JP3570772B2 - シーラント - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、剛性、耐熱性、耐スクラッチ性、透明性、ヒートシール性、ブロッキング性に優れた新規なプロピレン系エラストマーに関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
プロピレン系エラストマーは、耐スクラッチ性、透明性、耐熱性、ヒートシール性などに優れているため、フィルム、シートなどに使用されている。
【0003】
このようなプロピレン系エラストマーのうちでもプロピレンと1−ブテンとの共重合体であるプロピレン系エラストマーは、従来固体状チタン系触媒あるいはジルコニウム、ハフニウムなどのメタロセン化合物とアルキルアルミノオキサンとからなるメタロセン系触媒を用いて製造されている。
【0004】
しかしながら上記のように製造される従来のプロピレン系エラストマーは、ヒートシール性、耐ブロッキング性、耐熱性が必ずしも充分ではなかった。このため衝撃吸収性、耐熱性、透明性、剛性に優れるとともに、ヒートシール性、耐ブロッキング性にも優れたプロピレン系エラストマーの出現が望まれていた。
【0005】
本発明者らはこのような従来技術に鑑みてプロピレンと1−ブテンとの共重合体であるプロピレン系エラストマーについて検討したところ、頭−尾結合からなるプロピレン連鎖部のトリアドタクティシティ(頭−尾結合しているとともにメチル基の分岐方向がすべて同一である)が高く、立体規則性の高いプロピレン系エラストマーが、上記のような優れた特性を示すことを見出した。そしてこのようなプロピレン系エラストマーは、特定のメタロセン化合物触媒成分を用いることにより、効率よく製造することができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
なお本出願人は、先に特開昭62−119212号公報において、プロピレンと他のα−オレフィンとが規則正しく頭−尾結合したプロピレン系エラストマーを開示している。このプロピレン系エラストマーは、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなどのメタロセン化合物を用いて製造されており、本発明に係るプロピレン系エラストマーに比べると、組成(コモノマー比率)が同一である場合には、より高い融点を有している。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、剛性、耐熱性、耐スクラッチ性、透明性、ヒートシール性、ブロッキング性に優れた新規なプロピレン系エラストマーを提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係るシーラントは、
(1) プロピレンから導かれる単位を70〜90モル%の量で、1-ブテンから導かれる単位を10〜30モル%の量で含有し、
(2) (i) 頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、または
(ii)頭−尾結合したプロピレン単位とブテン単位とからなり、かつ第2単位目にプロピレン単位を含むプロピレン・ブテン3連鎖中の
第2単位目のプロピレン単位の側鎖メチル基について13C−NMRスペクトル(ヘキサクロロブタジエン溶液、テトラメチルシランを基準)を測定し、19.5〜21.9ppm に表れるピークの全面積を100%とした場合に、21.0〜21.9ppm に表れるピークの面積が90%以上であり、
(3) 135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(4) ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、
(5) 共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータB値が、1.0〜1.3であり、
(6) 示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが60〜105.1℃であり、かつ該融点Tmと、1-ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
−2.6M+125 ≦ Tm ≦ −2.6M+145 であり、
(7) X線回折法により測定される結晶化度Cと、1-ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
C ≧ −1.5M+65
であるプロピレン系エラストマーからなることを特徴としている。
【0010】
上記のような本発明に係るシーラントでは、前記プロピレン系エラストマーが、
[A]下記一般式[I]または[ II ]で示されるメタロセン化合物と、
[B][B-1] 有機アルミニウムオキシ化合物、および/または
[B-2] メタロセン化合物[A]と反応してイオン対を形成する化合物と、
所望により[C]有機アルミニウム化合物とを含むオレフィン重合用触媒の存在下に、
プロピレンと1-ブテンとを共重合させることにより得られることが望ましい。
【0014】
【化6】
【0015】
〔式中、Mは周期律表第IVB、VB、VIB族の遷移金属であり、
R11およびR12は互いに同一でも異なっていてもよく、前記式(A)中のR1 と同様であり、
R13およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基であり、
X1 、X2 、Yは、前記式(A)と同様である。〕
【0016】
【化7】
【0017】
〔式中、Mは周期律表第IVB族の遷移金属であり、
R21は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または−NR2、−SR、−OSiR3、−SiR3または−PR2基(ただしRはハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基)であり、
R22〜R28は、上記のR21と同様であるか、あるいは隣接するR22〜R28がそれらの結合する原子とともに、芳香族−または脂肪族環を形成していてもよく、X3 およびX4 は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜40のアリールアルキル基、炭素数7〜40のアルキルアリール基、炭素数8〜40のアリールアルケニル基、OH基またはハロゲン原子であり、
【0018】
【化8】
【0019】
−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR29、=CO、=PR29または=P(O)R29である。(ただしR29およびR30は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフルオロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のフルオロアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜40のアリールアルキル基、炭素数8〜40のアリールアルケニル基または炭素数7〜40のアルキルアリール基であるか、またはR29とR30とはそれぞれそれらの結合する原子とともに環を形成してもよく、M2 は、珪素、ゲルマニウムまたはスズである。)〕。
【0020】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るプロピレン系エラストマーについて具体的に説明する。
(1) 本発明に係るプロピレン系エラストマーは、プロピレンと1−ブテンとのランダム共重合体であって、
プロピレンから導かれる単位を50〜95モル%好ましくは60〜93モル%より好ましくは70〜90モル%の量で、
1−ブテンから導かれる単位を5〜50モル%好ましくは7〜40モル%より好ましくは10〜30モル%の量で含有している。
【0021】
このプロピレン系エラストマーは、プロピレンおよび1−ブテン以外のオレフィンから導かれる単位を少量たとえば10モル%以下望ましくは5モル%以下の量で含んでいてもよい。
【0022】
(2) プロピレン系エラストマーの立体規則性(トリアドタクティシティ:mm分率)
本発明に係るプロピレン系エラストマーの立体規則性は、トリアドタクティシティ(mm分率)によって評価することができる。
【0023】
このmm分率は、ポリマー鎖中に存在する3個の頭−尾結合したプロピレン単位連鎖を表面ジグザグ構造で表したとき、そのメチル基の分岐方向が同一である割合として定義され、下記のように13C−NMRスペクトルから求められる。
【0024】
このmm分率を13C−NMRスペクトルから求める際には、具体的にポリマー鎖中に存在するプロピレン単位を含む3連鎖として、
(i) 頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、および
(ii)頭−尾結合したプロピレン単位とブテン単位とからなりかつ第2単位目がプロピレン単位であるプロピレン単位・ブテン単位3連鎖
について、mm分率が測定される。
【0025】
これら3連鎖(i) および(ii)中の第2単位目(プロピレン単位)の側鎖メチル基のピーク強度からmm分率が求められる。以下に詳細に説明する。
プロピレン系エラストマーの13C−NMRスペクトルは、サンプル管中でプロピレン系エラストマーをロック溶媒として少量の重水素化ベンゼンを含むヘキサクロロブタジエンに完全に溶解させた後、120℃においてプロトン完全デカップリング法により測定される。測定条件は、フリップアングルを45°とし、パルス間隔を3.4T1 以上(T1 はメチル基のスピン格子緩和時間のうち最長の値)とする。メチレン基およびメチン基のT1 は、メチル基より短いので、この条件では試料中のすべての炭素の磁化の回復は99%以上である。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として頭−尾結合したプロピレン単位5連鎖(mmmm)の第3単位目のメチル基炭素ピークを21.593ppm として、他の炭素ピークはこれを基準とした。
【0026】
このように測定されたプロピレン系エラストマーの13C−NMRスペクトルのうち、プロピレン単位の側鎖メチル基が観測されるメチル炭素領域(約19.5〜21.9ppm)は、
第1ピーク領域(約21.0〜21.9ppm)、
第2ピーク領域(約20.2〜21.0ppm )、
第3ピーク領域(約19.5〜20.2ppm )に分類される。
【0027】
そしてこれら各領域内には、表1に示すような頭−尾結合した3分子連鎖(i) および(ii)中の第2単位目(プロピレン単位)の側鎖メチル基ピークが観測される。
【0028】
【表1】
【0029】
表中、Pはプロピレンから導かれる単位、Bは1−ブテンから導かれる単位を示す。
表1に示される頭−尾結合3連鎖(i) および(ii)のうち、(i) 3連鎖がすべてプロピレン単位からなるPPP(mm)、PPP(mr)、PPP(rr)についてメチル基の方向を下記に表面ジグザグ構造で図示するが、(ii)ブテン単位を含む3連鎖(PPB、BPB)のmm、mr、rr結合は、このPPPに準ずる。
【0030】
【化9】
【0031】
第1領域では、mm結合したPPP、PPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
第2領域では、mr結合したPPP、PPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基およびrr結合したPPB、BPB3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
第3領域では、rr結合したPPP3連鎖の第2単位(プロピレン単位)目のメチル基が共鳴する。
【0032】
したがってプロピレン系エラストマーのトリアドタクティシティ(mm分率)は、
(i) 頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、または
(ii)頭−尾結合したプロピレン単位とブテン単位とからなり、かつ第2単位目にプロピレン単位を含むプロピレン・ブテン3連鎖を、
3連鎖中の第2単位目のプロピレン単位の側鎖メチル基について、13C−NMRスペクトル(ヘキサクロロブタジエン溶液、テトラメチルシランを基準)で測定したとき、
19.5〜21.9ppm (メチル炭素領域)に表れるピークの全面積を100%とした場合に、
21.0〜21.9ppm (第1領域)に表れるピークの面積の割合(百分率)として、下記式から求められる。
【0033】
【数1】
【0034】
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、このようにして求められるmm分率が90%以上好ましくは92%以上より好ましくは94%以上である。
なおプロピレン系エラストマーは、上記のような頭−尾結合した3連鎖(i) および(ii)以外にも、下記構造(iii) 、(iv)および(v) で示されるような位置不規則単位を含む部分構造を少量有しており、このような他の結合によるプロピレン単位の側鎖メチル基に由来するピークも上記のメチル炭素領域 (19.5〜21.9 ppm) 内に観測される。
【0035】
【化10】
【0036】
上記の構造(iii) 、(iv)および(v) に由来するメチル基のうち、メチル基炭素Aおよびメチル基炭素Bは、それぞれ17.3ppm 、17.0ppm で共鳴するので、炭素Aおよび炭素Bに基づくピークは、前記第1〜3領域 (19.5〜21.9 ppm) 内には現れない。さらにこの炭素Aおよび炭素Bは、ともに頭−尾結合に基づくプロピレン3連鎖に関与しないので、上記のトリアドタクティシティ(mm分率)の計算では考慮する必要はない。
【0037】
またメチル基炭素Cに基づくピーク、メチル基炭素Dに基づくピークおよびメチル基炭素D’に基づくピークは、第2領域に現れ、メチル基炭素Eに基づくピークおよびメチル基炭素E’に基づくピークは第3領域に現れる。
【0038】
したがって第1〜3メチル炭素領域には、PPE−メチル基(プロピレン−プロピレン−エチレン連鎖中の側鎖メチル基)(20.7ppm 付近)、EPE−メチル基(エチレン−プロピレン−エチレン連鎖中の側鎖メチル基)(19.8ppm付近)、メチル基C、メチル基D、メチル基D’、メチル基Eおよびメチル基E’に基づくピークが現れる。
【0039】
このようにメチル炭素領域には、頭−尾結合3連鎖(i) および(ii)に基づかないメチル基のピークも観測されるが、上記式によりmm分率を求める際にはこれらは下記のように補正される。
【0040】
PPE−メチル基に基づくピーク面積は、PPE−メチン基(30.6ppm 付近で共鳴)のピーク面積より求めることができ、EPE−メチル基に基づくピーク面積は、EPE−メチン基(32.9ppm 付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。
【0041】
メチル基Cに基づくピーク面積は、隣接するメチン基(31.3ppm 付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。
メチル基Dに基づくピーク面積は、前記構造(iv)のαβメチレン炭素に基づくピーク(34.3ppm 付近および34.5ppm 付近で共鳴で共鳴)のピーク面積の和の1/2より求めることができ、メチル基D’に基づくピーク面積は、前記構造(v) のメチル基E’のメチル基の隣接メチン基に基づくピーク(33.3ppm 付近で共鳴)の面積より求めることができる。
【0042】
メチル基Eに基づくピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.7ppm 付近で共鳴)のピーク面積より求めることができ、メチル基E’に基づくピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.3ppm 付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。
【0043】
したがってこれらのピーク面積を第2領域および第3領域の全ピーク面積より差し引くことにより、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖(i) および(ii)に基づくメチル基のピーク面積を求めることができる。
【0044】
以上により頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖(i) および(ii)に基づくメチル基のピーク面積を評価することができるので、上記式に従ってmm分率を求めることができる。
なおスペクトル中の各炭素ピークは、文献(Polymer,30,1350(1989) )を参考にして帰属することができる。
【0045】
(3) 極限粘度[η]
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜12dl/g好ましくは0.5〜12dl/gより好ましくは1〜12dl/gである。
【0046】
(4) 分子量分布
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーGPCにより求められる分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり好ましくは2.0〜3.0より好ましくは2.0〜2.5である。
【0047】
(5) ランダム性
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータB値が、1.0〜1.5好ましくは1.0〜1.3より好ましくは1.0〜1.2である。
【0048】
このパラメータB値はコールマン等(B.D.Cole−man and T.G.Fox, J. Polym. Sci., Al,3183(1963) )により提案されており、以下のように定義される。
B=P12/(2P1 ・P2 )
ここで、P1 、P2 はそれぞれ第1モノマー、第2モノマー含量分率であり、P12は全二分子連鎖中の(第1モノマー)−(第2モノマー)連鎖の割合である。
なおこのB値は1のときベルヌーイ統計に従い、B<1のとき共重合体はブロック的であり、B>1のとき交互的である。
【0049】
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、上記のような特性に加えて、
(6) 示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが60〜140℃好ましくは80〜130℃であることが望ましく、かつ
該融点Tmと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が
−2.6M+125 ≦ Tm ≦ −2.6M+145であることが望ましい。
【0050】
(7) X線回折法により測定される結晶化度Cと、1−ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が
C ≧ −1.5M+65であることが望ましい。
【0051】
また上記のような本発明に係るプロピレン系エラストマーは、
(8) プロピレン連鎖中に存在するプロピレンの2,1−挿入あるいは1,3−挿入に基づく異種結合単位(位置不規則単位)を含む構造を少量有していることがある。
【0052】
重合時、プロピレンは、通常1,2−挿入(メチレン側が触媒と結合する)して前記のような頭−尾結合したプロピレン連鎖を形成するが、稀に2,1−挿入あるいは1,3−挿入することがある。2,1−挿入および1,3−挿入したプロピレンは、ポリマー中で、前記構造(iii) 、(iv)および(v) で示されるような位置不規則単位を形成する。ポリマー構成単位中のプロピレンの2,1−挿入および1,3−挿入の割合は、前記の立体規則性と同様に13C−NMRスペクトルを利用して、Polymer,30,1350(1989) を参考にして下記の式から求めることができる。
【0053】
プロピレンの2,1−挿入に基づく位置不規則単位の割合は、下記の式から求めることができる。
【0054】
【数2】
【0055】
なおピークが重なることなどにより、Iαβなどの面積が直接スペクトルより求めることが困難な場合は、対応する面積を有する炭素ピークで補正することができる。
【0056】
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、上記のようにして求められるプロピレン連鎖中に存在するプロピレンの2,1−挿入に基づく異種結合単位を、全プロピレン構成単位中0.01%以上具体的に0.01〜1.0%程度の割合で含んでいてもよい。
【0057】
またプロピレン系エラストマーのプロピレンの1,3−挿入に基づく位置不規則単位の割合は、βγピーク(27.4ppm 付近で共鳴)により求めることができる。
【0058】
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、プロピレンの1,3−挿入に基づく異種結合の割合が0.50%以下であってもよい。
上記のような本発明に係るプロピレン系エラストマーは、
[A]特定のメタロセン化合物と、
[B][B−1] 有機アルミニウムオキシ化合物、および/または
[B−2] メタロセン化合物[A]と反応してイオン対を形成する化合物と、
所望により[C]有機アルミニウム化合物とからなるオレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンと1−ブテンとを共重合させることにより得られる。
【0059】
以下本発明で用いられるオレフィン重合用触媒について説明する。
[A]メタロセン化合物
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、下記一般式(A)で示されるメタロセン化合物[A]を用いて製造される。
【0060】
【化11】
【0061】
式中、Mは周期律表第IV〜VIB族の遷移金属であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンであり、好ましくはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、特に好ましくはジルコニウムである。
【0062】
置換基R 1 〜R 4
R1 、R2 、R3 およびR4 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基であり、また互いに隣接する基の一部が結合してそれらの基が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。なおそれぞれ2個ずつ表示されたR1 〜R4 は、これらが結合して環を形成する際には同一記号同士の組み合せで結合することが好ましいことを示しており、たとえばR1 とR1 とで結合して環を形成することが好ましいことを示している。
【0063】
具体的に、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、たとえば
メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどのアルキル基、
ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基、
ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基、
フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、α−またはβ−ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニリルなどのアリール基が挙げられる。
【0064】
これらの炭化水素基が結合して形成する環としてはベンゼン環、ナフタレン環、アセナフテン環、インデン環などの縮環基、ベンゼン環、ナフタレン環、アセナフテン環、インデン環などの縮環基上の水素原子がメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基で置換された基が挙げられる。
【0065】
またこれらの炭化水素基は、ハロゲンで置換されていてもよい。
ケイ素含有基としては、メチルシリル、フェニルシリルなどのモノ炭化水素置換シリル、ジメチルシリル、ジフェニルシリルなどのジ炭化水素置換シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどのトリ炭化水素置換シリル、
トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルのシリルエーテル、
トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基、トリメチルフェニルなどのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0066】
酸素含有基としては、ヒドロオキシ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリロキシ基、フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基などが挙げられる。
【0067】
イオウ含有基としては、前記含酸素化合物の酸素がイオウに置換した置換基、およびメチルスルホネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p−トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p−クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基、メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンゼンスルフィネート、p−トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基が挙げられる。
【0068】
窒素含有基としては、アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられる。
【0069】
リン含有基としては、ジメチルフォスフィノ、ジフェニルフォスフィノなどが挙げられる。
X 1 およびX 2
X1 およびX2 は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基である。これらの原子または基としては、具体的には、R1 〜R4 で示したような原子または基と同様のものが挙げられる。
【0070】
Y
Yは、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−NR7 −、−P(R7 )−、−P(O)(R7 )−、−BR7 −または−AlR7 −である。(ただし、R7 は水素原子、上記と同様のハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。)
具体的には、炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、メチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、ジメチル−1,2− エチレン、1,3−トリメチレン、1,4−テトラメチレン、1,2−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレンなどのアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル−1,2− エチレンなどのアリールアルキレン基などが挙げられる。またクロロメチレンなどの上記炭素数1〜20の2価の炭化水素基をハロゲン化したハロゲン化炭化水素基などが挙げられる。
【0071】
2価のケイ素含有基としては、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p−トリル)シリレン、ジ(p−クロロフェニル)シリレンなどのアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレン基、テトラメチル−1,2−ジシリル、テトラフェニル−1,2− ジシリルなどのアルキルジシリル、アルキルアリールジシリル、アリールジシリル基などが挙げられる。
【0072】
2価のゲルマニウム含有基としては、上記2価のケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した化合物が挙げられる。
本発明では、上記のような式(A)で示されるメタロセン化合物のうちでも、下記式[I]で示されるメタロセン化合物が好ましく用いられる。
【0073】
【化12】
【0074】
置換基R 11 およびR 12
R11およびR12は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記式(A)中R1 〜R4 と同様である。
【0075】
置換基R 13 およびR 14
R13およびR14は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基である。このアルキル基またはアリール基としては、R11およびR12で示したような基と同様のものが挙げられる。
【0076】
これらのアルキル基またはアリール基は、ハロゲンまたは有機シリル基(ケイ素含有基)基で置換されていてもよい。
これらのうちでも、2級または3級のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基が好ましい。
【0077】
X 1 およびX 2
X1 およびX2 は、前記式(A)と同様のものが挙げられる。
これらのうち、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
【0078】
Y
Yは、前記式(A)と同様のものが挙げられる。
このうち2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基であることが好ましく、2価のケイ素含有基であることがより好ましく、アルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレンであることがより好ましい。
【0079】
以下に上記一般式[I]で示されるメタロセン化合物の具体例に示す。
rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,6−トリメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6−ジフェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−フェニル−6−イソプロピル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−α−ナフチル−6−イソプロピル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i−プロピル−6−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−メチル−6−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−メチル−6−i−プロピル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6−ジ(i−プロピル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6−ジ(sec−ブチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−エチル−4,6−ジ(i−プロピル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−n−プロピル−4,6−ジ(i−プロピル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6−ジ(i−プロピル)−1−インデニル)チタニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6−ジ(i−プロピル)−1−インデニル)ハフニウムジクロリドなど。
【0080】
上記のような式[I]で示されるメタロセン化合物のインデン誘導体配位子は、たとえば下記のような反応工程により、通常の有機合成手法によって合成することができる。
【0081】
【化13】
【0082】
本発明で用いられるメタロセン化合物は、上記のようにして得られるインデン誘導体から、たとえばJournal of Organometallic Chem.288(1985), 第63〜67頁、特開平4−268307号公報などに記載されている既知の方法に準じて合成することができる。
【0083】
また本発明では、メタロセン化合物[A]として、EP−549900号およびカナダ−2084017号に記載された下記式[II]で示される化合物を用いることもできる。
【0084】
【化14】
【0085】
式中、Mは周期律表第IVB族の遷移金属原子であり、具体的には、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、特に好ましくはジルコニウムである。
R21は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子好ましくはフッ素原子または塩素原子、ハロゲン化されていてもよい炭素数1〜10好ましくは1〜4のアルキル基、 炭素数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、−NR2、−SR、−OSiR3、−SiR3または−PR2基(ただしRはハロゲン原子好ましくは塩素原子、炭素数1〜10好ましくは1〜3のアルキル基または炭素数6〜10好ましくは6〜8のアリール基)である。
【0086】
R22〜R28は、同一でも異なっていてもよく、R21と同様の原子または基であり、これらR22〜R28のうち隣接する少なくとも2個の基は、それらの結合する原子とともに、芳香族環または脂肪族環を形成していてもよい。
【0087】
X3 およびX4 は、互いに同じでも異なっていてもよく、
水素原子、ハロゲン原子、OH基、
炭素数1〜10好ましくは1〜3のアルキル基、
炭素数1〜10好ましくは1〜3のアルコキシ基、
炭素数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、
炭素数6〜10好ましくは6〜8のアリールオキシ基、
炭素数2〜10好ましくは2〜4のアルケニル基、
炭素数7〜40好ましくは7〜10のアリールアルキル基、
炭素数7〜40好ましくは7〜12のアルキルアリール基、
炭素数8〜40好ましくは8〜12のアリールアルケニル基である。
【0088】
【化15】
【0089】
−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR29、=CO、=PR29または=P(O)R29である。
ただしR29およびR30は、互いに同一でも異なっていてもよく、
水素原子、ハロゲン原子、
炭素数1〜10好ましくは1〜4のアルキル基特にメチル基、
炭素数1〜10のフルオロアルキル基好ましくはCF3 基、
炭素数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、
炭素数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、
炭素数6〜10のフルオロアリール基好ましくはペンタフルオロフェニル基、
炭素数1〜10好ましくは1〜4のアルコキシ基特にメトキシ基、
炭素数2〜10好ましくは2〜4のアルケニル基、
炭素数7〜40好ましくは7〜10のアリールアルキル基、
炭素数8〜40好ましくは8〜12のアリールアルケニル基、
炭素数7〜40好ましくは7〜12のアリールアルキル基である。
【0090】
またR29とR30とは、それぞれそれらの結合する原子とともに環を形成してもよい。
M2 は、珪素、ゲルマニウムまたはスズである。
【0091】
上述のアルキル基は直鎖状のまたは枝分かれしたアルキル基であり、ハロゲン(ハロゲン化)はフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、特にフッ素原子または塩素原子である。
【0092】
このような式[II]で示される化合物のうちでも、
Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
R21は、互いに同じであり、炭素数1〜4のアルキル基であり、
R22〜R28は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、
X3 およびX4 は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン原子であり、
【0093】
【化16】
【0094】
(M2 はケイ素であり、R29およびR30は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。)
である化合物が好ましく、
置換基R22およびR28は、水素原子であり、R23〜R27は、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子である化合物がより好ましい。
【0095】
さらには、Mは、ジルコニウムであり、
R21は、互いに同一で炭素数1〜4のアルキル基であり、
R22およびR28は、水素原子であり、
R23〜R27は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基または水素原子であり、
X3 およびX4 は、いずれも塩素原子であり、
【0096】
【化17】
【0097】
(M2 は、ケイ素であり、R29およびR30は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。)
である化合物が好ましく、特に、
Mは、ジルコニウムであり、
R21は、メチル基であり、
R22〜R28は、水素原子であり、
X3 およびX4 は、塩素原子であり、
【0098】
【化18】
【0099】
である化合物が好ましい。
以下にこのような式[II]で示されるメタロセン化合物の具体例を示す。
rac−ジメチルシリレン−ビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2,3,6−トリメチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−メチルフェニルシリレン−ビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジフェニルシリレン−ビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジフェニルシリレン−ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−メチルフェニルシリレン−ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−1,2−エタンジイル−ビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−1,2−エタンジイル−ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−1,2−ブタンジイル−ビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−1,2−ブタンジイル−ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0100】
また上記のような化合物中のジルコニウムをチタニウムまたはハフニウムに代えた化合物を挙げることもできる。
本発明では、通常式[I]または[II]で示されるメタロセン化合物のラセミ体が触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
【0101】
上記のようなメタロセン化合物は、2種以上組合わせて用いることもできる。
本発明では、メタロセン化合物[A]として、これらのうちでも、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが特に好ましく用いられる。
【0102】
[B−1] 有機アルミニウムオキシ化合物
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒を形成する[B−1] 有機アルミニウムオキシ化合物(以下「成分[B−1] 」と記載することがある。)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0103】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができる。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷、水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0104】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解あるいはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0105】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert− ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。
【0106】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
またアルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として、下記一般式で表されるイソプレニルアルミニウムを用いることもできる。
【0107】
(i−C4H9)x Aly (C5 H10)z … [II]
(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)
上記のような有機アルミニウム化合物は、2種以上組合せて用いることもできる。
【0108】
アルミノキサンの溶液または懸濁液に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。その他、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0109】
[B−2] イオン対を形成する化合物
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒を形成する[B−2] 前記メタロセン化合物[A]と反応してイオン対を形成する化合物(以下「成分[B−2] 」と記載することがある。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、US−547718号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物およびカルボラン化合物を挙げることができる。
【0110】
ルイス酸としては、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、MgCl2、Al2O3、SiO2−Al2O3 などが例示できる。
【0111】
イオン性化合物としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリn−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが例示できる。
【0112】
カルボラン化合物としては、ドデカボラン、1−カルバウンデカボラン、ビスn−ブチルアンモニウム(1−カルベドデカ)ボレート、トリn−ブチルアンモニウム(7,8−ジカルバウンデカ)ボレート、トリn−ブチルアンモニウム(トリデカハイドライド−7−カルバウンデカ)ボレートなどが例示できる。
【0113】
上記のようなメタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物[B−2] は、2種以上組合わせて用いることができる。
[C]有機アルミニウム化合物
本発明では、オレフィン重合用触媒を形成する際に所望により[C]有機アルミニウム化合物(以下「成分[C]」と記載することがある。)を用いることができるが、この有機アルミニウム化合物[C]としては、たとえば下記一般式[III]で示される有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0114】
R9 nAlX3−n … [III]
(式中、R9 は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。)
炭素数1〜12の炭化水素基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられる。
【0115】
このような有機アルミニウム化合物[C]としては、具体的には下記のような化合物が挙げられる。
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、
イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド、
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなど。
【0116】
また有機アルミニウム化合物[C]として、下記一般式[IV]で示される化合物を用いることもできる。
R9 nAlL3−n … [IV]
(式中、R9 は上記と同様であり、Lは−OR10基、−OSiR11 3基、−OAlR12 2基、−NR13 2基、−SiR14 3基または−N(R15)AlR16 2基であり、nは1〜2であり、R10、R11、R12およびR16はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R13は水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリレン基などであり、R14 およびR15 はメチル基、エチル基などである。)
このような有機アルミニウム化合物のなかでは、
R7 nAl(OAlR10 2)3−n で表される化合物、たとえば
Et2AlOAlEt2 、(iso−Bu)2AlOAl(iso−Bu)2 などが好ましい。
【0117】
上記一般式[III]および[IV]で表される有機アルミニウム化合物の中では、一般式R7 3Alで表される化合物が好ましく、特にR7がイソアルキル基である化合物が好ましい。
【0118】
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、成分[A]、成分[B−1] (または成分[B−2] )および所望により成分[C]を不活性炭化水素溶媒中またはオレフィン溶媒中で混合することにより調製することができる。
【0119】
オレフィン重合用触媒の調製に用いられる不活性炭化水素溶媒として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。
【0120】
オレフィン重合用触媒を調製する際の各成分の混合順序は任意であるが、
成分[B−1] または成分[B−2] )と成分[A]とを混合するか、
成分[B−1] と成分[C]とを混合し、次いで成分[A]を混合するか、
成分[A]と成分[B−1] (または成分[B−2] )とを混合し、次いで成分[C]を混合するか、あるいは、
成分[A]と成分[C]とを混合し、次いで成分成分[B−1] (または成分[B−2] )を混合することが好ましい。
【0121】
上記各成分を混合するに際して、成分[B−1] 中のアルミニウムと、成分[A]中の遷移金属との原子比(Al/遷移金属)は、通常10〜10000、好ましくは20〜5000であり、成分(A)の濃度は、約10−8〜10−1モル/リットル、好ましくは10−7〜5×10−2モル/リットルの範囲である。
【0122】
成分[B−2] を用いる場合、成分[A]と成分[B−2] とのモル比(成分[A]/成分[B−2] )は、通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5の範囲であり、成分[A]の濃度は、約10−8〜10−1モル/リットル、好ましくは10−7〜5×10−2モル/リットルの範囲である。
【0123】
成分[C]を用いる場合は、成分[C]中のアルミニウム原子(AlC)と成分[B−1] 中のアルミニウム原子(AlB−1)との原子比(AlC/AlB−1)は、通常0.02〜20、好ましくは0.2〜10の範囲である。
【0124】
上記各触媒成分は、重合器中で混合してもよいし、予め混合したものを重合器に添加してもよい。
予め混合する際の混合温度は、通常−50〜150℃、好ましくは−20〜120℃であり、接触時間は1〜1000分間、好ましくは5〜600分間である。また、混合接触時には混合温度を変化させてもよい。
【0125】
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、無機あるいは有機の、顆粒状ないしは微粒子状の固体である微粒子状担体に、上記成分[A]、成分[B]および成分[C]のうち少なくとも一種の成分が担持された固体状オレフィン重合用触媒であってもよい。
【0126】
無機担体としては多孔質酸化物が好ましく、たとえばSiO2、Al2O3
などを例示することができる。
有機化合物の顆粒状ないしは微粒子状固体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィン、もしくはスチレンを主成分として生成される重合体または共重合体を例示することができる。
【0127】
また本発明で用いられるオレフィン重合触媒は、上記の微粒子状担体、成分[A]、成分[B]、予備重合により生成するオレフィン重合体および、所望により成分[C]から形成されるオレフィン重合触媒であってもよい。
【0128】
予備重合に用いられるオレフィンとしては、プロピレン、エチレン、1−ブテンなどのオレフィンが用いられるが、これらと他のオレフィンとの混合物であってもよい。
【0129】
なお本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、上記のような各成分以外にもオレフィン重合に有用な他の成分、たとえば、触媒成分としての水なども含むことができる。
【0130】
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、上記のオレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンと1−ブテンとを、最終的に前記の組成比になるように共重合させることによって製造することができる。
【0131】
重合は懸濁重合、溶液重合などの液相重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施できる。
液相重合法では上述した触媒調製の際に用いた不活性炭化水素溶媒と同じものを用いることができ、プロピレンを溶媒として用いることもできる。
【0132】
重合温度は、懸濁重合法を実施する際には、通常−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の範囲であることが望ましく、溶液重合法を実施する際には、通常0〜250℃、好ましくは20〜200℃の範囲であることが望ましい。また気相重合法を実施する際には、重合温度は通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の範囲であることが望ましい。
【0133】
重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2 の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
【0134】
さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られるプロピレン系エラストマーの分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度、重合圧力を変化させることによって調節することができる。
【0135】
【発明の効果】
本発明に係るプロピレン系エラストマーは、トリアドタクティシティが高く、剛性、耐熱性、耐スクラッチ性、透明性、ヒートシール性、耐ブロッキング性に優れており、シート、フィルムなどに好適に使用することができるとともに特にシーラントとしても好適に利用することができる。
【0136】
特に本発明に係るプロピレン系エラストマーを含有するフィルムは、長期間保管した場合でも、そのヒートシール温度が経時変化せず、安定したヒートシールの作業が確保される。
【0137】
また本発明に係るプロピレン系エラストマーは、従来のエラストマーに比べ、プロピレンと1−ブテンとの組成比が同一である場合には、より低温の融点を有しているため、ヒートシール温度をより低温化することができる。さらに本発明に係るプロピレン系エラストマー成形品は、表面硬度が高いためキズが付き難い。
【0138】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0139】
【物性測定法】
[1−ブテン含量]
13C−NMRを利用して求めた。
【0140】
[極限粘度[η]]
135℃デカリン中で測定し、dl/gで示した。
[分子量分布(Mw/Mn)]
分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。
【0141】
分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径27mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106 については東ソー社製を用い、1000<Mw<4×106 についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0142】
[B値]
なお、組成分布B値は、10mmφの試料管中で約200mgの共重合体を1mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C−NMRのスペクトルを、通常、測定温度120℃、測定周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、フィルター幅1500Hz、パルス繰り返し時間4.2sec、積算回数2000〜5000回の測定条件の下で測定し、このスペクトルからPE 、Po、POEを求めることにより算出した。
【0143】
[トリアドタクティシティ]
ヘキサクロロブタジエン溶液(テトラメチルシランを基準)で13C−NMRスペクトルを測定し、19.5〜21.9ppm に表れるピークの全面積(100%)に対する21.0〜21.9ppm に表れるピークの面積の割合(%)を求めた。
【0144】
[2,1−挿入に基づく異種結合の割合]
Polymer,30,1350(1989) )を参考にして、前記した方法により13C−NMRスペクトルを利用して求めた。
【0145】
[融点(Tm)]
試料約5mgをアルミパンに詰め10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち20℃/分で室温まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。測定は、パーキンエルマー社製DSC−7型装置を用いた。
【0146】
[結晶化度]
成形後少なくとも24時間経過した厚さ1.0mmのプレスシートのX線回折測定により求めた。
【0147】
[ヒートシール開始温度]
▲1▼ フィルムの作成
プレス板上に厚さ0.1mmのアルミ製のシート、PET製シート、および中央を15cm×15cm角に切り取った厚さ100μmのアルミ製シートをこの順に敷き、この中央(切り抜かれた部分)に3.3gの試料を置いた。次いで、PETシート、アルミ製の板、プレス板をこの順にさらに重ねる。
【0148】
上記プレス板ではさまれた試料を200℃のホットプレスの中に入れ、約7分間の予熱を行った後、試料内の気泡を取り除くため、加圧(50kg/cm2 G)脱圧操作を数回繰り返す。次いで最後に100kg/cm2 Gに昇圧し、2分間加圧加熱する。脱圧後プレス板をプレス機から取り出し、0℃に圧着部が保たれた別のプレス機に移し100kg/cm2 Gで4分間加圧冷却を行った後、脱圧し、試料を取り出す。得られたフィルムの均一な約150〜170μmの厚さとなったフィルムをヒートシール強度の測定用として使用する。
【0149】
▲2▼ ヒートシール強度の測定
フィルムを15mm巾の短冊に切り、その二枚を重ね合わせてさらにこれを0.1mmの厚みの2枚のテフロンフィルムで挟んで上でヒートシールを行う。ヒートシールはヒートシールの下部温度を70℃一定に保ち、熱板上部の温度のみを適宜5℃きざみで変えて行う。ヒートシール時の圧力は2kg/cm2 、ヒートシール時間は1秒としシール巾は5mm(従ってシール面積は15mm×5mm)である。
【0150】
ヒートシール強度は上記各ヒートシール温度でヒートシールを施したフィルムの剥離強度を30cm/分の引っ張り速度で引っ張り試験を行うことにより求める。
【0151】
上述した方法で5℃きざみの各ヒートシール温度での剥離強度を求め、ヒートシール温度対剥離強度のプロットを曲線で結ぶ。この曲線を基に300g/15cmの剥離強度とするヒートシール温度をヒートシール開始温度とする。
【0152】
▲3▼ エージング処理のヒートシール強度の測定
フィルムのエージング処理は、50℃の恒温槽中に7日間置いて行う。エージングにあたっては、フィルム同志が触れ合わないように、フィルム両面に紙を添えておく。このエージング処理を行ったフィルムを上記に示した方法でヒートシール開始温度を測定する。
【0153】
[マルテンス硬度]
マルテンス硬度は、東京衡機製マルテンス引掻試験機を用い、ダイヤモンド錘体に一定の荷重(5g)をかけて1mmのプレスシート面を引掻いた時の筋痕によって測定する。試験された試験片は、顕微鏡によって引掻痕の幅を測定し、読みとった値の逆数(mm−1)を求め、それをマルテンス硬度とする。
【0154】
[ブロッキング応力]
ASTM D1893に準じて評価した。巾10cm、長さ15cmのフィルムを2枚切りだし重ね合わせる。これを2枚のガラス板ではさみ10kgの荷重を乗え、50℃のエアーオーブン中に放置する。7日後にサンプルを取り出し、剥離強度を測定し、1cmあたりの剥離強度をブロッキング値とした。
【0155】
[ヘイズ]
上記のヒートシール開始温度測定用に作製されたフィルムを、ASTM D1003−61に準拠して測定した。
【0156】
【製造例1】
[ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド(式[II]で示されるメタロセン化合物)の製造]
Ar雰囲気下、三口フラスコにAlCl3120g(0.900モル)、CS2600ml の混合物を氷バスで5℃に冷却し攪拌した。
【0157】
この中にアセナフテン110g(0.714モル)を加え、5分攪拌した後、滴下ロートを用い、メタクリロイルクロリド90ml (0.921モル)とCS2100ml の混合物を1時間かけて加えた。滴下終了後、5℃でさらに、1時間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ生成物をエーテルで抽出した。エーテル相を飽和NaHCO3水、続いて飽和NaCl水で洗浄した後、Na2SO4で脱水後、濃縮した。得られた粘稠オイルをCH2Cl2、ヘキサンを展開溶媒として、シリカゲルカラムで精製し、下記式で示されるケトン(a)を半固体として61g(0.275モル、収率31%)得た。
【0158】
【化19】
【0159】
得られた生成物の物性を下記に示す。
M+ 222
IR(KBr) 1690cm−1
NMR(CDCl3) 1.36(3H、d、J=7Hz)、3.43(4H、s)、7.24(1H、s)7.38(1H、d、J=8Hz)7.62(1H、t、J=8Hz)8.58(1H、d、J=8Hz)
Ar雰囲気下、三口フラスコに前記ケトン(a)25g(0.113モル)、無水テトラヒドロフラン500ml を入れ、氷バスで5℃に冷却した。この中にLiAlH4 3.2g(0.084モル)を20分かけて少量ずつ加えた。加え終わった後、5℃で2時間攪拌した。反応液にセライトを入れた後、注意深く飽和NH4Cl水を加え、過剰のLiAlH4を分解した。
【0160】
Na2SO4 を入れ、10分攪拌した後、セライトをしいた、ロートを用い反応混合物を濾過した。残査をCH2Cl2 で洗浄し、濾液を濃縮したところ淡黄色固体を26g得た。この固体をCH2Cl2 に溶解させショートシリカゲルカラムを通した後、濃縮し、下記式で示されるアルコール(b)の立体異性体混合物を24g(0.107ミリモル、収率95%)得た。
【0161】
【化20】
【0162】
このアルコール(b)はこれ以上精製せず、脱水反応を行い、オレフィン(c)とした。すなわちアルコール(b)8.80g(39.29ミリモル)、ベンゼン100ml 、p−トルエンスルホン酸100mg(0.53ミリモル)の混合物をAr雰囲気下、40℃で20分間加熱攪拌した。この反応混合物にK2CO3 およびNa2SO4 を加え、セライトをしいたロートを用い濾過した。
【0163】
残査をCH2Cl2 で洗浄し、濾液を濃縮し、粗オレフィン3を7.92g得た。この粗生成物をヘキサン、CH2Cl2 を展開溶媒としてシリカゲルカラムで精製し、下記式で示されるオレフィン(c)を半固体として7.10g(34.5ミリモル、収率88%)得た。
【0164】
【化21】
【0165】
得られた生成物の物性を下記に示す。
M+ 206
NMR(CDCl3)2.24(3H、bs)、3.41(6H、bs)、6.98(1H、bs)、7.22(1H、d、J=8Hz)、7.36(1H、s)、7.42(1H、t、J=8Hz)、7.70(1H、d、J=8Hz)Ar雰囲気下、オレフィン(c)6.01g(29.17ミリモル)、無水エーテル84ml 、CuCN 72mg(0.80ミリモル)の混合物を氷バスで冷却し、この中に、1.56Mのn−BuLiヘキサン溶液20.54ml (32.04ミリモル)を滴下ロートを用い、30分かけて加えた。滴下終了後、氷バスを外し、室温で1.5時間攪拌した。この中に、ジメチルジクロロシラン 1.97ml (16.03ミリモル)の無水エーテル5ml 溶液を25分かけて加え、その後、16時間室温で攪拌した。反応混合物を氷バスで冷却後、水を加え、エーテル相を分離し、水相をCH2Cl2 で抽出した。エーテルおよびCH2Cl2 相を合わせてNa2SO4 で脱水後、濃縮し、粗シリル化物を得た。この粗シリル化物をCH2Cl2−ヘキサン(1:8 v/v)でリンス精製し、下記式で示されるシリル化物(d)を白色固体として5.19g(11.09ミリモル、収率79%)得た。
【0166】
【化22】
【0167】
得られた生成物の物性を下記に示す。
M+ 468
mp 191〜194℃
NMR(CDCl3)−0.39、−0.35、−0.27(合わせて6H、それぞれs)、2.33、2.39(合わせて6H、それぞれs)3.39(8H、bs)、3.97(2H、bs)7.03〜7.93(10H、m)
Ar雰囲気下、シリル化物(d)2.00g(4.27ミリモル)、無水テトラヒドロフラン120ml の混合物をドライアイス−アセトンバスを用い−50℃まで冷却し、1.56Mのn−BuLiのヘキサン溶液5.47ml (8.53ミリモル)を滴下ロートを用い20分かけて加えた。滴下終了後バスを外し、室温で1.5時間攪拌した。減圧下、テトラヒドロフランを留去した後、無水ヘキサンを40ml 加え攪拌後、再び減圧し、ヘキサンを留去した。反応容器をドライアイス−アセトンバスを用い−50℃に冷却した後、−30℃のCH2Cl2 を120ml 加え、続いてZrCl4 を0.99g(4.27ミリモル)加え、攪拌を継続して、16時間放置した。反応混合物を濾過し、残査をCH2Cl2 で洗浄し、濾液を濃縮し2.30gの粗生成物を得た。
【0168】
この粗生成物をテトラヒドロフランおよびCH2Cl2 を用いて精製したところ、CH2Cl2可溶、テトラヒドロフラン不溶物として下記式で示されるラセミ体のジメチルシリレン−ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを400mg(0.64ミリモル、収率15%)得た。
【0169】
【化23】
【0170】
得られた生成物の物性を下記に示す。
M+ 626
NMR(CDCl3)1.36(6H、s)、2.37(6H、s)、3.20〜3.50(8H、m)7.10〜7.75(10H、m)
【0171】
[参考例1]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900ml、1-ブテンを70g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧14kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.40ミリモル、製造例1で得られたrac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-α-アセナフト-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.002ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を14kg/cm2Gに保ちながら60分間重合を行った。
【0172】
重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
得られたポリマー(プロピレン系エラストマー)は89.2gであり、重合活性は45kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。このポリマーは、1−ブテンから導かれる単位を8.2モル%含有していた。極限粘度[η]は1.82dl/g、融点は115.8℃であった。2,1−挿入に基づく異種結合の割合は、約0.38%であった。
【0173】
得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
【0174】
【実施例1】
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900ml、1-ブテンを100g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧14kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、製造例1で得られたrac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-α-アセナフト-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.002ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を14kg/cm2Gに保ちながら60分間重合を行った。
【0175】
重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
得られたポリマー(プロピレン系エラストマー)は65.3gであり、重合活性は33kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。このポリマーは、1−ブテンから導かれる単位を13.0モル%含有していた。極限粘度[η]は、1.81dl/g、融点は102.3℃であった。2,1−挿入に基づく異種結合の割合は、約0.36%であった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
【0176】
【実施例2】
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを950ml、1-ブテンを130g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧14kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、製造例1で得られたrac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-α-アセナフト-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.002ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を14kg/cm2Gに保ちながら60分間重合を行った。
【0177】
重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
得られたポリマー(プロピレン系エラストマー)は44.0gであり、重合活性は22kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。このポリマーは、1−ブテンから導かれる単位を17.7モル%含有していた。極限粘度[η]は、1.79dl/gであり、融点は89.1℃であった。2,1−挿入に基づく異種結合の割合は、約0.35%であった。
【0178】
得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
【0179】
【比較例1】
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを830ml、1−ブテンを100g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm2Gにし、トリエチルアルミニウム1ミリモル、及び塩化マグネシウムに担持されたチタン触媒をTi原子に換算して0.005ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm2Gに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
【0180】
得られたポリマーは33.7gであり、重合活性は14kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。このポリマーは、1−ブテンから導かれる単位を25.3モル%含有していた。極限粘度[η]は、1.89dl/g、融点は110.0℃であった。2,1−挿入に基づく異種結合の割合は、検出限界以下であった。
【0181】
得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
【0182】
【表2】
【0183】
【製造例2】
[rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド(式[I]で示されるメタロセン化合物)の合成]
( 2− メチル −4,6− ジイソプロピル)インデン(化合物▲1▼)の合成
充分に窒素置換した1リットルの反応器に塩化アルミニウム123g(0.92モル)、二硫化炭素200mlを仕込み、この中へ1,3−ジイソプロピルベンゼン78ml(0.41モル)とメタアクリロイルクロリド45ml(0.41モル)を二硫化炭素40mlと混合した溶液を20〜25℃で滴下した。12時間室温で反応させた後、氷1kgに加え、エーテルで抽出を行った。得られたエーテル溶液を飽和重曹水で洗浄した後、エーテル層をさらに水洗し、エーテル層を濃縮したところ、68gのオイルを得た。このオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン)で精製したところ、2−メチル−4,6−ジイソプロピル−1−インダノンと2−メチル−5,7−ジイソプロピル−1−インダノンの混合物43gを得た(収率:47%)。
【0184】
充分に窒素置換した1リットルの反応器に水素化ホウ素ナトリウム3.3g(86ミリモル)、エチルアルコール40mlを仕込み、この中へ混合物 21.1g(78.6ミリモル)とエチルアルコール30mlの混合液を50℃で滴下した。滴下終了後60℃で1時間、70℃で2時間反応させた後、反応溶液を水冷しながら、アセトン30mlを加えた。反応溶液を濃縮、乾固した後、エーテル300ml、水100mlを加えて抽出を行った。エーテル層は水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。エーテル層を濃縮した後、乾燥することにより、淡黄色粘稠なアルコール21.1gを得た(収率:99%)。
【0185】
充分に窒素置換した1リットルの反応器に上述のアルコール21.0g(79ミリモル)、ベンゼン500mlを仕込み、この中へパラトルエンスルホン酸1水和物50mg(0.55ミリモル)を加えて1時間還流した。反応終了後、飽和重曹水300mlに注ぎ、エーテル層を水洗した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。エーテル層を濃縮し、減圧下で乾燥したところ、目的のインデン誘導体を淡黄緑色のオイルとして19g得た。このオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン)で精製したところ、目的のインデン誘導体▲1▼を無色アモルファスとして17.6g得た(収率:95%)。
【0186】
NMR(CDCl3、ppm):
δ=1.32(3H、d、J=7.2Hz)、2.16(3H、s)、2.74〜3.20(2H、m)、3.28(2H、m)、6.60(1H、s)、6.98(1H、s)、7.12(1H、s)
1,1’− ジメチルシリレン − ビス( 2− メチル −4,6− ジイソプロピルインデン)(化合物▲2▼)の合成
充分に窒素置換した200mlの反応器に化合物▲1▼ 7.0g(31ミリモル)、シアン化銅76mg(0.9 ミリモル)、ジエチルエーテル60mlを仕込み、−10℃に冷却した。この溶液中にn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(31ミリモル)を加えた。室温まで昇温した後、再び−10℃まで冷却し、ジメチルジクロルシラン1.9ml(15.5ミリモル)を30分間で滴下し、1時間反応を行った。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液40mlに加え、n−ヘキサンで抽出し、水洗後硫酸マグネシウムで乾燥した。塩を除去し、有機層を減圧下で濃縮して得られた黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン)で精製したところ、化合物▲2▼を無色アモルファスとして6.1g得た(収率:73%)。
【0187】
NMR(CDCl3、ppm):
δ=1.25〜1.40(30H、m)、2.18(3H、s)、2.24(3H、s)、2.92(2H、q、J=6.8Hz)、3.23(2H、q、J=6.8Hz)、3.65(2H、br.s)、6.73(2H、br.s)、6.97(2H、br.s)、7.10〜7.23(2H、br.s)
rac− ジメチルシリレン − ビス( 2− メチル −4,6− ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
充分に窒素置換した300mlの反応器に上記で得られた化合物▲2▼ 5.9g(12.2ミリモル)、テトラヒドロフラン100mlを仕込み、−78℃に冷却し、攪拌した。ここに、n−ブチルリチウム15.4ml(n−ヘキサン溶液、1.58N、24.4ミリモル)を20分かけて滴下し、温度を保ったままさらに1時間攪拌してアニオン溶液を調整した。その後ゆっくりと室温まで昇温した。
【0188】
同時に、充分に窒素置換した300mlの反応器にテトラヒドロフラン100mlを仕込み、−78℃に冷却し、攪拌した。ここに四塩化ジルコニウム2.85g(12.2ミリモル)をゆっくり加えた後、室温まで昇温した。この中に前述したアニオン溶液を30分かけて滴下し、室温で12時間攪拌した。反応終了後、減圧濃縮し、析出した固体を300mlのヘキサンで3回洗浄して、不溶物を除去した。得られたヘキサン溶液を約50mlまで濃縮し、6℃で12時間冷却した。析出した固体を除き、得られた溶液部分を1H−NMRで分析したところ、ラセミ体とメソ体の混合物(9:1)であった。この混合物にヘキサン150mlを加え、再度再結晶を行って上記目的化合物の黄色柱状晶0.15gを得た(収率:2%)。
【0189】
なお得られた化合物のFD質量分析の結果は、644(M+)であった。
NMR(CDCl3、ppm):
δ=1.28(6H、s)1.20〜1.36(24H、m)、2.85(2H、q、J=6.8Hz)、3.04(2H、q、J=6.8Hz)、6.80(2H、s)、7.05(2H、s)、7.26(2H、s)
【0190】
[参考例2]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900ml、1-ブテンを70g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧14kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.40ミリモル、製造例2で製造されたrac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4,6-ジイソプロピル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.002ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を14kg/cm2Gに保ちながら60分間重合を行った。
【0191】
重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
得られたポリマー(プロピレン系エラストマー)は31.7gであり、重合活性は16kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。このポリマーは、1−ブテンから導かれる単位を6.2モル%含有していた。極限粘度[η]は1.83dl/g、融点は118.2℃であった。2,1−挿入に基づく異種結合の割合は、約0.88%であった。
【0192】
得られたポリマーについて測定した物性を表3に示す。
【0193】
【実施例3】
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900ml、1-ブテンを100g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧14kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、製造例2で製造されたrac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4,6-ジイソプロピル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.002ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を14kg/cm2Gに保ちながら60分間重合を行った。
【0194】
重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
得られたポリマー(プロピレン系エラストマー)は19.0gであり、重合活性は10kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。このポリマーは、1−ブテンから導かれる単位を11.0モル%含有していた。極限粘度[η]は、1.74dl/g、融点は105.1℃であった。2,1−挿入に基づく異種結合の割合は、約0.86%であった。得られたポリマーについて測定した物性を表3に示す。
【0195】
【実施例4】
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを950ml、1-ブテンを130g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧14kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、製造例2で製造されたrac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4,6-ジイソプロピル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.002ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を14kg/cm2Gに保ちながら60分間重合を行った。
【0196】
重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
得られたポリマー(プロピレン系エラストマー)は10.1gであり、重合活性は5kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。このポリマーは、1−ブテンから導かれる単位を15モル%含有していた。極限粘度[η]は、1.52dl/gであり、融点は91.0℃であった。2,1−挿入に基づく異種結合の割合は、約0.88%であった。
【0197】
得られたポリマーについて測定した物性を表3に示す。
【0198】
【表3】
Claims (3)
- (1) プロピレンから導かれる単位を70〜90モル%の量で、1-ブテンから導かれる単位を10〜30モル%の量で含有し、
(2) (i) 頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖、または
(ii)頭−尾結合したプロピレン単位とブテン単位とからなり、かつ第2単位目にプロピレン単位を含むプロピレン・ブテン3連鎖中の
第2単位目のプロピレン単位の側鎖メチル基について13C−NMRスペクトル(ヘキサクロロブタジエン溶液、テトラメチルシランを基準)を測定し、19.5〜21.9ppm に表れるピークの全面積を100%とした場合に、21.0〜21.9ppm に表れるピークの面積が90%以上であり、
(3) 135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1〜12dl/gであり、
(4) ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、
(5) 共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータB値が、1.0〜1.3であり、
(6) 示差走査型熱量計によって測定される融点Tmが60〜105.1℃であり、かつ該融点Tmと、1-ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
−2.6M+125 ≦ Tm ≦ −2.6M+145 であり、
(7) X線回折法により測定される結晶化度Cと、1-ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が、
C ≧ −1.5M+65
であるプロピレン系エラストマーからなることを特徴とするシーラント。 - 前記プロピレン系エラストマーが、
[A]下記一般式[I]または[ II ]で示されるメタロセン化合物と、
[B][B-1] 有機アルミニウムオキシ化合物、および/または
[B-2] メタロセン化合物[A]と反応してイオン対を形成する化合物と、
所望により[C]有機アルミニウム化合物とを含むオレフィン重合用触媒の存在下に、
プロピレンと1-ブテンとを共重合させることにより得られることを特徴とする請求項1に記載のシーラント;
R 11 およびR 12 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基であり、
R 13 およびR 14 は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基であり、
X 1 およびX 2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基であり、
Yは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO 2 −、−NR 7 −、−P(R 7 )−、−P(O)(R 7 )−、−BR 7 − または−AlR 7 −(ただしR 7 は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基)である。〕、
R 21 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または−NR 2 、−SR、−OSiR 3 、−SiR 3 または−PR 2 基(ただしRはハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基)であり、
R 22 〜R 28 は、上記のR 21 と同様であるか、あるいは隣接するR 22 〜R 28 がそれらの結合する原子とともに、芳香族環または脂肪族環を形成していてもよく、
X 3 およびX 4 は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜40のアリールアルキル基、炭素数7〜40のアルキルアリール基、炭素数8〜40のアリールアルケニル基、OH基またはハロゲン原子であり、
- 前記メタロセン化合物[A]が、前記式[I]で示されることを特徴とする請求項2に記載のシーラント。
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