JP3596947B2 - 熱収縮性筒状多層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生肉、加工肉等の脂肪性不規則形状の食品類を内容物とし、これを熱収縮包装して包装体にする用途に利用する熱収縮性筒状多層フィルムの改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特公平4−4149号公報には筒の外側から筒の内側に向け、外表面樹脂層(S1層)、接着性熱収縮性樹脂層(T1層)、塩化ビニリデン系樹脂層(C層)、接着性熱収縮性樹脂層(T2層)、熱シール性樹脂層(S2層)の順番に積層された少なくとも5層からなる積層フィルムであって、S1層の最外部(C層から離れた側)のゲル分率(X)が25〜70重量%、T1層の最内部(C層側)のゲル分率(Y)が5%以上40重量%以下、(Y/X)で示されるゲル分率勾配が0.6以下の状態であり、かつ上記T1層とC層の接合部は電子線変性された状態の接合部であり、かつ熱シール性樹脂層(S2層)は実質的に未架橋である熱収縮性筒状多層フィルムが開示されていて公知である。
【0003】
この公報の記載によれば、上記の積層フィルムの製法は端的には、共押出法で筒状積層体を形成し、次にその筒状物の外面から電子線を照射し、その後延伸して、架橋延伸効果を活用する架橋ー延伸方法であるが、その特長的なことは、照射された電子線が筒表面側の層(S1、T1層)に架橋(ゲル分率)勾配を与えるように通過させてS1、T1層に十分な架橋を施し、さらに該T1層とC層との接合界面にも電子線変性を与えているが、減衰されてC層への照射線量は小さいものになっていて、さらに熱シール性樹脂層(S2層)は実質的に架橋変性がなされていないという特質を備えている。
【0004】
外表面樹脂層(S1)としては、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂と称されるものが用いられ、その役割は内容物が乱暴に取り扱われる際の耐酷使性を与えるものである。熱シール性樹脂層(S2層)としては、線状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂と称されるものが用いられ、その役割は熱接着性を与えるものである。接着性熱収縮性樹脂層(T1、T2)としては、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂(EAA)等と称されるものが用いられ、芯層(C層)、外表面樹脂層(S1)及び熱シール性樹脂層(S2層)との接着力を高める役割を与えるものである。芯層(C層)に用いられる塩化ビニリデン系樹脂としては、塩化ビニリデンと塩化ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレートとの共重合体樹脂が用いられ、積層フィルムに酸素遮断性を付与し、内容物の腐敗を防ぐ役割を持つ。
【0005】
上記方法によって作られたフィルムの第一の特長は、表面架橋樹脂層と実質的に未架橋のシール性樹脂層の組み合わせで発揮するシール性能の向上効果である。具体的には、シール完了までに要する時間が短縮でき、包装能力の向上要求に対処できる効果、及びシール適性温度領域を拡大し、実用時のシール不良発生率を大幅に低減する効果である。
【0006】
一方、最近、新たなポリオレフィン系樹脂として、いわゆるシングルサイト触媒(メタロセン触媒、カミンスキー触媒とも呼ばれる)によって得られるエチレンとブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等の超低密度で分子量分布の狭いエチレン−α・オレフィンの線状共重合体が市場に紹介され(例えば、Modern Plastics Internation−al,October、1993、P.99)、ガスバリア性樹脂を芯層とした多層フィルムにおける利用が考えられている(特開平6−320685号公報、EP0597502−A2、EP0634433−A2)。
【0007】
特開平6−320685号公報には、ガスバリア性樹脂からなる芯層(C層)と、オレフィン系樹脂からなる層を含む多層フィルムにおいて、少なくとも最内層にメタロセン触媒によって得られる超低密度で分子量分布の狭いエチレン−α・オレフィンの線状共重合体を用いることによりフィルムの臭気が改善されるとしている。またEP0597502−A2には、ガスバリア性樹脂からなる芯層を含む多層フィルムにおいてシングルサイト触媒を用いて重合されてなる超低密度で分子量分布の狭いエチレン−α・オレフィンの線状共重合体をヒートシール性内層あるいは他の層に用いる構成の積層フィルムが開示されており、積層フィルムの耐衝撃性が高められるとしている。また、EP0634433−A2には、ガスバリア性樹脂からなる芯層を含む多層フィルムにおいてシングルサイト触媒を用いて重合されてなる分子量分布が狭く、低融点のエチレン−α・オレフィンの線状共重合体をヒートシール性内層あるいは他の層に用いる構成の積層フィルムが開示されており、積層フィルムの熱収縮性が高められ、かつ耐衝撃性も向上するとしている。
【0008】
一方、本発明の関わる包装材の主たる使われ方は、肉加工業者(ミートパッカーと呼ばれる)において、牛、馬、豚類を各部位に分割し、分割された肉塊を筒状のバッグに入れて緊縮包装し、スーパーマーケット等の最終小売店に流通される際に用いられるものである。以下に、実際の肉加工業者における使用実態について述べる。
【0009】
まず、肉加工業者においては、屠殺冷蔵された牛、馬、豚類を各部位に分割し、その肉塊を筒状のバッグに入れて開口部のヒートシールを減圧室内で、袋の中も減圧になる状態下で行い、その後減圧室は常圧に戻される。次に、上記の真空包装された肉塊に70℃から90℃程度の温水を噴霧するか、あるいは上記真空包装された肉塊を70℃から90℃程度の温水にディッピングするなどして、フィルムを熱収縮させ、タイトな包装感を与え、また血液・肉汁等の滲出を防ぎ、腐敗防止効果を与える。この時の温水温度は、高温の条件では肉表面に”焼け”と呼ばれる変色が生じるので、80℃位のものが好まれ、従ってフィルムに対しては80℃位で高収縮するものが好まれる。熱処理された袋は、次に約5℃の冷水に漬けられて冷却される。
【0010】
近年、スーパーマーケット等の最終小売店においては、省力化・人件費削減に対する要求は非常に強く、肉加工業者に対して冷蔵生肉等をより小さなサイズに小割化して納入することを要請している。そのため、肉加工業者においては、屠殺冷蔵された牛、馬、豚類を各部位に分割する際に、従来よりもより小さいサイズに分割し、多数の肉塊を多数の小袋に緊縮包装して、出荷することが必要となってきている。その時に問題となるのは、上記の生肉包装過程において、減圧室内にて開口部を封鎖する工程である。すなわち、バッグを真空包装機にセットし、減圧室を密閉状態にし、真空ポンプでフィルムが肉塊にぴったりと密着する状態まで十分減圧し、次に減圧室内でヒートシールを行い、減圧室を大気圧に戻し、減圧室を開放してバッグを取り出すという手間のかかる工程である。したがって、真空包装する時に、バッグ同士に一部重なる部分がある状態で、一度に多数のバッグをセットして処理できることができれば、効率的な真空包装が行えるようになり、そのような積層フィルムの出現が期待されていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特公平4−4149号公報に記載の如く、塩化ビニリデン系樹脂層(C層)をガスバリア性芯層として、その表面層(S1層、T1層)が特定のゲル分率範囲であり、かつ特定のゲル分率の勾配をもち、かつ実質的にシール層樹脂が未架橋の多層フィルムにおいては、ヒートシール所要時間の短縮や、シール不良発生率の低減には効果はあるものの、異なるバッグ同士が重なりあった場合には、良好なシールを行うことができない。すなわち、シールを良好に行おうとすれば、バッグの重なりあった部分も熱融着して剥がれなくなり、無理に剥がそうとするとバッグが破れてしまい真空包装の意味をなさず、またバッグ同士の熱融着を防ごうとして熱融着条件を調整して、低温でヒートシールしようとすると内面のシールの不良が発生する結果となり、適切なシール条件を選ぶことができないのである。
【0012】
また、特開平6−320685号公報、EP0597502−A2、EP0634433−A2には、一度に多数のバッグを真空包装やヒートシールした場合でも、重なり合った異なるバッグの熱融着が防がれ、かつ内層のヒートシールを完全に行わせしめるという発想がそもそもないものである。すなわち、上記公報に記載の実施例の積層フィルムは、従来の熱収縮性筒状多層フィルムのもつ基本特性を兼備しつつ、異なるバッグ同士の熱融着を防ぎ、かつ内層のヒートシールを完全に行うことが不可能なものである。
【0013】
本発明の目的は従来の熱収縮性筒状多層フィルムのもつ低温熱収縮性、内面耐油性などの基本特性を兼備しつつ、バッグが重なり合った状態でヒートシールや真空包装処理を可能にする熱収縮性筒状多層フィルムを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
筒の外側から筒の内側に向け、外表面樹脂層(S1層)、接着性熱収縮性樹脂層(T1層)、塩化ビニリデン系樹脂層(C層)、接着性熱収縮性樹脂層(T2層)、熱シール性樹脂層(S2層)の順番に積層された少なくとも5層からなり、該S1層の最外表面部のゲル分率(X)が35重量%〜70重量%、該T1層の最内部(該C層に隣接する部分)のゲル分率(Y)が10重量%〜40重量%、(Y/X)で示されるゲル分率勾配が0.6以下であり、該T1層と該C層との接合部は電子線変性されており、かつ該S2層が実質的に未架橋である熱収縮性筒状多層フィルムにおいて、
(1)上記外表面樹脂層(S1層)の密度が0.900g/cm3 〜0.915g/cm3 であり、かつ融点が115℃〜125℃であるエチレン−α・オレフィンの共重合体からなり、
(2)上記熱シール性樹脂層(S2層)の密度が0.895g/cm3 〜0.915g/cm3 であり、かつ融点が94℃〜108℃であるエチレン−α・オレフィンの共重合体からなり、
(3)上記外表面樹脂層(S1層)と上記熱シール性樹脂層(S2層)との融点の差が10℃以上であることを特徴とする熱収縮性筒状多層フィルムである。
【0015】
以下、本発明の内容を詳述する。
まず本発明の積層フィルムと従来技術の積層フィルムとの相違点は、
(イ) 外表面樹脂層(S1層)の最外表面部のゲル分率(X)が35重量%〜70重量%、密度が0.900g/cm3 〜0.915g/cm3 、融点が115℃〜125℃のエチレン−α・オレフィンの共重合体であり、熱シール性樹脂層(S2層)が実質的に未架橋の状態で、その密度が0.895g/cm3 〜0.915g/cm3 、融点が94℃〜108℃であるエチレン−α・オレフィンの共重合体であり、
(ロ) 外表面樹脂層(S1層)と熱シール性樹脂層(S2層)との融点の差が10℃以上であることに集約される。
【0016】
上記の(イ)と(ロ)の役割について、図1を用いて説明する。図1は、本発明でいうバッグ同士を重ね合せてヒートーシール可能な温度領域を表す実験図である。図の横軸には温度を目盛っており、温度はサーモラベルにて測定したシールバーの温度である。縦軸には下記の3種のフィルムそれぞれの内面シール可能温度域、重ね合せシール可能温度域、重ね合せシール不可能温度域を順に示している。
【0017】
(A)本発明のフィルム(実施例1のフィルムNo.1に対応)
S1層の最外表面部のゲル分率(X)が52重量%
S1層の密度0.905g/cm3 、融点123℃のエチレン−α・オレフィンの共重合体
S2層は、実質的に未架橋で、その密度が0.895g/cm3 で、融点が94℃のエチレン−α・オレフィンの共重合体
(B)従来のフィルム(比較例1のフィルムNo.2に対応)
S1層の最外表面部のゲル分率(X)が52重量%
S1層、S2層が共に、密度0.895g/cm3 、融点94℃のエチ レン−α・オレフィンの共重合体
(C)従来のフィルム(比較例2のフィルムNo.3に対応)
S1層の最外表面部のゲル分率(X)が52重量%
S1層、S2層が共に、密度0.905g/cm3 、融点123℃のエチレン−α・オレフィンの共重合体
図1によると、本発明のフィルム(A)は、内面のヒートシールは約90℃から可能であり、バッグの外表面同士が熱融着してしまう温度は約150℃からである。その理由は、S1層は最外表面部のゲル分率(X)が52重量%であること、溶融したときに流動し難くいこと、S2層は実質的に未架橋の状態であり外表面同士を比べると熱融着し易い状態であること、そしてS1層とS2層の融点の差が29℃であることであり、それらの組み合せ効果によるものである。
【0018】
そして、バッグの重ね合せシール可能温度域は、約90℃から150℃で、その幅(以下、重ね合せシール可能温度幅)は約60℃である。本発明者らの実験解析によると、異なるバッグ同士が重なり合った状態で、ヒートシール可能となるためには、上記の重ね合せシール可能温度幅は、40℃以上必要である。なぜならば、真空包装機の細長いシールバーには、場所による温度のムラがあったり、バッグの重なり部分は、熱の伝達に遅れを生じたりするために、重ね合せシール可能温度幅が、40℃未満であると内面のシールが不完全になったり、あるいは逆にバッグ同士が熱融着して離れなくなる不良の発生率が非常に高くなり、実用に適さないものとなってしまうためである。
【0019】
一方、従来のフィルム(B)は、バッグの外表面同士の熱融着(重ね合せシール不可能温度域)が、約110℃から始まり、バッグの重ね合せシール可能温度域が、約90℃から110℃のものである。理由は、S1層がS2層と同じく融点94℃のエチレン−α・オレフィンの共重合体だからである。したがって、重ね合せシール可能温度幅が20℃程度と狭く、実際的にバッグの重ね合せシールが不可能なものである。
【0020】
また、従来のフィルム(C)は、バッグ内面のヒートシールが可能になるのが(内面シール可能温度域)約130℃からで、バッグの重ね合せシール可能温度域は、約130℃から150℃のものである。理由は、S2層がS1層と同じく融点123℃のエチレン−α・オレフィンの共重合体だからである。したがって、重ね合せシール可能温度幅が20℃程度と狭く、実際的にバッグの重ね合せシールが不可能なものである。
【0021】
すなわち、本発明のフィルムはS1層の最外表面部のゲル分率(X)が35重量%〜70重量%であり、S2層が実質的に未架橋であることにより、フィルムがヒートシールされたときに外表面(S1層)は流動し難く、バッグ同士が熱融着し難くなること、
一方、実質的に未架橋であるヒートシール層(S2層)同士は、外表面(S1層)同士に比べると熱融着し易い状態であること、
S1層は低密度で比較的融点の高い線状低密度ポリエチレン樹脂であり、S2層は低密度で比較的に融点の低い線状超低密度ポリエチレン樹脂であって、S1層とS2層との融点の差が10℃以上であること、
さらに、S2層の密度が0.895g/cm3 〜0.915g/cm3 、融点が94℃〜108℃であるエチレン−α・オレフィンの共重合体は実際の融点から考えられるよりもヒートシール開始温度が低いという特質を有すること、
そして、それらの組み合わせ効果によって、従来の熱収縮性筒状多層フィルムの持つ基本特性は兼備しつつ、バッグが重なり合った状態でヒートシール、真空包装処理を可能にする熱収縮性筒状多層フィルムとすることができる。
【0022】
ここで、S1層の最外表面部のゲル分率(X)の範囲としては35重量%〜70重量%であることが必要である。ゲル分率(X)が35重量%未満では、外表面同士の熱融着を防ぐ効果が不十分となり、またゲル分率(X)が70重量%を超えると、積層フィルムの延伸成膜性が劣ったものとなって、低温熱収縮性が不十分となるためである。
【0023】
S1層の密度は、0.900g/cm3 〜0.915g/cm3 であることが必要である。密度が0.900g/cm3 未満ではフィルムが巻き取られた状態でブロッキングし、取り扱い上不具合になり、また密度が0.915g/cm3 を超えると、バッグの低温熱収縮性が劣った結果となるためである。
融点の範囲は、115℃〜125℃であることが必要である。融点が115℃未満では、外表面の熱融着開始温度が低くなりすぎ、S2層との融点の差が小さいものとなり、重ね合せシール可能温度幅が狭くなり、また融点が125℃を超えると、バッグの低温熱収縮性が劣った結果となるためである。
【0024】
S2層の樹脂としては、密度の範囲は0.895g/cm3 〜0.915g/cm3 であることが必要である。密度が、0.895g/cm3 未満では、バッグの開口性が不良となり、バッグが手で簡単に開かなくなり、また密度が0.915g/cm3 を超えると、バッグの低温熱収縮性が劣った結果となるためである。
【0025】
融点の範囲は、94℃〜108℃であることが必要である。融点が94℃未満では、バッグ内面の耐油性が不良となり、また融点が108℃を超えると、内面のシール開始温度が高くなり、重ね合せシール可能温度幅が狭くなるためである。
S1層は融点が115℃〜125℃の樹脂から選択され、S2層は融点が94℃〜108℃の樹脂から選択されるが、S1層とS2層の融点の差の値が10℃以上である組み合わせであることが必要である。S1層とS2層の融点の差の値が10℃未満であると、重ね合せシール可能温度幅が40℃未満となり、重ね合せシール性に劣ったものとなるためである。S1層とS2層の融点差の上限値としては31℃である。融点差が31℃を超えるような組み合わせでは低温熱収縮性、内面耐油性等のバッグの兼備するべき特性を犠牲にせざるを得ないものとなるためである。
【0026】
S1層として用いる、密度が0.900g/cm3 〜0.915g/cm3 であり、かつ融点が110℃〜125℃であるエチレン−α・オレフィンの共重合体の具体例としては、エチレンと、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などで代表される炭素数4〜12のα・オレフィンとの共重合体樹脂をあげることができる。従来のチーグラー・ナッタ系触媒を重合触媒として使用して得られる線状低密度ポリエチレン樹脂、線状超低密度ポリエチレン樹脂から適切に選択して用いることができる。
【0027】
S2層として用いる密度が0.895g/cm3 〜0.915g/cm3 であり、かつ融点が94℃〜108℃であるエチレン−α・オレフィンの共重合体の具体例としては、エチレンと、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などで代表される炭素数4〜12のα・オレフィンとの共重合体樹脂であって、いわゆるシングルサイト触媒を重合触媒として使用して得られる線状超低密度ポリエチレン樹脂である。
【0028】
また、接着性熱収縮性樹脂層(T1、T2)としては、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレンーエチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、エチレンーアクリル酸共重合体樹脂(EAA)等の公知の樹脂を例示することができる。芯層(C層)に用いられる塩化ビニリデン系樹脂としては、塩化ビニリデンと塩化ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレートとの共重合体樹脂等を例示することができる。
【0029】
本発明の積層フィルムにおいて、フィルム全層の厚さは30〜100μmの範囲、好ましくは40〜80μmの範囲である。厚みが30μm未満では、フィルムの機械的強度が不足し、また100μmを超えるとフィルムのヒートーシールに要する時間が長くなり好ましくない。積層フィルムの中で芯層(C層)の厚みは3〜20μmの範囲が好ましい。C層の厚みが3μm未満では、積層フィルムのガスバリア性が不足し、20μmを超えると積層フィルムの耐酷使性が悪化するので好ましくない。
【0030】
また、外表面樹脂層(S1層)の厚みは2〜50μmの範囲、好ましくは5〜40μmの範囲である。厚みが2μm未満では、バッグの外表面同士の熱融着を妨げる効果が不足するので好ましくなく、また50μmを超えると積層フィルムに反りを生じるので好ましくない。熱シール性樹脂層(S2層)の厚みは5〜40μmの範囲、好ましくは5〜30μmの範囲である。厚みが5μm未満では、シール部の耐油性や機械的強度が不十分なものとなり好ましくなく、また40μmを超えると積層フィルムに反りを生じるので好ましくない。
【0031】
次に本発明のフィルムを得る好ましい製造方法について述べる。本発明の積層フィルムの製造方法は、▲1▼円環状多層ダイを用いて、塩化ビニリデン系樹脂を芯層(C層)として、C層の両面に隣接して、接着性熱収縮性樹脂層(T1、T2層)を介して外表面樹脂層(S1層)、熱シール性樹脂層(S2層)を配した筒状積層体を共押出法により形成し、▲2▼この筒状物の外面から電子線を照射した後、▲3▼筒状積層体を延伸して、架橋ー延伸効果を活用する架橋ー延伸方法であり、特公平4−4149号公報に開示されているのと同様にして製造することができる。成膜された筒状フィルムは、その片端をヒートシールし、ヒートシールされた線に沿って切断されて、筒状バッグとして生肉等の包装に用いられる。
【0032】
また、積層フィルムの外面のブロッキングや、バッグの開口性を改良するために積層フィルムの内外面にデンプン粉を0.1mg/m2 〜5mg/m2 程度塗布したり、S1層、S2層にエルカ酸アミド等のスリップ剤を添加することも出来る。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に詳述する。まず、本発明における物性の測定方法及び評価方法を示す。
<ゲル分率>
ASTMD2765に準拠した下記に示す操作によって求める。
【0034】
▲1▼ 所定の場所(S1層の場合は最外表面部、T1の場合は最内部)から下記のサンプリング法により、約50mgサンプリングした試料を、0.01mgの精度を持つ天秤にて計量する(W0g)。
▲2▼ あらかじめアセトン中に24時間浸して油分を除去した150メッシュのSUS製スクリーンのパウチと試料を合わせて同上の天秤にて計量する(W1g)。
【0035】
▲3▼ 試料をパウチで包む。
▲4▼ パウチで包んだ試料をセパラブルフラスコとコンデンサーを用いて沸騰パラキシレン中12時間保持する。
▲5▼ パウチで包んだ試料を真空乾燥機により恒量になるまで乾燥する。
▲6▼ パウチで包んだ試料を、同上の天秤にて計量する(W2g)。
【0036】
▲7▼ ゲル分率(重量%)={1−(W1−W2)/W0}×100
上記の計算式にてゲル分率を算出する。
なお、上記のゲル分率測定の試料調整時の注意として、
・積層物の特定層を試料とするときはエタノールを付けつつ、ゆっくり剥がしたものを試料とする。
【0037】
・パリソンの特定層の表層部を試料とするときは、剥がした層の平面性の良い部分より10mm×20mmの切片を取り、この表層部を光学顕微鏡のミクロトームを用いて20μmの厚みでスライスしたものを集めて試料とする。なお、延伸フィルムの特定層を剥がした後、熱収縮させパリソン状態に戻したものをスライスすることもできる。
【0038】
<融点>
JIS−K7121に準拠し、測定装置はパーキンエルマー社製DSC−7を使用した。なお、融点は融解ピークの中で最も高いピークの温度で示した。
<密度>
JIS−K7112のD法に準拠し、柴山科学器械製作所製密度勾配管法比重測定装置を使用した。比重液にはイソプロピルアルコール/水の系を用いた。
【0039】
<MI(メルトインデックス)>
ASTM D1238に準じて測定した。
<重ね合せシール可能温度幅>
折り幅400mm、長さ650mmのそれぞれの筒状バッグ2枚に、牛ロース(幅約250mm、長さ約300mm、厚み約150mm)を入れて、各々のバッグ端部の約10cmが重なり合うようにして、2袋同時に真空包装機にセットする。ついで減圧室を密閉状態にし、真空引きの後、所定の温度条件でヒートシールを行って肉塊を真空包装する。そして、真空包装機から2袋同時に取り出し、75℃の温湯に約4秒間ディッピングして熱収縮処理して後、5℃の冷水に漬けて冷却する。ヒートシール温度条件を70℃から20℃刻みで上げてゆき、バッグの内面部のシールをシールチェッカー(エージレスRシールチェッカー(三菱ガス化学(株)製))を用いてピンホールの有無をチェックし、ピンホールがなくなり内面部のシールが完全に行われるようになる温度をT1とする。また、冷水に漬けたときに2つの袋同士が、熱融着して離れなくなる温度をT2とする。(T2−T1)を重ね合せシール温度幅とした。
【0040】
なお、真空包装はインパルスシール式の古川製作所製FVM−WM型機を用いてシール時間2秒、冷却時間2秒の条件で行い、シール温度は電圧を変えて変更した。シール温度の測定は、サーモラベル(温度測定用ステッカー、アイピー技研株式会社製)をシールバーに貼り付けて行った。
【0041】
【0042】
<低温熱収縮性>
縦及び横10cmの正方形に切断したフィルムを75℃の熱水中に5秒間浸漬し、弛緩状態で収縮させ、縦及び横の元の長さに対する収縮率を平均して収縮率とする。なお、測定は成膜後15℃にて1週間保管したフィルムを用いて行った。
【0043】
記号 水準値及び評価
◎ :収縮率が33%以上、低温熱収縮性が非常に優れる。
○ :収縮率が28%以上33%未満、低温熱収縮性が優れる。
△ :収縮率が23%以上28%未満、低温熱収縮性が劣る。
× :収縮率が23%未満、低温熱収縮性が非常に劣る。
【0044】
<内面耐油性>
成膜されたシームレスの筒状フィルムの片端を最高強度が出る条件でヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断しバッグを製作した。バッグの底シール部に牛脂を塗布後、牛生肉を底シール部に当たるまで押し込み真空包装を行った。この包装物20個を90℃の熱水シャワーを下記に定められた時間通過させ、底シール部の破壊の有無を調べて内面耐油性を評価した。破壊個数が1個以内なら良好とした。
【0045】
記号 水準値及び評価
◎ :12秒後良好、内面耐油性が非常に優れる。
○ :8秒後良好、内面耐油性が優れる。
△ :4秒後良好、内面耐油性が劣る。
× :4秒後でも不良、内面耐油性が非常に劣る。
【0046】
<外面ブロッキング性>
400mm幅の積層フィルムを、巻きテンション1.0Kgで3インチの塩化ビニル製ボビンに500m巻き取った。巻き取ったフィルムを40℃にて1週間保管後に、フィルムを繰り出してその感触で評価した。
【0047】
【0048】
<バッグ開口性>
400mm幅の積層フィルムを、巻きテンション1.0Kgで3インチの塩化ビニル製ボビンに500m巻き取った。巻き取ったフィルムを28℃にて1週間保管後に、シームレスの筒状フィルムの片端をヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断し長さ800mmのバッグを製作した。製作したバッグのシールされていない方の口を手で開き、その感触で評価した。
【0049】
記号 水準値及び評価
◎ :手で簡単に開口できる。バッグ開口性に非常に優れる。
○ :多少抵抗はあるが実用上問題のないレベル、バッグ開口性に優れる。
△ :簡単に開口できず実用上問題のあるもの。バッグ開口性に劣る。
× :開口するのが非常に困難なもの。バッグ開口性に非常に劣る。
【0050】
<総合評価>
【0051】
つぎに、本実施例、比較例で用いた重合体を示す。
・VL1:エチレンーオクテン−1共重合体(密度0.905g/cm3、融点123℃、MI=0.8g/10分、ダウケミカル社製アテイン4203相当品)
・VL2:エチレンーオクテン−1共重合体(密度0.912g/cm3、融点125℃、MI=3.3g/10分、ダウケミカル社製アテイン4202相当品)
・VL3:エチレンーブテン−1共重合体(密度0.890g/cm3、融点113℃、MI=0.8g/10分、住友化学製エクセレンEUL130相当品)
・VL4:エチレンーブテン−1共重合体(密度0.900g/cm3、融点115℃、MI=2.0g/10分、住友化学製エクセレンVL200相当品)
・LL1:エチレンー4−メチルペンテン−1共重合体(密度0.915g/cm3、融点116℃、MI=2.3g/10分、三井石油化学製、ウルトゼックス1520L相当品)
・LL2:エチレンーヘキセン−1共重合体(密度0.912g/cm3、融点118℃、住友化学製スミカセンα−FZ102相当品)
・LL3:エチレンーヘキセン−1共重合体(密度0.918g/cm3、融点120℃、住友化学製スミカセンFZ104相当品)
・LL4:エチレンーオクテン−1共重合体(密度0.923g/cm3、融点122℃、MI=4.0、ダウケミカル社製ダウレックス5004相当品)
・SC1:エチレンーオクテン−1共重合体(密度0.895g/cm3、融点94℃、MI=1.6g/10分、ダウケミカル社製アフィニティーPF1140相当品)
・SC2:エチレンーオクテン−1共重合体(密度0.902g/cm3、融点100℃、MI=1.0g/10分、ダウケミカル社製アフィニティーPL1880相当品)
・SC3:エチレンーオクテン−1共重合体(密度0.910g/cm3、融点103℃、MI=1.0g/10分、ダウケミカル社製アフィニティーPL1845相当品)
・SC4:エチレンーオクテン−1共重合体(密度0.915g/cm3、融点108℃、MI=1.0g/10分、ダウケミカル社製アフィニティーFM1570相当品)
・SC5:エチレンーブテン−1共重合体(密度0.900g/cm3、融点86℃、MI=3.5g/10分、エクソン社製EXACT3027相当品)
・SC6:エチレンーブテン−1共重合体(密度0.885g/cm3、融点66℃、MI=2.2g/10分、エクソン社製EXACT4021相当品)
・EVA1:エチレンー酢酸ビニル共重合体(密度0.927g/cm3、酢酸ビニル含量10重量%、融点97℃、MI=3.0g/10分、東ソー社製ウルトラセンUE540相当品)
・EVA2:エチレンー酢酸ビニル共重合体(密度0.936g/cm3、酢酸ビニル含量15重量%、融点91℃、MI=1.5g/10分、東ソー社製ウルトラセンUE630相当品)
・EVA3:エチレンー酢酸ビニル共重合体(密度0.941g/cm3、酢酸ビニル含量20重量%、融点86℃、MI=1.5g/10分、東ソー社製ウルトラセンUE631相当品)
・PVD1:塩化ビニリデンー塩化ビニル共重合体(塩化ビニル含量17重量%、分子量9万、旭化成工業(株)製)
・PVD2:塩化ビニリデンー塩化ビニル共重合体(塩化ビニル含量20重量%、分子量11万、旭化成工業(株)製)
・PVD3:塩化ビニリデンーメチルアクリレート共重合体(メチルアクリレート含量8重量%、分子量9万、旭化成工業(株)製)
【0052】
【実施例1】
4台の押出機を使用して、S1層にVL1からなる層を、T1層とT2層にEVA2からなる層を、C層にPVD1からなる層を、S2層にSC1からなる層を用いて、各層をS1/T1/C/T2/S2(=10%/20%/10%/40%/20%)の5層構造にしてサーキュラー多層ダイから押出し、押し出した積層体を20℃の冷水で急冷して折り畳み、折り幅100mm、厚み660μmのパリソンを得た。このパリソンにENERGYSCIENCE INC.製のエレクトロカーテン<登録商標>(非走査型)を用いて、加速電圧175KV、照射線量12メガラッドの条件で電子線照射を行った。架橋されたパリソンに空気を注入し、約80℃に加熱し、縦約3倍、横約4倍にインフレーション2軸延伸して折り幅400mm、平均厚み55μmの筒状フィルム500mを3インチの塩化ビニル製ボビンに巻き取り、500m巻きのフィルムを計3巻を得た。
【0053】
また、得られた筒状フィルムの片端を最高強度が出る条件でヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断し、折り幅400mm、長さ650mmのバッグを製作した(フィルムNo.1)。
【0054】
【比較例1】
実施例1において、S1層にSC1からなる層を用いたことの他は、実施例1と同じことを繰り返して、折り幅400mm、平均厚み55μmの筒状フィルム500mを計3巻を得た。また、折り幅400mm、長さ650mmのバッグを製作した(フィルムNo.2)。
【0055】
【比較例2】
実施例1において、S2層にVL1からなる層を用いたことの他は、実施例1と同じことを繰り返して、折り幅400mm、平均厚み55μmの筒状フィルム500mを計3巻を得た。また、得られた筒状フィルムの片端を最高強度が出る条件でヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断し、折り幅400mm、長さ650mmのバッグを製作した(フィルムNo.3)。
【0056】
以上の実施例1、比較例1、2の評価結果を表1にまとめて記す。なお、表1中には、フィルムの構成とS1層とS2層に用いたエチレン−α・オレフィン線状共重合体の物性、ならびにS1層、T1層のゲル分率測定結果を合わせて示した。なお、ゲル分率はそれぞれ、▲1▼ S1層とT1層の全体、▲2▼ S1層の最外部(C層から離れた側の表層部をミクロトームを用い20μmの厚みでスライスし試料とした)の部分のゲル分率(X)、▲3▼ T1層の最内部(C層側の表層部をミクロトームを用い20μmの厚みでスライスし試料とした)の部分のゲル分率(Y)について測定し、(X)と(Y)からゲル分率勾配(Y/X)を算出したものを示した。
【0057】
表1中のフィルムNo.1〜No.3のフィルムの重ね合せシール可能温度幅の結果を示したものが図1で、本発明のフィルムと従来技術のフィルムとの相違点を図示したものである。重ね合せシール可能温度幅が、本発明のフィルム(フィルムNo.1)は約60℃てあるのに対して、従来技術のフィルム(No.2、No.3)は、重ね合せシール可能温度幅が20℃である。そして、本発明のフィルムからなるバッグは、一度に多数のバッグを重なり部分が有るような緊密な状態で真空包装機にセットして、効率的に処理することができるものであることがわかった。一方、従来技術のフィルムは、重ね合せシール可能温度幅が20℃と狭いので、真空包装機の細長いシールバーの場所による温度ムラや、バッグの重なり合った部分は伝熱の遅れが生じたりするものであるために、一度に多数のバッグを真空包装処理しようとすれば、バッグの重なり合った部分が熱融着して離れなくなったり、あるいは熱融着を防ごうとすれば、内面のシールが不完全になったりして、不良率が多く効率的な真空包装処理に適さないものであることがわかる。
【0058】
【表1】
【0059】
【実施例2】
実施例1において、T1層とT2層にEVA1からなる層を、C層にPVD2からなる層を用い、電子線照射条件を表2に示すように、7メガラッド、10メガラッド、12メガラッド、15メガラッドと変更したことの他は、実施例1と同じことを繰り返して、折り幅400mm、平均厚み55μmの筒状フィルム500m巻をそれぞれ3巻得た。ただし、延伸温度は、各フィルムにおいて折り幅400mm,平均厚み55μmになるように微調整をして成膜した。
【0060】
また、得られた筒状フィルムの片端を最高強度が出る条件でヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断し、折り幅400mm、長さ650mmのバッグを製作した(フィルムNo.4〜No.7)。
【0061】
【比較例3】
実施例2において、電子線の照射量を3メガラッド、17メガラッドと変更したことの他は、実施例2と同じことを繰り返して、折り幅400mm、平均厚み55μmの筒状フィルム500m巻をそれぞれ3巻得た。ただし、延伸温度は、各フィルムにおいて折り幅400mm,平均厚み55μmになるように微調整をして成膜した。
【0062】
また、得られた筒状フィルムの片端を最高強度が出る条件でヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断し、折り幅400mm、長さ650mmのバッグを製作した(フィルムNo.8、No.9)。
以上の実施例2、比較例3の評価結果を表2にまとめて記す。なお、表2中には、電子線照射条件とS1層、T1層のゲル分率測定結果を合わせて示した。
【0063】
なお、フィルムNo.4〜No.9のフィルムのS2層のゲル分率の測定値は、いずれも0.5重量%未満であり、実質上、未架橋であった。
表2の結果によれば、S1層の最外表面部のゲル分率(X)としては、35重量%から70重量%が好ましいことがわかる。S1層の最外表面部のゲル分率(X)が35重量%より小さいと重ね合せシール可能温度幅が狭くなり、効率的な真空包装処理に適さなくなることがわかる(フィルムNo.8)。
【0064】
また、S1層の最外表面部のゲル分率(X)が70%を超える条件では、低温熱収縮性が劣ったものとなり、冷蔵生肉等の食品を内容物にし、熱収縮させてタイトに包装する包装材として不満足なものとなってしまうことがわかる。この理由は、部分的にゲル分率が高くなりすぎて、延伸成膜性が劣ったものとなり、延伸温度を高めに設定しなければ、所定の延伸倍率のフィルムを得られないために、低温熱収縮率が低い値となったと思われる(フィルムNo.9)。
【0065】
したがって、本発明のフィルムとして、ゲル分率の範囲は、S1層の最外表面部のゲル分率(X)は35重量%〜70重量%であることが必要であり、T1層の最内部(C層側)のゲル分率(Y)の範囲は10重量%〜40重量%であり、かつゲル分率の勾配(Y/X)として0.6以下であることがわかる。また、S1層、T1層全体のゲル分率としては、20重量%から65重量%の範囲になっていることがわかる(フィルムNo.4〜No.7)。
【0066】
【表2】
【0067】
【実施例3】
4台の押出機を使用して、S1層、T1層、C層、T2層、S2層に表3に示す各樹脂層を用いて、各層をS1/T1/C/T2/S2(=6.7%/33.3%/13.3%/26.7%/20%)の5層構造にしてサーキュラー多層ダイから押出し、押し出した積層体を20℃の冷水で急冷して折り畳み、折り幅100mm、厚み720μmのパリソンを得た。このパリソンにENERGYSCIENCE INC.製のエレクトロカーテン<登録商標>(非走査型)を用いて、加速電圧200KV、照射線量10メガラッドの条件で電子線照射を行った。架橋されたパリソンに空気を注入し、約80℃に加熱し、縦約3倍、横約4倍にインフレーション2軸延伸して折り幅400mm、平均厚み60μmの筒状フィルム500mを3インチの塩化ビニル製ボビンに巻き取り、500m巻きのフィルムを計3巻を得た。ただし、延伸温度は各フィルムにおいて、折り幅400mm、厚み60μmになるように微調整をして成膜した。
【0068】
また、得られた筒状フィルムの片端を最高強度が出る条件でヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断し、折り幅400mm、長さ650mmのバッグを製作した(フィルムNo.10〜13)。
【0069】
【比較例4】
S1層、T1層、C層、T2層、S2層に表3に示す各樹脂層を用いたことの他は、実施例3と同じことを繰り返して、折り幅400mm、平均厚み60μmの筒状フィルム500m巻をそれぞれ3巻を得た。
また、得られた筒状フィルムの片端を最高強度が出る条件でヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断し、折り幅400mm、長さ650mmのバッグを製作した(フィルムNo.14〜16)。
【0070】
なお、実施例3及び比較例4のS1及びT1層における厚み方向のゲル分率の分布を調べるために、VL4とEVA3の10μmのフィルムを作成し、所定の厚みになるように緊密に重ね合わせて同一条件で照射した後、各フィルムのゲル分率を測定分析した結果を図2に示す。この照射条件では、S1層の最外部のゲル分率(X)は50重量%程度であり、またT1層の最内部(C層側)のゲル分率(Y)は20重量%であり、かつゲル分率の勾配(Y/X)として0.6以下であることがわかる。VL4のかわりにVL1、VL2、VL3、LL1、LL3、SC4、の10μmのフィルムを用いて、上記と同じことを繰り返して、各フィルムのゲル分率を測定分析した。S1層の最外部にあたる外側から20μm分のフィルムのゲル分率の結果を以下に示す。
【0071】
VL1:(X)=48重量%、 (Y/X)=0.42
VL2:(X)=46重量%、 (Y/X)=0.43
VL3:(X)=49重量%、 (Y/X)=0.41
LL1:(X)=45重量%、 (Y/X)=0.44
LL3:(X)=43重量%、 (Y/X)=0.47
SC4:(X)=45重量%、 (Y/X)=0.44
また、フィルムNo.10〜フィルムNo.23のフィルムのS2層のゲル分率は全て0.5重量%以下で、実質的に未架橋であった。
【0072】
以上の実施例3、比較例4の評価結果を表3にまとめて示す。表3により、まず本発明のS1層は、密度が0.900g/cm3〜0.915g/cm3で、融点が115℃〜125℃のエチレン−α・オレフィンの共重合体であることが必要な理由を説明する。
すなわち、S1層の最外表面部が特定のゲル分率をもつためフイルムの最外層側が熱融着し難くなる性質、S1層とS2層の樹脂の融点の差、さらにS2層のエチレン−α・オレフィンの共重合体が融点の低下分よりもさらに低温でヒートシールされ易いという性質を持つこと等により、相乗効果が最大限に高められ、優れた(バッグ同士の)重ね合わせシール性を発現しているものである。また、S1層に融点の高いエチレン−α−オレフィンの共重合体を用い、S2層との融点差を広くすると、重ね合せシール可能温度幅が広くなる傾向にある(フィルムNo.11、12とフィルムNo.10、13との比較)。S1層の融点が高くなると、その際に密度も高くなる傾向があり、バッグの低温収縮性は若干低下する結果となる(フィルムNo.12、13とフィルムNo.10、11の比較)。したがって、真空包装時の効率を優先する場合と、低温熱収縮性を重視する場合とによって、選ばれるS1層の樹脂を変更して対応することができる。
S1層の樹脂の密度が0.915g/cm3を超えるとバッグの低温熱収縮性が30%に達せず、冷蔵生肉等の食品を内容物にし、熱収縮させてタイトに包装する包装材としては不都合である(フィルムNo.14)。また、S1層の密度が0.900g/cm3未満では、ロール状に巻き取られた状態でフィルム外面のブロッキングが起き不都合である(フィルムNo.15)。
【0073】
S1層に密度が0.915g/cm3、融点が108℃のエチレン−α−オレフィンの共重合体を用いた場合は、S2層との融点差が14℃の場合でも、重ね合せシール可能温度幅が狭いものであった(フィルムNo.16)。この場合、S1層、S2層の両者が、密度0.895g/cm3〜0.915g/cm3であり、かつ融点が94℃〜108℃のエチレン−α−オレフィンの共重合体であるために、融点差は14℃あっても、重ね合せシール可能温度幅としては小さいものになってしまう。このことは、本発明に於いてS1層として使用する密度が0.900g/cm3〜0.915g/cm3であり、かつ融点が115℃〜125℃であるエチレン−α−オレフィンの共重合体のヒートシール特性と、本発明に於いてS2層として使用する密度が0.895g/cm3〜0.915g/cm3であり、かつ融点が94℃〜108℃であるエチレン−α−オレフィンの共重合体のヒートシール特性との差を利用することの大切さを示している。
【0074】
【表3】
【0075】
【実施例4】
S1層、T1層、C層、T2層、S2層に、表4に示す各樹脂層を用いたことの他は実施例3と同じことを繰り返して折り幅400mm、平均厚み60μmの筒状フィルム500mを3インチの塩化ビニル製ボビンに巻き取り、500m巻きのフィルムを計3巻を得た。ただし、延伸温度は各フィルムにおいて、折り幅400mm、厚み60μmになるように微調整をして成膜した。
【0076】
また、得られた筒状フィルムの片端を最高強度が出る条件でヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断し、折り幅400mm、長さ650mmのバッグを製作した(フィルムNo.17〜19)。
【0077】
【比較例5】
S1層、T1層、C層、T2層、S2層に、表4に示す各樹脂層を用いたことの他は、実施例3と同じことを繰り返して、折り幅400mm、平均厚み60μmの筒状フィルム500m巻をそれぞれ3巻を得た。
また、得られた筒状フィルムの片端を最高強度が出る条件でヒートシールを行い、ヒートシール線に沿って切断し、折り幅400mm、長さ650mmのバッグを製作した(フィルムNo.20〜24)。
【0078】
フィルムNo.24のS1及びT1層における厚み方向のゲル分率の分布を調べるために、LL4の10μmのフィルムを作成し、所定の厚みになるように緊密に重ね合せて同一の条件で照射した後、S1層の最外部にあたる外側から20μm分のフィルムのゲル分率を測定し、その結果を以下に示す。
LL2:(X)=44重量%、 (Y/X)=0.45
LL4:(X)=42重量%、 (Y/X)=0.48
以上の実施例4、比較例5の評価結果を表4にまとめて示す。表4より、本発明のS2層は、密度が0.895g/cm3〜0.915g/cm3であり、かつ融点が94℃〜108℃のエチレン−α・オレフィンの共重合体であることが必要な理由、およびS1層とS2層の融点の差が10℃以上の値であることが必要な理由を説明する。
【0079】
すなわち、S2層の密度が0.895g/cm3〜0.915g/cm3であり、かつ融点が94℃〜108℃のエチレン−α・オレフィンの共重合体であり、S1層とS2層の融点の差が10℃以上の値である場合には、フィルムの重ね合せシール温度幅が広く、低温熱収縮性、内面耐油性、外面ブロッキング性、バッグ開口性の全てについて満足できる評価結果であることがわかる(フィルムNo.17〜No.19)。S2層に比較的高密度で、高融点のエチレン−α・オレフィンの共重合体を用いた場合は、バッグの開口性に優れた結果となり、したがって真空包装時の効率を優先する場合と、バッグの開口性を重視する場合とによって、選ばれるS2層の樹脂を変更して対応することができる(フィルムNo.17とNo.19の比較)。
【0080】
また、S2層の融点が94℃未満の場合は、バッグの内面耐油性が不満足な結果となることがわかる(フィルムNo.20〜No.21)。また、密度が0.895g/cm3未満の場合では、バッグの内面耐油性が不満足な結果であるとともに、バッグの開口性も不十分な結果となることがわかる(フィルムNo.21)。
【0081】
S1層とS2層の融点の差が10℃未満である場合、重ね合せシール可能温度幅が40℃に満たず、不満足なものであることがわかる(フィルムNo.22、No.23)。また、S1層とS2層の融点の差を大きくしようとして、S2層として融点の低いものを選べば、バッグ内面の耐油性が不十分となり(フィルムNo.20、No.21)、またバッグ内面の耐油性を保ちつつ融点の差を広げるために、S1層に融点の高い樹脂を選択すると、低温熱収縮性が劣ったものとなり不満足なものとなってしまうことがわかる(フィルムNo.23)。そのとき、低温熱収縮性を保ったまま、融点の差を広げようとして、例えばS1層にVL4を用い、S2層にEVA2を用いると、やはり内面耐油性が劣った結果となり不満足なものであった(フィルムNo.24)。
【0082】
【表4】
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の構成を満たすことにより、低温熱収縮性・内面耐油性等の従来の基本特性を兼ね備え、かつバッグが重なり合った状態でヒートシール、真空包装処理が可能な熱収縮性筒状積層フィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明および従来技術の積層フィルムの内面シール可能温度域、重ね合せシール可能温度域、及び重ね合せシール不可能温度域を示す実験図である。
【図2】実施例3における延伸前のS1層、T1層の厚み方向のゲル分率を示す実験解析図である。
Claims (1)
- 筒の外側から筒の内側に向け、外表面樹脂層(S1層)、接着性熱収縮性樹脂層(T1層)、塩化ビニリデン系樹脂層(C層)、接着性熱収縮性樹脂層(T2層)、熱シール性樹脂層(S2層)の順番に積層された少なくとも5層からなり、該S1層の最外表面部のゲル分率(X)が35重量%〜70重量%、該T1層の最内部(該C層に隣接する部分)のゲル分率(Y)が10重量%〜40重量%、(Y/X)で示されるゲル分率勾配が0.6以下であり、該T1層と該C層との接合部は電子線変性されており、かつ該S2層が実質的に未架橋である熱収縮性筒状多層フィルムにおいて、
(1)上記外表面樹脂層(S1層)の密度が0.900g/cm3 〜0.915g/cm3 であり、かつ融点が115℃〜125℃であるエチレン−α・オレフィンの共重合体からなり、
(2)上記熱シール性樹脂層(S2層)の密度が0.895g/cm3 〜0.915g/cm3 であり、かつ融点が94℃〜108℃であるエチレン−α・オレフィンの共重合体からなり、
(3)上記外表面樹脂層(S1層)と上記熱シール性樹脂層(S2層)との融点の差が10℃以上であることを特徴とする熱収縮性筒状多層フィルム。
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