剤の帯電量が低い場合、帯電量分布の逆極性部分が多い場合は、いずれも得られる画像の画像濃度が低いとかカブリが顕著になるなどの問題が起こるが、最大の問題は、転写工程での現像剤粒子の転写性の悪化、具体的には転写画像の中抜けが発生しやすいことである。画像の中抜けは画像部の文字やラインを不鮮明にするので画像形成装置では致命的な問題である。さらに、長期使用で帯電量低下がありその安定性が悪い場合には、上記問題をますます助長させるという問題がある。以上の諸問題は、近年の高画質化の市場要求に伴って現像剤粒子を小粒径化していくとますます顕在化しやすい。
【0006】
これらの問題の改良のために、装置側として、現像スリーブに対して接触押圧させた層形成部材を設けることによって現像剤粒子への帯電付与能力が現像スリーブのみの場合に比べて増強されるので、相対的に現像剤粒子の帯電量は高まり逆極性部分は少なくなる。従って、画像濃度や画像の中抜けは改善される傾向となるが、長期使用における現像剤帯電量の安定性は本質的に改良されないので、長期間使用していくと画質の悪化が起こるという問題は依然として残っている。さらに、画像の中抜けは転写の問題であるから、転写工程での転写デバイス(コロナチャージャーやローラチャージャーなど)の出力を上げることによって中抜けを改良しようとする試みもある。しかし、この方法では、中抜けは改善されたとしても出力アップによってオゾンやNOx(窒素酸化物)などの発生が顕著になるという新たな問題が起こる。こうした物質は、特に感光体としてOPCを用いている場合、OPC表面の酸化や異物吸着を促進させその性能を劣化させる。さらには装置系外に排出されるので、人体や環境に悪影響を及ぼす問題もある。
【0007】
一方、現像剤側での改良としては、特に負荷電極性の現像剤では、バインダ樹脂製造時にカルボン酸等の酸基を有する重合性のモノマーを構成成分とすることによって、現像剤としての負の帯電性を向上させ得ることが知られていた。この方法は、現像剤帯電量の安定性を維持する上で有効な手法である。しかし、一方で、これらの酸基は親水基であるから、高湿環境では現像剤に水分が吸着して電荷のリークを起こしやすい。その結果、帯電性が安定せずに、画像の中抜けの増加や画像濃度の低下を招くという問題が依然として存在する。この改良が必要である。
【0008】
次に、現像剤粒子による感光体上の汚染の問題について述べる。
これについては上記したクリーニング不良の問題以外にも以下の問題がある。一成分現像剤では、現像スリーブ上での均一な層形成等のためにその流動性が重要である。従ってトナー粒子には、流動性向上剤としてシリカ微粒子などの無機物微粒子を始めとする流動性向上剤が外添されるケースが多い。こうした無機微粒子は、硬度が大きくしかもその形状が不定形状で角張りがあるものが多いから、それらが感光体を傷つけ、そこを起点に現像剤の固着や融着が起こって画像の汚染を引き起こす。また、こうした微粒子は、通常、極めて微細な粒子であるから、トナー粒子から脱落したり、トナー粒子表面に埋め込まれたりなどして刻々とトナー粒子表面での存在量が変化して、現像剤として経時的な帯電性の変動を招き、得られる画質の安定性に欠けるという問題がある。
【0009】
このように、一成分現像剤においてはいまだ改良すべき課題が残っており、各々の課題についてはそれぞれ個別に提案もなされているが、上記した課題を総合的に解決するような提案はなされていないのが現状である。しかも装置側での対策には限界があり、現像剤としての対策が望まれていた。
本発明は上記した現状に鑑み、その課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、画像の中抜けがない良好な画質が得られる一成分現像剤及び画像形成方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、画像濃度が高くてカブリが少なく、シャープネスに優れた良好な画質が得られる一成分現像剤及び画像形成方法を提供することにある。本発明の他の目的は、トナー飛散のない一成分現像剤及び画像形成方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、感光体特にOPCへの現像剤の固着や融着現象による汚染のない一成分現像剤及び画像形成方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、各種の温度及び湿度の組合せ環境条件下でも画質変化が少ない一成分現像剤及び画像形成方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、長期あるいは連続使用時においても画像濃度や画質劣化の少ない耐久性、信頼性の高い一成分現像剤及び画像形成方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、少ないトナー消費量で十分な画質が得られる一成分現像剤及び画像形成方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の酸価を有するバインダ樹脂と帯電制御剤とを含有するトナー粒子と流動性向上剤と特定の粒度分布を有する脂肪酸金属塩粒子とを含む一成分現像剤及びそれを用いる画像形成方法により、上記目的が満足されることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、2種以上のビニル系モノマーとこれらビニル系モノマーと重合可能な酸と共重合せしめて得られる、酸価が3〜30mgKOH/gであるスチレン系バインダ樹脂と着色剤または磁性粉とを含有してなる体積50%径D t50が5〜12μmであるトナー粒子と流動性向上剤と脂肪酸金属塩粒子とからなり、前記脂肪酸金属塩粒子は、その体積16%径、50%径及び84%径をそれぞれD s16、D s50及びD s84とするとき、以下の式(1)及び(2)を満足するものであることを特徴とする一成分現像剤に存する。
式(1) D s50/D t50≦0.5
式(2) D s84/D s16≦5
【0012】
また、現像剤を保持するための現像スリーブと現像スリーブに押圧された層形成部材とを具備し、層形成された現像剤を感光体に現像し、前記感光体から被転写材に転写を行った後、クリーニングブレードで前記感光体のクリーニングを行う工程を含む画像形成方法において、前記現像剤が、酸価が3〜30mgKOH/gのバインダ樹脂と帯電制御剤とを含有してなる体積50%径D t50が5〜12μmであるトナー粒子と流動性向上剤と脂肪酸金属塩粒子とからなり、前記脂肪酸金属塩粒子は、その体積16%径、50%径及び84%径をそれぞれD s16、D s50及びD s84とするとき、以下の式(1)及び(2)を満足する負荷電性一成分現像剤であることを特徴とする画像形成方法に存する。
式(1) D s50/D t50≦0.5
式(2) D s84/D s16≦5
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるトナーは、粉砕法、重合法等で得られる。前記トナー構成成分のうち、バインダ樹脂としては、その酸価が3〜30mgKOH/gのものであり、酸価が3〜30mgKOH/gの樹脂としては、ビニル系共重合体またはポリエステル樹脂が好ましい。この酸価が3未満又は無しのバインダ樹脂を用いたトナーは特に画像濃度低下を引起しやすく、画像上好ましくない。逆に、30を超えると特に高湿下での吸湿が増大し、画像濃度低下や濃度ムラが顕著になるなどの問題が生じる。よって環境変化にも影響のない安定した画像品質を得るには前記の如く酸価が3〜30mgKOH/gであることが好ましい。ここで酸価とは樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を言う。
【0014】
粉砕法によるトナー粒子の場合には、溶融混練の原料樹脂として上記酸価の範囲にある樹脂を用いれば良く、重合法による場合には、単量体組成を上記酸価となる様に選択すれば良い。以下、粉砕法に即して説明する。ビニル系共重合体の例を述べる。酸価が上記範囲であるビニル系共重合体は、2種以上のビニル系モノマーとこれらビニル系モノマーと重合可能な酸とを共重合せしめて得られる。まず、重合可能な酸とは、構造式中に例えば二重結合等の重合可能な結合を有する公知の酸モノマーであればいずれであってもよいが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類、α−クロルアクリル酸、α−ブロムアクリル酸等の置換モノカルボン酸類、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸類、それらの無水物またはそれらのハーフエステル類等が挙げられる。
【0015】
本発明に用いられるビニル系モノマーとは、構造式中に式CH2 =CH−で表される重合可能なビニル結合を有するものである。このようなビニル系モノマーとしては、例えばスチレン、クロルスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのモノカルボン酸エステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルナフタリン類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデンなどのN−ビニル化合物などが挙げられ、これらの1種または2種以上がビニル系モノマーとして用いられる。
【0016】
これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体、スチレン−メタクリル系共重合体となるようなモノマーの組合せが好ましい。また、ジビニルベンゼン等の公知の架橋性モノマーで架橋された共重合体であってもよい。1種または2種以上の
ビニル系モノマーは重合可能な酸と共に溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などにより共重合される。このとき、共重合体が3〜30mgKOH/gの酸価を有するように配合比を定める。配合比は、用いるモノマーの種類及び数等により定まり、一律に定めることはできないが、合成された共重合体が3〜30mgKOH/gの酸価を有するように定めればよい。ポリエステル樹脂としては、多価アルコールと多塩基酸とからなり、必要に応じてこれら多価アルコール及び多塩基酸の少なくとも一方が3価以上の多官能性成分(架橋成分)を含有するモノマー組成物を重合することにより得られる。
【0017】
以上において、ポリエステル樹脂の合成に用いられる2価のアルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールAやポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどのビスフェノールAやそのアルキレンオキシド付加物、その他を挙げることができる。これらのモノマーのうち、特にビスフェノールAアルキレンオキシド付加物を主成分モノマーとして用いるのが好ましく、中でも一分子当たりのアルキレンオキシドの平均付加数が2〜7の付加物がより好ましい。
【0018】
ポリエステルの架橋化に関与する3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
一方、多塩基酸としては、例えばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル、またはn−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、その他の2価の有機酸を挙げることができる。
【0019】
ポリエステルの架橋化に関与する3価以上の多塩基酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、およびこれらの無水物。その他を挙げることができる。
これらのポリエステル樹脂は、通常の方法にて合成することができる。具体的には、反応温度(170〜250℃)、反応圧力(5mmHg〜常圧)などの条件をモノマーの反応性に応じて決め、所定の物性が得られた時点で反応を終了すればよい。
【0020】
本トナーに用いうる帯電制御剤は、負の帯電性を得るための負の帯電制御剤であり、例えば、特公平3−37183号公報、特公平2−16916号公報、特開昭61−155464号公報等に記載の含金属アゾ染料や特公昭55−42752号公報等に記載のサリチル酸類金属錯体などの含金属化合物が好ましい。中でも、クロム、鉄、コバルト等の金属を含む含金属アゾ染料が上記した酸価を有する樹脂への分散性が良好であり、安定した高帯電量が得られるので好ましい。上記した帯電制御剤の使用量は、前記バインダ樹脂100重量部に対して、通常0.1〜10重量部がよく、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲が望ましい。
【0021】
トナーを着色するための着色剤としては、従来から用いられるものであれば任意の適当な顔料や染料が使用できる。例えばカーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、紺青などの無機顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料などの有機顔料、アントラキノン染料、ローダミン染料等の染料などを単独または適宜混合して用いる。着色剤の含有量は、非磁性一成分トナーの場合には、現像により可視像を形成することができるようにトナーを着色するに充分な量であればよく、例えばバインダ樹脂100重量部に対して上記の着色剤3〜20重量部とするのが好ましい。なお、磁性一成分トナーの場合には、マグネタイト、γ−酸化鉄等に代表される磁性酸化鉄類や各種フェライト粉などの磁性を有する化合物を含有せしめるが、この場合、その添加量はバインダ樹脂100重量部に対して20〜200重量部とするのがよく、特には30〜120重量部とするのが望ましい。
このほか、熱特性や物理特性を改良する目的でトナー中に内添しうる助剤としては、公知のものが使用可能であるが、例えば、離型剤としてポリアルキレンワックス、パラフィンワックス、高級脂肪酸、脂肪酸アミド等が挙げられる。その添加量は、バインダ樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。
【0022】
粉砕法によるトナー粒子の製造方法の概略を以下に記す。
まず、トナーの構成材料であるバインダ樹脂、着色剤、帯電制御剤等を所定割合で配合して混合する。この際の装置としては、Vブレンダー、ボールミル等の重力落下式混合機やヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)等の高速流動式混合機等が使用される。
混合の後、混合物を溶融混練する。溶融混練工程で使用される装置としては、2本あるいは3本ロール、バンバリーミキサー、一軸あるいは二軸押し出し機等が挙げられる。この工程において、バインダ樹脂との相溶性を有する成分は樹脂と溶融し、また、バインダ樹脂との相溶性を有しない帯電制御剤等の成分は、溶融した樹脂に分散される。
【0023】
次に上記溶融混練物を冷却固化させた後、粗粉砕、微粉砕および分級の各工程を経てトナー粒子が製造される。粗粉砕にはハンマーミル、カッターミル等が、微粉砕には高速回転式微粉砕機等の機械式粉砕機や衝撃型ジェットミルや流動層式ジェットミル等のジェット粉砕機等が用いられ、分級には強制うず型遠心分級機や慣性分級機等が用いられる。
本発明の一成分現像剤に係わるトナー粒子は、粉砕・分級後にその体積50%径D t50が5〜12μmであれば、高画質の画像が得られるので好適である。5μm未満の場合、トナー飛散が激しく、得られる画像のカブリが悪化するので好ましくなく、また12μmを超える場合には得られる画像のシャープネスが低下する傾向を示すので好ましくない。
【0024】
脂肪酸金属塩の粒子径の測定は、レーザー回折式粒度分布測定システムHeros&Rodos(独SYMPATEC社製)で以下の条件で行う。
分散方式:流動式分散ユニット
分散空気圧:2bar
レンズ焦点距離:10mm
測定時間:3秒
トナー粒子の粒子径は、コールタカウンター(米Coulter社製)を用いて行う。
本発明の一成分現像剤は、これらのトナー粒子と流動性向上剤と脂肪酸金属塩粒子とから成る。
【0025】
本発明に係わるトナー粒子には流動性向上剤が外添される。流動性向上剤としては、例えばシリカ、アルミナ、チタニア等の無機酸化物類微粒子、ポリメチルメタクリレート、テフロン(登録商標)、シリコーン樹脂などの樹脂ビーズ類等が挙げられる。本発明においては、シリカ、アルミナ、チタニアの中から選ばれる少なくとも1種であるのがより好ましく、特にはシリカ微粒子であるのが望ましい。さらに、シリカ微粒子等の流動性向上剤の平均一次粒子径が5〜50nmであるのが好ましい。また、その形状としては、球形の粒子であるのが望ましい。本発明者等は、連続使用等の際、シリカ微粒子等の流動性向上剤の形状が球形であれば、不定形状で角張りがある場合に比べて、OPC感光体の表面を傷つけ難く、結果としてトナー粒子の付着・固着を誘発し難いことを見出した。本発明に係わるシリカ微粒子は、その製法が乾式法または湿式法いずれであってもよい。また、流動性向上剤の表面が疎水化処理されているものが望ましい。疎水化処理剤の具体例としてはヘキサメチルジシラザン、シリコンオイルが挙げられ、その中から選ばれる少なくとも一種の物質で疎水化処理されているのが好適である。一方、例えば、疎水化処理剤としてジメチルジクロルシラザンで処理されている場合、得られる流動性向上剤は、粗大な凝集物が残存しやすい傾向にあり、感光体傷を誘発する要因となるので好ましくない。本発明に係わるシリカ微粒子は、その粒子形状が球状であることが好ましいが、粒子形状確認には透過型電子顕微鏡を用いて、シリカ微粒子の一次粒子を観察すればよい。また、本発明において、これらのシリカ微粒子の形状は実質的に球状であればよいのであって、その形状に若干のゆがみがあっても、大多数の粒子表面が連続的な滑らかな曲面で形成されていてほぼ球状に近似できる場合には支障なく使用できる。なお、本発明の目的を損なわない限りにおいて、本発明の範囲以外の公知の他の流動性向上剤を併用してもよい。シリカ微粒子等の流動性向上剤のBET比表面積は、例えばフローソーブ2300(島津製作所社製)を用いて窒素吸着法により測定できる。
【0026】
本発明において、脂肪酸金属塩粒子の粒子径は以下の式(1)及び(2)を満足するものである。
(1) D s50/D t50≦0.5
(2) D s84/D s16≦5
ただし、式中、D t50はトナー粒子の体積50%径を表し、D s16、D s50及びD s84はそれぞれ脂肪酸金属塩粒子の体積16%径、50%径及び84%径を表す。
【0027】
従来から、脂肪酸金属塩は電子写真プロセスにおける接触摺擦工程(感光体とクリーニングブレード等)において、その減摩作用により摺擦をスムーズにして粒子の摩擦熱等による付着の防止に効果のあることが知られていた。本発明者らは、上記式(1)及び(2)を満たす特別な粒度分布を有する脂肪酸金属塩粒子を採用すれば、特に一成分現像剤において、上記の作用の他にトナー粒子の帯電性を高め、帯電量分布の逆極性部分を減らし、しかも帯電性の長期安定性も改善する作用があることを知得した。
【0028】
上記の粒子径及び粒度分布の測定は、前記した装置、条件で行うのが望ましい。
本発明に係わる脂肪酸金属塩粒子は、上記式(1)及び(2)で示されるように、粒子径が小粒径でしかもその粒度分布の範囲が狭いことを特徴とする。式(1)において、D s50/D t50の価が0.5を超えて大きい場合には、脂肪酸金属塩粒子が現像剤中から脱落して系外に飛散しやすくなり装置を汚染するばかりか、画像上の大粒状のカブリとして検出されるようになるので好ましくない。また、式(2)において、粒子の粒度分布の幅を表すD s84/D s16が5を超えて大きい場合には、現像剤の帯電性を長期にわたって安定に保つことが困難となり、画質の変動を抑制できない。好ましくはD s84/D s16≦4である。なお、脂肪酸金属塩粒子の粒度分布は一山分布であるのが望ましい。
【0029】
本発明に用いられる脂肪酸金属塩粒子の脂肪酸としては、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びモンタン酸等の一価の飽和脂肪酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等の多価の飽和脂肪酸、クロトン酸及びオレイン酸等の一価の不飽和脂肪酸、並びにマレイン酸及びシトラコン酸等の多価の不飽和脂肪酸を挙げることができ、本発明には8〜35個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪酸金属塩が好ましく使用できるが、特にステアリン酸金属塩が望ましい。金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、銅、ルビニウム、銀、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケルの塩及びその混合物を含むがこれらには制限されない。
上記した中でも、脂肪酸としてはステアリン酸がより望ましく、金属としては亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムの中から選ばれるものがより望ましい。その中でも、特にステアリン酸亜鉛を用いるのが最適である。
【0030】
トナー粒子への流動性向上剤及び脂肪酸金属塩粒子の添加の方法は、高速流動式混合機等を用いて外添するのが好ましい。また、必要に応じてこれらの添加剤を事前に個別あるいは混合して解砕して、粗大凝集物を除去してトナー粒子に外添してもよい。
これらの粒子の添加量は、トナー粒子100重量部に対して、脂肪酸金属塩粒子を0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜1重量部添加させ、流動性向上剤を0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜2重量部添加させるのがよい。
本発明に用いる一成分現像剤は磁性一成分方式または非磁性一成分方式のいずれであってもよい。また、モノカラー画像形成またはフルカラー画像形成に使用されるシアン、マゼンタ、イエロー等のカラー一成分現像剤として用いるのにも好適である。
【0031】
以下、図1〜2を例に本発明の画像形成方法を説明する。本図は非磁性一成分現像剤を用いる場合の例である。
本発明に用いられる現像スリーブ1は、通常、円柱状あるいは円筒状の形態の表面を現像剤を担持する表面として用いる。材質は弾性体、剛体どちらでもよいが、感光体と現像スリーブとが非磁性現像剤を介在して接触する、いわゆる接触現像方法においては弾性体を用いる方法が一般的である。また磁性現像剤を用いる場合は、マグネットを内包する金属製の剛体スリーブを用いるのが通例である。現像スリーブの表面は現像剤6の搬送性を上げる目的で適度な表面粗さを与えてもよい。またトナー粒子との適度な摩擦帯電が得られるような材質を考慮しなければならない。非磁性一成分接触型現像の場合、弾性体の現像スリーブの一般的な形態としては、導電性ゴムローラ(NBRゴム、シリコーンゴムなどに導電性粒子を分散含有させたものなど)を用いる。導電性ゴムの表面に誘電体層を設ける場合もある。
【0032】
本発明に用いられる現像剤層形成部材2は、角棒状の剛体、突起状の弾性体、板バネ状等のものの面や先端を利用するもの、ローラ、その他、あるいはそれらの複合型など各種が挙げられる。層形成部材2はそれ自身の弾性力あるいは現像スリーブ1の弾性力あるいは外部からの力あるいはそれらの複合力によって、現像スリーブ1に押圧されている。層形成部材2の電気特性については、絶縁性のもの、導電体のものに電圧を印加する場合、あるいは導電体ではあるが電気的にはどこにも接続されずにフロートになっているものなど各種であるが、絶縁体の場合や導電体でも電気的にフロートである場合、つまり層形成部材2と現像スリーブ1との間に電圧を印加しない場合には逆帯電トナーによるカブリが発生しやすく、そうした場合、本発明は顕著に効果を発揮する。現像スリーブ1を層形成部材2に対して摺るように相対移動させることにより現像剤粒子は押圧部を押し広げながら通過し、現像スリーブ1上に均一に塗布されて現像剤層を形成する。この押圧部の形態、圧力、組成、印加電圧によって、現像剤層厚、トナーの帯電量はコントロールされる。大局的には圧力が大きいほど塗布される現像剤層厚は薄く帯電量は高くなるが、形態、圧力、組成、印加電圧については複雑な物理、化学の現象となるので一概には議論できない。
【0033】
静電潜像を保持する感光体3は、その表面に静電荷分布による静電潜像パターンを形成する。感光体3がOPCの場合には、その一般的な形態はアルミなどの金属製の円筒または薄膜からなる導電性基材表面にポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等を含む有機感光材料を塗布して用いる。感光層の比誘電率は1〜5程度であり、層厚10〜50μm程度で使用されるのが一般的である。
画像形成の工程は、一般に用いられているゼログラフィーの原理に従い、コロナチャージャーや接触型のローラ方式やブラシ方式等の感光体帯電部材7によって均一帯電され、ランプやレーザー光等による露光の手順などを経て感光体3上に静電荷分布の潜像を形成する。このときの感光体3上の最大電位が、導電性基材を基準に絶対値で100〜1200V程度、より好ましくは300〜900V程度になるようにコントロールされる。
【0034】
一方、現像スリーブ1には前述のごとく、現像剤層形成部材2によって現像剤6を塗布する。現像スリーブ1と層形成部材2との間には、特に電圧をかけない場合、短絡して同電位とする場合、500V以下程度の電圧をかける場合などがある。
また、現像スリーブ1の相対的移動方向の現像剤層形成部材2より上流側に接触部材4を設けてもよい。接触部材4としては、現像剤6が自重と流動性によって現像スリーブ1に付着する力に加え積極的に現像剤6が現像スリーブ1に向かうものを用いる。例えば、スポンジ状やブラシ状の部材に現像剤6を含ませて現像スリーブ1に摺り付ける方法が用いられる。このときの摩擦を利用して現像剤6の摩擦帯電を促進してもよい。この接触部材4に導電性の材料を用いて、現像剤6が現像スリーブ1へ向かう静電気力を与えるように現像スリーブ1との間に電圧をかけてもよい。また一般的にはローラ状の現像スリーブ1が用いられるので、感光体3への現像を終えた残りの現像剤が付着した現像スリーブ1がこの接触部材4の部分に戻ってくるので清掃手段を兼ねさせることもできる。その効果を積極的に利用したい場合には、逆に現像剤6が現像スリーブ1から離れる方向に力が加わるように電圧をかけてもよい。また、清掃と供給を兼ねる場合は現像剤6の帯電を上げる目的で交番電界を印加してもよい。
【0035】
しかしながら、装置の低価格化を図る上では、現像スリーブ1と接触部材4との間に電圧を印加しない方法が好ましく、さらには接触部材4自体を使用しない方が好ましい。この場合には、トナー粒子の摩擦や電荷注入による帯電の機会が減少するため、画像中抜けやカブリなどの悪しき現象が発生しやすい。こうした場合に本発明は顕著な効果を発揮する。
また、図1〜2のような形態の現像器を用いる場合、現像スリーブ1の下方間隙より現像剤6が漏れる恐れがあるため、現像剤漏れシール部材5を付けることが一般的である。
【0036】
以上の工程により、現像剤層を形成した現像スリーブ1と潜像を形成した感光体3とを対向させ、現像剤6中の少なくともトナー粒子を移転させ潜像を顕像化する。
この際、飛翔現像等の非接触現像においては、50〜500μmの間隙を形成させ静電気力で移転させる。接触現像の場合は、現像剤層を介して押圧され、潜像パターンに見合ったトナー粒子が静電気力で転移される。トナーを転移させたい潜像電位と白地としたい潜像電位との間の電位に現像スリーブ1の電位を保つ方法が一般的である。
潜像パターンに転移したトナーは、通常の複写機やレーザープリンタの場合、転写部材8によって紙やフィルムなどの被転写材へさらに転写される。この転写工程においては、被転写材を感光体に接触させて、背面よりコロナ放電により電荷を与える方法や導電性の転写ローラを押圧し電圧を印加する方法などが一般的である。ローラ転写等の圧力を加える転写工程の場合、画像中抜けが発生しやすい。その場合、本発明は顕著に効果を発揮する。
【0037】
転写工程の後に、感光体上に残存する粒子の除去が感光体に当接するポリウレタン等のクリーニングブレード9での摺擦によって行われる。この際、OPC感光体を用いると、クリーニング不良や感光体表面の研磨傷、さらには感光体への粒子の付着・固着が置きやすく、そういった現象は画像上に致命的な欠陥として現れる。OPC感光体とブレードクリーニングを組合せて行った場合のこうした問題の発生機構としては以下のように推定される。すなわ、OPC感光体はその表面が高分子材料等を主体とするものである。このような高分子材料等は、第一にトナー粒子を介在するクリーニングブレードの押圧で弾性変形しやすい傾向にある。その場合はトナー粒子等のすり抜け現象を引き起こすのでクリーニング不良となって現れる。第二にその硬度が低いので粒子を介在するクリーニングブレードとの継続的な摺擦によって、その表面擦り傷、研磨傷がでやすく、また、それらの傷状欠陥にトナー粒子等が摩擦熱で擦り込まれて点状やフィルム状の融着現象が発生するために画像上の汚れとして検出されるものと考えられる。本発明はこのような現象に対して顕著な改良効果を発揮する。
さらに、被転写材上の現像剤像は、熱ロール方式等の熱定着機10を通過することによって、被転写材上に熱融着して、固定化される。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、単に「部」とあるのはいずれも「重量部」を表す。
【0039】
<実施例1>
ビニル系共重合体樹脂の製造法
攪拌装置、窒素吹き込み管、温度計、還流用冷却管及び滴下ロートが備えられた4口フラスコに、トルエン300mlを加えその中にアゾビスイソブチロニトリルを3g加える。スチレン120g、メチルメタクリレート60g、イソブチルメタクリレート120g及びメタクリル酸8gからなる初期反応化合物を4口フラスコの1つの口から一定の滴下速度で滴下し、トルエンの還流温度(111℃)で攪拌しながら重合する。滴下開始から重合終了まで5.5時間を要した。重合終了後溶剤を除去し、真空乾燥後求める共重合体を得た。この共重合体のガラス転移点は58℃であり、酸価は17mgKOH/gであった。
【0040】
前記製造法に準じて得られた樹脂を用いて以下に示す配合比により非磁性一成分現像剤を得た。
前記記載の樹脂 100部
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料 3部
(ボントロンS−34、オリエント化学社製)
着色剤 6部
(三菱カーボンブラックMA−100、三菱化学社製)
低分子量ポリプロピレン 2部
(ビスコール550P、三洋化成社製)
製造は、上記の原材料を高速流動式混合機で混合し、2軸押し出し機で溶融混練した後、ハンマーミルで粗粉砕し、機械式粉砕機クリプトロン(川崎重工社製)で微粉砕した後、ジグザグ分級機(アルピネ社製)で分級した。トナー粒子の平均粒径D t50は8.7μmであった。このトナー粒子100部に対して、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理された平均一次粒子径約10nmのシリカ微粒子1.0部と平均粒径D s50が2.8μm、D s84/D s16が2.7であるステアリン酸亜鉛粒子0.3部とを高速流動式混合機で外添して、一成分現像剤を作製した。
【0041】
実写評価装置として、市販の非磁性一成分現像方式を採用したプリンターを用いた。このプリンターの感光体は、表面層にポリカーボネート樹脂が含有される直径24mmφのドラム状の積層型OPCであり、クリーニング部材としてウレタンゴムのクリーニングブレードが感光体に接触押圧されている。また、現像装置は導電剤が含有されたゴム性の現像スリーブに対して、金属製のブレード(現像剤層形成部材)が押し当てられている。一方、定着機は熱ローラ方式であり、上ローラ(トナー接触面)がフッ素系樹脂で表面が形成され、下ローラはシリコーン樹脂で表面が形成されており、上ローラには定着ランプが内蔵されていてローラ表面を約175℃に制御している。
上記の現像装置に、約20000枚の通紙印字が可能となるよう前記一成分現像剤を一定量供給する。
【0042】
評価方法は、上記プリンターを温度25℃、相対湿度55%の常温常湿雰囲気に設置し、連続実写により行う。その結果、評価結果は優秀であり、20000枚の実写を通じて、画像中抜け、画像濃度、カブリ等の画質は優秀であり、トナー飛散も問題なく良好であった。また、OPC上でのクリーニング不良や現像剤粒子等の融着現象が見られず、耐久性も充分であった。定着後の画像剥離もなく定着性は良好であり、オフセット現象も発生しなかった。
一方、本現像剤及びプリンターを温度35℃、相対湿度85%の高温高湿条件に持ち込み、同様の連続実写を行ったが、常温常湿環境での結果とほぼ同等の結果を得た。
さらに、本現像剤及びプリンターを温度10℃、相対湿度20%の低温低湿条件に持ち込み、同様の連続実写を行ったが、常温常湿環境での結果とほぼ同等の結果を得た。
【0043】
<実施例2>
実施例1のトナー処方においてトナー粒子の平均粒径D t50を6.8μmとする以外は実施例1で用いたのと同じシリカ微粒子とステアリン酸亜鉛粒子とを同様に外添して一成分現像剤を作製した。実写装置及び方法は実施例1と同様として行った。
その結果、常温常湿、高温高湿及び低温低湿の各環境下において実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0044】
<実施例3>
実施例1で作製したトナー粒子を用い、このトナー100部に対して、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理された平均一次粒子径約30nmのシリカ微粒子と、平均粒径D s50が4.0μm、D s84/D s16が3.8であるステアリン酸亜鉛粒子とを外添する以外は、実施例1と同様にして一成分現像剤を作製した。実写装置及び方法は実施例1と同様にして行った。
その結果、常温常湿、高温高湿及び低温低湿の各環境下において実施例1と同様に良好な結果が得られた。定着性についても実施例1と同様な結果であり、オフセット等も見られなかった。
【0045】
<実施例4>
実施例1で用いたトナー粒子100部に対して、実施例1で用いたステアリン酸亜鉛粒子0.3部とシリコーンオイルで疎水化処理された平均一次粒子径約10nmのシリカ微粒子1.0部とを添加する以外は実施例1と全く同様にして一成分現像剤を作製した。実写装置及び方法は実施例1と同様にして行った。
その結果、常温常湿、高温高湿及び低温低湿の各環境のいずれも、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0046】
<実施例5>
スチレン系樹脂 100部
(モノマー重量比:スチレン/n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸=74/25/1、酸価:7mgKOH/g)
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料 2部
(ボントロンS−34、オリエント化学社製)
磁性粉 70部
(EPT−1000、戸田工業社製)
低分子量ポリプロピレン 2部
(ビスコール550P、三洋化成社製)
製造は、上記の原料を高速流動式混合機で混合し、2軸押し出し機で溶融混練した後、ハンマーミルで粗粉砕し、機械式粉砕機クリプトロン(川崎重工社製)で微粉砕した後、ジグザグ分級機(アルピネ社製)で分級した。トナー粒子の平均粒径D t50は8.9μmであった。このトナー粒子100部に対して、平均粒径D s50が2.9μm、D s84/D s16が2.7であるステアリン酸亜鉛粒子を0.3部とヘキサメチルジシラザンで疎水化処理された平均一次粒子径約10nmのシリカ微粒子1.0部とを高速流動式混合機で外添して、一成分現像剤を作製した。
【0047】
実写装置として、市販の磁性一成分現像方式を採用したプリンターを改造して用いた。このプリンターの感光体は、表面層にポリカーボネート樹脂が含有される直径約30mmφのドラム状の積層型OPCであり、クリーニング部材としてウレタンゴムのクリーニングブレードが感光体に接触押圧されている。また、現像装置はマグネットが内包されたステンレス製の現像スリーブに対して、ウレタンゴム製のブレード(現像剤層形成部材)が押し当てられている。約20000枚の印字が可能となるように前記一成分現像剤をこの現像装置に一定量供給する。以下の評価方法は、前記実施例とほぼ同様に行った。
その結果、常温常湿環境下での評価結果は優秀であり、20000枚の連続実写を通じて、画像中抜け、画像濃度、カブリ等の画質は優秀であり、トナー飛散も問題なく良好であった。また、OPC上でのクリーニング不良や現像剤粒子等の融着現象が見られず、耐久性も充分であった。
また、高温高湿条件での実写においては、実用上さほど問題ない程度の画像濃度の若干の低下が見られた他は、常温常湿環境での結果とほぼ同等の結果を得た。さらに、低温低湿条件での実写においても、常温常湿での結果とほぼ同等の結果を得た。
【0050】
<比較例1>
実施例1のトナー処方において、スチレン系樹脂の酸価を2mgKOH/gにした樹脂100部に変更する以外は、実施例1と同じ原料配合比と製造方法で平均粒径D t50が8.9μmのトナー粒子を得た。更に、実施例1で用いたのと同じシリカ微粒子とステアリン酸亜鉛粒子とを同様に外添して一成分現像剤を作製した。実写装置及び方法は実施例1と同様にして行った。
その結果、常温常湿環境では20000枚の連続通紙において5000枚付近より、印字濃度が低下する傾向が見られ、10000枚以降ではがさついた濃度ムラとなる画像となった。更に高温高湿下では特に放置後の画像濃度低下の傾向が見られた。低温低湿下では、放置後の画像濃度低下は見られないが、常温常湿下より画像濃度は低下した。
又、定着特性としてはテープ剥離が実施例1のトナーよりやや劣ることが確認された。
【0051】
<比較例2>
実施例1のトナー処方において、スチレン樹脂の酸価を40mgKOH/gの樹脂100部に変更する以外は、実施例1と同じ原料配合比と製造方法でトナー粒子を得た。トナー粒子の平均粒径D t50は8.8μmであった。
次に、実施例1で用いたのと同じ球状シリカ微粒子とステアリン酸亜鉛粒子とを同様に外添して一成分現像剤を作製した。実写装置及び方法は実施例1と同様にして行った。
その結果、常温常湿環境ではライフとともに画像濃度が低下する傾向が見られた。又黒ベタの均一性が悪く、がさつきのある画像となった。更に高温高湿環境下では画像濃度の低下が一層顕著になった。低温低湿環境では高温高湿程度までは画像濃度は低下しないが、常温常湿よりは画像濃度が低目であった。
【0052】
<比較例3>
実施例1で作製したトナー粒子を用い、このトナー粒子100部に対して、実施例1で用いたシリカ微粒子1.0部と平均粒径D s50が3.0μm、D s84/D s16が6.23であるステアリン酸亜鉛粒子0.3部とを添加する以外は、実施例1と同様にして一成分現像剤を作製した。
以下、実写評価は実写装置及び方法とも実施例1と同様にして行った。
その結果、実写初期では良好な画質が得られたが、約5000枚以降画像濃度の低下が見られるようになり、画質上問題があった。
【0053】
【発明の効果】
本発明の負荷電性一成分現像剤及びそれを用いる画像形成方法により、以下の効果が得られるので、その工業的利用価値は高い。
(1)画像の中抜けがない良好な画質が得られる。
(2)画像濃度が高くてカブリが少なく、シャープネスに優れた良好な画質が得られる。
(3)トナー飛散がない。
(4)OPC感光体への現像剤の固着や融着現象による汚染がない。
(5)各種の温度及び湿度の組合せ環境条件下でも画質変化が少ない。
(6)長期あるいは連続使用時においても画像濃度や画質劣化が少なく耐久性、信頼性が高い。
(7)少ないトナー消費量で充分な画質が得られる。
(8)低エネルギーで定着でき、しかもオフセット現象による定着機汚染や画像汚染がない。
(9)環境特性に優れ特に高温高湿下での数時間放置直後においても画像濃度低下がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用できる画像形成方法の一例を示す図。
【図2】本発明に使用できる画像形成方法の一例を示す図。
【符号の説明】
1 現像スリーブ
2 現像剤層形成部材
3 感光体
4 接触部材
5 現像剤漏れ防止シール部材
6 一成分現像剤
7 感光体帯電部材
8 転写部材
9 クリーニング部材
10 熱定着機
Claims (4)
- 2種以上のビニル系モノマーとこれらビニル系モノマーと重合可能な酸と共重合せしめて得られる、酸価が3〜30mgKOH/gであるスチレン系バインダ樹脂と着色剤または磁性粉とを含有してなる体積50%径D t50が5〜12μmであるトナー粒子と流動性向上剤と脂肪酸金属塩粒子とからなり、前記脂肪酸金属塩粒子は、その体積16%径、50%径及び84%径をそれぞれD s16、D s50及びD s84とするとき、以下の式(1)及び(2)を満足するものであることを特徴とする一成分現像剤。
式(1) D s50/D t50≦0.5
式(2) D s84/D s16≦5 - 前記脂肪酸金属塩粒子がステアリン酸金属塩粒子であることを特徴とする請求項1に記載の一成分現像剤。
- 前記流動性向上剤が球状の粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の一成分現像剤。
- 現像剤を保持するための現像スリーブと現像スリーブに押圧された層形成部材とを具備し、層形成された現像剤を感光体に現像し、前記感光体から被転写材に転写を行った後、クリーニングブレードで前記感光体のクリーニングを行う工程を含む画像形成方法において、前記現像剤が請求項1乃至3のいずれかに記載の一成分現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
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