JP3575540B2 - 数値制御研磨加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多結晶ダイヤモンド、ダイヤモンド単結晶、ダイヤモンド薄膜(気相合成法により基板上に形成したダイヤモンドまたは自立膜(箔、平板、3次元形状体を含む)、ダイヤモンド焼結体等のダイヤモンドそれ自体またはダイヤモンドを含む材料を研磨加工能力の優れた金属間化合物砥石と数値制御機構を有する加工装置を用いて、鏡面で、かつ、うねり、端部だれ等の極めて少ない高い形状精度を有し、高い再現性と研磨加工能率を実現できる研磨加工方法及び従来法では事実上研磨加工が不可能であった高精度 3 次元形状研磨加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、ダイヤモンドを利用した材料の1つとしてダイヤモンド薄膜が注目されている。このダイヤモンド薄膜は気相合成法(CVD法)等により、工業的(人工的)に多結晶粒からなるダイヤモンド薄膜(基板上に形成された薄膜及びダイヤモンド膜被覆部材)又はダイヤモンド自立膜を製造することができるようになったが、上記合成法により得られた多数の結晶粒からなるダイヤモンド薄膜は凹凸の激しい表面を持っている。
このため、気相合成法により形成されたダイヤモンド薄膜を電子部品、光学部品、超精密部品あるいは加工工具等に使用する場合には、光学ミラーやフライス工具に代表されるように3次元の極めて高い形状精度を達成しつつ、ダイヤモンド表面を平滑化することが必要となってくる。
【0003】
また、天然及び人工単結晶ダイヤモンド(超高圧合成、気相合成法等による)は、砥石のドレッサー、刃物、ダイス、ヒートシンク、X線窓、電子部品基板等各種の工業製品又は宝飾品として使用されているが、最終的にそれぞれの用途に適用できる形状精度に仕上げる必要がある。
さらにダイヤモンドを利用したダイヤモンド焼結体は、その特性を利用して、自動車用エンジン等の高速精密研削又は研磨、超硬合金の精密研削又は研磨用工具、切削又は切断用刃物、耐磨耗機構用部品、通信機用ヒートシンクあるいはパッケージ等高い形状精度と極めて平滑な表面仕上げ(表面粗さ)が求められる用途に普及しつつある。
なお、ダイヤモンド焼結体は結合剤としてCo、WC、TiCなどが使用されているが、また結合剤を殆ど含まないあるいは全く含まないものもある。本発明では特に言及しない限り、これらの焼結体を全て含むものとする。
【0004】
ダイヤモンドは、それ自身が他の金属やセラミックス等硬質材料の研磨あるいは宝石の微細研磨加工に使用される程に、極めて硬い物質なので、ダイヤモンドを高い形状精度と極めて平滑な表面仕上げで研磨加工することが難しいことは、誰でも容易に理解できる。
このような多数の凹凸を有する気相合成ダイヤモンド薄膜、多結晶ダイヤモンド膜又は自立体を平滑化する方法として、強靭な鋳鉄板を高速に回転させながら鋳鉄板上でダイヤモンド砥粒により共擦り(共削り)研磨加工するスカイフ法が挙げられる。
この方法は、天然単結晶の宝石への微細研磨加工に古くから用いられてきた手法であるが、上記ダイヤモンド薄膜等を研磨加工する方法としては極めて加工能率が低く、μmオーダーの形状精度研磨加工も期待できないことから殆ど役に立たない。
【0005】
特に、上記ダイヤモンド単結晶は、結晶面あるいは結晶方位により、硬さの変化が著しく、現状で下降できる面は(100)面や(110)面等に限定され、研磨面の形状精度も制御され研磨加工しているとは言いがたい。
硬さや熱伝導性等に最も優れている(111)面の研磨加工は、極めて困難であり、事実上不可能と言われている。
このようなことから、ダイヤモンド単結晶の研磨加工に際しては研磨可能な面を中心に、これらの結晶面や結晶方位を調べつつ研磨する高い熟練技術が必要とされており、ダイヤモンドの研磨加工を複雑かつコスト高にしていた。
【0006】
また、ダイヤモンド燒結体の研磨加工では、後述するようなダイヤモンド砥石(共ずり)による研磨加工方法では、燒結体中のダイヤモンド粒子と結合剤の硬さの差あるいは個々のダイヤモンド粒子の結晶面、方位の違いに基づく硬さの差から、加えて研磨加工中、燒結体中の多数のダイヤモンド粒子が脱落することにより大きな段差(数μm程度)が生じ易く、このような燒結体を加工工具として使用する場合、段差に起因する転写加工での加工精度の低下、そして耐磨耗性機構部品として使用する場合には摩擦特性が低下するという問題があり、
また、燒結体中のダイヤモンド粒子自体も損傷を受けることから、使用中に脱落し、自分自身を傷つけ致命的なトラブルを引き起こすという使用上のリスク問題が発生した。
【0007】
上記に述べたように、ダイヤモンドの硬さは代替物が無いほどに硬い材料なので、研磨加工材としてはダイヤモンド(共ずり)以外にないと考えるのが普通である。このため表面に多数の凹凸を有する気相合成ダイヤモンド薄膜、多結晶ダイヤモンド膜又は自立体を特に平面にて平滑化する方法として、ダイヤモンド砥石(共ずり)研磨加工法が挙げられる。
ダイヤモンド砥石は、通常体積率にて25%程度のダイヤモンド砥粒を結合剤で保持したものであり、結合材としてフェノール樹脂を用い破砕性の高いダイヤモンド砥粒を使用した切れ味重視のレジンボンド砥石、砥粒強度が高く、砥粒保持力すなわち工具剛性の高いメタルボンド砥石、ビトリファイド(ガラス)ボンド砥石などがある。
本気相合成ダイヤモンド薄膜、多結晶ダイヤモンド膜又は自立体の研磨加工では、被研磨加工材表面は上記砥石中の研磨加工に作用するダイヤモンド砥粒数(切り刃数)に比して圧倒的な数の凹凸切り刃を有すること、研磨加工機構が硬さの同じ材料で破砕、磨耗で進行する共ずり加工であり、研磨加工速度が極めて低い割には砥石磨耗が激しいことから、形状精度の高い研磨加工は難しい。
加えて砥石剛性が被研磨加工材に比べ明らかに低いことも加工精度低下の原因となっている。
【0008】
研磨加工速度並びに形状精度の向上を目的とした一つの方法として、硬質で高剛性の鋳鉄を結合剤としたメタルボンド砥石を用いて、研磨加工中、研磨加工に有効に作用するダイヤモンド砥粒切り刃の目立てを電気化学的に自動化した研磨加工法がある。
この方法は上記手法に比べると研磨加工性能の向上が期待できるが、使用できるダイヤモンド砥粒体積率は同じであることから、研磨速度の向上には、砥石への高荷重負荷が必須であり、形状精度の向上には更に高い剛性の高価な加工装置、砥石剛性の向上が必要であるというジレンマが残っている。
【0009】
上記以外の方法として、鉄やステンレス鋼をダイヤモンドに押し付けて研磨する提案がなされた。ダイヤモンドは常温では化学的に安定であるが、空気中で700°Cに加熱すると黒鉛化して燃焼し始め、真空中でも1400°C以上になると黒鉛化する。上記の方法はこのような高温における鉄とダイヤモンドとの反応を利用して研磨する方法である。
鉄とダイヤモンドの反応(ダイヤモンド成分の炭素が金属中に溶解する)は800°C程度から生じ、Fe3C(セメンタイト)が生成し、研磨中の摩擦面ではこれが剥離し、さらに研磨が進行することを利用したものと理解されている。
高温ではこの反応がさらに進行し易くなり、Fe3Cの生成・分解が起り、研磨が進む。加工能率を考慮すると900°C以上が必要といわれている。
【0010】
この鉄又は鉄系材料は安価な研磨材を使用できるという点で良い方法と考えられたが、この方法の一番の問題は、高温に加熱しなければ効果的な研磨が出来ないということである。
ところが、ステンレスや鉄系材料は高温で軟化し、強度が著しく低下するので、研磨加工中、砥石の剛性、形状精度は維持できないという欠点の他に、熱容量の高い砥石が被研磨加工材に接触することから、熱膨張の揺らぎ等により形状精度を議論できる寸法精度の研磨加工は事実上不可能な難点がある。
特に、高温の鉄を用いる場合には、鉄の酸化を防止するために、真空中あるいは還元性雰囲気中で研磨を実施する必要があるため、設備の面でも又研磨作業が煩雑である(自在にできない)という点でも問題がある。
【0011】
さらにまた、上記のような高温加熱は被研磨加工体であるダイヤモンド、基板材にも影響を与え、急激な温度勾配による複雑な熱応力からダイヤモンドにクラックが発生したり、基板からダイヤモンド膜が剥離するなどの問題が生じた。
この他YAGレーザを斜入射したレーザ加工等が考えられるが、研磨加工面の形状並びに平滑な表面仕上げ精度(表面粗さ)が劣り、使用に耐えるものではなかった。
上記したように、研磨加工能力の優れた砥石と数値制御機構を有する加工装置を用いて、鏡面で、かつ、うねり、端部のだれ等の極めて少ない高い形状精度を有し、高い再現性と研磨加工能率を実現できる研磨加工方法、また、従来法では事実上研磨加工が不可能であった高精度3次元形状研磨加工方法並びにそのような研磨加工法により得られた鏡面で高い形状精度のダイヤモンド研磨加工体(ダイヤモンド薄膜、多結晶ダイヤモンド等を含む)、単結晶ダイヤモンド及びダイヤモンド燒結体は得られていなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上から、本発明は、ダイヤモンド単結晶、ダイヤモンド薄膜(気相合成法により基板上に形成したダイヤモンド又はダイヤモンド自立膜(箔、平板、3次元形状体を含む)、ダイヤモンド焼結体、その他の多結晶ダイヤモンド等の、ダイヤモンドそれ自体又はダイヤモンドを含む材料を鏡面で、かつ、うねり、端部のだれ等の極めて少ない高い形状精度を有し、高い再現性と研磨加工能率を実現できる研磨加工方法、及び従来法では事実上研磨加工が不可能であった高精度3次元形状研磨加工方法並びにそのような研磨加工法により得られた鏡面で高い形状精度のダイヤモンド研磨加工体(ダイヤモンド薄膜、多結晶ダイヤモンド等を含む)、単結晶ダイヤモンド及びダイヤモンド焼結体を得ることを課題とする。
本発明者は、すでにAl、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、の群から選択した1種若しくは2種以上の元素とTi、Zr、Hf、V、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種若しくは2種以上の元素との金属間化合物を主成分とする砥石、または前記砥石に所定の量の複合粒子を含有する優れたダイヤモンド研磨用砥石を提案している(特願平11−130991号、特願平11−218850号、特願平11−320523号、特願2000−12479号)。
本発明は、さらにこれらを展開し、鏡面で高い形状精度を有し、再現性と研磨加工能率に優れた研磨加工方法、また、従来法では事実上研磨加工が不可能であった高精度3次元形状研磨加工方法並びにそのような研磨加工法により得られた鏡面で高い形状精度のダイヤモンド研磨加工体(ダイヤモンド薄膜、多結晶ダイヤモンド等を含む)、単結晶ダイヤモンド及びダイヤモンド焼結体を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
1.数値制御機構を有する加工装置を用いて、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、の群から選択した1種若しくは2種以上の元素とTi、Zr、Hf、V、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種若しくは2種以上の元素との金属間化合物を主成分とする砥石又は前記砥石に複合粒子を含有する砥石を、一定圧力或いは一定切込み条件で、被研磨加工体であるダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド単結晶、ダイヤモンド焼結体に対して相対運動させ、研磨加工することを特徴とするダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド単結晶、ダイヤモンド燒結体の数値制御研磨加工方法
2.CAM(Computer Aided Machining)又はCAD(Computer Aided Design)とCAMプログラムにて制御駆動する数値制御加工装置を用いて研磨加工することを特徴とする上記1に記載の数値制御研磨加工方法
3.平面、凸面、凹面の群から選ばれた少なくとも1種以上の組み合わせで出来る平面、凹凸一定曲率面、自由曲面等を研磨加工できる数値制御加工装置を用いて研磨加工することを特徴とする上記1又は2記載の数値制御研磨加工方法
4.研磨加工用砥石を使用して被加工体に対して点接触、線接触又は面接触により定圧または定切込み加工することを特徴とする上記1〜3のそれぞれに記載の数値制御研磨加工方法
5.加工砥石に含有する複合粒子がダイヤモンドであることを特徴とする上記1〜4のそれぞれに記載の数値制御研磨加工方法
を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のダイヤモンド研磨加工用砥石は、例えば粉末冶金法によって製造することができる。この場合、原料粉末としてそれぞれ平均粒径150μm以下(好ましくは10μm以下)のTi、Zr、Hf、V、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種または2種以上の粉末とAl、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptの群から選択した1種または2種以上の粉末(以下、特に記載しない限り「砥石用粉末」と言う。)とを、それぞれの金属間化合物(以下、特に記載しない限り「金属間化合物の含有量が90体積%以上であるもの」を含む。)が、本発明の金属間化合物の砥石となる組成及び比率に調合し、これらをボールミルで混合し、乾燥して混合粉とする。
原料粉としては、微細なアトマイズ粉を使用することができる。予めメカニカルアロイング法により所定の比率に合金化した砥石用粉末を用いることもできる。
微細かつ均一な混合粉末を使用した場合には、焼結体の密度が高く、その結果均一かつ緻密な砥石が得られるという利点がある。
これらの粉末は、単独の金属粉末であっても良いし、予め合金(金属間化合物)とした粉末、さらにこれらの複合粉末であっても良い。
【0015】
次に、上記混合粉砕粉をモールドに入れ予備成形した後、例えば冷間静水圧処理(CIP処理)し、さらに1000〜1300°C、圧力500Kgf/cm2の条件でホットプレス焼結(HP処理)するか、又はCIP処理した後、同様に1000〜1300°C、圧力500Kgf/cm2の条件で熱間静水圧焼結(HIP処理)して高密度(相対密度99%以上であることが望ましい)の焼結体とする。
CIP処理、HP処理、HIP処理等の温度、圧力等の条件は上記に限らず、原料の種類又は目的とする焼結体の密度等を考慮して他の条件を設定してもよい。
また、上記のようなCIP処理、HP処理、HIP処理等に替えて、黒鉛製のモールドに混合粉末を充填し、これを上下パンチ(電極)間で圧縮しながらパルス通電により加熱する方法、すなわちパルス通電焼結法により焼結体とすることもできる。この場合、特に上記メカニカルアロイ粉を使用すると緻密かつ均一な焼結体を得ることができる。
【0016】
本発明の金属間化合物を主成分とする合金砥石は、真空アーク溶解、プラズマ溶解、電子ビーム溶解、誘導溶解等の溶製法によっても製造できる。これらの溶解に際してはガス、特に酸素の混入が著しく、また上記アルミニウム等の金属間化合物を形成する元素およびチタンはいずれも酸素との結合力が強いので、真空中又は不活性ガス中で溶解することが必要である。
また、これらの金属間化合物を主成分とする合金砥石の鋳造品は機械的強度が焼結品よりも劣る傾向があるので、溶解、凝固過程において偏析の発生や結晶粒が粗大化しないように、温度コントロールを実施して製造することが必要である。
上記粉末冶金法又は溶製法によって得られた燒結体又はインゴットから必要な砥石形状に切り出し、数値制御機構を有する加工装置、また、被研磨加工体の形状、研磨加工精度に適合する形状に仕上げ、かつこの金属間化合物砥石保持具等の構成部品等で固定してダイヤモンド研磨加工用砥石工具とする。
【0017】
被研磨体の一例として、ダイヤモンド薄膜又はダイヤモンド自立体を挙げると、このダイヤモンド薄膜又はダイヤモンド自立体は一般に知られている気相成長法(CVD法)によって作成できる。
例えば、高温(2000°C前後)に加熱したタングステンフィラメントの近傍位置に開口する石英管を配置し、この石英管を通してメタン等の炭化水素ガスを水素で希釈した混合ガスを導入し、500°C〜1100°Cに加熱した基板上にダイヤモンドを前記混合ガスから分解析出させる方法、上記タングステンフィラメントに替えて、プラズマ放電を利用したマイクロ波プラズマCVD法、RF(高周波)プラズマCVD法、DC(直流)アークプラズマジェット法、さらには大気中で酸素アセチレンの火炎を高速で基板に当て、ダイヤモンドを炭化水素含有ガスから分解析出させる方法がある。
本発明においてはこれらの方法あるいは他の方法によって製作されたダイヤモンド薄膜又はダイヤモンド自立体に適応できる。
【0018】
上記ダイヤモンド研磨加工用砥石工具を用いて数値制御機構を有する加工装置で研磨加工を実施することにより、天然のダイヤモンド又は人工ダイヤモンドも鏡面にて、高い形状精度で所望の形状に再現性、効率良く研磨加工できる。特にダイヤモンド単結晶(111)面の研磨加工が従来技術では不可能と言われているが、本発明の研磨加工方法によれば、この(111)面を鏡面にて3次元段差を有する立体形状デバイス用にも高い形状精度で研磨加工でき、新しい応用が期待できる。この(111)面の研磨加工が可能になったことにより、切削工具のすくい面に高品質の(111)面を使用することができ、また砥石の精密ツルーアとして(111)面を用いた高性能ダイヤモンド単石ドレッサー、高熱伝導ヒートシンクなどの高性能で付加価値の高いダイヤモンド単結晶も得ることができる。
【0019】
被研磨加工体がダイヤモンド燒結体の場合にも同様に数値制御機構を有する加工装置で研磨加工を実施することにより、極めて高い形状精度で所望の形状に再現性、効率良く研磨加工できる。
ダイヤモンド砥石(共ずり)研磨加工方法で発生するような、燒結体中のダイヤモンド粒子と結合剤の硬さの差あるいは個々のダイヤモンド粒子の結晶面、方位の違いに基づく硬さの差から、加えて研磨加工中、燒結体中の多数のダイヤモンド粒子が脱落することにより大きな段差(数μm程度)が発生することが殆どなく、このような段差に起因する転写加工での加工精度の低下の問題も発生しない。
そして耐磨耗性機構部品として使用する場合に発生しがちな摩擦特性の低下という問題もなく、特に高い形状精度と極めて平滑な表面仕上げ状態が得られることで応用分野も一段と拡大する。
【0020】
数値制御機構を有する加工装置としては、一軸制御機械では、ホーニング研削盤など、ニ軸制御機械では、CNC旋盤、CNC円筒研削盤、CNC内面研削盤など、三軸制御機械では、NCフライス盤、CNCターニング旋盤、CNCマシニングセンター並びにCNCグラインディングセンター、四軸及び五軸制御機械では、例えばNC工具研削盤、横型CNCマシニングセンター、六軸制御以上の機械では、一例として縦横マシニングセンター等が使用できるが、必ずしも上記機械に限定されるものではないことは明らかであり、被研磨加工体の形状等目的に応じて、各種加工装置を併用できることは明らかである。
また、この数値制御機構を有する加工装置をCAM(Computer Aided Machining)またはCAD(Computer Aided Design)とCAMプログラムにて制御駆動することで、被研磨加工体を所望の鏡面で、かつ、うねり、端部だれ等の極めて少ない高い形状精度をえるために砥石の最適の研磨加工軌跡を再現性よく制御でき、CAD(Computer Aided Design)とCAMプログラムで制御駆動すれば、従来法では事実上研磨加工が不可能であった高精度3次元形状の研磨加工が実現し、高い形状精度と極めて平滑な表面 (表面粗さ)をもつ複雑自由曲面を有する高機能ダイヤモンド製品を提供できる。
【0021】
また、研磨加工用砥石は、被研磨加工体に対して線接触、面接触により定圧または定切込み加工が可能な形状、構成を有することで優れた鏡面と超精密形状精度を併せ持つ複雑自由曲面の研磨加工が実現する。線接触砥石を使用すれば、砥石の研削抵抗が極端に低下し、平坦面研磨加工では、端部のダレは従来法の一桁以上は改善する。また自由曲面等の研磨加工精度も飛躍的に向上する。
また、面接触砥石では平坦面をうねりの問題も極めて少なく、短時間で高精度な鏡面研磨加工が実現する。研磨加工実施時の砥石の選択は、被研磨加工体の種類、形状、また、要求研磨加工品質に応じて適時選択できることは言うまでも無い。
本研磨加工方法では、被研磨体の高い形状精度をうるため、定圧または定切り込み研磨加工を実施することが好ましい。しかし、本砥石の優れた研磨加工能力により、従来法で使用されてきた定荷重の研磨加工方式“所謂ラップ”加工にも使用できることは明らかである。
【0022】
本発明の数値制御機構を有する加工装置で前記構成からなる砥石を用いた研磨加工に際しては、高い形状精度を達成する観点から室温(常温)で研磨加工を実施することが好ましい。しかし、後述するようにダイヤモンドの厚みが大きく結晶粒が大きい(数十μm以上の膜厚を有し、数十μmの結晶粒を持つケース)場合、100〜800℃に加熱しながら研磨することが有効である。
上記のように基板上に形成されたダイヤモンド薄膜等の厚みが薄い場合、例えば10μm程度であると、ダイヤモンド表面の凹凸が数μm程度なので、研磨の抵抗が小さく、常温でも十分に研磨できる。
ダイヤモンドと砥石の接触点では、摩擦熱により、局部的にかなりの高温となるが、このような状況において、例えばTiC、TiAlC、TiAlCNなどの本発明の砥石成分(Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、PtあるいはTi、Zr、Hf、V、Nb、Mo、Ta、W)との脆い炭化物、炭窒化等が生成し、かつこれが剥離するなどによって、より効果的にダイヤモンドの研磨(化学的研磨)が進行しているものと推測される。
【0023】
これに対し、厚膜ダイヤモンドの場合には、研磨加工効率の観点から加熱が有効である。
この場合の加熱に際しては、砥石及び又は研磨する個所の少なくとも一部を加熱し、研磨部の温度が上記100〜800°Cになるように調節して研磨する。
外部から加熱の温度が100°C未満では合金砥石の靭性が劣り、砥石の割れが発生し易くなる。また、ダイヤモンド自体も上記加熱及び摩擦熱によりほぼ同等の加熱を受けるが、800°Cを超えるとダイヤモンド等が受ける熱影響によりクラックが生じたり、割れたりすることが多くなり、ダイヤモンド等を損傷し易くなるので避ける必要がある。この加熱温度としては300〜500°Cがより好適である。
研磨部にかかる外部加熱の全熱が上記の温度範囲となるように調節する。摩擦熱による温度上昇を考慮して、温度設定することが必要であるが、摩擦熱により突発的に800°Cを超える場合があってもよい。本発明において設定する加熱温度は、そのような突発的温度上昇は本発明の加熱温度に含めない。
【0024】
本発明のダイヤモンド研磨用砥石は、ステンレス鋼に比べ室温での硬さが極めて大きいという特徴がある。粉末法によって得た本発明の金属間化合物砥石の硬度がHv500〜1000Kg/mm2に達するのに対して、ステンレス鋼のそれはHv〜200Kg/mm2程度に過ぎない。すなわち本発明の金属間化合物砥石の硬度はステンレス鋼の2.5〜5倍に達する。
また、本発明の金属間化合物砥石は高温になっても硬さの減少が少なく、約600°Cまでは温度上昇と共に強度が上昇するという優れた性質を持っている。
本発明のダイヤモンド研磨用砥石において、さらに重要なことは、ダイヤモンドに対して驚くほど大きな耐摩耗性を示すことである。これは硬さがはるかに大きい超硬合金(WC+16%Co:Hv〜1500Kg/mm2)よりも少ない摩擦減量を示すことからも容易に理解できる。
この砥石の大きな耐磨耗性は、数値制御機構を有する加工装置での研磨加工の形状精度維持には不可欠である。
【0025】
上記のような、ダイヤモンドの薄膜の製造工程において、特に厚いダイヤモンドの膜を形成する場合には、ダイヤモンドの結晶粒が粗大化し、かつ結晶表面の凹凸が激しくなって研磨が著しく困難となるが、本発明の研磨加工方法を使用して100〜800℃に加熱しながら研磨加工することにより、このような難研磨加工性のダイヤモンドも砥石の破壊や極端な磨耗を発生することなく数値制御加工装置を用いて高い形状精度で研磨加工ができるようになった。
さらに、上記温度範囲への加熱により、合金砥石の結晶粒界が強化され、粒界割れが起こりにくくなることが確認された。
ダイヤモンドと砥石の接触点では、摩擦熱と外部加熱により、炭化物、炭窒化物の生成による化学的研磨が強く起こり、より効果的なダイヤモンドの研磨が進行しているものと推測される。
【0026】
本発明の数値制御機構を有する加工装置で前記構成からなる砥石を用いた研磨加工の著しい特徴を利用して、他のダイヤモンド研磨砥石の一部にこの砥石を利用して、数値制御により研磨加工を行うことも当然可能である。本発明はこのような使用の全てを包含するものである。
単体の金属間化合物からなるダイヤモンド研磨用砥石を製造しようとする場合、金属間化合物以外の成分として、該金属間化合物の個々の成分元素が単体として存在したり、又は微量の不純物が混入する場合がある。しかし、この場合、砥石の中に本発明の金属間化合物が90体積%以上含有量していれば、砥石としての機能を十分に発揮させることができる。
なお、本発明の砥石は、後述するように金属間化合物を構成する元素(金属)又は該金属間化合物を構成する金属以外の金属若しくは合金、又は超硬合金、半金属元素、非金属元素、セラミックス(含むガラス)、ダイヤモンド砥粒、有機化合物(ポリマー)等と複合又は混合させて使用することができる。
したがって、上記90体積%以上の金属間化合物は、これを単体として砥石に使用する場合の好適な例を示しているだけで、本発明の砥石等は、上記の割合に制限されるものではない。
【0027】
例えば、本発明の金属間化合物からなるダイヤモンド研磨加工用砥石の強度又は靭性等を増し数値制御による研磨加工の形状精度を向上させるために、金属間化合物を構成する主たる元素であるAl、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptの群から選択した1種または2種以上の元素又はこれら以外の元素をさらに付加的に添加することができる。
金属間化合物の種類によっては、それ単独では脆すぎて砥石に出来ない場合がある。しかし、上記のように強度又は靭性を向上できる材料と組み合わせることにより、また他の金属間化合物との複合金属間化合物とすることにより、強度を通じて数値制御による研磨加工の形状精度を向上させることができる。したがって、単独では砥石にできない場合でも、上記のようにすることにより、数値制御により研磨加工の形状精度を向上できる砥石として使用することが可能であり、本発明はこのような砥石を用いたあらゆる場合をも包含する。
また、ダイヤモンド研磨加工用砥石の硬さを向上させ数値制御により研磨加工の形状精度を向上させるため、セラミックス又は超硬合金等を添加することもできる。本発明はこれら全てを包含する。
また、ダイヤモンド研磨加工用砥石の一部または全部を前記金属間化合物として研磨加工を実施するものであり、これによって、研磨加工機能を向上させることもできる。例えば、従来のダイヤモンド砥石と同様にダイヤモンド砥粒を金属間化合物で胆持した複合粒子を含む砥石は、過酷な研磨加工条件で砥石形状精度を維持するのに有効である。
また、本発明の金属間化合物とセラミックスとの複合砥石、金属間化合物を砥粒とした同金属間化合物と金属又は超硬工具材料との複合砥石、並びにこれらの複合体を場合によっては数値制御による本研磨加工に使用できる。
なお、上記の通り、複合砥石又は混合砥石とする場合、これらの材料の配合割合(体積率)や結合剤等の体積率等は加工目的や用途に応じて任意に選択できるものであり、特に制限されない。また、従来の砥石セグメントの一部に、上記の砥石を併用することもできる。これらは全て本発明に含まれるものである。
【0028】
本発明の方法により優れた鏡面で、形状精度の高いダイヤモンド、特に、単結晶ダイヤモンドは高性能ダイヤモンド単石ドレッサー、高熱伝導ヒートシンクや新しい応用が期待できる3次元段差を有する高精度立体形状デバイスなどに、また、ダイヤモンド燒結体では超精密なダイヤモンド燒結体加工工具または超精密な金型部品、あるいは耐磨耗性精密3次元機構部品として、さらに本発明の方法により得られたダイヤモンド薄膜又はダイヤモンド自立体は、回路基板、高周波デバイス、ヒートシンク、精密非球面形状を含む各種光学素子、表面弾性波素子(フィルター)、平面ディスプレー、半導体や放射線センサー等の電子デバイス部品、超精密・ロングライフの機械部品あるいは計測用原器、あるいは各種摺動部品等に好適であり、飛躍的な新しい用途の拡大を具体化する上で
効果が著しい。
【0029】
【実施例および比較例】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例は好適な例を示し、かつ発明の理解を容易にするためのものであり、これらの例によって本発明が制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲における他の態様および例は、当然本発明に含まれるものである。
【0030】
(実施例1)
Ti−Co金属間化合物砥石を上記条件で製造し、外径100mm x 内径80mm x厚み4.5mmのリング状分割砥石を成形した。これらのリング状分割砥石を外径100mm x 内径80mm x深さ4mmの溝付円盤状ホルダー(直径120mm)に固定して研磨加工用のカップ状砥石とした。
本実施例では、リング状分割砥石を用いたが、ペレット状の円板を円周状に配列、固定する方法でも同様のカップ砥石が得られる。被研磨加工体としては35mm角x厚み5mmの平板Si基板上に50μm膜厚みでマイクロ波CVD法で成膜した気相合成ダイヤモンド膜、幅10mm x厚み2mmのWC−Co超硬基板上に超高圧下で1mm厚みで燒結合成したダイヤモンド燒結体、3mmカク x 1mm厚みの(100)面が端面のダイヤモンド並びに立方晶窒化ホウ素単結晶をそれぞれを用いた。
前記カップ型金属間化合物砥石は数値制御(NC)フライス盤のスピンドル軸に、被研磨加工体はテーブル上のバイス或いはホルダーに固定して室温にて研磨加工を行った。
砥石回転速度は、325−1,000−rpm、砥石切込み量は1μm−20μm/加工パス、被研磨加工体を固定したテーブルの送り速度は砥石1回転当たり12μmとした。
図1に、気相合成ダイヤモンド膜での本砥石の加工能力を示す研磨結果を示す。図1は砥石切込み5μmにて1パス研磨加工後の気相合成ダイヤモンド薄膜表面の微分干渉顕微鏡写真(倍率 x 100 )である。1加工パスという短時間の加工で成膜時の表面凹凸はほとんどなくなり極めて高い研磨能力を示すことがわかる。
基板端部にはプラズマが集中しやすいため成膜後すなわち研磨加工前の膜厚みは基板端部で厚く中央部では薄い凹型形状をとっているにも係わらず1パス研磨加工でも平滑で表面うねりの少ない研磨加工が可能である。
特に端部では従来のダイヤモンド砥石研磨加工法と比較すると、端部のだれはほとんどないことがわかった。ダイヤモンド燒結体についても同様な結果が得られた。
大型ダイヤモンド単結晶は超高圧下で育成するため大変高価である。従って研磨加工による取代は最小化できることが好ましく、端部で発生するダレも著しく低減する必要がある。
本課題を克服するため特に軸偏心した棒状砥石を作製し、砥石先端を線接触となるよう曲面成形して研磨加工を実施した。特に端部のダレ防止のために砥石の研磨加工軌跡はNCフライス盤に連結したCAMにより制御して被研磨加工体端部の研磨精度を向上させた。
得られた単結晶端部のダレは0.5μm以下に大幅に改善された。特に(111)面を端面とする結晶では、本数値制御研磨加工による端面ダレの改善効果は著しいことが明らかとなった。
特に本加工法すなわち本金属間化合物砥石と数値制御加工装置の組み合わせで得られる加工法並びに得られる加工体の注目すべき特徴について詳述する。本発明の加工法においては、金属間化合物砥石は高精度ツルーイングが可能であり(ダイヤモンド砥石では、精度の高いツルーイングは出来ていない。)、砥石形状精度の向上、高い砥石加工能力により加工装置の精度限界にせまる微小切込みでの工業的な研磨加工を実現し(ダイヤモンド被研磨加工体の加工中の破壊確率の著しい低下にも寄与)、従来にない高精度加工が可能となった。
従来のダイヤモンド砥石を用いた共削り加工では、加工の進行とともに砥石の加工能力は低下するため、数値制御を用いても再現性が高く、高い精度で工業的な自動加工はほとんど不可能であつた。
すなわち、ダイヤモンド砥石によるダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド単結晶、ダイヤモンド焼結体等の研磨加工では、唯一の研磨加工法は、定荷重下で時間をかけて加工する所謂ラップ加工であり、経済性を考慮した手法では、切込みを微小に数値制御した加工手法は実現してない。
ダイヤモンド砥石の加工能力の低下に起因して、ダイヤモンド膜、単結晶、焼結体共に加工中に破壊確率が上昇するが、破壊を免れた場合でも研削抵抗の増加に伴い砥石にブレが発生し、膜面の平坦度、うねりについてはもっとも良好な場合でも0.05μm、エッチ部のダレは数μmが限界であり、被加工体ごとに加工精度は変動することが不可避であった。
本加工法では砥石の高い加工能力と最適値に設定された砥石回転数、砥石切込み量、被加工体固定テーブルの送り速度等により、膜面の平坦度、うねりについては<0.02μm、エッチ部のダレは<1μmに再現性良く制御研磨加工できることが明らかとなった。
上記被研磨加工体の本砥石による別の定切り込み加工例として、数値制御(NC)旋盤を用いた室温加工を実施した。上記ツルーイング成形したカップ砥石を旋盤回転軸にチャック固定し、被研磨加工体は工具台に取り付けた先端部に固定用溝がもうけた固定冶具に装着して平面研磨加工を実施した。
被研磨加工体としては15mmカク x 厚み5mmの窒化珪素基板に25μm厚みでダイヤモンド膜を成膜したものを用いた。砥石回転数は1,000rpmとし、砥石切込み量は、3μm/加工パス、被加工体の送り速度は砥石1回転当たり20μmとした。NCフライス盤の加工結果と同様に、優れた加工品質とその再現性が確認できた。
【0031】
(実施例2)
次に、Zr−Al金属間化合物砥石を上記条件で製造し、直径20mm x 厚み5mmのペレット状軸付砥石を作製した。砥石外周部は被研磨加工体との線接触加工を確保するため曲面成形を行った。被研磨加工体は以下の方法で準備した。
直径35mmで片側端面が曲率半径100mmの凸形状を有するペレット状窒化珪素セラミックス基板を準備し、この凸状3次元端面に熱フィラメント法で膜厚み20μmのダイヤモンド膜を成膜した。
3次元形状を有する凸状ダイヤモンド成膜面をダイヤモンド膜の厚みが一定となるように研磨加工を実施するには、被研磨体の最終寸法形状諸元にならって切込み量を微小に制御しつつ砥石の最適研磨加工軌跡を数値制御できる研磨加工手法が不可欠である。
この課題を実現する手法として本実施例では、数値制御加工システム・装置としてCAMに接続したCNCグラインディングセンターを使用した。砥石回転数は、10,000rpmであり研磨加工は室温で実施した。
図2には、未研磨加工部/研磨加工部境界の電子顕微鏡写真(倍率 x 500)をしめす。適正な研磨加工条件の設定により砥石の1パス研磨加工でも優れた鏡面が得られることがわかる。
実施例1に詳細に述べたように、本砥石の研磨加工能力は極めて高いため、CAMプログラムに従い3次元凸形状を研磨加工中砥石の軸ぶれはほとんど発生しない。従ってμmレベルの微小切込みを可能とし、数値制御による形状精度の極めて高い研磨加工が可能となった。
研磨加工面は、鏡面であり、表面粗さも0.05μm以下の良好な研磨結果がえられた。研磨形状・寸法精度も加工装置精度にせまり、CAMプログラムからの寸法ずれはほとんど認められなかった。
X線を用いた非破壊計測法で研磨加工後のダイヤモンド膜厚みの場所による変動を調査したが、優れた研磨加工精度に示すように膜厚みはすこぶる均一であることが確認できた。同様の研磨加工をダイヤモンド燒結体についても実施した。
研磨加工用サンプルは直径35mm、厚み2mmの超硬板に厚み1mm弱の燒結体層を設けたものである。凸形状の曲率半径は200mmである。ダイヤモンド膜の場合と同様に優れた形状精度を有する3次元鏡面研磨が可能であることが明らかとなった。
前記したようにダイヤモンド膜の研磨加工手法としては“共削り”によるダイヤモンド砥石法が用いられてきた。この研磨加工法では、加工中に砥石研削抵抗が上昇することは避けられず、砥石の軸ぶれ等の理由からμmレベルの微小切込みと数値制御による寸法・形状精度の高い3次元形状研磨加工は不可能とされてきた。
しかし、本研磨加工手法が実現したことにより、微細な表面凹凸を有する平板状ダイヤモンド膜体からでも寸法・形状精度が高く、鏡面を有する3次元形状ダイヤモンド膜体を再現性よく研磨加工することが可能となった。
【0032】
(実施例3)
Zr−Al金属間化合物砥石のかわりにTi−Fe金属間化合物砥石を製造して研磨加工を実施した。被研磨加工体は直径35mm x厚み 5mm炭化珪素セラミックス平板上に周囲に平坦部を残し、曲率半径50mmの凹型形状を作製(平坦面との接線部では、形状をなめらかとするため適度の逃げを設けている。)、この平面、凹面の組み合わせからなる3次元形状基板面に熱フィラメント法で膜厚み20μmのダイヤモンド膜を成膜した。研磨加工は同様に室温にて実施した。
数値制御システム・加工装置としては、CAD/CAMに接続したCNCマシニングセンターを用いた。自在形状のダイヤモンド膜面を砥石の最適研磨加工軌跡で研磨するにはCAD/CAMによるコンピュータ制御が極めて有効である。
あらかじめ被研磨加工体面の形状・寸法をCADにて設計、プログラム化し、CAMにて砥石の最適研磨加工軌跡を指定、数値制御研磨加工を実施する。(このCAD設計、CAMを用いた数値制御加工によりダイヤモンド成膜基板は形状加工が施され準備される。)
砥石は、加工中被加工体と線接触加工となるよう先端部を一定の曲率に成形し、回転軸より軸偏心させた棒状体とした。砥石回転数は、12,000rpm、とし、被研磨加工体も200rpmで回転した。砥石切込み量は1μm/加工パス、砥石送り速度は10μmとし円弧研磨加工を実施した。
実施例2と同様に研磨加工施した3次元形状ダイヤモンド膜面は鏡面であり、形状・寸法精度も極めて良好であった。
【0033】
(実施例4)
次にHf−Co金属間化合物砥石を上記条件で製造し、直径10mm x 厚み5mmのペレット状軸付砥石を作製した。
被研磨加工体としては、外径25mm x 内径15mm x 長さ25mmの超硬製円筒の面に熱フィラメント法でダイヤモンド膜を20μm成膜したものを用いた。
数値制御加工装置としては、縦型NCフライス盤を使用した。砥石回転速度は、10,000rpmとし、被研磨加工体は回転テーブルに取り付けて100rpmの回転速度で砥石とは逆回転してコンタリング研磨加工を実施した。砥石切込み量は2−10μmとし、Z方向送り速度は、0.01−0.5mm/min.とした。
得られた研磨面は良好な鏡面であり、真円度も2μmで形状・寸法精度も金属加工並みの研磨が実現した。
【0034】
(実施例5)
実施例2−4の成果を元に、より複雑な3次元形状として超硬ダイヤモンド被膜処理を施した超硬製の2枚刃ソリッドエンドミルの底刃並びにサイド(外周)刃を研磨加工した。使用した数値制御加工装置はNC工具研削盤である。
研磨加工用砥石としてはNb−Co金属間化合物を用い、100mm径のセグメント式平砥石並びにカップ砥石を作製して研磨加工を実施した。
研磨加工後のダイヤモンド被膜面はすこぶる良好な鏡面となり、Al−Si合金を用いた切れ味、耐久性等加工テスト評価結果は、
研磨加工処理ダイヤモンド被覆エンドミル》
ダイヤモンド被膜まま品》
超硬製エンドミル
の順であり、ダイヤモンド被膜に鏡面研磨加工を施こすことによりエンドミルの加工精度、耐久性とも圧倒的に向上することが証明された。
エンドミルに代表される3次元形状ダイヤモンド被覆体にて研磨加工を実施、研磨加工の工具性能への効果を把握した事例は本発明が最初であり、数値制御加工装置を用いた本砥石研磨手法により始めて実現したものである。
比較例として、同様な形状のダイヤモンド砥石を用いて2枚刃ソリッドエンドミルの底刃並びにサイド(外周)刃の数値制御研磨加工を試みた。研削抵抗の著しい上昇により被膜の剥離、ダイヤモンド砥石が破壊する場合がほとんどであり、研磨負荷を低減すると砥石は空すべりするため事実上研磨加工は不可能であった。
【0035】
(実施例6)
次に本発明の実施例1の金属間化合物砥石にダイヤモンド砥粒を混合し、金属間化合物/ダイヤモンド複合粒子入り砥石を作製し、これを用いて実施例1と同様な研磨加工を実施した。
ダイヤモンド砥粒は、#4000を使用し、体積%にて5%を添加した。ダイヤモンド粒子の複合により、研磨加工による砥石の磨耗減量は一層低下して、砥石の初期形状の安定化を通じて高精度研磨加工に大きな効果を示すことが明らかとなった。
【0036】
実施例の殆どは、常温で数値制御により研磨加工を実施した例を示したが、上記の通り適時加熱して研磨加工することができる。この加熱により研磨能率は一層向上する。しかし、特に研磨加工体の形状精度が厳しく要求される場合には、加工装置本来の極限精度で研磨加工を実施することが好ましく又は被研磨加工材により加熱が望ましくない場合には、室温(常温)で実施することができる。
本発明の数値制御研磨加工法に用いる砥石は、成分調整が容易で、偏析がなく、また、粗大結晶を生じないという理由から粉末冶金によって製造するのが良いが、製造の容易性から溶製法を用いることもできる。この砥石の製造法は、特に制限されるものではなく、用途に応じて適時選択できる。
上記実施例においては、比較的簡単な成分組成砥石を使用した場合を例示したが、金属間化合物以外に、ダイヤモンド、金属単体を含ませた(複合させた)砥石を使用することもできるし、また、セラミックスを複合させた砥石、ダイヤモンド砥石をセグメントとして併用した砥石も数値制御研磨加工にて使用できる。砥石としての機能を備えかつ砥石の一部に研磨加工能力が極めて高い本砥石を使用したものは、全て本発明に含まれるものである。
また、本発明の数値制御研磨加工法の実施例では、数値制御加工装置として
幾つかの加工装置を例示したが、用途、目的に応じて適時選択できるものであり、必ずしも本実施例に限定されるものではない。同様に研磨加工の仕様に応じて併用される各種付帯設備も同様に適時選択できるものである。
特に3次元で高い形状精度が要求される研磨加工時に威力を発揮する、CAMプログラム、CADとCAMプログラムについても特に本実施例に限定されるものではなく、本発明の目的に沿うものであれば、全て本発明に含まれるものである。
【0037】
【発明の効果】
以上、本発明は、数値制御機構を有する加工装置を用いて、主成分としてTi、Zr、Hf、V、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種若しくは2種以上の元素粉末とAl、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptの群から選択した1種若しくは2種以上の元素粉末を、それぞれ本発明の金属間化合物が形成できる組成及び比率に調合した砥石または前記砥石に所定の量複合粒子を含有する砥石を使用し、一定圧力または一定切込み条件で被研磨加工体であるダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド単結晶、ダイヤモンド燒結体等に対して相対的に動かし、或いは砥石と被加工体が相対運動するように動かすことにより前記ダイヤモンドに押し当てて研磨加工することで、鏡面で、かつ、うねり、端部のだれ等の極めて少ない高い形状精度を有し、高い再現性と研磨加工能率を低コストで実現できる研磨加工方法、また、従来法では事実上研磨加工が不可能であった高精度3次元形状研磨加工を可能にするという優れた効果を有する。
また、CAM、またはCADとCAMプログラムで複雑形状の研磨加工を自動化し、
従来の研磨加工法では高い熟練技術を必要とした高精度研磨加工も大幅にコストダウンがはかれ、従来にない高い形状精度の新しい各種応用製品を提供することで各種産業に多大の波及効果をもたらすことのできるという際立った特長を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ti−Al金属間化合物砥石を使用して砥石切込み5μmにて1パス研磨加工後の気相合成ダイヤモンド薄膜表面の微分干渉顕微鏡写真(倍率 x 100 )である。
【図2】Zr−Al金属間化合物砥石を用いて曲率半径100mmの凸状3次元曲面を1パス研磨加工した際の未研磨加工部/研磨加工部境界の電子顕微鏡写真(倍率 x 500)である。
Claims (5)
- 数値制御機構を有する加工装置を用いて、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、の群から選択した1種若しくは2種以上の元素とTi、Zr、Hf、V、Nb、Mo、Ta、Wの群から選択した1種若しくは2種以上の元素との金属間化合物を主成分とする砥石又は前記砥石に複合粒子を含有する砥石を、一定圧力或いは一定切込み条件で、被研磨加工体であるダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド単結晶、ダイヤモンド焼結体に対して相対運動させ、研磨加工することを特徴とするダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド単結晶、ダイヤモンド焼結体の数値制御研磨加工方法。
- CAM(Computer Aided Machining)又はCAD(Computer Aided Design)とCAMプログラムにて制御駆動する数値制御加工装置を用いて研磨加工することを特徴とする請求項1に記載の数値制御研磨加工方法。
- 平面、凸面、凹面の群から選ばれた少なくとも1種以上の組み合わせで出来る平面、凹凸一定曲率面、自由曲面等を研磨加工できる数値制御加工装置を用いて研磨加工することを特徴とする請求項1又は2記載の数値制御研磨加工方法。
- 研磨加工用砥石を使用して被加工体に対して点接触、線接触又は面接触により定圧または定切込み加工することを特徴とする請求項1〜3のそれぞれに記載の数値制御研磨加工方法。
- 加工砥石に含有する複合粒子がダイヤモンドであることを特徴とする請求項1〜4のそれぞれに記載の数値制御研磨加工方法。
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