JP3580015B2 - 転写印刷による化粧板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物、家具、住宅機器等に使用される化粧板及びその製造方法に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物、家具、住宅機器等に使用される化粧板は、高級なものは、木質基材の表面に天然銘木の突き板を貼ったものが使用されているが、天然銘木の突き板は高価なうえに色柄がそろいにくいため、最近は木目柄を印刷したシートをこれら基材の表面に貼ったものが多く用いられるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、例えば同色の木目柄を図2のように組み合わせた柄を化粧板の表面化粧に採用しようとする場合、このような木目柄の印刷用の版がなければ、新たに版を製作しなければならない。そのため、版の製作費に見合うだけの大量生産が期待できる木目柄でないと反ってコストが高くなるという欠点がある。
【0004】
また、異なる樹種の組み合わせ、例えば図2の木目柄において4周の枠部分がサクラの木目で中心部がナラの木目であるような場合は、さらに印刷用の版の製作費以外にも大きな問題がある。即ち、2樹種以上の木目を組み合わせた木目柄の場合は、両樹種それぞれが本物そっくりの色調となるように印刷するには、両樹樹それぞれに最も適した色の印刷インクがそれぞれにつき3〜4色必要である。2樹種の組み合わせの木目柄であれば合計6〜8色の印刷インキが必要となる。通常の印刷機は3〜4色刷りであるから、例えばサクラの方を本物そっくりの色調にしようとするとナラの方は、中途半端な色調になり、両方を本物そっくりの色調に印刷することが困難である。
【0005】
その解決策として、別々に印刷した既存の印刷シートを切り貼りする方法も考えられるが、それを目スキなく貼る作業は手作業に頼らざる得ず、能率が上がらないばかりでなく、よほど手先の器用な職人でなければ、目スキなく綺麗に仕上げることができない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる方法により上記問題点を解決した。
【0007】
例えば、図2に示す化粧板の木目柄において、4周の枠a,bがナラの柾目で、中心部cがサクラの板目とした場合について述べる。
【0008】
先ず、枠a,bに相当するナラの柾目柄と中心部cに相当するサクラの板目柄の転写印刷シートを用意する。そして、各転写印刷シートをa,b,cそれぞれの寸法よりも縦横方向ともに多少大きめの寸法、即ち縦横の両方向の所定の寸法に対して延べ寸を持った転写印刷シートA,B,Cに裁断しておく。
【0009】
次に、図5示すように合板又は繊維板等の基材の上に転写印刷シートA,B,Cをこの順に柄の境界部を重ね合わせながら所定の位置に置く。このときに、図5における各転写印刷シートの端部を図2における柄どうしの境界線D−D′,E−E′,F−F′,G−G′に一致するように置く。図5の状態で、転写印刷シートをホットプレス等により熱圧し基材に貼着し、熱圧貼着後、転写印刷シートの基材シートを上から順番に即ちC,B,Aの順に剥がし取ると、図2の木目柄が転写された化粧板が得られる。なお、最初に置くAの転写印刷シートの寸法は、図2の化粧板に置ける木目柄aの寸法と同一でよいが、多少延べ寸のあるものの方が作業がしやすい。
【0010】
【発明の実施の形態】
転写印刷シートには、予め接着剤をプレコートして接着層を形成してあるものとプレコートしていないものとがある。プレコートしてあるものを用いれば、基材又は転写印刷シートに接着剤を塗布する必要はないことになるが、プレコートによる接着剤の塗工量は通常あまり多くないから、接着剤を吸い込み易い木質系の基材を使用する場合は、基材面にも接着剤を塗布して使用した方がよい。特に図4に示す家具の扉等のように凹凸のある基材面に転写印刷する場合には、接着剤の粘着力が転写印刷シートを基材に仮接着する効果があり、熱圧の際のシートのずれを防止し、結果的に転写印刷のずれを防止することができる。
【0011】
従って、接着剤をプレコートしてある転写印刷シートを用いる場合でも、基材面又はシート面に接着剤を塗布して使用した方がよい。
【0012】
また、基材上に各転写印刷シートを順番に重ねながら置くかわりに、裁断した転写印刷シートを前以て下からA,B,Cの順に接着剤で組みつけて置いたものを基材に熱圧貼着してもよい。図5のような場合は、転写印刷シートどうしが重なり合う部分全体に接着剤を塗って組みつける必要はなく、例えばCの転写印刷シートの黒丸印部分のみに接着剤を塗るだけでも組みつけた転写印刷シートの全体の形は崩れないので、これで十分である。
【0013】
図4のように、基材表面に凹凸のある立体的な加工を施したものである場合もほぼ上記と同様の方法でよいが、凹凸があるため、熱圧時に貼りずれが生じやすい。このような場合は、中央部の転写印刷シートCは図4の化粧板におけるcの部分と同一の寸法に裁断しておき、図6のように、まず最初にこれを枠内にぴったりと敷き詰める。そして、その上に予め図4の化粧板におけるaの部分より若干幅の広い寸法に裁断しておいた転写印刷シートA,をD−D′,E−E′,F−F′,G−G′の境界線に合わせるとともに、転写印刷シートCと接着剤で仮接着し、最後に転写印刷シートBを上に載せて熱圧貼着する。
【0014】
転写印刷シートBは転写印刷シートA又Cと仮接着しないと多少貼りずれが生ずるが、貼りずれが、柄どうしの境界部における印刷ずれの原因となることはないから、延べ寸さえ十分取っておけばよい。
【0015】
熱圧貼着に使用する機器は、基材が平面基材の場合は、平板のホットプレスでもよいが、図4のような凹凸のある基材の場合においては、枠a,bについては、転写印刷シートを曲面にも熱圧貼着するのであるから、熱圧に使用する機器は、転写印刷シートの重なり部分の段差や凹凸面に対しても転写印刷シートをなじませることのできる真空プレスを用いる必要がある。図4の下図の断面図における隅部P付近は、真空プレスでも圧力がかかりにくく、転写印刷シートの柄の転写漏れが生じやすい部分であるが、図6に示す方法であれば、この部分の柄の転写印刷シートは3枚が重なり合った一番下にあるため、圧力が十分にかかり、転写漏れを防ぐことができる。
【0016】
転写印刷シート熱圧貼着終了後の枠どうし又は枠と中心部との境界付近の断面を図3に示す。3重に重なり合う部分については図3の上にさらに1枚転写印刷シートがあるだけで他は図3と基本的に同じであるから省略する。
【0017】
図3及び図1において、斜線部分fは転写印刷シートの基材シートであり、紙又はフィルムからなる。無地の部分gはベタ印刷、黒色で塗りつぶした部分hは柄印刷である。なお、化粧板の基材はk、接着剤はeとする。
【0018】
転写印刷シートの熱圧貼着後、転写印刷シートの基材である紙又はフィルムを剥がせば、基材に図2の木目柄が印刷された化粧板が完成する。転写印刷シートを剥がした時の柄の境界付近の断面図を図1に示す。図1において柄の境界部では、接着層が表面に現れているが、接着層は極く薄く、接着剤に着色剤を混入しない限り透明の層であるから、殆ど見えない。また、わずかに見えても柄どうしの境界であるから美的な面で何問題はない。
【0019】
本発明にはおける板状基材は、無垢の木材はもちろん、合板、ハードボード、パーティクルボード、LVL、MDF(中質繊維板)等の木質基材又はこれら木質基材を組み合わせ貼り合わせたもの、また場合によっては、石膏ボード、珪酸カルシウム板等の無機質基材を用いることもできる。要するに家具、建築に用いられる板状基材であれば何でもよい。また、図4のような凹凸のある立体的な表面加工をしたものでもよい。図4において、下図はX−X′断面図である。
【0020】
転写印刷用基材シートについて言えば、シートに柄を印刷する際に基材シートが伸び縮みしては困るから、当然伸び縮み等の変形しにくいものが採用されているはずである。本発明の実施に際しては、転写印刷の際に加えられる熱により容易に伸びて凹凸面になじむものが適する。特に、基材表面が、凹凸のある立体的な表面加工がされたものである場合は、転写印刷シートが熱圧により容易に伸びて凹凸面になじむ必要があるからである。
【0021】
基材が平滑面の場合でも、図3に示すように、柄の境界付近においては、基材シートが2重になったまま熱圧される部分と1枚の部分との間に多少の段差があるから、熱により容易に伸びて凹凸面になじむものを採用する方がよい。以上の理由から、転写印刷シートの基材シートは塩化ビニル等の熱軟化性の合成樹脂フィルムが最も適する。
【0022】
熱圧に使用する機器は、段差や凹凸面に対しても転写印刷シートをなじませることのできる真空プレスを用いるのがよい。
【0023】
転写印刷シートに印刷される木目柄は、通常、木目の地色を現出するベタ印刷層と木目柄を現出する柄印刷層の2層の印刷層からなる。さらに転写印刷後の印刷面を保護強化するためのトップコート層を設けたものもある。ベタ印刷の厚みは、ごく薄くてよい。通常の場合、1000分の5mm程度の印刷層の厚みがあれば下地をほぼ完全に隠蔽できる。
【0024】
転写印刷シートによって印刷される木目柄は、通常は、上記に述べたようにベタ印刷層により下地をほぼ完全に隠蔽することができるものであるが、特殊な転写印刷の方法として、下地の色彩等を生かす為に、部分的又は全体的に下地を十分に隠蔽しない印刷が採用される場合もある。本発明においても、下地の色彩を生かしたければ、下地を十分に隠蔽できるものを使用しなくてもよい。
【0025】
転写印刷シートには、予め接着剤をプレコートして接着層を形成してあるものとプレコートしていないものとがあるが、プレコートしてあるものを用いれば、基材又は転写印刷シートに接着剤を塗布する必要はないが、前に述べたとおり、基材面又は転写印刷シートにも接着剤を塗布して使用した方がよい。特に図4のように凹凸のある基材面に転写印刷する場合には、接着剤の粘着力が転写印刷シートを基材に仮接着する効果があり、熱圧の際のシートのずれを防止し、結果的に転写印刷のずれを防止することができる。従って、接着剤をプレコートしてある転写印刷シートを用いる場合でも、基材又はシート面に接着剤を塗布して使用した方がよい。
【0026】
接着剤は、転写印刷シートのインキと密着性のよいものを使用する。通常は酢酸ビニル樹脂系又はウレタン樹脂系のものが用いられる。転写印刷シートの基本的な構成は、基材シートの上に、剥離層、木目の柄印刷層、ベタ印刷層の順で各層が配されている。剥離層と柄印刷層との間に保護トップコート層を入れたり、先に述べたようにベタ印刷層の上に接着層を入れる場合もある。
【0027】
転写印刷シートを重ねる順番は、図2の例では、A,B,Cの順としたが、便宜上A,B,Cの順としたに過ぎず、平面基材の場合はどのような順序を採用しても本発明の実施に支障はない。図4のように、表面に立体的な凹凸模様を施した基材を使用する場合は、熱圧時に圧力が最もかかりにくい部分に転写印刷されるべき転写印刷シートを一番下にして重ね合わせれば、その部分にも十分圧力がかかり印刷漏れを防止できることは前にも述べたとおりである。要は目的とする化粧板のサイズ、作業能率、転写漏れ等を考慮し、適宜順番を変えて実施すべきである。
【0028】
なお、印刷柄について言えば、本発明は木目柄に限らず、無地の着色柄を始め、どのような柄にでも応用可能である。したがって、木目柄と無地又は大理石の柄の組み合わせ等、本発明の用途は多種多様にわたる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、種々の既存の転写印刷シートを組み合わせて柄を創作することができるから、柄ごとに印刷用の版を作成する必要がない。そのため、少量の生産しか見込めない柄の化粧板でも安いコストで製造することができる。また、例えば木目柄で、サクラとナラの組み合わせ柄の場合、当該組み合わせ柄の印刷シートの版を作成し、印刷シートを製造しても、通常の印刷機は3〜4色刷りであるから、両樹種それぞれに最も適した色の印刷インクを使用できない。
【0030】
従って、インクをどちらかの樹種の色調に合わせるともう一方の樹種の色調が中途半端になってしまう。本発明は、両樹種の木目柄を別々に印刷した転写印刷シートを用いることができるから、上記のような欠点がなく、本物そっくりの柄で、しかも柄どうしの境界にも目スキがなく美麗な化粧板を製造することができる。
【0031】
また、本発明は、主として既存の転写印刷シートと真空プレス等の既存技術を組み合わせたもので、特に手先の器用な職人芸に頼るところは全くない。
【図面の簡単な説明】
【図 1】本発明による化粧板の断面図
【図 2】化粧板の木目柄の平面図
【図 3】本発明による化粧板の断面図
【図 4】立体的な化粧板の平面図と断面図
【図 5】転写印刷シートの重ね方を示す平面図
【図 6】転写印刷シートの重ね方を示す平面図
【符号の説明】
a 枠
b 枠
c 中心部
A 枠に相当する転写印刷シート
B 枠に相当する転写印刷シート
C 中心部に相当する転写印刷シート
e 接着剤
f 転写印刷シートの基材シート
g ベタ印刷
h 柄印刷
k 基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物、家具、住宅機器等に使用される化粧板及びその製造方法に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物、家具、住宅機器等に使用される化粧板は、高級なものは、木質基材の表面に天然銘木の突き板を貼ったものが使用されているが、天然銘木の突き板は高価なうえに色柄がそろいにくいため、最近は木目柄を印刷したシートをこれら基材の表面に貼ったものが多く用いられるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、例えば同色の木目柄を図2のように組み合わせた柄を化粧板の表面化粧に採用しようとする場合、このような木目柄の印刷用の版がなければ、新たに版を製作しなければならない。そのため、版の製作費に見合うだけの大量生産が期待できる木目柄でないと反ってコストが高くなるという欠点がある。
【0004】
また、異なる樹種の組み合わせ、例えば図2の木目柄において4周の枠部分がサクラの木目で中心部がナラの木目であるような場合は、さらに印刷用の版の製作費以外にも大きな問題がある。即ち、2樹種以上の木目を組み合わせた木目柄の場合は、両樹種それぞれが本物そっくりの色調となるように印刷するには、両樹樹それぞれに最も適した色の印刷インクがそれぞれにつき3〜4色必要である。2樹種の組み合わせの木目柄であれば合計6〜8色の印刷インキが必要となる。通常の印刷機は3〜4色刷りであるから、例えばサクラの方を本物そっくりの色調にしようとするとナラの方は、中途半端な色調になり、両方を本物そっくりの色調に印刷することが困難である。
【0005】
その解決策として、別々に印刷した既存の印刷シートを切り貼りする方法も考えられるが、それを目スキなく貼る作業は手作業に頼らざる得ず、能率が上がらないばかりでなく、よほど手先の器用な職人でなければ、目スキなく綺麗に仕上げることができない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる方法により上記問題点を解決した。
【0007】
例えば、図2に示す化粧板の木目柄において、4周の枠a,bがナラの柾目で、中心部cがサクラの板目とした場合について述べる。
【0008】
先ず、枠a,bに相当するナラの柾目柄と中心部cに相当するサクラの板目柄の転写印刷シートを用意する。そして、各転写印刷シートをa,b,cそれぞれの寸法よりも縦横方向ともに多少大きめの寸法、即ち縦横の両方向の所定の寸法に対して延べ寸を持った転写印刷シートA,B,Cに裁断しておく。
【0009】
次に、図5示すように合板又は繊維板等の基材の上に転写印刷シートA,B,Cをこの順に柄の境界部を重ね合わせながら所定の位置に置く。このときに、図5における各転写印刷シートの端部を図2における柄どうしの境界線D−D′,E−E′,F−F′,G−G′に一致するように置く。図5の状態で、転写印刷シートをホットプレス等により熱圧し基材に貼着し、熱圧貼着後、転写印刷シートの基材シートを上から順番に即ちC,B,Aの順に剥がし取ると、図2の木目柄が転写された化粧板が得られる。なお、最初に置くAの転写印刷シートの寸法は、図2の化粧板に置ける木目柄aの寸法と同一でよいが、多少延べ寸のあるものの方が作業がしやすい。
【0010】
【発明の実施の形態】
転写印刷シートには、予め接着剤をプレコートして接着層を形成してあるものとプレコートしていないものとがある。プレコートしてあるものを用いれば、基材又は転写印刷シートに接着剤を塗布する必要はないことになるが、プレコートによる接着剤の塗工量は通常あまり多くないから、接着剤を吸い込み易い木質系の基材を使用する場合は、基材面にも接着剤を塗布して使用した方がよい。特に図4に示す家具の扉等のように凹凸のある基材面に転写印刷する場合には、接着剤の粘着力が転写印刷シートを基材に仮接着する効果があり、熱圧の際のシートのずれを防止し、結果的に転写印刷のずれを防止することができる。
【0011】
従って、接着剤をプレコートしてある転写印刷シートを用いる場合でも、基材面又はシート面に接着剤を塗布して使用した方がよい。
【0012】
また、基材上に各転写印刷シートを順番に重ねながら置くかわりに、裁断した転写印刷シートを前以て下からA,B,Cの順に接着剤で組みつけて置いたものを基材に熱圧貼着してもよい。図5のような場合は、転写印刷シートどうしが重なり合う部分全体に接着剤を塗って組みつける必要はなく、例えばCの転写印刷シートの黒丸印部分のみに接着剤を塗るだけでも組みつけた転写印刷シートの全体の形は崩れないので、これで十分である。
【0013】
図4のように、基材表面に凹凸のある立体的な加工を施したものである場合もほぼ上記と同様の方法でよいが、凹凸があるため、熱圧時に貼りずれが生じやすい。このような場合は、中央部の転写印刷シートCは図4の化粧板におけるcの部分と同一の寸法に裁断しておき、図6のように、まず最初にこれを枠内にぴったりと敷き詰める。そして、その上に予め図4の化粧板におけるaの部分より若干幅の広い寸法に裁断しておいた転写印刷シートA,をD−D′,E−E′,F−F′,G−G′の境界線に合わせるとともに、転写印刷シートCと接着剤で仮接着し、最後に転写印刷シートBを上に載せて熱圧貼着する。
【0014】
転写印刷シートBは転写印刷シートA又Cと仮接着しないと多少貼りずれが生ずるが、貼りずれが、柄どうしの境界部における印刷ずれの原因となることはないから、延べ寸さえ十分取っておけばよい。
【0015】
熱圧貼着に使用する機器は、基材が平面基材の場合は、平板のホットプレスでもよいが、図4のような凹凸のある基材の場合においては、枠a,bについては、転写印刷シートを曲面にも熱圧貼着するのであるから、熱圧に使用する機器は、転写印刷シートの重なり部分の段差や凹凸面に対しても転写印刷シートをなじませることのできる真空プレスを用いる必要がある。図4の下図の断面図における隅部P付近は、真空プレスでも圧力がかかりにくく、転写印刷シートの柄の転写漏れが生じやすい部分であるが、図6に示す方法であれば、この部分の柄の転写印刷シートは3枚が重なり合った一番下にあるため、圧力が十分にかかり、転写漏れを防ぐことができる。
【0016】
転写印刷シート熱圧貼着終了後の枠どうし又は枠と中心部との境界付近の断面を図3に示す。3重に重なり合う部分については図3の上にさらに1枚転写印刷シートがあるだけで他は図3と基本的に同じであるから省略する。
【0017】
図3及び図1において、斜線部分fは転写印刷シートの基材シートであり、紙又はフィルムからなる。無地の部分gはベタ印刷、黒色で塗りつぶした部分hは柄印刷である。なお、化粧板の基材はk、接着剤はeとする。
【0018】
転写印刷シートの熱圧貼着後、転写印刷シートの基材である紙又はフィルムを剥がせば、基材に図2の木目柄が印刷された化粧板が完成する。転写印刷シートを剥がした時の柄の境界付近の断面図を図1に示す。図1において柄の境界部では、接着層が表面に現れているが、接着層は極く薄く、接着剤に着色剤を混入しない限り透明の層であるから、殆ど見えない。また、わずかに見えても柄どうしの境界であるから美的な面で何問題はない。
【0019】
本発明にはおける板状基材は、無垢の木材はもちろん、合板、ハードボード、パーティクルボード、LVL、MDF(中質繊維板)等の木質基材又はこれら木質基材を組み合わせ貼り合わせたもの、また場合によっては、石膏ボード、珪酸カルシウム板等の無機質基材を用いることもできる。要するに家具、建築に用いられる板状基材であれば何でもよい。また、図4のような凹凸のある立体的な表面加工をしたものでもよい。図4において、下図はX−X′断面図である。
【0020】
転写印刷用基材シートについて言えば、シートに柄を印刷する際に基材シートが伸び縮みしては困るから、当然伸び縮み等の変形しにくいものが採用されているはずである。本発明の実施に際しては、転写印刷の際に加えられる熱により容易に伸びて凹凸面になじむものが適する。特に、基材表面が、凹凸のある立体的な表面加工がされたものである場合は、転写印刷シートが熱圧により容易に伸びて凹凸面になじむ必要があるからである。
【0021】
基材が平滑面の場合でも、図3に示すように、柄の境界付近においては、基材シートが2重になったまま熱圧される部分と1枚の部分との間に多少の段差があるから、熱により容易に伸びて凹凸面になじむものを採用する方がよい。以上の理由から、転写印刷シートの基材シートは塩化ビニル等の熱軟化性の合成樹脂フィルムが最も適する。
【0022】
熱圧に使用する機器は、段差や凹凸面に対しても転写印刷シートをなじませることのできる真空プレスを用いるのがよい。
【0023】
転写印刷シートに印刷される木目柄は、通常、木目の地色を現出するベタ印刷層と木目柄を現出する柄印刷層の2層の印刷層からなる。さらに転写印刷後の印刷面を保護強化するためのトップコート層を設けたものもある。ベタ印刷の厚みは、ごく薄くてよい。通常の場合、1000分の5mm程度の印刷層の厚みがあれば下地をほぼ完全に隠蔽できる。
【0024】
転写印刷シートによって印刷される木目柄は、通常は、上記に述べたようにベタ印刷層により下地をほぼ完全に隠蔽することができるものであるが、特殊な転写印刷の方法として、下地の色彩等を生かす為に、部分的又は全体的に下地を十分に隠蔽しない印刷が採用される場合もある。本発明においても、下地の色彩を生かしたければ、下地を十分に隠蔽できるものを使用しなくてもよい。
【0025】
転写印刷シートには、予め接着剤をプレコートして接着層を形成してあるものとプレコートしていないものとがあるが、プレコートしてあるものを用いれば、基材又は転写印刷シートに接着剤を塗布する必要はないが、前に述べたとおり、基材面又は転写印刷シートにも接着剤を塗布して使用した方がよい。特に図4のように凹凸のある基材面に転写印刷する場合には、接着剤の粘着力が転写印刷シートを基材に仮接着する効果があり、熱圧の際のシートのずれを防止し、結果的に転写印刷のずれを防止することができる。従って、接着剤をプレコートしてある転写印刷シートを用いる場合でも、基材又はシート面に接着剤を塗布して使用した方がよい。
【0026】
接着剤は、転写印刷シートのインキと密着性のよいものを使用する。通常は酢酸ビニル樹脂系又はウレタン樹脂系のものが用いられる。転写印刷シートの基本的な構成は、基材シートの上に、剥離層、木目の柄印刷層、ベタ印刷層の順で各層が配されている。剥離層と柄印刷層との間に保護トップコート層を入れたり、先に述べたようにベタ印刷層の上に接着層を入れる場合もある。
【0027】
転写印刷シートを重ねる順番は、図2の例では、A,B,Cの順としたが、便宜上A,B,Cの順としたに過ぎず、平面基材の場合はどのような順序を採用しても本発明の実施に支障はない。図4のように、表面に立体的な凹凸模様を施した基材を使用する場合は、熱圧時に圧力が最もかかりにくい部分に転写印刷されるべき転写印刷シートを一番下にして重ね合わせれば、その部分にも十分圧力がかかり印刷漏れを防止できることは前にも述べたとおりである。要は目的とする化粧板のサイズ、作業能率、転写漏れ等を考慮し、適宜順番を変えて実施すべきである。
【0028】
なお、印刷柄について言えば、本発明は木目柄に限らず、無地の着色柄を始め、どのような柄にでも応用可能である。したがって、木目柄と無地又は大理石の柄の組み合わせ等、本発明の用途は多種多様にわたる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、種々の既存の転写印刷シートを組み合わせて柄を創作することができるから、柄ごとに印刷用の版を作成する必要がない。そのため、少量の生産しか見込めない柄の化粧板でも安いコストで製造することができる。また、例えば木目柄で、サクラとナラの組み合わせ柄の場合、当該組み合わせ柄の印刷シートの版を作成し、印刷シートを製造しても、通常の印刷機は3〜4色刷りであるから、両樹種それぞれに最も適した色の印刷インクを使用できない。
【0030】
従って、インクをどちらかの樹種の色調に合わせるともう一方の樹種の色調が中途半端になってしまう。本発明は、両樹種の木目柄を別々に印刷した転写印刷シートを用いることができるから、上記のような欠点がなく、本物そっくりの柄で、しかも柄どうしの境界にも目スキがなく美麗な化粧板を製造することができる。
【0031】
また、本発明は、主として既存の転写印刷シートと真空プレス等の既存技術を組み合わせたもので、特に手先の器用な職人芸に頼るところは全くない。
【図面の簡単な説明】
【図 1】本発明による化粧板の断面図
【図 2】化粧板の木目柄の平面図
【図 3】本発明による化粧板の断面図
【図 4】立体的な化粧板の平面図と断面図
【図 5】転写印刷シートの重ね方を示す平面図
【図 6】転写印刷シートの重ね方を示す平面図
【符号の説明】
a 枠
b 枠
c 中心部
A 枠に相当する転写印刷シート
B 枠に相当する転写印刷シート
C 中心部に相当する転写印刷シート
e 接着剤
f 転写印刷シートの基材シート
g ベタ印刷
h 柄印刷
k 基材
Claims (2)
- 複数の柄を、基材表面におけるそれぞれの所定位置に転写印刷する化粧板の製造方法において、▲1▼まず、それぞれの柄の転写印刷シートを所定の縦横両方向の寸法に対して延べ寸を持った大きさに裁断し、▲2▼第1柄の転写印刷シートを、接着剤により仮接着し又は仮接着しないで基材表面における第1柄の所定の位置に置き、▲3▼次に、接着剤により仮接着し又は仮接着しないで、第1柄との柄の境界部を第1柄の転写印刷シートの上に重ね合わせながら、第2柄の転写印刷シートを基材表面の所定の位置に置き、▲4▼上記▲3▼の工程を第3柄以降のすべての柄について繰り返し、▲5▼上記転写印刷シートを載せた基材を熱圧貼着した後、▲6▼すべての柄の基材シートを剥がし取る
上記6工程からなる化粧板の製造方法。 - 第1柄の転写印刷シートの寸法が、化粧板における第1柄の寸法と同一である請求項1に記載した化粧板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07679096A JP3580015B2 (ja) | 1996-03-29 | 1996-03-29 | 転写印刷による化粧板及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07679096A JP3580015B2 (ja) | 1996-03-29 | 1996-03-29 | 転写印刷による化粧板及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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