JP3591034B2 - ガスボンベおよびその製造方法 - Google Patents

ガスボンベおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、各種のガスボンベ、特に自動車等に搭載するのに好適なガスボンベ、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、米国その他の諸外国で、天然ガスを燃料とする自動車が低公害車として注目されている。そのような自動車には、一般にCNGタンク(Compressed Natural Gas Tank)と呼ばれるガスボンベが搭載される。
【0003】
そのような自動車用ガスボンベは、従来、スチールやアルミニウム合金等の金属で作られているが、金属製のものは重く、燃費を低下させる。加えて、天然ガスの単位重量あたりの発熱量はガソリンの半分程度にすぎないから、無補給で走行できる距離をガソリン車並に高めようとするとガソリンの場合の約2倍もの天然ガスを搭載しなければならず、これがまた車両総重量を増大させ、燃費を低下させている。そのため、燃費向上の一策として、ガスボンベの軽量化が検討されている。
【0004】
ところで、特公平5−88665号公報には、ガスバリア性を有するプラスチック製の内殻を、耐圧性のFRP(繊維強化プラスチック)製外殻で覆っているガスボンベが記載されている。このガスボンベは、本質的にプラスチックからなるものであるから金属製のものにくらべてかなり軽量であり、これを自動車用の天然ガスボンベとして用いると、燃費の向上が期待できる。
【0005】
ところが、FRPは金属に比べて脆性であるから、外部から大きな衝撃力を受けた際、クラック等が発生するおそれがある。クラックが伝播すると、FRP製外殻の耐圧性、強度が急激に低下するおそれがある。また、外見上の損傷は大したことがなくても、同じ箇所に何度も衝撃力を受けると、クラックや補強繊維の損傷が進展し、耐圧性、強度が低下するおそれがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような問題点に着目し、ガスボンベのFRP製外殻に靱性をもたせ、高耐圧性を維持しつつ、クラックや補強繊維の損傷の伝播を抑えて、耐衝撃性、耐疲労性を向上することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、そのようなガスボンベを、容易にかつ低コストで製造できるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的に沿う本発明のガスボンベは、ガスバリア性を有する内殻と、該内殻を覆うように設けた耐圧性のFRP製外殻とを有するガスボンベであって、前記外殻は、下記構成要素[A]、[B]、[C]を含み、かつ、構成要素[A]は、構成要素[B]に含まれた状態で一体成形されているとともに、外殻の切断面に現れる前記一体成形部分の周囲に、構成要素[C]のみからなる部分(10)が現れていることを特徴とするものからなる。
[A]:補強繊維束
[B]:熱硬化性樹脂の硬化物
[C]:エラストマーおよび/または熱可塑性樹脂
【0009】
また、本発明に係るガスボンベの製造方法は、ガスバリア性を有する内殻の周りに、下記構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[A]に、構成要素[B]が含浸され、かつ、構成要素[C]が表面近傍に存在するヤーンプリプレグを用いて、耐圧性のFRP製外殻を形成することを特徴とする方法からなる。
[A]:補強繊維束
[B]:熱硬化性樹脂
[C]:エラストマーおよび/または熱可塑性樹脂
【0010】
図1は、本発明の一実施態様に係るガスボンベを示している。図1において、ガスボンベ1は、ガスバリア性を有する内殻2と、この内殻2を覆うように設けた耐圧性のFRP製外殻3とを有する。このガスボンベ1は、全体として胴部Aと、それに続く鏡板部Bと、ノズル取付用口金4およびそれに装着されたノズル5と、ボンベ底部に設けられたボス6とを有している。
【0011】
上記において、内殻2は、ガス漏れを防ぐ作用をもつ。また、後述するように耐圧性の外殻を形成するときの芯体としても作用する。
【0012】
この内殻2は、たとえばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂で作られている。耐衝撃性に優れるという意味では、ABS樹脂が好ましい。そのような樹脂製の内殻2は、たとえば、周知のブロー成形法によって製造でき、ブロー成形の際にノズル取付用口金4と一体的に結合できる。複合ブロー成形法を用い、ガスシール性に優れる、たとえばポリアミド樹脂の層を、剛性に優れる、たとえば高密度ポリエチレン樹脂の層で挟んだ多層構造とすることもできる。また、内殻2は、FRPで作られていてもよい。そのようなFRP製の内殻2は、たとえば、後述するような、外殻3に用いる補強繊維の、繊維長2〜10mm程度の短繊維を含む樹脂を射出成形することによって製造することができる。さらに、内殻2は金属、たとえば薄いアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金から構成されていてもよい。
【0013】
内殻2は、上述したようにガス漏れを防ぐ作用をもっている。かかる作用を向上させるために、内表面および/または外表面にガスバリア層を形成するのも好ましい。たとえば、ブロー成形に際して吹込ガスとしてフッ素を含む窒素ガスを用いると、内殻2の内表面にフッ素樹脂の被膜からなるガスバリア層を形成することができる。また、外表面に銅、ニッケル、クロム等の金属のメッキ被膜を形成してガスバリア層とすることもできる。金属メッキ被膜の形成は、電解メッキ法や無電解メッキ法によることができる。内殻2を複合ブロー成形法によって製造する場合、内側にガスバリア性に優れたポリアミド樹脂等の層を配し、外側に、易メッキ性の、たとえばABS樹脂の層を配して金属メッキ被膜の成形を容易にすることもできる。
【0014】
内殻には、また、その内面に2.5〜5cm程度の間隔で周方向に延びるリング状のリブを設けることができる。そのような内殻は、たとえば、リブ付のプラスチック製の半割の内殻を作り、それらを接合、一体化することによって得ることができる。このリブは、内殻の強度を向上させ、後述するFRPの外殻の形成時における内殻の変形を防ぎ、外殻を形成するFRP層の補強繊維の蛇行や偏在による外殻の強度低下や強度のばらつき、ひいては耐圧性能の低下を防ぐのに役立つ。
【0015】
一方、外殻3は、耐圧性能をもたせると同時に、ガスボンベ1全体の軽量化をはかるという観点から、FRPで構成されている。そのようなFRP製の外殻3は、上述した内殻2を、いわゆるマンドレルとして、その周りに周知のフィラメントワインディング法やテープワインディング法によって樹脂を含む補強繊維糸の巻層を形成し、成形することによって構成することができる。このとき、内殻2の外表面を平均高さが10〜200μm程度の粗面に形成しておくと、ワインディング時における補強繊維糸の滑りを防止でき、補強繊維の分布の乱れを少なくできるので好ましい。
【0016】
この外殻は、図2に示すように、構成要素[A]、[B]、[C]からなっている。
構成要素[A]は、補強繊維束である。繊維束を構成する単繊維の本数は、好ましくは1,000〜500,000フィラメント、より好ましくは3,000〜50,000フィラメントの範囲内であるのがよい。また、太物の繊維束を得るためには、複数本の繊維束を合糸してもよく、逆に細物を得るためには太物を分繊してもよい。
【0017】
補強繊維糸としては、炭素繊維糸や黒鉛繊維糸、ガラス繊維糸、有機高弾性率繊維(たとえばポリアラミド繊維)等の高強度、高弾性率繊維糸の少なくとも1種を用いることができる。これらの補強繊維糸は、屈曲による応力集中を小さくし、ボイドの発生を少なくすることができるという意味で、開繊性に優れる無撚繊維糸であるのが好ましい。そして、そのような補強繊維糸のなかでも、比強度、比弾性率に優れ(軽量化効果に優れ)、ワインディング時における糸切れや毛羽の発生がほとんどなく、生産性の向上はもとより、糸の継目や毛羽の混入による強度特性の低下や耐衝撃性能の低下を防止できるようになる、炭素繊維糸が好ましい。
【0018】
構成要素[B]は熱硬化性樹脂(の硬化物)からなる。
熱硬化性樹脂としては、とくにエポキシ樹脂が挙げられ、一般に硬化剤や硬化触媒と組み合わせて用いられる。とくに、アミン類、フェノール類、炭素−炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、アミン類を前駆体とするエポキシ樹脂として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体、フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、炭素−炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられるが、これに限定されない。また、これらのエポキシ樹脂をブロム化したブロム化エポキシ樹脂も用いられる。
【0019】
硬化剤としては、酸無水物(無水メチルナジック酸など)、アミン系硬化剤(メタフェニレンジアミン、メチルジアニリン、エチルメチルイミダゾール、イソホロンジアミンなど)、ポリアミノアミド系硬化剤、フェノール系硬化剤(ビスパラキドロキシフェニルスルフォンなど)、ポリメルカプタン系硬化剤、潜在性硬化剤(ジシアンジアミドなど)を使用できる。また、これらの硬化剤と、いわゆる硬化触媒である三フッ化ホウ素アミン錯体や、イミダゾール化合物を併用してもよい。また、イソシアネートとジメチルアミンとの付加反応によって得られる尿素化合物を併用してもよい。
【0020】
構成要素[B]に用いる熱硬化性樹脂としては、マレイミド樹脂、アセチレン末端を有する樹脂、ナジック酸末端を有する樹脂、シアン酸エステル末端を有する樹脂、ビニル末端を有する樹脂、アリル末端を有する樹脂も好ましく用いられる。これらは適宜、エポキシ樹脂や他の樹脂と混合してもよい。また、反応性希釈剤を用いたり熱可塑性樹脂やエラストマーなどの改質剤を耐熱性を大きく低下させない程度に混合して用いてもかまわない。
【0021】
また、本発明の構成要素[B]には、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂といった工業界で広く認知された熱硬化性樹脂も用いることができる。
【0022】
構成要素[C]はエラストマーおよび/または熱可塑性樹脂である。
熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合、カルボニル結合から選ばれる結合を有する熱可塑性樹脂が代表的である。とくに、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、酪酸セルロースは耐衝撃性に優れるので本発明に使用する熱可塑性樹脂として適している。この中でも、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンは、高靱性かつ耐熱性良好であるため本発明にとくに好適である。中でも、ポリアミドの靱性はとくに優れており、本発明には最も好適である。
【0023】
エラストマーとしては、合成ゴムなど各種のものも用い得るが、特に熱可塑性エラストマーが本発明には好適に用いられる。熱可塑性エラストマーとしては、たとえばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0024】
構成要素[B]としてエポキシ樹脂を用いる場合には、ポリスチレン系やポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーがエポキシ樹脂に対する溶解度が低いのに対し、ポリエステル系およびポリアミド系の熱可塑性エラストマーは、かかる樹脂に対する溶解度が高いため、構成要素[B]と構成要素[C]との接着を十分に強くでき、応力発生時に両者のはく離が生ずることのない良好な複合材料が得られるため好適に用いられる。
【0025】
ここで、ポリエステル系またはポリアミド系の熱可塑性エラストマーとは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分からなるブロック共重合体型の熱可塑性エラストマーのうち、ハードセグメント成分がポリエステルまたはポリアミド構造のものである。
【0026】
上記のような構成要素[A]、[B]、[C]は、外殻3の切断面において、たとえば、図2に示すように現れる。
すなわち、構成要素[B]7と一体化された補強繊維束からなる構成要素[A]8の周囲に構成要素[C]9が存在し、隣接する構成要素[A]間に、実質的に補強繊維を含まない樹脂のみからなる部分10が明確に現れている。
【0027】
このような切断面において、隣接する2つの構成要素[A]の幾何学的中心を結ぶ直線の長さをLとし、その直線が隣接する2つの構成要素[A]間に存在する構成要素[C]、つまり実質的に樹脂のみからなる部分10を横切る長さをLとするとき、これらの比L/Lが、
1/100≦L/L≦1/2
好ましくは、
1/50≦L/L≦1/4
を満足することが望ましい。
【0028】
/Lが1/100より小さいとクラックの進展を防止できないし、1/2より大きいと、樹脂量が増えてボンベ重量が大きくなる。
【0029】
図2における構成要素[A]の部分は、熱硬化性樹脂の硬化物、つまり構成要素[B]と一体に成形されたものとなっており、そのような一体成形部分の周囲に、構成要素[C]の樹脂のみからなる部分10が明確に現れている。
【0030】
このような断面構造においては、構成要素[C]からなる部分10が、エラストマーおよび/または熱可塑性樹脂を主体としてなる樹脂で構成されているので、構成要素[A]および構成要素[B]の一体成形部分に比べ、高い靱性を示す。したがって、この部分でクラックの伝播や補強繊維損傷の伝播を遮断でき、それらが拡がることが防止される。その結果、クラックや補強繊維の損傷発生による外殻3の耐圧性、強度の低下が抑えられ、外殻3全体として優れた耐圧性、強度を維持できるようになる。
【0031】
また、上記高靱性の部分10自身、優れた衝撃エネルギー吸収機能を有するから、外殻3の耐衝撃性が大幅に向上する。
【0032】
さらに、外殻3の同じ部位に繰り返し衝撃を受けるような場合にあっても、補強繊維の損傷やクラックが伝播、拡大することが防止されるので、致命的な損傷に進展することはない。
【0033】
上記のようなガスボンベの外殻3は、予め成形されたガスバリア性を有する内殻2の周りに、構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[A]に、構成要素[B]が含浸され、かつ、構成要素[C]が表面近傍に存在するヤーンプリプレグを用いて、たとえばフィラメントワインディング法によって形成される。ここで、構成要素[B]は、固化前のものである。
【0034】
このヤーンプリプレグにおける構成要素[C]としては、前述のような素材を粒子状として形成したものであることが好ましい。
粒子としては、その形状は、球状に限られるものではない。もちろん球状であってもよいが、樹脂塊を紛砕した微粉体や、スプレードライ法、再沈澱法で得られる微粒子のごとく形状さまざまの状態で一向に差し支えない。その他、繊維を短く切断したミルドファイバー状でも、また針状、ウイスカー状でも差し支えない。とくに球状の粒子を使用したい場合は懸濁重合法で得られる製品がそのまま使える。
【0035】
粒子の大きさは粒径で表現されるが、この場合の粒径とは遠心沈降速度法などで求められる体積平均粒径を意味する。
本発明で用いる粒子の粒径は、2μm〜150μmの範囲のものが適し、より好ましくは5μm〜100μmのものである。2μmより小さい場合には、粒子を補強繊維束の外周に配置せしめようとする場合に、粒子も構成要素[B]と一緒に補強繊維の単繊維間の隙間に侵入していき、粒子がヤーンプリプレグの表面に片寄って存在しない場合があるからである。一方、粒子の粒径が、2μm以上の場合は、粒子を含むマトリックス樹脂を補強繊維束中へ含浸させる場合には、粒子は補強繊維の単繊維間の隙間から排除される、すなわち補強繊維により濾過されるため、ヤーンプリプレグの表面に片寄って存在することになる。
【0036】
ただし、粒子の形状がミルドファイバー状、針状、ウイスカー状のように異方性の大きなものの場合は粒径が小さくともフィラメント間に侵入しにくくヤーンプリプレグの表面に排除される傾向がある。また、2μmより小さい粒径の粒子であっても、構成要素[B]と混合することによって構成要素[B]が粒子の中へ膨潤してみかけの粒径が大きくなる場合は、みかけの粒径に上記粒径の概念が適用される。
【0037】
粒径が150μmを超える粒子の場合には、補強繊維の配列を乱したり、成形して得られる複合材料における繊維束同士の間隔や層間を必要以上に厚くするため複合材料としたときの物性を低下させる場合がある。ただし、150μmを超える粒径をもつ粒子でも成形中に構成要素[B]に部分的に溶解し小さくなる素材の粒子や、あるいは成形中の加熱により変形することで、フィラメント間や複合材料の層間を成形前より狭くする素材もあり、その場合には適したものとして使用できる。
【0038】
なお、粒径の最適値については、用いる補強繊維の単繊維の外径や単繊維の本数などにより異なる場合もある。
【0039】
また、構成要素[C]としては繊維状として形成したものであってもよい。繊維としては、長繊維でも短繊維でもよい。ここで長繊維とは長さ5cm以上の繊維を意味し、短繊維とは長さ5cm未満の繊維を意味する。構成要素[C]が繊維である場合には、その単繊維繊度は、大きすぎると複合材料における繊維束同士の間隔や層間の構成要素[A]の存在しない部分が不必要に厚くなったり、構成要素[A]の配列を乱したりして成形体の物性を低下させる場合があるので、15デニール以下が好ましく、5デニール以下がさらに好ましい。
【0040】
また、構成要素[C]が繊維である場合には、延伸などの操作により、その繊維の結晶度を40%以上にすることが好ましい。結晶化度が低いと、耐湿熱性が低下する場合がある。
【0041】
なお、構成要素[C]は、成形後に元の形状を保持していてもよく、また形状を消失してもかまわない。
【0042】
本発明で用いるヤーンプリプレグは、その長手方向に垂直な面での断面が扁平形状であることが好ましく、それによって図2に示したような切断面構造を容易に得ることができ、さらに、軽量化要求に適合した、厚さの小さい外殻3を容易に形成できる。かかる扁平断面形状は、長軸の長さが2mm以上30mm以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明に係るガスボンベの外殻3においては、構成要素[C]は、群をなしている構成要素[A]およびそのマトリックス樹脂の周囲に存在している必要がある。かかる条件を満足しない場合、たとえば構成要素[A]の内部深くに構成要素[C]が多量に存在する場合には、境界領域でのエネルギー吸収が不充分になって外殻3を構成するFRPの耐衝撃性、破壊靱性の向上効果は小さくなり、また補強繊維の配列を乱し、補強繊維近傍のマトリックス樹脂の分率を低下させるため強度や耐熱性を損なうおそれがある。
【0044】
かかる観点より、成形前のヤーンプリプレグにおける構成要素[C]の分布としては、構成要素[C]の大部分がヤーンプリプレグの表面近傍に分布することが必要である。このようなヤーンプリプレグから外殻3を形成した場合、構成要素[C]がヤーンプリプレグ同士の境界領域に存在するため、耐衝撃性の優れたFRPが得られる。ここで、表面近傍に分布するとは、具体的には、構成要素[C]の90%以上が、ヤーンプリプレグの外周面からヤーンプリプレグ最小厚みの30%までの部位に存在することを意味する。構成要素[C]の90%以上がヤーンプリプレグの外周面からヤーンプリプレグ最小厚みの20%までの部位に存在する場合は、より顕著に本発明の効果が現れるのでさらに好ましい。
【0045】
このようなヤーンプリプレグを用いて、本発明に係るガスボンベの外殻3は、たとえば図3に示す方法により成形される。
【0046】
図3に示す方法においては、複数のクリール11からくり出された補強繊維糸12は、補強繊維束13として引き揃えられ、該補強繊維束13が第1の樹脂浴14中を通され、熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂15が含浸される。この樹脂含浸補強繊維束16は、続いて、粒子状あるいは粉末状の構成要素[C]17を充填した槽18中を通され、樹脂含浸補強繊維束16の主として表面近傍に構成要素[C]17が付着される。さらに、構成要素[C]17を付着させた補強繊維束19は、第2の樹脂浴20中を通され、熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂21が、表面に付着、あるいは表面から含浸される。マトリックス樹脂15とマトリックス樹脂21とは、同じ樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。また、第2の樹脂浴20は省略することも可能である。
【0047】
第2の樹脂浴20を出た、表面近傍に構成要素[C]が付着した樹脂含浸補強繊維束22が、内殻2の周囲にフィラメントワインディング法により、所定の巻付け角で巻き付けられていき、外殻3が形成される。巻付け後に、樹脂を加熱硬化することにより、所望の外殻3が成形される。
【0048】
このような製造方法においては、第2の樹脂浴20は省略可能であるので、従来のフィラメントワインディング装置に、実質的に構成要素[C]の付与装置を付加するだけで実施可能であり、容易に、かつ、低コストで目標とする耐圧性に優れた外殻3を形成できる。
【0049】
なお、本発明に係るガスボンベに充填されるガスの種類としては、特に限定されず、前述の如き天然ガスの他、窒素や酸素、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のガスボンベによるときは、FRP製外殻を構成要素[A]、[B]、[C]から構成し、構成要素[C]からなる部分でクラックや補強繊維損傷の伝播を防止できるようにしたので、FRP化による軽量化効果を達成しつつ、耐圧性、耐衝撃性、耐疲労性に優れたガスボンベを得ることができる。
【0051】
また、本発明に係るガスボンベの製造方法によるときは、構成要素[C]を容易に外殻中の所定部位に位置させることができ、容易に、かつ、低コストで所望のガスボンベを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係るガスボンベの縦断面図である。
【図2】図1のガスボンベの外殻の切断面における拡大部分断面図である。
【図3】本発明の一実施態様に係るガスボンベの製造方法を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 ガスボンベ
2 内殻
3 外殻
4 ノズル取付用口金
5 ノズル
6 ボス
7 構成要素[B]
8 構成要素[A]
9 構成要素[C]
10 構成要素[C]からなる部分
11 クリール
12 補強繊維糸
13 補強繊維束
14 第1の樹脂浴
15 マトリックス樹脂
16 樹脂含浸補強繊維束
17 粒子状あるいは粉末状の構成要素[C]
18 構成要素[C]用の槽
19 構成要素[C]を付着させた補強繊維束
20 第2の樹脂浴
21 マトリックス樹脂
22 構成要素[C]が付着した樹脂含浸補強繊維束

Claims (6)

  1. ガスバリア性を有する内殻と、該内殻を覆うように設けた耐圧性のFRP製外殻とを有するガスボンベであって、前記外殻は、下記構成要素[A]、[B]、[C]を含み、かつ、構成要素[A]は、構成要素[B]に含まれた状態で一体成形されているとともに、外殻の切断面に現れる前記一体成形部分の周囲に、構成要素[C]のみからなる部分(10)が現れていることを特徴とするガスボンベ。
    [A]:補強繊維束
    [B]:熱硬化性樹脂
    [C]:エラストマーおよび/または熱可塑性樹脂
  2. 隣接する2つの構成要素[A]の幾何学的中心を結ぶ直線の長さL1 と、その直線が隣接する2つの構成要素[A]間に存在する構成要素[C]を横切る長さL2 との比L2 /L1 が、1/100≦L2 /L1 ≦1/2を満足している、請求項1のガスボンベ。
  3. 構成要素[C]が、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、酪酸セルロース、ポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリアミド系熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種からなる、請求項1または2のガスボンベ。
  4. ガスバリア性を有する内殻の周りに、下記構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[A]に、構成要素[B]が含浸され、かつ、構成要素[C]が表面近傍に存在するヤーンプリプレグを用いて、耐圧性のFRP製外殻を形成することを特徴とする、ガスボンベの製造方法。
    [A]:補強繊維束
    [B]:熱硬化性樹脂
    [C]:エラストマーおよび/または熱可塑性樹脂
  5. 前記ヤーンプリプレグを、構成要素[B]を含浸した構成要素[A]の表面に粒子状の構成要素[C]を付着させて形成する、請求項4のガスボンベの製造方法。
  6. 前記外殻をフィラメントワインディング法により形成する、請求項4または5のガスボンベの製造方法。
JP05177895A 1995-02-15 1995-02-15 ガスボンベおよびその製造方法 Expired - Fee Related JP3591034B2 (ja)

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