JP3605706B2 - 音響信号再生方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する利用分野】
この発明は、各種の音響機器の音響信号再生方法及び装置に関するものであり、特に高音域の再生音質を改良する方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
音響信号には、音源としてコンパクトカセット、レコードなどの媒体にアナログで記録したもの、コンパクトディスク(CD)、ミニディスク(MD)、ディジタルコンパクトカセット(DCC)、ディジタルオーディオテープ(DAT)、レーザディスク(LD)などの媒体にディジタル記録させたもの、さらにはFM放送、BS、CSなど電波を媒体としたものなどがあり、これらの音響信号は、増幅器などを経由してスピーカ、イヤホンなどの電気音響変換素子を通じて再生が行われる。また、電子楽器のようにキーボードなどの入力手段を通じて入力した音情報を、デジタル信号に変えて増幅したのち、電気音響変換素子を通じて再生するものもある。
【0003】
従来から、再生される音響がいかに原音に忠実であるかが音響信号再生技術の大きな課題となっている。人の可聴周波数帯はおよそ20Hz〜20kHzと言われており、音響再生機器の周波数特性もこれに対応して規格化され、設計が行われている。しかし、従来のアナログ音響機器では、原音を忠実に再生するために再生周波数帯を広げようとすると、増幅器や電気音響変換素子の設計が困難かつ高価になってしまうという問題がある。また、テープなどの記録媒体自体の特性による制限や電波の割当周波数などの点から制限を受けてしまう場合もある。
【0004】
一方、近年の音響再生技術の主流であるディジタル音響機器は、媒体を繰り返し使用しても、また音響信号の伝達経路においても音響情報の劣化がないことから、高い忠実度で音響信号を記録および再生できることを長所としている。
【0005】
CDなどのディジタル音響機器が出始めたときは、これらのディジタル音響機器は、人の可聴周波数帯域や音楽のダイナミックレンジを十分にカバーして規格化されており、スタジオの音質がそのまま家庭に届くという売り込みがなされ、ディジタル音響機器の出現によって音響信号を再生する際の忠実度は相当高い水準まで満足できるように思われていた。しかし、ディジタル方式の音響情報記録では、サンプリング周波数や量子化ビット数により周波数帯域やダイナミックレンジが制限されるため、ディジタル化した後の音響情報は元々持っていた音響情報のなにがしかを捨てることになる。これは、例え雑音に隠されたり、歪みを伴っていても元の情報が残っているアナログ記録と本質的に異なる点である。
【0006】
このようなディジタル機器の持つ本質的な性質に起因する音響信号の欠落は、高い忠実度で音響信号を再生するという観点からは不満を残している。その後の研究でローレベルでの分解能をもっと改善する必要があるとか、もっと高い周波数まで記録すると音質が良くなることがわかり、ハイビットや、ハイサンプリング周波数を用いた情報記録も試みられている。また、原理的にローレベルでのリニアリティに優れている1ビットで1.96MHzといったより伝送速度の高いものも検討されている。いずれにしても、ディジタル機器ではこのような問題点に加えて、D/A変換後は上述したアナログ機器の持つ問題点も加わることになり、ディジタル機器による音響再生技術においても、聴覚的には未だに不十分であることは否めないのが現状である。
【0007】
このように、現状の音響再生装置が聴覚的に不十分であるとの認識の背景には、人の聴覚細胞は、単に可聴周波数帯域と呼ばれる範囲にある音響信号のみならず90kHzという高い周波数にも反応するということが最近言われ始めているということがある。すなわち、いわゆる可聴周波数帯域の上限である20kHzを越える領域の音についても、人はこれを感じることができると考えられてきているからである。
【0008】
今、ディジタル音響機器を例にとって考えてみると、ディジタル音響機器における高域の周波数特性はサンプリング周波数により制限されてしまう。たとえばCDのサンプリング周波数は44.1kHzであり、このサンプリング周波数で再生可能な高域側上限は、ほぼその2.2分の1である20kHzである。従って、再生される音響信号のスペクトルは20kHzを境に切捨てられた形になる。しかし、上述したとおり、人は20kHz以上の高音域の音も感じることができるので、このような高音領域が欠落している信号を再生しても、原音響信号に忠実で、人間の聴覚を満足させるような音響信号を再生することはできないと言える。
【0009】
図1は上に述べたCDの再生状態を示したグラフである。図1の(a)は、自然な音楽信号のスペクトルで20kHzを越える周波数成分が含まれている。これに対し、図1(b)は、CDにディジタル記憶された音響信号の再生音のスペクトルであり、20kHzを境に周波数特性が急峻に低下している。すなわち、実質的に20kHzを越える周波数帯のスペクトルを持っていないといえる。従来からこの切捨てられた部分を再現すればより良い再生音質が得られるであろうという予想はあった。しかし、一旦、ディジタル化により切捨てられてしまった情報をそのまま元に戻すことは無理か極めて困難である。
【0010】
また、アナログ音響機器では、ディジタル機器のように高音域が切り捨てられることはないにしても、実質的には20kHzを越える帯域での再生特性は減衰しておりやはり原音を十分に再生することは困難である。従って、聴覚を満足させる再生音を得るためには、アナログ機器においても、ディジタル機器と同様に何らかの形で高音域の補完が必要であると言える。
【0011】
従来から高音域の再生音質を改善するためにディジタル機器のカットオフ周波数を超える周波数成分を持つ高音域信号を生成し付加する手段が、例えば、特開平2−68773号公報『オーディオ信号再生装置』に開示されている。
【0012】
この従来の装置は、人は可聴帯域を越える周波数帯については楽音として判別するよりもむしろエネルギー成分として影響を受けるとの知見に基づき、エネルギー成分の付加を行うようにしたもので、信号成分として容易に得ることができるノイズ等を付加することを示唆している。付加する高音域の信号は、必ずしも原音響信号の高音域の楽音信号のままでなくともよく、切り捨てた帯域、あるいは再生特性が急激に減衰してしまった帯域と、ほぼ同じ周波数帯域で同等のスペクトルを持つノイズ信号を付加した場合であってもそれなりの成果が得られることがこの先行技術に示唆されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したとおり、人の聴覚細胞は前述したように90kHzにも反応すると言われており、いわゆる可聴周波数帯域と言われる周波数の範囲を超える領域について、付加する高音域の信号成分のスペクトルや付加の方法によって聴覚上の差異が出てくることが本発明者の研究によって判明した。また、ノイズにも様々のものがあり、付加するノイズの種類や付加の方法の違いが再生音質に大きな影響を与える。
【0014】
更に、可聴帯域の音響情報と密接に関係するエネルギー成分を付加することもより自然な再生音質を得るためには必要と考えられる。
【0015】
更に、例えば各種の楽器類の再生音を考えた場合、その音質はそれぞれの次数の高調波成分の分布から楽器固有の音質が形成され、この高調波成分には可聴帯域の上限を越えるものも含まれている。また、楽器を演奏するときに生じる、叩いたり、擦ったり、吹き付けたりする音やこれに類似する音も可聴帯域を越える成分を非常に多く含んでいる。したがって、単に高調波成分のみを付加したのでは、楽器の種類等により高調波成分の含まれ方が異なり、かえって高域での再生音質のバランスを崩してしまうおそれもある。
【0016】
そこでこの発明は、音響信号の再生時に周波数特性のスペクトルが高域で極端に低減するか(アナログ機器)もしくは欠落してしまっている(デジタル機器)という不自然さをなくすために、低減もしくは欠落したスペクトル成分に近似する信号成分を原音響信号に付加して、音響機器における音響信号の再生音、特に高音域の再生音質の向上を図り、人間の耳に快適な音響信号を再生することができる音響信号再生方法及び装置を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本願の第1発明では、再生時に低減もしくは欠落したスペクトル成分に近似するスペクトルをもつノイズ成分を原音響信号に付加し、この付加するノイズ成分の種類や付加の手段に工夫を与えることで優れた再生音質を得るようにしている。
【0018】
すなわち、本願第1発明は、音響信号を分析してみた結果、高域の信号成分は物を叩いたり、擦ったり、吹き付けたりといった要因から発生するものが多く、これらの音の性質はランダムノイズに近いものとなっていることから、原音響信号に付加する信号としてランダムかもしくはランダムノイズに類似したノイズ成分を用いることを特徴としている。
【0019】
本発明で、原音響信号に付加する信号は、各周波数成分をランダムに含む信号であれば特に限定されるものではないが、一般に一番得やすいものはノイズと言える。そこで各種のノイズ発生器、ノイズ発生回路を付加するランダムノイズの信号源として用い、この信号源からの出力から、再生周波数帯の高音域上限かまたは可聴周波数帯の高音域上限を越える周波数帯域の出力を、フィルタ手段等を用いて選択して、これを原音響信号に付加するようにした。ただし、ここで、”ランダム”とは厳密な意味合いでランダムに分布していることを要するものでなく、各種の人為的に生成される擬似的にランダムと言われる信号であって良いことは言うまでもない。
【0020】
なお、本明細書でいう可聴周波数帯とは、サインウエーブを用いて測定した人間の耳で音として聴くことができる周波数帯をいい、その値は約16Hz−20kHzである。サインウエーブを用いて測定した可聴周波数帯の上限はおよそ20kHzであるが、上述の通り、昨今の研究によると、音楽信号のスペクトルでは、およそ90kHz程度の高い周波数まで人は感じることができると言われており、本発明者の実験でもこのことが確認されている。
【0021】
本願の第2の発明は、音響信号の再生において、当該音響信号の高調波成分であって、音響信号の再生周波数帯の高音域上限かまたは可聴周波数帯の高音域上限を越える高調波成分と、再生周波数帯の高音域上限かまたは可聴周波数帯の高音域上限を越える周波数帯域のスペクトルを持つノイズ成分とを、原音響信号に付加して再生を行うことを特徴としている。なお、付加するノイズ成分に、ノイズ発生器等からフィルタ手段によって、再生周波数帯の高音域上限かまたは可聴周波数帯の高音域上限を越える周波数帯域のスペクトルを持つノイズ成分を選択したものを用いること、及び”ランダム”の意味が擬似的にランダムと言われる信号であって良いことは第1発明と同様である。
【0022】
このように、本願第2発明では、従来切り捨てられるか(デジタル再生装置)、極端に減衰していた(アナログ再生装置)、可聴帯域の高音域上限を越える帯域の音響信号に代えて、原音響信号の高調波成分と原音響信号とは別の信号源から得られたランダムノイズ成分との双方を、原音響信号に付加することによって、上述した音響機器における信号再生の問題を解決して、より一層自然な再生音質を得るようにしている。
【0023】
本願発明の好適な実施例では、ノイズ成分を、元の音響信号成分の特定の周波数帯の出力に連動させて、ダイナミックに付加するようにしている。
【0024】
原音響信号のスペクトルは、可聴周波数帯域の高音域側のスペクトルとこれを越える領域のスペクトルとの間は、図1(a)に示すように、連続性があるものと考えられる。そこで原音響信号の高音域の周波数帯を選択して、この出力のレベルの変動に応じて、原音響信号に付加するノイズ成分のレベルをダイナミックに調整すれば再生の自然さが得られるとの知見に基づくものである。
【0025】
ここで、元の音響信号成分の特定の高音域の周波数帯とは、スペクトルの連続性からしても、付加する信号の下限周波数すなわち20kHz近傍の周波数帯を選択することが好ましく、6kHz〜20kHz程度が適している。もちろん20kHz以上の周波数帯まで出力されるアナログ音響機器では、あえて20kHzで高域をカットすることなく、6kHz以上を通過させるハイパスフィルターを通じた出力に連動させてノイズ成分を付加するようにしても良い。
【0026】
また付加するノイズ成分のダイナミクスも、単純に特定の周波数帯の出力に比例させて付加したり、あるいは、特定の非直線性をもって付加するなど各種の方法を選択することができる。これは使用する音響機器の再生特性や試聴などにより適宜に決めればよい。
【0027】
また本発明の更なる好適な実施例では、前述の、原音響信号の高音域の出力に、所定の時間遅れを生じさせ、この時間遅れが生じた出力を、原音響信号に付加するノイズ成分(あるいはノイズ成分と高調波成分)の出力レベルを制御するレベルコントロール信号として用いるように構成した。
【0028】
これは、本発明者が数々の実験の結果、原音響信号の特定の周波数帯の出力レベルの変動を原音響信号に付加するノイズ成分のレベルコントロール信号として用いるとき、時間遅れを発生させて用いることで良好な再生音質が得られ、この時間遅れが再生音質に大きな影響を及ぼすことを見いだしたことによる。具体的には、ある特定の範囲の時定数を持つ時定数回路を通した信号に基づいて、付加するノイズ成分のレベルを調整することで、音質的に人の聴感を満足させられることが試聴を繰り返した結果確認された。好ましい時定数の範囲は概ね2.2mS付近であり、好ましくは、2.2mS±40%の範囲であった。この範囲を越えて時定数が短くなると再生音質が騒がしくなり、時定数を長くすると粘っこいようなすっきりしない再生音質になることが見出された。
【0029】
また、本願発明では、ランダムノイズもしくはこれに類似するノイズの信号源として、熱雑音を用いることが好ましい。
【0030】
通常、ランダムノイズを発生させる手段としては、ノイズレベルが高く、増幅段が少なくて済むため、ツェナーダイオードを用いるのが一般的である。しかし、試聴テストを行った結果、熱雑音を音源としたランダムノイズの方が、ツェナーダイオードを用いたランダムノイズにくらべると、同じスペクトルを持つにもかかわらず、音の粒立ちが細かいという好結果が得られた。
【0031】
これは、ツェナーダイオードでも、熱雑音でも、ノイズ源は何れも電子であるが、ツェナーダイオードではノイズがアバラーシェ効果による電子の集団的な雪崩現象によって得られるため、音の粒立ちが荒くなるが、一方、熱雑音は、抵抗体内部の電子の熱運動のゆらぎによって発生するため、原理的にノイズがランダムで均一に発生するために音の粒立ちが細かくなると考えられるためである。なお、熱雑音は、必ずしも実際の抵抗素子から得られるものでなくとも、トランジスタ内部のベース抵抗や、FET内部のチャネル抵抗から得られるものであってもよい。
【0032】
更に、原音響信号に付加するランダムノイズは、ピンクノイズ、あるいはピンクノイズに類似したノイズ成分であることが好ましい。ピンクノイズは、自然に発生しないため、ノイズ信号の信号源として用いる熱雑音(ホワイトノイズ)の高域成分を少しずつ落として生成する。可聴周波数帯域を単にカットしただけのホワイトノイズを原音響信号に加えた場合と、ホワイトノイズをピンクノイズに加工したものを原音響信号に加えた場合とを試聴により比較してみると、前者の場合、音が細くかつ鋭くなり、後者、すなわちピンクノイズを加えた場合のほうが、ナチュラルな音に近い再生音が得られるという結果が出た。これは、ホワイトノイズがフラットな周波数特性を持っているのに対して、ピンクノイズはなだらかな右下がりの周波数特性を持っており、より原音響信号の特性に近いと考えられるためである。
【0033】
なお、原音響信号に付加するノイズ成分は、可聴周波数帯域、すなわち20kHz以下の成分はなるべく含まないことが好ましい。従って、本発明の好適な実施例では、可聴周波数帯域の上限を越える信号を通過させるフィルタに、高次フィルタを用いて、20kHz以下のノイズ成分を積極的にカットするようにしている。試聴の結果、使用するフィルタの次数が高ければ高いほど、再生音響信号にノイズが少なくなり、にごりのないクリアな再生音を得られることが分った。
【0034】
なお、本願発明では、ノイズ成分の発生源を音響機器の再生回路のチャンネル毎に、個々に独立して設けることが好ましい。
【0035】
音響再生機器は、通常はステレオシステムの2チャンネル構成であり、更にはサラウンドシステム等で多数のマルチチャンネルを構成する場合がある。いずれにしても、複数のチャンネルに対し付加すべきランダムノイズを単一の信号源から得てこれを分配することは、回路構成の簡略化という観点からは推奨され得る。しかし独立分離してノイズ源を設置した装置と比較試聴すると、独立分離したものの方が聴覚的に自然な広がりや臨場感が得られることがわかった。
【0036】
これは、自然音を考えた場合、20kHzを越えるような周波数帯域では、その位相が音響的な反射によって乱れてしまい、左右のチャンネルの位相の関連性がなくなり易くなってしまうため、本発明のようにノイズ源を独立分離して設置することが、自然な音により近い再生音を得られると考えられるからである。
【0037】
更に、本発明の他の好適な実施例では、原音響信号に付加する信号(ランダムノイズ成分、あるいは原音響信号の高調波成分とランダムノイズ信号)を、コンデンサを介して付加するようにしている。
【0038】
これはコンデンサを介してランダムノイズ、あるいは高調波成分とランダムノイズを付加すると、付加信号を原音響信号の回路と直流的に切り離すことになるため、付加信号の出力が原音響信号回路のバッファアンプの負荷になることが軽減され、中域、低域での聴覚上の抑圧感を低減させることができるからである。挿入するコンデンサには特に指定はないが、少なくとも付加される信号である20kHzを越える帯域の信号の通過に実質的に影響が及ばない範囲のインピーダンスを持つものであればよい。
【0039】
上述した本願発明の構成により以下のような作用が得られる。
まず本願第1発明では、アナログ音響機器では再生出力が極度に減衰する領域である可聴周波数帯を越える高音域、ディジタル音響機器では再生出力がサンプリング周波数によって規制される特定の周波数の上限を越える帯域において生じる周波数特性の欠落に起因する再生音質の不自然さを、音響信号に類似的なスペクトルを持つ異なる信号源から得たノイズ成分を原音響信号に付加することによって取り除き、再生信号のスペクトルを本来の音響信号の持つスペクトルに近似させて、聴感上の自然さを得ている。
【0040】
図2は、本発明の原理を説明したもので、本発明を適用した音響信号再生方法で再生した音響信号のスペクトルを示している。本来の楽音等の音響信号は、図のAおよびBの双方の領域にわたる周波数成分を持ち、音の大小によって図中の斜線部分の領域を変動する。ところがCDなどのディジタル音響機器による再生では、高域側が20kHzで切り落とされ図のAの領域のみ再生スペクトルとなってしまう。また、アナログ音響機器においても、可聴周波数の上限である20kHzを越える領域では、再生出力が減衰してしまう。
【0041】
そこでこの発明では、例えばノイズ発生器等の出力に適当なフィルタリングを施して、Bの領域にあたる周波数帯域の音響信号を原音響信号とは別個に作成しておき、原音響信号に図中のBの領域の斜線部分の範囲を付加することによって本来の音響信号が持つスペクトル帯と近似の再生状態を再現して音質を向上させている。
【0042】
更に、本願第2発明では、アナログ音響機器の可聴周波数帯を越える高音域における再生出力の著しい減衰や、ディジタル音響機器の再生出力がサンプリング周波数によって規制される特定の周波数の上限を越える帯域における周波数特性の欠落に起因する再生音質の不自然さを、本来の再生音響信号に含まれる高調波成分と、音響信号と異なる信号源から得た可聴周波数を超える帯域のノイズ成分との双方を付加することによって、本来の音響信号のスペクトルにより近似した再生音響信号を得るようにしている。このように構成することによって、高調波成分のみを付加した場合やノイズ成分のみを付加した場合よりも、更に本来の音響信号の持つスペクトルに近似させ、より自然な聴感上の再生音質を得ることができる。
【0043】
また、本願発明では、原音響信号に付加する信号のレベルを、原音響信号のうち、例えば6kHz〜20kHzの領域の出力の変動にダイナミックに対応させて変動させることによって、本来の音響信号により近い音を再現するようにしている。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図3は、本発明にかかる音響再生装置の第一実施形態の構成を示すブロック図である。
図3は、アナログ音響再生装置の出力回路部分、あるいは、ディジタル音響再生装置のD/A変換後の出力回路部分に、本願第一発明の装置を適用した場合を示している。音響信号は入力端子9からバッファアンプ1に入った後、分岐されて一方はそのまま出力端子10側に接続され、他方はハイパスもしくはバンドパスフィルター2に入力される。フィルタ2を介して音響信号のうちの特定の帯域の信号を通過させた後、この信号を適当なレベルまで増幅器3により増幅し、検波回路4によって検波する。この信号を時定数回路5を介して乗算回路8に入力して、原音響信号に付加するノイズ成分のレベルを調整するレベルコントロール信号として用いる。
【0045】
一方、原音響信号に付加するノイズ成分は、ランダムノイズ発生器6の出力から得る。ノイズ発生器6の出力は、ハイパス又はバンドパスフィルター回路7を通して20kHz以上の周波数帯域を通過させ、これを乗算回路8に入力して、前記レベルコントロール信号に掛合わされた後、原音響信号に付加するようにする。従って、ランダムノイズ発生器6の出力は、原音響信号の高域音の出力レベルに比例した信号として原音響信号に付加され、出力端子10より取り出される。この付加信号の高域側には特に制限はないが、無意味に高い周波数帯までノイズ成分を含ませても、別異のトラブルを発生しかねないので、概ね100kHz程度までの帯域をカバーしていればよい。このようにしてノイズ成分が付加された音響信号は出力端子10から適当な増幅器等を経てスピーカ、イヤホーン等の電気音響変換器に供給され音楽等の再生がなされる。
【0046】
図4は、図3で示されたブロック図の具体的な回路例を示したものであり、図3に示されたブロックと同様に機能する要素には同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
この回路はディジタル音響機器ではD/A変換回路の後段に、アナログ機器では例えば増幅器の電力増幅段の手前などに設置される。
図4において、原音響信号は入力端子9から入力され、バッファアンプ1を通じて増幅される。バッファアンプ1の出力の一部は出力端子10に接続され、一部はハイパスフィルター回路2に導かれる。このハイパスフィルター2のカットオフ周波数はおよそ6kHzである。
フィルター回路2によって選択された6kHz〜20kHzの帯域の音響信号は、検波器4で検波がなされた後、時定数回路5を介して、乗算回路8に送られて、原音響信号に付加するランダムノイズ成分のレベルコントロール信号として用いられる。
【0047】
このとき、時定数回路5の時定数を、回路を構成するコンデンサ12と抵抗13の値を所定の値に選択することで、付加するノイズ成分を聴感に適合させて、音質改善の効果を高めることができる。実際の試聴では、C=0.047μF、R=47kΩの場合で、時定数2.2mSの近傍が優れた再生音質が得られることが判明した。その後CとRを変えながら試聴により好ましい範囲を調べた結果、好ましい範囲は2.2mS±40%の範囲であった。なお、この実施形態では一段のCR素子で所望の時定数を得ているが、時定数回路はこの形態に限定されるものではなく、実質的に同程度の時間遅れが生じるのであれば二段あるいはそれ以上のCR素子からなる構成としても良い。また、ディレイ回路で構成するようにしても良い。
【0048】
ノイズ発生器6は、ランダムにノイズを発生するオペアンプ(TL072)6−1,6−2の内部抵抗とフィードバック抵抗の熱雑音を増幅して、原音響信号に付加するノイズの信号源として用いた。このノイズ出力をハイパスフィルター回路7を通して、20kHz以上の周波数帯のみを通過させるようにした。なお、半導体の熱雑音は高域になると半導体の利得特性の影響から減少する傾向があるために、この実施形態では特に高域側をカットするバンドパスフィルターは用いなかった。なお、熱雑音源には、抵抗素子のみならず、トランジスタ内部のベース抵抗やFET内部のチャネル抵抗などを利用するようにしてもよい。
【0049】
このノイズ出力は、乗算回路8に入力されて、前述のレベルコントロール信号と掛合わされる。このため、原音響信号のレベルの変動に応じて変動しながら、原音響信号に付加される。
【0050】
なお、信号の混合経路にスイッチ11を設けて、ノイズ出力の付加を任意に切り換えられるように構成した。
【0051】
以上のような回路を用いて実際に音楽を試聴して効果の確認を行った。前記スイッチ11を開閉して、ランダムノイズ成分が付加されたときの音響信号と、付加しないときの音響信号とを聴き比べて、再生音質の違いを調べた結果、ノイズ成分出力を付加したときは再生音質が大変に自然なものとなることが聴感上確認できた。
【0052】
図5は、本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。図3及び図4に示す、第1の実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0053】
第2実施形態では、乗算回路8から送られてくるランダムノイズ成分を原音響信号に付加する回路に、コンデンサ14を設けたものである。このように、コンデンサ14を取り付けることによって、バッファアンプ1へかかる負荷の軽減を図ることができる。この結果を試聴すると、中域、低域での抑圧感が低減された音質を得ることができた。
【0054】
図6は、本発明の音響信号再生装置の第3実施形態の構成を示す回路図である。
図6に示す例では、ランダムノイズ発生回路を構成するオペアンプを3段に構成する(6−3,6−4,6−5)と共に、各オペアンプのフィードバック抵抗に、CR素子6a、6b、6cを並列に配置することによって、発生するノイズをいわゆるピンクノイズに加工するようにしている。このように、原音響信号に、ピンクノイズ成分を付加することによって、よりまろやかな、自然の音に近い再生音響信号を得ることが可能となる。
【0055】
また、図6に示す例では、フィルター回路7を8次に構成して、20kHz以下のノイズ成分を積極的にカットするようにしている。このように、フィルタの次数を高くすると、可聴帯域にノイズ成分はほとんど付加されないため、にごりの少ないよりクリアな音質を得ることができる。なお、フィルタの次数は、この実施形態に限定されるものではなく、使用する音響機器の種類などに応じて適宜変更することができる。試聴によれば、フィルタの次数が高くなるほど、再生音の音質が向上することが確認された。
【0056】
図7は、本発明の第4実施形態の構成を示すブロック図である。
図7は、アナログ音響再生装置では出力回路部分に、ディジタル音響再生装置ではD/A変換後の出力回路部分に本願第2発明の装置を用いた場合を示している。音響信号は入力端子30からバッファアンプ21を経て分岐され、一方はそのまま出力端子31側に送られ、他方はハイパスもしくはバンドパスフィルター22に入力される。フィルタ22によって、音響信号のうち、特定の帯域のみを通過させ、この信号を高調波発生回路23に入力して、高調波を発生させる。この高調波発生回路23の出力を適当な時定数回路24を通して乗算回路27に入力して、原音響信号に付加するノイズ成分のレベルを制御するレベルコントロール信号として用いる。
【0057】
一方、原音響信号に付加するノイズ成分は、ノイズ発生器25の出力から得るようにする。ノイズ発生器25で発生したノイズをハイパスまたはバンドパスフィルタ回路26を介して、乗算回路27に入力して、前記レベルコントロール信号の出力レベルの変動に応じてノイズレベルを変化させる。この乗算回路27の出力と、前述の高調波発生回路23の出力とを、混合回路28に入力し、更に、ハイパスフィルター29を通過させることによって可聴帯域へのノイズの影響を除去して、原音響信号に付加する付加信号を得、この付加信号を、原音響信号ラインに付加して、コンデンサ33を介して出力端子31より取り出す。
【0058】
ここで原音響信号に付加する信号の周波数帯域は特に制限のあるものではないが、第1実施形態と同様に概ね100kHz程度までの帯域をカバーしていれば十分である。
【0059】
図8は、図7に示すブロック図の具体的な回路例を示したもので、図7に示されている構成要素と同様に機能する要素には同じ符号を付してある。
図8に示すように、この回路はディジタル音響機器ではD/A変換回路の後段に、アナログ音響機器では例えば増幅器の電力増幅段の手前などに設置される。第1実施形態と同様に、ステレオ回路とするためには左右両チャンネルの回路の各々に、また、マルチチャンネルの装置に用いる場合は、各々のチャンネルに、ランダムノイズの信号源を設けるようにすればよい。
【0060】
いま、原音響信号は入力端子30から入力され、バッファアンプ21を介して増幅される。バッファアンプ21の出力の一端は出力端子30に接続され、一部はハイパスフィルター回路22に導かれる。このハイパスフィルターのカットオフ周波数はおよそ6kHzである。
【0061】
フィルター回路22によって選択された6kHz〜20kHzの帯域の音響信号は、高調波発生回路23に入力され、高調波成分が生成される。高調波回路23は、両波整流により非線形回路を形成しておりこの非線形回路によってわざと歪みを発生させて高調波成分を得るようにしている。
【0062】
この高調波発生回路23の出力の一部は、所定の時定数を持つ時定数回路24を経て乗算回路27に送られ、原音響信号に付加するノイズ成分のレベルコントロール信号として用いられる。第1実施形態において説明したとおり、この時定数回路24の時定数の選択が聴感上の自然さとの高い相関関係があることが判明しており、聴感に適合する好ましい時定数は2.2mS±40%の範囲であることが試聴により確認されている。
【0063】
なお、高調波発生回路23の他方の出力は、後述の混合回路28に導かれて、乗算回路27の出力と混合された後、原音響信号に付加される。
【0064】
ノイズ発生器25では、オペアンプ25−1,25−2,25−3,25−4内の抵抗素子から発生する熱雑音を増幅して、原音響信号に付加するノイズ成分を得るようにしている。なお、ノイズ発生器25を構成するオペアンプをつなぐコンデンサ26a〜26dがフィルタ回路26を構成しており、ここで発生するノイズ成分のうち、20kHz以下の成分がある程度カットされる。なお半導体の熱雑音は高域になると半導体の利得特性の影響から減少する傾向があるために、この実施形態では特に高域側をカットするバンドパスフィルターは用いていない。
【0065】
このノイズ発生回路25の出力は、乗算回路27に入力され、前記レベルコントロール信号と掛合わされる。これによって、原音響信号の出力レベルに応じてノイズ成分の出力レベルが変動することになる。そしてこのノイズ成分は、混合回路28に入力され、高調波回路23で生成されたもう一方の原音響信号に依存する高調波成分と混合された後、可聴帯域の信号との干渉等を防止するために設けられた、20kHz以上の信号を通過させるハイパスフィルター29を経て、原音響信号に付加される。
【0066】
ハイパスフィルタ回路29には8次の高次フィルタが用いられており、原音響信号に付加する高調波成分とノイズ成分のうち20kHz以下の成分を積極的にカットするように構成されている。なお、ノイズ成分に関してはフィルタ回路26(4次)でもカットされており、コンデンサ33を含めて11次のフィルタで20kHz以下の成分を除去するようにしている。従って、可聴帯域にノイズ成分がほとんど残留しないため、クリアな音質を得ることができる。
【0067】
この第4実施形態では、切り替えスイッチ32を設けて、原音響信号への高調波成分及びランダムノイズ成分の付加量を複数段に切り替えられるように構成して、原音響信号の種類や視聴者の好み等により、この付加量を調整して、任意の音質が得られるようにしている。なお、この切り替えスイッチ32は必ずしも設けなければならないものでなく、予め定めた一定の量を固定的に付加するように構成しても良い。
【0068】
以上のような回路を用いて実際に音楽を試聴して本願第2発明の効果の確認を行った。第1発明と同様に、ランダムノイズ成分と高調波成分とを付加した場合と、付加しない場合とを比較すると、付加した場合に高音域での自然さが増することが確認でき、音響信号が好適に再生できることが確認できた。
【0069】
図9は、本発明の音響再生装置の第5実施形態の構成を示す回路図である。この例では、高調波回路23の出力の一部を、乗算回路27のノイズ成分の入力段の前段に入力させるようにして、原音響信号に付加する高調波成分のレベルについても、時定数回路24を通したレベルコントロール信号を用いて制御するように構成したものである。このような構成によって、より一層、自然な音響信号に近い音響再生信号を得ることが可能となる。
なお、第2実施形態と同様に、コンデンサ33を介して付加信号を原音響信号に付加するようにしている。
【0070】
図10は、本発明の音響再生装置の第6実施形態の構成を示す回路図である。この例では、ノイズ発生器25を構成する各オペアンプのフィードバック抵抗にコンデンサと抵抗素子25a〜25dを並列に設けて、高域のノイズ成分のレベルを徐々に落として、ピンクノイズを生成して、原音響信号に付加するようにしている。ピンクノイズを加えることによって、より自然な再生音響信号を得られることは第3実施形態の説明で述べたとおりである。
【0071】
図11は、本発明の第7実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態では、高調波を発生させる非線形回路を2段階に構成している。即ち、原音響信号の一部をフィルタ回路22を通して第1の絶対値回路23’に入力させた後、この出力を混合回路41に送り、ここで絶対値回路23’の出力を原音響信号と混合する。この混合回路41の出力を更に、フィルタ回路42を介して第2の絶対値回路43に入力して、原音響信号の高調波を発生させるようにしている。その他の構成は、図7に示す実施形態と同様であり、ここではその説明を省略する。このように、高調波発生のための非線形回路を2段階に構成することによって、より自然な再生音が得られることが試聴によって確認されている。なお、この実施形態では、高調波を発生させる非線形回路を2段構成にしているが、3段階以上の構成にしてもよい。また、非線形回路の各段の間には、フィルタ回路のみならず、移送器やディレイ回路を設けるようにしてもよく、更に、各段の非線形回路の出力信号を混合するなど別な組合わにすることもできる。更に、本実施形態では、高調波を発生させる非線形回路に絶対値回路を用いているが、クリップ回路や、自乗回路、平方根回路、対数回路などの他の非線形回路を用いることもできる。
【0072】
なお、上述した第1ないし第7実施形態では、1チャンネル分の音響信号再生回路の構成のみが示されているが、一般にステレオ回路は左右に2チャンネルが設けられており、更に、サラウンドシステム等でマルチチャンネルを構成することもある。このような場合は、上述したとおり、聴感的な音の広がり、臨場感などの点から、ノイズ発生源を、使用する音響機器が具えているチャンネル数だけ独立分離して設置することが好ましい。
【0073】
上述した実施形態では、ノイズ成分の付加をアナログ回路で行っているが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、ディジタル音響機器に適用する場合はこれらの全ての信号処理をディジタル領域で行ったのち、D/A変換を行って出力を取り出すこともできる。ただ、この場合は信号処理のための回路が複雑になることと、量子化ノイズが目立つことなどに留意する必要がある。
【0074】
むしろこの発明では、アナログ的に発生させたノイズがあたかもディザのように働いて量子化における非直線性や規則的な量子化ノイズを目立たなくさせる効果も併せ持っていると言える。
【0075】
また、上述の実施形態では、ランダムノイズ成分のレベルコントロール信号に時間遅れを生じさせるために、時定数回路を用いているが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、同程度の時間遅れを生じさせるものであれば、例えばディレイ回路など他の手段を用いるようにしてもよい。
【0076】
また、本発明にかかる方法及び装置で原音響信号に加える信号を作り、これを専用のアンプで増幅した後、専用のスピーカを用いて原音響信号とは別個に音響変換を行って、音を空間で合成するようにしてもよい。この場合、原音響信号を音響変換するスピーカ端子から、あるいはスピーカからでてきた音から音響信号のレベルを検出して、このレベルに応じて加える信号のレベル調整を行ってから、音を空間で合成するようにすれば、音響変換前に信号を合成した場合と同様の効果を得ることができる。
【0077】
更に、本発明の装置は、レコードプレーヤーやCDプレーヤーのみならず、電子楽器における音響信号の再生にも好適に利用することができる。また、従来の高音域が切り捨てられているマスターテープを再生して、この再生信号に本発明の方法で作った信号を加えた後、その再生信号をより優れた録音テープあるいはCDなどに記録して、音質が改善されて、新たな価値を持った音楽ソフトウエアを製作することもできる。
【0078】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、従来のアナログ音響機器においては可聴周波数帯域を越える高音域の再生周波数特性の減少、ディジタル音響装置おいてはサンプリング周波数等により再生できる周波数帯が決定されてしまうために生じる、この周波数帯域を上回る帯域の信号の減少あるいは欠落に起因する聴感上の不自然さを克服することができる。この発明ではこの高音域の再生周波数特性の急激な減少や、欠落した音響スペクトル成分が、ランダムなノイズ信号源より得たノイズ成分を所定の条件のもとに原音響信号に付加することで補償されており、本発明を用いた音響再生装置では、大変自然な再生音質を得ることができる。
【0079】
しかも、この原音響信号に付加するノイズ成分は、可聴周波数以上のものを使用しているので、複雑な回路や信号処理を施す必要もなく極めて簡易な回路構成で、急激に減少した再生周波数特性や、欠落した音響スペクトルを得ることができ、その改善効果は極めて大きいといえる。
【0080】
更に、本願第2発明によれば可聴帯域あるいは再生帯域の高域音上限を越える原音響信号に依存する高調波成分と、原音響信号に依存しない信号源から得られたランダムノイズ成分との双方を付加する手段をとることで、更に、聴感上の不自然さをなくし、再生音質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、音響信号の周波数成分のスペクトルを示すグラフで、(a)は本来の音響信号のもの、(b)はディジタル音響機器における音響信号再生時の周波数成分のスペクトルを表したものである。
【図2】図2は、この発明の音響信号再生方法の原理を説明するためのグラフであり、音響信号の周波数スペクトルの状態を示す。
【図3】図3は、本願発明にかかる音響信号再生装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、図3に示す第1実施形態のより具体的な構成を示す回路図である。
【図5】図5は、本願発明にかかる音響信号再生装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【図6】図6は、本願発明にかかる音響信号再生装置の第3実施形態の回路構成を示す図である。
【図7】図7は、本願発明にかかる音響信号再生装置の第4実施形態の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、図7に示す第4実施形態のより具体的な構成を示す回路図である。
【図9】図9は、本願発明の音響再生装置の第5実施形態の回路構成を示す図である。
【図10】図10は、本願発明にかかる音響信号再生装置の第6実施形態の回路構成を示す図である。
【図11】図11は、本願発明にかかる音響信号再生装置の第7実施形態の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
1、21 バッファアンプ
2、22 フィルタ回路
3 アンプ
4、24 検波回路
5 時定数回路
6、25 ノイズ発生器
7、26 フィルタ回路
8、27 乗算器
9 入力端子
10 出力端子
11、32 スイッチ
14、33 コンデンサ
23 高調波発生回路
28 加算回路
29 フィルタ回路
23’ 第1絶対値回路
41 混合回路
42 フィルタ回路
43 第2絶対値回路
Claims (14)
- 音響信号の再生における再生周波数の高音域上限、または可聴周波数の高音域上限を越える周波数帯域のスペクトルを持つ出力を、原音響信号に付加して再生を行う音響信号の再生方法において、
前記原音信号に付加する信号が、原音響信号とは別個の信号源から得たランダムもしくはランダムな信号に類似したノイズ成分から所定の周波数帯域を選択した成分であって、この成分を、原音響信号からレベルコントロール信号を取り出して、当該レベルコントロール信号に時定数1.32〜3.08mSの時間遅れを持たせ、前記成分を、時間遅れを持ったレベルコントロール信号に連動させてレベル制御し、レベル制御された前記成分を原音響信号に付加することを特徴とする音響信号再生方法。 - 音響信号の再生における再生周波数の高音域上限、または可聴周波数の高音域上限を越える周波数帯域のスペクトルを持つ出力を、原音響信号に付加して再生を行う音響信号の再生方法において、
前記原音信号に付加する信号が、原音響信号とは別個の信号源から得たランダムもしくはランダムな信号に類似したノイズ成分から所定の周波数帯域を選択した成分と、原音響信号から得られた高調波成分とであって、これらの成分を、原音響信号からレベルコントロール信号を取り出して、少なくとも前記ノイズ成分、又は前記ノイズ成分と前記高調波成分の双方を、当該レベルコントロール信号に連動させてレベル制御し、レベル制御された前記各成分を前記原音響信号に付加することを特徴とする音響信号再生方法。 - 請求項2に記載の音響信号再生方法において、前記原音響信号に付加するレベル制御されたノイズ成分、またはノイズ成分と高調波成分に、時定数1.32〜3.08mSの時間遅れを持たせて、レベル制御されかつ時間遅れを持った成分として、前記原音響信号に付加することを特徴とする音響信号再生方法。
- 請求項2または3に記載の音響信号再生方法において、前記原音響信号に付加する高調波成分が、原音響信号を絶対値回路を経由させて生成した高調波成分であることを特徴とする音響信号再生方法。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の音響信号再生方法において、
前記音響信号再生の信号処理をデジタル領域で行うことを特徴とする音響信号再生方法。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載の音響信号再生方法において、前記原音響信号への信号の付加を、音を空間で合成することによって行うことを特徴とする音響信号再生方法。
- 請求項6に記載の音響信号再生方法において、原音響信号を音響変換するスピーカ端子から、あるいは当該スピーカからでる音から音響信号のレベルを検出して、前記レベルコントロールを行うことを特徴とする音響信号再生方法。
- 音響信号の再生における再生周波数帯の高音域上限、または可聴周波数帯の高音域上限を越える周波数帯域のスペクトルを持つ出力を原音響信号に付加する音響信号の再生装置において、
原音響信号とは別個の信号源から原音響信号に付加すべきランダムノイズを発生させるランダムノイズ発生手段と、
前記ランダムノイズ発生手段で発生したランダムノイズから、可聴周波数帯域あるいは、音響信号の再生における再生周波数帯の高音域上限を越える周波数帯域のランダムノイズを選択する周波数選択手段と、
原音信号からレベルコントロール信号を取り出して、前記原音響信号に付加するランダムノイズの出力レベルを、前記レベルコントロール信号に応じて制御するレベル制御手段と、
前記レベルコントロール信号に時定数1.32〜3.08mSの時間遅れを発生させる時間遅れ発生手段と、
前記周波数選択手段で所定の周波数を選択したランダムノイズであって、前記レベル制御手段および時間遅れ発生手段で、前記時間遅れを伴って出力レベルが制御されたランダムノイズを原音信号に付加する信号付加手段と、
を具えることを特徴とする音響信号再生装置。 - 音響信号の再生における再生周波数帯の高音域上限、または可聴周波数帯の高音域上限を越える周波数帯域のスペクトルを持つ出力を原音響信号に付加する音響信号の再生装置において、
原音響信号とは別個の信号源から原音響信号に付加すべきランダムノイズを発生させるランダムノイズ発生手段と、
前記ノイズ成分から、可聴周波数帯域あるいは、音響信号の再生における再生周波数帯の高音域上限を越える周波数帯域を選択する周波数選択手段と、
原音響信号から得られた高調波成分を発生する高調波成分発生手段と、
原音信号からレベルコントロール信号を取り出して、前記原音響信号に付加するランダムノイズ、または、ランダムノイズおよび高調波成分の出力レベルを、前記レベルコントロール信号に応じて制御するレベル制御手段と、
前記レベル制御手段で出力レベルを制御し前記周波数選択手段で所定の周波数を選択したノイズ成分と、前記高調波成分、または、前記レベル制御手段で出力レベルを制御し前記周波数選択手段で所定の周波数を選択したノイズ成分と、前記レベル制御手段で出力レベルを制御した前記高調波成分を原音信号に付加する信号付加手段と、
を具えることを特徴とする音響信号再生装置。 - 請求項9に記載の音響信号再生装置がさらに、前記レベルコントロール信号に時定数1.32〜3.08mSの時間遅れを発生させる時間遅れ発生手段を具えることを特徴とする音響信号再生装置。
- 請求項9または10に記載の音響信号再生装置において、
当該装置が原音響信号の高調波成分を発生する高調波成分発生手段を具え、この高調波成分発生手段が絶対値回路で構成されていることを特徴とする音響信号再生装置。 - 請求項8乃至11のいずれかに記載の音響信号再生装置において、音響信号再生の信号処理がデジタル領域で行われることを特徴とする音響信号再生装置。
- 請求項8乃至12のいずれかに記載の音響信号再生装置において、前記原音響信号への信号の付加を、音を空間で合成することによって行うことを特徴とする音響信号再生装置。
- 請求項13に記載の音響信号再生装置において、原音響信号を音響変換するスピーカ端子から、あるいは当該スピーカからでる音から音響信号のレベルを検出する手段を具え、この検出したレベルについて、前記レベルコントロールを行うことを特徴とする音響信号再生装置。
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