本発明においては、昇華性染色剤と親和性が弱く、かつ前記染色剤を通過させる表面樹脂層(A)と、前記染色剤と親和性があり、かつ前記染色剤の移行を防止する染料移行防止性着色性樹脂層(B)とを含む。このように染料移行防止性着色性樹脂層(B)の上層に表面樹脂層(A)を積層することにより、昇華性の染色剤を加熱により容易に表面樹脂層(A)を通過させ印刷用積層体内部の着色性樹脂層(B)に浸透させることが可能となり、かつ着色性樹脂層に留まっている染色剤を紫外線や水等から保護でき耐退色性等を向上させることができる。また、着色性樹脂層を染料移行防止性にすることにより、着色を目的としない層にまで染料が移行して画像の変退色や画像の輪郭のぼやけが発生することを防止することが可能となる。
前記染料移行防止性着色性樹脂層(B)は、さらに表面から順に、前記染色剤と親和性がある着色性樹脂層(B1)と、前記染色剤の移行を防止する染料移行防止層(B2)とに分けて形成しても良い。着色性樹脂層の下部に染料移行防止層を設けることにより、目的としない下層にまで染料が移行して、画像の変退色や画像の輪郭のぼやけを発生させることをより効果的に防止することが可能となる。
また、前記染料移行防止性着色性樹脂層(B)または染料移行防止層(B2)に2軸延伸フィルムを使用する場合には、巻き取り方向および幅方向にそれぞれ10%以上延伸された2軸延伸フィルムであり、かつ150℃で30分加熱したときのフィルムの巻き取り方向の収縮率が1.0%以下であることが好ましい。このように染料移行防止層に低収縮率の2軸延伸フィルムを使用することにより、昇華染色する時のシワや筋の発生を防止することが可能となる。
また、前記表面樹脂層(A)は、溶剤に可溶なフルオロオレフィン系共重合体からなるフッ素系樹脂で形成されていることが好ましい。このように印刷用積層体の表面樹脂層(A)に、溶剤に可溶なフルオロオレフィン系共重合体を使用することにより、昇華性の染色剤を加熱により効率良く印刷用積層体内部の着色性樹脂層に浸透させることができ、より一層屋外耐候性を向上させることが可能となる。
また、前記表面樹脂層(A)が、シリコン変性アクリル樹脂で形成されていてもよい。このように印刷用積層体の表面樹脂層(A)にシリコン変性のアクリル樹脂を使用することにより、昇華性の染色剤を加熱により効率良く印刷用積層体内部の着色性樹脂層に浸透させることができ、より一層屋外耐候性を向上させることが可能となる。
また、前記染料移行防止性着色性樹脂層(B)または着色性樹脂層(B1)には分子量約1300以下の低分子量化合物が約20重量%を超えて含有されていないことが好ましい。このように着色性樹脂層に含有される低分子量化合物を低減することにより染料の移行防止効果が大きくなる。
また、前記表面樹脂層(A)にマット化剤を添加して、該表面樹脂層の60度鏡面光沢(JIS Z 8741(鏡面光沢度測定方法)に規定する方法3(60度鏡面光沢))を70以下に設定すれば、蛍光灯などの照明器具の写りこみが防止できて好ましい。
また、前記表面樹脂層(A)、前記染料移行防止性着色性樹脂層(B)及び着色樹脂層(B1)のうち少なくとも一つ以上の層に画像の変退色防止や樹脂の耐久性向上のために、紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種以上を用いれば好適であるが、この時用いられる紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤は高分子量型が好ましい。このように紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を高分子量型にすることにより表面層などの透明性樹脂からの相分離によるフェーズの出現、ブリードアウト等の欠点、及び加熱昇華処理の際の揮発量が低減され、長期間に渡って安定した透明性樹脂を形成することが可能となり、又長期間画像を紫外線等より保護することが可能となる。
また、前記表面樹脂層(A)、前記染料移行防止性着色性樹脂層(B)、前記染料移行防止層(B2)及びこれらの下層の各層のうち少なくとも1つ以上の層に光拡散性微粒子を添加して光拡散機能を付加することにより、該印刷用積層体の裏面より照明をあてれば、バックライト用フィルムとして使用することが可能となる。
また、前記染料移行防止性着色性樹脂層(B)、前記着色性樹脂層(B1)及び前記染料移行防止層(B2)のうち少なくとも1つ以上の層に白色顔料を使用して白色層を形成すれば、印刷画像の透過濃度を向上させることが可能となる。
また、前記染料移行防止性着色性樹脂層(B)または前記染料移行防止層(B2)の下層に高屈折ガラスビーズを含む層が積層され、さらに該高屈折ガラスビーズを含む層の下層に金属反射膜が被着形成された再帰反射層を設ければ、夜間の車両のヘッドライト等による照明により該印刷用積層体が再帰反射し、夜間の印刷物の視認性が向上して交通安全や広告宣伝効果が大幅に向上して好ましい。
同様に、前記染料移行防止性着色樹脂層(B)または染料移行防止層(B2)の下層に高屈折ガラスビーズが固着された固着層、焦点樹脂層が順次積層され、さらに焦点樹脂層の下層に金属反射膜が被着形成された再帰反射層を設ければ、上記と同様の効果が得られて好ましい。
さらには、下半球に金属反射膜が設けられた複数の透明球と前記複数の透明球を保持する支持樹脂シートと前記支持樹脂シートの表面側に配置されることにより前記複数の透明球を覆う透明のカバーフィルムからなり、かつ前記支持樹脂シートには前記カバーフィルムを保持する接合部を備えた再帰反射シートにおいて、前記カバーフィルムを前記印刷用積層体とした場合には、前記した再帰反射よりも、はるかに明るく再帰反射する印刷用積層体が得られてより好適である。
また、前記印刷用積層体の表面樹脂層を[M2+ 1-XM3+ X(OH)2]X+[An- X/n・mH2O]X-(M2+は2価の金属イオン、M3+は3価の金属イオン、An-はn価のアニオン、Xは0より大きく0.33以下、0≦m≦2)で示されるハイドロタルサイト類および金属酸化物の微粒子を含む塗膜形成組成物で被覆すれば、長期に渡って汚れ物質が付着せず、鮮明な画像を表示できて好ましい。
また、前記印刷用積層体の裏面に設けられた粘着剤層或いは接着剤層に適用される離型フィルムあるいは離型紙等の離型材に帯電防止処理を施していることが好ましい。このように離型フィルムあるいは離型紙等の離型材に帯電防止処理を施すことによりシートを巻き出す時に発生する静電気やインクジェット印刷機による印刷時に前記印刷用積層体と印刷機との摩擦によって発生する静電気により、印刷ノズルから吐出されたインクの吐出方向が狂って印刷画像に乱れが発生するのを防止することが可能となる。すなわち、精密な画像形成ができる。
さらには、前記表面樹脂層(A)上に印刷表示が可能な少なくとも一層の剥離性仮表示層を設けた前記印刷用積層体であって、前記仮表示層の前記表面樹脂層(A)と接していない面側は、昇華性の染色剤を含有したインクの吸収性があり、かつ加熱処理により前記昇華性の染色剤を昇華させて前記印刷用積層体に拡散染色させることが可能であり、加熱処理後、前記仮表示層が前記印刷用積層体の表面樹脂層からフィルム状態で剥離することが可能な仮表示層を前記印刷用積層体の表面樹脂層上に設ければ、該印刷用積層体に昇華性の染色剤を使用して所望する画像等を直接印刷でき、その後加熱処理を行なえば簡単に高耐候性を保持した鮮明な画像等が得られて好ましい。
本発明の印刷方法は、転写紙に昇華性の染色剤を含有したインクを使用して印刷し、前記転写紙の画像形成面を前記印刷用積層体の前記表面樹脂層(A)に接触させ、その後加熱処理を行って前記昇華性の染色剤を昇華させて、前記染料移行防止性着色性樹脂層(B)または着色性樹脂層(B1)に拡散染色させる。
また、前記印刷表示が可能な少なくとも一層の剥離性仮表示層にインクジェットプリンター、熱転写プリンター、レーザープリンター等の公知慣用の方法によって印刷することにより、仮表示用積層体としても使用でき、不要になれば仮表示層を剥離すると本発明の印刷積層体を貼り付けた基材が視認されるようになり、基材の透明保護フィルムとして使用できる。
また、前記仮表示層に昇華性の染色剤を含有したインクを使用して印刷し、その後加熱処理を行って前記昇華性の染色剤を昇華させることにより高耐候性を保持した鮮明な画像等が得られる。
また、前記印刷は、とりわけ簡便にフルカラー印刷が可能なインクジェットプリンターを使用したインクジェット法がより好適である。
また、前記印刷後の加熱処理温度は、印刷用積層体裏面の離型フィルム等に大きな熱ダメージを与えずに昇華性の染色剤の昇華をより短時間で行い作業性を良くする点から150〜200℃の範囲であるのが好ましい。
さらには前記加熱処理前に印刷表面を乾燥させておけば加熱処理時の昇華性染色剤の拡散性が均一となりより好適となる。
本発明の印刷用積層体を実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
図2は本発明の印刷用積層体の構成図である。印刷用積層体の下に粘着剤層または接着剤層を介して離型紙または離型フィルムが一体化されてもよい。着色性樹脂層に使用可能な物質は、昇華拡散してきた染料を効率良く捕捉して、高濃度に発色させる為に染色剤と親和性のある合成樹脂を使用するのが好ましい。さらに好ましくは、昇華染色時の加熱温度約150℃〜約200℃で著しく軟化したり、タック(べた付きいわゆる粘着性のこと。)が発現したりすることのないように耐熱性のある樹脂を適用すれば良い。特に放射線で硬化する樹脂を使用するのが好ましい。放射線の有用な形態は、電子線、紫外線、核放射線、極超短波放射線、および熱を包含し、前記放射線で硬化する物質は当業界では周知である。また、着色樹脂層自体で70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の紫外線をカットできる程度の紫外線吸収剤を前記着色性樹脂層に均一に分散し含有させるのが、染色剤を紫外線等から保護する上で好ましい。このような要求特性を満足する材質として、具体的にはビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の合成樹脂が使用可能である。
さらに、樹脂内の低分子量の化合物は、一旦定着した染料を徐々に移行させ、その結果、画像の輪郭が不鮮明になる等の問題を発生させる。その為に着色性樹脂層には低分子量化合物を残留させたり、可塑剤等の添加剤をできる限り使用しないことが好ましく、着色性樹脂層に含有される低分子量化合物をできる限り削減することが、画像を安定して担持させる為に有効な手段となる。前記した低分子量化合物とは分子量約1300以下の化合物であり、その含有率は約20重量%以下、好ましくは約15重量%以下、さらに好ましくは約10重量%以下であることが好適である。分子量約1300以下の低分子量化合物を約20重量%を超えて使用すると、印刷された画像は短時間でその輪郭が不鮮明になる傾向となる。
昇華染色方法によって着色された印刷用積層体は、着色性樹脂層の裏面側に粘着剤や接着剤の層を設け、金属、木、プラスチック、ガラス、等の基材に貼り付けて使用したり、また、プラスチック等に挟み込んで使用する。しかしこの時、粘着剤や、接着剤あるいは挟み込んだプラスチック等に対して着色性樹脂層より徐々に染料が拡散移行する。これにより画像には、にじみが発生したり、画像の縁がぼやけたり、また、印刷された色相が入り混じり画像が不鮮明になる等の問題が発生する。
この問題を解決するには、着色性樹脂層内に前記染色剤の移行を防止する染料移行防止性を付与するか、または着色性樹脂層に連続して前記染色剤の移行を防止する染料移行防止層を設けるのが有効である。
染料移行防止性の材料または染料移行防止層として好ましい材料の1例は、2軸延伸フィルムであり、特に結晶化が進み分子間密度が高くなった2軸延伸フィルムが好適である。とりわけ巻き取り方向、および幅方向のそれぞれに10%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは100%以上、特に好ましくは200%以上延伸された2軸延伸ポリエステルフィルムが好適である。延伸率が10%未満であると昇華性の染色剤の移行を防止するには不十分である。さらに、加熱により昇華性の染色剤を樹脂内部に浸透させて着色するときの熱によって、2軸延伸ポリエステルフィルムが収縮し、シワや筋の発生を引き起こすという問題がある。この問題を解決するためには、2軸延伸後、加熱により定長またはリラックスさせて、ガラス転移温度以上の温度でアニール加工を実施した2軸延伸ポリエステルフィルムを適用するのが好ましく、150℃で30分間加熱した時にフィルムの巻き取り方向に1.0%以下、好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.6%以下の収縮率のフィルムを適用するのが好ましい。1.0%を超える収縮率の2軸延伸ポリエステルフィルムを使用すれば加熱により昇華性の染色剤を樹脂内部に浸透させて着色するときの熱によってシワ、筋等の外観に異常をきたす不良が発生して好ましくない。2軸延伸ポリエステルフィルムの場合は、延伸によりポリマー分子の配向が進み結晶性の割合が大きくなって、ポリマー分子の互いに接する面が大きくなる。その結果、ポリマー分子内引力も大きくなることにより着色性樹脂層からの染色剤の移行を有効に防止することが可能となると考えられる。
染料移行防止層の他の有効な形態は、着色性樹脂層に連続させたり、染料移行防止層にさらに連続させて金属の薄膜を形成することにより染料の移行を防止できる。但し、下層に再帰反射層を形成する場合は好ましくない。ここにおいて金属層は下記の金属で形成することができ、その厚さは使用する金属によって異なるが、5〜500nm、好ましくは10〜400nm、さらに好ましくは20〜300nmである。上記金属層の厚さが5nm未満の場合は金属層の隠蔽性が十分でないために、染料の移行防止層としての目的が果たせなくなり、その上前記印刷用積層体を曲面等に貼る時には延伸されるため、さらに金属膜が薄くなりより好ましくなくなる。また、逆に500nmを越える場合は金属層と着色性樹脂層または染料移行防止層との付着性が低下したり、金属膜にクラックが入り易く、その上コスト高になるために好ましくない。上記金属層を設ける方法としては特に限定されるものではなく通常の蒸着法、スパッタリング法、転写法、プラズマ法等が利用できる。とりわけ作業性の面から蒸着法、またはスパッタリング法が好ましく用いられる。かかる金属層を形成するに際し、使用される金属も特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、クロム、マグネシウム、亜鉛等の金属を挙げることができるが、これらのうち作業性、金属層の形成し易さ等を考慮するとアルミニウム、クロムまたはニッケルがとくに好ましい。尚、上記金属層は2種以上の金属からなる合金で形成してもよい。
本発明の印刷用積層体の着色性樹脂層上に表面樹脂層を設けることにより、着色性樹脂層の染色剤を紫外線、水等から保護でき、十分な屋外での耐久性を保持させることが可能となる。このような要求特性を満足する材質として、オレフィン系の樹脂、すなわちポリエチレン、ポリプロピレンなど、ビニルアルコール系の樹脂すなわちポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂など、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、またはこれらの混合物等が挙げられる。
特に屋外耐候性が高く、また、染色剤との非親和性に富んだフッ素系樹脂やシリコン変性アクリル樹脂を主成分とする合成樹脂を使用するのが好ましい。フッ素系樹脂を主成分とする合成樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等のフッ素系樹脂が挙げられる。これらのフッ素系樹脂を加工するには、主として熱を加えて溶融し、所望する形状に加工してから冷却し製品化するのが一般的手法である。しかしこのような手法で製造されたフィルムは縦方向や横方向に延伸されるので、熱転写時に150〜200℃の温度まで昇温すると収縮する傾向を示し、印刷ブレや印刷模様の不鮮明化等の欠陥が発生しやすくなる。この発生を防止する為に表面樹脂層は前記した溶剤に可溶なフルオロオレフィン系共重合体からなるフッ素系樹脂を溶液流延法(キャスト法)等の加工方法にて製造した未延伸のフッ素系樹脂フィルムで形成されるのが好ましく、さらに好ましくは反応性官能基を有する溶剤に可溶なフルオロオレフィン系共重合体と、この反応性官能基と反応する硬化剤および/または硬化触媒との反応により形成されたものであるのが好適である。これらのうち、汎用溶剤に対する溶解性が良く、フィルムを製造する上での作業上の点からすれば、フルオロオレフィン類の共重合体あるいはフルオロオレフィン類とフルオロオレフィン以外の単量体との共重合体が特に好ましい(以下、これらを「フルオロオレフィン系共重合体」とも称する)。このような、フルオロオレフィン系共重合体を調整するに際して使用されるフルオロオレフィンの具体例は、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。これらのフルオロオレフィンを2種以上共重合することによりフルオロオレフィン類のみを単量体成分とする共重合体が得られる。また、前記フルオロオレィン類とこれらと共重合可能な単量体類との共重合により溶剤に可溶なフルオロオレフィン系共重合体を調整することができる。このフルオロオレフィン類と共重合可能なビニル系単量体の具体例は、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル等のアルキル若しくはシクロアルキルビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のカルボン酸ビニルエステル類、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類、アクリル酸、メタアクリル酸の如きカルボキシル基を含有する単量体類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルビニルエーテルの如きアミノ基を有する単量体類、グリシジルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートの如きエポキシ基を有する単量体類、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、2−トリメトキシエチルビニルエーテル、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの如き加水分解性シリル基を有する単量体類、2−トリメチルシリルオキシエチルビニルエーテル、4−トリメチルシリルオキシブチルビニルエーテルの如きシリルオキシ基を有するビニル系単量体類、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ビニル−5−トリメチルシリルオキシカルボニルペンタノエートの如きシリルオキシカルボニル基を有する単量体類、更にエチレン、プロピレン、塩化ビニル、各種アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このような単量体のうち、共重合性、塗膜性能等の点から、官能基を有しないビニルエステルやビニルエーテル類を必須成分として使用することが特に好ましく、更に、必要に応じて前記した如き反応性官能基を有する単量体を共重合すれば良い。
本発明に用いられるフルオロオレフィンとフルオロオレフィン以外の単量体との共重合体として好適なものとしては、フルオロオレフィン約15〜70重量%、反応性官能基を含有するビニル系単量体約0〜30重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体類約5〜85重量%を共重合したものである。より好適な共重合体としては、フルオロオレフィン約20〜65重量%、反応性官能基を含有するビニル系単量体約5〜25重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体類約10〜75重量%を共重合したものである。フルオロオレフィンの使用量が約15重量%未満では耐久性と防汚効果および昇華性の染色剤の透過性が不充分であるし、約70重量%を越えると汎用溶剤への溶解性が低下して作業性を悪くするので好ましくない。また、使用される共重合体の重量平均分子量は、作業性とフィルムの耐久性の点から、約5000〜400000、更には、約7000〜300000の範囲内にあることが好ましい。
本発明の印刷用積層体の表面樹脂層であるフッ素系樹脂は、前記の通りフルオロオレフィン系共重合体とアクリル系重合体から調整することもできる。ここにいうアクリル系重合体とは、アクリル酸エステル若しくはメタアクリル酸エステルを必須成分とする単独重合体または共重合体であり、前記した反応性官能基を有するものおよび有しないもののいずれもが使用可能である。アクリル系重合体としては公知の各種のものが使用できるが、耐久性および作業性の点から、重量平均分子量として約5000〜400000さらには約7000〜300000を有するものが特に好ましい。
表面樹脂層用の樹脂として前記したフルオロオレフィン系共重合体とアクリル系重合体を併用する場合には、前者と後者の比率は重量比で、約30:70〜約98:2、更に好ましくは約40:60〜約95:5の範囲内にあることが望まれる。アクリル系重合体の使用量が約2%未満では付与したいアクリル系重合体の特性が発揮されないし、約70重量%を越えると耐久性と防汚効果および昇華性の染色剤の透過性が不充分となるので好ましくない。
本発明の印刷用積層体の表面樹脂層を形成するに際して、フルオロオレフィン系共重合体およびアクリル系重合体は有機溶剤に溶解した形で使用される。フルオロオレフィン系共重合体もしくはブレンドされるアクリル系重合体が前記した如き反応性官能基を有する場合には、硬化剤として前記反応性官能基と反応する官能基を有するものを配合することもできる。反応性官能基として加水分解性シリル基を有する場合には、酸類、塩基あるいは各種有機錫化合物の硬化触媒を配合できる。また、前記の通り、硬化剤を配合させる場合にも、硬化反応を促進するに適した触媒を添加することもできる。フルオロオレフィン系共重合体の反応性官能基が水酸基若しくはシリルオキシ基の場合には、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、アミノ樹脂、金属アルコキシド若しくは金属キレート化合物等を配合する。また、反応性官能基がエポキシ基の場合には、ポリカルボキシ化合物、ポリシリルオキシカルボニル化合物、ポリアミン化合物等を配合する。更に反応性官能基がカルボキシル基若しくはシリルオキシカルボニル基の場合には、ポリエポキシ化合物、エポキシシラン化合物、金属キレート化合物等を配合する。また、更に反応性官能基がアミノ基の場合には、ポリエポキシ化合物もしくはエポキシシラン化合物を硬化剤として配合する。フルオロオレフィン系共重合体或いはフルオロオレフィン系共重合体とアクリル系共重合体のブレンド物に硬化剤としてアミノ樹脂を配合する場合には、前記ベース樹脂成分約100重量部に対してアミノ樹脂を約5〜100重量部、好ましくは約10〜60重量部配合すれば良い。
また、アミノ樹脂以外の硬化剤を配合する場合には、フルオロオレフィン系共重合体あるいはフルオロオレフィン共重合体とアクリル系重合体ブレンド物中の反応性官能基1当量に対して硬化剤中の官能基が約0.2〜2.5当量、更に好ましくは約0.5〜1.5当量の範囲内となる様に硬化剤を配合すれば良い。
前記した表面樹脂層を形成するために使用される組成物中に、マット化剤として、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アクリル樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリスチレン、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物等の微粒子を添加して表面の60°光沢を70以下に下げれば、表面層への蛍光灯などの照明器具等の写り込みが防止できる。好ましくはアクリル樹脂を使用すれば前記フルオロオレフィン系共重合体との相溶性が良好となり好適である。
前記した表面樹脂層を形成するために使用される組成物及び前記した染料移行防止性着色性樹脂層または着色性樹脂層を形成するために使用される組成物には、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を個別にあるいはそれぞれの組み合わせにて添加して、これらを含有させることにより、長期耐久性をいっそう向上させることができる。このような紫外線吸収剤としては公知のものを使用でき、代表的なものとしては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリチレート系およびシュウ酸アニリド系等、光安定化剤としてはヒンダードアミン系化合物等、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系化合物、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等の既知の化合物を使用することができる。しかし低分子化合物系の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を使用すれば透明樹脂からの相分離によるフェーズの出現、ブリードアウト、昇華性の染色剤を印刷用積層体内部に浸透させるために実施する加熱処理の際の揮発現象等の問題が顕著に現れるため、高分子量型の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を使用するのが好ましい。
本発明で使用する紫外線吸収剤としては、例えばフェニルサリシレート、p−ジ−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系のもの、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系のもの、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系のもの、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系のもの、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の金属酸化物系のもの、その他シュウ酸アニリド系、トリアジン系、ジベンゾイルメタン系、ベンジリデン系等がある。
紫外線吸収剤としては、上記紫外線吸収剤をポリマーの一部に導入した、いわゆる高分子量型紫外線吸収剤がある。
高分子量型紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2'−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2',4−トリヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2',4−トリヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2',4−トリヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2',4−トリヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2',4−トリヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4'−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4'−メチル−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4'−メチル−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4'−メチル−4−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4'−メチル−4−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4'−メチル−4−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−(2'−ヒドロキシ−4'−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾトリアゾール]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−(2'−ヒドロキシ−4'−メタクリロイルオキシエトキシ)−5−クロロベンゾトリアゾール]−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。さらには2,2'−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル) −4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]等の分子量500以上の高分子量型紫外線吸収剤も好適である。
光安定剤は紫外線によって生じたラジカルを効率良く捕捉(結合)して不活性化し、連鎖反応を阻止することによって染料の劣化を防止するものであり、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,2,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等の各種ヒンダードアミン類、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキシベンゾエート等のヒンダードフェノール類、[2,2'−チオビス−(4−tert−ブチルフェノラート)]−tert−ブチルアミンニッケル(II)、[2,2'−チオビス−(4−tert−ブチルフェノラート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)等のニッケル錯体類、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチルエステルのニッケル塩等のリン酸エステルのニッケル塩等が例示される。
とりわけN,N,N',N',−テトラキス−(4、6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物等の分子量1000以上の高分子量型のヒンダードアミン系光安定剤がより好適である。
酸化防止剤には生成したラジカルのペルオキシドにプロトンを与えて安定化させるラジカル受容体型のものと、ヒドロペルオキシドを安定なアルコールに変質させる過酸化物分離型の2種類がある。前者としては、フェノール系化合物類、アミン系化合物類が代表的であるがフェノール系化合物類としては、ハイドロキノン、ガレート等の化合物、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3(3',5'−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系化合物が例示され、アミン系化合物類としては、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N'−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジフェニルエチレンジアミン、フェノチアジン、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4'−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン等が例示される。
また、後者としては、硫黄系化合物類、リン系化合物類が代表的であるが、硫黄系化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリル−β,β'−チオジブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が例示され、リン系化合物類としては、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールフォスファイト等が例示される。クエンチャーは紫外線を吸収して励起した励起分子から励起エネルギーを奪い励起分子の反応を抑止する化合物であり、公知の種々の金属錯体等が挙げられる。これら酸化防止剤、クエンチャーのうち、分子量が1000以上のヒンダードフェノール系化合物はとりわけ好適である。
また、有機溶剤としては従来から知られているものが使用可能であり、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート等のエステル系、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族もしくは脂環族系炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤類等が挙げられる。これらのうち、硬化剤にポリイソシアネート化合物を使用する場合には、アルコール系溶剤の使用は避けなければならない。イソシアネート基とアルコールが反応してしまうからである。
シリコン変性アクリル樹脂の具体的な代表例を示すにとどめれば、下記のものを挙げることができる。
(1) 加水分解性シリル基を持つビニル系単量体を共重合したビニル系共重合体に、加水分解触媒を加え、硬化フィルムとしたもの。
(2) アミノ基および/またはカルボキシル基を持つビニル系単量体を共重合したビニル系共重合体に、一分子中にエポキシ基と加水分解性シリル基を併せ持った化合物を加え、硬化フィルムとしたもの。
(3) シリコン樹脂をグラフト重合した、水酸基を有するビニル系共重合体に、ポリイソシアネート化合物を加え、硬化フィルムとしたもの。
(4) シリコン樹脂をグラフト重合した、加水分解性シリル基を有するビニル系共重合体に、加水分解触媒を加え、硬化フィルムとしたもの。
なお、本発明で使用される昇華型インク用染色剤としては、大気圧下で、70〜260℃で昇華または蒸発する染料が好ましい。例えば、アゾ、アントラキノン、キノフタロン、スチリル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、オキサジン、トリアジン、キサンテン、メチン、アゾメチン、アクリジン、ジアジン等の染料があり、これらの内、1,4−ジメチルアミノアントラキノン、臭素化または塩素化1,5−ジヒドロキシ−4,8−ジアミノ−アントラキノン、1,4−ジアミノ−2,3−ジクロロ−アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−(β−メトキシエトキシ)アントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−フェノキシアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン−2−カルボン酸のメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル、1,4−ジアミノ−2−メトキシアントラキノン、1−アミノ−4−アニリノアントラキノン、1−アミノ−2−シアノ−4−アニリノ(またはシクロヘキシルアミノ)アントラキノン、1−ヒドロキシ−2−(p−アセトアミノフェニルアゾ)−4−メチルベンゼン、3−メチル−4−(ニトロフェニルアゾ)ピラゾロン、3−ヒドロキシキノフタロン等がある。また、塩基性染料としてマラカイトグリーン、メチルバイオレット等を用いることができ、酢酸ナトリウム、ナトリウムエチラート、ナトリウムメチラート等で変性した染料等を用いるのが好適である。
これらの染料を使用した昇華型インクを用いて転写紙や印刷用積層体表面に設けられたインク仮表示表面層に電子写真法、静電記録法、インクジェット法、感熱転写法等によって印刷加工を施し、転写紙の場合は紙の印刷面を印刷用積層体の表面に当て、また、インク仮表示表面層に印刷した場合はそのままの状態で真空加熱圧着機やオーブン乾燥機、遠赤外線加熱装置等を用いて約100〜約200℃、数10秒から数分間加熱することにより昇華性の染色剤が昇華し、印刷画像が着色性樹脂層の内部に拡散染色される。またこの時の印刷方法は、熱転写、静電印刷、グラビア印刷、インクジェット法等の公知慣用の方法による印刷方法を適用することが可能であるが、とりわけ簡便にフルカラー印刷が可能なインクジェットプリンターを使用した印刷方法がより好適であり、特にオンデマンド型がインクの使用効率の点から経済的であり好ましい。
また、前記印刷後の加熱処理温度は、印刷用積層体裏面の離型フィルム等に大きな熱ダメージを与えずに昇華性の染色剤の昇華をより短時間で効率よく行い作業性を良くする点から150〜200℃の範囲であるのが好ましく、さらには前記加熱処理前に印刷表面を指触乾燥レベルまで乾燥させておけば加熱処理時の昇華性染色剤の拡散性が均一となりより好適となる。この時使用される転写用紙は一般に市販されているインクジェット用印刷用紙で良く、インク仮表示表面層には親水性樹脂を使用するのが好ましい。前記仮表示表面層を形成するために使用される親水性樹脂にはポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、未変性および変性ポリビニルアルコール、ポリエステル、アクリルウレタン、酢ビ系、無水マレイン酸共重合体、アルキルエステルのNa塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、デンプン、SBRラッテクス,NBRラテックス、セルロース系樹脂、アミド系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、これらをカチオン変性したもの、また、親水基を付加したもの等を1種または2種以上使用することも可能である。
また、シリカ、クレー、タルク、珪藻土、ゼオライト、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛、チタン等のフィラーを添加してもよい。
図1は本発明の参考例における印刷用積層体の断面図であり、表面から順番に昇華性染色剤と親和性が弱く、かつ前記染色剤を通過させる表面樹脂層(A)1と、前記染色剤と親和性があり、かつ前記染色剤の移行を防止する染料移行防止性着色性樹脂層(B)12とで構成される。
図2は本発明の一実施形態における印刷用積層体の断面図であり、表面から順番に表面樹脂層(A)1と、前記染色剤と親和性がある着色性樹脂層(B1)2と、前記染色剤の移行を防止する染料移行防止層(B2)3とで構成される。
図3は本発明の別の参考例における印刷用積層体の断面図であり、表面から順番に表面樹脂層(A)1と、着色性樹脂層(B1)2と、染料移行防止層(B2)3と、染料移行防止層(B2)3よりも伸び率が大なる可撓性樹脂層(C)4とで構成される。
図4は本発明のさらに別の参考例における印刷用積層体の断面図であり、表面から順番に表面樹脂層(A)1と、染料移行防止性着色性樹脂層(B)12と、染料移行防止性着色性樹脂層(B)12の裏面に、さらに粘着剤層5とその下側に離型材6を備え、粘着剤層5または離型材6に帯電防止処理が施されている。
図5は本発明のさらに別の参考例における印刷用積層体の断面図であり、表面から順番に表面樹脂層(A)1と、着色性樹脂層(B1)2と、染料移行防止層(B2)3と、染料移行防止層(B2)3よりも伸び率が大なる可撓性樹脂層(C)4と、可撓性樹脂層(C)4の裏面に、さらに粘着剤層5とその下側に離型材6を備え、粘着剤層5または離型材6に帯電防止処理が施されている。
なお、図1〜3においても、粘着剤層5および離型材6を形成し、粘着剤層5または離型材6に帯電防止処理を施しても良い。
図1に示される印刷用積層体は、第1工程にて、ポリエチレンテレフタレートフィルムや工程紙のごとき支持フィルム上に乾燥膜厚が約0.5〜約300μm、好ましくは約2〜約200μm、さらに好ましくは約3〜約100μmとなるように、前記表面樹脂層1の塗料を塗布し、常温もしくは加熱により乾燥する。次に第2工程において、前記表面樹脂層1に続く染料移行防止性着色性樹脂層12用の塗料を乾燥膜厚約1〜約500μm、好ましくは約2〜約400μm、さらに好ましくは約3〜約300μmになるように塗布し、常温もしくは加熱により乾燥して形成する。
図3に示される印刷用積層体は、第1工程にて、ポリエチレンテレフタレートフィルムや工程紙のごとき支持フィルム上に乾燥膜厚が約0.5〜約300μm、好ましくは約2〜約200μm、さらに好ましくは約3〜約100μmとなるように、前記表面樹脂層1の塗料を塗布し、常温もしくは加熱により乾燥する。次に第2工程において、前記表面樹脂層1に続く着色性樹脂層2用の塗料を乾燥膜厚約1〜約500μm、好ましくは約2〜約400μm、さらに好ましくは約3〜約300μmになるように塗布し、常温もしくは加熱により乾燥して形成する。
第3工程において、前記着色性樹脂層2に続く染料移行防止層3用の塗料を乾燥膜厚約1〜約500μm、好ましくは約2〜約400μm、さらに好ましくは約3〜約300μmになるように塗布し、常温もしくは加熱により乾燥積層する。第4工程において前記染料移行防止層3に続く可撓性樹脂層4の塗料を乾燥膜厚約1μm〜約100μm以下、好ましくは約3μm〜約80μm以下、さらに好ましくは約5μm〜約60μm以下になるように塗布し、常温もしくは加熱により乾燥する。
なお、本工程は第1工程に前記可撓性樹脂層4用の塗料を、第2工程に前記染料移行防止層3用の塗料を、前記着色性樹脂層2用の塗料を、第3工程に前記着色性樹脂層2用の塗料を、第4工程に前記表面樹脂層1用の塗料を塗布して製造することも可能である。また、必要に応じて、前記可撓性樹脂層4を除去した工程も可能である。これらの工程を終了した後にポリエチレンテレフタレートフィルムや工程紙のごとき支持フィルムを前記積層体から剥離除去し、必要に応じて前記積層体の裏面、すなわち表面樹脂層と反対側の層に粘着剤層または接着剤層を形成し、さらに、離型紙または離型フィルム等の離型材を前記粘着剤層または接着剤層に貼り合わせて、印刷用積層体の完成品とすることもできる。但し染料移行防止層3に2軸延伸ポリエステルフィルムを用いた場合は、前記した支持フィルムと前記染料移行防止層3は兼用となるために支持フィルムを前記積層体から剥離除去する工程は省かれる。即ち、本発明においては、第1工程にてポリエチレンテレフタレートフィルムのごとき2軸延伸フィルム上に前記着色性樹脂層2用の塗料を、第2工程にて前記表面樹脂層1用の塗料を塗布して製造することができる。また、上記第1、第2、第3、第4工程における塗料塗布後の乾燥条件は、塗料原料として使用されるベース樹脂の種類、ベース樹脂中の官能基の種類、ベース樹脂中の反応性官能基の種類、硬化剤の種類、および溶剤の種類に応じて適宜決定される。上記各工程における塗料の塗布は、スプレー塗装によってもよいし、ナイフコーター、コンマコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、フローコーター、等の通常用いられる塗装装置を使用して行うこともできる。
また、本発明の印刷用積層体の各層を形成するために使用される塗料として顔料を含まないクリヤー塗料を使用することにより着色のない印刷用積層体が得られるが、表面樹脂層およびそれに続く下層を形成する塗料として顔料を含む着色塗料を使用することにより着色した印刷用積層体を得ることもできる。このような着色塗料を得る際に使用される顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、もしくはハンザイエローのような有機系顔料や酸化鉄レッド、酸化鉄イエロー、チタンホワイト、コバルトブルー、カーボンブラックの如き無機系顔料等公知のものが適している。さらには顔料自体が5層構造になっており、入射光は表面層で約50%、残りの約50%が中央層のオペイク・リフレクター・メタルで反射する分光効果で干渉波長が発生し、視覚化されるクロマフレア顔料(Flex Products社製)を使用すれば異なった色を視覚化でき、デザイン性に優れた印刷用積層体を得ることが可能となり好適である。同様の効果はアルミニウムフレイク顔料の表面を酸化鉄で被覆した“VARIOCROM”(BASF社製商品名)でも得ることが可能である。
前記表面樹脂層1、前記染料移行防止性着色性樹脂層12、前記染料移行防止層3及びこれらの下層の各層のうち少なくとも1つ以上の層に光拡散性微粒子を配合した光拡散層を作製すれば、本発明の印刷用積層体は内照式フィルム(バックライト用フィルム)として使用可能となり好適である。この場合、着色層より下層側に光拡散性微粒子を配合すると画像の鮮明性、発色性を阻害することなくさらに好適である。
前記光拡散層を構成する光拡散性微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、アクリル樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリスチレン、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物等を挙げることができるが、これらのうちから1種類以上を選べば良く、特に限定されるわけではない。
光拡散性微粒子が分散配合されてなる光拡散層のバインダーとなる光透過性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂の単体あるいは混合体が好適であり、もしくはそれぞれの樹脂をメラミン樹脂、イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂等の硬化剤を使用して当該樹脂の官能基と三次元硬化させた樹脂組成物を適用すればより好適であるが、特に限定されるものではない。光透過性樹脂と光拡散性微粒子との屈折率差は、一般的に0.02程度以上であると良好である。また、光透過性樹脂のTg(ガラス転移点)としては、50℃以上が望ましく、Tgが50℃未満であると、光拡散層と他の部材が接触した場合、ブロッキングにより保存性に問題が生じたりするため好ましくない。
これらのうち、光拡散性微粒子の分散適性(濡れ性)や屈折率差の制御適性などが優れたものとして、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂の単体あるいは混合体が好適であるが、それぞれの樹脂をメラミン樹脂、イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂等の硬化剤を使用して当該樹脂の官能基と三次元硬化させた樹脂組成物がより好適である。
前記光拡散層を作製する方法としては、光透過性樹脂と1種類以上の光拡散性微粒子を適当な有機溶剤(または、水)に溶解または分散させたものを一般的な塗布方式、例えばロールコート法、ナイフコート法等を使用して塗布し、その後に有機溶剤(または、水)を乾燥蒸発させ、さらには必要に応じて当該樹脂と硬化剤の硬化反応を進行させれば良く、光拡散樹脂組成物の粘度、目的とする皮膜厚さ等を考慮して適宜塗布方式を選択すれば良い。光拡散性微粒子の添加量としては、光透過性樹脂に対して各々1〜40重量%が望ましく、要求特性に合わせて分散配合すれば良い。光拡散層の塗布膜厚は、一般的に3〜50μm程度が望ましいが、それに限られない。
前記光拡散層機能を有した印刷用積層体は前記表面樹脂層と反対側の裏面から照明光が入射した時、バックライトの蛍光灯等の線光源が該光拡散フィルムによって均一に拡散され、明るく輝く面発光体となり、かつ裏面の蛍光灯等の表面への写り込みも防止される。この時着色性樹脂層に昇華染色印刷されたカラー着色層にも光が透過して、内照式看板としての機能が発揮される。しかるに昇華染料は非常に透明性が良いため、所望される濃度まで透過濃度を上げるには多量のインクを印刷する必要があり、印刷作業性が低下し、また印刷後の乾燥性にも問題が発生した。この問題を解決するには、昇華染色される層に白色顔料を使用して白色層としておけば、印刷画像の透過濃度が向上することを見出した。
この際、鮮映性を上げる為には前記染料移行防止性着色性樹脂層12、前記着色性樹脂層2及び前記染料移行防止層3のうち少なくとも1つ以上の層に白色顔料を使用して白色層を形成すれば印刷画像の透過濃度が向上することを見出した。この際染料移行防止性着色性樹脂層をさらに分割して、上層を透明樹脂層、下層を白色層、また着色性樹脂層と染料移行防止層が構成されている場合は該着色性樹脂層をさらに分割して上層を透明樹脂層、下層を白色層とすれば画像の鮮映性を保持しつつ透過濃度が向上してさらに好適である。この際白色化に使用される白色顔料は通常合成樹脂を白色に着色する為に用いられるものであれば良く、具体的には酸化チタン、亜鉛華、鉛白、硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化アンチモン、MTiO3(MはMg,Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素である。)で表される特定のチタン酸塩等が挙げられる。この時の白色顔料の使用量は、当該白色層の透過濃度V(ノーリツ鋼機社製、濃度測定機DM−201使用)が0.10〜1.70、好ましくは0.15〜1.65、さらに好ましくは0.20〜1.40になるようにするのが好適である。白色層の透過濃度Vが0.10未満であれば画像の透過濃度を上げるには充分ではなく、又1.70を超えれば光の透過性が不十分となり内照式看板の特性が低くなり好ましくない。
前記染料移行防止性着色性樹脂層12に連続した下層、前記染料移行防止層3に連続した下層または可撓性樹脂層4の下層に、以下に説明する再帰反射構造体を作製すれば、夜間においても車両のヘッドライト等の照明により、光源の方向に正確に光を返し、昼間と同様のフルカラーの画像が車両の運転手等に視認されるので、道路用標識をはじめ各種広告看板に好適である。さらにはオンデマンド方式で画像印刷が可能となるので、従来再帰反射シートに適用されていたシルクスクリーン印刷のように、画像別に版を作製する必要もなく、コスト削減上も極めて有用である。
再帰反射シートの作製方法(1)〜(3)の例について以下に説明する。
(1) 図6に示すように、前記した各樹脂層の下層に高屈折ガラスビーズ102を配合した焦点樹脂組成物を焦点層フィルム101として最適な乾燥膜厚が得られる様に塗布した後、常乾もしくは加熱により乾燥する。ここで、焦点層の最適な乾燥膜厚はガラスビーズの粒子径によって異なるが概ね10〜70μm程度である。次に、金属反射膜103からなる反射層を形成する。この時使用する焦点樹脂組成物塗料として好適なものとしては、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等をベースポリマー成分とするものであり、これらは非架橋タイプとして使用できるし、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネートの如き硬化剤を配合して熱硬化タイプとしても使用することができる。
また、上記における焦点樹脂組成物塗料塗布後の乾燥条件は、塗料原料として使用されるベース樹脂の種類、ベース樹脂中の反応性官能基の種類、硬化剤の種類および溶剤の種類に応じて適宜決定される。
使用するガラスビーズとして好適なものは屈折率1.90〜2.40さらに好ましくは2.10〜2.30のものが好適である。粒子径は5〜300μmさらに好ましくは20〜100μmのものが好適である。ビーズの粒子径が5μm未満になると、必要とされる焦点層の膜厚が極度に薄くなり、膜厚のコントロールが困難となる。一方、300μmを越える場合、必要とされる焦点層膜厚が極度に厚くなり、成形時の加熱工程での樹脂の流動が原因して、ガラスビーズの球径と同心円に樹脂を成形するのは困難である。屈折率が1.9未満であると、必要とされる焦点層膜厚が極度に厚くなり、ガラスビーズの球径と同心円に樹脂を成形するのは困難である。また、2.4を超える屈折率のビーズを製造する場合、結晶化を防止して、透明なガラスビーズを精度よく工業的に生産するのは至極困難である。
上記金属反射膜103を設ける方法としては、特に限定されるものではなく、通常の蒸着法、スパッタリング法、転写法、プラズマ法等が利用できる。特に作業性の面から蒸着法、スパッタリング法が好ましく用いられる。かかる金属層を形成するに際し使用される金属も特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、クロム、マグネシウム、亜鉛等の金属を挙げることができるが、これらのうち、作業性、金属反射膜の形成し易さ、光の反射効率耐久性等を考慮すると、アルミニウム、クロムまたはニッケルが特に好ましい。尚、上記金属反射膜は2種以上の金属から成る合金で形成してもよい。その厚さは、使用する金属によって異なるが5〜200nm、好ましくは10〜100nmである。上記金属反射膜の厚さが5nm未満の場合は、金属反射膜の隠ぺい性が十分でないために反射層としての目的が果せなくなり、また、逆に200nmを超える場合は、金属反射膜にクラックが入り易く、その上コスト高になるために好ましくない。
(2) 図7に示すように、前記した各樹脂層の下層に、ガラスビーズ固着層201の乾燥膜厚が、使用するガラスビーズ粒子径の10%の厚さから100μm好ましくは、使用するガラスビーズ粒子径の20%の厚さから80μmになる様に前記ガラスビーズ固着層形成用塗料を塗布してから、常温乾燥もしくは加熱乾燥により溶剤を揮散させ、次に高屈折ガラスビーズ202を埋込む。ガラスビーズ固着層を形成する際に使用される塗料の代表的なものとしては、反応性官能基を含有するフルオロオレフイン系共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、反応性官能基を有するアクリル系重合体をベース樹脂成分としアミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネートの如き硬化剤及び/又は硬化触媒を配合したものが挙げられる。ここにおいて、前記した各ベース樹脂成分は、単独で使用しても良いし、2種以上の混合物として使用することもできる。塗料形態としては、溶液型、非水分散型、水溶性タイプ、水分散タイプのいずれもが使用可能であるが、溶液型が特に好ましい。
次に上記(1)に記載した焦点樹脂組成物塗料を焦点層フィルム203として最適な乾燥膜厚が得られる様に塗布した後、常乾もしくは加熱により乾燥する。
上記した各工程における塗料の塗布は、スプレー塗装によっても良いし、ナイフコーター、コンマコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、フローコーターの如き塗装装置を使用して行なうこともできる。
また、本発明の各再帰反射シートの各層を形成するために使用される塗料として顔料を含まないクリヤー塗料を使用することにより着色のない再帰性反射シートが得られるが、第6図及び第7図の各層を形成する塗料として顔料を含む着色塗料を使用することにより着色した再帰性反射シートを得ることもできる。かかる着色塗料を得る際に使用される顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッドもしくはハンザイエローの如き有機系顔料や酸化鉄レッド、酸化鉄イエロー、チタンイエロー、コバルトブルーの如き無機系顔料等公知慣用のものが使用される。
このようにして得られる本発明の再帰性反射シートは、前記の如く金属反射膜204が形成された後、該金属反射膜に重ねて粘着剤層または接着剤層を形成し、さらに、必要に応じて該粘着剤層等に剥離紙や離型フィルム等の離型材を貼合わせて最終製品とすることもできる。
(3) 図8Aに示す通り、ポリエステルフィルム308上にラミネートされたポリエチレンのガラス球仮固着層307の表面に透明のガラス球302を複数平面状に埋め込む。ポリエチレンラミネートフィルム(ガラス球仮固着層307及びポリエステルフィルム308)を加熱しポリエチレンを軟化させ、上記ガラス球302を埋め込む。このガラス球302は、粒子径約5〜300μmであり、約1.8〜2.1の屈折率を持つ微粒子である。とりわけガラス球として好適なものは、約1.9〜1.95(特に好適なものは1.92〜1.93)の屈折率を持ち、粒子径が約20〜90μm(特に好適なものは40〜80μm)程度のものである。
次に上記ガラス球仮固着層307の表面から露出するガラス球302の半球面に金属反射膜303を蒸着法により形成する。この蒸着は、ガラス球仮固着層307の表面全面に行なわれる。そして後述するガラス球仮固着層307表面のガラス球302以外の部分へ蒸着した金属反射膜303は、そのままガラス球仮固着層307の表面に残り、その他の金属反射膜303はガラス球302と共に支持樹脂シート304(図8E)へ移される。上記金属反射膜303としては、アルミニウム反射膜が好適であり、また、金、銀、銅、ニッケル、クロム等の他の金属によって形成されるものであっても実施可能である。
次のステップとして、下記する2種類の構造を有する再帰性反射シートの製造方法がある。
(A)プライマー層305があるタイプ
(B)プライマー層がないタイプ
上記(A)の場合はプライマー層305の裏面に、(B)の場合は支持樹脂シート304の裏面に粘着剤が積層される。ガラス球仮固着層のガラスビーズを転写埋設させる支持樹脂フィルムのガラスビーズ転写性能の調整のため、支持樹脂シートに高分子または低分子可塑剤等を使用する場合がある。それら可塑剤等は経時的に粘着剤と支持樹脂シートとの界面または粘着剤層に移行して前記粘着剤の性能を低下させる。すなわち、粘着剤と支持樹脂シートの界面接着力の低下、粘着剤の基板への接着性能の低下等がおこる。この問題点を解消するため、すなわち支持樹脂シートから粘着剤層への可塑剤等の移行を防止するためにプライマー層が積層されることがある。
前記(A)のプライマー層305があるタイプは、前記した官能基を有する樹脂、またはそれらの樹脂及びそれらの樹脂の官能基と反応する官能基を持った硬化剤の中より、支持樹脂シートと層間接着性に優れる樹脂をプライマー層305用の樹脂として選択する。そして別途準備されたポリエステルフィルム306上にそれらのプライマー層305用として選択された樹脂溶液をコートして、熱風乾燥機を使用して乾燥を行なう。この時のプライマー層305の膜厚は3μm〜100μm好ましくは6μm〜50μmが好適であり、3μm未満であると、可塑剤等の移行防止の効果が低くなって好ましくなく、100μmを越えると反射シートの貼り付け等の作業性が低下して好ましくない。
次に、上記で作成されたプライマー層305の上方に、約10〜300μm、好ましくは約30〜100μmの一定の厚さを有する支持樹脂シート304を作製する(図8B)。この支持樹脂シート304に使用することができる樹脂は前記した官能基を有する樹脂が好適である。
前記(B)のプライマー層305のないタイプは、上記した再帰性反射シートの製造方法において、プライマー層作製の工程を省略して実施することができる。次に図8Cに示す通り、前記のような支持樹脂シート304をガラス球仮固着層307の表面に沿わす。そして図8Dに示すように、支持樹脂シート304をガラス球仮固着層307の表面へ押圧する。この押圧は、ガラス球302の金属反射膜303を蒸着した半球面が支持樹脂シート304内に埋設するよう行なう。この時、支持樹脂シート304のガラス球302の固着力を上げる為には、さらに支持樹脂シート304へのカップリング剤等の添加が効果的である。そして、図8Eに示すように、支持樹脂シート304表面から、ポリエステルフィルム308と共にガラス球仮固着層307を剥がす。このとき図8Eに示す通りガラス球302は、支持樹脂シート304に残り、支持樹脂シート304によって半球が埋没された状態に保持される。その後、常温で反応が進行する硬化形態(例えばイソシアネート硬化等)をプライマー層及び/又は支持樹脂シートに適用した場合には、次工程の加熱成形加工時の結合部の性能のバラツキをなくしたり、その後の自立形態の安定化を計る為に30〜40℃の環境でエージング処理を行ない、実質的に反応を終結しておくのが好ましい。またガラス球と支持樹脂シートの固着性を向上させるために120〜150℃での熱処理工程も効果的である。
次に、図8Fに示した状態に形成された支持樹脂シート表面を前記印刷用積層体の前記染料移行防止性着色性樹脂層12または前記染料移行防止層3あるいは可撓性樹脂層4で覆う。前記樹脂層が配置された支持樹脂シート304の裏面ポリエステルフィルム側306より、柄付きエンボスロール309で加熱圧着成形を行なう(図8G)。この加熱圧着の手段として、ロール表面温度が150〜240℃好ましくは170〜220℃の加熱ロールを通過させるのが好適である。150℃未満の温度で加熱成形が可能で、表面フィルムとの接着性が発現する支持樹脂シートは長期間のシートの自立形態を保持できず好ましくない。また、240℃を越えて加熱成形が可能な支持樹脂シートは、加熱成形加工を実施する時に保護フィルムとして使用するポリエステルフィルムが溶融するなど、加熱成形時の作業性の低下を引き起こして好ましくない。
加熱成形加工の後に裏面ポリエステルフィルム306を剥離し、再帰性高輝度反射シート原反を作製する。これにより、支持樹脂シート304の裏面側には、例えば幅200〜800μm、深さ100〜150μmのエンボス溝310が形成される。
該エンボス溝を埋め込むように粘着剤層または接着剤層を形成し、さらに、必要に応じて該粘着剤層等に剥離紙や離型フィルム等の離型材を貼合わせて最終製品とすることもできる。
本発明の印刷用積層体の下層に位置する再帰性反射シートは前記した再帰性反射シート原反の他に各種公知の再帰性反射シートを応用することが可能である。
上記工程を経て得られた本発明に係る印刷用積層体は、上記した再帰反射シート以外の構造体においても表面側とは反対側に染料移行防止層3や可撓性樹脂層4もしくは金属蒸着膜等が形成された後、更に必要に応じてこれらの層に重ねて粘着剤層または接着剤層を形成し、この粘着剤層または接着剤層等に離型紙または離型フィルム等の離型材を貼り合わせて、印刷用積層体の完成品とすることもできる。この時使用する離型材に、離型材表面の電気抵抗を低下させ、静電気の発生を防止するために、帯電防止剤を練り込み法によって添加したり、あるいは離型材表面に帯電防止剤を塗布したりすれば、シートを巻き出す時に発生する静電気やインクジェット印刷機による印刷時に前記印刷用積層体と印刷機との摩擦によって発生する静電気によって、印刷用ノズルから吐出されたインクの吐出方向が狂って、印刷画像に乱れが発生するのを防止することが可能となって好適である。なお、この時使用される帯電防止剤としては、各種界面活性剤、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボン等が挙げられる。たとえば、界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン等のカチオン系帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型、アルキルアラニン型等の両性系帯電防止剤、脂肪酸アルキロールアミド、ジ−(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン系帯電防止剤の各種界面活性剤が挙げられる。離型材6がポリエチレンテレフタレートの場合は、ポリマー合成時に例えばポリエチレングリコールを5重量%程度共重合させることもできる。
なお、前記離型材はあらかじめ加熱によりアニール加工を実施した2軸延伸ポリエステルフィルムを基材フィルムとして適用するのが好ましく、150℃で30分加熱したときにフィルムの巻き取り方向に1.0%以下、好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.6%以下の収縮率の2軸延伸ポリエステルフィルムを基材フィルムとして適用するのが好ましい。1.0%を超える収縮率の離型材は、本発明の印刷用積層体を加熱して昇華染色するときに、前記離型材側に前記積層体をカールさせて好ましくない。
また、必要に応じて前記表面樹脂層1を[M2+ 1-XM3+ X(OH)2]X+[An- X/n・mH2O]X-(M2+は2価の金属イオン、M3+は3価の金属イオン、An-はn価のアニオン、Xは0より大きく0.33以下、0≦m≦2)で示されるハイドロタルサイト類および金属酸化物の微粒子を含む塗膜形成組成物を塗布、乾燥させると親水性を呈する被膜を形成し、水に対して十分に小さい接触角を有する強固な表面になり、親水性による汚染防止を図ることができ、また再帰反射効果を阻害する結露による水滴の付着も防止できるので夜間の充分な再帰反射も確保できるので道路用標識をはじめ各種広告看板に適用すれば好適である。さらに該組成物は1μm以下の膜厚で充分な親水性能を発現し、また屋外で長期の親水性能を保持し、その上加熱によって表面樹脂層より昇華性の染色剤を印刷用積層体内部に浸透させる場合に、該染色剤の透過を阻害せず非常に好適である。前記金属酸化物の微粒子としては、酸化チタン粒子、特に酸化チタンのスラリー溶液が最も好ましいが、酸化チタンの代わりに、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化鉄などの遷移金属酸化物やその他の金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化スズ、アルミナ、マグネシア、酸化ストロンチウムなどを用いることも可能である。平均粒径としては0.001〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、特に、0.01〜0.1μmの平均粒径を備えていることが望ましい。
また、必要に応じて前記印刷用積層体の表面側に剥離性仮表示表面層を積層することも可能である。この時の仮表示表面層の製造は仮表示表面層用の樹脂を前記した塗装装置を使用して乾燥膜厚が約1μm〜約100μm、好ましくは約3μm〜約80μm、さらに好ましくは約5μm〜約60μmになるように調整すればよい。さらに必要に応じて前記仮表示表面層を2層以上の積層フィルムにして作製することも可能であり、その時は下層より順次上層を積層することにより製造される。なお、この場合には仮表示表面層の最上層側は昇華性の染色剤を含有したインクの吸収性があり、かつ前記表面樹脂層(A)と接している面側は、前記昇華性の染色剤に非親和性の樹脂で形成されていることがより好適である。
とりわけ表面側に仮表示表面層を積層した本発明の印刷用積層体は、市販のデジタルカメラで撮影した画像をインクジェットプリンターを使用して、印刷用積層体の仮表示表面層に直接印刷でき、その後に150〜200℃で数分間加熱処理をすれば、仮表示表面層に印刷された昇華性の染色剤は印刷用積層体内部に拡散浸透されて簡単に画像が形成される。この画像は、従来の銀塩写真並みの高解像度を有し、またJIS Z 9117に記載のサンシャインカーボン式促進耐候性試験機を使用して1000時間試験を実施した後(屋外南面垂直暴露5年に相当)にも画像に異常は発生せず、また退色も殆ど視認できない程高耐久性を示した。これを屋内保管に置き換えると100年を大きく上まわる保存安定性が得られた事になり、業務用、家庭用に従来の銀塩写真や一般に普及している水性インクジェットに比し、より大きなサイズの画像が従来よりも安価に作製でき、また銀塩写真において必要となる現像液の廃棄処理などが不要で、非常に環境適性にも優れ、さらには著しく鮮明な高耐久性で高保存性に優れた写真画像が得られる。
この時の加熱拡散印刷を実施する方法としては、間接加熱方法と直接加熱方法を挙げることができる。間接方法は熱風による加熱や遠赤外線の照射による加熱等があり、直接加熱には加熱板に直接印刷用積層体を接触させたり、熱ロールに巻き付ける等の方法がある。これらのどちらの加熱方法を選択しても良いし、あるいは併用してもよい。拡散染色させるには150〜200℃の高温加熱が必要とされるが、該印刷用積層体自体の温度を急激に前記した高温に昇温すれば、急激なシートの熱膨張が発生し、シートにシワ等の外観異常が発生して好ましくない。この問題を解決すべく本発明者が鋭意検討した結果、初期加熱は70〜130℃、それに続き120〜150℃、さらに昇温させる場合には140〜200℃の順に加熱し、さらには120〜150℃、70〜130℃、常温と順次熱勾配を付けて昇温、一定温度での加熱、降温のサイクルで拡散印刷を行なえば熱膨張や降温による収縮を緩和でき、シートにシワ等の外観異常が発生せず好適である。さらに初期昇温加熱は加熱時間全体の10〜60%、一定温度での加熱は加熱時間全体の20〜80%、降温は加熱時間全体の10〜40%にすれば好適であり、さらに好ましくは初期昇温加熱を加熱時間全体の15〜35%、一定温度での加熱は加熱時間全体の30〜70%、降温は加熱時間全体の15〜35%にすればより好適である。また、ロール加熱の場合には降温時に中央部が両端部より太くなっているクラウンロールを使用すれば降温によるシートの収縮が原因となって発生するシワが防止でき好適となる。この時のクラウンロールの勾配は幅1000mmあたり両端部と中心部の直径差が0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmとするのがさらに好適となる。また、間接加熱の場合には加熱機に入る入口に上下2本のロールでシートを挟み込み、順次駆動の懸かった下部サポートガイドロールにてシートを搬送し、必要に応じて搬送途中にシートのスムーズな搬送を補助すべく上部押さえロールを設けてシートを挟み込むようにすればさらに好適となる。このように間接加熱は当該印刷用積層体をロスすることなく必要数量を加熱処理することができ好適である。単版を加熱処理する場合には必要温度に加温された加熱板の上にシートを放置すればよいが、熱ロールにて連続処理を行なう場合には前記した条件に加え、巻き取り張力を5〜40kg/m幅、好ましくは10〜30kg/m幅とすればシートに発生するシワが防止できて好適である。5kg/m幅未満ではシートの巻き取り時にシワが発生して好ましくなく、40kg/m幅を超えると不必要な伸びがシートにかかり好ましくない。
以下実施例を用いて更に具体的に説明する。以下の実施例において「部」は重量部を示す。また「%」は重量%を意味する。
(実施例1、参考例)
図1に示す表面樹脂層1用の樹脂組成物を調整するに当り、フッ素系樹脂として重量平均分子量約45000なるヘキサフルオロプロピレン/エチルビニルエーテル/ベオバ9/アジピン酸モノビニル=50/15/20/15(重量比)共重合体の溶液(「ベオバ9」:ジャパン エポキシ レジン社製商品名、分岐脂肪酸のビニルエステル、溶剤はトルエン/n−ブタノール=70/30重量比の混合溶剤、不揮発分約50%)が約100部、エポキシ当量170なるソルビトールポリグリシジルエーテルが約7.4部、ジアザビシクロオクタンが約0.6部、チヌビン900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)が約1部、チヌビン292(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ヒンダードアミン系光安定剤)が約1部である樹脂組成物をポリエステルフィルム上に乾燥膜厚が約20μmになる様に塗布し、約140℃で約10分間加熱乾燥を行い、表面樹脂層1を得た。続いて上記で作製した表面樹脂層1上に、前記した参考例1で合成されたビニル系重合体(a−1)が約100部、硬化剤としてバーノックDN−950(大日本インキ化学工業社製ポリイソシアネートプレポリマー、不揮発分約75%)を約25部、配合した樹脂組成物を乾燥膜厚が約30μmになるように塗布し、約140℃で約10分間乾燥を行い、染料移行防止性着色性樹脂層12を作製した。こうして得られた印刷用積層体の染料移行防止性着色性樹脂層12の表面に、図4に示す通り、アクリル系粘着剤ファインタックSPS−1016(大日本インキ化学工業社製)約100部と架橋剤ファインタックTA−101−K(大日本インキ化学工業社製、粘着剤用硬化剤キレートタイプ)約2部の混合溶液を塗布し、約100℃で約5分間加熱乾燥を行い、厚さ約35μmの粘着剤層5を形成した。さらに、この粘着剤層5に、片面にシリコンコートした厚さ50μmの2軸延伸ポリエステル離型フィルムのシリコンコートを施した反対面に帯電防止加工をして、かつアニール加工を施した離型フィルム6(帝人デュポンフィルム社製、商品名A−31、150℃で30分加熱した時のフィルムの巻き取り方向の収縮率が0.4%)を貼り合わせ、その後支持フィルムであるポリエステルフィルムを剥離して最終製品とした。
次に別途準備したインクジェット方式の一種であるピエゾ方式のプリンター(武藤工業社製RJ−6000)により、転写紙(Gradess S-coat Paper)に画像を印刷した。昇華型インクジェット用インクは昇華性染料を含有する紀和化学工業社製インクジェット用インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタの6色セット)を使用した。上記で作製した印刷用積層体の表面樹脂層1に前記転写紙の印刷面を当て、ヒートバキュームアプリケーター(HUNT EUROPE社製 VacuSeal 4468)を使用して、真空度3.99×103Pa(30mmHg)にて設定温度約170℃で約7分間加熱圧着処理を実施し、印刷用積層体と前記転写紙を共に加熱することにより、前記転写紙に印刷された画像を印刷用積層体に拡散染色させて染料移行防止性着色性樹脂層12に画像を転写させた。
(実施例2、参考例)
図2に示す表面樹脂層1用の樹脂組成物を調整するに当り、フッ素系樹脂としてフルオネートK−703(大日本インキ化学工業社製、重量平均分子量40000、固形分水酸基価72、不揮発分約60%)、硬化剤としてバーノックDN−950、紫外線吸収剤としてチヌビン900、酸化防止剤としてチヌビン292を使用した。この実施例2における表面樹脂層1用樹脂組成物の配合割合は、フルオネートK−703が約100部、バーノックDN−950が約25部、チヌビン900が約1部、チヌビン292が約1部である。そして、前記組成物をポリエステルフィルム上に乾燥膜厚が約20μmになる様に塗布し、約140℃で約10分間加熱乾燥を行い、表面樹脂層1を得た。続いて上記で作製した表面樹脂層1上にポリカーボネート系無黄変型ウレタン樹脂NY−331(大日本インキ化学工業社製、不揮発分約25%、溶剤DMF、100%モジュラス約55kg/cm2)を用い、乾燥膜厚が約20μmになるように塗布し、約140℃で約10分間加熱乾燥を行い、着色性樹脂層2を作製した。続いて前記着色性樹脂層2上に前記した参考例2で合成されたビニル系重合体(a−2)が約100部、硬化剤としてバーノックDN−950を約50部、配合した樹脂組成物を前記着色性樹脂層2上に乾燥膜厚が約15μmになるように塗布し、約140℃で約10分間乾燥を行い、染料移行防止層3を作製した。続いて前記染料移行防止層3上に、アクリル系樹脂としてアクリディック49−394−IM(大日本インキ化学工業社製、不揮発分約50%)約100部、バーノックDN−950を約15部、配合した樹脂組成物を乾燥膜厚が約20μmになるように塗布し、約140℃で約10分間乾燥を行い、可撓性樹脂層4を作製した。
こうして得られた印刷用積層体の可撓性樹脂層4の表面に、図5に示す通り、実施例1と同様の方法で粘着剤層5及び離型フィルム6を形成し最終製品とした。
次に、実施例1と同様の方法で、表面樹脂層1に転写紙の印刷面を当て着色性樹脂層2に画像を転写させた。
(実施例3、参考例)
表面樹脂層1の樹脂組成物の配合液と着色性樹脂層2の配合液を下記のように変更する以外は、構造、寸法および製造方法等は実施例2の場合と同様である。この実施例での表面樹脂層1用樹脂組成物の配合例は、フルオネートK−700(大日本インキ化学工業社製、重量平均分子量約70000、固形分水酸基価48、不揮発分約50%)が約100部、硬化剤としてスミマールM−100C(住友化学工業社製メチル化メラミン樹脂、不揮発分100%)が約15部、硬化触媒としてネイキュアー3525(KING INDUSTRIES社製、ジノニルナフタレンジスルフォン酸)が約1.3部、チヌビン900が約1部、チヌビン292が約1部である。
着色性樹脂層2用の樹脂組成物の配合例は、バーノックD6−439(大日本インキ化学工業社製アルキッド樹脂、固形分水酸基価140、不揮発分80%)が約100部、硬化剤としてバーノックDN−980(大日本インキ化学工業社製ポリイソシアネートプレポリマー、不揮発分75%)を約82部である。
(実施例4、参考例)
表面樹脂層1用の樹脂組成物の配合液を下記のように変更する以外は、構造、寸法および製造方法等は実施例2の場合と同様である。この実施例では、表面樹脂層1用樹脂組成物の配合例は、アクリディックA−9521(大日本インキ化学工業社製シリコンアクリル樹脂、固形分50%)が約100部、硬化剤としてアクリディックHZ−1018(大日本インキ化学工業社製エポキシ基含有シリコン化合物、固形分55%)が約22部である。
(実施例5、参考例)
印刷用積層体の表面に印刷表示が可能な剥離性仮表示表面層を積層する以外は、構造、寸法および製造方法等は実施例2の場合と同様である。本実施例2で作製した印刷用積層体の表面樹脂層1上に水性フッ素樹脂として大日本インキ化学工業社製フルオネートFEM−600(固形分45%)を使用して乾燥膜厚が約15μmになるように塗布し、約110℃で約5分の加熱乾燥を実施した。続いて前記乾燥膜上に乾燥膜厚が約30μmになるようにインクジェット受理剤として高松油脂社製MZ−100(非晶質二酸化珪素、ポリウレタンおよびビニル系樹脂の混合物、固形分15%、固形分中の多孔質顔料含有率:約56%)を塗布し、約110℃で約5分の加熱乾燥を実施した。このように作製した仮表示表面層に実施例1と同様の方法にて画像を印刷した。その後熱風乾燥機(ヤマト科学社製Fine Oven DF6L)を約170℃に設定し、約7分間加熱処理を実施して昇華性染料を拡散浸透させて、前記印刷用積層体側の着色性樹脂層2に画像を印刷し、その後仮表示表面層をフィルム状態で剥離した。
(実施例6)
図2に示す染料移行防止層3として、アニール処理された2軸延伸ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム社製、商品名MX534、150℃で30分加熱した時のフィルムの巻き取り方向の収縮率が0.3%、膜厚97μm)上に、実施例2と同様の配合からなる着色性樹脂層2用の樹脂組成物を乾燥膜厚が約20μmになるように塗布し、約140℃で約10分間加熱乾燥を行い、着色性樹脂層2を作製した。
続いて前記着色性樹脂層2上に、実施例2に記載した表面樹脂層1用の樹脂組成物を乾燥膜厚が約20μmになるように塗布し、約140℃で約10分間加熱乾燥を行い、表面樹脂層1を得た。このようにして得られた印刷用積層体の染料移行防止層である2軸延伸ポリエステルフィルムの裏面に、実施例1と同様の方法で粘着剤層5及び離型フィルム6を形成し最終製品とした。次に、実施例1と同様の方法で、表面樹脂層1に転写紙の印刷面を当て着色性樹脂層2に画像を転写させた。
(比較例1)
染料移行防止層3の工程を省略する以外は、構造、寸法及び製造方法等は実施例2の場合と同様である。
(比較例2)
染料移行防止層3及び可撓性樹脂層4の工程を省略する以外は、構造、寸法及び製造方法等は実施例2の場合と同様である。
(比較例3)
表面樹脂層1の樹脂組成物の配合液と着色性樹脂層2、染料移行防止層3を下記のように変更し、可撓性樹脂層4を省略する以外は、構造、寸法および製造方法等は実施例2の場合と同様である。
両面易接着処理を行った2軸延伸ポリエステルの支持フィルム(アニール処理なし、染料移行防止層3として使用する。)上にポリウレタン系樹脂溶液バーノックL7−920(大日本インキ化学工業社製、不揮発分25±1%、溶剤トルエン、sec-ブタノール)を乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、約140℃で約10分間加熱処理を行い、着色性樹脂層2を作製した。続いて前記着色性樹脂層2上に下記配合の塩化ビニル系樹脂塗料を乾燥膜厚が約20μmになるように塗布し、約140℃で約10分間加熱乾燥を行い、表面樹脂層1を作成した。
(1) 塩化ビニル樹脂 100部
(2) エチレン/ビニルエステル樹脂 25部
(3) ポリエステル可塑剤 10部
なお上記塩化ビニル樹脂としては、ニカビニルSG−1100N(日本カーバイド工業社製)をエチレン/ビニルエステル樹脂としてはエルバロイ(三井・デュポンポリケミカル社製、商品名)をそれぞれ用い、またポリエステル可塑剤としてはプロピレングリコール、ブタンジオール、及びヘキサンジオールからなる混合二価アルコールとアジピン酸とから合成された数平均分子量(Mn)が約3000のものを用いた。
以上の実施例、比較例について画像転写後の結果と試験方法をまとめて次の表1〜4に示す。
(備考)表2〜5における黒星印1〜7は、(注1)〜(注7)に置き換えて説明する。
(注1)南面45°屋外暴露試験(試験場所:和歌山県)試験期間は一年
○(鮮明さを保持)>△(画像にややにじみあり)>×(画像がぼやけ不鮮明である)
(注2)ユウブコン(米国アトラス社製)促進耐候性試験
1サイクル:UV照射60℃×4時間/凝結40℃×4時間
試験時間:1000時間
○(鮮明さを保持)>△(画像にややにじみあり)>×(画像がぼやけ不鮮明である)
(注3)JIS Z 9117に記載のサンシャインカーボン式促進耐候性試験の条件に準拠、試験時間は1000時間。
○(鮮明さを保持)>△(画像にややにじみあり)>×(画像がぼやけ不鮮明である)
(注4)エリクセン試験機(東洋精機製作所製)
貼り付け基板:JIS H 4000に規定されるA50502Pの硬度H24の1mm厚さのアルミニウム板。
試験方法:印刷用積層体を基板に貼り付け、常温で48時間放置後、基板の後面から半径10mmのポンチを押し当て、6mm押し込んで曲面を作成する。その後、(注2)のユウブコン促進耐候性試験を1000時間行う。
○:外観異常なし。
△:押し出した曲面の頂上にクラック発生。
×:シート全体が基板より浮き上がる。
(注5)ヒートバキュームアプリケーター(HUNT EUROPE社製 VacuSeal 4468)を使用して、真空度3.99×103Pa(30mmHg)にて設定温度約170℃で約7分間加熱圧着処理を実施し、印刷用積層体と前記転写紙を共に加熱することにより、前記転写紙に印刷された画像を印刷用積層体に拡散染色させて画像を転写させた後のフィルムの状態。
○:外観異常なし。
×:シート全体にシワが発生。
(注6)試験方法は(注3)と同じ。色差ΔEはJIS Z 8722に規定する刺激値直読方式によって測定し、「JIS Z 8730色差表示方法6」に規定する色差式を用いて求めた。
(注7)試験方法は(注1)と同じ。色差ΔEは(注6)と同様にして求めた。
以上の表1〜4のとおり、実施例1は、可撓性樹脂層を形成していないため3次元曲面貼り適性は良くなかったが、画像の鮮明性保持力に優れ、加熱転写後のシートの状態も良好であった。実施例2〜5は、3次元曲面貼りにも適し、画像の鮮明性保持力に優れ、加熱転写後のシートの状態も良好であった。実施例6は、3次元曲面貼り適性は不良であるが、染料移行防止層にアニール処理された2軸延伸ポリエステルフィルムを使用しているため画像の鮮明性保持力に優れ、加熱転写後のシートにシワの発生は認められなかった。比較例1〜2は、染料移行防止層3を形成していないため画像のにじみ等が発生し、画像の鮮明性保持力が劣っていた。比較例3は、染料移行防止層に2軸延伸ポリエステルフィルムを使用しているため、3次元曲面貼り適性が不良で、かつ加熱転写後のシートにシワが発生していた。また、表面樹脂層1に塩化ビニル系樹脂を使用しているため、画像の鮮明性保持力が低く、画像の耐退色性も悪かった。したがって、染料移行防止層3を形成した本発明の印刷用積層体は、長期間の放置条件に対しても画像のにじみやぼやけが発生することなく画像の鮮明性を保つことができ、耐退色性に非常に優れた高耐候性の印刷積層体を実現することができた。また、2軸延伸ポリエステルを使用する場合には、アニール処理を施したフィルムを使用すると加熱によるシワの発生を防止できた。また、曲面貼りに使用する場合には、染料移行防止層3の下部に可撓性樹脂層4を形成すれば、十分に対応できることが分かった。