JP3589912B2 - ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識するモノクローナル抗体 - Google Patents

ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識するモノクローナル抗体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸に対するモノクローナル抗体、および該抗体を利用する免疫学的測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内におけるリン脂質の役割について、かつては細胞膜を構成する成分の一つとしてしか認識されていなかった。しかし、近年リン脂質の一種であるイノシトールリン脂質が細胞内情報伝達系において重要な役割を果たしていることが知られるようになってきた。特に、細胞内情報伝達系の異常は細胞の無秩序な増殖を誘発し、いわゆる癌の原因であることが知られるようになってきたことから、生体膜に存在するリン脂質であるホスファチジルイノシトール(以下PIと省略する)の代謝に関する研究が活発に行われるようになってきている。
【0003】
イノシトールリン脂質の合成はホスファチジルイノシトール−4−キナーゼ(以下PI4Kと省略する)によってPIの4位にリン酸が入り、ホスファチジルイノシトール−4−一リン酸が作られ、さらにホスファチジルイノシトール−4−一リン酸−5−キナーゼによって5位にリン酸が入ってホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸(以下PI−4,5−P2と省略する)が作られた後、この脂質が外部刺激を受けて分解されイノシトール三リン酸(以下IP3と省略する)とジアシルグリセロール(DG)を産生するというのが通説であった。しかし、Cantleyら(Rameh, L.E. and Cantly, L.C. J. Biol. Chem. Vol.274, 8347−8350, 1999)は新たにイノシトール環の3位にリン酸を入れるホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(以下PI3Kと省略する)を発見し、その酵素の産物であるホスファチジルイノシトール−3−一リン酸(以下PI−3−Pと省略する)やホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸、ホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸(以下PI−3,4,5−P3と省略する)の存在を証明した。また、 ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸はPI−3,4,5−P3の5位を脱リン酸化されることによっても生じることが明らかとなっている。なお本明細書において、ホスァチジルイノシトール−3,4−二リン酸は原則としてPI−3,4−P2と省略する。以下にPI−3,4−P2の構造を模式的に示す。
【0004】
【化1】
PI−3,4−P2
Figure 0003589912
【0005】
従来からPI3Kがインスリンの情報伝達系に関与することは知られていたが、インスリンなどの刺激で活性化されるPI3Kの産物であるPI−3,4,5−P3やPI−3,4−P2はPKD−1(phosphoinositidin kinase−1)やAkt/PKBなどのキナーゼを活性化し、細胞死(アポトーシス)を抑制するサバイバルシグナルを発することが明らかになってきた(Coffer, P.J. et al. Biochem J. Vol.335, 1−13, 1998)。すなわち、 PI−3,4−P2はAkt/PKBを活性化することによりアポトーシスを抑制し、細胞の生存維持に関与しているのである。
これらのことから、細胞内におけるこれらリン脂質の存在を特異的に検出し、あるいはその動態を明らかにすることが細胞内情報伝達やアポトーシスの機構の解明、ひいては癌や各種疾患の病因解明のために望まれていた。しかし、従来PI−3,4−P2を他のポリリン酸ホスファチジルイノシトールと区別して検出あるいは測定する方法は知られていなかった。
【0006】
PI−3,4−P2を特異的に認識できる抗体はPI−3,4−P2の精製や免疫測定、あるいはPI−3,4−P2の阻害剤として有用であるが、一般にリン脂質抗原は免疫原性が低く、抗体を得るのは難しいとされている。さらにPI−3,4−P2の場合は、PI−3,4−P2を大量に得るのが難しいという問題も伴っていた。そのため、PI−3,4−P2の免疫学的な測定方法は現在のところ実現していない。免疫学的な測定方法は、簡便な操作で高い感度と制度を達成することが可能な優れた分析方法であり、情報伝達の研究を更に進めるためにPI−3,4−P2の免疫学的な測定を実現することが強く望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、PI−3,4−P2を特異的に認識する抗体、および該抗体を利用する免疫学的測定方法の提供を課題とする。より具体的には、PI−3,4−P2を特異的に認識する新規な抗体の提供を通じて、たとえば酵素免疫測定法のような、特殊な設備を要求せず、簡便で高感度なPI−3,4−P2の定量系の実現を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
抗PI−3,4−P2抗体の作製は、抗原を大量に得ることが困難であること、また、リン脂質であるため抗原性が低く、抗体価の高い抗体を得ることが難しいなどの問題があった。本発明者らは、PI−3,4−P2を有機合成によって大量に合成し前者の問題を解決し、更に抗原性の低さについてはサルモネラ死菌菌体にPI−3,4−P2を吸着させた免疫原を使って抗原性を上昇させることで克服し、PI−3,4−P2に対し特異的に結合するモノクローナル抗体の作製に成功した。この抗体を用いれば、生体のPI−3,4−P2に特異的な免疫学的測定方法が可能となる。本発明者らはさらに、該抗体の可変領域を構成するアミノ酸配列をコードする遺伝子を単離し、その塩基配列を決定した。これにより、組み換え抗体の作製が可能となった。また、本発明による抗体を利用して、PI−3,4−P2の細胞内局在の同定や、PI−3,4−P2の機能の特異的な阻害剤の開発が可能であることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、以下の抗体、モノクローナル抗体、あるいはその可変領域、抗体産生ハイブリドーマ、ならびにこれらの抗体を利用する免疫学的測定方法に関する。
〔1〕ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を特異的に認識する抗体。
〔2〕抗体がモノクローナル抗体である、〔1〕に記載の抗体。
〔3〕ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸のイノシトール部位とグリセロール骨格とによって構成される抗原決定基を認識する〔2〕に記載の抗体。
〔4〕ホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸、ホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸、ホスファチジルイノシトール−1,4,5−三リン酸、およびホスファチジルイノシトール−1,3,4,5−四リン酸からなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物と実質的に交差しない〔1〕−〔3〕のいずれかに記載の抗体。
〔5〕〔2〕に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
〔6〕受託番号FERM BP−6849として寄託された〔5〕に記載のハイブリドーマ。
〔7〕〔5〕、または〔6〕に記載のハイブリドーマを培養することによる〔2〕に記載のモノクローナル抗体の製造方法。
〔8〕配列番号:2に示すアミノ酸配列、または1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加したアミノ酸配列からなる、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸に特異的に結合するイムノグロブリン重鎖の可変領域。
〔9〕配列番号:4に示すアミノ酸配列、または1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加したアミノ酸配列からなる、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸に特異的に結合するイムノグロブリン軽鎖の可変領域。
〔10〕配列番号:5に示すアミノ酸配列、または1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加したアミノ酸配列からなる、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸に特異的に結合するイムノグロブリン重鎖のCDR1。
〔11〕配列番号:6に示すアミノ酸配列、または1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加したアミノ酸配列からなる、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸に特異的に結合するイムノグロブリン重鎖のCDR2。
〔12〕配列番号:7に示すアミノ酸配列、または1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加したアミノ酸配列からなる、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸に特異的に結合するイムノグロブリン重鎖のCDR3。
〔13〕配列番号:8に示すアミノ酸配列、または1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加したアミノ酸配列からなる、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸に特異的に結合するイムノグロブリン軽鎖のCDR1。
〔14〕配列番号:9に示すアミノ酸配列、または1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加したアミノ酸配列からなる、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸に特異的に結合するイムノグロブリン軽鎖のCDR2。
〔15〕配列番号:10に示すアミノ酸配列、または1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加したアミノ酸配列からなる、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸に特異的に結合するイムノグロブリン軽鎖のCDR3。
〔16〕サルモネラ死菌をアジュバントとしてホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸と混合した、〔1〕−〔4〕のいずれかに記載の抗体を得るための免疫原組成物。
〔17〕〔16〕に記載の免疫原組成物を免疫し、〔1〕−〔4〕のいずれかに記載の抗体を得る方法。
〔18〕〔1〕−〔4〕のいずれかに記載の抗体、またはその可変領域と、試料中に存在するホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸と反応させ、両者の免疫学的な反応に基づく結合を検出する工程を含む免疫学的測定方法。
〔19〕抗体またはその可変領域と、それが認識する抗原決定基との免疫学的な反応が、試料中に存在するホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸によって阻害される程度を観察する〔18〕に記載の免疫学的測定方法。
〔20〕〔1〕−〔4〕のいずれかに記載の抗体またはその可変領域を含む、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸の免疫学的測定用キット。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の抗体は、PI−3,4−P2を特異的に認識し、PI−4,5−P2とは実質的に交差しない。本発明においてPI−3,4−P2に特異的とは、PI−3,4−P2のリン酸化の状態を認識し他のリン酸化化合物から免疫学的に識別しうることを意味する。このような抗体は、以下のような免疫操作によって得ることができる。すなわち、PI−3,4−P2をサルモネラ死菌菌体とのサスペンジョンとし、これを免疫原とするのである。リポ多糖を取り除いたサルモネラ死菌(Galanos C.,Eur.J.Biochem.24,116−122,1971)に、PI−3,4−P2をコートして免疫原用サスペンジョンとする(Umeda M.,J.Immun.137.3264−3269)。PI−3,4−P2は細胞から精製したものであっても良いし、化学的に合成することもできる。PI−3,4−P2は、構造が類似する公知の化合物の合成方法にしたがって得ることができる(Thum O., Chen J., Prestwich G. D. Tetrahedron Lett. 37, 9017−9020, 1996; Shirai R. et al. Tetrahedron Lett. 39, 9485−9488, 1998; Shirai R. et al. Tetrahedron Lett. 40, 1693−1696, 1999; Sawada T. et al. Chem. Pharm. Bull. 45, 1521−1523, 1997)。これを適当な免疫動物に免疫し、抗体価の上昇を確認したところで抗体を回収する。抗体はポリクローナル抗体としても良いが、モノクローナル抗体とすることによって特異性に優れた抗体を選択することが可能となる。また、後に述べるように望ましい結合活性を備えたモノクローナル抗体の可変領域を構成するアミノ酸配列をコードするcDNAのクローニングが、モノクローナル抗体の樹立によって可能となる。
【0011】
モノクローナル抗体は、抗体産生細胞をクローニングすることによって得ることができる。一般的には、免疫動物から回収した抗体産生細胞を適当な融合パートナーと細胞融合させることによってハイブリドーマとし、産生される抗体の活性を指標としてスクリーニングを行う(Gulfre G.,Nature 266.550−552,1977)。マウスを免疫動物とするときには、融合パートナーとしては、P3−X63−Ag.653等のマウス由来のミエローマ細胞が好適である。HATセレクションによって選択されたハイブリドーマは、まずPI−3,4−P2に対する結合活性を指標としてスクリーニングを行う。次いでPI−3,4−P2への結合活性を持つ抗体を産生するものについては、交差性の試験を行う。すなわち、他のリン脂質抗原等への結合活性を調査して許容できるものを選択する。許容できる交差性とは、目的とする抗体の用途において、無視しうる程度の交差性を意味する。たとえば、免疫学的な測定に用いるためのモノクローナル抗体であれば、最終的な測定系において交差反応によるシグナルがバックグランドレベルに押さえられれば、実質的に交差反応しないということができる。
【0012】
本発明における望ましい抗体は、以下に示すようなPI−3,4−P2と構造が類似する化合物と実質的に交差しない。本発明の特に望ましい抗体は、実施例にも示すようにPI−3,4−P2をこれらの類似化合物の全てと識別することができる。
ホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸、
ホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸、
ホスファチジルイノシトール−1,4,5−三リン酸、および
ホスファチジルイノシトール−1,3,4,5−四リン酸
【0013】
PI−3,4−P2への反応性や、他のリン脂質抗原との反応性を確認するには、ELISAやリポソーム溶解検定を利用すると有利である。ELISAでは、反応性を観察すべき抗原を感作したマイクロプレートを用意し、これにハイブリドーマの培養上清を適当に希釈した試料を加えて反応させる。十分に反応させた後にウエルを洗浄し、イムノグロブリンに対する2次抗体を更に反応させる。最終的にウエルに結合した2次抗体を測定すれば、培養上清中に存在する抗体の抗原に対する結合活性を定量的に知ることができる。脂質抗原を使った抗体のELISAは公知(Umeda M.,J.Immun.136,2562−2567,1986)である。
【0014】
一方、リポソーム溶解検定とは、抗原を感作したリポソームに抗体が反応すると、補体の作用によってリポソームが溶解する現象を利用している。補体の作用を利用していることから、補体依存性のリポソーム溶解検定(complement dependent liposome lysis assay)と呼ばれている。リポソームは、たとえばジセチルホスフェート(dicetyl−phosphate;以下DCPと省略する)、ジミリストイルホスファチジルコリン(dimyristoyl−phosphatidylcholine;以下DMPCと省略する)、コレステロールに加えて試験すべきリン脂質抗原から構成される。これらの脂質成分を適当な有機溶媒で溶解後に乾燥させてリピッドフィルムとし、水系溶媒に加えて強く撹拌すると、多層ラメラ構造のリポソームを生じる。こうして調製されたリポソームでは、膜の構成成分としてリン脂質抗原が取りこまれる。そのため現実の細胞膜に存在する形に近い状態で抗原構造が提示されることが期待できるので、モノクローナル抗体のスクリーニングには好適である。リポソーム内部には、その溶解のマーカーとなる蛍光色素を封入しておくのが有利である。蛍光色素には、4−メチルウンベリフェロン(4−methyl−umbelliferyl phosphate)やカルセイン等が用いられる。補体の存在下でこのリポソームを構成するリン脂質抗原に抗体が結合すると、リポソームは破壊され内部の蛍光色素が流出して液相の蛍光増大として観察される。PI−4,5−P2のようなリン脂質抗原を使った補体依存性のリポソーム溶解検定は公知である(Miyazawa A. et al. Mol. Immunol. 25:10, 1025−1031, 1988)。交差性を確認すべきリン脂質には、構造的に類似するリン脂質抗原を挙げることができる。あるいは、部分構造が共通な類似物質についても交差性を確認しておくと良い。具体的には、次のような物質を示すことができる。これらの物質については、実施例などを通じてその構造的な特徴を図示する。
【0015】
PC(ホスファチジルコリン)
PS(ホスファチジルセリン)
PA(ホスファチジン酸)
PI(ホスファチジルイノシトール)
PE(ホスファチジルエタノールアミン)
PI−4,5−P2(ホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸)
IP3(1,4,5−イノシトール三リン酸)
IP4(1,3,4,5−イノシトール四リン酸)
IP6(1,2,3,4,5,6−イノシトール六リン酸)
【0016】
ELISAおよびリポソーム溶解検定はいずれも、PI−3,4−P2を抗原として調製した反応系を使って他の脂質抗原に対する抗体の交差性の確認が可能である。すなわち、反応特異性を試験すべき抗体とPI−3,4−P2との反応の場に、交差性を確認すべき他の抗原を共存させれば、両者の競合状態を観察することによって交差性の確認を行うことができる。競合阻害の原理を利用したこのような交差性の確認方法は、すべての抗原について反応系を調製する必要がないのでスクリーニングを迅速に行うことができる。
【0017】
以上のようにして、PI−3,4−P2に対する結合活性を持ち、かつPI−4,5−P2等の構造的に類似した抗原を免疫学的に識別しうる本発明による抗体を得ることができる。本発明によるモノクローナル抗体はたとえばFERM BP−6849として寄託されたハイブリドーマ8C2−FNLによって産生される。これらハイブリドーマを適当な条件のもとで培養し、産生される抗体を回収すれば本発明によるモノクローナル抗体を得ることができる。ハイブリドーマは、ホモハイブリドーマの場合には同系の動物の腹腔に接種して生体内培養が可能である。この場合は、モノクローナル抗体は腹水として回収される。ヘテロハイブリドーマの場合にはヌードマウスを宿主として生体内培養が可能である。
【0018】
生体内培養のみならず、適当な培養環境を与えて生体外で培養することも一般に行われている。たとえばRPMI1640やDMEM等の基礎培地がハイブリドーマの培地として一般に利用されている。これらの培地には、抗体産生能を高く維持するために動物血清等の添加剤を加えることができる。生体外でハイブリドーマを培養する場合には、モノクローナル抗体は培養上清として回収することができる。培養上清は、培養終了時に細胞から分離することにより回収することもできるし、あるいはホローファイバーを応用した培養装置においては、培養を継続しながら連続的に回収することも可能である。
腹水や培養上清として回収したモノクローナル抗体は、飽和硫安塩析によりそのイムノグロブリン分画を分取し、更にゲルろ過やイオン交換クロマトグラフィー等の精製工程を経て本発明のモノクローナル抗体とする。この他にモノクローナル抗体がIgGであれば、プロテインAカラムやプロテインGカラムによるアフィニティクロマトグラフィーに基づく精製方法が有効である。
【0019】
更に本発明は、PI−3,4−P2に対する望ましい結合活性を備えた新規な抗体について、その可変領域を構成するアミノ酸配列とそれをコードする塩基配列を提供する。すなわち本発明は、配列番号:2および配列番号:4に示すアミノ酸配列を含むイムノグロブリン可変領域を提供する。あるいは本発明は、配列番号:1および配列番号:3に示す塩基配列を含むイムノグロブリン可変領域をコードするcDNAを提供する。配列番号:1および配列番号:2は、イムノグロブリン重鎖由来、配列番号:3および配列番号:4はイムノグロブリン軽鎖のものである。これらアミノ酸配列、あるいはcDNAの塩基配列は、必ずしも同一である必要は無く、PI−3,4−P2との特異的な結合活性を維持する限り変異を含むことができる。後に述べるように、特にCDRに相当する部分については変異性が高く、この領域においてはアミノ酸の変異が許容されるケースもある。
【0020】
一般にイムノグロブリンは、分子量の大きな重鎖及び分子量の小さな軽鎖から構成されている。重鎖と軽鎖は、ともにN末端から約110残基において可変領域と称される分子間でアミノ酸配列の異なる領域を有しており、重鎖の可変領域はVH、軽鎖の可変領域はVLと表される。この重鎖の可変領域VHと軽鎖の可変領域VLが相対して静電的に結合して2量体を形成することにより、抗原結合部位が形成される。可変領域は、3つのCDR(complementarity determining region:相補性決定部位)と4つのフレームワークで構成される。なお、CDRとは、抗原分子と相補的な立体構造を形成し抗体の特異性を決定する部位であり、CDRの立体構造の維持に働いている4つのFR(Framework region:枠組み構造領域)に挟まれて3つのCDRが可変領域中にモザイク状に存在する(E. A. Kabat et al.,「免疫学的観点におけるタンパク質の配列(Sequences of proteins of immunological interest)」,vol I,第5版,NIH publication (1991))。FRのアミノ酸配列は良く保存されているのに対して、CDRの変異性は高く、超可変領域(hyper variable region)とも呼ばれる。本発明においては、PI−3,4−P2を特異的に認識する抗体のアミノ酸配列のうち抗原との結合活性を決定しているCDRを明らかにした。すなわち、本発明は以下に示すCDR(配列番号:1または3におけるN末端のアミノ酸を1とする位置で示したもの)をも提供するものである。なおカッコ内に記載した数字は配列番号に対応する。
【0021】
Figure 0003589912
【0022】
本発明によるイムノグロブリンの可変領域をコードする塩基配列を持ったcDNAは、前記PI−3,4−P2に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからクローニングすることができる。たとえばFERM BP−6849として寄託された本発明のハイブリドーマは、クローニングの出発材料として好適である。具体的には、可変領域遺伝子のシグナル配列と定常領域側の塩基配列を利用してPCRを行い、増幅生成物を適当なクローニングベクターに挿入して増幅し、可変領域遺伝子のライブラリーとする。上記CDRに相当する部分は本発明による可変領域に特異的な配列といえるので、これをプローブとして前記可変領域のライブラリーをもとにポジティブクローンをスクリーニングする。得られたcDNAは、軽鎖と重鎖の可変領域遺伝子を適当なリンカーで連結してファージに組み込み、1本鎖抗体(いわゆるscFV)として発現させることができる。あるいは、公知のイムノグロブリン発現用ベクターに組み込むことにより、イムノグロブリンの産生に利用することができる。イムノグロブリン発現ベクターとしては、例えばSV40 virus basedベクター、EB virus basedベクター、BPV(パピローマウイルス) basedベクターなどを用いることができるが、特にこれらに限定されない。たとえばBPVベクターの1種である「BCMGS Neoベクター」(烏山一「ウシパピローマウイルスベクター」,村松正実および岡山博人編,実験医学別冊:遺伝子工学ハンドブック,羊土社,pp.297−299 (1991))は、COS7細胞などに形質転換することによって外来遺伝子を効率良く発現する望ましいベクターである。
【0023】
あるいは、上記CDRを任意のイムノグロブリンのフレームワークに組み込むことにより、本発明による抗体の特異性を人為的に再構成することもできる。このような技術は、CDRグラフト抗体(P.T.Jones et al., Nature 321, 522 (1986))と呼ばれ、マウスのイムノグロブリンをヒト化するための技術として既に確立されている。本発明によるCDRは、完全に同一のもののみならず、PI−3,4−P2に対する特異性を維持する限り変異を含むものであることもできる。すなわち、本発明において、前記CDR領域の配列を1個または数個改変したアミノ酸配列も、PI−3,4−P2に対する結合特異性が保持される限り、CDR領域のアミノ酸配列として利用することができる。CDR領域のアミノ酸配列の中で変換するアミノ酸は、好ましくは全体のCDRの30%以下であり、更に好ましくは全体の20%以下であり、更に好ましくは全体の10%以下である。前記CDRを組み込むべきFRは、任意のものとすることができる。本発明によるCDRはもともとマウスのイムノグロブリンに由来するが、マウスのみならず他の種のイムノグロブリンのFRとすることも可能である。構築された可変領域をコードするcDNAは、前記ベクターに組み込むことにより発現可能となる。
【0024】
CDRへの変異の導入にあたり、前記ファージベクターを利用することができる。ファージベクターは、抗体活性を速やかに発現することから、変異体のスクリーニングを迅速に行うことができる。またスクリーニングに十分な量の抗体分子を宿主細菌の表面にもたらす。CDRへの変異の導入により抗体の結合活性を著しく増大した例も知られていることから、本発明によって提供されるCDRに基づいて更に結合活性に優れる1本鎖抗体を得られる可能性がある。
【0025】
本発明によって提供される可変領域、または本発明に基づくCDRを組み込んだ可変領域は、そのまま発現させても良いし、定常領域をコードする遺伝子と連結して完全なイムノグロブリン分子として発現させることもできる。
【0026】
上記cDNAをそのまま組み込んだベクター、あるいはCDRのみを任意のFRに連結したインサートを含むベクターによる可変領域の発現にあたり、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを同じ宿主細胞中で発現させて重鎖/軽鎖からなる2量体として産生させるのが有利である。そのためには、軽鎖発現ベクター及びヒト化重鎖発現ベクターにより細胞を共形質転換し、この形質転換細胞から本発明による抗体を得ることができる。形質転換の宿主としては、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)(A.Wright & S.L.Morrison, J.Immunol.160, 3393−3402 (1998))、SP2/0細胞(マウスミエローマ)(K.Motmans et al., Eur.J.Cancer Prev.5,512−519 (1996),R.P.Junghans et al.,Cancer Res.50,1495−1502 (1990))などが好適に用いられる。また、形質転換には、リポフェクチン法(R.W.Malone et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,6077 (1989), P.L.Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,7413 (1987)、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法(F.L.Graham & A.J.van der Eb,Virology 52,456−467(1973))、DEAE−Dextran法等が好適に用いられる。
【0027】
なお発現産物である可変領域が定常領域を伴っていれば、プロテインAカラム、プロテインGカラム、抗イムノグロブリン抗体アフィニティーカラム等を用いて精製することにより精製タンパク質として回収することができる。もしも可変領域のみを発現させた場合にはこれらの精製方法が適用できないので、適当な精製方法を応用することになる。たとえば、そのC末端にヒスチジンタグなどの精製に有利なタンパク質を融合させた構造として発現させれば、対応するリガンドを利用したアフィニティクロマトグラフィーによって精製することが可能である。
【0028】
本発明は、このようして得られたモノクローナル抗体、あるいはその可変領域に基づいて、PI−3,4−P2の免疫学的な測定方法を実現するものである。従来はPI−3,4−P2に特異的な抗体そのものが提供されておらず、免疫学的な測定方法は不可能であった。本発明の抗体はPI−3,4−P2に対する特異性に優れ、PI−3,4−P2の理想的な免疫学的測定方法を実現する。
【0029】
PI−3,4−P2と本発明による抗体(可変領域を含む)との結合が、測定対象試料に由来するPI−3,4−P2によって阻害されることを利用し、この阻害の程度を観察すればPI−3,4−P2を測定することができる。このような測定原理を実現するひとつの方法は、固相化PI−3,4−P2を利用した測定方法である。すなわち、マイクロプレートのような容器にPI−3,4−P2を吸着させておき、これにまず測定試料を加える。PI−3,4−P2はホスファチジルコリンのような適当なキャリアーに溶解して容器壁に物理吸着させることができる。次いで本発明による抗体を加えると、容器側のPI−3,4−P2と試料中のPI−3,4−P2とが本発明の抗体に対して競合する。抗体を適当な手段で標識しておけば、固相に結合した(またはしなかった)抗体を簡単に測定することができる。予め標準試料で測定しておいた結果と照合すれば、どの程度のPI−3,4−P2が試料に含まれていたのかを決定することができる。抗体の標識には、酵素、蛍光標識、あるいは発光標識等を利用すると良い。PI−3,4−P2の測定は、組織、培養細胞、あるいは血液や血清等の体液等の生体試料を対象に行われる。同様の競合的測定方法は、本発明の抗体を容器側に固定しておくことによっても達成することができる。この場合は、標識したPI−3,4−P2をPI−3,4−P2含有試料と共に抗体に反応させることになる。
【0030】
免疫学的測定方法のための試料は、前記の液状のもののみならず固体試料であっても良い。たとえば、組織標本を対象として、免疫染色を行ってPI−3,4−P2の有無や局在を観察することができる。望ましい態様によれば、本発明の抗体はPI−3,4−P2のイノシトール部位とグリセロール骨格とによって構成されるエピトープを認識する。このエピトープは細胞膜の表面に露出しているものと推測されるので、組織標本の染色に有利な抗体ということができる。このとき、たとえばPI−4,5−P2を特異的に認識する抗体と組み合わせて、複数のリン脂質の局在を同一の試料中で観察することもできる。異なる抗体を波長の異なる蛍光色素で標識しておき、同一の試料を染色する二重染色の手法(double stain)は公知である。
【0031】
本発明は、これら免疫学的な測定方法を実施するためのキットを提供する。すなわち、本発明による抗体をはじめとして、標識の検出に必要な基質、陽性対照や陰性対照、あるいは試料の希釈や洗浄に用いる緩衝液等を組み合わせてキットとすることができる。以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0032】
【実施例】
[実施例1]抗PI−3,4−P2モノクローナル抗体の作製
抗PI−3,4−P2抗体の作製にあたり、合成PI−3,4−P2をアジュバント(Adjubant)としてサルモネラ死菌体にコートし免疫原とした。Salmonella minesotaを一晩培養し、菌体を回収した。菌体は蒸留水で2回遠心洗浄し、更にジエチルエーテルで1回洗浄後に真空乾燥した。洗浄後の菌体を1%酢酸水溶液に分散させ、100℃で2時間加熱してリポ多糖類に結合したオリゴサッカライドを除去した(Galanos C.,Eur.J.Biochem.24,116−122,1971)。処理後の菌体を洗浄し、50μgの菌体に対して4μgのPI−3,4−P2を添加してコートし、懸濁させたものを免疫原(1回分)とした(Umeda M.,J.Immun.137.3264−3269)。PI−3,4−P2は公知の方法(Thum O., Chen J., Prestwich G. D. Tetrahedron Lett. 37, 9017−9020, 1996; Shirai R. et al. Tetrahedron Lett. 39, 9485−9488, 1998; Shirai R. et al. Tetrahedron Lett. 40, 1693−1696, 1999; Sawada T. et al. Chem. Pharm. Bull. 45, 1521−1523, 1997)により化学的に合成したものを用いた。この免疫原をマウス(Balb/c)の尾静脈に1週間おきに数回免疫し、抗体価の上昇したマウスについて、その脾臓細胞をミエローマ細胞P3−X63−Ag.653と融合しハイブリドーマを作製した。
【0033】
HATセレクションの後、生存しているハイブリドーマの培養上清中に含まれる抗体のPI−3,4−P2に対する結合活性を指標にスクリーニングを行った。抗体の結合活性はリポソーム溶解検定によってスクリーニングするとともに、陽性クローンが産出する抗体については間接法ELISAによって交差反応性の試験も行った。
【0034】
リポソーム溶解検定ではまずPI−3,4−P2(〜1%)、ホスファチジルコリン(40%)、コレステロール(50%)、ジセチルホスフェート(10%)をクロロホルムに溶解し、減圧乾固してリピットフィルムを作製した。これに蛍光色素であるカルセインの高濃度水溶液を加えて強く撹拌し、カルセイン封入多重膜リポソームを調製した。このリポソームに培養上清を補体とともに加え、抗体の抗原への結合により補体が活性化されて膜に穴を開ける反応を起こさせた。培養上清にPI−3,4−P2に結合する抗体が存在すれば、リポソーム内の高濃度のカルセインが流出して濃度が下がり蛍光を発するようになる。この蛍光の強さを測定することによって、抗体の抗原への活性を測定した。
【0035】
一方、間接法ELISAは以下のように行った。まず、プレートに5μg/mLのホスファチジルコリン(キャリアー)に溶かした100ng/mLのPI−3,4−P2を入れ、一晩室温で静置してコーティングを行い、その後乾燥させた。次に、ブロッキングバッファー(1% 牛血清アルブミン(BSA)、10 mM Hepes−buffered saline (HBS, pH 7.6))で30分間室温でインキュベートした。ブロッキング処理した抗原感作プレートは、洗浄後に密封して使用時まで冷蔵保存した。
【0036】
抗原感作プレートのウエルに、PIP3、PI−4,5−P2、IP3、IP4、およびIP6(0.5% BSA/HBSで10−10ng/mLに段階希釈したもの)100μLとハイブリドーマの培養上清100μLを加え、室温で2時間インキュベートした。反応液を除去し、HBSで洗浄して第2抗体(アルカリホスファターゼ標識抗マウスIgG3または抗マウスIgM;0.5% BSA/HBSで1/2000に希釈したもの)を加え、室温で2時間インキュベートした。第2抗体の反応後、未反応の抗体を除去して再度HBSで洗浄し、p−ニトロフェニルフォスフェート (p−Nitrophenylphosphate;PNPP)を加えてウエルに残ったアルカリホスファターゼの活性を測定した。培養上清に含まれる抗体がPI−3,4−P2に特異的なものであれば、共存する各種化合物の競合阻害を受けることなくPI−3,4−P2との免疫反応が進み、固相には高いアルカリフォスファターゼ活性が保持される。一方、 PI−3,4−P2に対する反応性が無かったり、あるいは共存する各種の抗原に対して交差性を持った抗体では、競合阻害のために固相のPI−3,4−P2と反応する抗体の数が減るので、結果として固相に保持されるアルカリフォスファターゼ活性は低いものとなる。間接法ELISAによるハイブリドーマ8C2−FNLの培養上清の測定結果を図1に示した。8C2−FNLはPI−3,4−P2のみと反応する抗体を産生するので、PI−3,4−P2に対してのみ濃度依存的に結合%(培養上清のみを添加したときの吸光度測定値を100とする%)の低下が起きている。
【0037】
このスクリーニングの結果、PI−3,4−P2のみに反応する抗体を産生する4クローンを樹立した。各クローンの名称を以下にまとめる。PI−3,4−P2に対する相対的反応性は、40%のリポソームを溶解させるのに必要な濃度の逆数(ml/μg)として定義した。これらクローンのうち、PI−3,4−P2に最も高い反応性を示す8C2−FNLが産生する抗体(以下、特に断りのないときには8C2はモノクローナル抗体を指すものとする)について、更にその反応性を詳細に検討した。
Figure 0003589912
【0038】
[実施例2]抗PI−3,4−P2モノクローナル抗体8C2 (IgG3)の特異性の検討
実施例1で得られた抗体の中で、PI−3,4−P2のみに反応し最も特異性の高かった8C2についてリポソーム溶解検定により、更に検討を行った。検討に先だって、ハイブリドーマ8C2−FNLをプリスタン処理したマウスの腹腔に接種し、その腹水から硫安分画によりイムノグロブリンを精製しモノクローナル抗体8C2とした。リポソーム溶解検定に用いた脂質抗原は以下のとおりである。
ホスファチジルコリン(PC)
ホスファチジルセリン(PS)
ホスファチジン酸(PA)
ホスファチジルイノシトール(PI)
ホスファチジルエタノールアミン(PE)
【0039】
リポソームは50%コレステロール、40%ホスファチジルコリンを主成分とし残りの10%をそれぞれ違った脂質に変えたものを用意した。脂質の組成が異なる他は、同様の操作でリポソームを調製した。このリポソームに対して抗体の希釈度を10−1−10−7に変えて8C2の結合活性を検定したところ、PI−3,4−P2を含むリポソームでのみ濃度依存的にリポソームの溶解が起こった。一方、PC、PS、PA、PI、あるいはPEといった、細胞膜を構成する他のリン脂質を含むリポソームでは用意した最高の抗体濃度の希釈溶液(10−1)を用いても溶解は観察されなかった(図2)。なお図中、リポソーム溶解(%)とは、反応させたすべてのリポソームが溶解したときの蛍光強度を100とする%を意味する。これらのことから、8C2がリン脂質の中からPI−3,4−P2のみに反応することが確認された。8C2が認識するエピトープについて更に詳細な情報を得ることを目的として、ホスファチジルイノシトールの各種リン酸化誘導体抗原との交差反応性を検討した。
【0040】
50%コレステロール、40%ホスファチジルコリン、9%ジセチルホスフェートを主成分とし、残りの1%を以下のリン脂質のリン酸化誘導体としたリポソームを用意した。
PI
PI4P(ホスファチジルイノシトールリン酸)
PI−3,4−P2
PI−4,5−P2
N−PIP3(天然のPIP3、アレクシス社より購入)
S−PIP3(化学合成したPIP3)
PA(ホスファチジン酸)
PC
PE
PS
カルジオリピン
【0041】
抗体の希釈度を10−1−10−6に変えてアッセイしたところ、PI−3,4−P2に対しては先の実験と同様濃度依存的に溶解が起こったが、その他のいずれのリン脂質に対しても、用意した最高の抗体濃度の希釈溶液を用いても反応しなかった(図3)。構造的にたいへん良く似ているPI−4,5−P2に対しても、PI−3,4−P2の1%以下の交差反応性しか観察されなかった。以上のことから、8C2の抗原の認識にはイノシトール部の4位のリン酸基が重要であり3位のリン酸基もエピトープ構造に関与していると考えられた。
【0042】
[実施例3]抗PI−3,4−P2モノクローナル抗体 8C2 (IgG3) のエピトープの検討 8C2の抗体の認識部位を探るためPI−3,4−P2のイノシトール部分と構造の似たイノシトールポリリン酸30nM、100nM、300nM、1μM、3μM、10μMを競合剤として先に述べたリポソーム溶解検定を行った。イノシトールポリリン酸としては、次の化合物を用意した。
イノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)
イノシトール−1,3,4,5−四リン酸(IP4)
イノシトール−1,2,3,4,5,6−六リン酸(IP6)
【0043】
その結果、競合剤としてフリーのPI−3,4−P2を加えた時は固相化されたPI−3,4−P2との競合により吸光度が濃度依存的に減少したが、他のイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)、イノシトール−1,3,4,5−四リン酸(IP4)、イノシトール−1,2,3,4,5,6−六リン酸(IP6)では影響は見られなかった(図4)。
【0044】
これらの結果から、抗体の認識部位にはグリセロール骨格も含まれていることが示唆された。更にPI−3,4−P2の添加濃度に依存して溶解度が減少していることから明らかなように、本発明の抗体はPI−3,4−P2の競合的原理に基づく免疫測定を可能とする。しかも他の類似の構造を持った種々の化合物の影響をほとんど受けないことから、PI−3,4−P2に対する特異性に優れた測定系を容易に実現するものである。
次に、PI−3,4−P2の側鎖が抗体の認識部位を構成しているのかどうかを調べるために、ホスファチジルセリン(PS)、およびPI−3,4−P2の側鎖の長さを変えたものについてリポソーム溶解検定により反応性を検討したるPI−3,4−P2の側鎖の長さが異なる以下の構造式からな化合物について実験を行った。
【0045】
【化2】
PS
Figure 0003589912
【0046】
【化3】
C16PI−3,4−P2
Figure 0003589912
【0047】
【化4】
C4PI−3,4−P2
Figure 0003589912
【0048】
その結果、PSでは濃度に依存せずリポソームの溶解の度合いは一定であり、PSによる競合は認められなかったが、C16PI−3,4−P2、およびC4PI−3,4−P2ではいずれも濃度の上昇に伴いリポソームの溶解が減少した(図5)。このことから側鎖の長さの違いによらず本発明による抗体がイノシトール環の部分を認識していることが分かった。
【0049】
本発明による抗体を産生するハイブリドーマ8C2−FNLは、次のように国際寄託されている(受託番号 FERM BP−6849)。
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305−8566)
(b)寄託日(原寄託日) 平成11年8月18日
(c)受託番号 生命研条寄第6849号(FERM BP−6849)
【0050】
[実施例4]抗PI−3,4−P2モノクローナル抗体の超可変領域(CDR)の特定
本発明によるPI−3,4−P2を特異的に認識するモノクローナル抗体8C2について、その可変領域をコードするcDNAのクローニングを試みた。ハイブリドーマから抽出したRNAにシグナルペプチド、コンスタントリージョン(定常領域)の配列をプライマーとしてRT−PCRを行い、可変領域をコードするcDNAを増幅した。まず、ハイブリドーマ8C2−FNLを、DMEM/10%FCSで培養し、ポリARNAを調製した。そのポリARNA 5μgより、一本鎖cDNAを合成した。続いて94℃1分、55℃2分、72℃2分を1サイクルとし、PCRを30サイクル行った。用いたプライマーの5’側には、クローニングベクターであるpBluescriptのクローニングサイトに合わせた制限酵素の認識配列がそれぞれ付加されている。
【0051】
得られた増幅生成物から、アガロースゲル電気泳動によって重鎖の場合は約400bp、軽鎖の場合は約300bpの長さを持つバンドを分離し、クローニングベクターpBluescriptに組み込んで、クローニングの後にベクターを回収した。インサートの塩基配列は、ベクタープライマーと[α−32P]dATPを用いたジデオキシ法(F.Sanger, Science 214, 1205−1210 (1981))により確認した。こうして得た遺伝子がコードするアミノ酸配列を導出し、構造予測法(コーティアのナンバーリングスキーム)により超可変領域CDRを特定した(http://www.biochem.ucl.ac.uk/ ̄martin/abs/GeneralInfo.html#kabatnum, Al−Lazikani et al.,J.Molec.Biol.,273,927−948,1997)。得られた結果を以下にまとめる。
Figure 0003589912
【0052】
[実施例5]H処理によって産生を誘導されたPI−3,4−P2の免疫染色
293細胞(Japanese Collection of Research Bioresources No.JCRB9068)を、カバーグラス上で培養し、PI3キナーゼの阻害剤であるウォルトマンニン(wortmannin)を加えたものと、加えないものを作り、その後10mM Hで0分、3分、10分間処理した。10%ホルマリン入りPBSで10分間室温で反応させ固定し、0.1% Tween20で10分間室温で反応させ細胞を透過性にした。10%子牛血清入りダルベッコ培地で10分以上室温で反応させ、ブロッキングした後、8C2−FNLハイブリドーマの培養上清をそのまま用いて、湿箱中で室温2時間以上反応させ、一次反応とした(培養液:10% 牛胎児血清入りイスコフ改変ダルベッコ培地)。つづいてFITC標識抗マウスIgG3(サザンバイオテクノロジー社、1100−02)、ブロッキング液で1/100希釈し、室温2時間以上反応させ二次反応とした。反応後の標本は90%グリセロールで封入して観察した。
【0053】
その結果、H処理によってPI−3,4−P2の産生を誘導する前に、ウォルトマンニンを加えなかった場合には、H処理後3分、10分でPI−3,4−P2の染色が認められ、時間とともに染色が強くなったが、ウォルトマンニンを加えた場合では、H処理後においても細胞の染色が認められず、本発明による抗体がPI−3,4−P2と反応することが確認された(図7)。
次に、8C2の特異性を確認するために、ホスファチジルコリン(PC)、PI−3,4−P2、PI−4,5−P2を添加して、その影響を調べた。その結果、PC、PI−4,5−P2の添加によっては競合を受けず、細胞中のPI−3,4−P2の染色による蛍光が観察されたが、PI−3,4−P2を添加した場合には、抗体が吸収され細胞の蛍光は認められなかった(図8)。このことから本発明による抗体が、PI−3,4−P2に特異的であることが確認された。
【0054】
【発明の効果】
本発明によって、PI−3,4−P2に対し特異的に結合するモノクローナル抗体が提供された。また本発明によって、この抗体を用いた免疫学的測定方法が提供された。この抗体はPI−3,4−P2のイノシトール部位のみならずグリセロール骨格もエピトープとして認識していると考えられ、他のイノシトール化合物とPI−3,4−P2を識別することが可能である。
また本発明は、この抗体の可変領域をコードする遺伝子も取得し、組み換え抗体の作成が可能となった。この抗体を用いることでそのPI−3,4−P2への特異的な結合を利用して、例えば細胞内でのPI−3,4−P2の存在場所の特定や、PI−3,4−P2の下流への情報伝達を阻害して影響を調べるといった、従来の解析法ではできなかった研究を行うことが可能となる。
【0055】
【配列表】
Figure 0003589912
Figure 0003589912
Figure 0003589912
Figure 0003589912
Figure 0003589912
Figure 0003589912
Figure 0003589912
Figure 0003589912

【図面の簡単な説明】
【図1】8C2の各種イノシトールポリリン酸に対する交差反応性を確認するための間接法ELISAの結果を示すグラフである。図中、縦軸は8C2の結合(%)を、横軸は競合剤の濃度(ng/mL)を示す。
【図2】類似が類似したリン脂質に対する8C2の結合活性を確認するためのリポソーム溶解検定の結果を示すグラフである。図中、縦軸はリポソームの溶解(%)を、横軸は抗体の希釈度(10−n)を示す。
【図3】構造が類似した化合物に対する8C2の結合活性を確認するためのリポソーム溶解検定の結果を示すグラフである。図中、縦軸はリポソームの溶解(%)を、横軸は抗体の希釈度(10)を示す。
【図4】リポソーム溶解検定における競合反応を用いた構造が類似するイノシトール化合物に対する、8C2の反応性の結果を示すグラフである。図中、縦軸はリポソームの溶解(%)を、横軸は競合化合物の濃度(M)を示す。
【図5】リポソーム溶解検定における競合反応を用いた側鎖の長さが異なるPI−3,4−P2に対する、8C2の反応性の結果を示すグラフである。図中、縦軸はリポソームの溶解(%)を、横軸は競合化合物の濃度(M)を示す。
【図6】モノクローナル抗体8C2の軽鎖および重鎖の可変領域中の、予測される超可変(CDR)領域を示す図である。
【図7】H処理によって産生を誘導されたPI−2,3−P2の免疫染色の図である。上段の6つはウォルトマンニンを加えていない場合、下段の6つは加えた場合である。
【図8】類似化合物の競合反応により8C2の特異性を示す免疫染色の図である。A、Bは競合剤なし、C、Dは50μMホスファチジルコリン、E、Fは50μM PI−3,4−P2、G、Hは50μM PI−4,5−P2を競合剤として加えた場合である。

Claims (17)

  1. ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識し、かつホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸に対する交差反応性が1%以下であるモノクローナル抗体、またはその可変領域を含む抗体の断片
  2. 以下に記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域によって構成される、請求項1に記載のモノクローナル抗体、またはその可変領域を含む抗体の断片
    それぞれ次のアミノ酸配列からなるCDRを含む重鎖の可変領域:および
    重鎖CDR1:配列番号:5
    重鎖CDR2:配列番号:6
    重鎖CDR3:配列番号:7
    それぞれ次のアミノ酸配列からなるCDRを含む軽鎖の可変領域:
    軽鎖CDR1:配列番号:8
    軽鎖CDR2:配列番号:9
    軽鎖CDR3:配列番号:10
  3. モノクローナル抗体の重鎖可変領域が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項2に記載のモノクローナル抗体、またはその可変領域を含む抗体の断片
  4. モノクローナル抗体の軽鎖可変領域が、配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項3に記載のモノクローナル抗体、またはその可変領域を含む抗体の断片
  5. 受託番号FERM BP-6849として寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体、またはその可変領域を含む抗体の断片
  6. 請求項1−5に記載のモノクローナル抗体、およびそれらの可変領域を含む抗体の断片のいずれかからなる、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸の免疫染色用抗体。
  7. 受託番号FERM BP-6849として寄託されたハイブリドーマ。
  8. ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識する抗体、またはその可変領域を含む抗体の断片と、組織標本中に存在するホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸と反応させ、免疫染色によって前記組織標本におけるホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸の有無および/または局在を検出する工程を含む免疫学的測定方法であって、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識する抗体が、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識し、かつホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸に対する交差反応性が1%以下であるモノクローナル抗体である、免疫学的測定方法。
  9. モノクローナル抗体が、以下に記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域によって構成されるモノクローナル抗体である、請求項8に記載の免疫学的測定方法。
    それぞれ次のアミノ酸配列からなるCDRを含む重鎖の可変領域:および
    重鎖CDR1:配列番号:5
    重鎖CDR2:配列番号:6
    重鎖CDR3:配列番号:7
    それぞれ次のアミノ酸配列からなるCDRを含む軽鎖の可変領域:
    軽鎖CDR1:配列番号:8
    軽鎖CDR2:配列番号:9
    軽鎖CDR3:配列番号:10
  10. モノクローナル抗体の重鎖可変領域が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項9に記載の免疫学的測定方法。
  11. モノクローナル抗体の軽鎖可変領域が、配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項10に記載の免疫学的測定方法。
  12. ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識する抗体、またはその可変領域を含む抗体の断片と、組織標本中に存在するホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸と反応させ、免疫染色によって前記組織標本におけるホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸の有無および/または局在を検出する工程を含む免疫学的測定方法であって、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識する抗体が、受託番号FERM BP-6849として寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体である、免疫学的測定方法。
  13. ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識する抗体、またはその可変領域を含む抗体の断片と、組織標本中に存在するホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸と反応させ、免疫染色によって前記組織標本におけるホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸の有無および/または局在を検出するためのキットであって、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識する抗体が、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識し、かつホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸に対する交差反応性が1%以下であるモノクローナル抗体であるキット。
  14. モノクローナル抗体が、以下に記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域によって構成されるモノクローナル抗体である、請求項13に記載のキット。
    それぞれ次のアミノ酸配列からなるCDRを含む重鎖の可変領域:および
    重鎖CDR1:配列番号:5
    重鎖CDR2:配列番号:6
    重鎖CDR3:配列番号:7
    それぞれ次のアミノ酸配列からなるCDRを含む軽鎖の可変領域:
    軽鎖CDR1:配列番号:8
    軽鎖CDR2:配列番号:9
    軽鎖CDR3:配列番号:10
  15. モノクローナル抗体の重鎖可変領域が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項14に記載のキット。
  16. モノクローナル抗体の軽鎖可変領域が、配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項15に記載のキット。
  17. ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識する抗体、またはその可変領域を含む抗体の断片と、組織標本中に存在するホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸と反応させ、免疫染色によって前記組織標本におけるホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸の有無および/または局在を検出するためのキットであって、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸を認識する抗体が、受託番号FERM BP-6849として寄託されたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体であるキット。
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