JP3573942B2 - 支障木等の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成方法及びその装置 - Google Patents
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Description
本発明は支障木等の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成方法及びその装置に関し、山野を切り開く山間部の工事の際に伐採された支障木をその場で破砕して粉砕チップ化し、且つ炭化した後に下水汚泥と共に再活用できるようにしたことを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題を考える上で、資源のリサイクルが話題を呼んでいる。このことは、公共工事においても、自然環境の保全と、人間と自然との共生した環境整備が重要視され、特に工事現場において伐採等によって発生する支障木の有効活用が注目されてきている。
そして、山野を切り開く山間部の工事の際に伐採された木々は、支障木となり、一部の用材を取り後の幹や枝葉や根株は、殆ど利用されずに林内に放置したり、埋立てや焼却等によって廃棄処分をしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、工事現場で発生する支障木(幹、枝葉、根株等)は不定形であり、しかもときには土石の塊を包み込んでいるため、その取扱いや運搬に苦慮している。すなわち、前記の支障木を林内に放置して廃棄処分にする方法は、例えば自然景観を損なったり、火災や災害、害虫の発生等を誘発している。また、埋立ては地盤の陥没を発生する。焼却は野火や煙害、燃え殻、残灰等の2次災害や公害が発生するおそれがある。そのため、安易に投棄したり埋立て焼却の処分ができないやっかいな問題である。
【0004】
また、支障木を伐採した後の山肌地面は削り取られて岩肌や無機質の土壌が露出した裸地面となる。これらの斜面は、自然との調和や安らぎと潤いのある環境創りから法面緑化工事が施工されるが、緑を構成する植物の生育や維持には過度の化学肥料へ依存する傾向もあり、土壌や水質等の環境負荷に疑問が投げかけられている。
最近では、このような諸々の問題があることによって専門の処分業者へ委託することが行われているが、その処分は焼却処分となり、その処分費用が掛かると共に有効利用を図ることができない。
例えば、公共公益施設のために、林齢が30年程度の雑木林地を開発した場合、1ヘクタ−ル当たり、幹径10cm程の立木3,000本以上が支障木となり、その体積は幹と枝葉で120m3 根株50m3 程となり、合わせて170m3 程の大量を処分しなければならないのが実態である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するために提供するものである。すなわち、本発明の第1は、支障木の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成方法において、道路や河川、ダム等の公共事業により伐採した幹や枝葉若しくは根株を含む支障木をその場で破砕して粉砕チップ化し、且つ炭化して有機性下水汚泥と混合して醗酵熟成して緑化基盤材を得るものである。
【0006】
本発明の第2は、第1の発明に係る支障木の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成方法において、幹や枝葉若しくは根株から成る支障木をその場で破砕して粉砕チップと木炭にして有機性下水汚泥と混合して醗酵熟成して緑化基盤材を製造するための緑化製造施設に炭化炉で支障木から木炭を作る際に発生する排煙を供給するものである。
【0007】
本発明の第3は、支障木の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成装置において、支障木を粗破砕する粗破砕機と、粗破砕した後に粉砕チップにするチップ製造機と、粗破砕した他の支障木を木炭にする炭化炉と、前記粉砕チップと木炭を下水汚泥と混合し、且つ木酢液を加える混合施設部と醗酵施設部と熟成施設部とを具備した緑化基盤製造施設とからなるものである。
【0008】
本発明の第4は、第3の発明に係る支障木の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成装置において、炭化炉から発生する排煙を緑化基盤製造施設に供給するものである。
【0009】
本発明の第5は、第3の発明に係る支障木の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成装置において、支障木を蒸し焼きして木炭を得る炭化炉から発生する排煙で緑化基盤材の材料となる木酢液を採取するものである。
【0010】
【実施例】
次に本発明の実施例を説明する。図において、1は支障木であり、幹11 、枝葉12 、根株13 に分別される。2は支障木を適宜の大きさにするための粗破砕機であり、切断機能を有する大型チッパ−を具備して最大でも45cm程度に揃えるものとする。3は粗破砕した支障木をさらに細かく粉砕するための破砕機型の粉砕チップ製造機であり、クラッシャ−機構を具備して粗破砕した支障木を当該クラッシャ−機構で擦り潰しながら、原形質を概略100mm以下の長さで且つ5mm以下の太さになる繊維状に加工するようになっている。
4は支障木を窯にくべて蒸し焼きすることによって木炭を作る炭化炉である。5は緑化基盤材を作るための緑化基盤材製造施設であり、混合施設部6、醗酵施設部7、熟成施設部8を具備している。
9は前記の施設で製造する緑化基盤材、10は下水汚泥又はこれに代わる残土などの土類、11は粉砕チップ、12は木炭であり、これを粉粒体に加工する。13は木酢液、14はコンニャクの飛び粉(登録商標=ピ−エムザイ)であり、法面緑化工事において吹付層を形成するときに前記の緑化基盤材9に配合するものである。
【0011】
(1)「緑化基盤材の配合例」
緑化基盤材10m3 製造当たりの配合割合
・ 下水汚泥 5.0 t
・ 粉砕チップ 4.0 m3
・ 木 炭 2.0 m3
・ 木 酢 液 20.0 kg
【0012】
(2)「法面緑化基盤層用吹付材料の配合例」
法面緑化基盤層 100m2 及び法面基盤層の厚さ5cm当たりの配合割合
・ 緑化基盤材 9.1 m3
・ コンニャクの飛び粉 136.5 kg
【0013】
【具体的な製造例】
(1) 緑化基盤材の製造
道路拡幅工事で発生した伐採や伐根された支障木1を粉砕チップ製造機3や炭化炉4で粉砕チップ11や木炭12を造り、これに下水汚泥10と木酢液13を加えて公知の緑化基盤製造施設5の混合施設部6に投入し、次いで醗酵施設部7で醗酵させ、さらに熟成施設部8で熟成させて緑化基盤材9を生成する。
前記緑化基盤製造施設5へは炭化炉4から発生する排煙を送り込むことによって煙中に含まれる木酢等の成分によって悪臭を除去する。
前記の粉砕チップ11は、吸水性に富んだ膨潤な性質に変化し、下水汚泥10と混合することにより、高含水でベトベト状の下水汚泥を空気と接触しやすい性状となる。そして、法面に吹付けた後の緑化基盤材の乾燥収縮による緑化基盤層のクラック防止やそれに伴う滑落防止の繋ぎ材的機能により、集中豪雨時には緑化基盤材の流亡を防止する。
次に、炭化炉4で炭化した木炭12は政令により農地土壌改良資材に認定されているとおり、緑化基盤材9の通気や保水、肥料の持ちに役立ち、緑化基盤材の機能向上を図り、下水汚泥の脱臭、浄化材の機能と共に、醗酵微生物を活性化して醗酵を促進する。
また,木酢液13は、下水汚泥の脱臭効果と醗酵の際の醗酵微生物の賦活剤として活用する。前記の木酢液は、炭化炉4で発生する排煙からも採取することができるが、大量に使用するには市販のものを使用し、又は排煙から採取したものと市販のものを合わせて使用する。
さらに、緑化基盤材の混合材料の一つである下水汚泥10は公共下水から収集した猛烈な悪臭を放つものであるが、支障木1を炭化した木炭12の粉粒体を混練することにより脱臭機能を発揮する。
【0014】
「施工例1」
支障木を伐採した後の山肌地面は削り取られて岩肌や無機質の土壌が露出した裸地面となる。
これらの斜面は、自然との調和や安らぎと潤いのある環境創りから法面緑化工事が施工される。
そのために前記の緑化基盤材9にコンニャクの精製時に生じる飛び粉(登録商標=ピ−エムザイ)14を混合し、これを公知のモルタル吹付機械に投入し、コンプレッサの圧搾空気によるノズル噴射時に水を加えて混合しながら、法面に所定の厚さの植物が生育する基盤となるように吹付ける。
【0015】
「施工例2」
近年の農耕では、窒素、燐酸、カリ、石灰等のそれぞれ主成分とする化学肥料が主体となり、作物の必要としない余分な化学成分が土に残され、さらに、土壌改良に不必要であるばかりか土に返されてはならないものまで多量に投入される傾向にある。
その結果は、農耕に役立たない成分もあるほか、同時に機械化や省エネ作業において、耕土の団粒構造を破壊して土粒を圧縮し、保水力、通気性を失わせるものも少なくない。そして、地力が弱まっている耕土を改善するために堆肥や厩肥、鶏糞等の腐植質の資材の投入が求められているが、同時に肥料を有機質のものにできるだけ多く切り替えていくことも必要とされている。
そこで、農耕地の土壌改良材として実施する場合は、耕土深さ20cmの場合、1m2 当たりの施用として緑化基盤材9の使用量1.0kg〜1.5kgとする。
【0016】
「施工例3」
ダム建設等による大規模開発では、多くの生活圏が水没により消滅してしまうが、生活に密接してきた住居はもとより、農地の代替保証も当然需要課題になっている。その代替地を開墾し、早急に農地として活用するには、すべて代替地で良質な耕土の形成ができるとは限らない。従って、腐植に富んだ良質な客土や有機質肥料を多量に投入しなければならない場面も数多く生じる。
そこで、ダム建設等で多量に発生する支障木を活用する前記の緑化基盤材を代替地の開墾の際の土壌改良資材として利用する。また、現場発生の残土に前記の緑化基盤材を混合する。
開墾における耕土の土壌改良材として実施する場合において、その耕土が火山灰土等で土壌分級が不良な場合の施用としては、混入深さ30cmの場合、1m2 当たりの緑化基盤材9を10kg〜15kgとする。
【0017】
【発明の効果】
本発明は上記の構成であるから、道路や河川、ダム等の公共事業の工事の度に発生する未利用の支障木材を粉砕チップや木炭粉粒体に加工して法面緑化用の資材として利用することができ、廃棄のためのコストの節減及び緑化のための有効な資材となり一石二鳥の効果がある。次に緑化基盤材の粉砕チップは、吸水性に富んだ膨潤な性質に変化し、下水汚泥と混合することにより、高含水でベトベト状の下水汚泥を空気と接触しやすい性状に改善することがてきる。そして、醗酵に適した水分や空気の調整が図れ、醗酵が促進される。また、緑化基盤材の通気や保水性等の品質を改善する機能とともに吹付けた後の緑化基盤材の乾燥収縮による緑化基盤層のクラック防止やそれに伴う滑落防止の繋ぎ材的機能を発揮し、集中豪雨時には緑化基盤材の流亡を防止できる。続いて、炭化炉で炭化した木炭は既に政令により農地土壌改良資材に認定されているとおり、緑化基盤材の通気や保水、肥料の持ちに役立ち、緑化基盤材の機能向上が図れる。しかも、下水汚泥の脱臭、浄化材の効果と共に、醗酵微生物を活性化して醗酵を促進する機能も有する。前記の炭化炉の排煙からも生成した木酢液は、下水汚泥の脱臭効果と醗酵の隙の醗酵微生物の賦活剤として活用できると共に、木酢液入りの緑化基盤材は植物の発根が良好となる。さらに、緑化基盤材の混合材料の一つである下水汚泥は公共下水から収集した猛烈な悪臭を放つものであるが、支障木を炭化した木炭の粉粒体を混練することにより脱臭することができる。そして醗酵施設部でも発生する悪臭物質は炭化炉の排煙をその醗酵施設部に送り込むことで除去できる。この結果、悪臭物質の規制値、特許出願人の住所地の群馬県においては、条令告示の臭気濃度10及び70よりはるかに下の数値となる。これにより、専用の脱臭設備を設けなくても公害防止が可能であると共に緑化基盤材としての製品コストの軽減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】支障木を利用した緑化基盤材製造工程図である。
【図2】支緑化基盤材の製造の工程及びその用途を示す説明図である。
【符号の説明】
1……支障木
2……粗破砕機
3……粉砕チップ製造機
4……炭化炉
5……緑化基盤製造施設
6……混合施設部
7……醗酵施設部
8……熟成施設部
9……緑化基盤材
10……下水汚泥
11……粉砕チップ
12……木炭
13……木酢液
14……コンニャクの飛び粉
Claims (5)
- 道路や河川、ダム等の公共事業により伐採した幹や枝葉若しくは根株から成る支障木をその場で破砕して粉砕チップと木炭にして有機性下水汚泥と混合して醗酵熟成して緑化基盤材を得ることを特徴とする支障木の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成方法。
- 幹や枝葉若しくは根株から成る支障木をその場で破砕して粉砕チップと木炭にして有機性下水汚泥と混合して醗酵熟成して緑化基盤材を製造するための緑化製造施設に炭化炉で支障木から木炭を作る際に発生する排煙を送り込む請求項1記載の支障木の未利用木材を活用したリサイクル緑化基盤材の形成方法。
- 支障木( 1 )を粗破砕する粗破砕機( 2 )と、粗破砕した後に粉砕チップにするチップ製造機( 3 )と、粗破砕した他の支障木を木炭にする炭化炉( 4 )と、前記粉砕チップと木炭( 12 )を下水汚泥( 10 )と混合し、且つ木酢液( 13 )を加える混合施設部( 6 )と醗酵施設部( 7 )と熟成施設部( 8 )とを具備した緑化基盤製造施設( 5 )とからなる支障木の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成装置。」
- 炭化炉(4)から発生する排煙を緑化基盤製造施設(5)に供給する請求項3記載の支障木の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成装置。
- 支障木を蒸し焼きして木炭を得る炭化炉(4)から発生する排煙で緑化基盤材の材料となる木酢液(13)を採取する請求項3記載の支障木の未利用木材を用いたリサイクル緑化基盤材の形成装置。
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