JP3565091B2 - ガス濃度センサの特性計測方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば限界電流式の空燃比センサなど、センサ素子部への印加電圧に対してリニアに検出電流値を変化させるガス濃度センサについてその特性計測方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来技術として、一般に「ガスモデル装置」と呼ばれる装置を使い、そのモデルガス装置で既知のガス濃度環境を作ってガス濃度センサの特性評価を行うものがある。すなわち、モデルガス装置は、酸素、窒素、水素等、多種類のガスをそれぞれ供給するための供給源と、これら各供給源からのガスを導入する試験チャンバとを持ち、各供給源からのガス供給量を調整して擬似的なガス濃度環境を作る。例えば限界電流式の空燃比センサ(A/Fセンサ)の出力特性を計測する場合、試験チャンバに空燃比センサを設け、チャンバ内を所定の空燃比環境とした際のセンサ出力を基にセンサ特性を計測する。
【0003】
ところが、上記モデルガス装置を使ったガス濃度センサの特性評価法では、多種類のガスを一定の割合に調整する必要があり、設備が大規模となる、コストが高騰する等の問題を招く。
【0004】
また他の従来技術として特開平3−74557号公報が知られており、同公報において、空燃比コントローラは、エンジンへの供給ガスを所定の空燃比に調整する一方、エンジンの排気管に取り付けられた複数個のO2 センサの検出値を取り込む。また、基準O2 センサと他のO2 センサとの出力の差をエンジン制御中に演算してメモリに記憶することにより、空燃比−出力特性比較表を作成する。そして、基準O2 センサが劣化した際、他のO2 センサに切り替えてエンジン制御を継続する。
【0005】
更に特開平2−45750号公報では、理論空燃比点を境に異なる起電力信号を出力するO2 センサ(酸素センサ)についてその特性評価を行う特性評価方法が開示されており、排ガスを浄化するための浄化装置の下流側に基準O2 センサを配設すると共に、浄化装置の上流側に被測定O2 センサを配設する。そして、試験ガスを周期的にリッチ雰囲気とリーン雰囲気とに変化させ、その時の被測定O2 センサのリッチ信号時間とリーン信号時間との時間比率を測定してセンサ特定を評価するか或いは、被測定O2 センサのリーン電圧又は出力振幅を測定してセンサ特性を評価する。これにより、エミッションと関連性のあるセンサ特性を精度良く測定することとしていた。
【0006】
上記2つの公報の特性評価法は何れも、酸素濃度に応じて理論空燃比点付近で異なる起電力信号を出力するO2 センサが評価対象であるため、2次元特性に限定すればそのセンサ特性が計測できる。しかしながら、限界電流式のガス濃度センサを測定対象とする場合にはセンサ特性を適正に測定する手法が未だ確立されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、低コスト化を図りつつ所望の3次元特性を取得することができるガス濃度センサの特性計測方法を提供するを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のガス濃度センサの特性計測方法では、燃焼ガス供給源での燃焼パラメータを変化させてその時の排気通路内のガス濃度を基準ガス濃度計を用いて計測し、燃焼パラメータと排気通路内のガス濃度との相関マップを作成し(第1の手順)、その後、前記作成した相関マップを基に排気通路内が所定のガス濃度雰囲気となるよう燃焼パラメータを調整し、その状態で、ガス濃度センサへの印加電圧を変化させて該センサに流れる電流値を計測し(第2の手順)、前記第2の手順を、排気通路内のガス濃度を変化させて繰り返し行い(第3の手順)、前記第2,第3の手順にて計測した結果に基づき、印加電圧、センサ電流及びガス濃度の関係をマップ化する(第4の手順)。
【0009】
請求項1の特性計測方法によれば、燃焼ガス供給源の燃焼パラメータと排気通路内のガス濃度との相関マップを参照して排気通路内を既知のガス濃度雰囲気とし、その状態でガス濃度センサへの印加電圧を変化させて該ガス濃度センサの電流出力情報を取得するので、任意のガス濃度について電流出力と印加電圧との関係がマッピングできる。そして、それを多数のガス濃度点で繰り返すことで、結果的にガス濃度センサの電流出力と印加電圧とガス濃度との3者の関係がマッピングできる。
【0010】
かかる場合、燃焼ガス供給源の燃焼パラメータを変化させて相関マップを作成し、その相関マップを用いて排気通路内の所望のガス濃度環境を作り出すため、従来技術とは異なり高価なモデルガス装置を用いることなく、所望の3次元特性が取得できる。
【0011】
請求項2に記載の特性計測方法では、請求項1に記載の発明において、エンジンへの燃料供給量を変化させてその時の排気通路内のガス濃度を基準ガス濃度計を用いて計測し、該燃料供給量と排気通路内のガス濃度との相関マップを作成する(第1の手順)。また、前記作成した相関マップを基に排気通路内が所定のガス濃度雰囲気となるよう燃料供給量を調整し、その状態で、ガス濃度センサへの印加電圧を変化させて該センサに流れる電流値を計測する(第2の手順)。
【0012】
請求項2によれば、エンジンを燃焼ガス供給源、エンジンの排ガスを燃焼ガスとする場合において、ガス濃度センサの電流出力と印加電圧とガス濃度との3者の関係がマッピングできる。かかる場合、既存のエンジンシステムを適用して特性計測を行うため、やはり高価なモデルガス装置を用いることなく、所望の3次元特性が取得できる。
【0013】
なおこの場合、ガス濃度センサは、限界電流特性を用いて排ガス中の酸素濃度(空燃比)を検出するもの、NOx(窒素酸化物)を検出するもの等であればよい。
【0014】
請求項1又は2の発明では、請求項3に記載したように、基準ガス濃度計として、ガス濃度センサと同じく排気通路に設けられ且つ、電圧印加に伴い特定成分の濃度に対応した電流信号を出力する基準特性計測用の基準センサを用いるとよい。
【0015】
請求項4に記載の特性計測方法では、請求項2又は3に記載の発明において、エンジンへの燃料供給量を徐々に増加又は減少させつつ複数のプロット点で燃料供給量に対する排気通路内のガス濃度を計測し、その燃料供給量の増加又は減少を所定範囲で少なくとも2回以上行う(第1の手順)。本請求項4によれば、例えば、燃料供給量を最小値から最大値まで変化させてその時のガス濃度の変化を計測し、その最小値〜最大値の変化に要するサイクルを2回以上繰り返す。なお、同一の燃料供給量でもガス濃度の計測値が異なる場合にはそれら各計測値を平均化すればよい。これにより、燃料供給量とガス濃度とのより信頼性の高い相関マップが得られ、ガス濃度センサの特性が正確に計測できる。
【0016】
請求項5に記載の特性計測方法では、請求項2〜4の何れかに記載の発明において、エンジンへの燃料供給量の最大値付近及び最小値付近で比較的細かい間隔で燃料供給量とガス濃度との関係を計測し、それ以外では比較的粗い間隔で燃料供給量とガス濃度との関係を計測する(第1の手順)。
【0017】
つまり、例えば、燃料供給量に対する空燃比を計測する場合、理論空燃比近傍では燃料供給量と空燃比との関係が直線的な増減関係になるのに対し、燃料供給量の最大値付近及び最小値付近(リッチ限界付近、リーン限界付近)では必ずしも直線的な関係とならない(図4の範囲A,B参照)。従って、請求項5の如く、エンジンへの燃料供給量の最大値付近及び最小値付近でのみ、細かな間隔で燃料供給量とガス濃度との関係を計測することで、燃料供給量とガス濃度との相関マップがより一層正確で且つ信頼性の高いものとなる。
【0018】
エンジン等への実装状態では、ガス濃度センサは活性温度で保持されて正しく動作するため、それに合わせるよう、センサ活性化の状態でのみ一連の特性計測手順を実施するとよい(請求項6)。これにより、センサ特性計測結果の信頼性が向上する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態では、車両用ガソリンエンジンから排出される排ガスの空燃比(A/F)を検出するA/Fセンサについて、その出力特性を計測するための装置及び方法を詳細に説明する。
【0020】
図1は、A/Fセンサの特性計測を実現するための装置全体を示す構成図である。同図1において、エンジンシステム10は既存のシステムが流用され、大別するとエンジン本体11と、エンジン本体11の各気筒に燃料を噴射供給するインジェクタ12と、該インジェクタ12による燃料噴射量を制御するECU(電子制御装置)13とを備える。ECU13はその一般的な動作として、後述するA/Fセンサ16による検出結果を取り込み、その検出結果が目標空燃比に一致するよう空燃比フィードバック制御を実施する。
【0021】
ECU13には、外部装置としてのエンジン適合ツール14が接続されている。エンジン適合ツール14は、燃料噴射量やエンジン回転数を変更する旨の信号をECU13に出力し、例えばECU13内のマップ適合値が正しいかどうかを判断したり或いは、排気エミッションの量を最適に調整したりする。
【0022】
エンジン本体11に接続される排気管15には、限界電流式のA/Fセンサ16が配設され、該A/Fセンサ16は、排気管15内を流れる排ガスの酸素濃度からA/Fを検出する。A/Fセンサ16の構造については周知のため図示及び詳細な説明を省略するが、以下にA/Fセンサ16の構成を略述する。
【0023】
つまり、A/Fセンサ16は、断面コップ状に形成された固体電解質層と、その外側に積層される拡散抵抗層とを有し、固体電解質層の内表面には大気側電極層が固着され、外表面には排ガス側電極層が固着されている。固体電解質層は、ZrO2 、HfO2 、ThO2 、Bi2 O3 等にCaO、MgO、Y2 O3 、Yb2 O3 等を安定剤として固溶させた酸素イオン伝導性酸化物焼結体からなり、拡散抵抗層は、アルミナ、マグネシャ、ケイ石質、スピネル、ムライト等の耐熱性無機物質からなる。排ガス側電極層及び大気側電極層は共に、白金等の触媒活性の高い貴金属からなりその表面には多孔質の化学メッキ等が施されている。
【0024】
但し、A/Fセンサ16はA/Fをリニア(直線的)に検出できるものであれば良く、その構造は任意であって、上記のコップ型構造以外にも積層型構造であっても良い。
【0025】
また、A/Fセンサ16の限界電流特性について簡単に説明する。図2のV−I線図に示されるように、素子限界電流(電流出力I)の増減は空燃比の増減に対応し、空燃比がリーンになるほど電流出力Iが増大し、空燃比がリッチになるほど電流出力Iが減少する。また、V軸に平行な直線部分(限界電流検出域)よりも小さい電圧域は抵抗支配領域であり、抵抗支配領域における一時直線部分の傾きはセンサ素子部を構成する固体電解質層の直流素子抵抗により特定される。抵抗支配領域における直線部分の傾きは素子温に応じて変化し、例えば素子温が低下すると、素子直流抵抗が増大して前記傾きが小さくなる。
【0026】
図1に戻り、センサ特性計測装置17は、周知のマイクロコンピュータ(図示略)を有する電気回路で構成され、A/Fセンサ16の印加電圧を制御し且つ、電圧印加に伴って流れるセンサ電流を検出する。本実施の形態では、このセンサ特性計測装置17がA/Fセンサ16の特性評価を行う中枢部となり、特性計測データは同計測装置17に収集されて内部メモリに保存される。
【0027】
排気管15には、前記A/Fセンサ16に隣り合うようにして、基準ガス濃度計としての基準センサ18が配設されている。基準センサ18は、A/Fセンサ16と同様、限界電流式空燃比センサからなり、予め校正されて所定の基準特性を呈する。該基準センサ18には基準計測装置19が接続され、この基準計測装置19は、基準センサ18の印加電圧を制御し且つ、電圧印加に伴って流れるセンサ電流を検出する。基準計測装置19での計測結果は、センサ特性計測装置17に随時取り込まれる。
【0028】
排気管15においてA/Fセンサ16及び基準センサ18よりも上流側には、熱電対等で構成される排ガス温度センサ20が配設されており、この排ガス温度センサ20の検出結果は温度表示計21に出力されて表示される。
【0029】
次に、センサ特性の計測手順について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。ここで、図3のフローチャートは、センサ特性計測装置17により実行される処理手順を示し、この処理はセンサ特性計測の実施要求を受けて実施される。なお、本特性計測の実施に際してはA/Fセンサ16及び基準センサ18が共に活性化している必要があり、排ガス温度センサ20により排ガス温度をモニタして例えば排ガス温度≧700℃であれば、高温の排ガスにより各センサ16,18の活性状態が維持されるとみなし、本特性計測の実施を許可することとする。
【0030】
さて、先ずステップS1では、エンジン適合ツール14に指令を与えて燃料噴射量τ(インジェクタ12の通電時間)を最小値から最大値まで変化させ、その時々の排ガスのA/Fを基準センサ18を用いて検出する。詳細には、センサ特性計測装置17は、燃料噴射量τを徐々に増加又は減少させつつ複数のプロット点(例えば300点)で燃料噴射量τに対する基準センサ18の電流出力(A/F値)を読み取る。燃料噴射量τは、最小値→最大値の変化と、最大値→最小値の変化とを各1回ずつ行い、それら各々でのセンサの電流出力(A/F値)の平均を取る。またこのとき、燃料噴射量τの最大値付近及び最小値付近(図4の範囲A,B)では、比較的細かい間隔で燃料噴射量τを変化させてτ値とA/F値との関係を計測し、それ以外では比較的粗い間隔でτ値とA/F値との関係を計測する。
【0031】
但し、燃料噴射量τを、最小値→最大値、又は最大値→最小値の何れかで1回だけ変化させるとしても良い。また、燃料噴射量τの変化比率は常に一定としても良い。
【0032】
続くステップS2では、基準センサ18の検出結果を基準計測装置19から取り込み、燃料噴射量τとA/F値との相関マップ(τ−A/Fマップ)を作成する。図4に示されるように、τ−A/Fマップは範囲A,Bを除いてほぼ単調減少の特性となる。
【0033】
その後、ステップS3〜S7では、図4のτ−A/Fマップを基に、排気管15内が所望のA/F雰囲気となるよう燃料噴射量τを調整し、その状態で、A/Fセンサ16への印加電圧を変化させて該センサ16に流れる電流値を計測する。ここでは、A/Fセンサ16のA/F検出範囲をA/F=12.0〜20.0とし、その範囲内で、例えばA/F=12.0,14.7(理論空燃比),16.0,17.0,20.0の5点についてA/Fセンサ16の電流値を計測する。
【0034】
詳細には、ステップS3では、図4のτ−A/Fマップを基に、所望のA/F値となるようエンジン適合ツール14に噴射量信号の指令を与える。例えば、A/F値が17.0となるように、τ=2700μsの噴射信号を指令する。更にステップS4では、その時のA/F値を基準センサ18で計測し、排気管15内の排ガス雰囲気が安定するまで待つ。
【0035】
ステップS5では、排気管15内が安定した所望のA/F雰囲気になった状態で、所定範囲(例えば−0.2〜0.9Vの範囲)でスイープさせながらA/Fセンサ16に電圧を印加する。そして、電圧印加に伴いA/Fセンサ16に流れる電流値を計測し、メモリに順次保存する。図5は、ステップS5で得られるV−Iマップを示す。このステップS5の処理により、1つのA/F点に対する計測サイクルが完了する。
【0036】
続くステップS6では、V−I出力特性を計測すべき複数のA/F点について、全A/F点の計測が終了したかどうかを判別する。V−I出力特性の計測が全A/F点で終了していなければ、次のA/F点の出力特性を計測すべくステップS7に進み、A/F値を変更してデータ収集を継続する。つまり、ステップS3に戻り、前記変更したA/F値となるように再び噴射量信号の指令をエンジン適合ツール14に与え、その時のA/F値についてV−Iマップを作成する。こうして、全A/F点の出力特性の計測が終了するまで、ステップS3〜S7を繰り返し実行する。
【0037】
その後、ステップS6が肯定判別されるとステップS8に進む。ステップS8では、前記ステップS5でメモリに保存したA/F毎のV−Iマップを合成することにより、3次元の出力特性マップを作成し、その後本処理を終了する。これにより、図2のように電流出力I、印加電圧V及びA/Fの3つをパラメータとする出力特性が得られる。図2は、A/F=12.0,14.7(理論空燃比),16.0,17.0,20.0の5点に関しての出力特性を示すものではないが、実際にはこれら5つのA/F点に相当する電流値で平坦部分(限界電流検出域)を持つものとなる。
【0038】
なお本実施の形態では、エンジン本体11が本発明の「燃焼ガス供給源」に相当し、燃料噴射量τが「燃焼パラメータ」に相当する。また、図3のステップS1,S2が本発明の「第1の手順」に、ステップS3〜S5が「第2の手順」に、ステップS6,S7が「第3の手順」に、ステップS8が「第4の手順」に、それぞれ相当する。
【0039】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(イ)既存のエンジンシステム11を用いて任意にA/F環境を作り、その状態でセンサ特性を計測するため、従来技術とは異なり高価なモデルガス装置を用いることがなく、しかもA/Fセンサ16の電流出力と印加電圧とA/F値との3者の関係について所望の3次元特性が取得できる。また併せて、装置の大型化が抑制できる。
【0040】
(ロ)τ−A/Fマップの作成に際し、燃料噴射量τの増加又は減少のサイクルを2回繰り返すため、より信頼性の高いτ−A/Fマップが得られ、結果としてA/Fセンサ16の特性が正確に計測できる。
【0041】
(ハ)同じくτ−A/Fマップの作成に際し、燃料噴射量τの最大値付近及び最小値付近でのみ、細かな間隔で燃料噴射量τに対するA/F値を計測することで、より一層正確で且つ信頼性の高いτ−A/Fマップが得られる。また、計測間隔の粗い領域を設けることで、計測時間の短縮化を図ることができる。
【0042】
(ニ)A/Fセンサ16及び基準センサ18の活性度合を判定し、センサ活性状態でのみ一連の特性計測手順を実施することとしたので、センサ特性計測結果の信頼性が向上する。
【0043】
なお本発明は、上記以外に次の形態にて具体化できる。
上記実施の形態では、A/Fセンサ16のA/F検出範囲をA/F=12.0〜20.0とし、その範囲内で、例えばA/F=12.0,14.7(理論空燃比),16.0,17.0,20.0の5点についてA/Fセンサ16の電流値を計測したが、A/F検出範囲の変更や、A/F計測点の変更等は勿論許容される。仮に、上記一連の手順により特性計測されたA/Fセンサを、次には基準センサとして使用する場合には、比較的多数(10〜20)のA/F点で特性計測を行うと良い。
【0044】
上記実施の形態では、排ガス温度をモニタしてA/Fセンサ16及び基準センサ18の活性度合を判断したが、これを変更する。例えば、基準センサ18の素子抵抗を検出しその抵抗値からセンサ活性度合を判断する。そして、センサ16,18が活性化していれば、センサ特性計測の実施を許可する。なお、各センサ16,18にヒータを設け、このヒータへの通電量を制御することによりセンサ16,18を常に活性状態で保持するようにしてもよい。
【0045】
上記実施の形態では、基準ガス濃度計として、A/Fセンサ16と同じく限界電流式の基準センサ18を用いたが、これを変更する。A/Fセンサ16と同等の基準センサ18を使わずとも、他の基準ガス濃度計(校正済みのもの)を用いることとしても良い。
【0046】
上記実施の形態では、ガス濃度センサとしてA/Fセンサを適用したが、それ以外にも、排ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサに本発明を適用してもよい。NOxセンサもA/Fセンサ同様、限界電流にてNOx濃度を検出するものであり、2セル型、3セル型等、何れの構成でも良い。
【0047】
NOxセンサの特性計測を行う際、エンジンの燃料噴射量とNOx濃度との相関マップを予め作成し、その相関マップを基に排気管内を所望のNOx濃度雰囲気とし、その状態で、NOxセンサへの印加電圧を変化させて該センサに流れるNOx濃度検出電流を計測する。更に、その手順を、排気管内のNOx濃度雰囲気を変更して繰り返し行い、前記計測した結果に基づき、NOxセンサの印加電圧、電流出力及びNOx濃度の関係をマッピングする。
【0048】
また、エンジンの排ガスに限らず、燃焼炉、焼却炉など、他の燃焼ガス供給源から供給される燃焼ガスについて特定成分の濃度を検出するためのガス濃度センサに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】A/Fセンサの特性計測を実現するための装置全体を示す構成図。
【図2】A/Fセンサの出力特性を示すV−I線図。
【図3】A/Fセンサの特性計測手順を示すフローチャート。
【図4】τ−A/Fマップを示す図。
【図5】A/Fセンサの2次元特性を示すV−I線図。
【符号の説明】
10…エンジンシステム、15…排気管、16…A/Fセンサ、17…センサ特性計測装置、18…基準センサ、19…基準計測装置、20…排ガス温度センサ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば限界電流式の空燃比センサなど、センサ素子部への印加電圧に対してリニアに検出電流値を変化させるガス濃度センサについてその特性計測方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来技術として、一般に「ガスモデル装置」と呼ばれる装置を使い、そのモデルガス装置で既知のガス濃度環境を作ってガス濃度センサの特性評価を行うものがある。すなわち、モデルガス装置は、酸素、窒素、水素等、多種類のガスをそれぞれ供給するための供給源と、これら各供給源からのガスを導入する試験チャンバとを持ち、各供給源からのガス供給量を調整して擬似的なガス濃度環境を作る。例えば限界電流式の空燃比センサ(A/Fセンサ)の出力特性を計測する場合、試験チャンバに空燃比センサを設け、チャンバ内を所定の空燃比環境とした際のセンサ出力を基にセンサ特性を計測する。
【0003】
ところが、上記モデルガス装置を使ったガス濃度センサの特性評価法では、多種類のガスを一定の割合に調整する必要があり、設備が大規模となる、コストが高騰する等の問題を招く。
【0004】
また他の従来技術として特開平3−74557号公報が知られており、同公報において、空燃比コントローラは、エンジンへの供給ガスを所定の空燃比に調整する一方、エンジンの排気管に取り付けられた複数個のO2 センサの検出値を取り込む。また、基準O2 センサと他のO2 センサとの出力の差をエンジン制御中に演算してメモリに記憶することにより、空燃比−出力特性比較表を作成する。そして、基準O2 センサが劣化した際、他のO2 センサに切り替えてエンジン制御を継続する。
【0005】
更に特開平2−45750号公報では、理論空燃比点を境に異なる起電力信号を出力するO2 センサ(酸素センサ)についてその特性評価を行う特性評価方法が開示されており、排ガスを浄化するための浄化装置の下流側に基準O2 センサを配設すると共に、浄化装置の上流側に被測定O2 センサを配設する。そして、試験ガスを周期的にリッチ雰囲気とリーン雰囲気とに変化させ、その時の被測定O2 センサのリッチ信号時間とリーン信号時間との時間比率を測定してセンサ特定を評価するか或いは、被測定O2 センサのリーン電圧又は出力振幅を測定してセンサ特性を評価する。これにより、エミッションと関連性のあるセンサ特性を精度良く測定することとしていた。
【0006】
上記2つの公報の特性評価法は何れも、酸素濃度に応じて理論空燃比点付近で異なる起電力信号を出力するO2 センサが評価対象であるため、2次元特性に限定すればそのセンサ特性が計測できる。しかしながら、限界電流式のガス濃度センサを測定対象とする場合にはセンサ特性を適正に測定する手法が未だ確立されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、低コスト化を図りつつ所望の3次元特性を取得することができるガス濃度センサの特性計測方法を提供するを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のガス濃度センサの特性計測方法では、燃焼ガス供給源での燃焼パラメータを変化させてその時の排気通路内のガス濃度を基準ガス濃度計を用いて計測し、燃焼パラメータと排気通路内のガス濃度との相関マップを作成し(第1の手順)、その後、前記作成した相関マップを基に排気通路内が所定のガス濃度雰囲気となるよう燃焼パラメータを調整し、その状態で、ガス濃度センサへの印加電圧を変化させて該センサに流れる電流値を計測し(第2の手順)、前記第2の手順を、排気通路内のガス濃度を変化させて繰り返し行い(第3の手順)、前記第2,第3の手順にて計測した結果に基づき、印加電圧、センサ電流及びガス濃度の関係をマップ化する(第4の手順)。
【0009】
請求項1の特性計測方法によれば、燃焼ガス供給源の燃焼パラメータと排気通路内のガス濃度との相関マップを参照して排気通路内を既知のガス濃度雰囲気とし、その状態でガス濃度センサへの印加電圧を変化させて該ガス濃度センサの電流出力情報を取得するので、任意のガス濃度について電流出力と印加電圧との関係がマッピングできる。そして、それを多数のガス濃度点で繰り返すことで、結果的にガス濃度センサの電流出力と印加電圧とガス濃度との3者の関係がマッピングできる。
【0010】
かかる場合、燃焼ガス供給源の燃焼パラメータを変化させて相関マップを作成し、その相関マップを用いて排気通路内の所望のガス濃度環境を作り出すため、従来技術とは異なり高価なモデルガス装置を用いることなく、所望の3次元特性が取得できる。
【0011】
請求項2に記載の特性計測方法では、請求項1に記載の発明において、エンジンへの燃料供給量を変化させてその時の排気通路内のガス濃度を基準ガス濃度計を用いて計測し、該燃料供給量と排気通路内のガス濃度との相関マップを作成する(第1の手順)。また、前記作成した相関マップを基に排気通路内が所定のガス濃度雰囲気となるよう燃料供給量を調整し、その状態で、ガス濃度センサへの印加電圧を変化させて該センサに流れる電流値を計測する(第2の手順)。
【0012】
請求項2によれば、エンジンを燃焼ガス供給源、エンジンの排ガスを燃焼ガスとする場合において、ガス濃度センサの電流出力と印加電圧とガス濃度との3者の関係がマッピングできる。かかる場合、既存のエンジンシステムを適用して特性計測を行うため、やはり高価なモデルガス装置を用いることなく、所望の3次元特性が取得できる。
【0013】
なおこの場合、ガス濃度センサは、限界電流特性を用いて排ガス中の酸素濃度(空燃比)を検出するもの、NOx(窒素酸化物)を検出するもの等であればよい。
【0014】
請求項1又は2の発明では、請求項3に記載したように、基準ガス濃度計として、ガス濃度センサと同じく排気通路に設けられ且つ、電圧印加に伴い特定成分の濃度に対応した電流信号を出力する基準特性計測用の基準センサを用いるとよい。
【0015】
請求項4に記載の特性計測方法では、請求項2又は3に記載の発明において、エンジンへの燃料供給量を徐々に増加又は減少させつつ複数のプロット点で燃料供給量に対する排気通路内のガス濃度を計測し、その燃料供給量の増加又は減少を所定範囲で少なくとも2回以上行う(第1の手順)。本請求項4によれば、例えば、燃料供給量を最小値から最大値まで変化させてその時のガス濃度の変化を計測し、その最小値〜最大値の変化に要するサイクルを2回以上繰り返す。なお、同一の燃料供給量でもガス濃度の計測値が異なる場合にはそれら各計測値を平均化すればよい。これにより、燃料供給量とガス濃度とのより信頼性の高い相関マップが得られ、ガス濃度センサの特性が正確に計測できる。
【0016】
請求項5に記載の特性計測方法では、請求項2〜4の何れかに記載の発明において、エンジンへの燃料供給量の最大値付近及び最小値付近で比較的細かい間隔で燃料供給量とガス濃度との関係を計測し、それ以外では比較的粗い間隔で燃料供給量とガス濃度との関係を計測する(第1の手順)。
【0017】
つまり、例えば、燃料供給量に対する空燃比を計測する場合、理論空燃比近傍では燃料供給量と空燃比との関係が直線的な増減関係になるのに対し、燃料供給量の最大値付近及び最小値付近(リッチ限界付近、リーン限界付近)では必ずしも直線的な関係とならない(図4の範囲A,B参照)。従って、請求項5の如く、エンジンへの燃料供給量の最大値付近及び最小値付近でのみ、細かな間隔で燃料供給量とガス濃度との関係を計測することで、燃料供給量とガス濃度との相関マップがより一層正確で且つ信頼性の高いものとなる。
【0018】
エンジン等への実装状態では、ガス濃度センサは活性温度で保持されて正しく動作するため、それに合わせるよう、センサ活性化の状態でのみ一連の特性計測手順を実施するとよい(請求項6)。これにより、センサ特性計測結果の信頼性が向上する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態では、車両用ガソリンエンジンから排出される排ガスの空燃比(A/F)を検出するA/Fセンサについて、その出力特性を計測するための装置及び方法を詳細に説明する。
【0020】
図1は、A/Fセンサの特性計測を実現するための装置全体を示す構成図である。同図1において、エンジンシステム10は既存のシステムが流用され、大別するとエンジン本体11と、エンジン本体11の各気筒に燃料を噴射供給するインジェクタ12と、該インジェクタ12による燃料噴射量を制御するECU(電子制御装置)13とを備える。ECU13はその一般的な動作として、後述するA/Fセンサ16による検出結果を取り込み、その検出結果が目標空燃比に一致するよう空燃比フィードバック制御を実施する。
【0021】
ECU13には、外部装置としてのエンジン適合ツール14が接続されている。エンジン適合ツール14は、燃料噴射量やエンジン回転数を変更する旨の信号をECU13に出力し、例えばECU13内のマップ適合値が正しいかどうかを判断したり或いは、排気エミッションの量を最適に調整したりする。
【0022】
エンジン本体11に接続される排気管15には、限界電流式のA/Fセンサ16が配設され、該A/Fセンサ16は、排気管15内を流れる排ガスの酸素濃度からA/Fを検出する。A/Fセンサ16の構造については周知のため図示及び詳細な説明を省略するが、以下にA/Fセンサ16の構成を略述する。
【0023】
つまり、A/Fセンサ16は、断面コップ状に形成された固体電解質層と、その外側に積層される拡散抵抗層とを有し、固体電解質層の内表面には大気側電極層が固着され、外表面には排ガス側電極層が固着されている。固体電解質層は、ZrO2 、HfO2 、ThO2 、Bi2 O3 等にCaO、MgO、Y2 O3 、Yb2 O3 等を安定剤として固溶させた酸素イオン伝導性酸化物焼結体からなり、拡散抵抗層は、アルミナ、マグネシャ、ケイ石質、スピネル、ムライト等の耐熱性無機物質からなる。排ガス側電極層及び大気側電極層は共に、白金等の触媒活性の高い貴金属からなりその表面には多孔質の化学メッキ等が施されている。
【0024】
但し、A/Fセンサ16はA/Fをリニア(直線的)に検出できるものであれば良く、その構造は任意であって、上記のコップ型構造以外にも積層型構造であっても良い。
【0025】
また、A/Fセンサ16の限界電流特性について簡単に説明する。図2のV−I線図に示されるように、素子限界電流(電流出力I)の増減は空燃比の増減に対応し、空燃比がリーンになるほど電流出力Iが増大し、空燃比がリッチになるほど電流出力Iが減少する。また、V軸に平行な直線部分(限界電流検出域)よりも小さい電圧域は抵抗支配領域であり、抵抗支配領域における一時直線部分の傾きはセンサ素子部を構成する固体電解質層の直流素子抵抗により特定される。抵抗支配領域における直線部分の傾きは素子温に応じて変化し、例えば素子温が低下すると、素子直流抵抗が増大して前記傾きが小さくなる。
【0026】
図1に戻り、センサ特性計測装置17は、周知のマイクロコンピュータ(図示略)を有する電気回路で構成され、A/Fセンサ16の印加電圧を制御し且つ、電圧印加に伴って流れるセンサ電流を検出する。本実施の形態では、このセンサ特性計測装置17がA/Fセンサ16の特性評価を行う中枢部となり、特性計測データは同計測装置17に収集されて内部メモリに保存される。
【0027】
排気管15には、前記A/Fセンサ16に隣り合うようにして、基準ガス濃度計としての基準センサ18が配設されている。基準センサ18は、A/Fセンサ16と同様、限界電流式空燃比センサからなり、予め校正されて所定の基準特性を呈する。該基準センサ18には基準計測装置19が接続され、この基準計測装置19は、基準センサ18の印加電圧を制御し且つ、電圧印加に伴って流れるセンサ電流を検出する。基準計測装置19での計測結果は、センサ特性計測装置17に随時取り込まれる。
【0028】
排気管15においてA/Fセンサ16及び基準センサ18よりも上流側には、熱電対等で構成される排ガス温度センサ20が配設されており、この排ガス温度センサ20の検出結果は温度表示計21に出力されて表示される。
【0029】
次に、センサ特性の計測手順について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。ここで、図3のフローチャートは、センサ特性計測装置17により実行される処理手順を示し、この処理はセンサ特性計測の実施要求を受けて実施される。なお、本特性計測の実施に際してはA/Fセンサ16及び基準センサ18が共に活性化している必要があり、排ガス温度センサ20により排ガス温度をモニタして例えば排ガス温度≧700℃であれば、高温の排ガスにより各センサ16,18の活性状態が維持されるとみなし、本特性計測の実施を許可することとする。
【0030】
さて、先ずステップS1では、エンジン適合ツール14に指令を与えて燃料噴射量τ(インジェクタ12の通電時間)を最小値から最大値まで変化させ、その時々の排ガスのA/Fを基準センサ18を用いて検出する。詳細には、センサ特性計測装置17は、燃料噴射量τを徐々に増加又は減少させつつ複数のプロット点(例えば300点)で燃料噴射量τに対する基準センサ18の電流出力(A/F値)を読み取る。燃料噴射量τは、最小値→最大値の変化と、最大値→最小値の変化とを各1回ずつ行い、それら各々でのセンサの電流出力(A/F値)の平均を取る。またこのとき、燃料噴射量τの最大値付近及び最小値付近(図4の範囲A,B)では、比較的細かい間隔で燃料噴射量τを変化させてτ値とA/F値との関係を計測し、それ以外では比較的粗い間隔でτ値とA/F値との関係を計測する。
【0031】
但し、燃料噴射量τを、最小値→最大値、又は最大値→最小値の何れかで1回だけ変化させるとしても良い。また、燃料噴射量τの変化比率は常に一定としても良い。
【0032】
続くステップS2では、基準センサ18の検出結果を基準計測装置19から取り込み、燃料噴射量τとA/F値との相関マップ(τ−A/Fマップ)を作成する。図4に示されるように、τ−A/Fマップは範囲A,Bを除いてほぼ単調減少の特性となる。
【0033】
その後、ステップS3〜S7では、図4のτ−A/Fマップを基に、排気管15内が所望のA/F雰囲気となるよう燃料噴射量τを調整し、その状態で、A/Fセンサ16への印加電圧を変化させて該センサ16に流れる電流値を計測する。ここでは、A/Fセンサ16のA/F検出範囲をA/F=12.0〜20.0とし、その範囲内で、例えばA/F=12.0,14.7(理論空燃比),16.0,17.0,20.0の5点についてA/Fセンサ16の電流値を計測する。
【0034】
詳細には、ステップS3では、図4のτ−A/Fマップを基に、所望のA/F値となるようエンジン適合ツール14に噴射量信号の指令を与える。例えば、A/F値が17.0となるように、τ=2700μsの噴射信号を指令する。更にステップS4では、その時のA/F値を基準センサ18で計測し、排気管15内の排ガス雰囲気が安定するまで待つ。
【0035】
ステップS5では、排気管15内が安定した所望のA/F雰囲気になった状態で、所定範囲(例えば−0.2〜0.9Vの範囲)でスイープさせながらA/Fセンサ16に電圧を印加する。そして、電圧印加に伴いA/Fセンサ16に流れる電流値を計測し、メモリに順次保存する。図5は、ステップS5で得られるV−Iマップを示す。このステップS5の処理により、1つのA/F点に対する計測サイクルが完了する。
【0036】
続くステップS6では、V−I出力特性を計測すべき複数のA/F点について、全A/F点の計測が終了したかどうかを判別する。V−I出力特性の計測が全A/F点で終了していなければ、次のA/F点の出力特性を計測すべくステップS7に進み、A/F値を変更してデータ収集を継続する。つまり、ステップS3に戻り、前記変更したA/F値となるように再び噴射量信号の指令をエンジン適合ツール14に与え、その時のA/F値についてV−Iマップを作成する。こうして、全A/F点の出力特性の計測が終了するまで、ステップS3〜S7を繰り返し実行する。
【0037】
その後、ステップS6が肯定判別されるとステップS8に進む。ステップS8では、前記ステップS5でメモリに保存したA/F毎のV−Iマップを合成することにより、3次元の出力特性マップを作成し、その後本処理を終了する。これにより、図2のように電流出力I、印加電圧V及びA/Fの3つをパラメータとする出力特性が得られる。図2は、A/F=12.0,14.7(理論空燃比),16.0,17.0,20.0の5点に関しての出力特性を示すものではないが、実際にはこれら5つのA/F点に相当する電流値で平坦部分(限界電流検出域)を持つものとなる。
【0038】
なお本実施の形態では、エンジン本体11が本発明の「燃焼ガス供給源」に相当し、燃料噴射量τが「燃焼パラメータ」に相当する。また、図3のステップS1,S2が本発明の「第1の手順」に、ステップS3〜S5が「第2の手順」に、ステップS6,S7が「第3の手順」に、ステップS8が「第4の手順」に、それぞれ相当する。
【0039】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(イ)既存のエンジンシステム11を用いて任意にA/F環境を作り、その状態でセンサ特性を計測するため、従来技術とは異なり高価なモデルガス装置を用いることがなく、しかもA/Fセンサ16の電流出力と印加電圧とA/F値との3者の関係について所望の3次元特性が取得できる。また併せて、装置の大型化が抑制できる。
【0040】
(ロ)τ−A/Fマップの作成に際し、燃料噴射量τの増加又は減少のサイクルを2回繰り返すため、より信頼性の高いτ−A/Fマップが得られ、結果としてA/Fセンサ16の特性が正確に計測できる。
【0041】
(ハ)同じくτ−A/Fマップの作成に際し、燃料噴射量τの最大値付近及び最小値付近でのみ、細かな間隔で燃料噴射量τに対するA/F値を計測することで、より一層正確で且つ信頼性の高いτ−A/Fマップが得られる。また、計測間隔の粗い領域を設けることで、計測時間の短縮化を図ることができる。
【0042】
(ニ)A/Fセンサ16及び基準センサ18の活性度合を判定し、センサ活性状態でのみ一連の特性計測手順を実施することとしたので、センサ特性計測結果の信頼性が向上する。
【0043】
なお本発明は、上記以外に次の形態にて具体化できる。
上記実施の形態では、A/Fセンサ16のA/F検出範囲をA/F=12.0〜20.0とし、その範囲内で、例えばA/F=12.0,14.7(理論空燃比),16.0,17.0,20.0の5点についてA/Fセンサ16の電流値を計測したが、A/F検出範囲の変更や、A/F計測点の変更等は勿論許容される。仮に、上記一連の手順により特性計測されたA/Fセンサを、次には基準センサとして使用する場合には、比較的多数(10〜20)のA/F点で特性計測を行うと良い。
【0044】
上記実施の形態では、排ガス温度をモニタしてA/Fセンサ16及び基準センサ18の活性度合を判断したが、これを変更する。例えば、基準センサ18の素子抵抗を検出しその抵抗値からセンサ活性度合を判断する。そして、センサ16,18が活性化していれば、センサ特性計測の実施を許可する。なお、各センサ16,18にヒータを設け、このヒータへの通電量を制御することによりセンサ16,18を常に活性状態で保持するようにしてもよい。
【0045】
上記実施の形態では、基準ガス濃度計として、A/Fセンサ16と同じく限界電流式の基準センサ18を用いたが、これを変更する。A/Fセンサ16と同等の基準センサ18を使わずとも、他の基準ガス濃度計(校正済みのもの)を用いることとしても良い。
【0046】
上記実施の形態では、ガス濃度センサとしてA/Fセンサを適用したが、それ以外にも、排ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサに本発明を適用してもよい。NOxセンサもA/Fセンサ同様、限界電流にてNOx濃度を検出するものであり、2セル型、3セル型等、何れの構成でも良い。
【0047】
NOxセンサの特性計測を行う際、エンジンの燃料噴射量とNOx濃度との相関マップを予め作成し、その相関マップを基に排気管内を所望のNOx濃度雰囲気とし、その状態で、NOxセンサへの印加電圧を変化させて該センサに流れるNOx濃度検出電流を計測する。更に、その手順を、排気管内のNOx濃度雰囲気を変更して繰り返し行い、前記計測した結果に基づき、NOxセンサの印加電圧、電流出力及びNOx濃度の関係をマッピングする。
【0048】
また、エンジンの排ガスに限らず、燃焼炉、焼却炉など、他の燃焼ガス供給源から供給される燃焼ガスについて特定成分の濃度を検出するためのガス濃度センサに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】A/Fセンサの特性計測を実現するための装置全体を示す構成図。
【図2】A/Fセンサの出力特性を示すV−I線図。
【図3】A/Fセンサの特性計測手順を示すフローチャート。
【図4】τ−A/Fマップを示す図。
【図5】A/Fセンサの2次元特性を示すV−I線図。
【符号の説明】
10…エンジンシステム、15…排気管、16…A/Fセンサ、17…センサ特性計測装置、18…基準センサ、19…基準計測装置、20…排ガス温度センサ。
Claims (6)
- 燃焼ガス供給源に接続される排気通路に設けられ、電圧印加に伴い燃焼ガス中の特定成分の濃度に対応した電流信号を出力するガス濃度センサを計測対象としてその特性を計測する方法であって、
燃焼ガス供給源での燃焼パラメータを変化させてその時の排気通路内のガス濃度を基準ガス濃度計を用いて計測し、燃焼パラメータと排気通路内のガス濃度との相関マップを作成する第1の手順と、
その後、前記作成した相関マップを基に排気通路内が所定のガス濃度雰囲気となるよう燃焼パラメータを調整し、その状態で、ガス濃度センサへの印加電圧を変化させて該センサに流れる電流値を計測する第2の手順と、
前記第2の手順を、排気通路内のガス濃度を変化させて繰り返し行う第3の手順と、
前記第2,第3の手順にて計測した結果に基づき、印加電圧、センサ電流及びガス濃度の関係をマップ化する第4の手順と、
を有することを特徴とするガス濃度センサの特性計測方法。 - エンジンの排気通路に設けられ、排ガス中の特定成分の濃度を検出するガス濃度センサの特性計測方法であって、
前記第1の手順では、エンジンへの燃料供給量を変化させてその時の排気通路内のガス濃度を基準ガス濃度計を用いて計測し、該燃料供給量と排気通路内のガス濃度との相関マップを作成し、
前記第2の手順では、前記作成した相関マップを基に排気通路内が所定のガス濃度雰囲気となるよう燃料供給量を調整し、その状態で、ガス濃度センサへの印加電圧を変化させて該センサに流れる電流値を計測する請求項1に記載のガス濃度センサの特性計測方法。 - 前記基準ガス濃度計として、ガス濃度センサと同じく排気通路に設けられ且つ、電圧印加に伴い特定成分の濃度に対応した電流信号を出力する基準特性計測用の基準センサを用いる請求項1又は2に記載のガス濃度センサの特性計測方法。
- 請求項2又は3に記載のガス濃度センサの特性計測方法において、
前記第1の手順では、エンジンへの燃料供給量を徐々に増加又は減少させつつ複数のプロット点で燃料供給量に対する排気通路内のガス濃度を計測し、その燃料供給量の増加又は減少を所定範囲で少なくとも2回以上行うガス濃度センサの特性計測方法。 - 請求項2〜4の何れかに記載のガス濃度センサの特性計測方法において、
前記第1の手順では、エンジンへの燃料供給量の最大値付近及び最小値付近で比較的細かい間隔で燃料供給量とガス濃度との関係を計測し、それ以外では比較的粗い間隔で燃料供給量とガス濃度との関係を計測するガス濃度センサの特性計測方法。 - ガス濃度センサの活性度合をモニタし、センサ活性化の状態でのみ一連の特性計測手順を実施する請求項1〜5の何れかに記載のガス濃度センサの特性計測方法。
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