JP3577391B2 - 陰圧缶ヘッドスペースガス分析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、通常状態で缶内圧が大気圧以下となる飲料缶詰すなわち陰圧缶におけるヘッドスペースガスを分析する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飲料缶詰において、缶詰内のヘッドスペースガス中に酸素が多く含有されると、内容液の酸化が進行して変質やフレーバー(風味、調味料)に変化をきたしたり、缶の腐食が進行したりするなどの不都合が生じる。したがって内容液の充填工程でヘッドスペースガス中の酸素量を測定し、管理することは不可欠であり、そのために内容液を充填した缶詰におけるヘッドスペースガスを正確に分析することは、品質管理の上で重要な作業の一つとなっている。
【0003】
ヘッドスペースガスを分析し、所定の成分についてその量を計測する場合、先ず、ヘッドスペースガスの容量を知る必要があり、ついでその成分ごとの分析を行うことが必要である。しかしながら陰圧缶においては、外気圧の方が高圧であるうえに、ヘッドスペースガスの量が少ないために、その量を自動的に測定したり、また分析を自動的に行うことは困難である。
【0004】
そこで従来では、陰圧缶についてのヘッドスペースガスについての計測および分析は手作業によって行っているのが実情である。その一例を簡単に説明すると、図3において、陰圧缶1を水Wの中に浸漬するとともに缶蓋に穿孔し、それに伴って陰圧缶1から生じる気泡を、計量部を持ったサンプリング計量容器221で捕集する。すなわち陰圧缶1の内部に水を導入してヘッドスペースガスを水で置換し、こうして排出させたガスを捕集することによってヘッドスペースガスの量を計測する。またこのようにして捕集したガスを酸素濃度計222に導いて酸素濃度を計測する。つまり従来の計測・分析方法は、ヘッドスペースガスを水中置換法によりサンプリングし、手動でガス量を測定する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の方法では、陰圧缶の内部に水が侵入し、それに伴って押し出された気体の量がヘッドスペースガスの量と判定されることになるが、缶あるいはその缶蓋の形状は必ずしも単純ではなく、また穿孔位置が水中において最も高い位置に保持されるとは限らないので、ヘッドスペースガスの全量が水によって完全に置換されない場合が多い。またその作業を手作業で行うから、水によって置換されるヘッドスペースガスの量に個人差が生じてしまう。
【0006】
そのため従来では、ヘッドスペースガスの量の測定を効率よく行えないばかりか、測定精度が低い問題があった。またヘッドスペースガス量が不正確なまま分析を行うから、例えばヘッドスペース中の酸素量を正確に把握することができなかった。特に陰圧缶では、ヘッドスペースガスの量が少ないから、成分分析が元来難しく、上記のような不確定要因が加わることにより、計測・分析精度がさらに低下し、ひいては安全率を大きく見込んだ工程管理を行わざるを得ず、生産効率の向上や低コスト化などが阻害されるおそれがあった。
【0007】
この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、陰圧缶におけるヘッドスペースガスの計測および分析を、正確かつ自動的に行うことが可能な方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、この発明は、缶内圧が大気圧以下の陰圧缶のヘッドスペースガスを採取して、そのヘッドスペース内のガス成分を分析する陰圧缶ヘッドスペースガス分析方法であって、前記陰圧缶のヘッドスペースに中空の針部を突き刺してヘッドスペースの圧力を測定するとともにその針部を介して予め設定した容量及び圧力の既知ガスを前記ヘッドスペースに連通させ、その状態で再度前記ヘッドスペースの圧力を測定するとともに、前記既知ガスを前記ヘッドスペースに出し入れして前記既知ガスと前記ヘッドスペース内のヘッドスペースガスとの均一拡散混合気体を得、さらに前記既知ガスを連通させる前後のヘッドスペースの各圧力に基づいて前記ヘッドスペースの容量を算出するとともに前記混合気体中の所定の成分の比率を測定し、その比率と前記算出されたヘッドスペースの容量とに基づいてヘッドスペースガス中の所定の成分の量を求めることを特徴とする方法である。
前記均一拡散混合気体は、請求項2に記載してあるように、内容積を変えることのできるシリンジを前記針部を介して前記ヘッドスペースに連通させ、そのシリンジに入れた前記既知ガスを、前記シリンジの内容積を変化させることによって前記ヘッドスペースに出し入れして得ることができる。
【0009】
この発明の方法では、陰圧缶のヘッドスペースに中空の針部を突き刺した状態でヘッドスペースの圧力を測定し、かつその針部を介してヘッドスペースに予め設定した容量及び圧力の既知ガスを連通させた状態で再度ヘッドスペースの圧力を測定し、このようにして陰圧缶の内部に既知ガスを供給することに伴う、その前後に亘るヘッドスペースの圧力の変化を求めることができる。その圧力変化は、陰圧缶のヘッドスペースの容量に応じたものであるから、圧力変化からヘッドスペースの容量すなわちヘッドスペースガス量を測定できる。そのヘッドスペースに対して既知ガスの供給・排出を繰り返し行って均一拡散混合気体を得る。その場合、ヘッドスペースガスを他のガスで置換することになるので、供給・排出を機械的に繰り返すことにより、ヘッドスペースガスを残留させることなく混合気体として排出でき、したがってその混合気体を分析するとともにその分析結果と算出されたヘッドスペース容積とから演算すれば、ヘッドスペースガス中の所定の成分、例えば酸素の量を正確に知ることができる。そしてこの発明の方法における各工程は、機械的な操作の可能なものであるから、自動化が容易であり、かつ正確な分析結果を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明の方法を図1ないし図2を参照して具体的に説明する。この発明の方法では、通常状態での缶内圧が大気圧以下の缶詰1を対象としてそのヘッドスペースの容量を測定する。
【0013】
先ず、ヘッドスペースガスの成分分析、特に酸素量を測定するためにヘッドスペースガスを取り出す。その操作のために缶詰1に中空のニードルを突き刺す(ピアシングする)。そのニードルを介して、既知量の不活性ガスを缶詰1のヘッドスペースに供給・排出させる。その不活性ガスとしては分析に影響の生じないHeガスを用いることが好ましい。
【0014】
Heガスをこのように供給・排出することにより、缶詰1のヘッドスペースガスがHeガスとの均一に拡散した混合気体となってヘッドスペースから排出もしくは置換される。こうして得られた混合気体の量は、ヘッドスペースの容量が既に測定され、また使用したHeガスの量が既知であるから、正確に知ることができる。したがってこの混合気体を例えばガスクロマトグラフで分析することにより、所定の成分(具体的には酸素)についての割合およびその全量を求めることができる。
【0015】
以下に、ヘッドスペースガスの測定および分析ならびに酸素量を算出する方法として、例えば、図1および図2に示す陰圧缶ヘッドスペースガス分析装置27を用いた方法を説明する。
【0016】
図2に示すように、陰圧缶ヘッドスペースガス分析装置27は、基台31上に、缶詰1を保持する缶詰保持台62と、内容液と接触する部分の洗浄を行う洗浄槽63と、ヘッドスペースガスの分析のためのピアシング装置26とを備えたものであり、また装置全体の制御を行う制御装置(図示せず)が備えられている。
【0017】
缶詰保持台62は、缶蓋を上にして直立させた状態で缶詰1を固定するものであり、缶詰1の底の形状に合わせて円形に窪んだ凹型の台となっている。ピアシング装置26は、基台31上の設置台64に平行に敷設された二本のリニアーガイド65の上部に矩形キャビネット66を設置したものであって、内部に備えたモーターにより前記缶詰保持台62の上方と前記洗浄槽63の上方との間を往復移動できるようになっている。
【0018】
また、ピアシング装置26は、缶詰1のヘッドスペースガスの分析を行う図1に示すヘッドスペースアナライザー68を有するとともに、前記キャビネット66の前面にピアシング機構67を備え、さらにそのキャビネット66の内部に前記モーターが内蔵されている。
【0019】
前記ヘッドスペースアナライザー68は、前記缶詰保持台62に保持された陰圧缶の蓋の中央にピアシング(穿孔)して、陰圧缶詰1におけるヘッドスペース内のガスのサンプリングを行うものであり、ヘッドスペース内のガスを吸引するためのピアシング機構67のピアシングヘッド69が昇降機構70によって、基台31に対して上下動可能に設けられている。
【0020】
また、前記ピアシング機構67のピアシングヘッド69の内部には、図1に示すように、缶詰1に突き刺される中空の針部112と、缶詰1の蓋の中心部分とピアシングヘッド69との間で、前記針部112の周囲の所定範囲を気密状態に保持するシール部113とが備えられており、その針部112によって、前記缶詰保持台62上の缶詰1の蓋の中心部分にピアシングして、ヘッドスペースガスをサンプリングするようになっている。
【0021】
また、該ピアシングヘッド69の針部112の中空部と、ヘッドスペースアナライザー68の内部の各装置とを連結する配管71が備えられ、この配管71を介してヘッドスペースガスを給排するようになっている。
【0022】
図1に示すように、ヘッドスペースアナライザー68は、ガスクロマトグラフ75を主体とするものであって、このガスクロマトグラフ75の吸入側には、水分除去装置73と水分検知装置74とが、それぞれ直列に接続されている。また、ガスクロマトグラフ75の排出側には、標準ガスとしてHeガスを充填したガスボンベ76が接続されている。そして、前記針部112は、制御バルブ201および制御バルブ202を介して、ガスボンベ76に接続される一方、制御バルブ201および他の制御バルブ203を介して水分検知装置74の流入側に接続されている。そして、内容積を変えることのできるシリンジ78が各制御バルブ201,202,203を介して、針部112およびガスボンベ76ならびに水分検知装置74にそれぞれ接続されている。なお、針部112には、圧力測定装置77が接続されるとともに、この圧力測定装置77の接続箇所よりも先端側にフィルター72が介在されている。そして、その針部112を前記缶詰保持台62上の缶詰1に突き刺して、ヘッドスペースガスをサンプリングするようになっている。
【0023】
さらに洗浄槽63は、前記設置台64と缶詰保持台62との間に設けられている。この洗浄槽63は、円筒形状の容器であって、洗浄液には、一例としてイオン交換水すなわち純水が使用されている。また、ピアシング部分洗浄後、洗浄槽63内の洗浄液にはピアシング部分に付着した内容液が混ざってしまうので、洗浄の都度、洗浄液を排出し、新たな洗浄液に入れ替えるようになっている。
【0024】
また、ガスクロマトグラフ75による分析結果に基づいた酸素量や炭酸ガス量の演算、それに先立つキャリブレーションあるいは洗浄を、シーケンス制御によって自動的に行う制御装置が設けられている。
【0025】
つぎに上述した陰圧缶ヘッドスペースガス分析装置27の作用、すなわちこの発明による方法について説明する。缶詰保持台62に缶詰1を置くと、陰圧缶ヘッドスペースガス分析装置27のリニアーガイド65上に設置されたピアシング装置26が、キャビネット66の内部に備えたモーターにより、リニアーガイド65上を前進し、缶蓋の中心のピアシング所定位置すなわちピアシングヘッド69が缶詰1の真上にくる位置まで移動する。
【0026】
へッドスペースアナライザー68では、缶詰保持台62に缶詰1がセットされると、制御バルブが全部閉じられる。ついで、配管71内での流体の流動およびヘッドスペースガスの流入を制御する制御バルブ201が開くとともに、シリンジ78を図1のS2 の位置にする。すなわちシリンジ78の容量Vsを0にする。そして、配管71内の流体の流動を制御する制御バルブ202が開き、ボンベ76からHeガスを配管71内に放出し、配管71を含む全体をHeガスでパージする。さらに、制御バルブ201を閉じるとともに、シリンジ78をS1 の位置とし、シリンジ78内にHeガスを流入させた後、制御バルブ202を閉じる。
【0027】
缶詰1のピアシング位置でピアシング装置26が停止すると、へッドスペースアナライザー68のピアシング機構67が作動して、昇降機構70によって、陰圧缶ピアシングヘッド69が下降させられ、ピアシングヘッド69に備えたシール部113が缶詰1に密着する。そして、このシール部113の内部を通って缶蓋の中央部に針部112が突き刺さる。その場合、シール部113によって充分に気密状態が保持されているので、外気の侵入が防止される。
【0028】
缶詰1に前記針部112が挿入されると、まずフィルター72によって、ヘッドスペースガス中の液滴等が濾過され、ガス分析に不都合な物質が排除される。その状態で、圧力(Phs)が測定される。
【0029】
缶詰1のヘッドスペースの実質的な圧力(Phs)が測定された後、制御バルブ201を開き、シリンジ78を含む配管系をヘッドスペースに連通させる。そして、再度圧力(Ps)を測定する。その後、シリンジ78をS2 の位置として、針部112の中空部から缶詰1内部のヘッドスペース部分にHeガスを流入させる。さらに、該シリンジ78をS1 −S2 間で繰り返し往復させて、缶詰1内部のヘッドスペースガスをHeガス中に拡散させる。
【0030】
そして、制御バルブ201を閉じた後、制御バルブ203を開き、ガスクロマトグラフ75にヘッドスペースガスとHeガスとの混合気体を送り込む。その結果、ガスクロマトグラフ75は、供給された混合気体から酸素を分離させるとともに、その酸素の割合に応じた検出信号を出力する。そして、ガスクロマトグラフ75を接続してある演算装置111により、シリンジ78の容量分の混合気体中に含まれる酸素量から、ヘッドスペースガス中に含まれる酸素量が算出される。
【0031】
ガスクロマトグラフ75で混合気体の分析を終了すると、制御バルブ201および制御バルブ203が閉じ、昇降機構70が作動して、ピアシングヘッド69が上昇し、針部112が缶詰1から抜かれて測定が終了する。
【0032】
すなわち標準ガスであるHeガスを缶詰1のヘッドスペースに出し入れすることにより、缶詰1のヘッドスペースガスをHeガス中に均一に拡散させ、その混合気体の状態でヘッドスペースガスの分析を行う。したがって、ヘッドスペースガスを充分に取り出すことができるため、分析に必要なガス量を確保できることは勿論のこと、精度にばらつきを生じることなく正確にヘッドスペースガスの分析、特に酸素量の計測を行うことができる。
【0033】
なお、ヘッドスペースアナライザー68内では、ガスクロマトグラフ75による分析精度が、水分の増大によりばらつくため、40℃以上の飽和水蒸気の試料が侵入した場合には、水分検知装置74によりヘッドスペースガスの吸引を停止する。また、水分除去装置73により、40℃以下の飽和水蒸気の水分を、0.1%以下まで除去している。
【0034】
また、ヘッドスペースガスのサンプリング検査終了後、ピアシング装置26がリニアーガイド65に沿って洗浄槽63の上方に移動し、缶詰1の内容液に接触したピアシング部が、洗浄槽63内に充填した洗浄液の中に挿入され、洗浄される。なお、洗浄液は、洗浄の都度、新しいものと交換される。
【0035】
なお、ヘッドスペースの容量の計測は、より正確に算出するために、圧力の測定結果に基づいて下記の演算によって求める。
【0036】
ヘッドスペースおよび配管系の容量と圧力との関係は、下記の式となる。
【0037】
Phs(Vhs+Vp)+Pso×Vs=Ps(Vhs+Vp+Vs+Sv)この式を開くと
記号の現す意味は
Vhs:ヘッドスペース容量(求めようとする容量)。
【0038】
Vp :缶蓋から制御バルブ201までの配管内の容量。
【0039】
Vs :制御バルブ201から制御バルブ202および制御バルブ203までの配管内の容量(シリンジ78はS2 の位置で閉鎖されている)。
【0040】
Sv :シリンジ78の容量(S2 からS1 にした時の容量)。
【0041】
Phs:ヘッドスペースの圧力測定値(制御バルブ201を閉鎖している時の圧力)。
【0042】
Pso:シリンジ78を閉鎖している時(S2 の位置)の配管内の圧力測定値(Heガスの圧力を示す)。
【0043】
Ps :シリンジ78を開放した時(S1 の位置)のヘッドスペースの圧力測定値(制御バルブ201は開放されている)。
【0044】
ここで、分析システムに固有の既知の数値(実際の数値)を示すと、
Vp :システムに固有 0.5(ml)
Vs :システムに固有 2.0(ml)
Sv :設定した固有の値 20.0(ml)
Pso:Heガスの設定圧力 1.0(kg/cm2 )
この数値を、式(A)に代入すると、
Vhs={0.5(Ps−Phs)+2.0(Ps−1.0)+Ps×20}/(Phs−Ps)
Vhs={22.5×Ps−0.5×Phs−2.0)/(Phs−Ps)・・・・・式(B)
したがって、式(B)からPhsとPs、すなわちヘッドスペースの圧力と、シリンジ78を開放した時のヘッドスペースの圧力を測定することによって、飲料缶詰の未知のヘッドスペース容量を算出することができる。
【0045】
なお、ヘッドスペース容量の測定法としては、単純に制御バルブ間のパイプだけで容量を変えるのではなく、シリンジ78で容量変化を大きくし、測定圧力に差を付けることによって、より正確にヘッドスペース容量が測定できる。
【0046】
この方法を用いることによって、飲料缶個々に固有のヘッドスペース容量の測定が可能となり、より正確なガスボリュームや、酸素濃度の測定を可能とした。
【0047】
上記計算式において、シリンジ78にリジッドな容器を用いた場合、ヘッドスペース容量に対する測定温度の影響は、主として、内容液の膨張および収縮であるが、測定温度が約5〜30℃の場合には、内容液の膨張および収縮は、ほとんど生じないので、測定温度への影響は無視してもよいと考えられる。
【0048】
また、ヘッドスペース酸素量は、下記式で求められている。
【0049】
酸素量(ml)=ヘッドスペース容量×{20℃換算圧力(ゲージ圧− 水蒸気圧)+大気圧}×酸素濃度
ここで、ヘッドスペースの内圧について、20℃換算したものを示すと、
(1)20℃の換算圧力
P=P20´+P・H2 O
P :20℃の換算圧力(kg/cm2 )
P20´ :水蒸気圧を除く20℃換算圧力
P・H2 O:水蒸気圧
(2)P20´の計算
P20´=測定内圧×(273+20)/(測定温度+273)
(3)P・H2 Oの計算
【0050】
また、不活性ガス(Heガス)の圧力は、通常1kg/cm2 としているので、シリンジ78内の圧力は、相対圧力より1kg/cm2 高いことになる。
【0051】
なお、上記の実施例では、シリンジ78の内容積を増減することにより、ヘッドスペースガスをHeガスなどの不活性ガスに均一に拡散させてヘッドスペースから取り出すようにしたが、ヘッドスペースとの間に閉ループを形成するように中空針などのニードルを突き刺すこととした場合には、不活性ガスを循環させてヘッドスペースガスを不活性ガス中に拡散させてヘッドスペースから取り出すようにしてもよい。さらにこの発明で使用する不活性ガスはHeガス以外に窒素ガスなどの計測・分析に影響のない他のガスであってもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明の陰圧缶ヘッドスペースガス分析方法によれば、陰圧缶のヘッドスペースに予め設定した容量及び圧力の既知ガスを出し入れすることにより、ヘッドスペースガスを既知ガス中に均一に拡散させ、その均一拡散混合気体の状態でヘッドスペースガスの分析を行うとともに、既知ガスの供給の前後における圧力に基づいてヘッドスペースの容量を算出するから、通常状態での内圧が大気圧以下であり、かつヘッドスペースガスの量が僅少であっても、ヘッドスペースガスを必要十分に取り出すことができるうえに、ガスの成分分析を正確に行うことができ、その結果、ヘッドスペースガスに含まれる酸素などの目的とする成分の量を正確に測定できる。またヘッドスペースの容積やヘッドスペースに対する既知ガスの連続的な給排、さらには得られた混合気体の成分分析は、上述した具体的な説明から知られるように、自動的に行うことができ、したがってこの発明によれば、ヘッドスペースガスの計測・分析を自動化することが容易になるなどの実用上優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の方法を実施する陰圧缶ヘッドスペースガス分析装置の内部構造を示す概要図である。
【図2】その陰圧缶ヘッドスペースガス分析装置を示す全体構成概要図である。
【図3】 従来のヘッドスペースガスの採取・分析方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1…缶詰、 26…ピアシング装置、 62…缶詰保持台、 68…ヘッドスペースガスアナライザー、 69…ピアシングヘッド、 75…ガスクロマトグラフ、 76…Heガスボンベ、 77…圧力測定装置。
Claims (2)
- 内圧が大気圧以下の陰圧缶のヘッドスペースガスを採取して、そのヘッドスペース内のガス成分を分析する陰圧缶ヘッドスペースガス分析方法において、
前記陰圧缶のヘッドスペースに中空の針部を突き刺してヘッドスペースの圧力を測定するとともにその針部を介して予め設定した容量及び圧力の既知ガスを前記ヘッドスペースに連通させ、その状態で再度前記ヘッドスペースの圧力を測定するとともに、前記既知ガスを前記ヘッドスペースに出し入れして前記既知ガスと前記ヘッドスペース内のヘッドスペースガスとの均一拡散混合気体を得、さらに前記既知ガスを連通させる前後のヘッドスペースの各圧力に基づいて前記ヘッドスペースの容量を算出するとともに前記混合気体中の所定の成分の比率を測定し、その比率と前記算出されたヘッドスペースの容量とに基づいてヘッドスペースガス中の所定の成分の量を求めることを特徴とする陰圧缶ヘッドスペースガス分析方法。 - 内容積を変えることのできるシリンジを前記針部を介して前記ヘッドスペースに連通させ、そのシリンジに入れた前記既知ガスを、前記シリンジの内容積を変化させることによって前記ヘッドスペースに出し入れして前記均一拡散混合気体を得ることを特徴とする請求項1に記載の陰圧缶ヘッドスペースガス分析方法。
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